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Transcription:

リスクが 極 めて 高 いシステムに 対 する 安 全 設 計 思 想 について 原 子 力 発 電 に 対 する 一 考 察 明 治 大 学 理 工 学 部 情 報 科 学 科 教 授 向 殿 政 男 Masao Mukaidono 1. はじめに 極 めてまれにしか 起 きないが いったん 発 生 すると 被 害 の 規 模 がとてつもなく 大 きな 災 害 や 事 故 に 対 して われわれはどのように 対 応 すべきなのであろうか 今 回 の 東 日 本 大 震 災 大 津 波 そして 福 島 第 一 原 発 という 三 重 災 害 は この 問 題 を 深 く 私 たちに 突 きつけ た 今 回 の 大 地 震 による 津 波 によって 死 者 や 行 方 不 明 者 が 二 万 人 に 及 ぶという 圧 倒 的 な 規 模 の 被 害 からすると 稀 に 見 る 大 災 害 であっ た 一 方 原 発 事 故 では 確 かに 直 接 の 死 者 は 一 人 も 出 ていないかもしれないが その 被 害 たるものは 甚 大 であった 放 射 性 物 質 は 日 図 1 福 島 第 一 原 発 事 故 (3 号 機 の 水 素 爆 発 ) てわが 国 の 産 業 を 直 撃 し 民 衆 をパニック 状 態 に 陥 れた さらに 深 刻 なのは 福 島 県 を 中 心 に 数 十 万 の 人 達 が 強 制 的 に 避 難 移 動 をさ せられ 故 郷 を 離 れざるを 得 ない 人 々が 多 く 出 たことである ストレスが 原 因 で 特 に 病 院 や 施 設 などの 移 転 に 伴 い 高 齢 者 や 体 の 弱 い 人 々において 多 くの 関 連 死 が 報 告 されてい る このように 原 子 力 発 電 事 故 の 被 害 は 津 波 による 直 接 的 な 死 者 とは 質 的 に 違 った 意 味 で 甚 大 なものがあった ここでは 今 回 の 原 子 力 発 電 の 事 故 のよう に 確 率 は 極 めて 低 いが いったん 発 生 すると 甚 大 な 被 害 を 及 ぼすような 人 工 的 なシステム に 対 する 安 全 設 計 思 想 はどうあるべきかにつ いて 考 えてみることにする 2. システムにおける 一 般 的 な 安 全 の 確 保 の 考 え 方 まず 人 工 的 なシステムにおける 一 般 的 な 安 全 の 確 保 のステップを 振 り 返 ってみよう に 示 すように 最 初 に 設 計 段 階 で 未 然 防 止 方 策 を 施 す 予 防 安 全 である 次 の 実 際 の (インターネットより 引 用 ) 本 はもとより 世 界 中 に 拡 散 した( ) 低 濃 度 の 放 射 線 被 害 がどのようなものであるかと いう 科 学 的 な 根 拠 が 不 明 確 な 中 で 日 常 の 食 品 などに 放 射 能 被 害 が 広 がり 農 産 物 に 大 き な 影 響 が 出 て ひいては 風 評 被 害 をもたらし 図 2 安 全 確 保 のステップ 10

図 3 リスクアセスメント(ISO/IESガイド51) 運 用 段 階 では 人 間 が 注 意 をしながら また 保 守 点 検 や 保 全 をしながら 事 故 を 起 こさない ように 安 全 を 確 保 する 運 用 安 全 と 呼 ぶこと ができよう 現 実 には 絶 対 安 全 はあり 得 な いので 事 故 の 可 能 性 は 常 にある 実 際 に 事 故 が 発 生 した 時 には 危 害 のひどさを 下 げる 拡 大 を 防 ぐ 再 稼 働 を 早 めるなどの 対 策 を 施 す 自 動 車 や 交 通 機 関 などで 言 えば 衝 突 安 全 である その 後 事 故 調 査 が 行 われ 原 因 を 科 学 的 客 観 的 な 事 実 を 背 景 や 組 織 まで 含 め て 明 らかにして 再 発 防 止 策 を 提 案 