外 国 人 生 徒 の 高 校 進 学 に 関 する 教 育 課 題 特 別 入 学 枠 に 着 目 して 海 地 方 ( 愛 知 県 岐 阜 県 三 重 県 静 岡 県 ) に 着 目 し 特 別 入 学 枠 を 利 用 して 外 国 人 生 徒 が 高 校 入 学 する 際 外 国 人 生 徒



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名 古 屋 大 学 大 学 院 教 育 発 達 科 学 研 究 科 教 育 科 学 専 攻 教 育 論 叢 第 54 号 2011 年 外 国 人 生 徒 の 高 校 進 学 に 関 する 教 育 課 題 特 別 入 学 枠 に 着 目 して はじめに 細 川 卓 哉 1990 年 代 以 降 ニューカマー 1) という 外 国 籍 の 子 どもの 教 育 課 題 が 注 目 され 始 めた 当 初 ニュー カマー 生 徒 は 日 本 に 短 期 間 滞 在 するものとみなされていたため 学 校 への 適 応 や 日 本 語 教 育 に 関 する 事 柄 が 当 初 の 課 題 と 認 識 されていた しかし 広 崎 (2007) も 述 べるように 滞 在 が 長 期 化 する につれ 彼 らを 取 り 巻 く 問 題 は 学 力 保 障 や 義 務 教 育 終 了 後 の 進 路 保 障 へと 拡 大 してきたため 近 年 ではキャリア 形 成 に 関 する 研 究 も 見 られるようになった 外 国 人 生 徒 が 日 本 の 公 立 高 校 を 受 験 する 場 合 日 本 語 能 力 の 不 十 分 さなどにより 時 間 延 長 やル ビ 打 ちといった 入 試 特 別 措 置 2) や 入 学 枠 に 外 国 人 生 徒 のための 特 別 枠 を 設 け 選 抜 を 行 う 特 別 入 学 枠 3) といった 措 置 がある 入 試 特 別 措 置 に 関 する 研 究 としては 辻 本 (2003) の 研 究 が 挙 げられる 辻 本 は 兵 庫 県 の 事 例 研 究 を 通 じてこの 制 度 の 有 する 問 題 点 を 明 らかにしている それは 1 高 校 での 本 制 度 の 運 用 指 針 が 一 様 でないこと 2 入 試 特 別 措 置 が 行 われるのは 中 学 での 試 験 時 に 同 様 の 配 慮 があったかどうかが 重 要 であって 日 本 語 能 力 が 基 準 でないこと 3 中 学 校 の 教 員 がこの 制 度 のことを 知 らない 場 合 があることの 3 点 を 挙 げている 一 方 特 別 入 学 枠 につい ては 佐 久 間 (2005) が 日 本 語 についてどのような 体 系 的 学 習 がなされても ニューカマーの 子 ど もたちが 高 校 に 進 学 するのは 容 易 なことではない と 述 べ 高 校 入 試 の 際 に 特 別 入 学 枠 を 多 くの 外 国 人 生 徒 4) が 利 用 できるようにし レベルを 問 わずあらゆる 公 立 高 校 に 特 別 枠 が 設 けられ ることが 望 ましい と 論 じている 外 国 人 児 童 生 徒 への 日 本 語 教 育 については 川 上 ら (2006) など の 研 究 があるが 日 本 語 が 身 につくには 長 い 時 間 を 要 し 人 員 設 備 などの 制 約 もあるため 学 習 のための 日 本 語 能 力 の 定 着 が 難 しいという 側 面 は 否 めない 5) そのため 入 試 に 際 して 必 要 とされ る 語 彙 を 身 につけることは 容 易 なことではないだろう 特 別 入 学 枠 は 入 試 の 形 式 上 必 要 とさ れる 語 彙 が 入 試 特 別 措 置 よりも 少 ないと 予 測 され 来 日 してから 日 の 浅 い 生 徒 でも 高 校 教 育 を 受 けられる 可 能 性 のある 制 度 であるといえることから 進 路 保 障 の 観 点 から 注 目 すべき 制 度 である と 考 える しかし 多 くは 特 別 入 学 枠 の 拡 充 整 備 の 必 要 性 について 述 べる 研 究 が 中 心 であり 特 別 入 学 枠 を 持 つ 高 校 の 適 正 な 配 置 をいかにおこなうかということや 教 育 内 容 利 用 できる 資 格 など の 問 題 点 を 指 摘 するものが 多 い 日 本 が 批 准 した 国 際 的 な 条 約 などと 照 らし 合 わせると 外 国 人 生 徒 がこの 特 別 入 学 枠 によって 普 通 科 以 外 の 学 科 に 進 学 することも 保 障 されるべきであるが 富 山 (2001) や 志 水 ら (2008) で 事 例 として 挙 げられた 高 校 は 普 通 科 などが 主 である そこで 本 ノートでは 1990 年 代 からブラジル 人 を 中 心 にニューカマーが 多 く 居 住 している 6) 東 - -

