税 制 改 革 について 平 成 20 年 5 月 20 日 伊 藤 隆 敏 丹 羽 宇 一 郎 御 手 洗 冨 士 夫 八 代 尚 宏 税 制 は 国 民 生 活 や 経 済 社 会 にとって 極 めて 重 要 な 制 度 インフラであ り 21 世 紀 の 我 が 国 にふさわしい 税 体 系 の 再 構 築 は 喫 緊 の 課 題 となっ ている 国 民 の 視 点 に 立 った 分 かりやすい 議 論 の 下 に 抜 本 的 税 制 改 革 を 実 現 していかなければならない これまでの 議 論 を 基 礎 として 新 たに 必 要 とされる 論 点 を 加 え 本 年 中 に 結 論 を 得 るべく 以 下 のような 方 針 で 議 論 を 進 める 必 要 がある 1. 税 体 系 の 抜 本 的 な 改 革 について 早 期 に 実 現 を 図 る その 際 こ れまで 積 み 重 ねてきた 議 論 を 基 礎 とし 次 のような 基 本 的 考 え 方 に 立 つことが 重 要 である 1 平 成 16 年 年 金 改 正 法 基 本 方 針 2006 及 び 基 本 方 針 2007 や 平 成 20 年 度 与 党 税 制 改 正 大 綱 の 基 本 的 考 え 方 を 踏 まえる 2 税 制 は 社 会 保 障 とも 密 接 に 関 係 しており 社 会 保 障 と 税 を 一 体 的 に 改 革 していくというアプローチが 重 要 である 進 路 と 戦 略 で 示 した 安 心 持 続 のための 5 原 則 に 沿 って 議 論 を 進 める ( 注 )また 現 在 社 会 保 障 国 民 会 議 において 検 討 が 行 われている 社 会 保 障 の あるべき 姿 とも 整 合 的 に 議 論 を 進 める 必 要 がある 2. 税 制 の 在 り 方 についての 基 本 的 考 え 方 は 昨 年 11 月 8 日 の 経 済 財 政 諮 問 会 議 における 提 案 ( 税 体 系 の 抜 本 的 改 革 について : 別 添 参 照 )のとおりである 3.その 後 の 閣 議 決 定 や 経 済 財 政 諮 問 会 議 における 審 議 等 も 踏 まえ 以 下 について 議 論 を 進 めることが 必 要 である (1) 道 路 特 定 財 源 の 21 年 度 からの 一 般 財 源 化 に 伴 い ガソリン 税 等 の 今 後 の 在 り 方 について 環 境 問 題 への 国 際 的 な 取 組 み 等 を 踏 まえて 検 討 する 1
(2) 女 性 や 高 齢 者 の 就 労 を 阻 害 しないよう 年 齢 や 性 別 世 帯 の 構 成 に 関 わらず 就 労 に 中 立 的 な 税 制 のあり 方 を 検 討 する (3) 給 付 ( 育 児 手 当 など)と 税 制 ( 扶 養 控 除 など)を 一 体 として 扱 い 必 要 な 人 に 必 要 な 支 援 をきめ 細 かく 行 う 給 付 付 き 税 額 控 除 制 度 について 既 存 施 策 との 関 連 など その 課 題 の 検 討 に 着 手 する (4) 老 後 の 備 えとリスクマネー 供 給 の 好 循 環 をつくるため 資 産 形 成 を 支 援 する 制 度 として 確 定 拠 出 年 金 (401k)を 次 のよ うに 拡 充 することを 検 討 する 本 人 も 拠 出 できるようにする 個 人 型 確 定 拠 出 年 金 の 対 象 を 拡 充 する (5) 日 本 を 魅 力 ある 投 資 先 にする 観 点 から ビジネスを 行 う 上 で のコストが 高 いのではないかとの 論 点 を 踏 まえ 法 人 税 につ いて 課 税 ベースの 見 直 しや 税 制 改 革 全 体 の 中 で 検 討 する (6) 納 税 者 番 号 の 導 入 に 向 けて 社 会 保 障 番 号 との 関 係 の 整 理 等 を 含 め 具 体 的 な 検 討 を 進 める 2
