大 腸 がんに 対 する 外 科 的 治 療 について I. はじめに ここでは 大 腸 癌 の 治 療 を 受 けられる 方 に 病 気 に 対 する 正 しい 知 識 を 持 ってい ただき,あなたにとって 最 も 良 い 治 療 を 選 択 していただくことを 目 的 にして 作 成 しました.この 文 章 をごらん 頂 いたうえで,さらに 詳 しいことをお 知 りにな りたい 方 は 大 阪 市 立 大 学 医 学 部 付 属 病 院 消 化 器 外 科 のスタッフとご 相 談 くだ さい. II. 大 腸 とは? まず, 消 化 管 のしくみについて 説 明 します. 食 物 は 飲 み 込 んだ 後, 食 道 を 通 過 し, 胃 に 入 ります. 食 物 は 胃 酸 と 消 化 酵 素 で 液 状 となった 後, 小 腸 に 運 ばれ ます. 食 物 中 の 栄 養 素 のほとんどは 小 腸 で 吸 収 されます. 消 化 吸 収 されなかっ た 食 物 は 液 状 のまま, 大 腸 に 運 ばれます. 大 腸 では1 日 500cc 程 度 の 水 分 を 吸 収 する 働 きと 便 をためておく 働 きとがあります. 大 腸 は 1.5 2mの 長 さがあり, 結 腸 ( 盲 腸, 上 行 結 腸, 横 行 結 腸, 下 行 結 腸 ), 直 腸 に 分 かれています. III. 大 腸 癌 とは? 大 腸 癌 は 大 腸 の 粘 膜 より 発 生 した 癌 ( 悪 性 腫 瘍 )で, 発 生 部 位 により 結 腸 癌 と 直 腸 癌 に 大 別 されます. 結 腸 癌 と 直 腸 癌 では 治 療 方 法, 再 発 形 式 が 異 なるの で 区 別 して 考 える 必 要 があります. 大 腸 癌 は 治 療 せずに 放 置 すると 癌 腫 が 大 きくなり, 出 血 や 腸 閉 塞 をきたし, 他 臓 器 に 転 移 をきたして, 死 につながることがあります.このため, 診 断 がつ いたら, 適 切 な 治 療 を 行 うことが 必 要 となります. IV. 症 状 肛 門 に 近 い 部 位 にできた 癌 では, 血 便 や 便 が 細 くなる, 残 便 感, 下 腹 部 痛, 下 痢 と 便 秘 の 繰 り 返 しがみられることもあります. 肛 門 から 離 れた 結 腸 にでき た 癌 では 自 覚 症 状 が 尐 なく, 健 診 や 貧 血 症 状 で 気 付 かれることもあります. V. 診 断 大 腸 内 視 鏡 検 査 やバリウム 注 腸 検 査 で 大 腸 病 変 を 確 認 し, 血 液 検 査 および 組 織 学 的 検 査 にて 診 断 していきます. 他 の 部 位 に 転 移 をしていないかを 胸 部 単 純 レ ントゲン, 腹 部 超 音 波 検 査,CT 検 査,MRI 検 査 などを 行 って 調 べます 6. 注 腸 造 影 検 査
肛 門 からバリウムと 空 気 を 注 入 してレントゲン 撮 影 する 検 査 です 癌 の 疑 いがあればさらに 大 腸 内 視 鏡 検 査 が 必 要 です 2. 大 腸 内 視 鏡 検 査 大 腸 内 視 鏡 検 査 では 腸 の 中 をきれいにするために 検 査 の 前 日 から 検 査 食 な どの 特 別 な 食 事 を 食 べ 下 剤 をかけます 肛 門 から 盲 腸 まで 内 視 鏡 を 挿 入 して 直 接 観 察 し 異 常 があれば 生 検 を 行 います 3. CT 腹 部 超 音 波 検 査 注 腸 造 影 や 大 腸 内 視 鏡 検 査 で 大 腸 癌 の 診 断 がつけば CT 腹 部 超 音 波 検 査 にて 大 腸 癌 原 発 巣 の 進 展 程 度 転 移 の 有 無 について 調 べます 4. 腫 瘍 マーカー CEA や CA19-9 が 一 般 的 ですが 進 行 癌 でも 陽 性 率 は 約 50%です 一 般 には 腫 瘍 マーカーは 転 移 再 発 の 指 標 として また 治 療 効 果 の 判 定 に 用 いられていま す VI. 