外 国 人 生 徒 の 高 校 進 学 に 関 する 教 育 課 題 特 別 入 学 枠 に 着 目 して 海 地 方 ( 愛 知 県 岐 阜 県 三 重 県 静 岡 県 ) に 着 目 し 特 別 入 学 枠 を 利 用 して 外 国 人 生 徒 が 高 校 入 学 する 際 外 国 人 生 徒 の 普 通 科 以 外 の 学 科 への 進 学 がどの 程 度 保 障 されているのかについて 検 討 する 7) 1 特 別 入 学 枠 における 課 題 特 別 入 学 枠 は 外 国 人 生 徒 の 高 校 進 学 の 機 会 を 保 障 するための 有 力 な 制 度 として 注 目 されて いる 特 別 入 学 枠 の 運 用 方 式 は 自 治 体 によって 異 なっており 富 山 (2001) は 特 別 入 学 枠 の 運 用 方 式 を1 拠 点 校 方 式 と2 全 校 方 式 に 分 類 している 前 者 は 県 内 全 域 にある 高 校 の 中 から 外 国 人 の 生 徒 を 受 け 入 れる 高 校 をいくつかピックアップして そこに 一 定 数 の 生 徒 が 入 学 でき る 方 式 であり 後 者 は 県 内 全 域 にある 全 ての 高 校 で 数 名 ずつ 生 徒 が 入 学 できる 方 式 である このよ うに 特 別 入 学 枠 の 運 用 方 式 方 針 には 地 域 差 があるが それぞれに 運 用 上 のメリットとデメリッ トがある 富 山 によれば 拠 点 校 方 式 に 関 しては 入 学 後 の 生 徒 に 対 しての 教 育 その 他 の 対 応 の 面 での 不 安 が 少 ない というメリットを 持 っているが 学 校 数 が 少 なく ( 中 略 ) ( 特 別 入 学 枠 の ) 枠 の 外 に 置 かれている 生 徒 が 多 くなる ( 括 弧 内 は 引 用 者 ) というデメリットを 持 っている 全 校 方 式 に 関 しては 全 ての 高 校 が 若 干 名 の 外 国 籍 生 徒 を 受 け 入 れることを 前 提 に 受 け 入 れ 態 勢 を 整 えることになり 予 算 措 置 も 人 的 な 配 備 も 事 前 に 行 政 の 責 任 として 準 備 される ことや 拠 点 校 方 式 に 比 べて 遥 かに 多 数 の 生 徒 を 受 け 入 れる 枠 が 確 保 されることになる というメリット を 持 っているが 拠 点 校 方 式 と 比 べた 場 合 には 内 容 が 希 薄 になる 可 能 性 もあるとされている また 特 別 入 学 枠 を 利 用 できる 資 格 が 各 自 治 体 で 整 っていないという 難 点 もある 運 用 方 式 以 外 の 課 題 としては 制 度 の 利 用 資 格 などがある 特 別 入 学 枠 での 選 抜 方 法 は 日 本 人 生 徒 と 異 なり 主 に 面 接 と 作 文 であるが 富 山 も 述 べているように 長 期 間 多 くの 支 援 が 必 要 になっ てくる 東 海 地 方 の 場 合 愛 知 岐 阜 三 重 の 三 県 は 来 日 してから 6 年 間 は 特 別 入 学 枠 を 利 用 することができるが 静 岡 県 では 来 日 後 3 年 以 内 の 生 徒 でなければ 制 度 を 利 用 することはできない しかし 日 本 語 能 力 の 定 着 という 観 点 から 考 えるならば 来 日 後 5 ~ 6 年 の 生 徒 に 対 しても 特 別 入 学 枠 の 適 用 資 格 が 与 えられることが 望 ましいだろう 1.1 東 海 地 方 の 現 状 と 特 別 入 学 枠 の 偏 在 では 具 体 的 に 東 海 地 方 での 特 別 入 学 枠 の 実 施 状 況 はいかなる 状 況 にあるのか 実 施 状 況 は 以 下 のとおりである 8) 表 1: 東 海 地 方 における 特 別 入 学 枠 の 実 施 状 況 - 4 -

名 古 屋 大 学 大 学 院 教 育 発 達 科 学 研 究 科 教 育 科 学 専 攻 教 育 論 叢 第 54 号 2011 年 特 別 入 学 枠 の 運 用 方 式 を 富 山 (2001) に 倣 って 分 類 すると 拠 点 校 方 式 を 採 るのが 愛 知 県 三 重 県 静 岡 県 の 三 県 であり 全 校 方 式 を 採 っているのが 岐 阜 県 である 特 別 入 学 枠 の 課 題 は 確 認 してきたが これ 以 外 にも 普 通 科 以 外 の 学 科 への 進 路 が 保 障 されていないという 問 題 点 がある これまで 述 べたように 外 国 人 生 徒 は 一 定 の 条 件 を 満 たせば 特 別 入 学 枠 の 制 度 によって 高 校 受 験 をすることができるが その 方 式 には 拠 点 校 方 式 と 全 校 方 式 があり 拠 点 校 方 式 を 採 用 している 県 の 場 合 は 指 定 された 高 校 以 外 の 入 試 には 特 別 入 学 枠 はない ここで 東 海 地 方 で 拠 点 校 方 式 を 採 用 している 愛 知 県 と 三 重 県 静 岡 県 ではどのような 