公 金 一 括 徴 収 の 現 状 と 実 現 へ 向 けクリアすべき 課 題 一 般 財 団 法 人 キヤノングローバル 戦 略 研 究 所 主 任 研 究 員 税 理 士 柏 木 恵 はじめに 地 方 税 をとりまく 環 境 は 相 変 わらず 厳 しい 金 融 危 機 による 世 界 同 時 不 況 のあおりやわ が 国 の 景 気 も 影 響 し 税 収 が 伸 び 悩 んできた このような 状 況 下 で 地 方 税 の 滞 納 は 平 成 19 年 度 以 降 増 加 傾 向 にある 平 成 14 年 度 から 平 成 18 年 度 にかけて 縮 小 傾 向 にあったが 再 び 増 加 した 滞 納 が 増 加 したのは 個 人 住 民 税 である 平 成 19 年 度 は 税 源 移 譲 が 始 まった 年 で ある 税 収 のパイが 広 がった 分 滞 納 も 増 える 可 能 性 があるわけだが それが 現 実 化 した さらに 税 だけでなく 自 治 体 全 体 をみてみると 国 民 健 康 保 険 料 や 介 護 保 険 料 保 育 料 住 宅 使 用 料 などさまざまな 未 収 金 を 抱 えている 個 人 住 民 税 の 滞 納 が 増 えたということは 何 らかの 理 由 で 生 活 者 である 住 民 の 生 活 が 変 化 したとみることができる そうであれば 国 民 健 康 保 険 料 や 介 護 保 険 料 保 育 料 住 宅 使 用 料 なども 滞 納 している 可 能 性 は 高 い 多 額 の 未 収 金 は 財 政 を 悪 化 させるだけでなく 納 付 をきちんと 行 っている 住 民 に 対 して も 不 公 平 を 生 じさせている このまま 不 公 平 な 状 態 が 続 けば 住 民 がモラルハザードを 起 こし 徴 収 事 務 自 体 への 支 障 が 出 てくることも 懸 念 される 本 来 であれば 各 課 で 徴 収 することが 望 ましいだろう 努 力 や 工 夫 によって 改 善 できると ころもたくさんあるだろう しかし 自 治 体 の 財 政 状 況 や 自 治 体 に 対 する 住 民 の 注 目 の 高 まりなどから 財 政 の 健 全 化 は 急 がれており いかに 効 率 的 に 徴 収 できるかが 一 つのカギ となる 公 金 一 括 徴 収 は 効 率 化 を 図 るための 一 つのやり 方 である 平 成 14 年 度 から 平 成 18 年 度 の 徴 収 の 回 復 には 景 気 回 復 の 影 響 もさることながら そ の 間 電 子 申 告 コンビニ 収 納 マルチペイメントネットワークによる 電 子 収 納 クレジ ット 収 納 といった 収 納 チャネルの 拡 大 や インターネット 公 売 の 導 入 電 話 催 告 などの 一 部 民 間 委 託 など あらゆる 手 段 を 活 用 し 徴 収 率 を 上 げるべく 自 治 体 は 取 り 組 みを 行 って きたことが 大 きく 寄 与 している 効 率 化 にむけて このような 不 断 の 努 力 をさらに 続 ける べきである 本 稿 では 税 を 含 めた 自 治 体 の 財 源 となる 未 収 金 を 効 率 的 に 回 収 する 策 として 公 金 一 括 徴 収 を 取 り 上 げる 公 金 一 括 徴 収 の 意 義 と 現 在 の 自 治 体 の 状 況 を 整 理 し 課 題 について できるだけ 取 り 上 げたいと 考 えている 第 1 章 地 方 税 の 滞 納 状 況 地 方 税 の 滞 納 残 高 ( 累 積 )の 推 移 ( 図 1)をみると 平 成 14 年 度 の 2 兆 3468 億 円 をピ ークに 平 成 18 年 度 は 1 兆 9245 億 円 まで 減 った しかし 平 成 19 年 度 には 1 兆 9761 億 円 と 再 び 増 加 に 転 じ 平 成 20 年 度 は 2 兆 473 億 円 となった 内 訳 をみると 分 かるように 再 び 滞 納 額 が 増 えたのは 個 人 住 民 税 の 滞 納 の 増 加 による 1