進 行 度 病 期 ( 別 紙 参 照 ) 大 腸 癌 の 進 行 度 は 癌 の 壁 深 達 度 ( 癌 が 大 腸 壁 のどの 程 度 まで 深 くくい 込 ん でいるか)やリンパ 節 転 移 の 有 無 や 程 度 周 囲 臓 器 への 浸 潤 や 遠 隔 臓 器 への 転 移 の 有 無 により 区 別 されています 進 行 度 は 手 術 の 前 に 診 断 し 手 術 術 式 を 決 定 しますが 手 術 後 切 除 した 癌 病 巣 やリンパ 節 を 病 理 組 織 学 的 に 詳 しく 調 べ 最 終 的 に 進 行 程 度 が 明 らかになります 病 期 Iはリンパ 節 に 転 移 のない 比 較 的 癌 の 壁 深 達 度 が 浅 いもので 病 期 II は 壁 深 達 度 がより 深 いもののリンパ 節 転 移 が 無 いもの 病 期 III は リンパ 節 転 移 が 陽 性 のもので リンパ 節 転 移 の 拡 がりの 程 度 により IIIa と IIIb に 区 別 されています リンパ 節 転 移 が 局 所 に 限 局 していない 場 合 や 腹 膜 転 移 や 遠 隔 臓 器 に 転 移 がある 場 合 は 病 期 IV と 分 類 されます VII. 治 療 1. 内 視 鏡 治 療 粘 膜 内 や 粘 膜 下 層 の 比 較 的 浅 い 範 囲 に 留 まっている 癌 の 場 合 には 内 視 鏡 切 除 によって 治 療 を 完 了 することができます しかし 病 変 が 大 きかったり 腸
の 屈 曲 部 やヒダの 陰 に 隠 れている 場 合 などは 内 視 鏡 切 除 ができないこともあり ます 内 視 鏡 切 除 後 に 癌 の 拡 がりが 予 想 外 に 広 く 癌 が 残 った 場 合 やリンパ 節 転 移 が 強 く 疑 われる 場 合 は 追 加 で 腸 切 除 術 を 行 うこともあります 2. 手 術 治 療 a) 経 肛 門 的 切 除 術 比 較 的 肛 門 に 近 い 早 期 癌 では 肛 門 から 直 視 下 に 癌 病 巣 を 切 除 できる 場 合 が あります b) 開 腹 結 腸 切 除 術 早 期 癌 の 一 部 や 進 行 大 腸 癌 の 場 合 は リンパ 節 郭 清 ( 転 移 の 可 能 性 のあるリン パ 節 も 合 併 切 除 )を 伴 った 腸 切 除 術 が 必 要 になります a. 開 腹 操 作 手 術 方 針 決 定 全 身 麻 酔 をかけた 後, 直 接 腹 部 を 切 開 します まず, 病 気 の 進 み 具 合 を 調 べ て 予 定 していた 手 術 を 行 うことであなたの 病 気 に 対 処 できるかどうか 判 断 し ます b. 病 巣 切 除 あなたの 病 巣 が 予 定 していた 手 術 で 対 処 可 能 と 判 断 した 場 合 は, 病 巣 の 切 除 を 行 います 手 術 では, 病 巣 以 外 に 動 脈 に 沿 ってあるリンパ 節 (がんが 転 移 し やすい 部 位 )というところを 同 時 に 切 除 します これをリンパ 節 郭 清 といいま す また 腹 膜 に 転 移 していたり, 肝 臓 に 転 移 していた 場 合 などでも 可 能 であれ ば 切 除 します また, 診 断 を 確 実 にするために, 手 術 中 に 検 体 ( 切 除 組 織, 腹 腔 内 を 洗 浄 し た 液 )を 病 理 検 査 に 提 出 することがあります 術 後 に 切 除 標 本 は, 病 気 の 進 行 度 を 決 定 するために, 病 理 検 査 に 提 出 します c. 腸 管 の 再 建 腸 を 切 除 した 場 合,それをつなぎ 合 わせて, 腸 が 口 から 肛 門 までつながるよ うにします これを 消 化 管 の 再 建 といいます d. 手 術 終 了 に 際 して 病 巣 の 切 除 が 終 了 し, 消 化 管 の 再 建 が 終 わると 手 術 はほぼ 終 了 です 最 後 に 切 除 した 部 位 周 囲 に 出 血 がないか,ガーゼなどの 置 き 忘 れがないかなどをチェ ックします お 腹 の 中 の 腹 水 を 除 去 するため ドレーンという 管 をお 腹 の 中 に 入 れることもあります この 後 閉 腹 します
