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少 年 を 被 告 人 とする 裁 判 員 裁 判 における 少 年 法 の 理 念 に 則 った 審 理 を 求 める 決 議 2009 年 ( 平 成 21 年 )5 月 裁 判 員 の 参 加 する 刑 事 裁 判 に 関 する 法 律 ( 以 下 裁 判 員 法 という)が 施 行 され 少 年 を 被 告 人 とする 裁 判 員 裁 判 事 件 について 相 当 数 の 判 決 が 積 み 重 ねられてきている 少 年 には 少 年 法 に 則 った 裁 判 を 受 ける 権 利 があり 少 年 法 の 理 念 はもちろんのこと 同 法 55 条 による 家 庭 裁 判 所 への 移 送 ( 以 下 家 裁 移 送 という ) 不 定 期 刑 等 の 少 年 法 独 自 の 諸 制 度 や 少 年 刑 務 所 や 少 年 院 での 処 遇 の 実 情 やその 相 違 点 等 を 裁 判 員 が 十 分 に 理 解 していることは 少 年 を 被 告 人 とする 裁 判 員 裁 判 を 適 正 に 実 施 するための 当 然 の 前 提 条 件 である したがって 裁 判 所 には 裁 判 員 のそのような 理 解 を 確 保 する 責 務 がある しかし このたび 当 連 合 会 が 実 際 の 事 例 について 担 当 弁 護 人 への 聞 き 取 りその 他 の 調 査 を 実 施 したところ 現 状 では かかる 裁 判 所 の 責 務 が 十 分 に 果 たされておらず また そ の 他 の 深 刻 な 問 題 も 顕 在 化 しており 少 年 法 に 則 った 適 正 な 裁 判 を 受 ける 権 利 が 少 年 に 対 して 実 質 的 に 保 障 されているといえるのか 疑 問 が 大 きいことが 明 らかになった そこで 近 畿 弁 護 士 会 連 合 会 は 関 係 各 機 関 が 以 下 のとおり 対 処 することを 求 める 1 事 件 審 理 のあり 方 について (1) 裁 判 官 は 裁 判 員 が 教 育 優 先 主 義 をはじめとする 少 年 法 の 理 念 について 十 分 理 解 でき るよう 適 切 な 説 明 を 行 い 裁 判 員 に 少 年 法 の 理 念 を 尊 重 させるべきである また 家 裁 移 送 に 関 する 少 年 法 55 条 の 解 釈 不 定 期 刑 や 刑 の 緩 和 等 少 年 法 独 自 の 制 度 や 少 年 院 及 び 少 年 刑 務 所 における 処 遇 の 実 情 やその 異 同 を 裁 判 員 に 丁 寧 かつ 適 切 に 説 明 する ことが 求 められる さらに 必 要 に 応 じて 処 遇 の 実 情 についての 裁 判 員 の 理 解 を 深 め るため 公 判 期 日 前 には 少 年 院 や 少 年 刑 務 所 への 裁 判 員 の 見 学 を 実 施 すべきである そ して 法 曹 三 者 で 裁 判 員 が 少 年 院 及 び 少 年 刑 務 所 における 処 遇 の 実 情 をよく 理 解 でき るよう 共 同 で 映 像 等 の 資 料 を 作 成 し 裁 判 官 はこれを 活 用 すべきである (2) 裁 判 官 は 社 会 記 録 を 家 庭 裁 判 所 から 全 部 取 り 寄 せたうえで 調 査 票 や 鑑 別 結 果 通 知 書 については 少 年 及 びその 関 係 者 のプライバシーや 少 年 の 情 操 保 護 に 配 慮 しつつ 文 書 全 体 を 証 拠 として 取 り 調 べるべきである また 事 案 の 解 明 のうえで 必 要 であれば 家 庭 裁 判 所 調 査 官 や 少 年 鑑 別 所 の 鑑 別 技 官 の 尋 問 を 実 施 すべきである さらに 少 年 の 要 保 護 性 の 判 断 に 必 要 がある 事 案 においては 少 年 の 資 質 や 生 育 歴 等 に 関 する 鑑 定 を 積 極 的 に 採 用 することが 求 められる

(3) 裁 判 官 は 少 年 の 心 身 や 防 御 にとって 無 理 のない 審 理 時 間 を 設 定 し かつ 裁 判 員 に とって 理 解 しやすく 充 実 した 審 理 を 行 うため 審 理 期 間 を 十 分 確 保 すべきである 2 家 庭 裁 判 所 での 社 会 調 査 について 裁 判 官 は 調 査 官 に 対 する 調 査 命 令 において 調 査 事 項 を 少 年 法 20 条 2 項 但 書 該 当 性 に 限 定 せず 少 年 の 保 護 可 能 性 についても 十 分 に 調 査 させ 調 査 官 は 全 件 で 少 年 の 保 護 可 能 性 を 丁 寧 に 調 査 し 調 査 票 の 作 成 にあたっては 過 度 に 簡 略 化 せず 収 集 した 情 報 は 幅 広 く 記 述 し かつ 意 見 形 成 過 程 が 明 らかになるように 十 分 な 記 載 を 行 うようにす べきである 3 少 年 の 起 訴 後 の 勾 留 について 裁 判 官 は 起 訴 後 の 少 年 については 保 釈 を 積 極 的 に 認 めるとともに 勾 留 の 継 続 が 必 要 な 場 合 でも その 勾 留 場 所 を 少 年 鑑 別 所 とし 法 務 省 は 少 年 鑑 別 所 において その 少 年 が 希 望 する 生 活 指 導 教 科 指 導 等 の 教 育 を 受 ける 機 会 を 確 保 すべきである 4 矯 正 施 設 での 処 遇 について 法 務 省 は 少 年 院 及 び 少 年 刑 務 所 における 処 遇 の 実 情 を 広 く 公 開 し かつ 両 者 の 処 遇 効 果 について 適 切 な 統 計 を 取 り 科 学 的 な 調 査 を 実 施 し その 結 果 を 公 開 すべきで ある 5 立 法 提 言 (1) 国 は 社 会 調 査 の 成 果 たる 社 会 記 録 を 公 判 において 取 り 調 べるべきこととし 当 該 社 会 記 録 を 作 成 に 携 わった 調 査 官 や 鑑 別 技 官 をしてその 内 容 を 現 行 の 証 拠 調 べ 手 続 によ らず 裁 判 体 に 対 して 説 明 させることができるよう 新 たな 制 度 を 設 けるべきである (2) 国 は 少 年 及 びその 関 係 者 のプライバシー 保 護 や 少 年 の 情 操 保 護 等 への 配 慮 から 必 要 に 応 じ 公 開 の 停 止 や 少 年 の 退 廷 を 可 能 にするよう 法 定 すべきである (3) 国 は 少 年 法 の 理 念 少 年 法 55 条 の 解 釈 不 定 期 刑 や 刑 の 緩 和 少 年 院 と 少 年 刑 務 所 における 処 遇 の 実 情 及 びその 異 同 等 の 少 年 を 被 告 人 とする 事 件 の 審 理 において 理 解 しておくべき 事 項 について 裁 判 官 が 裁 判 員 に 理 解 させるべき 責 務 を 明 確 にするため 裁 判 員 法 に 裁 判 官 の 責 任 として 定 めるべきである 以 上 のとおり 決 議 する 2011 年 ( 平 成 23 年 )11 月 25 日 近 畿 弁 護 士 会 連 合 会

