糧 を 得 ていたため 交 易 の 舞 台 である 海 上 の 安 全 は 全 市 民 共 通 の 願 いであった 紀 元 前 78 年 若 き 日 のカエサルも 海 賊 に 襲 われている カエサルは 留 学 の 途 上 海 賊 に 襲 われ 身 代 金 を 要 求 された カエサルは 従 者 を



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●電力自由化推進法案

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

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参 考 改 正 災 害 対 策 基 本 法 1 ( 災 害 時 における 車 両 の 移 動 等 ) 第 七 十 六 条 の 六 道 路 管 理 者 は その 管 理 する 道 路 の 存 する 都 道 府 県 又 はこれに 隣 接 し 若 しくは 近 接 する 都 道 府 県 の 地 域 に 係

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(4) 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 との 連 携 1 市 は 国 の 現 地 対 策 本 部 長 が 運 営 する 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 に 職 員 を 派 遣 するなど 同 協 議 会 と 必 要 な 連 携 を 図 る

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した 開 示 決 定 等 に 当 たっては, 法 11 条 を 適 用 して, 平 成 23 年 5 月 13 日 まで 開 示 決 定 等 の 期 限 を 延 長 し, 同 年 4 月 11 日 付 け 防 官 文 第 号 により,1 枚 目 を 一 部 開 示 した そして, 同 年

Taro-契約条項(全部)

- 1 - 総 控 負 傷 疾 病 療 養 産 産 女 性 責 帰 べ 由 試 ~ 8 契 約 契 約 完 了 ほ 契 約 超 締 結 専 門 的 知 識 技 術 験 専 門 的 知 識 高 大 臣 専 門 的 知 識 高 専 門 的 知 識 締 結 契 約 満 歳 締 結 契 約 契 約 係 始

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要 な 指 示 をさせることができる ( 検 査 ) 第 8 条 甲 は 乙 の 業 務 にかかる 契 約 履 行 状 況 について 作 業 完 了 後 10 日 以 内 に 検 査 を 行 うものとする ( 発 生 した 著 作 権 等 の 帰 属 ) 第 9 条 業 務 によって 甲 が 乙 に

第 8 条 乙 は 甲 に 対 し 仕 様 書 に 定 める 期 日 までに 所 定 の 成 果 物 を 検 収 依 頼 書 と 共 に 納 入 する 2 甲 は 前 項 に 定 める 納 入 後 10 日 以 内 に 検 査 を 行 うものとする 3 検 査 不 合 格 となった 場 合 甲 は

もの( 交 通 事 故 事 件 に 係 るものを 除 く ) 3 重 大 な 交 通 事 故 事 件 とは 次 に 掲 げる 交 通 事 故 事 件 をいう (1) 死 亡 ひき 逃 げ 事 件 車 両 等 の 交 通 により 人 が 死 亡 した 場 合 において 道 路 交 通 法 ( 昭 和

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4 乙 は 天 災 地 変 戦 争 暴 動 内 乱 法 令 の 制 定 改 廃 輸 送 機 関 の 事 故 その 他 の 不 可 抗 力 により 第 1 項 及 び 第 2 項 に 定 める 業 務 期 日 までに 第 1 条 第 3 項 の 適 合 書 を 交 付 することができない 場 合 は


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第 5 条 ( 有 効 期 間 ) 1. 本 サービスの 有 効 期 間 は 当 社 が 指 定 した 日 をもって 開 始 とし 当 該 サービス 対 象 物 件 に 入 居 する 契 約 が 終 了 した 日 をもって 終 了 とします 2. 既 に 入 居 している 住 戸 が 新 たにサービ

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 級 の 給 料 月 額 最 高 号 級 の 給 料 月 額 1 級 ( 単 位 : ) 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 9 級 1 級 135,6 185,8 222,9 261,

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代 議 員 会 決 議 内 容 についてお 知 らせします さる3 月 4 日 当 基 金 の 代 議 員 会 を 開 催 し 次 の 議 案 が 審 議 され 可 決 承 認 されました 第 1 号 議 案 : 財 政 再 計 算 について ( 概 要 ) 確 定 給 付 企 業 年 金 法 第

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入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

施 設 利 用 に 伴 う 設 営 物 物 販 の 確 認 業 務 災 害 時 の 対 応 急 病 等 への 対 応 遺 失 物 拾 得 物 の 対 応 事 件 事 故 への 対 応 ( 2 ) 公 園 の 使 用 料 の 徴 収 に 関 す る 業 務 一 般 利 用 者 予 約 等 対 応 業