c) 開 腹 直 腸 切 除 術 および 切 断 術 直 腸 癌 の 手 術 では 以 前 は 肛 門 に 近 い 直 腸 癌 の 多 くに 人 工 肛 門 がつくられて いましたが 最 近 では 約 9 割 の 方 には 人 工 肛 門 を 避 け 肛 門 を 温 存 した 手 術 が できるようになりました しかし 未 だ 約 1 割 の 方 に 対 しては 人 工 肛 門 を 造 設 する 直 腸 切 断 術 という 手 術 を 行 わなければなりません こういった 方 には 術 前 よりパンフレットやビデオを 用 いて 人 工 肛 門 についての 知 識 を 持 っていた だくようにしています また 当 院 には 人 工 肛 門 ケアにたいして 専 門 的 な 知 識 技 術 を 有 する WOC 看 護 認 定 看 護 師 が 2 名 おり 入 院 中 および 退 院 後 も 定 期 的 に ケアを 行 っています また 直 腸 癌 の 場 合 広 くリンパ 節 を 切 除 すると 術 後 に 排 尿 機 能 障 害 を 併 発 することがあるため 最 近 は リンパ 節 の 切 除 範 囲 を 縮 小 したり 神 経 を 温 存 しながらリンパ 節 郭 清 を 行 う 神 経 温 存 術 式 も 積 極 的 に 選 択 されるようになって います 一 方 直 腸 癌 が 膀 胱 や 前 立 腺 などの 周 囲 臓 器 に 浸 潤 している 場 合 には 膀 胱 や 前 立 腺 などを 含 めた 骨 盤 内 臓 の 全 摘 術 を 行 うことがあります C) 腹 腔 鏡 手 術 従 来, 大 腸 癌 の 手 術 では 腹 部 に 約 15 20cmの 縦 切 開 が 必 要 でしたが 近 年 大 腸 癌 に 対 する 腹 腔 鏡 手 術 も 普 及 してきています この 手 術 は 図 のように, おなかに 約 1cm 程 度 の 穴 をあけ,その 穴 からテレビカメラを 挿 入 し, 腹 腔 内 を モニターに 映 します.モニターをみながら,さらに 数 カ 所 の 穴 をあけ,その 穴 から 特 殊 なハサミや 鉗 子 を 挿 入 して 手 術 を 行 います.この 手 術 では 最 終 的 に 腹 部 に 5 7cmの 小 切 開 が 必 要 ですが, 従 来 の 開 腹 手 術 に 比 べて, 傷 の 痛 みが 尐 なく, 術 後 の 回 復 が 早 い, 傷 が 小 さく 目 立 ちにくいという 長 所 があります 当 院 においても 1997 年 より 本 術 式 を 導 入 し, 現 在 まで 約 400 名 の 方 に 行 っていま す 但 し 腹 腔 鏡 手 術 は 特 殊 な 技 術 を 必 要 とし どの 症 例 に 対 してもできるわ けではありません また 腹 腔 鏡 手 術 で 開 始 しても 癒 着 や 出 血 の 具 合 によっ ては 安 全 性 のため 開 腹 手 術 への 移 行 もありえます 担 当 医 と 充 分 に 話 し 合 っ て 決 めて 下 さい
モニター 腹 腔 鏡 手 術 3. 化 学 療 法 大 腸 がんの 化 学 療 法 は 手 術 後 の 再 発 予 防 を 目 的 とした 補 助 化 学 療 法 と 根 治 手 術 が 不 可 能 な 進 行 再 発 癌 に 対 する 生 存 期 間 の 延 長 及 び QOL( 生 活 の 質 )の 向 上 を 目 的 とした 化 学 療 法 とがあります a) 術 後 補 助 化 学 療 法 主 には 術 後 補 助 化 学 療 法 はリンパ 節 転 移 がある stageiii の 方 に 行 うように しています 術 後 の 顕 微 鏡 の 結 果 を 確 認 後 行 います b) 進 行 再 発 症 例 に 対 する 化 学 療 法 切 除 できない 大 腸 癌 の 場 合 でも 全 身 状 態 が 元 気 な 方 では 化 