ニッセイ 基 礎 研 究 所 基 礎 研 レポート 2016-05-26 東 京 のマンション 実 はそこまで 高 くない!? ~ 修 正 年 収 倍 率 による 東 京 マンション 市 場 の 分 析 ~ 金 融 研 究 部 研 究 員 佐 久 間 誠 (03)3512-1860 msakuma@nli-research.co.jp 1 はじめに 東 京 の が 高 騰 している の 東 京 都 の 新 築 1 は 6,779 万 円 と 前 年 比 8.4% 上 昇 した( 図 表 1) ミニバブル 期 のピークである 2008 年 の 5,993 万 円 を 大 幅 に 上 回 る 水 準 まで 上 昇 したことなどから 不 動 産 市 場 の 過 熱 を 懸 念 する 声 もある 図 表 1 東 京 都 の の 推 移 ( / 万 円 ) ( 前 年 比 変 化 率 ) 12,000 60% 11,000 50% 10,000 40% 9,000 30% 8,000 前 年 比 変 化 率 20% 7,000 10% 6,000 0% 5,000-10% 4,000-20% 3,000-30% 出 所 : 不 動 産 経 済 研 究 所 のデータを 基 にニッセイ 基 礎 研 究 所 作 成 その 一 方 で 上 昇 を 後 押 しする 材 料 もある 住 宅 ローン 金 利 の 低 下 だ 代 表 的 な 住 宅 ローン 金 利 であるフラット 35 借 入 金 利 2 を 見 ると 2009 年 前 半 には 3% 程 度 だったが その 後 低 下 を 続 け 2016 年 5 月 には 1.08%と 過 去 最 低 を 更 新 した( 図 表 2) 住 宅 ローン 金 利 の 低 下 が 住 宅 取 得 者 の 負 担 を 和 らげているのは 確 かだ では どのくらい 負 担 軽 減 の 効 果 があったのだろうか また 現 在 の 不 動 産 市 場 をバブルとする 主 張 もあるが ファンダメンタルズと 比 較 して 現 在 の 過 熱 感 は 強 い 1 不 動 産 経 済 研 究 所 首 都 圏 マンション 動 向 の 新 築 を 75 m2 換 算 ( 以 下 新 築 は と 呼 び マ ンション 価 格 は 75 m2 換 算 する) 2 返 済 期 間 21 年 以 上 35 年 以 下 融 資 率 9 割 以 下 の 場 合 の 最 低 金 利 ( 以 下 同 条 件 のものをフラット 35 借 入 金 利 と 呼 ぶ) 1
のだろうか 本 稿 では 代 表 的 なファンダメンタルズ 指 標 の 一 つである 年 収 倍 率 に 住 宅 ローンの 要 素 を 考 慮 した 上 で 東 京 のマンション 市 場 の 分 析 を 行 った 3.5% 図 表 2 フラット 35 借 入 金 利 の 推 移 3.0% 2.5% 2.0% 1.5% 1.0% 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 出 所 : 住 宅 金 融 支 援 機 構 のデータを 基 にニッセイ 基 礎 研 究 所 作 成 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 2016 年 2 年 収 倍 率 と 修 正 年 収 倍 率 の 概 要 1 年 収 倍 率 の 概 要 住 宅 価 格 のファンダメンタルズ 指 標 の 一 つに 年 収 倍 率 がある 下 記 数 式 の 通 り 住 宅 取 得 者 の 年 収 に 対 して 住 宅 価 格 が 何 倍 かを 示 したものである 年 収 倍 率 が 高 いほど 住 宅 が 買 いにくく 住 宅 価 格 の 割 高 感 が 強 いことを 示 す 平 均 住 宅 価 格 年 収 倍 率 = 平 均 年 収 年 収 倍 率 の 長 所 は シンプルでわかりやすいことだ そのため メディアで 取 り 上 げられることも 多 い また 政 府 