ものである 固 定 資 産 税 やその 他 に 含 まれる 自 動 車 税 や 都 市 計 画 税 不 動 産 取 得 税 などは 減 少 しているにもかかわらず 滞 納 額 総 額 が 増 えているのは 個 人 住 民 税 の 滞 納 額 が 大 き く 増 えていることが 読 み 取 れる 増 加 の 理 由 は 平 成 19 年 度 から 始 まった 所 得 税 から 個 人 住 民 税 への 税 源 移 譲 である 税 源 移 譲 は 地 方 税 収 の 拡 大 をもたらすが 同 時 に 滞 納 増 加 の 危 険 性 も 併 せ 持 つ 税 源 移 譲 によって 自 主 財 源 というパイは 広 がったが 自 助 努 力 によっ て 財 源 を 確 保 する 必 要 性 も 大 きくなったということである 図 1 地 方 税 の 滞 納 残 高 ( 累 積 )の 推 移 億 円 25000 20000 23468 6405 22507 5861 21604 5503 20376 5051 19245 19761 4665 4309 20473 4127 15000 その 他 10000 8077 7753 7450 7092 6958 8253 9374 個 人 住 民 税 固 定 資 産 税 5000 8986 8893 8651 8233 7622 7199 6972 0 14 15 16 17 18 19 20 年 度 出 所 : 総 務 省 ホームページから 一 部 抜 粋 し 筆 者 作 成 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/ichiran02.html 表 1 税 源 移 譲 前 後 の 個 人 住 民 税 の 滞 納 状 況 単 位 : 億 円 H18 H19 H20 滞 納 残 高 ( 地 方 税 全 体 ) 19,245 19,761 20,473 うち 個 人 住 民 税 分 6,953 8,253 9,374 うち 個 人 住 民 税 分 (%) 36.13% 41.76% 45.80% 個 人 住 民 税 の 調 定 額 94,385 127,206 132,830 個 人 住 民 税 の 収 入 額 87,429 118,952 123,455 個 人 住 民 税 調 定 額 に 対 する 滞 納 率 7.37% 6.49% 7.06% 出 所 : 総 務 省 資 料 より 筆 者 作 成 表 1は 税 源 移 譲 前 後 の 個 人 住 民 税 の 滞 納 状 況 について 示 したものである 注 目 してほし いのは 滞 納 残 高 と 滞 納 率 である 平 成 18 年 度 は 7.37%で 滞 納 額 は 6953 億 円 である 平 成 19 年 度 は 6.49%であるが 滞 納 額 は 8253 億 円 もある 平 成 20 年 度 も 7.06%であるが 2
滞 納 額 は 9163 億 円 もある これからは 滞 納 率 ではなく 滞 納 額 をしっかりみる 必 要 がある 滞 納 率 が 低 くても 滞 納 額 は 増 えていることがある 税 収 のパイが 増 えたことによって 以 前 よりも1%の 重 みが 大 きくなっているのである 第 2 章 なぜ 公 金 一 括 徴 収 なのか 前 章 でみたように 個 人 住 民 税 の 滞 納 だけが 増 加 し 固 定 資 産 税 や 都 市 計 画 税 自 動 車 税 の 滞 納 は 減 少 している 直 近 の 課 題 は 個 人 住 民 税 である 個 人 住 民 税 を 払 うのは 住 民 つまり 自 治 体 内 の 生 活 者 である 法 人 とは 違 い 国 民 健 康 保 険 料 や 介 護 保 険 料 保 育 料 住 宅 使 用 料 なども 併 せて 滞 納 している 可 能 性 が 高 い そうであれば 各 担 当 課 が 別 々に 徴 収 するよりも まとめて 徴 収 したほうが 効 率 的 ということもありうる 