学 療 法 を 行 わ ない 場 合 と 比 較 して 化 学 療 法 を 行 ったほうが 生 存 期 間 を 延 長 させることが わかっています 最 近 は 副 作 用 の 比 較 的 尐 ない 抗 がん 剤 の 開 発 と 副 作 用 対 策 の 進 歩 により ほとんどの 症 例 が 入 院 せずに 外 来 通 院 で 日 常 生 活 を 送 りながら 化 学 療 法 を 受 けています 当 院 では 2006 年 4 月 より 外 来 化 学 療 法 センターが 開 設 され できるだけ 快 適 な 環 境 で 化 学 療 法 が 受 けられるように 配 慮 していま す
VIII. 手 術 時 あるいは 術 後 の 問 題 点 1. 消 化 吸 収 能 への 影 響 大 腸 は 消 化 吸 収 という 意 味 からはさほど 重 要 ではなく 大 腸 を 部 分 的 に 切 除 しても ほとんど 影 響 はありません 2. 排 便 機 能 への 影 響 直 腸 を 除 く 大 腸 の 切 除 では 術 後 早 期 を 除 いて 排 便 機 能 への 影 響 はほとん どありません ただし 直 腸 切 除 の 場 合 は 残 る 直 腸 の 長 さにもよりますが 多 尐 は 排 便 への 影 響 が 残 ります 軟 便 の 傾 向 になったり 排 便 回 数 が 増 えたり することがあります 高 齢 の 方 や 肛 門 括 約 筋 の 機 能 が 低 下 している 方 では 術 後 時 に 便 失 禁 がおこることがあります 3. 排 尿 機 能 障 害 直 腸 癌 なかでも 肛 門 に 非 常 に 近 い 部 位 に 発 生 する 下 部 直 腸 癌 では 癌 を 根 治 するために 骨 盤 壁 のリンパ 節 を 広 範 囲 に 切 除 する 場 合 があります この 場 合 排 尿 機 能 に 関 与 する 神 経 を 傷 つけざるを 得 ないことがあり 術 後 に 排 尿 機 能 の 障 害 が 残 ることがあります リンパ 節 転 移 や 郭 清 の 程 度 にもよりますが もっ とも 重 度 の 場 合 は 自 己 導 尿 が 必 要 なこともあります ただし 最 近 は これ らの 神 経 を 温 存 しながらリンパ 節 郭 清 を 行 う 手 術 が 行 われるようになっており 術 後 の 排 尿 障 害 は 軽 くなっています 神 経 を 温 存 する 手 術 を 行 った 場 合 でも 排 尿 に 関 与 する 神 経 の 近 くに 手 術 操 作 が 加 わりますので 術 後 早 期 には 何 らか の 排 尿 障 害 が 生 じることもあります 4. 性 機 能 障 害 排 尿 に 関 与 する 神 経 に 比 べ 男 性 の 性 機 能 に 関 与 する 神 経 はさらに 繊 細 複 雑 であると 考 えられています 神 経 を 温 存 したにもかかわらず 術 後 に 何 らか の 性 機 能 障 害 が 残 る 場 合 があります 年 齢 的 要 因 や 心 的 要 因 も 関 与 しているも のと 推 測 されます 5. 人 工 肛 門 を 造 設 した 場 合 発 生 した 直 腸 癌 が 肛 門 に 極 めて 近 い 場 合 は 直 腸 を 切 断 し 人 工 肛 門 を 造 設 す ることになります また 非 常 に 肛 門 に 近 い 位 置 での 吻 合 を 行 った 場 合 吻 合 部 の 安 静 を 保 つため 一 時 的 に 人 工 肛 門 を 造 設 し 吻 合 部 が 安 定 した 状 態 にな ってから( 通 常 3-6ヶ 月 後 )ニ 期 的 に 人 工 肛 門 を 閉 鎖 することもあります 人 工 肛 門 の 装 具 の 進 歩 は 著 しく 便 の 漏 れや 臭 い 皮 膚 のかぶれなどはほぼ 克 服 されています 人 工 肛 門 があっても ほとんどの 方 は 術 前 通 りの 生 活 ( 社