提 案 理 由 第 1 はじめに 2004 年 ( 平 成 16 年 )5 月 裁 判 員 の 参 加 する 刑 事 裁 判 に 関 する 法 律 ( 以 下 裁 判 員 法 という)が 成 立 し その 後 同 法 は2009 年 ( 平 成 21 年 )5 月 に 施 行 さ れ 家 庭 裁 判 所 が 刑 事 処 分 が 相 当 であるとして 検 察 官 に 送 致 することを 決 定 した 少 年 を 被 告 人 とする 事 件 も 1 死 刑 又 は 無 期 の 懲 役 若 しくは 禁 固 に 当 たる 罪 に 係 る 事 件 2いわゆる 法 定 合 議 事 件 ( 死 刑 又 は 無 期 若 しくは 短 期 1 年 以 上 の 懲 役 若 しくは 禁 固 に 当 たる 罪 に 係 る 事 件 )であって 故 意 の 犯 罪 行 為 によって 人 を 死 亡 させた 罪 に 係 る 事 件 については 裁 判 員 裁 判 に 付 されて 裁 判 手 続 が 行 われることになった 裁 判 員 制 度 は 国 民 から 選 ばれた 裁 判 員 の 刑 事 訴 訟 手 続 への 関 与 が 司 法 に 対 する 国 民 の 理 解 の 増 進 とその 信 頼 の 向 上 に 資 することから 設 けられたものであり その 導 入 は 大 きな 意 義 を 有 している しかし 少 年 を 被 告 人 とする 事 件 については 裁 判 員 制 度 下 で 審 理 する 際 の 課 題 が 制 度 実 施 前 から 多 く 指 摘 されており 日 本 弁 護 士 連 合 会 も 裁 判 員 制 度 の 下 での 少 年 逆 送 事 件 の 審 理 のあり 方 に 関 する 意 見 書 (2008 年 ( 平 成 20 年 )12 月 19 日 )において 少 年 を 被 告 人 とする 裁 判 員 裁 判 において も 少 年 法 の 理 念 に 則 った 審 理 が 貫 徹 されねばならない 旨 の 意 見 を 表 明 した 当 連 合 会 は 従 前 より 少 年 非 行 問 題 に 深 い 関 心 を 持 ち 非 行 の 実 態 や 原 因 家 庭 裁 判 所 における 少 年 審 判 や 付 添 人 活 動 のあり 方 少 年 の 処 遇 等 について 研 究 を 続 けて きたものであるが 裁 判 員 制 度 の 実 施 により 少 年 を 被 告 人 とする 裁 判 員 裁 判 におい て 少 年 法 の 趣 旨 に 則 った 十 分 な 審 理 が 実 現 されるかについて 重 大 な 懸 念 を 抱 き 実 情 把 握 に 努 めてきた 現 実 に 近 畿 圏 においても 裁 判 員 制 度 開 始 後 奈 良 県 桜 井 市 の 高 校 生 殺 人 事 件 (2 009 年 ( 平 成 21 年 )6 月 4 日 発 生 ) 大 阪 府 富 田 林 市 の 高 校 生 殺 人 事 件 ( 同 年 6 月 11 日 発 生 ) 京 都 府 舞 鶴 市 の 少 年 溺 死 事 件 (2010 年 ( 平 成 22 年 )6 月 20 日 発 生 ) 等 大 きく 報 道 されたものを 含 め 少 なからぬ 件 数 の 重 大 少 年 事 件 が 発 生 し 加 害 者 少 年 が 家 庭 裁 判 所 での 審 判 により 検 察 官 送 致 の 決 定 を 受 け 裁 判 員 裁 判 の 対 象 とされる 実 例 が 積 み 重 ねられており 被 告 人 少 年 の 弁 護 を 担 当 した 弁 護 士 からも 実 際 の 弁 護 活 動 のうえで 直 面 した 深 刻 な 困 難 について 報 告 がなされてきている また 2010 年 ( 平 成 22 年 )11 月 25 日 には 仙 台 地 方 裁 判 所 において 殺 人 罪 等 に 問 われた19 歳 の 少 年 に 対 して 少 年 の 裁 判 員 裁 判 事 件 で 初 めての 死 刑 判 決 が 言 い 渡 され(いわゆる 石 巻 事 件 ) 社 会 の 論 議 を 呼 んでいる

裁 判 員 制 度 は 施 行 後 3 年 を 経 過 した 段 階 で 制 度 の 施 行 状 況 について 検 討 を 加 え 必 要 があると 認 めるときはその 結 果 に 基 づいて 所 要 の 措 置 を 講 ずるものとするとさ れているところ( 裁 判 員 法 附 則 9 条 ) その3 年 後 見 直 しの 時 期 は 平 成 24 年 5 月 と 目 前 に 迫 っている この 機 会 に 当 連 合 会 としても 少 年 を 被 告 人 とする 裁 判 員 裁 判 に 関 して その 問 題 点 を 検 証 し 審 理 の 運 用 改 善 や 制 度 改 正 の 必 要 性 について 社 会 に 理 解 を 求 め 国 に 訴 える 必 要 がある 以 上 のような 状 況 のもと 当 連 合 会 は 近 畿 圏 を 中 心 とした 少 年 被 告 人 の 裁 判 員 裁 判 事 件 16 件 ( 件 数 は 被 告 人 の 数 による 進 行 中 の 事 件 も 含 む)について 実 際 に 弁 護 を 担 当 した 弁 護 士 に 聞 き 取 り 調 査 を 実 施 し それを 含 む 全 国 の20 例 以 上 の 実 例 の 調 査 検 討 を 行 うとともに 文 献 研 究 有 識 者 や 研 究 者 との 意 見 交 換 さらに 少 年 院 及 び 少 年 刑 務 所 の 訪 問 やそれら 処 遇 施 設 での 処 遇 に 関 する 通 達 類 の 収 集 分 析 等 を 行 い 少 年 を 被 告 人 とする 裁 判 員 裁 判 の 実 情 を 洗 い 出 し 問 題 点 を 抽 出 し そのうえで 必 要 な 運 用 改 善 と 立 法 的 手 当 を 検 討 した 第 2 少 年 を 被 告 人 とする 裁 判 員 裁 判 の 現 状 とその 問 題 点 1 少 年 を 被 告 人 とする 刑 事 訴 訟 事 件 に 関 する 法 の 定 め そもそも 少 年 を 被 告 人 とする 刑 事 訴 訟 事 件 は 法 律 的 に 成 人 を 被 告 人 とする 事 件 とは 下 記 の 諸 点 で 異 なる 面 を 有 する まず 少 年 法 1 条 は この 法 律 は 少 年 の 健 全 な 育 成 を 期 し 少 年 の 刑 事 事 件 について 特 別 の 措 置 を 講 ずることを 目 的 とする と 定 め 少 年 の 健 全 育 成 が 少 年 の 刑 事 手 続 の 基 本 理 念 である 旨 を 宣 言 している この 少 年 法 の 目 的 は 非 行 少 年 に 対 して 保 護 教 育 を 優 先 する 趣 旨 をも 明 らかにしているものとされる その 教 育 優 先 主 義 の 理 念 は 家 庭 裁 判 所 が 刑 事 処 分 を 相 当 であるとして 検 察 官 に 送 致 した 結 果 公 訴 提 起 さ れた 少 年 の 刑 事 事 件 にも 及 ぶと 解 される その 理 念 のもと 少 年 の 刑 事 訴 訟 手 続 においては 裁 判 所 が 少 年 の 被 告 人 を 保 護 処 分 に 付 するのが 相 当 であると 認 めるとき には 事 件 を 再 び 家 庭 裁 判 所 での 少 年 保 護 手 続 きに 戻 して 処 理 することが 認 められている( 少 年 法 55 条 以 下 同 条 によ る 家 庭 裁 判 所 への 事 件 の 移 送 を 家 裁 移 送 という ) 裁 判 員 法 は この 家 裁 移 送 決 定 についても 裁 判 員 を 含 む 合 議 体 の 判 断 事 項 としており( 同 法 6 条 1 項 ) 裁 判 員 制 度 のもとでは 家 裁 移 送 の 可 否 が 争 点 となる 事 件 においては 裁 判 員 は 少 年 法 55 条 の 保 護 処 分 相 当 性 の 判 断 にも 関 与 することになる