租 税 原 則 は 公 平 中 立 簡 素 である 簡 素 というのは 効 率 的 な 徴 収 を 意 味 する 租 税 原 則 に 則 れば 自 治 体 はつねに 効 率 的 な 徴 収 を 行 わなければならない 効 率 というのは 投 入 した 資 源 (コストや 職 員 が 徴 収 するための 時 間 )を 無 駄 なく 成 果 に 結 び 付 けることで ある 費 用 対 効 果 というとイメージしやすいかもしれない 公 金 一 括 徴 収 というのは 効 率 化 を 図 るための 手 法 である 少 ない 資 源 で 一 定 の 成 果 を 追 求 することである 公 金 一 括 徴 収 の 定 義 は 二 つある ひとつは 滞 納 になった 税 料 の 一 括 徴 収 である もう ひとつは 徴 収 を 見 据 えて 賦 課 や 料 金 徴 収 貸 付 の 段 階 から 一 人 の 納 税 者 もしくは 世 帯 で 括 り 徴 収 を 行 うことである 本 稿 では 前 者 を 主 に 対 象 としている 公 金 一 括 徴 収 を 導 入 する 際 には 効 率 的 になるのかどうかという 視 点 で 判 断 してほしい 公 金 一 括 徴 収 についてよくある 誤 解 は 公 金 一 括 徴 収 を 行 えば 確 実 に 滞 納 額 が 上 がると 思 われていることである 各 担 当 課 の 職 員 が 個 別 に 滞 納 者 に 対 応 するよりも 一 括 徴 収 をしたほうが 自 治 体 全 体 からみて しかも 短 期 的 長 期 的 な 視 野 に 立 った 場 合 に コスト も 時 間 も 削 減 できると 判 断 できるならば 一 括 徴 収 を 行 うとよい そのメリットがなけれ ば やる 意 味 はない 現 状 維 持 が 良 い 場 合 も 当 然 ある 職 員 個 人 の 視 点 からみて 公 金 一 括 徴 収 のメリットはなんだろうか 1 滞 納 者 の 状 況 が 把 握 しやすくなるということである 徴 収 においては 相 手 ( 滞 納 者 )の 状 況 が 分 からな いことが 最 も 困 ることである 攻 め 方 が 分 からなくなるからである 税 だけでなく 他 の 債 権 の 滞 納 状 況 をみることで 滞 納 者 の 生 活 状 況 がみえ 滞 納 整 理 の 方 法 に 対 して 多 角 的 な 分 析 を 行 うことができる 2 情 報 があれば 事 前 に 準 備 ができるため 滞 納 者 に 攻 められる 隙 が 減 少 する 滞 納 者 とのコンタクトが 変 わってくるだろう 滞 納 者 から この 間 課 の 人 に 払 ったから 今 はお 金 がありません と 言 われることはない なぜ 同 じ 自 治 体 から 何 人 も 個 別 にくるのか ひとつにまとめられないのか と 言 われることもない 3 分 業 によ り 業 務 ストレスも 軽 減 する たとえば 母 子 寡 婦 福 祉 資 金 貸 付 金 のような 福 祉 の 仕 事 をして いる 担 当 者 が 同 時 に 回 収 もするのはつらいという 声 を 聞 いたことがあるが 業 務 を 分 けて しまえば そういったストレスもない 回 収 という 括 りでさまざまな 債 権 が 集 まれば 回 3
収 業 務 の 職 員 はそれに 集 中 することができる 専 門 組 織 という 肩 書 は 滞 納 者 に 対 して 威 力 を 発 揮 できる 4 滞 納 者 に 納 税 意 識 を 高 めることができる 滞 納 には うっかり 忘 れか ら 確 信 犯 的 なものまであり なかには 行 政 に 対 する 不 満 を 滞 納 という 形 で 示 す 住 民 もいる そういった 住 民 に 対 して 自 治 体 の 全 体 像 と 住 民 の 受 ける 行 政 サービス 税 や 料 の 意 義 を 説 明 することで 納 税 意 識 を 高 めることができる これは 自 治 体 全 体 にとって とても 重 要 な 業 務 である 5 