会 復 帰 を 含 めて)に 復 帰 しておられます 本 院 では ストーマ 外 来 を 開 設 して おり 退 院 後 もストーマ 造 設 後 の 方 々のケアーを 行 っています 7. 術 後 偶 発 症 手 術 に 際 しては, 上 記 のような 合 併 症 が 発 生 することがあります これらに 対 してその 発 生 防 止 に 最 大 限 の 努 力 を 払 うことは 言 うまでもありませんが, 万 一 発 生 した 場 合 には 万 全 の 体 制 で 対 処 いたします 手 術 にともなっていろんな 困 ったこと( 偶 発 症 )が 発 生 してくる 可 能 性 があります. 偶 発 症 をおこさないよ うに 最 大 限 の 努 力 はしていますが,100% 安 全 な 手 術 というのはありえません. 以 下 におこる 可 能 性 のあるいくつかの 合 併 症 について 述 べます. a. 呼 吸 器 障 害 手 術 中 は 気 管 内 にチューブを 留 置 し, 人 工 呼 吸 器 にて 呼 吸 管 理 を 行 います 術 後 にチューブを 抜 去 します 手 術 後, 臥 床 する 時 間 が 長 いことや, 腹 部 手 術 創 の 痛 みなどもあり, 肺 に 溜 まった 痰 を 十 分 に 排 出 できないことがあります この 場 合, 肺 が 十 分 に 膨 らまなくなったり( 無 気 肺 ), 肺 の 感 染 症 ( 肺 炎 )を 併 発 することがあります これらは 高 齢 者,もともと 肺 や 心 臓 の 機 能 の 悪 い 方 では 発 生 頻 度 が 高 くなります 重 篤 な 場 合 は 人 工 呼 吸 器 による 管 理 が 必 要 とな ります b. 出 血 大 腸 がんの 手 術 では, 通 常, 出 血 量 は 尐 なく 輸 血 が 必 要 となることはほとん どありません しかし, 術 前 より 貧 血 がある 方,あるいは, 膀 胱 などの 他 の 臓 器 を 一 緒 に 切 除 するような 大 きな 手 術 の 場 合 は 手 術 中 や 手 術 後 病 棟 で 輸 血 を 行 う 場 合 があります また, 手 術 後 病 棟 に 戻 った 後 に 出 血 をみることがあり, 再 手 術 を 行 い 止 血 する 場 合 があります 当 院 では,その 発 生 頻 度 は1% 以 下 で す c. 縫 合 不 全 ( 腸 をつないだ 部 位 が 完 全 につながらないこと) S 状 結 腸 の 切 除 を 行 った 後, 腸 と 腸 をつなぎます( 消 化 管 再 建 ) このつな いだ 部 位 がふさがらず 消 化 管 の 内 容 物 が 腹 腔 内 にもれてしまうことがありま
す これは, 術 後 発 熱 や 腹 痛 が 出 現 したり,お 腹 に 入 れたチューブ(ドレーン チューブ)より 腸 内 容 が 排 出 されることでわかります 自 然 に 塞 がることもあ りますが,ときに 腹 腔 内 に 膿 瘍 ( 膿 の 塊 )ができ, 発 熱 や 腹 痛 が 続 く 場 合 があ ります この 場 合 に, 膿 を 取 り 除 くためにチューブを 挿 入 したり,あるいは 再 開 腹,あるいは 一 時 的 に 人 工 肛 門 造 設 術 を 行 うことがあります 発 生 頻 度 は 4% 程 度 です d. 腸 閉 塞, 腸 捻 転 開 腹 手 術 を 行 った 場 合, 腸 管, 腸 間 膜, 腹 壁 はある 程 度 は 癒 着 します この 際, 腸 管 が 捻 れた 形 で 癒 着 してしまうと 腸 内 容 物 の 流 れがそこで 塞 ぎ 止 められ てしまいます この 場 合, 腹 痛, 吐 き 気, 嘔 吐 の 症 状 が 出 ます 経 口 摂 取 を 止 め, 保 存 的 に 治 癒 する 場 合 がほとんどですが,それでも 回 復 しない 場 合 は 手 術 を 必 要 とすることがあります また,まれに 腸 がねじれ 血 流 障 害 を 起 こし 腐 っ てしまうことがあり, 緊 急 手 術 を 必 要 とすることもあります 手 術 を 必 要 とす る 腸 閉 塞 の 発 生 頻 度 は 当 院 では 約 2%です 腸 閉 塞, 腸 捻 転 は 退 院 後 数 か 月 あるいは 数 年 して 起 こることもあり, 普 段 か ら 食 生 活 に 注 意 することが 重 要 です e. 