が 1992 年 の 生 活 大 国 5 ヵ 年 計 画 において 大 都 市 圏 の 年 収 倍 率 を 5 倍 程 度 にする ことを 政 策 目 標 に 掲 げたこともあり 最 も 身 近 なファンダメンタルズ 指 標 の 一 つと 言 える 一 般 に 年 収 倍 率 は 5 倍 以 内 が 適 正 と 言 われることが 多 いが その 水 準 だけを 見 て ファンダメンタ ルズからの 乖 離 をはかれるわけではない 例 えば 東 京 のマンションの 場 合 年 収 倍 率 は 恒 常 的 に 5 倍 を 上 回 るなど 地 域 毎 に 差 がある 従 って 水 準 だけを 見 るのではなく 過 去 の 平 均 やバブルとされ た 状 況 と 時 系 列 で 比 較 することにより 不 動 産 市 場 の 過 熱 感 をはかることが 有 効 である 本 稿 では 東 京 都 の 方 法 に 倣 い 年 収 倍 率 を 算 出 した データ 出 所 は 下 記 の 通 りである 平 均 住 宅 価 格 : 不 動 産 経 済 研 究 所 首 都 圏 マンション 動 向 の 新 築 を 75 m2 換 算 平 均 年 収 : 東 京 都 東 京 都 生 計 分 析 調 査 報 告 の 勤 労 者 世 帯 の 実 収 入 2 修 正 年 収 倍 率 の 概 要 年 収 倍 率 には 住 宅 ローンに 関 する 要 素 が 含 まれていないため 住 宅 ローン 金 利 低 下 の 影 響 を 捕 捉 2
できない 本 稿 では 年 収 倍 率 に 住 宅 ローンの 要 素 を 加 え 修 正 年 収 倍 率 と 呼 ぶことにした 修 正 年 収 倍 率 は 下 記 数 式 の 通 り 住 宅 ローン 借 入 元 本 と 住 宅 ローン 総 利 息 額 の 和 すなわち 住 宅 ローン 総 返 済 額 が 住 宅 取 得 者 の 年 収 に 対 して 何 倍 かを 表 した 指 標 である 住 宅 ローン 総 返 済 額 住 宅 ローン 借 入 元 本 + 住 宅 ローン 総 利 息 額 修 正 年 収 倍 率 = = 平 均 年 収 平 均 年 収 修 正 年 収 倍 率 では 年 収 倍 率 の 長 所 である わかりやすさを 損 ねないことを 重 視 した 従 って 比 較 的 影 響 の 小 さい 住 宅 ローンに 関 する 手 数 料 などの 要 素 は 考 慮 に 入 れていない 住 宅 ローン 総 返 済 額 を 計 算 する 際 の 前 提 は 下 記 の 通 りである 3 返 済 期 間 :30 年 借 入 金 利 :2003 年 9 月 以 前 = 旧 公 庫 融 資 基 準 金 利 2003 年 10 月 以 降 =フラット 35 借 入 金 利 返 済 方 法 : 元 利 均 等 返 済 頭 金 :なし 頭 金 を 考 慮 しないため 住 宅 ローン 借 入 元 本 は 住 宅 価 格 と 等 しくなる 従 って 前 述 の 数 式 は 下 記 の 通 り 置 き 換 えることができる 平 均 住 宅 価 格 + 住 宅 ローン 総 利 息 額 修 正 年 収 倍 率 = 平 均 年 収 なお 前 述 の 前 提 に 基 づけば 修 正 年 収 倍 率 と 年 収 に 対 する 年 間 の 元 利 金 返 済 の 比 率 を 表 す 返 済 比 率 (DTI Debt to Income)の 関 係 は 下 記 数 式 の 通 りとなる 修 正 年 収 倍 率 = 返 済 比 率 返 済 期 間 本 稿 における 返 済 期 間 の 前 提 は 30 年 なので 修 正 年 収 倍 率 が 30 倍 であれば 返 済 比 率 100% 修 正 年 収 倍 率 が 10 倍 であれば 返 済 比 率 33%を 意 味 する 返 済 比 率 30% 前 後 が 無 理 なく 住 宅 購 入 できる 一 つの 水 準 とされることを 勘 案 すれば 修 正 年 収 倍 率 10 倍 程 度 