高 校 が 外 国 人 の 生 徒 を 受 け 入 れているかを 確 認 してみると 以 下 のとおりである 表 2: 愛 知 三 重 静 岡 において 外 国 人 生 徒 を 受 け 入 れている 公 立 高 校 各 県 の 公 立 高 校 入 試 要 項 など 9) から 作 成 括 弧 内 は 各 県 内 の 全 日 制 公 立 高 校 総 数 表 2 からわかるように 外 国 人 生 徒 を 受 け 入 れている 高 校 は 愛 知 県 であれば 全 てが 普 通 科 であ り 三 重 県 は 普 通 科 以 外 の 学 科 への 進 路 が 開 かれているようにみえるが 国 際 系 高 校 もその 目 的 は 大 学 進 学 ということが 多 く 英 語 教 育 に 力 を 入 れているだけで 進 路 の 面 から 考 えると 普 通 科 と 大 差 のないものと 考 えてよいだろう 10) また 三 重 県 は 特 別 入 学 枠 の 利 用 者 として 外 国 人 生 徒 だけでなく 帰 国 子 女 も 想 定 しているため 外 国 人 生 徒 にとって 狭 き 門 となっていると いえる 11) 静 岡 県 は 募 集 定 員 は 若 干 名 となっているものの 拠 点 校 方 式 を 採 用 している 東 海 地 方 の 県 の 中 では 比 較 的 バランスよく 特 別 入 学 枠 が 割 り 振 られている 子 どもの 権 利 条 約 の 種 々の 形 態 の 中 等 教 育 ( 一 般 教 育 及 び 職 業 教 育 を 含 む ) の 発 展 を 奨 励 ( 後 略 ) するという 点 を 踏 まえると 外 国 人 生 徒 の 多 様 な 学 科 への 進 学 条 件 は 整 備 されておく 必 要 があるといえる より 多 くの 外 国 人 生 徒 の 後 期 中 等 教 育 へのアクセスのために 特 別 入 学 枠 を 拡 大 することは 有 効 な 側 面 もあるが 拠 点 校 方 式 を 採 用 する 場 合 上 位 校 への 進 学 を 目 的 とするだけの 特 別 入 学 枠 の 運 用 は 外 国 人 生 徒 が 将 来 選 択 しうる 進 路 を 狭 めかねない 富 山 (2001) は 特 別 入 学 枠 の 今 後 の 運 用 方 式 として 拠 点 校 方 式 全 校 方 式 両 者 の 折 衷 案 の 3 つ の 可 能 性 を 示 しているが 特 別 入 学 枠 を 実 施 する 際 に 重 視 されるべきは 上 位 校 への 進 学 に 止 まらず 普 通 科 高 校 以 外 の 学 科 への 進 学 ができるように 特 別 入 学 枠 が 配 置 されることが 必 要 で あると 考 えられる 12) - 5 -

外 国 人 生 徒 の 高 校 進 学 に 関 する 教 育 課 題 特 別 入 学 枠 に 着 目 して 1.2 制 度 の 認 知 度 に 関 する 問 題 点 しかし 制 度 を 作 るだけで 問 題 が 解 決 されたというわけにはいかない 新 谷 (2005) が 政 策 がい かに 理 論 的 に 正 しく 社 会 の 側 からの 必 要 性 に 支 えられているとしても それだけでその 実 効 性 を 担 保 することはできない なぜなら その 政 策 や 制 度 に 関 わるか 否 かの 選 択 は 当 の 青 年 自 身 によっ て 社 会 や 政 策 制 度 がどのように 見 えているかに 大 きく 依 存 するからである と 述 べているように 日 本 の 高 校 入 試 制 度 や 日 本 の 学 校 制 度 が 外 国 人 生 徒 からどうのように 捉 えられているのかという 点 から 考 察 を 行 う 必 要 があるだろう 外 国 人 生 徒 のための 高 校 入 試 時 の 措 置 に 関 する 外 国 人 生 徒 の 認 知 度 を 調 べたアンケート 調 査 など は 管 見 の 限 り 存 在 しないが 藤 本 (2008) の 外 国 人 生 徒 に 対 する 進 路 指 導 の 一 例 ( 外 国 人 生 徒 向 けの ガイダンスの 実 施 と 外 国 人 生 徒 からの 進 路 に 関 する 意 識 調 査 ) に 関 する 報 告 によると 日 本 の 学 校 制 度 が 外 国 人 生 徒 らに 理 解 されていない 可 能 性 がある 特 別 入 学 枠 は 辻 本 (2003) が 高 校 間 で の 運 用 上 の 差 異 の 存 在 や 教 員 の 制 度 に 関 する 無 関 心 などを 指 摘 した 入 試 特 別 措 置 とは 対 照 的 に 入 試 要 項 などに 運 用 方 法 が 明 記 されており これらの 点 に 関 しては 特 別 入 学 枠 は 入 試 特 別 措 置 よりも 制 度 の 上 では 整 備 されているといえる だがそれゆえに 教 師 の 側 に 外 国 人 生 徒 にも 高 校 入 試 に 関 する 情 報 は 十 分 に 行 き 渡 っている と 判 断 し 彼 らへ 進 路 に 