また 少 年 法 50 条 が 少 年 に 対 する 刑 事 事 件 の 審 理 は 第 9 条 の 趣 旨 に 従 つて これを 行 わなければならない と 定 め 同 法 9 条 が 前 条 の 調 査 は なるべく 少 年 保 護 者 又 は 関 係 人 の 行 状 経 歴 素 質 環 境 等 について 医 学 心 理 学 教 育 学 社 会 学 その 他 の 専 門 的 智 識 特 に 少 年 鑑 別 所 の 鑑 別 の 結 果 を 活 用 して これを 行 うよう に 努 めなければならない と 定 めているとおり 少 年 を 被 告 人 とする 事 件 の 審 理 に おいては 少 年 の 要 保 護 性 に 関 する 判 断 についての 科 学 的 専 門 知 識 の 活 用 が 要 請 され ている その 定 めを 受 けて 刑 事 訴 訟 規 則 277 条 においては 少 年 事 件 の 審 理 について は 懇 切 を 旨 とし 且 つ 事 案 の 真 相 を 明 らかにするため 家 庭 裁 判 所 の 取 り 調 べた 証 拠 は つとめてこれを 取 り 調 べるようにしなければならない と 規 定 されている さらに 少 年 法 51 条 ないし54 条 56 条 ないし59 条 には 少 年 に 対 する 刑 事 事 件 における 科 刑 の 制 限 緩 和 が 定 められており 特 に 罪 を 犯 すとき18 歳 に 満 たな い 者 に 対 しての 死 刑 無 期 刑 をもって 処 断 すべきときの 刑 の 制 限 緩 和 ( 同 法 51 条 ) や 不 定 期 刑 制 度 ( 同 法 52 条 )は 少 年 の 量 刑 に 関 する 定 めとして 重 要 である 以 上 のような 点 を 前 提 に 当 連 合 会 の 調 査 分 析 により 判 明 した 少 年 を 被 告 人 とする 裁 判 員 裁 判 の 主 要 な 問 題 点 を 列 記 すると 以 下 のとおりである 2 裁 判 員 の 理 解 不 足 に 対 する 懸 念 当 連 合 会 の 実 例 調 査 においては 裁 判 員 が 少 年 法 独 自 の 制 度 の 趣 旨 や 内 容 につい て 十 分 な 理 解 のうえで 審 理 にあたっているかについて 注 目 した もちろん 具 体 的 事 案 においては 裁 判 体 の 評 議 は 非 公 開 とされ 判 決 後 に 裁 判 員 から 個 別 の 聞 き 取 りを 行 うことも 困 難 であり 裁 判 員 がどの 程 度 の 少 年 法 に 関 する 理 解 をもって 審 理 に 臨 んだ かについては 弁 護 人 や 傍 聴 人 も 直 接 に 把 握 できたわけではない しかし 調 査 対 象 のいずれの 事 案 においても 裁 判 所 あるいは 裁 判 体 を 構 成 する 裁 判 官 が 選 任 手 続 を 経 て 選 任 された 裁 判 員 に 対 して 事 前 に 十 分 な 時 間 を 取 って 少 年 法 独 自 の 制 度 の 趣 旨 や 内 容 を 説 明 したとは 言 い 難 いという 実 情 があった もちろん 審 理 の 開 始 前 や 休 廷 時 間 評 議 の 際 などにおいて 裁 判 官 が 裁 判 員 に 対 し 教 育 優 先 主 義 をとっている 少 年 法 の 理 念 家 裁 移 送 の 制 度 の 趣 旨 とその 解 釈 刑 の 緩 和 の 制 度 や 不 定 期 刑 等 について ひととおりの 説 明 はなされているようである しかし 法 曹 であっても 十 分 な 知 識 を 当 然 に 有 しているとはいえない 少 年 の 刑 事 事 件 独 自 の 理 念 や 諸 制 度 について 裁 判 員 が 裁 判 員 として 選 任 された 緊 張 感 の 中 で 初 めて 取 り 組 む 刑 事 訴 訟 の 仕 組 みへの 理 解 と 併 行 しながら 非 常 な 短 期 間 かつ 短 時 間 で

どこまで 正 確 に 理 解 できていたかについては 疑 問 が 大 きい 実 際 前 記 石 巻 事 件 の 判 決 後 に 行 われた 裁 判 員 の 記 者 会 見 において 裁 判 員 を 務 め た 市 民 から 被 告 人 が 少 年 であることについて 私 個 人 は14 歳 だろうが 15 歳 だ ろうが 人 の 命 を 奪 ったという 重 い 罪 には 大 人 と 同 じ 刑 で 判 断 すべきだと 思 い そ う 心 がけた との 発 言 が 報 道 された また 富 田 林 市 の 高 校 生 殺 人 事 件 の 判 決 言 渡 し に 際 して 裁 判 長 が 少 年 法 は 狭 い 範 囲 の 不 定 期 刑 しか 認 めておらず 刑 期 は 十 分 では ない 本 件 を 機 に 議 論 が 高 まり 適 切 な 改 正 がされるよう 望 まれる 旨 の 異 例 の 言 及 を 行 った(これは 評 議 での 裁 判 員 の 意 見 を 濃 厚 に 反 映 したものであろう) これらの ことからして 少 年 法 に 基 づく 少 年 に 対 する 刑 事 事 件 独 自 の 諸 制 度 の 趣 旨 や 内 容 が 裁 判 員 には 十 分 に 理 解 実 践 されていないのではないかとの 懸 念 が 現 実 にある 3 社 会 記 録 の 取 調 べの 困 難 少 年 を 被 告 人 とする 刑 事 事 件 においては 家 裁 移 送 の 可 否 が 争 点 となることが 多 く 今 回 の 調 査 においても 進 行 中 の 事 件 を 除 いた13 件 の 実 例 のうち 家 裁 移 送 が 弁 護 人 から 主 張 されたのは8 件 であった 家 裁 移 送 の 可 否 が 主 たる 争 点 になる 事 案 においては 少 年 の 要 保 護 性 の 評 価 が 非 常 に 重 要 な 要 素 となるが その 判 断 の 際 家 庭 裁 判 所 での 審 判 の 段 階 で 作 成 された 社 会 記 録 とりわけ 家 庭 裁 判 所 調 査 官 作 成 の 調 査 票 及 び 少 年 鑑 別 所 作 成 の 鑑 別 結 果 通 知 書 が 極 めて 有 用 な 資 料 になることは 言 うまでもなく また 量 刑 が 主 たる 争 点 となる 事 案 においても 社 会 記 録 は 少 年 の 情 状 面 において 重 要 な 資 料 となる ところが 調 査 を 行 った 現 実 の 裁 判 員 裁 判 の 審 理 においては ほとんどのケースで 社 会 記 録 は 少 年 を 含 む 関 係 者 のプライバシーへの 配 慮 の 必 要 性 その 他 の 理 由 から 公 判 廷 において 検 察 官 または 弁 護 人 がその 内 容 を 要 約 した 報 告 書 を 証 拠 提 出 するな どの 方 法 により 実 質 的 にその 一 部 のみが 一 度 読 み 上 げられる 形 でしか 取 り 調 べられ ていないのが 実 情 であった しかし そのような 取 調 べ 方 法 では 裁 判 員 が 社 会 調 査 の 結 果 を 十 分 理 解 して 評 議 の 際 その 判 断 に 反 映 させることは 非 常 に 困 難 である そ の 結 果 として 現 状 では 少 年 法 50 条 9 条 刑 事 訴 訟 規 則 277 条 が 求 める 審 理 における 科 学 的 専 門 知 識 の 活 用 が 実 現 されていないといわざるを 得 ない 4 複 雑 な 少 年 事 件 の 無 理 な 簡 素 化 単 純 化 家 裁 移 送 が 問 題 となる 事 件 については 保 護 処 分 相 当 性 の 判 断 にあたり 少 年 の 実 像 や 事 件 の 実 相 について 裁 判 員 にも 少 年 の 資 質 や 生 育 歴 非 行 発 生 の 機 序 等 を 踏 まえた 十 分 な 理 解 を 得 る 必 要 がある また 家 裁 移 送 が 争 点 とならない 事 件 であって

