縄 文 柴 犬 審 査 基 準 JSRC 縄 文 柴 犬 研 究 センター 2009.04 1. 縄 文 柴 犬 とその 保 存 縄 文 柴 犬 の 歴 史 は 日 本 文 化 の 歴 史 に 深 く 関 わり 凡 そ1 万 年 前 の 縄 文 時 代 には 単 なる 家 畜 としての 役 割 だけでなく 家 族 の 一 員 仲 間 として 共 に 移 動 しながら 生 活 をして いたと 推 測 される そして 人 の 葬 送 と 同 じように 犬 を 埋 葬 する 特 別 な 関 係 も 見 られた 長 い 歴 史 の 中 で 日 本 民 族 と 共 存 して 来 たこの 縄 文 柴 犬 は 原 種 的 な 素 朴 さと 野 性 的 な 性 質 の 鋭 さを 今 も 失 ってはいないと 思 われる 原 種 的 な 素 朴 さとは 鋭 い 警 戒 心 がありな がらも 信 頼 を 深 めた 飼 い 主 には 大 変 に 素 直 で 忍 耐 強 いなど 従 順 で 陽 気 で 純 情 である 等 々の 特 性 を 指 す 野 性 的 とは 力 強 く 締 まった 体 躯 構 成 で 弾 力 性 があり 機 敏 で 敏 捷 にし て 勇 猛 な 状 態 を 表 す この 縄 文 柴 犬 は 額 が 広 く 平 らで 額 段 が 浅 く 面 長 であり 鋭 く 輝 いた 眼 良 く 締 まった 口 吻 はバランス 良 く 品 位 ある 顔 貌 が 備 わっていて 野 性 的 な 風 貌 がある こうした 縄 文 柴 犬 との 共 生 においては 何 よりも 信 頼 と 社 会 性 ( 管 理 ) の 統 一 が 求 められるが その 事 は こうした 本 質 の 理 解 と 密 接 に 関 連 している この 地 球 上 には 数 百 種 類 以 上 もの 犬 が 存 在 する しかし 日 本 の 在 来 犬 である 縄 文 柴 犬 は1 万 年 前 からの 原 型 に 近 い 形 態 を 残 していると 考 えられる 極 めて 珍 しい 貴 重 な 一 種 と して 捉 える 必 要 があると 考 えている いかなる 科 学 の 英 知 があったとしても この 地 上 か ら 縄 文 柴 犬 が 一 旦 滅 びたとしたなら それを 甦 らせることは 不 可 能 である ここに 縄 文 柴 犬 の 野 生 動 物 的 な 姿 形 や 共 生 について 研 究 し 保 存 することの 意 味 がある 2. 審 査 基 準 について (はじめに) ここで 言 う 審 査 とは 所 謂 犬 の 見 方 の 事 であり 前 段 に 述 べた 縄 文 柴 犬 とその 保 存 の 観 点 にあり 今 後 の 研 究 成 果 により 補 足 修 正 をする 事 がある 以 下 審 査 について 具 体 的 な 基 準 ( 目 安 )を 示 すが 前 提 には 限 られた 条 件 や 環 境 に 於 い ての 範 囲 から 根 拠 のある 評 価 をする 事 になる その 場 合 審 査 に 携 わった 者 は 協 議 一 致 を 原 則 とする また 審 査 を 担 当 する 者 は この 縄 文 柴 犬 審 査 基 準 を 基 本 として 理 解 を 深 め 研 鑽 しなければならない 1. 顔 貌 について 縄 文 柴 犬 の 顔 貌 は 鋭 く 締 まっていて 面 長 である その 顔 貌 の 額 は 広 く 平 らであり 額 段 (ストップ)は 相 当 に 浅 く 真 っ 直 ぐ 伸 びた 口 吻 は 咀 嚼 筋 が 発 達 し 力 強 さがある 深 く 沈 んだ 眼 球 は 顔 貌 に 品 位 を 与 え 鋭 く 輝 く 力 強 く 立 っている 時 の 耳 は 聴 覚 の 鋭 敏 さを 表 している しかし 近 年 の 食 物 の 変 化 により 咀 嚼 力 や 歯 牙 の 退 化 が 指 摘 され その 関 連 から 顔 貌