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海 賊 の 変 遷 山 田 吉 彦 ( 東 海 大 学 海 洋 学 部 准 教 授 ) 目 次 海 賊 問 題 の 発 生 海 賊 の 定 義 海 賊 被 害 の 現 状 ソマリア 海 賊 の 出 現 ソマリア 海 賊 に 対 する 国 連 および 各 国 の 対 応 ソマリア 海 賊 の 日 本 への 影 響 現 代 の 海 賊 対 策 まとめ 海 賊 問 題 の 発 生 古 くローマ 帝 国 の 時 代 から 海 賊 は 人 類 共 通 の 敵 と 言 われてきた 近 年 もマラッカ シ ンガポール 海 峡 などにおける 海 賊 の 出 現 が 注 目 されている いにしえの 海 賊 は 映 画 パイ レーツ オブ カリビアンのように 時 としてロマンを 伴 い 脚 色 を 施 され 伝 えられている が 現 代 の 海 賊 は 世 界 の 経 済 の 動 脈 である 海 運 を 脅 威 にさらす 単 なる 海 上 犯 罪 集 団 でし かない 日 本 においても1999 年 のアロンドラ レインボー 号 ハイジャック 事 件 2005 年 の 韋 駄 天 号 船 員 誘 拐 事 件 などが 起 き その 都 度 社 会 問 題 となっている また 2005 年 に 活 発 化 したソマリア 沖 海 賊 の 動 向 は 世 界 の 船 会 社 から 注 目 され 各 国 政 府 のみならず 国 連 安 全 保 障 理 事 会 においても その 対 策 が 決 議 された 歴 史 的 に 見 ると 海 賊 と 社 会 経 済 のグローバル 化 とは 表 裏 一 体 の 関 係 にある 海 賊 は 人 類 の 活 動 範 囲 が 広 がるとともに 生 まれ 有 史 以 来 三 番 目 に 古 い 犯 罪 といわれている 古 くはギリシア 神 話 に 酒 神 として 知 られているディオニソスが エーゲ 海 の 小 島 イ カーリア 島 において 海 賊 に 誘 拐 された 話 が 出 ている 海 賊 船 に 連 れ 込 まれたディオニソス は 突 然 獅 子 に 変 身 し 海 賊 に 立 ち 向 かった 驚 いた 海 賊 は 海 に 飛 び 込 んだが ディオニ ソスによってイルカに 変 えられてしまった 紀 元 前 8 世 紀 頃 には フェニキア 人 ギリシ ア 人 が 地 中 海 において 制 海 権 を 競 い 合 い その 争 いがエスカレートし 互 いに 海 賊 行 為 を 繰 り 返 すようになったと 記 録 されている 古 代 ローマ 帝 国 も 海 賊 対 策 のため 沿 岸 住 民 や 近 海 を 通 航 する 船 舶 から 資 金 を 集 め 海 賊 討 伐 を 行 っている ローマの 人 々は 海 に 船 を 浮 かべ 隣 国 との 交 易 により 豊 かな 生 活 の

糧 を 得 ていたため 交 易 の 舞 台 である 海 上 の 安 全 は 全 市 民 共 通 の 願 いであった 紀 元 前 78 年 若 き 日 のカエサルも 海 賊 に 襲 われている カエサルは 留 学 の 途 上 海 賊 に 襲 われ 身 代 金 を 要 求 された カエサルは 従 者 を 金 策 に 走 らせ 身 代 金 を 調 達 し 解 放 さ れると すぐに 海 賊 討 伐 を 行 い 自 分 を 襲 った 海 賊 を 捕 らえ 死 刑 にしている 大 航 海 時 代 には 英 国 を 始 めとした 国 々が 海 賊 に 敵 対 する 国 の 船 を 襲 い 海 賊 行 為 を 働 くことを 容 認 した 私 掠 状 を 発 行 した 私 掠 状 を 受 けた 船 は 私 掠 船 という 英 国 の 海 賊 キャプテン ドレークは 私 掠 船 の 船 長 であり スペイン 船 を 襲 い 多 くの 財 貨 を 英 国 にも たらし 女 王 陛 下 の 海 賊 と 呼 ばれた また 世 界 一 周 航 海 を 成 功 させた 最 初 の 英 国 人 であり スペインの 無 敵 艦 隊 を 破 った 提 督 としても 知 られている ナイトの 称 号 を 持 つが その 実 は 私 掠 船 海 賊 であった 当 時 は 国 家 が 海 賊 の 力 を 海 軍 力 と 海 外 貿 易 に 利 用 し 海 洋 管 理 を 海 賊 の 手 に 委 ねていたと 言 える 日 本 の 海 賊 では 戦 国 時 代 に 活 躍 した 村 上 水 軍 松 浦 党 などが 知 られている 彼 らは 水 軍 と 呼 ばれ 単 なる 海 賊 ではなく 海 の 武 装 勢 力 であり 海 の 領 主 であり 貿 易 商 であっ た 彼 らは 当 時 の 社 会 では 暗 黙 のうちに 正 当 化 された 海 の 支 配 権 を 持 ち 海 上 の 治 安 維 持 のかわりに 海 上 の 通 行 料 に 相 当 する 税 をとるなど 瀬 戸 内 海 や 東 シナ 海 を 水 軍 ( 海 軍 ) の 力 をもって 統 治 していたのである ただし 反 面 としては 略 奪 を 行 い 自 由 航 行 を 阻 害 する 海 上 の 暴 力 集 団 としての 一 面 があることも 否 めない 現 代 において 世 界 の 海 に 出 没 する 海 賊 は 国 家 や 国 際 機 関 の 行 う 不 完 全 な 海 洋 安 全 保 障 体 制 の 狭 間 を 利 用 している 海 上 に 存 在 する 国 境 という 見 えない 壁 を 巧 妙 に 使 い 犯 罪 を 行 う また 外 航 船 舶 の 多 くは 便 宜 置 籍 船 や 船 員 の 多 国 籍 混 乗 により 警 備 取 締 りの 管 轄 権 があいまいであり 海 賊 などの 海 上 犯 罪 を 未 然 に 防 ぐことが 難 しく また 事 件 の 捜 査 を 困 難 にしている 2000 年 アロンドラ レインボー 号 事 件 を 契 機 として アジアの 国 々の 海 上 警 備 機 関 は 海 賊 対 策 の 国 際 協 力 体 制 の 構 築 を 始 めた 2001 年 に 米 国 で 発 生 した 同 時 多 発 テロを 経 て 2004 年 には 海 上 テロ 対 策 も 視 野 に 入 れたアジア 海 上 警 備 機 関 長 官 級 会 議 が 開 かれた 今 後 は 国 際 的 な 海 洋 管 理 体 制 を 確 立 し 海 賊 の 発 生 しない 社 会 体 制 を 構 築 することが 望 ま れる 海 賊 の 定 義 国 連 海 洋 法 条 約 における 海 賊 行 為 とは 公 海 上 で 各 国 政 府 船 ではない 私 有 の 船 舶 が 犯 し た 暴 力 行 為 略 奪 行 為 である 政 府 所 有 の 船 軍 艦 などが 行 った 海 上 犯 罪 は 海 賊 には 含 め ないとしている また 各 国 の 領 海 内 で 行 われたものは 海 上 武 装 強 盗 と 呼 び 海 賊 とは 区 別 される 公 海 と 領 海 内 を 分 けるのは 領 海 内 での 犯 罪 は 陸 上 での 犯 罪 と 同 様 に 沿 岸 国 が その 国 の 法 律 に 従 い 国 家 主 権 において 対 処 するべき 行 為 であり 国 際 法 の 関 知 するものではないという 考 えからである しかし 海 賊 と 海 上 武 装 強 盗 など 呼 び 方 が 変 わるのは あくまで 国 家 主 権 などの 権 限 に かかわる 場 合 にのみ 意 味 を 持 つ 航 行 する 船 舶 などの 襲 われる 側 からすると 公 海 や 領 海 の 線 引 きはない また 大 航 海 時 代 の 私 掠 船 のように 政 府 の 許 可 証 を 持 っているか 持 って いないかなども 違 いがなく 同 じ 海 賊 行 為 である 海 上 で 暴 力 行 為 略 奪 行 為 を 行 う 者 は 2