して 各 ステージにフィードバックをする 例 えば 新 しい 安 全 設 計 基 準 などを 設 けて 再 度 設 計 段 階 の 予 防 安 全 から 繰 り 返 すことになる 予 防 安 全 のステッ プにおける 設 計 段 階 で は 安 全 設 計 のバイブルと 言 われている ガイド51に 示 されているリスクアセス メントの 考 え 方 が 基 本 となる( ) ここで は 使 用 条 件 を 明 確 化 すること 人 間 がやる だろう 予 見 可 能 な 誤 使 用 も 明 確 にすること 危 険 源 (ハザード)を 洗 い 出 すこと 危 害 の 頻 度 とひどさからリスクの 大 きさを 見 積 もり 評 価 すること リスクが 許 容 可 能 か 否 かを 判 定 すること および 許 容 可 能 でない 場 合 には リスクを 低 減 することなどが 重 要 なステップ となっている リスクの 低 減 策 に 関 しては 重 要 な 概 念 として 同 じく ガイド 51にスリーステップメソッドが 示 されてい る( ) まず 本 質 的 安 全 設 計 すなわち 最 初 から 危 険 源 がないように 事 故 が 起 きてもそ のひどさは 小 さくなるように 人 間 が 関 与 す 図 4 スリーステップメソッド る 機 会 をなるべく 少 なくするように 本 質 的 に 安 全 を 確 保 する 設 計 とする しかし 現 実 にはそれだけでリスクをなくすことはできな いので 残 るリスクに 対 して 付 加 的 に 安 全 装 置 などを 含 めた 安 全 防 護 対 策 行 う これでも 決 してリスクはゼロにはならない 最 後 の 手 段 として 残 った 残 留 リスクを 使 用 上 の 情 報 として 提 示 して 作 業 者 に 安 全 の 確 保 を 委 ね る というステップである ここまでは 設 計 者 側 の 役 割 で 残 ったリスクに 対 しては 注 意 訓 練 管 理 などを 通 して 安 全 を 確 保 する 作 業 者 の 役 割 となる SE 170 2013. MARCH 11

3. リスクが 極 めて 高 い システムに 対 する 安 全 設 計 思 想 について のステップでは 未 然 防 止 からスター トしているが 現 実 には 事 故 を 経 験 して 再 発 防 止 のステップから 始 まる 事 例 が 多 い 事 故 から 学 ぶ 考 え 方 である しかし 今 回 の 原 発 事 故 のように 被 害 が 甚 大 であるような 場 合 に 事 故 から 学 ぶにしては あまりに 悲 劇 的 すぎる 再 発 防 止 よりは 未 然 防 止 を 徹 底 すべ きであることは 間 違 いない リスクとは その 定 義 にあるように 危 害 の 頻 度 ( 確 率 )と 危 害 のひどさの 組 み 合 わせ であるが 組 み 合 わせを 乗 算 や 加 算 などの 計 算 で 定 める 場 合 には 被 害 が 甚 大 である 場 合 であっても 頻 度 が 極 めて 小 さい 場 合 には 被 害 は 小 さいがよく 発 生 する 事 故 と 同 じリスク になる 可 能 性 があり 許 容 可 能 と 判 断 される ことがあり 得 る ここに 頻 度 とひどさかのど ちらを 優 先 させるべきかという 価 値 観 の 話 は 入 ってくる 危 害 のひどさを 優 先 して 余 り に 被 害 が 大 きすぎる 場 合 には 頻 度 がいくら 低 くても 認 めないという 立 場 があり 得 る 頻 度 は 確 率 で 評 価 され 確 率 は 不 確 定 さを 含 み いくら 小 さくても 明 日 起 きるかもしれないか らである 一 方 リスクの 高 いものに 挑 戦 す ることで 科 学 技 術 は 発 展 して 来 たし どんな システムでもリスクはゼロにはならない 利 便 性 を 受 けているシステムにリスクが 存 在 す るのは 当 然 である われわれは 事 故 に 学 びな がら 進 歩 を 続 けて 現 在 の 