にも 影 響 がある 事 を 憂 慮 しなければならない (1) 額 段 縄 文 柴 犬 の 額 段 が 浅 いという 事 は 額 が 広 く 平 らであり 四 肢 や 体 形 の 隅 々にまで 深 く 関 連 する 別 に 言 い 換 えるなら 額 段 と 言 う 部 分 の 捉 え 方 は 他 の 日 本 犬 種 との 違 いを 明 ら かにする 程 重 要 な 問 題 が 含 まれている 事 を 理 解 しなければならない また 縄 文 時 代 の 犬 と 共 通 性 を 持 つ 重 要 な 点 は 額 段 が 浅 い と 言 う 事 である (2) 耳 聴 覚 が 鋭 敏 な 野 性 動 物 は それなりに 耳 が 発 達 している その 共 通 点 として 縄 文 柴 犬 の 耳 は 全 体 的 に 三 角 形 で 通 常 はやや 前 傾 し 内 耳 線 は 直 線 的 で 外 耳 線 はやや 丸 みを 持 ち 厚 みがある 耳 のつけ 根 は 頭 頂 部 よりやや 下 位 にあり 力 強 く 前 傾 し 程 良 く 開 き 聴 覚 の 鋭 さを 表 現 している (3) 眼 眼 球 は 深 く 沈 んでおり 外 眥 が 上 がり 気 味 で 下 瞼 は 直 線 に 近 く 虹 彩 は 生 育 環 境 によっ て 濃 い 淡 いなどの 違 いが 現 れる 全 体 として 鋭 く 力 強 く 輝 き 豊 かな 情 緒 と 沈 着 な 表 情 が 感 じ 取 れて 品 位 がある (4) 口 吻 と 歯 牙 鼻 梁 は 真 っ 直 ぐに 長 く 伸 び 口 吻 は 肉 食 獣 の 特 徴 を 持 つ 歯 牙 の 大 きさと それを 支 える のに 相 応 しく 力 強 く 締 まり 適 度 に 太 く 鋭 く 均 整 的 な 調 和 がある 鼻 鏡 や 唇 の 色 素 ( 濃 い とか 薄 いの 判 断 がある) は 統 一 している また 横 から 見 た 上 唇 は 丸 みがあり 下 唇 は 強 く 締 まって 調 和 があり 大 きな 歯 牙 は 噛 み 合 わせが 正 しい 切 歯 ( 門 歯 ) 犬 歯 前 臼 歯 後 臼 歯 正 常 な 歯 式 は( 略 図 参 照 ) 上 3 1 4 2 下 3 1 4 3 2. 体 型 について 雄 と 雌 の 相 異 点 は 性 器 の 違 いを 除 けばそれほど 明 確 ではないが 一 般 的 には 体 高 対 体 長 は 100 対 110 といわれ 相 対 的 に 雄 に 比 べて 雌 は 胴 長 の 傾 向 にある 体 高 は 雄 で39.5cm 雌 で36.5cmが 平 均 となる 体 躯 構 成 は 人 為 的 でなく 均 整 的 で 素 朴 であり 骨 格 は 正 しく 構 成 されており 胸 や 四 肢 な どの 発 達 した 締 まりなどは 俊 敏 な 動 きと 隙 のない 身 構 えや 力 強 さを 表 現 する ⑴ 首 と 後 頭 部 後 頭 部 は 良 く 発 達 して 軽 く 盛 り 上 がり 頸 椎 は 太 く 締 まって 品 位 ある 逞 しさを 表 現 して いる ⑵ 胸 腹 背 腰 など 正 面 から 見 ると 肩 幅 は 広 がらず 側 面 から 見 ると 胸 は 深 く( 船 底 型 と 言 われる) 首 や 頭 部 と 調 和 している 背 は 真 っ 直 ぐで 腹 は 腰 に 向 かって 贅 肉 がなく 緊 密 で 強 く 締 まり( 乾 燥 している とも
表 現 する 事 がある) 強 壮 で 活 発 な 内 臓 を 備 えている 事 が 推 量 でき(クサビ 形 とも 言 われ る) 均 整 的 で 統 一 感 がある ⑶ 前 肢 と 後 肢 前 肢 は 肩 胛 骨 から 上 腕 骨 にかけて 適 度 に 傾 斜 し 筋 肉 が 良 く 発 達 していて 腕 ( 橈 骨 尺 骨 )は 真 っ 直 ぐであり 前 趾 は 強 健 で 全 体 に 癖 がない 後 肢 は 骨 盤 から 大 腿 骨 にかけて 適 度 に 傾 斜 し 筋 肉 は 充 分 に 発 達 し 前 肢 と 比 較 する とやや 傾 斜 し 矢 状 面 になっている また 後 肢 は 非 常 に 均 整 的 で 飛 節 は 明 確 な 角 度 があ り 強 靱 な 踏 ん 張 りを 示 し 癖 がない ( 体 系 の 図 解 ) ⑷ 生 殖 器 雄 の 生 殖 器 は 陰 嚢 内 に 備 えた2 個 の 精 巣 と 陰 茎 から 成 り 立 って 雌 との 交 尾 の 際 には 正 常 な 位 置 にあること 雌 の 生 殖 器 は 子 宮 卵 巣 膣 及 び 陰 門 から 成 り 立 ち 雄 との 交 尾 では 正 常 な 位 置 にあ ること 3. 