も 科 学 的 専 門 知 識 の 活 用 のもとで 少 年 の 要 保 護 性 が 理 解 されたうえでの 審 理 判 決 がなされねばならないというのが 少 年 法 の 求 めるところである ところが 実 際 の 裁 判 員 裁 判 においては 少 年 が 被 告 人 であっても 審 理 期 間 審 理 時 間 が 成 人 被 告 人 の 同 種 事 件 の 場 合 と 同 程 度 かあるいはそれを 若 干 増 した 程 度 し か 確 保 されておらず また 審 理 の 運 営 においても 裁 判 員 に 分 かりやすい 充 実 し た 審 理 が 過 度 に 強 調 される 結 果 本 来 であれば 相 当 に 複 雑 な 少 年 像 や 事 件 の 実 相 を 無 理 に 簡 素 化 単 純 化 した 形 で 主 張 立 証 することを 余 儀 なくされることが 多 い 具 体 的 には 検 察 官 は 事 件 の 悪 質 性 少 年 の 凶 悪 性 結 果 の 重 大 性 や 被 害 者 側 の 峻 烈 な 処 罰 感 情 一 般 予 防 の 見 地 等 にひたすら 焦 点 を 当 てつつ 少 年 の 資 質 や 生 育 歴 については それがいかに 不 遇 なものであっても 重 大 な 犯 罪 を 正 当 化 するものではな いことを 強 調 するという これまで 以 上 に 偏 頗 な 訴 訟 活 動 になりやすい 一 方 で 弁 護 人 は 被 告 人 少 年 の 固 有 の 資 質 や 複 雑 な 生 育 歴 とそれが 事 件 発 生 に 結 び ついた 理 由 のみならず 少 年 法 の 理 念 や 独 自 の 諸 制 度 の 趣 旨 を 含 めた 少 年 非 行 に 対 す る 司 法 的 対 応 のあるべき 姿 被 害 の 重 大 性 や 被 害 者 側 の 処 罰 感 情 を 当 該 裁 判 において どう 位 置 づけるか 刑 事 処 分 と 保 護 処 分 の 相 違 (すなわち 少 年 刑 務 所 と 少 年 院 との 処 遇 の 違 い)とそれが 当 該 被 告 人 についての 処 分 選 択 にどのように 関 係 するかなどの 諸 点 も 含 めて 多 面 的 多 層 的 な 主 張 立 証 をなすという 負 担 がある しかし 裁 判 員 の 負 担 軽 減 の 必 要 に 由 来 する 審 理 時 間 の 制 限 や 充 実 した 審 理 の 名 の 下 に 裁 判 員 に 理 解 しやすい 主 張 立 証 を 裁 判 所 が 求 める 結 果 弁 護 人 としては 主 張 立 証 すべき 多 く の 要 素 の 一 部 については 不 本 意 ながら 立 証 活 動 の 比 重 を 下 げざるを 得 ず また 主 張 立 証 の 中 核 たる 少 年 像 や 事 件 の 実 相 についても 本 来 相 当 に 複 雑 な 内 実 を 有 するもの を 無 理 に 簡 素 化 単 純 化 した 形 で 訴 訟 活 動 をなすことを 余 儀 なくされるのである しかし そもそも 複 雑 な 内 実 をもった 事 案 が 無 理 に 単 純 化 した 形 で 訴 訟 上 取 り 扱 われる 結 果 となることは 真 実 の 解 明 や 被 告 人 の 防 御 権 の 保 障 適 正 な 処 罰 処 分 の 選 択 といった 刑 事 訴 訟 制 度 の 目 的 や 本 質 を 揺 るがす 危 険 をはらむものであるし も ちろん そのような 事 態 は 裁 判 員 制 度 がそもそも 予 定 しているところではないであろ う このような 傾 向 は 平 成 19 年 度 司 法 研 究 難 解 な 法 律 概 念 と 裁 判 員 裁 判 ( 司 法 研 究 報 告 書 第 61 輯 第 1 号 以 下 司 法 研 究 という )において 少 年 法 55 条 の 保 護 処 分 相 当 性 の 解 釈 についての 研 究 結 果 が 発 表 されたことによっても 拍 車 がかか っているものと 考 えられる すなわち 司 法 研 究 は 少 年 法 20 条 2 項 所 定 のいわゆる

原 則 検 察 官 送 致 事 件 の 場 合 は 保 護 処 分 をなすためには その 事 案 内 容 において 少 年 についての 凶 悪 性 悪 質 性 を 減 じて 保 護 処 分 を 許 容 し 得 るような 特 段 の 事 情 が あることが 必 要 であるとし かつ 原 則 通 り 検 察 官 送 致 された 事 件 にあっては 基 本 的 には 家 庭 裁 判 所 の 判 断 を 尊 重 した 上 で 特 段 の 事 情 に 関 する 判 断 要 素 が 変 化 した 場 合 等 において 同 法 55 条 の 保 護 処 分 相 当 性 が 認 められるにすぎない との 考 え を 打 ち 出 した さらに 特 段 の 事 情 の 判 断 要 素 は 狭 義 の 犯 情 を 中 心 とした 量 刑 事 情 と 大 差 ないものと 考 えられる とし 裁 判 員 裁 判 においても 特 段 の 事 情 の 有 無 の 判 断 においては 原 則 として 通 常 の 量 刑 における 考 慮 要 素 と 同 様 の 要 素 をも とに 判 断 すれば 足 りる と 述 べた しかし このように 特 段 の 事 情 の 判 断 要 素 を 狭 義 の 犯 情 を 中 心 とする 一 般 の 量 刑 事 情 に 限 定 する 司 法 研 究 の 見 解 は 1 少 年 法 20 条 2 項 但 書 にそれ 以 外 の 事 情 も 掲 げられていること 2 少 年 の 保 護 許 容 性 については 何 ら 専 門 性 をもつわけではない 家 庭 裁 判 所 の 判 断 を 原 則 として 尊 重 すべきという 点 に 根 拠 がないこと 等 からして 不 当 である 実 例 調 査 からは 少 年 を 被 告 人 とする 裁 判 員 裁 判 事 件 の 担 当 裁 判 官 は 最 高 裁 判 所 の 事 実 上 の 公 式 見 解 といえる 司 法 研 究 の 見 解 に 影 響 を 受 けて 訴 訟 運 営 をなしている ことが 多 いように 思 われるが これは 審 理 の 中 で 弁 護 人 が 少 年 の 資 質 や 生 育 歴 等 の 要 保 護 性 を 主 張 立 証 する 余 地 を 大 きく 狭 める 結 果 を 生 むことになり 少 年 法 の 定 める 家 裁 移 送 制 度 の 趣 旨 を 軽 んじるものとして 問 題 が 大 きい 5 刑 事 処 分 か 保 護 処 分 かの 選 択 にあたっての 前 提 知 識 の 欠 如 家 裁 移 送 の 可 否 が 問 題 となる 事 件 において 裁 判 体 が 刑 罰 か 保 護 処 分 かの 選 択 や 刑 の 量 定 を 適 切 に 行 うには 前 提 として 少 年 刑 務 所 と 少 年 院 においていかなる 処 遇 が 実 施 され どのような 効 果 をあげているのかの 理 解 が 当 然 に 必 要 である しかし 一 般 国 民 から 選 ばれる 裁 判 員 が 矯 正 施 設 での 処 遇 の 実 情 についての 正 確 かつ 十 分 な 知 識 を 有 していることは 稀 であり 少 年 を 被 告 人 とする 裁 判 員 裁 判 の 実 施 にあたっては その 知 識 不 足 を 補 充 する 適 切 な 手 段 が 講 じられねばならない 事 件 を 審 理 する 裁 判 所 あるいは 当 該 裁 判 体 を 構 成 する 裁 判 官 が 裁 判 員 に 対 して 処 遇 の 理 念 と 実 情 を 具 体 的 に 説 明 することがまず 期 待 されるが 実 際 の 事 案 では 前 記 の 少 年 法 の 理 念 等 と 同 様 裁 判 官 が 裁 判 員 に 対 し 審 理 の 開 始 前 や 評 議 等 の 必 要 な 場 面 において ひととおりの 形 式 的 説 明 はなしているものの その 程 度 の 説 明 で 裁 判 員 が 十 分 な 知 識 を 得 られているとは 到 底 考 え 難 い