関 する 情 報 を 十 分 に 提 供 し 損 ねているという 状 況 は 想 定 しうる こうした 見 方 に 立 てば 彼 らの 中 学 校 卒 業 後 に 高 校 へ 進 学 するという 進 路 選 択 像 を 明 確 にするためには 藤 本 が 報 告 したような 進 路 指 導 の 方 略 は 一 定 の 有 効 性 があるといえるだろう 13) 2 多 様 な 学 科 への 進 学 保 障 の 意 義 これまで 外 国 人 生 徒 にかかわる 高 校 入 試 制 度 に 注 目 して 論 を 進 めてきた その 結 果 1 東 海 地 方 では 全 日 制 の 高 校 では 入 試 時 の 措 置 として 特 別 入 学 枠 がある 程 度 充 実 しているということ 2 特 別 入 学 枠 がある 学 科 は 普 通 科 が 多 く それ 以 外 の 学 科 への 進 路 は 必 ずしも 保 障 されていな いということがわかった しかし 上 述 の 新 谷 (2005) が 述 べているように 制 度 を 整 備 してもそれ が 当 事 者 たちからどのように 受 け 止 められているのかという 視 点 を 欠 いたままでは 外 国 人 生 徒 の 多 様 な 進 路 を 保 障 するための 方 略 は 現 実 離 れしたものになってしまう そのため 藤 本 (2008) が 報 告 したような 進 路 指 導 は 必 要 となってくるだろう しかし 同 時 に 外 国 人 生 徒 の 高 校 生 活 へのゆるやかな 適 応 を 促 す 取 り 組 みも 必 要 であろう 田 房 (2005) はベトナム 出 身 者 を 例 に 外 国 人 生 徒 が 進 路 選 択 の 際 に 参 考 にできる 情 報 量 が 絶 対 的 に 少 な いということを 指 摘 している ここでいう 情 報 量 とは 学 校 などで 得 られる 情 報 の 量 を 指 すので はなく 個 人 の 身 の 回 りにいる 人 たちからの 情 報 量 のことを 指 している また 田 房 は 社 会 を 反 映 してあらゆる 職 種 にインドシナ 出 身 者 が 見 い 出 されれば それは 子 どもたちが 自 分 の 将 来 を 考 え る 上 での 指 針 となるだろう と 述 べている 多 様 な 職 種 に 就 くことができるようになる 一 つの 手 段 として 高 校 卒 業 という 条 件 が 考 えられる そのためには 志 水 ら (2008) が 紹 介 している 3 年 間 を - 6 -

名 古 屋 大 学 大 学 院 教 育 発 達 科 学 研 究 科 教 育 科 学 専 攻 教 育 論 叢 第 54 号 2011 年 通 じて 外 国 人 生 徒 への 学 習 進 路 支 援 に 取 り 組 んでいる 高 校 の 教 育 実 践 のように 入 学 から 卒 業 ま での 期 間 の 就 学 保 障 が 徹 底 されなければならない このような 取 り 組 みがなされ 外 国 人 生 徒 が 普 通 科 だけでなくさまざまな 学 科 へと 進 学 し 卒 業 後 にあらゆる 職 種 に 就 くことができれば 次 の 世 代 が 将 来 の 進 路 を 決 める 上 での 指 針 となると 考 えられる おわりに これまで 外 国 人 生 徒 の 普 通 科 以 外 の 学 科 への 進 学 がどの 程 度 保 障 されているのかについて 考 察 を 進 めてきた その 中 では 制 度 自 体 に 見 直 すべき 点 が 少 なくないことや 外 国 人 生 徒 の 高 校 卒 業 の 校 内 のための 校 内 サポート 体 制 作 りの 必 要 性 がうかがえる 以 下 本 ノートの 成 果 を 確 認 しておく 第 一 に 特 別 入 学 枠 の 運 用 方 式 とその 配 分 状 況 についてである 特 別 入 学 枠 の 運 用 方 式 が 拠 点 校 方 式 であるか 全 校 方 式 であるかによって 多 様 な 学 科 への 進 学 の 容 易 さが 変 わってく る 全 校 方 式 を 採 用 した 場 合 全 ての 高 校 に 特 別 入 学 枠 が 配 分 されるので 多 様 な 学 科 に 入 学 できるチャンスが 広 がる 一 方 で 拠 点 校 方 式 を 採 用 した 場 合 特 別 入 学 枠 が 配 分 されていな い 高 校 を 受 験 する 際 には 学 科 試 験 に 合 格 しなくてはならないため 高 校 入 試 のハードルが 上 がると 考 えられる 例 えば 愛 知 県 のように 特 別 入 学 枠 が 普 通 科 に 偏 っているのであれば それ 以 外 の 学 科 への 進 学 可 能 性 は 低 くなるだろう 第 二 に 制 度 の 認 知 度 についてである 制 度 を 整 備 しても 外 国 人 生 徒 が 制 度 のことを 知 らなければ 意 味 がないため こうした 制 度 自 体 についてどの 程 度 知 っているのか また 理 解 しているのかとい うことについて 明 