便 利 で 豊 かな 社 会 を 築 いてきた 便 益 を 受 けるためにはある 程 度 のリスクは 覚 悟 すべきである 歴 史 的 に 考 え れば 医 学 がそうであり 列 車 がそうであり 飛 行 機 がそうであり 有 人 宇 宙 飛 行 がそうで ある 等 等 という 事 実 がある 現 在 われわれ が 有 している 人 工 のシステムで いったん 事 故 が 起 きると 最 も 大 きな 被 害 を 出 すものの 典 型 が 現 在 の 形 の 原 子 力 発 電 であろう 多 重 防 護 の 考 え 方 で 悲 劇 的 な 被 害 が 発 生 する 確 率 が 極 めて 小 さくなっているから 安 全 であるとい う 理 由 で 許 容 され 各 国 で 稼 働 し わが 国 で もエネルギー 問 題 の 解 決 策 従 って 産 業 活 動 の 維 持 の 基 本 として 原 子 力 発 電 の 稼 働 が 認 められて 来 た(しかし 現 実 には 原 子 力 発 電 が 稼 働 して 約 60 年 その 間 にわれわれは3 回 のシビアアクシデントを 経 験 しているので 稼 働 台 数 を 考 慮 しても 過 去 のデータからは 決 して 確 率 が 極 めて 小 さいとは 言 えない) 確 率 は 極 めて 小 さいが いったん 発 生 する と 甚 大 な 被 害 を 及 ぼすような 人 工 的 なシステ ムに 対 してどう 考 えるべきだろうか そのた めには まず 信 頼 性 と 安 全 性 の 違 いを 明 確 にしておく 必 要 がある 信 頼 性 は 果 たすべ き 機 能 をいかに 保 ち 続 けるかを 問 い 安 全 性 は 機 能 が 果 たせなくなった 時 にも 人 命 などに 危 害 を 及 ぼさないようにすることを 問 う 一 般 に 信 頼 性 が 上 がれば 安 全 性 は 上 がると 考 え てよいが 安 全 性 を 高 めるために 信 頼 性 を 下 げる( 安 全 が 確 保 されなければ 稼 働 させない) ことがあり 得 るので 両 者 は 実 は 異 なった 概 念 である 安 全 を 確 保 するためには 二 つのア プローチがある 一 つは 本 来 の 機 能 を 果 た せなくなったら 安 全 側 に 固 定 する 構 造 を 組 み 込 んでおくものであり ほかの 一 つは 信 頼 性 を 高 めることで 安 全 性 を 確 保 するものであ る 前 者 は 確 定 論 的 または 構 造 的 アプロー チ 後 者 は 確 率 論 的 なアプローチと 呼 ばれて いる 例 えば 列 車 は 故 障 などが 生 じて 本 来 の 機 能 を 果 たせなくなった 場 合 には 止 めるこ とにより 安 全 を 確 保 することができる 前 者 の 確 定 論 的 に 安 全 を 確 保 している 一 方 飛 んでいる 飛 行 機 は 飛 ぶという 本 来 の 機 能 を 果 たせなくなったら 落 ちるしかない すなわ ち 安 全 側 に 固 定 することはできない 従 って 飛 んでいる 飛 行 機 の 安 全 性 は いかに 飛 行 を 続 行 するかという 本 来 の 機 能 を 維 持 し 続 ける 12

図 5 原 子 炉 の 固 有 安 全 ( 出 典 : 原 子 力 エネル ギー 図 面 表 2 0 11) 後 者 の 信 頼 性 のアプローチとなる 前 者 の 典 図 6 トリプルF(F 3 )シス テ ム 型 的 な 安 全 設 計 思 想 がフェールセーフ( 故 障 しても 安 全 )であり 後 者 のそれはフォールト トレランス( 多 重 系 冗 長 系 による 高 信 頼 化 ) である 原 子 力 発 電 はどのような 安 全 設 計 思 想 に 基 づいているのであろうか 電 源 が 喪 失 したら 制 御 棒 が 重 力 で 落 下 して 核 分 裂 が 止 まる 構 造 ( 沸 騰 型 ではこの 構 造 は 採 用 されていない) 核 分 裂 が 暴 走 してもある 安 定 した 状 態 になり 決 