すべて 海 賊 なのである 実 際 に マラッカ 海 峡 では 海 賊 行 為 が 頻 繁 に 行 われているが マラッカ 海 峡 は 幅 が 狭 いために インドネシア マレーシア シンガポールのいずれかの 国 の 領 海 に 入 っている したがって 本 稿 では 国 連 海 洋 法 条 約 上 の 海 賊 海 上 武 装 強 盗 と もに 海 賊 と 呼 ぶこととする 海 賊 被 害 の 現 状 現 代 海 賊 が 問 題 視 されるようになったのは 1980 年 代 後 半 である 当 時 フィリピン 南 部 沿 岸 から 南 シナ 海 を 経 てマラッカ シンガポール 海 峡 にかかる 海 域 に 海 賊 被 害 が 多 発 し ていた 当 時 の 海 賊 は 航 行 中 の 船 舶 に 乗 り 込 み 船 員 を 脅 し 船 用 金 を 奪 う 類 の 海 賊 が 主 流 であった また インドシナ 難 民 や 小 型 漁 船 を 襲 い 携 行 品 を 奪 い 乗 船 者 を 海 に 投 げ 込 む 手 荒 な 海 賊 も 横 行 していた 事 態 を 憂 慮 した 船 社 などの 海 事 関 係 者 は 国 連 の 海 事 専 門 機 関 である 国 際 海 事 機 関 (IMO)に 対 し 各 国 政 府 および 業 界 団 体 を 通 じて 海 賊 対 策 を 依 頼 した また 同 時 に 国 際 商 業 会 議 所 国 際 海 事 局 (IMB)に 対 しても 同 様 の 依 頼 を 行 った それまでIMBは 国 際 的 な 海 事 詐 欺 や 契 約 上 のトラブルに 対 応 することを 主 な 業 務 にしていた IMBは 純 粋 な 民 間 組 織 であり 海 運 業 界 損 害 保 険 業 界 荷 主 企 業 などからの 会 費 と 寄 付 により 運 営 さ れ 本 部 はロンドンに 置 かれている 要 請 を 受 けたIMBは 民 間 の 柔 軟 性 を 活 かしIMOよりも 素 早 い 対 応 を 行 った まず 1991 年 に 全 世 界 の 船 会 社 を 対 象 に 海 賊 被 害 の 状 況 を 調 査 し 翌 92 年 にマレーシアのクアラ ルンプールにおいて 海 賊 対 策 のための 国 際 会 議 を 開 催 した この 会 議 では 海 賊 に 対 する 情 報 収 集 と 一 元 化 した 対 応 を 行 うための 専 門 機 関 の 設 置 が 求 められた IMBでは 早 々に 会 議 の 意 見 を 反 映 し 海 賊 被 害 の 多 いマラッカ 海 峡 に 近 いクアラルンプールに 海 賊 情 報 セ ンター(The IMB Piracy Reporting Center)を 設 置 した 海 賊 情 報 センターでは ロン ドンのIMB 本 部 と 連 動 し 24 時 間 体 制 で 世 界 中 の 海 賊 に 関 する 情 報 を 収 集 し 航 行 中 の 船 舶 にリアルタイムに 情 報 を 配 信 し 同 時 に 各 国 の 海 上 警 備 機 関 に 対 しても 情 報 を 提 供 し ている また IMBでは 毎 日 海 賊 発 生 情 報 を 発 信 しているのみならず 四 半 期 ごとに 海 賊 の 発 生 状 況 被 害 状 況 などを 分 析 した 報 告 書 を 発 行 している 一 方 IMOは 93 年 にインドネシア マレーシア シンガポールに 多 国 籍 の 専 門 家 に よる 調 査 団 を 派 遣 し 海 賊 被 害 の 状 況 各 国 の 海 上 警 備 体 制 の 状 態 海 賊 対 策 などの 調 査 をおこなった その 調 査 報 告 をもとに IMOでは 海 上 安 全 委 員 会 (MSC)において 海 賊 対 策 を 議 論 し 各 国 政 府 のとるべき 海 賊 対 策 のガイドラインを 作 成 し 加 盟 国 に 対 し 海 賊 対 策 の 実 施 を 求 めた 世 界 の 海 を 航 行 する 船 舶 の 多 くは 税 制 などが 優 遇 される 国 に 船 籍 を 置 く 便 宜 置 籍 制 度 を 採 用 しているとともに 多 国 籍 船 員 の 混 乗 により 船 員 の 国 籍 も 多 くの 国 にまたがってい るため 国 家 に 対 する 帰 属 意 識 は 薄 い また 海 賊 の 行 動 範 囲 は 公 海 や 複 数 の 国 の 領 海 に またがり 活 動 しているため 国 家 主 権 の 壁 に 阻 まれ 領 域 の 枠 を 超 えた 対 応 ができず IMOによる 国 家 単 位 の 海 賊 対 策 の 進 展 は 難 しい 世 界 各 地 における 海 賊 の 発 生 状 況 は 前 述 の 通 りIMBが 統 計 として 取 りまとめ 発 表 して 3