らかにしていく 必 要 がある また 今 後 外 国 人 生 徒 への 指 導 のあり 方 を 論 じる 上 で 課 題 となることは 校 内 のサポート 体 制 であ る 広 崎 (2007) が 教 員 やボランティアなどからのサポートによって 外 国 人 生 徒 の 進 路 選 択 の 意 識 が 涵 養 される 可 能 性 を 示 唆 していることから 校 内 での 外 国 人 生 徒 へのサポートはどのようなもので どのような 効 果 があるのかという 点 を 明 らかにする 必 要 があるだろう 最 後 に 本 ノートの 課 題 を 示 しておく 本 ノートでは 外 国 人 生 徒 の 普 通 科 以 外 の 学 科 への 進 学 がどの 程 度 保 障 されているか ということを 扱 ったが 公 立 高 校 への 進 学 についてしか 扱 うことができなかった 国 立 や 私 立 の 高 校 などへの 進 学 について 扱 うことができなかったことが 本 ノートの 課 題 である 今 後 は 本 ノートで 明 らかにした 知 見 を 基 に 入 試 制 度 だけでなく 外 国 人 生 徒 へのサポート 体 制 に も 注 目 しながら 外 国 人 生 徒 の 高 校 進 学 に 関 する 研 究 を 深 めていきたい 註 1) 高 見 澤 ら (2004) では ニューカマーとは 日 本 経 済 の 国 際 化 に 伴 って 1970 年 代 以 降 新 たに 日 本 に 来 住 した 外 国 人 とされており 本 研 究 で 対 象 とするラテンアメリカからの 外 国 人 労 働 者 / 移 民 のみならず 1970 年 代 末 のインドシナ 難 民 や 中 国 帰 国 者 とその 家 族 興 行 ビザで 来 日 す るアジア 系 女 性 なども 含 んでいる - 7 -

外 国 人 生 徒 の 高 校 進 学 に 関 する 教 育 課 題 特 別 入 学 枠 に 着 目 して 2) この 呼 称 については 研 究 者 により 異 なる 本 稿 では 中 国 帰 国 者 定 着 促 進 センター HP(http:// www.kikokusha-center.or.jp/shien_joho/shingaku/kokonyushi/databind/ichiran_db.htm 2010/12/14 アクセス ) が 用 いている 呼 称 を 採 用 した なお 本 ノートでは タイトル 部 分 を 除 く 本 文 及 び 脚 注 部 分 ではこの 呼 称 を 入 試 特 別 措 置 と 表 記 しているが これに 特 に 意 味 はない 3) 同 上 特 別 入 学 枠 での 選 抜 方 法 は 主 に 作 文 と 面 接 である なお 本 ノートでは タイトル 部 分 4) を 除 く 本 文 及 び 脚 注 部 分 ではこの 呼 称 を 特 別 入 学 枠 と 表 記 しているが これに 特 に 意 味 は ない 特 別 入 学 枠 を 利 用 するための 条 件 は 各 都 道 府 県 によって 異 なっており 生 徒 のルーツによっ てはこのような 措 置 を 利 用 できない 所 もある 5) 文 部 科 学 省 は 2009 年 の 通 知 (20 文 科 初 第 8083 号 ) において 外 国 人 児 童 生 徒 を 受 け 入 れる 際 に 日 本 語 能 力 などを 適 宜 判 断 して 必 要 であれば 年 齢 相 当 の 学 年 より 下 の 学 年 に 編 入 させる 過 年 の 措 置 が 可 能 であることを 全 国 の 自 治 体 に 通 知 したが 毎 日 新 聞 の 調 査 によれば この 措 置 を 認 めるかどうかについては 各 自 治 体 で 隔 たりがある 以 下 が 毎 日 新 聞 の 調 査 結 果 である 外 国 人 生 徒 への 過 年 の 適 用 状 況 - 8 -

名 古 屋 大 学 大 学 院 教 育 発 達 科 学 研 究 科 教 育 科 学 専 攻 教 育 論 叢 第 54 号 2011 年 6) 以 下 に 東 海 地 方 に 居 住 するブラジル 人 の 人 数 を 示 す 東 海 地 方 の 在 留 ブラジル 人 数 その 中 でも 高 校 受 験 を 控 える 生 徒 がどの 程 度 いるかを 示 す 資 料 は 存 在 しないが 今 後 高 校 を 受 験 する 可 能 性 のある 10 歳 ~ 14 歳 までの 在 留 ブラジル 人 の 人 口 は 平 成 22 年 度 の 在 留 外 国 人 統 計 によると 岐 阜 県 が 1034 人 静 岡 県 が 2663 人 愛 知 県 が 4063 人 三 重 県 が 1027 人 で あることから ブラジル 人 に 限 って 見 てみても 今 後 多 くの 外 国 人 生 徒 が 高 校 受 験 をする 可 能 性 がある 7) 尚 本 稿 では 外 国 人 生 徒 の 日 本 での 進 学 について 扱 うが 彼 らの 進 路 は 日 本 に 存 在 するエスニッ クスクールへの 進 学 や 山 崎 (2009) が 示 した 国 境 を 越 えた 進 学 などさまざまな 形 が 保 障 されるべ きということは 予 め 断 っておく 8) 中 国 帰 国 者 定 住 促 進 センター HP 及 び 各 県 の 高 校 入 試 要 項 を 参 考 に 成 した 中 国 帰 国 者 定 着 促 進 センター HP については 註 2 を 参 照 各 県 の 公 立 高 校 入 試 要 項 については 以 下 のとおり 愛 知 県 教 育 委 員 会 (2010). 