滞 納 者 が 支 払 いやすい 状 況 を 作 ることができる 複 数 滞 納 をしている 滞 納 者 の 場 合 支 払 やすい 状 況 を 作 ることが 必 要 である そうすることで 自 主 納 付 の 意 識 を 高 めることもできる これは 一 括 徴 収 だからできることである デメリットはあるだろうか デメリットとして よく 挙 がるものはデメリットではない と 考 えており 以 下 にいくつか 例 を 挙 げる 1さまざまな 債 権 の 知 識 が 必 要 になるから 大 変 というのは 良 く 聞 く 話 だが それはデメリットではない 覚 えた 知 識 は 職 員 の 財 産 にな る 2かえって 大 変 になった 煩 雑 になったという 声 も 良 く 聞 く これは 業 務 の 設 計 が 現 実 的 ではなかったということからくるので 業 務 を 見 直 せば 解 決 する 3 業 務 効 率 が 上 が ることへの 不 安 である 効 率 よく 働 くということはどういうことか 自 治 体 職 員 の 多 くは 効 率 というとリストラをイメージするようだが そうではない 効 率 的 に 働 けば それだ け 時 間 に 余 裕 ができ 社 会 に 貢 献 できるということである 税 を 納 める 立 場 の 住 民 にとっても 効 率 的 な 徴 収 は 公 平 性 も 高 まるので 喜 ばしいこと だといえる 第 3 章 公 金 一 括 徴 収 の 現 状 総 務 省 が 年 に 一 度 アンケート 調 査 を 行 い とりまとめている 地 方 税 の 収 納 徴 収 対 策 等 に 係 る 調 査 ( 概 要 ) によれば 税 と 料 との 一 括 徴 収 を 行 っているのは 平 成 21 年 7 月 現 在 で 都 道 府 県 では 1 団 体 市 町 村 では 441 団 体 であった 平 成 19 年 7 月 の 365 団 体 平 成 20 年 7 月 の 369 団 体 に 比 べると 72 団 体 増 えたことになる 表 2 は 一 括 徴 収 をどのよ うな 組 み 合 わせで 行 っているか その 組 み 合 わせのベスト 10 を 表 している 1 位 は 税 介 護 保 険 料 後 期 高 齢 者 医 療 保 険 料 の 組 み 合 わせで 62 団 体 が 行 っている 介 護 保 険 料 と 後 期 高 齢 者 医 療 保 険 料 は 特 別 徴 収 にあてはまらない 住 民 が 滞 納 者 になったケー スである 2 位 は 税 国 民 健 康 保 険 料 の 組 み 合 わせで 18 団 体 である 3 位 は 税 国 民 健 康 保 険 料 介 護 保 険 料 後 期 高 齢 者 医 療 保 険 料 の 組 み 合 わせで 12 団 体 であった 住 宅 使 用 料 や 保 険 料 水 道 料 金 給 食 費 などを 一 括 徴 収 に 含 めている 団 体 はさほど 多 くはなかった 4
表 2 公 金 一 括 徴 収 組 み 合 わせベスト 10 税 目 団 体 数 1 税 介 護 後 期 高 齢 者 医 療 62 2 税 国 保 18 3 税 国 保 介 護 後 期 高 齢 者 医 療 12 4 税 介 護 9 5 税 住 宅 保 育 水 道 給 食 7 6 税 介 護 後 期 高 齢 者 医 療 保 育 水 道 6 6 税 住 宅 保 育 水 道 6 8 税 介 護 後 期 高 齢 者 医 療 水 道 住 宅 5 9 税 保 育 4 9 税 介 護 後 期 高 齢 者 医 療 住 宅 保 育 水 道 4 注 : 等 などの 曖 昧 な 表 記 のものはカウントしていない 出 所 : 総 務 省 資 料 より 筆 者 作 成 第 4 章 実 現 にむけクリアする 課 題 一 括 徴 収 で 大 事 なのは 自 治 体 が 無 理 なく 継 続 できる 仕 組 みを 作 ることであり そのた めには 事 前 調 査 と 業 務 設 計 がとても 重 要 である この 章 では 公 金 一 括 徴 