いる 2007 年 1 月 に 発 表 されたIMBの 年 次 報 告 書 によると 2006 年 は 全 世 界 で239 件 の 海 賊 被 害 が 発 生 している 2004 年 以 来 海 賊 被 害 は 減 少 傾 向 にあり 前 年 比 約 -13.5%と 改 善 されていた 東 南 アジアでは88 件 が 発 生 しているが これも 前 年 比 -28%と 大 幅 な 減 少 である この 要 因 としては 2000 年 に 東 京 で 海 賊 対 策 国 際 会 議 が 開 催 され 海 賊 対 策 の 国 際 協 力 体 制 の 構 築 が 開 始 されてから₇ 年 が 経 過 し 各 国 の 海 上 警 備 機 関 による 警 備 取 締 りが 強 化 され その 効 果 が 具 現 化 していることがあげられる 海 賊 被 害 の 多 い 海 域 としては インドネシア 沿 岸 で50 件 が 発 生 し 次 いでバングラデシュ の47 件 その 他 に 多 い 海 域 は マラッカ シンガポール 海 峡 とソマリア ナイジェリア アデン 湾 のアフリカ 沿 岸 である また 近 年 南 米 海 域 のペルー 沿 岸 部 なども 増 加 傾 向 に ある インドネシア 沿 岸 バングラデシュなどで 発 生 する 海 賊 は 港 内 で 夜 間 船 舶 に 侵 入 し 物 品 を 奪 う 窃 盗 型 の 海 賊 で 外 洋 で 船 舶 を 襲 う 海 賊 行 為 とは その 対 策 においても 当 然 分 離 されるべきものである IMBの 統 計 で 海 賊 が 最 も 多 く 発 生 したのは2000 年 であり 世 界 中 で469 件 の 被 害 が 報 告 されている 当 時 は 東 南 アジア 海 域 において 海 賊 行 為 をおこなう 国 際 シンジケートが 存 在 し 組 織 化 された 海 賊 が 船 ごと 積 荷 を 奪 う 事 件 が 多 発 した 特 にマラッカ シンガポー ル 海 峡 から 南 シナ 海 にかけての 海 域 での 事 件 の 発 生 が 多 く 海 賊 シンジケートの 司 令 部 は 香 港 クアラルンプールなどの 都 市 に 置 かれていたと 考 えられている また 実 行 の 指 揮 はインドネシアのバタム 島 周 辺 でおこなわれていたことがアロンドラ レインボー 号 事 件 の 捜 査 から 判 明 している このシンジケート 型 の 海 賊 は1990 年 代 に 活 動 を 始 め 主 に 白 物 と 呼 ばれる 軽 油 やガソリンなどの 石 油 類 を 積 む 小 型 タンカーが 標 的 となっていた これら の 石 油 類 は 比 較 的 価 値 が 高 いうえ 証 拠 が 残 り 難 く 売 却 も 容 易 であることが 狙 われ る 理 由 となっていた 2000 年 以 降 一 旦 減 少 傾 向 にあった 海 賊 だが 2003 年 には 再 び 増 加 し445 件 が 発 生 した 海 賊 の 増 加 に 危 機 感 を 持 ったアジア 各 国 の 海 上 警 備 機 関 は 国 内 の 警 備 の 強 化 を 図 ると 共 に 日 本 を 中 心 に 情 報 の 共 有 を 試 みるなど 国 際 的 な 協 力 関 係 を 押 し 進 めたため 海 賊 の 発 生 件 数 は 2004 年 325 件 2005 年 276 件 2006 年 239 件 と 減 少 した 2005 年 に 激 減 したのは スマトラ 沖 地 震 の 津 波 災 害 で インドネシアの 沿 岸 部 など 海 賊 の 拠 点 が 被 害 を 受 け 海 賊 行 為 を 行 うことができなくなったことも 要 因 のひとつにあげられる しかし 2007 年 には 再 び 前 年 比 増 加 し263 件 の 事 件 が 発 生 した 増 加 の 理 由 は マラッ カ 海 峡 の 海 賊 は 沈 静 化 したものの 世 界 的 に 武 器 が 流 通 し ソマリア 沖 およびナイジェリ アなどアフリカ 海 域 など 広 範 囲 において 海 賊 が 発 生 したことが 考 えられる 海 賊 発 生 状 況 年 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 世 界 202 300 469 335 370 445 329 276 239 263 東 南 アジア 99 167 262 170 170 189 173 122 88 80 マラッカ シンガ ポール 海 峡 2 16 80 24 21 30 46 19 16 10 ソマリア アデン 湾 9 14 22 19 17 21 10 45 20 44 (IMBレポート) 4