実 例 においては 弁 護 人 が 各 種 の 書 証 や 処 遇 の 実 情 に 詳 しい 証 人 の 取 調 べを 求 めることにより 少 年 刑 務 所 と 少 年 院 における 処 遇 の 実 情 やその 異 同 を 明 らかにしよ うと 苦 闘 しているが 検 察 側 が 同 意 しないために 必 要 な 書 証 が 証 拠 として 採 用 されな い 採 用 された 書 証 も 単 に 朗 読 するだけでは 裁 判 員 に 実 感 をもって 施 設 ごとの 処 遇 の 内 容 や 異 同 が 正 確 な 知 識 として 理 解 してもらいにくい 多 くの 事 案 で 処 遇 の 実 情 に 関 する 専 門 家 証 人 の 取 調 べが 採 用 されないなどの 困 難 に 直 面 している 検 察 官 も 刑 事 処 分 が 少 年 の 更 生 を 必 ずしも 後 退 させるわけではないとの 主 張 を 支 えるために 少 年 刑 務 所 での 処 遇 に 関 する 通 達 等 の 内 容 を 報 告 することによって 少 年 刑 務 所 でも 個 別 処 遇 や 矯 正 教 育 の 強 化 が 推 進 されていることを 強 調 して 立 証 するこ とが 多 いが そのために もともと 個 別 の 処 遇 や 教 育 を 特 色 とする 少 年 院 との 相 違 が 裁 判 員 にいっそう 理 解 しにくくなっている 例 が 散 見 される それゆえに 現 状 の 裁 判 員 裁 判 において 少 年 に 対 する 処 分 の 内 容 すなわち 処 遇 の 実 情 が 裁 判 員 に 正 確 に 理 解 されたうえで 審 理 がなされているとは 評 価 できない そもそも これまでの 職 業 裁 判 官 による 裁 判 ( 家 庭 裁 判 所 での 審 判 も 含 む)におい ても それに 関 わる 裁 判 官 検 察 官 弁 護 士 に 判 決 や 審 判 後 の 被 告 人 や 少 年 の 処 遇 やその 効 果 について 十 全 の 前 提 知 識 があったのかについても 疑 問 が 大 きい 裁 判 官 をはじめとする 法 曹 三 者 は 処 分 の 実 際 に 関 して 当 然 に 知 識 を 有 している との 半 ば 架 空 の 大 前 提 のもとに 刑 事 訴 訟 手 続 は 運 営 されてきたともいえるわけであるが 裁 判 員 制 度 が 実 施 されることにより 処 遇 の 実 態 に 対 しこれまで 目 を 向 けてこなかった という 日 本 の 刑 事 司 法 の 後 進 性 が 露 呈 することとなっている 6 少 年 の 身 体 拘 束 の 長 期 化 裁 判 員 裁 判 の 対 象 となった 事 件 は 必 ず 公 判 前 整 理 手 続 に 付 される( 裁 判 員 法 49 条 ) 裁 判 員 制 度 の 開 始 後 これまで 以 上 に 公 判 前 整 理 手 続 が 長 引 き 審 理 開 始 まで 時 間 が かかりすぎていることが 問 題 点 として 指 摘 されていた( 平 成 22 年 5 月 2 日 竹 﨑 博 充 最 高 裁 長 官 記 者 会 見 発 言 等 ) 少 年 を 被 告 人 とする 事 件 の 場 合 も 一 部 の 事 件 では 起 訴 から 審 理 開 始 まで1 年 数 か 月 もの 期 間 を 要 していることが 今 回 の 調 査 で 明 らか になった 起 訴 から 審 理 開 始 までどの 程 度 の 期 間 を 要 したかは 事 案 の 内 容 や 被 告 人 の 年 齢 等 によりさまざまであり 少 年 を 被 告 人 とする 事 件 全 般 が 長 期 化 しているわけではない が 少 年 の 資 質 に 特 徴 的 な 面 があったり 事 案 が 複 雑 であったりした 場 合 に 事 案 の

解 明 や 少 年 の 防 御 を 充 実 させようとすると 公 判 前 整 理 手 続 が 長 期 化 し その 結 果 公 判 開 始 までの 少 年 の 身 体 拘 束 期 間 も 長 期 化 する 傾 向 がある 基 本 的 には 身 体 拘 束 期 間 が 長 期 化 しないよう 積 極 的 に 保 釈 がなされるべきである と 考 えられるが 調 査 した 事 件 のうち 保 釈 がなされているものはごく 少 数 にとどま っている しかし 保 釈 を 許 容 しうる 事 案 はほかにもあると 思 われる ただ 少 年 事 件 の 場 合 親 からの 虐 待 があるなど 適 切 な 監 護 者 がいない 場 合 や 被 告 人 少 年 の 心 身 や 行 動 が 不 安 定 で 再 非 行 や 自 傷 のおそれ 公 判 出 廷 の 確 保 の 不 安 がある 場 合 等 性 質 上 保 釈 が 難 しい 事 件 もあり 身 体 拘 束 が 長 期 化 することがやむを 得 ない 場 合 もあり うる 現 在 の 実 務 の 運 用 においては 少 年 の 未 決 勾 留 場 所 は 例 外 なく 拘 置 所 であるが もっ ぱら 成 人 の 被 告 人 の 未 決 勾 留 場 所 である 拘 置 所 の 環 境 は 少 年 にとって 良 好 なもので はなく 拘 置 所 で 長 期 の 身 体 拘 束 がなされることにより 精 神 衛 生 の 悪 化 や 反 省 や 内 省 の 停 滞 裁 判 への 主 体 的 参 加 意 欲 の 低 下 等 の 悪 影 響 が 生 じる 例 があることが 報 告 されている それは 充 実 した 裁 判 員 裁 判 の 実 現 にとってもマイナスの 結 果 を 招 くもの であろう それのみならず その 間 少 年 に 対 し 改 善 更 生 に 必 要 な 教 育 的 な 働 きかけが 全 くさ れないため その 更 生 を 阻 害 しかねない 重 大 な 罪 を 犯 した 少 年 とはいえ 教 育 的 働 きかけがあれば 更 生 が 一 定 程 度 進 むはずのところそれがなされず 可 塑 性 豊 かな10 代 後 半 の 貴 重 な 時 間 を 空 費 させることは 少 年 の 健 全 育 成 という 少 年 法 の 理 念 にもか なうものではない 1 家 庭 裁 判 所 で 充 実 した 社 会 調 査 が 行 われ かつその 成 果 の 十 分 な 取 調 方 法 が 確 立 すれば 公 判 前 整 理 手 続 段 階 での 鑑 定 が 不 要 になり 準 備 期 間 の 短 縮 を 図 ることがで きる 場 合 も 出 てくるであろうし 2 裁 判 所 において 裁 判 員 に 対 する 少 年 法 の 理 念 や 独 自 の 制 度 処 遇 の 実 情 等 を 教 示 する 充 実 した 手 続 が 確 立 定 着 すれば 審 理 計 画 の 定 立 が 円 滑 迅 速 に 進 むことも 期 待 できるし 3 家 裁 移 送 制 度 に 関 する 解 釈 論 等 少 年 法 独 自 の 問 題 点 も 事 案 の 蓄 積 や 研 究 の 進 捗 により 実 務 上 一 定 のスタンダードが 確 立 す れば 公 判 前 整 理 手 続 において 無 用 な 論 争 に 時 間 を 費 やすことも 減 るであろう それ らの 運 用 改 善 や 訴 訟 関 係 人 の 意 識 向 上 により できる 限 り 準 備 期 間 の 短 縮 が 実 現 され ることが 望 まれる ただ それが 実 現 したとしても 起 訴 後 審 理 開 始 まで 数 か 月 の 準 備 期 間 がかかるこ とは 避 けられないのであり その 間 の 少 年 の 未 決 勾 留 場 所 や 処 遇 のあり 方 については