して 原 子 力 爆 弾 にはならないという 固 有 安 全 の 構 造 など( ) 多 くの 場 面 で 構 造 安 全 の 機 構 は 組 み 込 まれている しかし 今 回 の 事 故 の 真 の 原 因 となった 長 期 の 全 電 源 喪 失 か らは 必 然 的 にメルトダウンに 至 る 従 って 現 在 の 形 の 原 子 力 発 電 は フェールセーフに なっていない いかに 長 期 的 な 全 電 源 喪 失 を させないかという 信 頼 性 に 頼 った 安 全 なので ある 確 定 論 的 な 安 全 性 に 基 づいたフェール セー フな 原 子 力 発 電 はあり 得 ないのだろう か このことを 考 える 前 に リスクが 極 めて 大 きなシステムに 対 する 安 全 設 計 思 想 の 一 つ を 紹 介 しよう は 筆 者 が 提 案 している トリプルF(F )システムの 考 え 方 である ま ず 基 本 は フェールセーフの 構 造 を 組 み 込 ん でおき どうしようもなくなったら 安 全 側 に 止 まって 固 定 する 構 造 とする その 上 で 頻 繁 に 故 障 などで 安 全 側 に 止 まってしまっては 不 便 なので 本 来 の 機 能 を 果 たすべく 信 頼 性 高 く 稼 働 し 続 けるようにする これはフォー ルトトレランスの 概 念 に 基 づく 信 頼 性 で 確 保 である ここまでが 利 用 者 や 作 業 者 には 見 え なくてもよいインフラの 部 分 である 人 間 に 接 する 部 分 は ファジィの 精 神 で 持 って 設 計 する すなわち ある 程 度 のあいまいさを 許 し 人 間 にとって 分 かりやすく 柔 軟 で 少 し ぐらいの 誤 りを 許 し たとえ 人 間 が 間 違 えて も 大 丈 夫 なようにフールプルーフな 構 造 とす るものである ここは 人 間 の 安 心 につながる 部 分 である F システムの 考 え 方 に 近 いのは 鉄 道 であ ろう 列 車 は 安 全 が 確 認 できない 場 合 には 止 まることによって 安 全 を 確 保 する 信 号 機 や 踏 切 などの 故 障 はフェールセーフの 考 え 方 に 従 い 安 全 側 に 固 定 される この 構 造 が 構 築 さ SE 170 2013. MARCH 13

図 7 原 子 炉 における 安 全 確 保 のしくみ ( 出 典 : 原 子 力 エネル ギー 図 面 表 2 0 11) れている 条 件 の 上 で 高 信 頼 部 品 や 多 重 系 の 使 用 および 保 全 活 動 などで 信 頼 性 高 く 稼 働 し スケジュール 通 りに 運 用 される 人 間 と の 接 点 では 例 えば ドアがすべて 閉 じない のに 誤 って 運 転 手 が 発 車 命 令 を 出 しても 列 車 は 動 かないし 乗 客 が 挟 まれないようにホー ムドアが 設 置 されている 現 実 には 人 身 事 故 が 起 きているのは これらのシステムが 完 全 でないためである さて 原 子 力 発 電 の 安 全 ではどうであろう か 前 述 したように 現 在 の 原 子 力 発 電 で は 長 期 の 全 電 源 喪 失 が 起 こると 必 然 的 にメ ルトダウンが 生 ずる 実 際 には 長 期 の 全 電 源 喪 失 が 起 こらないように 多 重 系 で すなわち フォールトトレランスの 考 え 方 信 頼 性 に 基 づいて 安 全 が 確 保 されている この 場 合 のリ スクは 危 害 が 起 る 確 率 ( 長 期 の 全 電 源 喪 失 が 起 こる 確 率 )とその 危 害 のひどさ(メルトダウ ンから 引 き 起 こされる 被 害 現 実 には 今 回 の 悲 惨 な 原 発 事 故 の 被 害 )との 組 み 合 わせであ り われわれはこのリスクを 許 容 するか 否 か で 原 発 の 存 在 を 認 めるか 否 かが 判 断 されるこ とになる 従 って 原 発 が 安 