が 住 宅 市 況 を 判 断 する 上 での 目 安 だと 言 える 但 し 年 収 倍 率 と 同 様 修 正 年 収 倍 率 も 地 域 などによって 平 均 的 な 水 準 が 異 なる 従 って 水 準 だ けではなく 過 去 との 比 較 から ファンダメンタルズからの 乖 離 をはかることが 重 要 である 3 借 入 期 間 :30 年 住 宅 金 融 支 援 機 構 民 間 住 宅 ローンの 貸 出 動 向 調 査 によれば 2014 年 度 の 住 宅 ローン 新 規 貸 出 における 貸 出 期 間 は 平 均 25.7 年 で 貸 出 期 間 25 年 超 30 年 以 下 が 44.0%と 最 も 大 きい 従 って 借 入 期 間 を 30 年 とした 借 入 金 利 : 全 期 間 固 定 金 利 (フラット 35 借 入 金 利 旧 公 庫 基 準 金 利 ) 上 記 調 査 によれば 借 入 金 利 は 変 動 金 利 型 が 54.7%と 大 宗 を 占 め 全 期 間 固 定 型 は 5.6%と 比 較 的 少 ない 但 し 効 率 市 場 仮 説 に 基 づ けば 変 動 金 利 型 の 場 合 も 固 定 金 利 型 の 場 合 も 住 宅 ローン 総 利 息 額 は 同 一 となる 従 って データ 取 得 の 制 約 もなく 全 期 間 固 定 型 の 中 でも 知 名 度 が 高 い フラット 35 借 入 金 利 を 採 用 した 返 済 方 法 : 元 利 均 等 返 済 計 算 の 容 易 さから 元 利 均 等 を 選 択 した なお 現 在 の 低 金 利 下 では 当 初 返 済 負 担 の 軽 い 元 利 均 等 返 済 を 選 択 する 利 用 者 が 多 いと 推 察 される 頭 金 :なし わかりやすさを 重 視 するため 頭 金 は 考 慮 に 入 れなかった 3
3 東 京 マンション 市 場 の 年 収 倍 率 と 修 正 年 収 倍 率 の 分 析 東 京 マンション 市 場 のファンダメンタルズを 分 析 するため 最 初 に 東 京 都 の 年 収 倍 率 と 修 正 年 収 倍 率 を 算 出 した 次 に 地 域 毎 の 特 徴 を 把 握 するため 東 京 都 区 部 ( 東 京 23 区 )と 東 京 都 下 ( 多 摩 地 域 ) にわけて 両 倍 率 を 算 出 4 し 分 析 を 行 った 1 東 京 都 の 年 収 倍 率 と 修 正 年 収 倍 率 の 推 移 の 東 京 都 の 年 収 倍 率 は 9.8 倍 と 前 年 比 10.5% 上 昇 した( 図 表 3) 2013 年 にミニバブル 期 の ピークである 2008 年 の 8.6 倍 を 上 回 り 2014 年 は 横 ばいで 推 移 したものの はミニバブル 期 を 大 幅 に 上 回 る 水 準 まで 上 昇 した バブル 期 に 次 ぐ 水 準 まで 上 昇 していることからも 年 収 倍 率 だけ を 見 ると 過 熱 感 が 強 い 状 況 であることがうかがえる 一 方 住 宅 ローンの 要 素 も 考 慮 に 入 れると どのように 見 え 方 が 変 わるのだろうか の 修 正 年 収 倍 率 は 12.3 倍 と 前 年 比 7.8% 上 昇 した 足 元 では 上 昇 しているものの 依 然 としてミニバブル 期 のピークである 2008 年 の 12.8 倍 よりは 低 い また 以 降 の 平 均 である 11.5 倍 からの 乖 離 も 6.2% と 限 られ 最 小 値 である 2012 年 の 10.9 倍 からの 上 昇 率 も 12.9%と 過 度 な 上 昇 を 示 しているわけで はない 過 去 数 年 と 比 較 して 高 い 水 準 にはあるが 一 概 にファンダメンタルズから 逸 脱 していると 判 断 できるほどの 動 きを 示 してはいない 35 倍 図 表 3 東 京 都 の 年 収 倍 率 修 正 