収 を 検 討 している 自 治 体 にはプロセスと 留 意 点 を 示 し すでに 公 金 一 括 徴 収 を 行 っている 自 治 体 に 対 しては 今 後 の 方 向 性 について 述 べる (1) 公 金 一 括 徴 収 を 行 う 前 にやること 1プロジェクトチームを 作 る まず 行 うことは 公 金 一 括 徴 収 を 行 うかどうかの 意 思 決 定 をするために 事 前 調 査 を 行 うプロジェクトチームを 作 ることである このチームは 行 うことになれば そのまま 実 働 部 隊 になることもあるし 解 散 することもある 行 わない 場 合 には 解 散 となるチームで ある 2 事 前 調 査 公 金 一 括 徴 収 を 行 うべきかどうか 事 前 に 調 査 が 必 要 である 一 括 徴 収 のメリットが 出 るのは ある 程 度 の 債 権 量 がある 場 合 であり 少 ない 数 でやっても 効 率 化 にはならない また どの 債 権 が 対 象 となるのかみる 必 要 がある 事 前 調 査 で 有 効 なのは 名 寄 せ 情 報 であ る 名 寄 せというのは 人 単 位 と 世 帯 単 位 で 滞 納 債 権 を 括 ることである 一 括 徴 収 は 複 数 滞 納 を 起 こしている 人 もしくは 世 帯 に 対 して 威 力 を 発 揮 するからである 名 寄 せすることで 複 数 滞 納 の 組 み 合 わせが 分 かり どの 科 目 を 一 括 徴 収 したらよいか も 分 かる その 他 に 地 域 別 や 職 業 別 性 別 年 収 別 世 代 別 などの 項 目 も 加 えると 徴 収 方 針 を 決 める 際 の 材 料 にもなる 以 前 筆 者 が 税 (2008 年 5 月 号 )で 紹 介 した 堺 の 事 例 を 参 考 にしてもらうとよいだろう 3 業 務 組 織 の 設 計 事 前 調 査 によって 複 数 滞 納 が 発 生 している 債 権 名 と 債 権 量 が 分 かったら 次 に 実 現 可 能 かどうか 見 極 める 必 要 がある それは 一 括 にできるかどうかということである つまり 5
債 権 によっては IT システムと 紙 の 両 方 で 管 理 していたり 紙 のみで 管 理 していたりするた め 業 務 を 始 めるにあたって 準 備 がどのくらい 必 要 か 見 極 める 必 要 があるからである 場 合 によっては 準 備 だけで 数 カ 月 かかる 場 合 もある また 滞 納 者 とのコンタクトの 状 況 に よっては 担 当 者 を 変 えないほうが 賢 明 な 場 合 もある 次 は 場 所 と 組 織 である よく 問 題 点 として 挙 がるのが 人 材 の 確 保 担 当 部 署 との 連 携 や 職 員 間 の 意 識 の 違 い 庁 内 での 競 争 意 識 などである 庁 内 から 人 材 を 調 達 するほうがよ いと 思 うが 足 りなければ 業 務 委 託 や 外 から 人 を 雇 うことも 視 野 に 入 れるとよい 2-3 年 周 期 の 人 事 異 動 も 念 頭 におき 業 務 の 平 準 化 には 気 を 配 るべきである つづいて 業 務 フローを 作 ることである 自 治 体 職 員 のよくある 声 として 一 括 徴 収 し たらかえって 徴 収 額 が 下 がったというものである 数 打 ち 当 たれば 徴 収 額 も 上 がるだろう しかし 果 たして 効 率 的 なのか そこの 観 点 は 持 つべきである 基 本 的 には 電 話 催 告 文 書 催 告 を 行 う 初 期 チーム 電 話 や 文 書 に 加 え 臨 戸 や 不 納 欠 損 の 対 応 を 行 う 中 長 期 チーム 公 売 換 価 など 償 却 を 行 う 償 却 チームに 分 けて それぞれの 業 務 フローを 作 ることである 業 務 フローの 名 のとおり 業 務 が 流 れるように 作 ることが 重 要 で 滞 る 部 分 があってはな