尾 について 一 般 的 に 尾 は 背 線 より 低 い 位 置 から 出 ている 太 く 力 強 く 体 型 に 調 和 し 素 直 に 柔 軟 で あり 癖 のない 美 しさがある また 尾 は 体 躯 の 端 部 にあるため その 時 々の 体 調 など 様 々な 影 響 が 現 れ 易 い 尾 の 形 を 表 現 するのは (a) 巻 き 尾 は 尾 の 先 端 が 背 線 に 触 れているか 下 がっている 場 合 を 指 し 二 重 巻 き の 場 合 も 含 まれる (b) 差 し 尾 は 尾 の 先 端 が 背 線 より 離 れている (c) 太 刀 尾 薙 刀 尾 の 場 合 は 尾 の 先 端 が 上 に 向 いている 状 態 などがある 備 考 : 野 生 動 物 的 な 理 解 では 元 々 尾 は 下 がっており 背 線 よりも 低 い 位 置 から 差 し 尾 や 巻 き 尾 となる 4. 被 毛 について 体 全 体 の 毛 色 は 赤 毛 ごま 毛 白 毛 黒 毛 と 呼 んでいる 尾 尻 首 の 各 部 の 毛 はやや 長 く 背 毛 はわずかに 長 く いずれも 開 立 し 皮 膚 に 密 着 しな い 状 態 である 色 彩 は 表 面 が 濃 く 下 に 行 くに 従 って 淡 くなり 根 元 は 殆 ど 白 く 見 える 一 般 的 には 根 白 とか 二 段 毛 色 とか 三 段 毛 色 と 言 われている また 頸 四 肢 胸 腹 尾 の 裏 側 の 毛 は 頭 顔 頸 背 尾 四 肢 の 表 側 の 毛 に 比 べて 薄 く 裏 白 である この 現 象 は 野 性 動 物 とも 共 通 した 色 調 である 特 に 剛 毛 は 太 く 真 っ 直 ぐで 綿 毛 ( 裏 毛 )は 細 く 柔 らかで 密 生 するが 季 節 や 地 域 栄 養 状 態 などの 環 境 と 条 件 により 違 いが 現 れ 易 いことを 理 解 する 必 要 がある ( 補 足 ) 毛 色 の 呼 び 方 について (1) 赤 毛 ( 注 色 彩 的 表 現 では 茶 色 黄 土 色 に 該 当 する ) (a) 濃 い 赤 毛 (b) 薄 い 赤 毛 (c) 明 るい 赤 毛 (2) 黒 毛 (a) 黒 毛 (b) 黒 褐 色 (ブラック タン) (3) 白 毛 (a) 白 毛 (b) ぼけ 白 (よごれ 白 ) 毛
(4) ごま 毛 (a) ごま 毛 (b) 赤 ごま 毛 (c) 黒 ごま 毛 (d) 白 ごま 毛 柴 犬 の 特 徴 の 一 つに 微 妙 で 多 様 な 毛 色 が 挙 げられる しかし 例 えば チョコレート 色 とか 長 毛 のように 外 国 犬 種 や 人 為 的 な 毛 色 毛 質 との 違 いを 理 解 する 必 要 があ る 3. 評 価 について 1. 評 価 区 分 は 次 の 通 り 但 し 後 日 になって 実 績 による 評 価 を 与 える 場 合 もある ⑴. 金 章 犬 現 在 の 到 達 点 として 理 想 の 柴 犬 の 評 価 は 公 開 を 原 則 とする ⑵. 優 秀 犬 章 金 章 犬 に 準 ずるが 個 性 的 な 評 価 をする ⑶. 優 良 犬 章 優 秀 犬 章 に 準 ずる 評 価 である ⑷. 優 級 犬 章 優 良 犬 章 に 準 ずるが 作 出 には 慎 重 を 要 する ⑸. 