年 収 倍 率 の 推 移 30 倍 90 年 27.8 倍 25 倍 20 倍 15 倍 修 正 年 収 倍 率 08 年 12.8 倍 15 年 12.3 倍 10 倍 5 倍 0 倍 89 年 14.1 倍 年 収 倍 率 08 年 8.6 倍 15 年 9.8 倍 ( 注 )グラフ 中 にはバブル 期 とミニバブル 期 のピーク の 各 倍 率 を 記 載 に 両 倍 率 とも 上 昇 した 理 由 は 所 得 が 伸 び 悩 む 中 が 上 昇 したことだ( 図 表 4) は 6,779 万 円 と 前 年 比 8.4% 上 昇 した 一 方 平 均 年 収 は 690 万 円 と 前 年 比 1.9% 減 少 している なお 価 格 上 昇 所 得 減 少 の 傾 向 は に 限 ったことではない は 代 前 半 を 底 に 下 値 を 切 り 上 げているのに 対 して 平 均 年 収 は 代 前 半 をピークに 減 少 を 続 けている 安 倍 首 相 が 経 済 界 に 賃 上 げを 要 請 するなど 官 主 導 の 所 得 向 上 に 向 けた 動 きは 見 られる 但 し 賃 上 げも 停 滞 気 味 で いまだ 底 打 ちと 判 断 できるほど 所 得 は 上 昇 していない 4 東 京 都 区 部 東 京 都 下 の 倍 率 を 算 出 する 際 も 東 京 都 の 平 均 年 収 を 利 用 した 4
図 表 4 東 京 都 の と 平 均 年 収 の 推 移 ( / 万 円 ) ( 平 均 年 収 / 万 円 ) 12,000 1,200 11,000 1,100 10,000 1,000 9,000 平 均 年 収 900 8,000 800 7,000 700 6,000 600 5,000 500 4,000 400 3,000 300 出 所 : 不 動 産 経 済 研 究 所 東 京 都 のデータを 基 にニッセイ 基 礎 研 究 所 作 成 一 方 年 収 倍 率 と 修 正 年 収 倍 率 の 差 は 縮 小 している これは 住 宅 ローン 金 利 低 下 が 住 宅 ローン 総 返 済 額 を 押 し 下 げていることを 示 している その 押 し 下 げ 幅 を 把 握 するために ミニバブル 期 のピー クである 2008 年 からの 住 宅 ローン 総 返 済 額 の 変 動 要 因 を 確 認 する( 図 表 -5) が 787 万 円 上 昇 した 一 方 住 宅 ローン 総 利 息 額 は 1,256 万 円 減 少 5 した その 結 果 住 宅 ローン 総 返 済 額 が 469 万 円 減 少 した 同 期 間 における 住 宅 ローン 金 利 の 低 下 幅 は 約 1.3%である また 住 宅 ローン 総 利 息 額 の 減 少 幅 は の 約 2 割 に 相 当 し 住 宅 ローン 金 利 低 下 が 同 程 度 の 値 引 き 効 果 をもたら したと 見 ることもできる 図 表 5 東 京 都 の 住 宅 ローン 総 返 済 額 の 変 動 要 因 価 格 上 昇 +787 万 円 8,920 万 円 8,450 万 円 2,927 万 円 利 息 減 少 1,671 万 円 -1,256 万 円 住 宅 ローン 総 利 息 額 住 宅 ローン 総 返 済 額 5,993 万 円 6,779 万 円 2008 年 住 宅 ローン 金 利 低 下 による 返 済 負 担 の 軽 減 は に 対 する 住 宅 ローン 総 利 息 額 の 比 率 からも 読 み 取 れる( 図 表 6) 代 は に 対 する 住 宅 ローン 総 利 息 額 は 概 ね 40%か ら 50%の 範 囲 で 推 移 していた その 後 同 比 率 は 低 下 し には 約 25%に 達 した 住 宅 ローン 金 利 低 下 による 購 買 力 の 押 し 上 げの 効 果 は 大 きく これまで を 下 支 えしてきたことが 推 察 される 5 住 宅 ローン 総 利 息 額 の 変 化 には と 住 宅 ローン 金 利 の 両 者 の 変 動 の 影 響 が 含 まれる 5