らない 4 公 金 一 括 徴 収 を 行 うかどうか 決 断 する 事 前 調 査 と 業 務 設 計 によって 公 金 一 括 徴 収 を 行 うかどうか 決 断 する やらないと 決 め た 場 合 は 速 やかにプロジェクトチームを 解 散 し やると 決 めた 場 合 は 詳 細 な 業 務 設 計 と 実 行 に 向 けた 準 備 に 入 る 5 充 当 のルールを 決 めること 税 を 優 先 するか 国 保 やその 他 の 債 権 を 優 先 するかについて 悩 むというのは 自 治 体 で 良 く 聞 く 問 題 である 基 本 的 には 税 が 優 先 であるが 自 治 体 全 体 の 意 思 が 必 要 で ルールは 自 分 たちで 決 めることだ たとえば 税 を 優 先 させるならば それをきちんと 守 るべきであ る もし 滞 納 者 の 状 況 に 応 じていくならば 中 途 半 端 にはせず 全 部 オーダーメイドにする べきだ ルールを 自 治 体 ではっきりと 決 めるとよい 決 められないならば 税 を 優 先 するこ とを 守 るべきである 6コンタクト 時 に 納 税 教 育 を 行 うこと 住 民 の 納 税 意 識 を 強 化 することが 公 金 一 括 徴 収 の 目 的 のひとつである 窓 口 対 応 や 臨 戸 電 話 催 告 は 納 税 意 識 を 高 める 絶 好 のチャンスである 滞 納 者 と 直 接 かかわる 職 員 は 知 識 を 共 有 する 必 要 があるので 庁 内 でよく 話 し 合 い マニュアルを 作 っておくとよい 7アウトソーシングについて 人 手 やノウハウが 足 りなければ 積 極 的 に 協 力 者 を 求 めたほうがよい アウトソーシング には 派 遣 と 委 託 がある 派 遣 は 民 間 企 業 から 人 を 派 遣 してもらう 仕 組 みで 管 理 責 任 は 自 治 体 側 にある 委 託 は 一 括 で 委 託 するため 人 の 配 置 から 管 理 まですべて 委 託 先 に 責 任 が ある アウトソーシングについて 自 治 体 の 大 きな 欠 点 は 仕 様 書 が 曖 昧 な 点 である 基 本 的 に 民 間 企 業 では 仕 様 書 に 載 っているものに 限 り 業 務 を 行 う たとえばコンサルティング 6
を 頼 むのであれば 別 途 その 契 約 が 必 要 である 委 託 業 者 とよい 付 き 合 いができるように 自 治 体 は 明 確 な 仕 様 書 を 作 成 し それにそって 委 託 業 者 と 付 き 合 うことが 必 要 である また 個 人 情 報 の 扱 いが 問 題 となるが どのように 取 り 扱 うかによって 委 託 範 囲 が 変 わるため よく 話 し 合 っておく 必 要 がある (2) 今 後 の 視 点 次 に 公 金 一 括 徴 収 を 行 っている 自 治 体 に 対 して 今 後 の 視 点 を 述 べる 1データを 活 用 し 業 務 の 見 直 しを 常 に 行 うこと 公 金 一 括 徴 収 を 行 うと 経 験 と 大 量 のデータと 新 たな 気 づきが 得 られる これらは 自 治 体 にとって 財 産 であり 次 の 戦 略 に 活 用 できる そしてさらなる 効 率 を 追 求 する 必 要 があ る しかしむやみやたらと 見 直 せばよいというものではない 業 務 を 増 やさないという 点 に 気 をつけるべきだ どうしても 業 務 が 増 える 場 合 は 将 来 的 に 減 らすことができるとい う 見 通 しが 経 ち 期 間 限 定 でやることである 2IT システムの 構 築 より 効 率 化 するには IT システムの 構 築 は 避 けては 通 れない ここでいう IT システムは 個 人 別 世 帯 別 に 名 寄 せできるシステムを 指 す 必 要 機 能 は 個 人 別 世 帯 別 名 寄 せ 工 程 別 管 理 ( 進 捗 管 理 ) 数 値 管 理 滞 納 者 