海 賊 発 生 状 況 グラフ ソマリア 海 賊 の 出 現 2005 年 からソマリア 沖 に 海 賊 が 多 発 している 特 に 2007 年 には26 件 が 発 生 前 年 同 期 の₈ 件 から 急 増 している 2008 年 には ₈ 月 までで すでに53 件 の 事 件 が 報 告 されてい る ソマリア 海 賊 は 武 装 し 船 舶 を 襲 い 船 員 を 誘 拐 し 身 代 金 を 要 求 する その 額 は ₁ 件 あたり およそ100 万 米 ドルである また ソマリアは 未 だ 戦 乱 の 中 にあり 暫 定 政 権 は 治 安 を 維 持 する 能 力 を 持 たない ソマリア 沖 では 米 海 軍 を 中 心 とした 多 国 籍 連 合 艦 隊 が 海 上 の 治 安 維 持 を 行 なっている ソマリア 海 賊 の 特 徴 は 重 武 装 (ロケットランチャー AK47など) 船 ごと 船 員 を 誘 拐 し 身 代 金 を 要 求 する( 身 代 金 要 求 は 100 万 米 ドル 以 上 であり マラッカ シンガポール 海 峡 の 海 賊 の10 倍 ) 行 動 範 囲 が 広 い( 紅 海 からアデン 湾 インド 洋 一 帯 沿 岸 から350 海 里 離 れた 海 域 にも 出 現 ) ₄~₅の 海 賊 組 織 が 存 在 し 協 力 連 携 した 行 動 をとる などがあげられる ソマリアは 1991 年 以 降 無 政 府 状 態 が 続 いている ソマリア 沖 には 沿 岸 を 護 る 警 備 機 関 がなく 現 在 ソマリア 沖 を 警 戒 しているのは 国 際 テロへの 警 戒 のためインド 洋 で 活 動 している 米 海 軍 を 中 心 とした 多 国 籍 連 合 艦 隊 である ソマリア 海 賊 はアルカイーダな どのイスラム テロ 組 織 の 資 金 源 と 言 われているため 多 国 籍 連 合 艦 隊 の 警 戒 の 対 象 と なっている しかし 米 海 軍 は イージス 艦 で 警 戒 にあたっているが 大 海 原 の 中 で 海 賊 を 見 つけ 出 すことは 容 易 ではない 2007 年 10 月 28 日 ソマリア 沖 において 日 本 の 船 会 社 が 所 有 し 運 航 を 管 理 するケミカ ルタンカー ゴールデン ノリ 号 が 海 賊 に 襲 われ 韓 国 人 をはじめフィリピン 人 船 員 など23 人 の 乗 組 員 が 誘 拐 された また 翌 日 同 じ 海 域 で 北 朝 鮮 貨 物 船 が 海 賊 に 襲 われたが 5