( 別 添 ) 税 体 系 の 抜 本 的 改 革 について 平 成 19 年 11 月 8 日 伊 藤 隆 敏 丹 羽 宇 一 郎 御 手 洗 冨 士 夫 八 代 尚 宏 21 世 紀 の 我 が 国 にふさわしい 税 制 を 構 築 するため 基 本 方 針 2007 で 示 された 税 制 改 革 の 基 本 哲 学 に 沿 って 税 体 系 の 抜 本 的 改 革 を 実 現 しなければ ならない その 際 税 制 と 社 会 保 障 制 度 を 一 体 的 に 設 計 し 全 体 として 簡 素 で 効 率 のよい 仕 組 みとしていく 必 要 がある このような 観 点 から 以 下 の 提 案 を 行 いたい 今 後 政 府 税 制 調 査 会 や 経 済 財 政 諮 問 会 議 などにおいて これらの 点 について 広 く 議 論 を 進 めることが 必 要 である 1.3つの 課 題 社 会 保 障 と 一 体 的 に 抜 本 的 な 税 制 改 革 を 行 うにあたっては 次 の 3つの 課 題 に 的 確 に 応 えたものとする 必 要 がある (1) 成 長 力 強 化 高 齢 化 に 伴 う 負 担 増 を 小 さくするためにも 生 産 性 向 上 を 促 し 成 長 力 を 強 化 しなければならない 経 済 のダイナミズムを 高 め 効 率 的 な 働 き 方 を 実 現 する 必 要 がある また グローバル 化 の 中 で 内 外 の 企 業 が 国 際 的 な 立 地 選 択 を 行 っていることを 踏 まえる 必 要 がある (2) 世 代 間 世 代 内 の 公 平 の 確 保 急 速 な 高 齢 化 による 社 会 保 障 給 付 の 増 加 が 現 役 世 代 にとって 益 々 重 い 負 担 となってくる 同 時 に 世 代 内 の 公 平 性 の 確 保 も 重 要 な 政 策 課 題 となっている 若 年 層 の 非 正 規 雇 用 者 の 増 加 は 将 来 の 格 差 拡 大 につな がる 恐 れがある 税 制 が 社 会 保 障 とともに 本 来 の 再 分 配 機 能 を 果 たし 世 代 間 世 代 内 の 公 平 を 実 現 していかなければならない (3) 社 会 保 障 を 支 える 安 定 財 源 の 確 保 人 口 減 少 少 子 高 齢 化 の 下 においても 社 会 保 障 をしっかりと 支 える 安 定 財 源 を 確 保 する 必 要 がある 欧 州 諸 国 では あらゆる 世 代 で 広 く 負 担 を 分 かち 合 うことができ 景 気 変 動 に 相 対 的 に 左 右 されにくい 消 費 税 の 役 割 が 高 くなっている 3
2. 具 体 的 には 特 に 以 下 のような 提 案 について 検 討 すべきである < 成 長 力 強 化 > (1) リスクへの 挑 戦 を 促 進 人 口 減 少 高 齢 化 社 会 においては 企 業 が 常 に 新 しい 技 術 やシステム を 生 み 出 すようなダイナミズムが これまでにも 増 して 重 要 となる 起 業 家 や 投 資 家 のリスクへの 挑 戦 を 促 すため 1 金 融 所 得 課 税 について 国 際 的 な 動 きも 参 考 としつつ 一 体 化 に 向 けた 見 直 しを 図 る 2ベンチャー 促 進 税 制 を 拡 充 する (2) 企 業 の 国 際 的 立 地 選 択 を 阻 害 しない 税 制 グローバル 化 の 中 で 法 人 税 等 制 度 のあり 方 は 企 業 の 国 際 的 立 地 選 択 にとって 極 めて 重 要 な 要 因 となっている 諸 外 国 との 比 較 の 中 で 企 業 の 負 担 水 準 を 遜 色 のないものとし 我 が 国 における 企 業 立 地 を 促 進 し 雇 用 を 拡 大 するとともに 消 費 投 資 等 の 経 済 活 動 全 般 を 活 発 にする 必 要 がある このため 1 法 人 の 税 負 担 水 準 について 常 に 国 際 的 状 況 を 念 頭 におく 2その 際 法 人 税 における 租 税 特 別 措 置 を 成 長 力 強 化 にとって 真 に 必 要 なものに 重 点 化 する (3) 労 働 に 対 する 中 立 性 の 確 保 適 材 適 所 の 効 率 的 な 働 き 方 により 高 い 生 産 性 が 実 現 する 個 人 の 働 き 方 に 対 する 中 立 性 を 高 め 供 給 や 移 動 に 関 