図 表 6 に 対 する 住 宅 ローン 総 利 息 額 の 比 率 の 推 移 110% 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 東 京 都 の は 過 去 数 年 と 比 較 して 高 い 但 し 住 宅 ローン 金 利 低 下 による 住 宅 取 得 者 の 購 買 力 改 善 を 考 慮 すれば 不 動 産 バブルと 結 論 付 けるのは 時 期 尚 早 だと 言 えるのではないだろう か 2 東 京 都 区 部 の 年 収 倍 率 と 修 正 年 収 倍 率 の 推 移 次 に 東 京 都 区 部 の 年 収 倍 率 と 修 正 年 収 倍 率 を 見 る の 年 収 倍 率 は 10.7 倍 と 前 年 比 15.2% 上 昇 した( 図 表 7) ミニバブル 期 のピークである 2007 年 の 9.3 倍 を 上 回 っており バブル 期 に 次 ぐ 水 準 だ 年 収 倍 率 からは 都 区 部 のマンション 市 場 の 過 熱 感 は 強 いと 言 える 修 正 年 収 倍 率 は 13.4 倍 と 前 年 比 12.4% 上 昇 した 2007 年 の 13.8 倍 をやや 下 回 る 水 準 だ また 2010 年 以 降 の 平 均 である 12.3 倍 からの 乖 離 も 9.2%と 限 定 的 で ファンダメンタルズから 逸 脱 した 動 きと は 言 えない 但 し 同 様 の 上 昇 が 続 けば 2016 年 にはミニバブル 期 の 水 準 を 上 回 ることからも 注 意 すべき 水 準 ではある 図 表 7 東 京 都 区 部 の 年 収 倍 率 修 正 年 収 倍 率 の 推 移 35 倍 91 年 31.2 倍 30 倍 25 倍 20 倍 15 倍 修 正 年 収 倍 率 07 年 13.8 倍 15 年 13.4 倍 10 倍 5 倍 0 倍 89 年 15.8 倍 年 収 倍 率 07 年 9.3 倍 15 年 10.7 倍 ( 注 )グラフ 中 にはバブル 期 とミニバブル 期 のピーク の 各 倍 率 を 記 載 6
の 両 倍 率 の 主 な 上 昇 要 因 は が 上 昇 していることだ のマンション 価 格 は 7,403 万 円 とミニバブル 期 を 大 幅 に 上 回 る 水 準 まで 上 昇 した( 図 表 8) また 上 昇 率 も 前 年 比 13.1%と 2007 年 の 同 19.7% 以 来 の 高 水 準 だ 直 近 のボトムからの 累 積 上 昇 率 は 23.7%(2009 年 から )である ミニバブル 期 の 34.2%(2002 年 から 2007 年 )には 劣 るが 過 去 30 年 でこれほどの 上 昇 を 記 録 したのは バブル 期 とミニバブル 期 のみである 図 表 8 東 京 都 区 部 の の 推 移 ( / 万 円 ) ( 前 年 比 変 化 率 ) 12,000 60% 11,000 50% 10,000 40% 9,000 30% 8,000 前 年 比 変 化 率 20% 7,000 10% 6,000 0% 5,000-10% 4,000-20% 3,000-30% 出 所 : 不 動 産 経 済 研 究 所 のデータを 基 にニッセイ 基 礎 研 究 所 作 成 安 倍 政 権 が 発 足 した 2012 年 末 以 降 東 京 都 区 部 の は 上 昇 を 続 けている その 中 でも 特 に 好 調 なのが 超 高 級 マンションや 投 資 用 マンションである それは 東 京 都 区 部 の 新 築 マンション の 価 格 帯 別 契 約 率 の 変 化 からも 読 み 取 れる( 図 表 9) 図 表 9 東 京 都 区 部 の 新 築 マンションの 価 格 帯 別 契 約 率 95% 90% 