深 部 静 脈 血 栓 症, 肺 塞 栓 症 俗 にエコノミークラス 症 候 群 とも 呼 ばれている, 最 近 日 本 でもその 発 生 が 増 加 しているものです 手 術 の 後 に 長 期 間 寝 ていることにより 足 の 深 いところに ある 静 脈 に 血 栓 ( 血 の 塊 )ができ, 歩 いた 時 にそれがはがれて 肺 に 飛 んで 肺 の 動 脈 を 詰 めてしまう 病 気 で, 無 症 状 のものから 突 然 死 に 至 るものまであります 胸 の 痛 みや 呼 吸 苦 などの 症 状 を 伴 う 肺 塞 栓 症 の 頻 度 は2% 前 後 です f. 感 染 : 創 感 染, 腹 腔 内 膿 瘍 大 腸 がんの 手 術 はどうしても 腸 内 容 物 が 尐 しはお 腹 の 中 に 出 てしまうので, それが 原 因 で 皮 下 脂 肪 に 感 染 したり,お 腹 の 中 で 感 染 したりすることがありま す( 腹 腔 内 膿 瘍 ) 皮 下 脂 肪 の 感 染 は 傷 を 開 くことにより 対 処 します 腹 腔 内 膿 瘍 は 上 記 c 項 の 縫 合 不 全 が 原 因 で 起 こることもありますが, 場 合 によっては 再 手 術 が 必 要 なこともあります
g.その 他 の 合 併 症 全 身 麻 酔 で 使 用 する 薬 剤, 術 後 に 使 用 する 抗 生 物 質 による 薬 剤 性 の 肝 機 能 障 害, 腎 機 能 障 害 も 起 こる 可 能 性 がありますが,ほとんど 場 合 は 一 時 的 で, 薬 剤 投 与 を 中 止 すれば 治 ります その 他, 術 前 より 合 併 症 のある 患 者 さんの 場 合 は,その 病 気 に 独 特 の 術 後 合 併 症 が 発 生 する 可 能 性 があります この 場 合 はケースバイケースで,その 人 に 最 も 合 った 治 療 をいたします 7. 退 院 後 の 問 題 点 1) 食 生 活 退 院 直 後 は, 食 事 内 容 によっては 腸 閉 塞 (イレウス)をきたしやすいものが あるので 気 をつけてください. 腸 閉 塞 をきたしやすい 品 目 を 下 記 表 にまとめま した.これらの 品 目 は 全 く 食 べられないというわけではありません. 術 後 おな かの 状 態 が 安 定 してきたら( 約 2 カ 月 が 目 安 ) 尐 しずつ 食 べてみて 下 さい も し 何 度 も 調 子 が 悪 くなるものは 避 けていただかなければなりませんが,そうで ないものは 摂 取 可 能 と 考 えられます 腸 閉 塞 をきたしやすい 品 目 1. キノコ 類 2. 海 藻 類 (わかめ,ひじき, 昆 布 など) 3. 糸 こんにゃく 4. かんぴょう 5. ピーナッツ 6. ミカンの 袋,リンゴの 皮 7. もやし 2) 通 院 退 院 された 後 は 定 期 的 に 外 来 に 通 院 していただきます. 退 院 してしばらくは 2 週 1 カ 月 に 1 回 程 度 です. 全 身 状 態, 排 便 状 況 が 良 好 となってくれば,3 12 カ 月 に 1 回 程 度 になります. 当 院 だけでなく 紹 介 元 の 開 業 医 や 他 院 とも 連 携 して 術 後 の 経 過 観 察 をさせていただきます 受 診 時 は 毎 回 血 液 検 査 を 行 いますが 腹 部 のCTスキャンや 超 音 波 検 査 胸 部 レントゲン 撮 影 などは 半 年 から1 年 に1 度 実 施 します 大 腸 癌 は 多 発 す る 傾 向 がありますので 1-2 年 に1 度 は 大 腸 内 視 鏡 検 査 で 残 っている 大 腸 に
新 たにポリープや 癌 が 発 生 していないかどうかを 調 べます その 他, 人 工 肛 門 が 造 設 された 方 は 退 院 後 しばらくの 間,ストーマ 外 来 ( 月 曜 PM)にも 通 う 必 要 があります.