する 歪 みを 軽 減 することに より 労 働 供 給 を 高 めるとともに 適 切 な 労 働 力 の 配 置 をめざす 必 要 が ある このため 1 専 業 主 婦 世 帯 と 共 働 き 世 帯 の 公 平 性 の 観 点 から 各 種 控 除 を 見 直 す 2 退 職 金 税 制 について 雇 用 慣 行 を 踏 まえ 段 階 的 に 見 直 す < 世 代 間 世 代 内 の 公 平 の 確 保 > (4) 所 得 のある 高 齢 者 による 相 応 の 負 担 高 齢 世 代 内 の 格 差 が 極 めて 大 きい 中 で 高 齢 者 世 帯 の 負 担 は 逆 進 的 に なっている 高 齢 者 を 一 律 に 弱 者 とみるのではなく 所 得 の 高 い 高 齢 者 に 対 しては 相 応 の 負 担 を 求 めるとともに 現 役 世 代 の 負 担 上 昇 を 緩 和 し 世 代 間 格 差 の 是 正 につなげるため 例 えば 公 的 年 金 等 控 除 の 見 直 しを 図 り それを 年 金 財 源 に 充 てることが 考 えられる 4
(5) 税 と 歳 出 が 一 体 となった 制 度 に 向 けた 検 討 着 手 低 所 得 者 へのきめ 細 かい 所 得 再 分 配 は 所 得 控 除 による 対 応 では 限 界 がある また 所 得 控 除 は 高 所 得 者 ほど 有 利 になる 逆 進 性 を 持 つ 近 年 先 進 国 で 行 われているように 税 額 控 除 と 社 会 保 障 給 付 を 一 体 的 に 切 れ 目 なく 設 計 し 必 要 な 人 に 必 要 な 支 援 をきめ 細 かく 行 う 制 度 が 我 が 国 で も 導 入 できないか 既 存 施 策 との 関 連 などその 課 題 の 検 討 に 着 手 する 必 要 があるのではないか 1まず 所 得 控 除 の 一 部 を 税 額 控 除 に 改 める 2 税 額 控 除 と 社 会 保 障 給 付 をつないで 税 額 控 除 の 恩 典 が 及 ばない 低 所 得 層 には 給 付 がなされる 仕 組 みとする (6) 経 済 社 会 の 変 化 に 対 応 した 資 産 課 税 ( 相 続 税 )の 見 直 し 経 済 社 会 の 変 化 に 対 応 する 観 点 から 諸 外 国 で 行 われている 例 も 参 考 としながら 相 続 税 の 在 り 方 役 割 を 見 直 してはどうか その 際 世 代 間 の 公 平 の 観 点 から それを 社 会 保 障 を 中 心 とした 財 源 に 充 てることも 考 えられる ( 社 会 的 扶 養 の 一 部 を 社 会 に 還 元 するという 考 え 方 なお 現 在 相 続 税 は 被 相 続 人 の 24 人 に 1 人 しか 課 税 対 象 とされていない ) (7) 老 後 に 向 けた 自 助 努 力 を 支 援 勤 務 先 における 企 業 年 金 の 態 様 等 によって 老 後 向 け 貯 蓄 ( 年 金 )の 機 会 が 異 なっている 老 後 の 生 活 基 盤 形 成 に 向 けた 自 助 努 力 を すべて の 人 が 等 しく 行 うことのできるようにすべきである このため 確 定 拠 出 年 金 (401(k))に 個 人 も 拠 出 できるようにし それを 含 め 関 連 する 各 種 控 除 非 課 税 枠 を 一 本 に 集 約 する 仕 組 みについて 検 討 する 必 要 がある のではないか < 社 会 保 障 を 支 える 安 定 財 源 の 確 保 > (8) 消 費 税 の 役 割 の 検 討 社 会 保 障 の 今 後 を 展 望 すると 負 担 の 増 加 圧 力 が 見 込 まれる あらゆ る 世 代 で 広 く 負 担 を 分 かち 合 うことができ 景 気 変 動 に 相 対 的 に 左 右 さ れにくい 消 費 税 の 役 割 を 高 めていくことについて 検 討 する なお 基 本 方 針 2006 基 本 方 針 2007 に 示 された 歳 出 歳 入 一 体 改 革 の 考 え 方 に 沿 って 最 大 限 の 歳 出 削 減 の 努 力 を 行 っていくことが 前 提 となる 5