のプロファイリングなどである 庁 内 に 閉 じて 行 う 場 合 にはコールセンター 機 能 (インバウンド アウトバウンド)も 必 要 だろう システムを 導 入 するには 仕 組 みづくりが 重 要 であり 民 間 企 業 においても ただ 単 にパ ッケージシステムを 導 入 しただけでは 1,2 年 のうちに 失 敗 するケースも 出 ている 業 務 が 遂 行 しやすいような 設 計 になっているかを 見 極 めないと 結 局 使 わずに 終 わるという 可 能 性 もある コールセンターを 作 る 場 合 は 費 用 対 効 果 からみて 50 ブース 程 度 必 要 である さらにオペレーターの 要 因 確 保 と 管 理 が 必 要 となり 電 話 する 体 制 と 後 続 の 事 務 処 理 体 制 の 連 携 を 図 る 必 要 がある システム 導 入 は 職 員 の 業 務 負 荷 が 軽 減 され かつ 徴 収 率 も 上 がることが 見 込 めるように 検 討 することが 必 要 である 3アウトソーシングの 範 囲 拡 大 民 間 企 業 のコールセンターを 活 用 することは 効 率 化 が 進 む 一 つの 方 法 である 個 人 情 報 の 取 り 扱 いは 国 や 自 治 体 できちんと 議 論 する 必 要 がある しかし 場 合 によっては 法 改 正 や 新 しいルールが 必 要 かもしれない また 分 納 管 理 ( 交 渉 )を 委 託 できれば 大 きく 変 わる 国 民 健 康 保 険 料 については 社 会 保 険 庁 の 窓 口 受 付 と 収 納 業 務 がアウトソーシングできるようになった 自 治 体 でもこの ようになると 機 動 力 が 変 わってくる 法 律 改 正 が 必 要 になってくるが この 点 についても 国 や 自 治 体 で 議 論 しておいたほうがよいだろう 7
おわりに 本 稿 は 税 を 含 めた 自 治 体 の 財 源 となる 未 収 金 を 効 率 的 に 回 収 する 策 として 一 括 徴 収 を 取 り 上 げた 一 括 徴 収 の 意 義 と 現 在 の 自 治 体 の 状 況 を 整 理 し 課 題 について 述 べてきた まず 言 えることは 自 治 体 の 状 況 が 税 源 移 譲 によって 変 わったということだ 個 人 住 民 税 の 滞 納 が 増 えたということは その 他 の 生 活 にまつわる 国 民 健 康 保 険 料 や 介 護 保 険 料 住 宅 使 用 料 保 育 料 といったものも 滞 っている 可 能 性 が 高 い その 場 合 に 効 果 的 なのが 一 括 徴 収 である 一 括 徴 収 といっても 組 み 合 わせはさまざまで 自 治 体 の 実 情 に 沿 ったデ ザインが 重 要 である 設 計 次 第 で 効 率 的 になるかならないかが 決 まる 税 源 移 譲 によって 滞 納 が 増 えたということは 今 までより 自 力 で 財 源 を 確 保 する 必 要 が 高 まったということである これは 自 立 へのチャンスである 効 率 的 に 確 保 できるように なれば その 分 の 資 源 を 重 要 な 政 策 に 回 すことができる 滞 納 整 理 を 行 う 職 員 は 自 治 体 や 住 民 にとても 役 立 つことを 行 っているという 自 信 を 持 って 仕 事 に 励 んでいただきたい 参 考 文 献 柏 木 恵 (2008) 模 索 する 地 方 自 治 体 の 公 金 一 括 徴 収 ~ 租 税 公 課 との 一 体 化 運 用 体 制 は 効 率 的 かを 大 阪 堺 市 の 事 例 から 検 証 する3 税 2008 年 5 月 号 柏 木 恵 (2009) 地 方 自 治 体 の 共 同 徴 収 の 現 状 と 今 後 の 方 向 性 税 2009 年 7 月 号 総 務 省 (2010) 地 方 税 の 収 納 徴 収 対 策 等 に 係 る 調 査 ( 概 要 ) 平 成 21 年 12 月 8