警 戒 中 の 米 海 軍 により 救 出 されている この 海 域 で 海 賊 に 誘 拐 された 場 合 通 常 数 日 中 に 身 代 金 要 求 がある 2006 年 韓 国 漁 船 が 誘 拐 され 80 万 ドルの 身 代 金 を 支 払 い 解 放 され た 2007 年 は デンマーク 船 が 誘 拐 され150 万 ドルの 身 代 金 を 支 払 っている 台 湾 漁 船 は 身 代 金 の 支 払 い 交 渉 が 遅 遅 として 進 まない 間 に 人 質 となっていた 中 国 籍 の 船 員 1 名 が 殺 害 された 身 代 金 要 求 は 通 常 船 主 もしくは 運 行 管 理 会 社 にされる ゴールデン ノリ 号 の 事 件 では 日 本 の 会 社 に 身 代 金 の 要 求 があり 日 本 人 船 員 がいない 船 の 身 代 金 への 対 応 が 注 目 された また パナマ 籍 船 であり 旗 国 主 義 により 日 本 国 政 府 は 関 与 する 立 場 にない 結 局 同 号 の 解 放 交 渉 は 船 長 の 出 身 国 である 韓 国 で 行 われ 身 代 金 の 額 は 100 万 ドルであっ たと 言 われている ゴールデン ノリ 号 のように 実 質 所 有 者 が 日 本 人 日 本 企 業 の 場 合 は 船 が 日 本 人 の 利 益 追 求 のために 動 いているともいえる このようなケースでは 本 来 運 航 の 責 任 者 は 誰 なのだろうか 誰 が 問 題 に 対 処 し あるいは 誰 が 解 決 するべきなのだろうか ゴールデン ノリ 号 事 件 での 日 本 の 対 応 を 世 界 が 注 目 していたが 日 本 人 の 被 害 者 が 無 いことから 国 内 の 反 応 は 少 なかった ゴールデン ノリ 号 の 事 件 がはらむ 問 題 点 は 次 の 三 点 にまとめることができる 1 便 宜 置 籍 船 (パナマ 船 籍 であり 日 本 政 府 に 責 任 はない) 2 乗 組 員 が 全 員 外 国 人 ( 公 海 上 で 起 きた 事 件 であり 日 本 の 海 上 保 安 庁 が 助 ける 対 象 ではない) 3 ソマリアは 日 本 人 にとって 未 知 の 国 であり また 無 政 府 状 態 のため 交 渉 の 術 も 無 い ソマリア 海 賊 に 対 する 国 連 および 各 国 の 対 応 ソマリア 海 賊 の 出 現 は すべての 海 事 社 会 の 問 題 点 を 衝 かれた 感 がある これまでの 海 事 社 会 のルールでは 広 範 囲 に 活 動 し ソマリアの 領 海 内 に 逃 げ 込 む 海 賊 に 対 処 する 術 は なかった そのため2008 年 ₆ 月 ₂ 日 国 連 安 全 保 障 理 事 会 は ソマリア 対 策 に 関 する 議 決 を 行 い 加 盟 国 の 艦 船 および 航 空 機 に 対 し ソマリア 海 賊 への 対 応 を 要 請 した この 議 決 の 内 容 は ソマリア 暫 定 政 府 の 了 解 を 得 れば ソマリア 領 海 においても 海 賊 対 策 として いかなる 手 段 を 講 じてもよいというものである ソマリア 海 賊 への 超 法 規 的 措 置 は 今 後 の 海 賊 対 策 と 海 洋 管 理 を 考 える 上 で 慎 重 に 検 討 しなければならない 問 題 であると 考 え る 国 連 安 全 保 障 理 事 会 ソマリア 沖 の 海 賊 武 装 強 盗 行 為 対 策 に 関 する 決 議 第 1816 号 ( 抜 粋 ) ソマリア 領 海 内 及 び 同 国 沖 公 海 上 における 船 舶 に 対 するあらゆる 海 賊 行 為 及 び 武 装 強 盗 を 非 難 する 同 国 沖 公 海 上 及 び 空 域 において 活 動 する 艦 船 軍 用 機 を 保 有 する 国 家 に 海 賊 行 為 及 び 武 装 強 盗 に 対 する 警 戒 を 行 うことを 要 請 し 特 に 同 国 沖 の 商 用 航 路 の 利 用 に 関 与 す る 国 家 に 対 し 暫 定 連 邦 政 府 と 協 力 して 海 賊 行 為 及 び 武 装 強 盗 を 阻 止 する 努 力 と 協 力 を 奨 励 する 6