85% 80% 2011 年 への 字 型 75% 70% 65% U 字 型 60% 9 千 -1 億 円 8 千 -9 千 万 円 7 千 -8 千 万 円 6 千 -7 千 万 円 5 千 -6 千 万 円 4 千 -5 千 万 円 3 千 -4 千 万 円 3 千 万 円 以 下 出 所 : 不 動 産 経 済 研 究 所 のデータを 基 にニッセイ 基 礎 研 究 所 作 成 1 億 -2 億 円 2 億 円 超 契 約 率 とは 新 築 マンションが 発 売 された その 月 の 内 に 契 約 に 至 った 割 合 を 表 している 契 約 率 が 高 いほどマンション 販 売 が 好 調 なことを 示 し 好 不 調 の 目 安 は 70%とされる 安 倍 政 権 発 足 前 の 2011 7
年 は 中 高 価 格 帯 が 好 調 な への 字 型 だったが は 低 価 格 帯 と 超 高 価 格 帯 が 好 調 な U 字 型 となった 東 京 都 区 部 で 4 千 万 円 以 下 の 新 築 マンションは 1LDK など 比 較 的 小 さな 物 件 が 多 く 投 資 用 として 購 入 されるケースも 多 い 従 って U 字 型 とは 超 高 級 マンションと 投 資 用 マンションが 特 に 好 調 だったと 解 釈 できる この 主 な 要 因 として アベノミクス 相 場 による 資 産 効 果 や 相 続 税 改 正 に 後 押 しされた 節 税 対 策 などが 挙 げられる これらの 要 因 もあり 所 得 が 伸 び 悩 んでいるにもかかわ らず 東 京 都 区 部 の は 上 昇 した 上 昇 を 背 景 に 足 元 では 修 正 年 収 倍 率 も 上 昇 しているが 依 然 としてミニバブル 期 よ りは 低 い 水 準 である ミニバブル 期 のピークである 2007 年 からの 住 宅 ローン 総 返 済 額 の 変 動 要 因 を 見 る( 図 表 -10) は 983 万 円 上 昇 した 一 方 住 宅 ローン 金 利 低 下 を 主 因 に 住 宅 ローン 総 利 息 額 は 1,275 万 円 減 少 し 住 宅 ローン 総 返 済 額 が 293 万 円 減 少 した 同 期 間 における 住 宅 ローン 金 利 の 低 下 幅 は 約 1.3%である ミニバブル 期 と 比 較 すると が 1 千 万 円 近 く 上 昇 したに もかかわらず それ 以 上 に 利 息 負 担 が 減 ったため マンションはむしろ 買 いやすくなっているのであ る 図 表 10 東 京 都 区 部 の 住 宅 ローン 総 返 済 額 の 変 動 要 因 価 格 上 昇 +983 万 円 9,520 万 円 9,227 万 円 3,100 万 円 利 息 減 -1,275 万 円 1,825 万 円 住 宅 ローン 総 利 息 額 住 宅 ローン 総 返 済 額 6,420 万 円 7,403 万 円 2007 年 東 京 都 区 部 の 上 昇 には 目 を 見 張 るものがある 年 収 倍 率 はミニバブル 期 を 優 に 上 回 っていることから 現 在 の 不 動 産 市 場 をバブルとする 主 張 も 理 解 できる 一 方 住 宅 ローン 金 利 低 下 による 実 質 的 な 値 引 き 効 果 も 大 きい 修 正 年 収 倍 率 は 注 意 すべき 水 準 まで 上 昇 しているが ミニバ ブル 期 の 水 準 を 下 回 っていることからも 一 概 にファンダメンタルズから 乖 離 した 動 きと 結 論 付 ける ことはできないだろう 3 東 京 都 下 の 年 収 倍 率 と 修 正 年 収 倍 率 の 推 移 最 後 に 東 京 都 下 の 年 収 倍 率 と 修 正 年 収 倍 率 を 確 認 する の 年 収 倍 率 は 6.8 倍 である( 図 表 11) 前 年 比 2.3% 低 下 したが ミニバブル 期 のピークである 2008 年 の 6.7 倍 を 上 回 る 水 準 だ 東 京 都 区 部 ほどではないが 東 京 都 下 についても 高 値 水 準 にある 年 収 倍 率 からは 過 熱 感 がうかがえるものの 住 宅 ローンを 考 慮 すると 異 なる 様 相 を 呈 する 2015 年 の 修 正 年 収 倍 率 は 8.4 倍 と 前 年 比 4.7% 低 下 した ミニバブル 期 のピークである 9.9 倍 を 明 らかに 8