平 成 23 年 度 愛 知 県 公 立 高 等 学 校 入 学 者 の 募 集 について http://www. pref.aichi.jp/cmsfiles/contents/0000027/27366/nyuushi_bosyuu_h23.pdf (2011/01/03 ア ク セ ス ) 三 重 県 教 育 委 員 会 (2010). 平 成 23 年 三 重 県 公 立 高 等 学 校 入 学 者 選 抜 要 項, 第 7 海 外 帰 国 生 徒 外 国 人 生 徒 等 に 係 る 特 別 入 学 者 選 抜 http://www.mie-c.ed.jp/koukou/boshu/h23/1-7.pdf (2011/01/03 アクセス 静 岡 県 教 育 委 員 会 (2010). 平 成 23 年 度 公 立 高 校 を め ざ す あ な た へ Ⅱ https://www2.pref. shizuoka.jp/all/file_download2100.nsf/72b07a2f7bdd94234925778c00096bd8/ $FILE/ H23anatahe2.pdf (2011/01/03 アクセス ) 9) 註 8 で 示 した 各 県 の 公 立 高 校 入 試 要 項 以 外 に 以 下 の 資 料 を 参 照 した 静 岡 県 教 育 委 員 会 (2010). 平 成 23 年 度 静 岡 県 公 立 高 等 学 校 生 徒 募 集 計 画 及 び 募 集 定 員 に 対 する 学 校 裁 量 枠 の 選 抜 割 合 ( 選 抜 段 階 ) 一 覧 https://www2.pref.shizuoka.jp/all/file_download2100.nsf/ac0e07767c3e3eb5492577d200133a62/ $FILE/23boshukeikaku.pdf (2011/02/01 アクセス ) 三 重 県 教 育 委 員 会 (2010). 三 重 県 立 高 等 学 校 案 内 http://www.mie-c.ed.jp/rainbow/index.html (2011/02/01 アクセス ) 在 留 外 国 人 統 計 ( 平 成 20 年 ~ 平 成 22 年 度 版 )より 作 成 - 9 -

外 国 人 生 徒 の 高 校 進 学 に 関 する 教 育 課 題 特 別 入 学 枠 に 着 目 して 10) 各 県 の 公 立 高 校 の 入 試 要 項 は 註 8 を 参 照 それ 以 外 には 各 校 の HP を 参 照 した 各 校 の HP の URL は 以 下 の 通 り 三 重 県 立 川 越 高 等 学 校 HP http://www.mie-c.ed.jp/hkawag/ (2011/01/04 アクセス ) 三 重 県 立 飯 野 高 等 学 校 HP http://www.mie-c.ed.jp/hiino/ (2011/01/04 アクセス ) 三 重 県 立 津 西 高 等 学 校 HP http://www.tsunishi.jp/ (2011/01/04 アクセス ) 三 重 県 立 名 張 西 高 等 学 校 HP http://www.nishiko.ed.jp/ (2011/01/04 アクセス ) 三 重 県 立 松 阪 商 業 高 等 学 校 HP http://www.mie-c.ed.jp/cmatus/ (2011/01/04 アクセス ) 三 重 県 立 宇 治 山 田 商 業 高 等 学 校 HP http://www.mie-c.ed.jp/cujiya/index.htm (2011/01/04 アクセス ) また 三 重 県 の 総 合 制 高 校 については 各 校 ともほぼ 同 じような 系 列 が 設 置 されていたが 幅 広 いコースから 選 択 することができるようになっている 三 重 県 立 木 本 高 等 学 校 HP http://www.mie-c.ed.jp/hkimot/ (2011/02/01 アクセス ) 三 重 県 立 飯 南 高 等 学 校 HP http://www.mie-c.ed.jp/hiinan/ (2011/02/01 アクセス ) 三 重 県 立 いなべ 総 合 学 園 高 等 学 校 HP http://www.inabe-h.ed.jp/ (2011/02/01 アクセス ) 三 重 県 立 名 張 高 等 学 校 HP http://www.mie-c.ed.jp/hnabar/index.html (2011/02/01 アクセス ) 三 重 県 立 昴 学 園 高 校 学 校 HP http://www.mie-c.ed.jp/hsubar/ (2011/02/01 アクセス ) 三 重 県 立 鳥 羽 高 等 学 校 HP http://www.mie-c.ed.jp/htoba/ (2011/02/01 アクセス ) 11) 三 重 県 で 実 施 されている 特 別 入 学 枠 は 外 国 人 生 徒 と 帰 国 子 女 が 利 用 可 能 なものであるが 12) 入 試 方 法 は 外 国 人 生 徒 と 帰 国 子 女 とでは 異 なる 特 別 入 学 枠 については 全 入 学 定 員 の 内 どれだけの 割 合 の 定 員 を 特 別 入 学 枠 とするか についての 問 題 も 残 っているが ここでは 立 ち 入 らなかった 13) このような 活 動 は 外 国 人 生 徒 の 進 学 が 前 提 となるため 児 島 (2009) が 指 摘 するように 学 習 の 効 率 制 を 追 求 するあまりに マイノリティ マジョリティ 間 の 権 力 関 係 を 隠 蔽 するソフトな 同 化 主 義 に 行 きつく 可 能 性 はあるため 外 国 人 生 徒 への 進 路 指 導 の 在 り 方 については 今 後 の 課 題 となる 参 考 文 献 愛 知 県 教 育 委 員 会 (2010). 平 成 23 年 度 愛 知 県 公 立 高 等 学 校 入 学 者 の 募 集 について http://www.pref. aichi.jp/cmsfiles/contents/0000027/27366/nyuushi_bosyuu_h23.pdf (2011/01/03 アクセス ) 新 谷 周 平 (2005). 青 年 の 視 点 から 見 た 社 会 制 度 選 択 の 解 釈 と 支 援 の 構 想 教 育 社 会 学 研 究 第, 76, 111-126. 中 国 帰 国 者 定 着 促 進 センター HP http://www.kikokusha-center.or.jp/shien_joho/shingaku/kokonyushi/databind/ichiran_db.htm (2010/12/14 アクセス ) 藤 本 美 知 代 (2008). 外 国 人 児 童 における 進 路 指 導 中 学 校 の 現 場 から 臼 井 智 美 ( 編 ) 第 8 回 外 - 10 -

名 古 屋 大 学 大 学 院 教 育 発 達 科 学 研 究 科 教 育 科 学 専 攻 教 育 論 叢 第 54 号 2011 年 国 人 児 童 生 徒 教 育 フォーラム 報 告 書 外 国 人 児 童 生 徒 の 進 路 選 択 と 学 力 講 演 記 録 編 p.p.11-15. 資 料 編 p.p.3-11. 広 崎 純 子 (2007). 進 路 多 様 校 における 中 国 系 ニューカマー 生 徒 の 進 路 意 識 と 進 路 選 択 支 援 活 動 の 取 組 を 通 じての 変 容 過 程 教 育 社 会 学 研 究 第, 80, 227-245. 川 上 郁 雄 ( 編 ) (2006). 移 動 する 子 どもたち と 日 本 語 教 育 日 本 語 を 母 語 としない 子 どもへのこ とばの 教 育 を 考 える 明 石 書 店 児 島 明 (2009). ニューカマー 児 童 生 徒 教 育 をめぐる 経 路 依 存 性 と 展 開 の 固 有 性 神 奈 川 県 大 和 市 に おける 国 際 教 室 の 事 例 から 和 光 大 学 現 代 人 間 学 部 紀 要, 2, 117-131. 三 重 県 立 木 本 高 等 学 校 HP http://www.mie-c.ed.jp/hkimot/ (2011/02/01 アクセス ) 三 重 県 立 飯 南 高 等 学 校 HP http://www.mie-c.ed.jp/hiinan/ (2011/02/01 アクセス ) 三 重 県 立 飯 野 高 等 学 校 HP http://www.mie-c.ed.jp/hiino/ 2011/01/04 アクセス 三 重 県 立 いなべ 総 合 学 園 高 等 学 校 HP http://www.inabe-h.ed.jp/ (2011/02/01 アクセス ) 三 重 県 立 川 越 高 等 学 校 HP http://www.mie-c.ed.jp/hkawag/ (2011/01/04 アクセス ) 三 重 県 立 松 阪 商 業 高 等 学 校 HP http://www.mie-c.ed.jp/cmatus/ (2011/01/04 アクセス ) 三 重 県 立 名 張 高 等 学 校 HP http://www.mie-c.ed.jp/hnabar/index.html (2011/02/01 アクセス ) 三 重 県 立 名 張 西 高 等 学 校 HP http://www.nishiko.ed.jp/ (2011/01/04 アクセス ) 三 重 県 教 育 委 員 会 (2010). 