あらゆる 国 家 に 対 し IMO 及 び 必 要 に 応 じて 関 連 する 地 域 機 関 と 協 力 し 同 国 領 海 内 及 び 同 国 沖 公 海 における 海 賊 行 為 及 び 武 装 強 盗 に 関 する 情 報 を 共 有 し 関 連 する 国 際 法 に 従 い 海 賊 または 武 装 強 盗 に 脅 迫 または 攻 撃 されている 船 舶 への 支 援 を 要 請 する 本 決 議 採 択 日 より₆か 月 の 期 間 同 国 沖 における 海 賊 及 び 武 装 強 盗 を 取 り 締 まる にあたり 暫 定 連 邦 政 府 と 協 力 し 暫 定 連 邦 政 府 より 国 連 事 務 総 長 に 対 し 事 前 に 報 告 の 上 以 下 の 行 動 を 認 めることを 決 定 する a. 国 際 法 の 下 で 海 賊 行 為 に 対 して 公 海 上 で 実 施 できる 行 為 に 従 い 海 賊 行 為 及 び 武 装 強 盗 制 圧 の 目 的 で 同 国 領 海 内 に 入 ること b. 国 際 法 の 下 で 海 賊 行 為 に 対 して 公 海 上 で 実 施 できる 行 為 に 従 い 同 国 領 海 内 で 海 賊 行 為 及 び 武 装 強 盗 を 制 圧 するためのあらゆる 必 要 な 措 置 を 講 じること 国 連 決 議 は 第 三 国 の 無 害 通 航 権 を 侵 さない 範 囲 で ソマリア 海 賊 に 対 しあらゆる 必 要 な 措 置 を 講 じることができるという 極 めて 厳 格 な 対 応 となっている ソマリア 海 賊 は 米 国 の 客 船 襲 撃 中 国 船 員 の 殺 害 フランス 船 ロシア 船 の 誘 拐 イ ギリス 人 船 員 の 誘 拐 など 安 全 保 障 理 事 会 において 拒 否 権 を 持 つ 国 に 被 害 を 与 えているこ ともあり 決 議 にする 反 対 意 見 もなく 満 場 一 致 で この 議 決 がなされた また この 議 決 の 草 案 は 米 国 とフランスにより 作 られ 共 同 提 案 国 は 米 英 仏 パナマ クロアチア ベルギー イタリアの 安 全 保 障 理 事 会 理 事 国 に 加 え 日 本 スペイ ン 韓 国 豪 州 カナダ デンマーク ギリシア オランダ ノルウエーの 計 16ヵ 国 であ る 便 宜 置 籍 国 として 最 も 多 くの 船 籍 を 有 しているパナマをはじめ 主 要 な 海 運 国 が 共 同 提 案 国 となり 海 賊 討 伐 を 行 い 世 界 の 船 の 安 全 を 守 るという 大 義 名 分 を 全 面 に 出 した 議 決 で ある ただし 日 本 はソマリア 暫 定 連 邦 政 府 を 政 府 承 認 していないという 問 題 もある 国 連 安 保 理 の 決 議 を 受 け ソマリア 海 賊 の 警 戒 に 当 たっている 多 国 籍 連 合 艦 隊 は アデ ン 湾 のイエメン 沿 岸 に 常 時 参 加 国 の 艦 艇 により 警 備 をおこなう 安 全 通 航 帯 を 設 け アデン 湾 を 航 行 する 船 舶 に 安 全 通 航 帯 内 を 航 行 することを 推 奨 している しかし 多 国 籍 連 合 艦 隊 が 警 戒 に 当 たっているものの 海 賊 の 行 動 範 囲 は 広 く ₉ 月 25 日 さらに 衝 撃 的 な 事 件 が 発 生 した インド 洋 側 の 海 域 をケニアに 向 け 航 行 中 であったウ クライナのLo-Lo 船 ファイナ が ハイジャックされる 事 件 がおこった この 船 には 乗 員 21 名 とともにロシア 製 の 戦 車 33 台 やロケットランチャーなどの 武 器 類 が 搭 載 されてい た 海 賊 は この 船 返 還 のための 身 代 金 として3500 万 米 ドルを 要 求 している 要 求 に 応 じ ない 場 合 は ソマリア 海 賊 に 軍 隊 と 同 様 の 武 器 が 流 れることも 考 えられ ソマリア 海 賊 の 脅 威 が 桁 外 れに 増 加 することになる 米 国 およびロシアが 海 軍 の 艦 艇 を 派 遣 し ファイナ の 救 出 に 当 たっているが 海 賊 側 は 掠 奪 した 武 器 を 使 い 米 ロ 海 軍 に 対 する 攻 撃 の 準 備 があることを 警 告 している ソマリア 海 域 はまさに 戦 場 の 状 況 を 呈 している ソマリア 海 賊 への 対 応 は 各 国 様 々である なぜならば 国 連 海 洋 法 条 約 において 海 賊 に 対 応 をするべきことがうたわれていても 各 国 の 国 内 法 においての 海 賊 に 対 する 法 整 備 に 差 があるためである ドイツは ₈ 月 に 国 会 で 採 択 された 決 議 案 において 海 賊 対 策 としての 軍 配 備 はできな いと 発 表 した ドイツにおける 軍 配 備 はドイツ 連 邦 警 察 の 任 務 であるが 同 警 察 はドイツ 7