良 級 犬 章 優 級 に 準 ずるが 当 会 の 標 準 に 合 致 しない 場 合 の 評 価 とする 2. 雄 雌 に 分 け 成 長 度 合 いを 考 慮 して 個 体 の 評 価 をする ⑴. 幼 犬 組 a. 仔 犬 生 後 40 日 以 上 100 日 未 満 b. 幼 犬 100 日 以 上 6 カ 月 未 満 評 価 は 1. 特 別 幼 犬 賞 金 章 犬 が 期 待 出 来 る 場 合 2. 優 秀 幼 犬 賞 金 章 犬 に 準 ずる 展 望 が 期 待 出 来 る 場 合 3. 良 級 幼 犬 賞 柴 犬 として 疑 義 があると 判 断 する 場 合 ⑵. 若 犬 組 生 後 6 カ 月 以 上 1 カ 年 未 満 評 価 は 前 項 1. に 準 ずるが 心 身 共 に 成 長 過 程 にあるので 評 価 は 暫 定 的 とする ⑶. 壮 犬 組 生 後 1 カ 年 以 上 2 年 6 カ 月 未 満 評 価 は 前 項 1. に 準 ずる ⑷. 成 犬 組 生 後 2 年 6 カ 月 以 上 評 価 は 前 項 1. に 準 ずる 3. 補 足 ( 金 章 犬 にしないもの) ⑴ 失 格 とするもの 1 柴 犬 の 特 徴 に 著 しく 欠 けているもの 2 第 三 者 に 迷 惑 を 及 ぼす 病 的 疾 患 ( 伝 染 性 のもの) 3 先 天 性 疾 患 と 判 断 したもの 4 審 査 中 に 失 踪 や 棄 権 をしたもの ⑵ 飼 育 管 理 が 不 充 分 と 思 われもの 1 神 経 的 に 過 敏 性 である (むやみに 噛 みつく 恐 がる 吠 える 逃 げ 回 るなど) 2 病 的 疾 患 にある
( 皮 膚 病 咳 栄 養 失 調 栄 養 過 大 特 に 伝 染 性 のある 疾 患 など) 3 柴 犬 として 表 現 を 弱 めている ( 身 体 の 損 傷 が 激 しい 場 合 など) ⑶ 先 天 的 に 遺 伝 性 と 思 われるもの 1 先 天 的 な 心 身 の 疾 患 又 は 過 敏 性 のもの ⑴ 身 体 の 異 常 疾 患 ( 四 肢 とか 尾 など)のあるもの ⑵ 舌 斑 のあるもの ⑶ 奇 形 と 思 われるもの 2 雄 では 精 巣 ( 睾 丸 )が 片 側 だけのもの 3 噛 み 合 わせが 不 正 なもの 4 正 常 な 歯 式 から 欠 歯 が1 以 上 あるもの 但 し 失 歯 の 場 合 はこの 限 りではない ⑷ 審 査 場 の 態 度 と 状 況 によるもの 1 全 く 尾 を 上 げない 2 特 に 集 中 力 に 欠 ける ( 眼 や 耳 顔 貌 の 状 態 から 判 断 する) 31とは 反 対 に 明 らかに 鈍 感 なもの 4 体 高 や 体 長 など 数 値 による 判 定 で 限 界 を 著 しく 越 えるもの 4. 賞 と 章 表 彰 について 1. 金 章 犬 当 会 の 理 想 とする 犬 に 授 与 2. 縄 文 柴 犬 賞 同 一 展 ( 会 場 )に 限 り 最 高 の 犬 として 授 与 ( 仮 に 金 章 犬 が 出 現 しなくても その 会 場 の 最 高 犬 に 授 与 ) 3. 作 出 奨 励 賞 ( 期 間 は 問 わない) 同 一 犬 を 二 度 以 上 評 価 した 場 合 成 績 の 良 い 方 を 採 用 する ⑴ 種 雄 賞 金 章 犬 を3 頭 以 上 作 出 した 父 犬 優 秀 犬 章 を15 頭 以 上 作 出 した 父 犬 ⑵ 種 雌 賞 金 章 犬 を1 頭 以 上 作 出 した 母 犬 優 秀 犬 章 を5 頭 以 上 作 出 した 母 犬 ⑶ 作 出 奨 励 賞 金 章 犬 を1 頭 以 上 作 出 した 犬 舎 優 秀 犬 章 を5 頭 以 上 作 出 した 犬 舎 5. その 他 1. 評 価 を 担 当 した 審 査 員 は その 最 終 記 録 を 会 報 などに 掲 載 し 公 表 する 2. 理 事 会 では 今 後 の 研 究 や 新 たな 事 実 に 基 づいてこの 内 容 を 訂 正 する 事 がある