下 回 る 水 準 だ また 以 降 の 平 均 倍 率 は 8.5 倍 であり は 平 均 水 準 であることがわかる 東 京 都 下 のマンションは 修 正 年 収 倍 率 の 水 準 からもモメンタムからも 概 ねファンダメンタルズに 沿 って 安 定 的 に 推 移 していると 言 える 図 表 11 東 京 都 下 の 年 収 倍 率 修 正 年 収 倍 率 の 推 移 25 倍 90 年 21.0 倍 20 倍 15 倍 10 倍 修 正 年 収 倍 率 08 年 9.9 倍 15 年 8.4 倍 5 倍 0 倍 90 年 10.6 倍 年 収 倍 率 08 年 6.7 倍 15 年 6.8 倍 ( 注 )グラフ 中 にはバブル 期 とミニバブル 期 のピーク の 各 倍 率 を 記 載 東 京 都 下 の 上 昇 は 東 京 都 区 部 と 比 較 して 落 ち 着 いている は 4,658 万 円 と 前 年 比 4.2% 低 下 した( 図 表 12) ミニバブル 期 のピークである 2008 年 の 4,643 万 円 を 上 回 っており 価 格 だけ 見 れば 決 して 割 安 な 水 準 ではない 但 し 直 近 のボトムからの 累 積 上 昇 率 は 12.1%(2011 年 から )と 都 区 部 の 約 半 分 にとどまる またミニバブル 期 のボトムからの 累 積 上 昇 率 31.7%(2002 年 から 2008 年 )と 比 較 しても その 上 昇 は 穏 やかである 図 表 12 東 京 都 下 の の 推 移 ( / 万 円 ) ( 前 年 比 変 化 率 ) 8,000 40% 7,000 6,000 5,000 前 年 比 変 化 率 30% 20% 10% 4,000 0% 3,000-10% 2,000 出 所 : 不 動 産 経 済 研 究 所 のデータを 基 にニッセイ 基 礎 研 究 所 作 成 -20% 所 得 が 伸 び 悩 んでいるにもかかわらず 東 京 都 下 の が 緩 やかに 上 昇 している 要 因 の 一 つとして 建 築 コストの 上 昇 が 挙 げられる( 図 表 13) 建 築 コストは 2012 年 以 降 東 日 本 大 震 災 9
後 の 建 設 技 能 労 働 者 の 不 足 や 円 安 などによる 建 設 資 材 価 格 の 上 昇 などを 背 景 に 上 昇 した 2016 年 に 入 ってからは やや 反 落 気 味 ではあるが 依 然 高 水 準 である もちろん 東 京 都 区 部 のマンションも 同 様 に 建 築 コスト 上 昇 の 影 響 は 受 ける しかし 東 京 都 下 は 東 京 都 区 部 と 比 較 して 地 価 が 安 いため マン ション 価 格 に 占 める 建 築 コストの 割 合 が 大 きく 影 響 を 受 けやすい 図 表 13 東 京 の 集 合 住 宅 の 建 築 費 指 数 推 移 120 RC 造 115 SRC 造 110 105 100 95 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 2011 年 2012 年 2013 年 出 所 : 建 築 物 価 調 査 会 のデータを 基 にニッセイ 基 礎 研 究 所 作 成 2014 年 2016 年 東 京 都 下 の は 上 昇 しているものの 修 正 年 収 倍 率 はミニバブル 期 を 下 回 る ミニバ ブル 期 のピークである 2008 