平 成 23 年 三 重 県 公 立 高 等 学 校 入 学 者 選 抜 要 項, 第 7 海 外 帰 国 生 徒 外 国 人 生 徒 等 に 係 る 特 別 入 学 者 選 抜 http://www.mie-c.ed.jp/koukou/boshu/h23/1-7.pdf (2011/01/03 アクセス 三 重 県 教 育 委 員 会 (2010). 三 重 県 立 高 等 学 校 案 内 http://www.mie-c.ed.jp/rainbow/index.html (2011/02/01 アクセス ) 三 重 県 立 昴 学 園 高 校 学 校 HP http://www.mie-c.ed.jp/hsubar/ (2011/02/01 アクセス ) 三 重 県 立 津 西 高 等 学 校 HP http://www.tsunishi.jp/ (2011/01/04 アクセス ) 三 重 県 立 鳥 羽 高 等 学 校 HP http://www.mie-c.ed.jp/htoba/ (2011/02/01 アクセス ) 三 重 県 立 宇 治 山 田 商 業 高 等 学 校 HP http://www.mie-c.ed.jp/cujiya/index.htm (2011/01/04 ア クセス ) 文 部 科 学 省 初 等 中 等 教 育 局 (2009). 定 住 外 国 人 の 子 どもに 対 する 緊 急 支 援 について http:www.mext. go.jp/a_menu/shotou/clarinet/004/1296671.htm (2011/01/13 アクセス ) 佐 久 間 孝 正 (2006). 外 国 人 の 子 どもの 不 就 学 異 文 化 に 開 かれた 教 育 とは 勁 草 書 房 佐 久 間 孝 正 (2005). 多 分 化 に 開 かれた 教 育 に 向 けて 宮 島 喬 太 田 晴 雄 ( 編 ) 外 国 人 の 子 どもと 日 本 の 教 育 不 就 学 問 題 と 多 分 化 共 生 の 課 題 p.p.217-238. 志 水 宏 吉 ( 編 ) (2008). 高 校 を 生 きるニューカマー 大 阪 府 立 高 校 にみる 教 育 支 援 明 石 書 店 静 岡 県 教 育 委 員 会 (2010). 平 成 23 年 度 公 立 高 校 をめざすあなたへⅡ https://www2.pref.shizuoka. jp/all/file_download2100.nsf/72b07a2f7bdd94234925778c00096bd8/ $FILE/H23anatahe2.pdf (2011/01/03 アクセス ) - 11 -

外 国 人 生 徒 の 高 校 進 学 に 関 する 教 育 課 題 特 別 入 学 枠 に 着 目 して 静 岡 県 教 育 委 員 会 (2010). 平 成 23 年 度 静 岡 県 公 立 高 等 学 校 生 徒 募 集 計 画 及 び 募 集 定 員 に 対 する 学 校 裁 量 枠 の 選 抜 割 合 ( 選 抜 段 階 ) 一 覧 https://www2.pref.shizuoka.jp/all/file_download2100.nsf/ AC0E07767C3E3EB5492577D200133A62/ $FILE/23boshukeikaku.pdf (2011/02/01 アクセス ) 田 房 由 起 子 (2005). 子 どもたちの 教 育 におけるモデルの 不 在 ベトナム 出 身 者 を 中 心 に 宮 島 喬 太 田 晴 雄 ( 編 ) 外 国 人 の 子 どもと 日 本 の 教 育 不 就 学 問 題 と 多 文 化 共 生 の 課 題 東 京 大 学 出 版 会, pp.155-169. 高 見 澤 孟 ( 監 ) (2004). 新 はじめての 日 本 語 教 育 基 本 用 語 辞 典 アスク 出 版 富 山 和 夫 (2001). 高 校 進 学 と 入 試 のあり 方 神 奈 川 県 教 育 文 化 研 究 所 外 国 籍 生 徒 の 学 習 と 進 路 調 査 研 究 部 外 国 人 の 子 どもたちとともにⅡ 学 習 と 進 路 の 保 障 をもとめて p.p.63-71. 辻 本 久 夫 (2003). 外 国 人 生 徒 の 中 学 校 卒 業 後 の 進 路 課 題 解 放 教 育 第, 33-2, 52-59. 山 崎 香 織 (2009). 移 動 時 代 のキャリア 教 育 ニューカマー 高 校 生 の 事 例 異 文 化 間 教 育,30, 91-103. 財 団 法 人 入 管 協 会 (2008). 在 留 外 国 人 統 計 ( 平 成 20 年 版 ) 財 団 法 人 入 管 協 会 財 団 法 人 入 管 協 会 (2009). 在 留 外 国 人 統 計 ( 平 成 21 年 版 ) 財 団 法 人 入 管 協 会 財 団 法 人 入 管 協 会 (2010). 在 留 外 国 人 統 計 ( 平 成 22 年 版 ) 財 団 法 人 入 管 協 会 - 12 -