全 であると 判 断 さ れるためには このリスクをいかに 下 げるか にかかっている 原 発 の 設 計 者 にとって 最 も 重 要 な 点 は 長 期 の 全 電 源 喪 失 の 発 生 する 確 率 をいかに 下 げるかである 今 回 の 事 故 は 津 波 がきっかけであったが いくら 防 潮 堤 を 高 くしてもそれを 超 える 津 波 が 来 ないという 保 証 はない コスト 利 便 性 管 理 費 景 観 など を 考 えると 防 潮 堤 をいたずらに 高 くするの は 考 えものである 津 波 は 来 ると 仮 定 して 長 期 の 全 電 源 喪 失 の 可 能 性 を 下 げる 方 に 努 力 を 傾 注 すべきである 長 期 の 全 電 源 喪 失 を 引 き 起 こすきっかけは 何 も 津 波 だけではない 隕 石 の 落 下 もあるだろうし 旅 客 機 の 墜 落 もあ るだろうし テロも 考 えられるだろう 現 在 の 原 子 力 発 電 の 設 計 ではここに 最 も 注 意 を 払 うべきなのであるが 国 の 原 子 力 安 全 委 員 会 の 指 針 では 原 発 の 設 計 に 際 して 長 期 間 に わたる 全 電 源 喪 失 を 考 慮 する 必 要 はない と 規 定 されているとのことである 安 全 設 計 の 基 本 を 忘 れているとしか 言 いようがない ま た このリスクを 下 げるもう 一 つの 方 法 は 被 害 のひどさを 軽 減 することである そのため には 原 発 の 運 用 者 にとって 最 も 重 要 な 点 は 事 故 が 起 きた 後 の 対 策 を 十 分 に 準 備 しておく ことである 事 故 は 起 きないとしてその 対 策 をおろそかにしていたことは 安 全 運 用 の 基 本 を 無 視 しているとしか 言 いようがない 現 在 の 原 子 炉 で 事 故 が 起 きた 時 には 止 め る 冷 やす 閉 じ 込 めることを 基 本 としてお り このために 電 源 が 必 須 なのである( ) これは 能 動 安 全 ( 能 動 的 に 働 き 掛 けることで 安 全 を 確 保 する)と 呼 ばれ 信 頼 性 に 基 づく 安 全 の 確 保 である これに 対 して もう 一 つ の 方 法 である 構 造 に 基 づく 安 全 によって 原 子 力 発 電 を 設 計 するにはどうしたらよいだろう 14

か それは フェールセーフな 原 子 力 発 電 を 考 えることである F システムの 考 え 方 に 従 い どうしようもなくなった 時 には 止 まる 冷 える 閉 じ 込 まることを 基 本 とする 受 動 安 全 ( 何 もしなくても 自 動 的 に 安 全 になる)と 呼 ばれる 考 え 方 を 採 用 する フェールセーフな 原 子 力 発 電 は 可 能 であろうか 現 在 の 原 子 力 発 電 は 効 率 を 重 視 するために 極 めて 大 型 と なり かつ 密 集 して 設 置 されている リスクが 高 まるのは 必 然 である 長 期 の 全 電 源 喪 失 で メルトダウンが 起 きるのは 余 熱 による 燃 料 棒 の 溶 解 が 原 因 である 例 えば 簡 単 に 言 って しまえば 燃 料 棒 の 余 熱 を 賄 うだけの 水 を 用 意 し その 中 で 原 子 炉 を 稼 働 させ 事 故 が 生 じ てどうしようもなくなった 時 にはそのままに しておけば 燃 料 棒 の 余 熱 は 除 去 されるとい う 構 造 が 考 えられる これ 以 外 にも フェー ルセーフな 原 子 炉 の 形 態 は 考 えられるであろ う これらの 形 態 では 大 きな 原 子 炉 はでき ないかもしれないが 効 率 よりも 安 全 性 を 優 先 し 小 型 のものを 作 って 分 散 して 設 置 すべ きである なお 原 子 力 発 電 に 存 在 する 大 き なリスクには この 他 にも 原 子 炉 からの 高 濃 度 放 射 性 物 質 の 拡 散 高 