年 からの 住 宅 ローン 総 返 済 額 の 変 動 要 因 を 確 認 する( 図 表 14) マンシ ョン 価 格 は 15 万 円 上 昇 と 概 ね 変 わらない 水 準 である 一 方 住 宅 ローン 金 利 低 下 を 主 因 に 住 宅 ローン 総 利 息 額 が 1,120 万 円 減 少 し 住 宅 ローン 総 返 済 額 は 1,105 万 円 減 少 した 東 京 都 下 もマンション 価 格 はミニバブル 期 の 水 準 まで 上 昇 したが 住 宅 ローン 金 利 低 下 の 影 響 が 大 きく ミニバブル 期 よりマ ンションが 購 入 しやすい 状 況 になっている 図 表 14 東 京 都 下 の 住 宅 ローン 総 返 済 額 の 変 動 要 因 価 格 上 昇 6,910 万 円 +15 万 円 2,268 万 円 5,806 万 円 利 息 減 1,148 万 円 -1,120 万 円 住 宅 ローン 総 利 息 額 住 宅 ローン 総 返 済 額 4,643 万 円 4,658 万 円 2008 年 10
東 京 都 下 の 年 収 倍 率 はミニバブル 期 を 上 回 っていることから 一 見 すると 不 動 産 バブルの 懸 念 が 強 まっているようにも 見 える 一 方 修 正 年 収 倍 率 を 見 ると 東 京 都 下 のマンション 市 場 はファンダメ ンタルズに 沿 って 安 定 的 に 推 移 していることがわかる は 上 昇 しているものの 住 宅 ローン 金 利 低 下 が それ 以 上 に 住 宅 取 得 者 の 購 買 力 を 押 し 上 げた 4 おわりに 本 稿 では 年 収 倍 率 に 住 宅 ローンの 変 数 を 考 慮 した 修 正 年 収 倍 率 を 通 して 東 京 のマンション 市 場 を 分 析 した( 図 表 15) まず 年 収 倍 率 を 見 ると 東 京 のマンション 市 場 は 地 域 を 問 わず 過 熱 感 が 強 い 状 況 であることがわかる 一 方 修 正 年 収 倍 率 からは そこまでの 過 熱 感 はうかがえない 住 宅 ローン 金 利 低 下 がもたらした 実 質 的 な 値 下 げ 効 果 の 影 響 が 大 きいからだ 東 京 都 全 体 で 見 た 場 合 や その 中 でも 東 京 都 区 部 を 見 た 場 合 市 場 で 懸 念 されているほどの 過 熱 感 は 見 受 けられず 一 概 にバブ ルと 判 断 できるほどの 動 きではない 但 し 注 意 すべき 水 準 であることは 確 かだ また 東 京 都 下 の 場 合 は ファンダメンタルズに 沿 った 動 きを 示 しており 過 熱 感 はない 住 宅 取 得 者 の 購 買 力 は 改 善 しているが 留 意 すべき 点 もある 購 買 力 改 善 の 要 因 が 住 宅 取 得 者 の 所 得 向 上 ではなく 住 宅 ローン 金 利 低 下 によるものだということである 住 宅 ローン 金 利 は 既 に 下 限 近 くに 達 しており 低 下 余 地 は 限 られる 金 融 面 からの 押 し 上 げは 今 後 期 待 しづら い 今 後 購 買 力 改 善 の 牽 引 役 を 住 宅 ローン 金 利 低 下 から 所 得 向 上 に 引 き 継 ぐことができるかが 今 後 の 東 京 のマンション 市 場 の 先 行 きを 占 う 上 で 重 要 になるだろう 図 表 15 東 京 マンション 市 場 の 年 収 倍 率 修 正 年 収 倍 率 ミニバブル 期 ピーク 以 降 平 均 東 京 都 年 収 倍 率 8.6 8.8 9.8 修 正 年 収 倍 率 12.8 11.5 12.3 東 京 都 区 部 年 収 倍 率 9.3 9.4 10.7 修 正 年 収 倍 率 13.8 12.3 13.4 東 京 都 下 年 収 倍 率 6.7 6.5 6.8 修 正 年 収 倍 率 9.9 8.5 8.4 11