見 直 しの 必 要 があることは 否 めない 第 3 少 年 法 の 理 念 に 則 った 適 正 な 裁 判 を 受 ける 権 利 の 保 障 少 年 には 少 年 法 に 則 った 裁 判 を 受 ける 権 利 があり 少 年 法 の 理 念 はもちろんのこと 家 裁 移 送 制 度 少 年 の 要 保 護 性 に 関 しての 専 門 的 知 識 を 活 用 した 審 理 不 定 期 刑 や 刑 の 緩 和 等 の 少 年 法 独 自 の 諸 制 度 や 少 年 刑 務 所 や 少 年 院 での 処 遇 の 実 情 やその 相 違 点 等 を 裁 判 員 が 十 分 に 理 解 していることは 少 年 を 被 告 人 とする 裁 判 員 裁 判 を 適 正 に 実 施 するための 当 然 の 前 提 条 件 として 法 が 要 求 しているところと 解 される 第 2で 挙 げた 各 種 の 問 題 点 のうち 2と5で 述 べた 点 ( 少 年 法 の 理 念 等 や 処 遇 の 実 情 についての 裁 判 員 の 理 解 不 足 )は 要 するに 少 年 を 被 告 人 とする 刑 事 訴 訟 事 件 に 関 する 上 記 のような 諸 制 度 に 関 する 裁 判 員 の 理 解 ( 以 下 制 度 理 解 という )の 問 題 である 4の 点 ( 複 雑 な 事 件 を 無 理 に 単 純 化 することが 強 いられること)も 裁 判 員 に 十 分 な 制 度 理 解 があれば 制 度 や 前 提 事 実 に 関 する 弁 護 検 察 双 方 の 主 張 立 証 の 負 担 が 減 り 複 雑 な 事 件 の 実 相 や 少 年 像 の 解 明 や 把 握 のための 立 証 活 動 に 費 やす 時 間 が 確 保 し やすくなるという 点 で 裁 判 員 の 制 度 理 解 の 問 題 に 密 接 に 関 係 する 6の 点 ( 身 体 拘 束 の 長 期 化 の 弊 害 )についても 裁 判 員 の 制 度 理 解 を 支 える 仕 組 み が 確 立 すれば 審 理 準 備 期 間 が 短 縮 できるのは 前 述 のとおりである そのように 考 えると 裁 判 員 の 制 度 理 解 の 確 保 が 現 状 の 問 題 点 の 中 核 の 一 つである といえる そして 裁 判 員 裁 判 を 実 施 する 裁 判 所 や 当 該 事 件 で 裁 判 体 を 構 成 する 裁 判 官 には 裁 判 員 のそのような 理 解 を 確 保 する 責 務 がある しかし 現 状 ではかかる 責 務 が 十 分 に 果 たされておらず その 点 で 少 年 法 に 則 っ た 適 正 な 裁 判 を 受 ける 権 利 が 少 年 に 対 して 実 質 的 に 保 障 されているといえるのか 疑 問 が 大 きい また 第 2の3の 点 ( 社 会 記 録 の 取 調 べの 困 難 )は 被 告 人 である 少 年 の 要 保 護 性 の 立 証 に 大 きな 障 害 が 生 じていることを 示 しているが 特 に 家 裁 移 送 の 可 否 が 争 点 と なる 事 件 で 弁 護 人 による 要 保 護 性 の 立 証 手 段 が 大 きく 制 約 されるということは 少 年 法 50 条 9 条 刑 事 訴 訟 規 則 277 条 が 求 める 審 理 における 科 学 的 専 門 知 識 の 活 用 という 規 定 に 反 するだけでなく 家 裁 移 送 制 度 を 定 める 少 年 法 55 条 を 死 文 化 させ ひいては 少 年 法 1 条 の 理 念 をも 没 却 するという 本 質 的 な 問 題 性 を 有 する

よって 少 年 の 要 保 護 性 の 立 証 手 段 を 事 実 上 大 きく 制 約 するような 訴 訟 運 営 は や はり 少 年 法 に 則 った 適 正 な 裁 判 を 受 ける 権 利 の 侵 害 を 生 みかねないと 考 えられる 第 4 提 言 1 はじめに 当 連 合 会 は 第 2で 述 べた 問 題 点 の 認 識 のもと 第 3で 述 べた 少 年 法 の 理 念 に 則 っ た 適 正 な 裁 判 を 受 ける 権 利 の 保 障 という 観 点 から 次 のような 提 言 を 行 う 次 第 である われわれは この 提 言 の 内 容 が 非 行 少 年 の 更 生 という 点 でこれまで 素 晴 らしい 成 果 をあげてきた 日 本 の 少 年 司 法 制 度 の 良 さを 守 るだけでなく 裁 判 員 裁 判 制 度 全 体 を レベルアップし 日 本 の 刑 事 司 法 をより 発 展 させるためにも 役 立 つものであると 信 ず る なお この 提 言 に 至 るまでの 議 論 においては 少 年 を 被 告 人 とする 事 件 は 裁 判 員 裁 判 の 対 象 から 除 外 すべきであるという 意 見 も 相 当 有 力 であった しかし 現 時 点 では 制 度 運 用 の 面 でも 弁 護 実 践 の 面 でも 少 年 を 被 告 人 とする 実 際 の 裁 判 員 裁 判 において 試 行 錯 誤 や 創 意 工 夫 が 尽 くされて 限 界 が 見 えたとまではまだいえないという 評 価 や また 少 年 事 件 において 国 民 の 健 全 な 社 会 常 識 の 司 法 の 場 への 導 入 という 裁 判 員 制 度 の 趣 旨 が 少 年 法 の 理 念 にも 沿 う 形 で 実 現 されることこそ 期 待 したいという 願 い から 今 回 の 提 言 においては 除 外 論 を 主 張 することはせず 運 用 改 善 や 新 たな 制 度 的 手 当 を 求 める 方 向 での 提 言 を 行 うこととしたことを 付 言 しておく 2 事 件 審 理 のあり 方 について 決 議 1 関 係 (1) 裁 判 員 裁 判 事 件 を 担 当 する 裁 判 官 は 裁 判 員 が 教 育 優 先 主 義 をはじめとする 少 年 法 の 理 念 について 十 分 理 解 できるよう 適 切 な 説 明 を 行 い 裁 判 員 に 少 年 法 の 理 念 を 尊 重 させるべきである 裁 判 員 といえども 法 に 則 った 裁 判 をなすことが 当 然 に 求 められる のであるから 少 年 法 を 理 解 せず その 理 念 を 尊 重 して 裁 判 手 続 に 参 加 することがで きない 裁 判 員 がいてはならない また 裁 判 官 は 家 裁 移 送 に 関 する 少 年 法 55 条 の 解 釈 不 定 期 刑 や 刑 の 緩 和 等 少 年 法 独 自 の 制 度 や 少 年 院 及 び 少 年 刑 務 所 における 処 遇 の 実 情 とその 異 同 を 裁 判 員 に 丁 寧 かつ 適 切 に 説 明 するべきである 決 議 1(1) (2) 特 に 処 遇 の 実 情 については 裁 判 官 の 説 明 のみでは 裁 判 員 が 実 感 をもって 理 解 することは 困 難 である よって 裁 判 所 ないし 裁 判 官 は 必 要 に 応 じて 裁 判 員 の 処 遇 の 実 情 についての 理

解 を 深 めるため 公 判 期 日 前 には 裁 判 員 による 少 年 院 や 少 年 刑 務 所 への 見 学 を 実 施 するべきである また 見 学 訪 問 によらない 場 合 でも 処 遇 の 実 情 や 異 同 を 具 体 的 に 解 説 する 映 像 資 料 があれば それを 視 聴 した 裁 判 員 の 理 解 は 大 きく 促 進 されるものと 考 えられるから 最 高 裁 判 所 法 務 省 及 び 日 本 弁 護 士 連 合 会 は 裁 判 員 が 少 年 院 及 び 少 年 刑 務 所 におけ る 処 遇 の 実 情 やその 異 同 をよく 理 解 できるよう 共 同 で 映 像 資 料 を 作 成 し 裁 判 官 は 裁 判 員 にそれを 視 聴 させることが 是 非 実 行 されるべきである 決 議 1(1) なお 現 状 の 少 年 を 被 告 人 とする 裁 判 員 裁 判 の 多 くでは 裁 判 員 は 公 判 初 日 の 当 日 の 午 前 に 選 任 手 続 によって 選 任 されて 午 後 にいきなり 公 判 に 臨 むか 公 判 初 日 の 前 日 に 選 任 されて 翌 日 午 前 からの 公 判 に 臨 むといったスケジュールで 行 われている そ のようなスケジュールでは 上 記 のような 裁 判 員 に 対 する 十 分 な 制 度 説 明 や 少 年 法 の 理 念 の 尊 重 の 重 要 性 の 教 示 処 遇 の 実 情 についての 学 習 等 の 時 間 は 到 底 確 保 できな い それらの 実 行 に 必 要 な 時 間 を 確 保 するためには 遅 くとも 公 判 期 日 の 数 日 前 に 裁 判 員 選 任 手 続 を 実 施 すべきであるということも 付 言 しておきたい (3) 審 理 においては 要 保 護 性 その 他 について 充 実 した 情 報 量 を 有 する 社 会 記 録 を 十 分 に 取 り 調 べることは 不 可 欠 であるから 裁 判 官 は 社 会 記 録 を 家 庭 裁 判 所 から 全 部 取 り 寄 せたうえで 調 査 票 や 鑑 別 結 果 通 知 書 については 少 年 及 びその 関 係 者 のプライ バシーや 少 年 の 情 操 保 護 に 配 慮 しつつ 文 書 全 体 を 証 拠 として 取 り 調 べるべきである その 具 体 的 方 法 として 例 えば 公 判 においては 要 旨 の 告 知 を 行 い 必 要 に 応 じて 裁 判 員 及 び 裁 判 官 がそれを 読 み 込 む 時 間 を 確 保 するという 方 法 が 考 えられる さらには 専 門 家 ではない 裁 判 員 が 要 旨 の 告 知 を 聴 取 するのみあるいは 記 録 の 読 み 込 みのみで 十 分 に 社 会 記 録 の 内 容 を 理 解 することが 困 難 な 場 合 も 考 えられるため 少 年 法 50 条 刑 事 訴 訟 規 則 277 条 の 趣 旨 を 十 分 に 尊 重 し 事 案 の 解 明 のうえで 必 要 であれば 社 会 記 録 の 取 調 べと 合 わせて あるいはそれに 代 えて 家 庭 裁 判 所 調 査 官 や 少 年 鑑 別 所 鑑 別 技 官 の 尋 問 が 実 施 されるべきである 決 議 1(2) (4) 専 門 的 知 見 を 活 用 した 要 保 護 性 の 立 証 方 法 は 必 ずしも 社 会 記 録 の 取 調 べや 調 査 官 等 の 尋 問 に 限 られるものではなく 特 に 社 会 記 録 の 内 容 が 不 十 分 であるときには 精 神 科 医 等 の 専 門 家 の 意 見 を 求 めるのが 相 当 な 事 案 もあり 実 務 的 には 鑑 定 という 方 法 も 有 益 な 場 合 が 少 なくない よって 裁 判 官 は 少 年 の 要 保 護 性 の 判 断 に 必 要 がある 事 案 においては 少 年 の 資 質 や 生 育 歴 等 に 関 する 鑑 定 を 積 極 的 に 採 用 すべきである 決 議 1(2)