レベル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 理 などもあるが ここでは 触 れない 4. あとがき 人 工 的 なシステムの 安 全 性 は 一 般 的 には 安 全 基 準 に 従 い 設 計 され 残 されたリスクの 大 きさを 開 示 し それが 許 容 可 能 か 否 かで 判 断 されることを 基 本 とする 今 回 の 原 子 力 発 電 の 事 故 で 今 まで 対 応 していなかった 危 険 源 やリスクが 明 確 になり( 地 震 の 大 きさや 津 波 の 大 きさ) 新 しい 安 全 基 準 を 定 めて 対 応 す れば これまで 以 上 に 安 全 性 が 高 まることは 明 らかである 失 敗 に 学 ぶ 再 発 防 止 の 考 え 方 である しかし 現 在 の 構 造 や 考 え 方 をその ままにして 安 全 性 を 上 げるというモグラたた き 的 対 応 の 延 長 線 上 で わが 国 の 原 子 力 発 電 がこれからも 認 められるだろうか わが 国 や 世 界 の 民 衆 の 価 値 観 に 依 存 する 大 きな 今 後 の 課 題 である リスクは 危 害 の 発 生 確 率 と 危 害 にひどさの 組 み 合 わせであるが 危 害 が 極 めて 大 きな 場 合 には 前 述 したように 発 生 頻 度 がいくら 小 さくてもそのリスクは 認 められないという 考 え 方 はあり 得 る 確 率 よりもひどさを 優 先 す るという 価 値 観 に 基 づくもので 確 率 的 には 極 めて 稀 であるという 意 味 で 数 値 的 には 安 全 であっても 安 心 が 得 られないからである 安 心 は 個 人 の または 社 会 の 価 値 観 に 依 存 し 安 全 が 実 現 されている 構 造 が 理 解 でき 安 全 を 確 保 している 人 間 組 織 機 関 を 信 頼 する ことから 醸 成 されるのだろう フェールセー フに 基 づくアプローチは 確 定 論 に 基 づく 考 え 方 であり リスクが 極 めて 高 いシステムに 対 する 安 全 設 計 思 想 の 一 つの 候 補 である 構 造 がよく 理 解 でき 本 質 的 に 安 全 が 確 保 されて いるので 安 心 につながる この 際 原 子 力 発 電 は 安 全 の 基 本 に 戻 り 安 全 確 保 の 構 造 と 論 理 に 戻 る 必 要 があるだろう 原 子 力 発 電 に 関 しては わが 国 の 技 術 力 をフェールセーフな 原 子 炉 の 開 発 に 集 中 し 原 子 力 発 電 の 高 度 な 安 全 性 確 保 の 技 術 の 開 発 を 通 して わが 国 は 安 全 立 国 として 世 界 に 貢 献 して 行 くという 選 択 枝 もあり 得 て それができないならば 地 震 や 津 波 が 多 いわが 国 では 長 期 的 には 原 発 ゼロという 選 択 枝 もあり 得 るだろうというこ とを 提 案 したい 参 考 文 献 1) 向 殿 政 男 北 野 大 他 安 全 学 入 門 ~ 安 全 の 確 立 から 安 心 へ ~ 研 成 社 2009 むかい の まさお 1970 年 明 治 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 博 士 課 程 修 了 工 学 博 士 同 年 明 治 大 学 工 学 部 電 気 工 学 科 専 任 講 師 78 年 同 大 学 工 学 部 電 子 通 信 工 学 科 教 授 89 年 から 同 大 学 理 工 学 部 情 報 科 学 科 教 授 経 済 産 業 省 消 費 経 済 審 議 会 委 員 ( 製 品 安 全 部 会 長 ) 国 土 交 通 省 社 会 資 本 整 備 審 議 会 委 員 ( 昇 降 機 等 事 故 調 査 部 会 長 ) 消 費 者 庁 参 与 ( 公 ) 私 立 大 学 情 報 教 育 協 会 会 長 SE 170 2013. MARCH 15