(5) 現 状 の 少 年 被 告 人 の 裁 判 員 裁 判 は 成 人 の 場 合 と 同 様 基 本 的 に 連 日 開 廷 で 進 めら れ 午 前 午 後 とも 公 判 が 開 かれることも 多 く 少 年 にとって 心 身 の 負 担 は 極 めて 重 い 少 年 は 合 計 9 名 の 裁 判 官 及 び 裁 判 員 をはじめ 多 数 の 訴 訟 関 係 人 や 傍 聴 人 に 注 視 され る 威 圧 的 な 雰 囲 気 の 中 で 事 件 の 重 大 性 や 激 烈 な 被 害 感 情 に 直 面 する ときには 非 常 に 複 雑 で 深 刻 な 自 己 の 生 育 歴 や 資 質 に 言 及 される また 大 きな 緊 張 の 中 で 長 時 間 の 発 言 を 求 められる このような 苛 酷 な 体 験 の 結 果 実 際 審 理 期 間 中 に 少 年 が 体 調 を 崩 して 出 廷 ができなくなった 事 案 も 報 告 されている 事 案 ごとの 判 断 にはなろうが 裁 判 官 は 少 年 の 心 身 や 防 御 にとって 無 理 のない 審 理 時 間 を 設 定 し かつ 裁 判 員 にとって 理 解 しやすく 充 実 した 審 理 を 行 うため 審 理 期 間 を 十 分 確 保 するべきである 決 議 1(3) 3 家 庭 裁 判 所 での 社 会 調 査 について 決 議 2 関 係 (1) 司 法 研 究 の 報 告 の 影 響 のもと 少 年 法 20 条 2 項 に 該 当 するいわゆる 原 則 検 察 官 送 致 事 件 については 少 年 保 護 事 件 を 審 理 する 家 庭 裁 判 所 の 裁 判 官 が 調 査 官 に 対 して 調 査 命 令 を 出 すにあたり 調 査 事 項 を 少 年 法 20 条 2 項 但 書 該 当 性 (すなわち 保 護 処 分 相 当 性 )に 限 定 している 例 が 目 立 っている そのような 調 査 命 令 では 調 査 官 はもっぱら 保 護 許 容 性 の 有 無 に 力 点 を 置 いて 意 見 を 述 べることになりやすく 特 に 事 案 が 重 大 なため 保 護 許 容 性 がない( 保 護 不 適 ) と 調 査 官 が 判 断 する 事 案 においては 少 年 の 保 護 可 能 性 ( 要 保 護 性 )について 十 分 な 調 査 や 記 録 の 作 成 が 行 われないこととなる しかし 家 庭 裁 判 所 が 保 護 処 分 相 当 性 がない( 刑 事 処 分 相 当 )として 検 察 官 送 致 し た 事 件 についても 地 方 裁 判 所 の 裁 判 において 保 護 処 分 相 当 性 があり 家 裁 移 送 が 認 められるのかが 争 点 となることが 多 く その 中 では 当 然 保 護 可 能 性 も 重 要 な 審 理 対 象 となるのであるから 社 会 調 査 において 保 護 可 能 性 の 点 についても 十 分 に 調 査 が 尽 く され 社 会 記 録 に 記 載 されることが 不 可 欠 である よって 家 庭 裁 判 所 の 裁 判 官 は 調 査 官 に 対 する 調 査 命 令 において 調 査 事 項 を 少 年 法 20 条 2 項 但 書 該 当 性 に 限 定 せず 少 年 の 保 護 可 能 性 についても 十 分 に 調 査 させ るべきである (2) 司 法 研 究 は 前 記 のように 少 年 法 55 条 の 保 護 処 分 相 当 性 の 解 釈 において 考 慮 要 素 を 非 常 に 限 定 する 見 解 を 打 ち 出 すとともに 家 庭 裁 判 所 段 階 で 調 査 官 の 作 成 する 調 査 報 告 書 の 調 査 官 の 意 見 には 簡 にして 要 を 得 た 具 体 的 な 記 載 を 行 うことが 求 め られる との 指 摘 をなした

この 司 法 研 究 の 報 告 を 受 け 家 庭 裁 判 所 実 務 においては 検 察 官 送 致 が 想 定 される 事 案 については 調 査 票 の 作 成 にあたり 保 護 処 分 相 当 性 に 欠 けることに 記 載 の 重 点 が 置 かれる 一 方 で 少 年 の 保 護 可 能 性 についての 言 及 が 非 常 に 薄 くなり かつ 記 載 全 般 が 著 しく 簡 略 化 されるという 結 果 が 生 じており ひいては 調 査 官 による 調 査 の 劣 化 が 現 実 に 危 惧 されるとの 指 摘 もある 検 察 官 送 致 がなされる 事 案 でも 少 年 の 保 護 可 能 性 についての 十 分 な 情 報 が 刑 事 裁 判 の 中 で 取 り 上 げられる 必 要 があることは 縷 々 述 べたとおりであり 調 査 官 は 全 件 に おいて 少 年 の 保 護 可 能 性 について 十 分 に 調 査 し 調 査 票 の 作 成 にあたっては 過 度 に 簡 略 化 せず 収 集 した 情 報 は 幅 広 く 記 述 し かつ 意 見 形 成 過 程 が 明 らかになるように 十 分 な 記 載 を 行 うべきである 4 少 年 の 起 訴 後 の 勾 留 について 決 議 3 関 係 (1) 第 2の6で 述 べたとおり 公 判 前 整 理 手 続 が 長 期 化 することも 少 なくないが 少 年 の 勾 留 が 長 引 くこと 自 体 さらには 少 年 の 未 決 勾 留 場 所 が 拘 置 所 であるというこ とは 少 年 の 健 全 育 成 や 情 操 保 護 さらには 充 実 した 裁 判 員 裁 判 の 実 現 という 観 点 か ら 問 題 が 大 きい 起 訴 後 の 少 年 被 告 人 についても 基 本 的 には 成 人 同 様 に 勾 留 はできる 限 り 避 け られるべきであると 考 えられるから 保 釈 が 積 極 的 に 認 められてしかるべきである 今 回 の 実 例 調 査 においては 裁 判 員 裁 判 の 対 象 となった 少 年 被 告 人 についても 保 釈 が 認 められているケースが 確 認 されている もちろん 先 述 のとおり 少 年 事 件 では 保 釈 が 不 適 当 な 事 案 があることは 事 実 である が 仮 に 起 訴 後 も 少 年 の 勾 留 の 継 続 がやむを 得 ない 場 合 であっても 少 年 の 勾 留 場 所 が 少 年 鑑 別 所 であれば 処 分 を 待 つ 少 年 を 収 容 する 専 門 機 関 であることから 施 設 設 備 面 でも 少 年 の 心 身 の 安 定 が 拘 置 所 に 比 べて 格 段 に 図 りやすい また 施 設 職 員 も 身 体 拘 束 中 の 非 行 少 年 の 応 対 やケアに 専 門 的 技 術 を 有 することから 上 記 の 起 訴 後 の 勾 留 場 所 が 拘 置 所 であることの 弊 害 は 相 当 程 度 緩 和 できるものと 考 えられる したがって 起 訴 後 の 少 年 の 勾 留 場 所 は 全 て 少 年 鑑 別 所 とすることを 実 務 上 確 立 すべきである (2) 少 年 に 対 して 未 決 勾 留 の 長 い 期 間 何 らの 教 育 的 働 きかけがなされず 事 実 上 放 置 されることの 問 題 性 も 前 記 のとおりであり 改 善 が 必 要 である もちろん 有 罪 判 決 や 保 護 処 分 が 確 定 するまでは 少 年 にも 無 罪 推 定 は 働 く したが って 未 決 勾 留 期 間 中 に 矯 正 教 育 を 開 始 することは 困 難 な 面 もあるが 少 年 が 希 望 し

同 意 する 場 合 に 勾 留 場 所 である 少 年 鑑 別 所 において 生 活 指 導 や 教 科 指 導 の 範 囲 で の 働 きかけがなされることは 少 年 の 更 生 や 心 身 の 安 定 にとっても 非 常 に 有 効 である このことは 少 年 法 の 理 念 に 沿 うものであり いずれ 刑 事 処 分 または 保 護 処 分 の 終 了 後 にその 少 年 を 再 び 受 け 容 れることとなる 社 会 の 立 場 からしても 歓 迎 すべきところ であろう よって 当 連 合 会 としては 法 務 省 に 対 し 少 年 鑑 別 所 における 起 訴 後 の 勾 留 の 間 その 少 年 が 希 望 する 生 活 指 導 教 科 指 導 等 の 教 育 を 受 ける 機 会 を 確 保 することを 求 め る 5 矯 正 施 設 での 処 遇 について 決 議 4 関 係 (1) 裁 判 員 に 少 年 院 及 び 少 年 刑 務 所 における 処 遇 の 実 情 についての 知 識 がほとんどな いことが 裁 判 員 裁 判 の 実 施 にあたり 深 刻 な 課 題 であることは 繰 り 返 し 述 べた これ は 国 民 一 般 に 対 して 刑 事 処 分 や 保 護 処 分 を 実 施 している 矯 正 施 設 での 処 遇 の 実 情 が 十 分 に 公 開 されていないことにも 由 来 する 実 際 に 裁 判 員 制 度 の 実 施 に 伴 い 裁 判 員 経 験 者 から 判 決 後 の 被 告 人 の 処 遇 につい て 強 い 関 心 が 生 じた 旨 の 意 見 が 多 く 述 べられているところである そのような 点 からして 矯 正 施 設 での 処 遇 の 実 情 の 公 開 の 要 請 は 高 まっていると いえる よって 法 務 省 は 少 年 院 及 び 少 年 刑 務 所 における 処 遇 の 実 情 を 国 民 に 対 し 広 く 公 開 すべきである (2) さらには 矯 正 施 設 での 処 遇 の 実 情 のみならず その 処 遇 の 効 果 についても 具 体 的 に 目 に 見 える 形 で 裁 判 員 に 示 されなければ 裁 判 員 は 刑 罰 か 保 護 処 分 かの 選 択 や 刑 の 量 定 を 適 切 に 行 うことはできないはずである しかし 日 本 の 矯 正 行 政 は 処 遇 効 果 についての 検 証 やその 結 果 の 国 民 への 公 開 の 面 で 非 常 に 立 ち 後 れているといわざるを 得 ない もちろん 元 受 刑 者 や 元 少 年 院 被 収 容 者 のプライバシー 保 護 は 図 られねばならない が そのような 配 慮 をしつつも 処 遇 効 果 について 明 らかにすることが 求 められてい る よって 法 務 省 は 少 年 院 及 び 少 年 刑 務 所 の 処 遇 効 果 について 適 切 な 統 計 を 取 り 科 学 的 な 調 査 を 実 施 し その 結 果 を 公 開 すべきである 6 立 法 提 言 決 議 5 関 係 (1) 前 記 2(3)で 述 べたとおり 現 行 の 刑 事 訴 訟 法 のもとでも 家 庭 裁 判 所 での 社 会 調

査 の 成 果 を 取 り 調 べる 方 法 として 調 査 官 や 鑑 別 技 官 の 尋 問 ( 証 人 尋 問 ないし 鑑 定 人 尋 問 )を 行 うことは 十 分 可 能 であると 解 されるが 尋 問 の 手 続 による 取 調 べが 必 ずし も 唯 一 最 良 の 手 段 というわけではない 尋 問 の 手 続 によらずとも 調 査 官 や 鑑 別 技 官 がその 作 成 した 記 録 を 裁 判 体 に 対 して 分 かり 易 く 説 明 することができれば それが 最 も 合 理 的 な 方 法 であると 考 えられるが 現 行 法 のもとではそのような 制 度 はない そこで 国 は 刑 事 訴 訟 規 則 277 条 を 実 質 化 するため 当 事 者 の 意 見 も 聞 いたう えで 明 らかに 必 要 性 相 当 性 がない 場 合 を 除 いては 社 会 調 査 の 成 果 たる 社 会 記 録 を 公 判 において 取 り 調 べるべきこととし 当 該 社 会 記 録 の 作 成 に 携 わった 調 査 官 や 鑑 別 技 官 をしてその 内 容 を 現 行 の 証 拠 調 べ 手 続 によらず 裁 判 体 に 対 して 説 明 させるこ とができるよう 法 定 すべきである 決 議 5(1) (2) 被 告 人 少 年 の 要 保 護 性 について 十 分 な 情 報 を 取 調 べつつ 目 で 見 て 耳 で 聞 いて 分 かる 審 理 を 実 現 しようとした 場 合 少 年 本 人 の 生 育 歴 等 詳 細 な 情 報 が 公 判 廷 で 明 ら かにされ そのことによって 少 年 を 含 む 関 係 者 のプライバシーが 侵 されたり 少 年 に 知 らせるべきではないような 情 報 までもが 少 年 の 知 るところとなり 少 年 の 情 操 へ の 悪 影 響 が 生 じる それらの 問 題 は 現 行 法 のもとでの 審 理 の 工 夫 のみでは 十 分 には 解 決 できないと 考 えざるを 得 ない そこで 国 は 社 会 記 録 の 取 調 べ 等 少 年 の 要 保 護 性 が 審 理 される 場 面 では 少 年 及 びその 関 係 者 のプライバシー 保 護 や 少 年 の 情 操 保 護 等 への 配 慮 から 必 要 に 応 じ 公 開 の 停 止 や 少 年 の 退 廷 を 可 能 にするよう 法 定 すべきである 決 議 5(2) (3) 裁 判 員 の 制 度 理 解 が 十 分 確 保 されることが 少 年 に 対 し 少 年 法 に 則 った 適 正 な 裁 判 を 受 ける 権 利 を 保 障 する 大 前 提 となることは 前 記 のとおりであるが そのような 裁 判 員 の 制 度 理 解 を 確 保 する 責 務 が 第 一 次 的 には 裁 判 官 にあることは 国 民 にも 司 法 関 係 者 にも 十 分 には 意 識 されていない そこで 国 は 少 年 法 の 理 念 少 年 法 55 条 の 解 釈 不 定 期 刑 や 刑 の 緩 和 少 年 院 と 少 年 刑 務 所 における 処 遇 の 実 情 及 びその 異 同 等 の 少 年 を 被 告 人 とする 事 件 の 審 理 において 理 解 しておくべき 事 項 について 裁 判 官 が 裁 判 員 に 理 解 させるべき 責 務 を 明 確 にするため 裁 判 員 法 に 裁 判 官 の 責 任 として 定 めるべきである 決 議 5(3) 以 上