海 域 外 では 任 務 を 遂 行 できないことになっている ドイツ 軍 が 行 動 できるのは ドイツ 船 が 襲 撃 された 場 合 襲 撃 されるのを 目 撃 した 場 合 にのみ 緊 急 支 援 を 行 なえることとなっ ている また ドイツ 政 府 は 国 際 テロ 集 団 に 対 する 警 戒 のために 派 遣 されているドイツ 軍 艦 の 任 務 は 原 則 として 闘 争 的 なものではないとしている しかし ドイツ 関 係 船 の 海 賊 被 害 が 連 続 して 発 生 していることから 今 年 ₈ 月 ドイツ 船 主 協 会 は ドイツ 政 府 に 対 し 同 国 海 軍 軍 艦 の 海 賊 に 対 する 武 力 行 使 を 認 めるように 嘆 願 した ₉ 月 に 入 り ドイツはEU 理 事 会 の 議 決 を 受 け ソマリア 海 域 に 軍 艦 ₃ 隻 を 派 遣 してい る ドイツ 憲 法 では 海 軍 の 国 外 海 域 での 武 力 行 使 を 禁 じているが EUの 議 決 に 伴 う 行 動 であれば 可 能 となっている カナダ 政 府 は ソマリア 海 賊 に 対 するためにフルゲート 艦 を 派 遣 している カナダの 海 軍 は 国 連 世 界 食 糧 計 画 (WFP)のソマリアへの 食 糧 輸 送 を 護 衛 することとした ソマリアでは 旱 魃 と 世 界 的 な 食 糧 の 高 騰 の 影 響 により 260 万 人 以 上 が 危 機 的 な 飢 餓 状 態 にあると 言 われている しかし 2007 年 春 には 二 度 WFPの 支 援 物 資 を 積 んだ 貨 物 船 が 海 賊 に 襲 われ 積 荷 を 奪 われた 上 に 乗 組 員 が 誘 拐 され 身 代 金 を 要 求 される 事 態 とな ると 食 糧 の 搬 入 も 難 しい 情 況 である そのため カナダ 政 府 は ソマリアの 一 般 市 民 の 生 命 を 維 持 するために 海 軍 の 派 遣 を 決 めたのである その 他 米 英 ロシア 韓 国 スペイン デンマークなどの 国 々の 海 軍 が 積 極 的 にソ マリア 海 賊 への 対 応 を 行 っている しかし 国 連 安 全 保 障 理 事 会 の 決 議 に 従 い 海 軍 艦 艇 の 派 遣 をしても 十 分 な 対 応 がとれる ものとも 限 らない デンマークの 軍 艦 は ₉ 月 にソマリア 沿 岸 で10 名 の 海 賊 を 逮 捕 したが ₆ 日 間 の 拘 束 後 武 器 を 没 収 し 海 賊 を 解 放 した デンマーク 政 府 によると デンマークの 国 内 法 では ソマリアの 海 賊 に 対 処 できないためであり また ソマリア 暫 定 政 府 へ 引 き 渡 した 場 合 に 海 賊 が 拷 問 もしくは 殺 害 されるなど 人 権 問 題 として 不 当 な 扱 い 受 けること を 懸 念 したものである ソマリア 海 賊 の 日 本 への 影 響 2008 年 1 月 から₈ 月 までの 間 にソマリアでは 53 件 の 海 賊 被 害 が 発 生 し そのうち30 件 ほどが 身 代 金 目 的 の 乗 員 誘 拐 事 件 である また ₄ 月 には 日 本 船 籍 のタンカー 高 山 が 海 賊 の 襲 撃 を 受 け 船 体 にRPGの 弾 頭 が 打 ち 込 まれ 事 件 がおこるなど 日 本 関 係 船 も₅ 件 被 害 にあい 内 ₂ 隻 がハイジャックされている そのため ( 社 ) 日 本 船 主 協 会 は 海 賊 対 策 の 推 進 のためアデン 湾 航 行 安 全 対 策 本 部 を 設 置 し 国 土 交 通 省 海 上 保 安 庁 の 協 力 を 仰 ぎ 日 本 関 係 船 舶 の 安 全 のために 情 報 の 提 供 など を 行 っている 海 賊 被 害 にあい 誘 拐 された 船 舶 は 多 国 船 籍 に 及 んでいるが 誘 拐 された 船 舶 に 乗 って いた 船 員 の 国 籍 で 最 も 多 いのはフィリピンである 2008 年 1 月 から₈ 月 までに60 人 ほどの フィリピン 人 が 誘 拐 されている ₈ 月 に この 事 態 を 重 大 に 受 け 止 めたフィリピン 政 府 は 同 国 船 員 を 他 国 の 船 舶 に 斡 旋 をする 企 業 に 対 し ソマリア 沖 海 域 へのフィリピン 人 船 員 の 渡 航 自 粛 を 依 頼 した また 現 在 では 同 海 を 航 行 する 船 舶 におけるフィリピン 人 船 員 の 給 与 を₂ 倍 程 度 に 引 き 上 げることを 要 求 している フィリピン 人 船 員 の 乗 船 に 制 限 がつき 人 件 費 の 上 昇 は 日 本 の 船 会 社 の 経 営 にとって 痛 手 となる 日 本 商 船 隊 と 呼 ばれる 日 本 の 船 8

会 社 が 支 配 する 船 舶 に 乗 船 している 船 員 の 多 くはフィリピン 人 なのである フィリピン 政 府 の 取 るソマリア 海 賊 対 策 に 対 する 動 向 は 日 本 の 海 運 業 界 に 対 しても 多 大 な 影 響 を 与 え ることが 予 想 される また デンマーク 船 員 の 誘 拐 事 件 では 解 放 後 人 質 となっていた 船 員 が 船 会 社 の 海 賊 対 策 の 不 備 および 解 放 交 渉 の 対 応 が 悪 かったことを 理 由 に 損 害 賠 償 の 訴 訟 を 起 こして いる このことも 船 会 社 としては 考 慮 しておかなければならない 現 代 の 海 賊 対 策 アロンドラ レインボー 号 事 件 の 翌 年 の2000 年 ₄ 月 アジア 各 国 の 海 上 警 備 機 関 の 代 表 が 東 京 に 集 まり 海 賊 対 策 国 際 会 議 が 開 催 された 1999 年 秋 に 海 賊 対 策 に 国 際 協 力 が 不 可 欠 であるという 日 本 財 団 の 提 案 を 受 けた 故 小 渕 恵 三 首 相 がアジア 各 国 に 呼 びかけて 開 催 の 運 びとなった この 会 議 では アジア 海 域 の 海 上 警 備 の 現 状 が 報 告 され 各 国 の 協 力 体 制 の 構 築 が 話 し 合 われた その 結 果 として 相 互 の 情 報 連 携 体 制 の 構 築 警 備 体 制 強 化 のた めの 国 際 協 力 人 材 育 成 方 策 などが 海 賊 対 策 チャレンジ2000 としてまとめられた 以 後 アジア 各 国 の 海 上 警 備 機 関 は 毎 年 持 ち 回 りの 形 で 海 賊 対 策 専 門 家 会 合 を 開 催 して いる 既 にマレーシア インドネシア フィリピン タイ シンガポールの 順 に 開 催 され 人 的 な 協 力 体 制 も 強 固 になっている また 海 上 保 安 庁 は 毎 年 巡 視 船 をアジア 各 国 に 派 遣 し 合 同 訓 練 を 行 っている これらの 海 上 警 備 機 関 の 国 際 協 力 により 国 際 シンジケートによる 事 件 は2000 年 以 降 減 少 した しかし マラッカ 海 峡 沿 岸 の 古 典 的 な 海 賊 グループは 反 政 府 組 織 やテログループ と 結 びつくようになり 海 賊 と 海 上 テロは 一 体 化 し 新 たな 海 賊 の 形 態 を 作 った 2001 年 ₆ 月 インドネシアの 反 政 府 組 織 自 由 アチェ 運 動 のスポークスマンは マラッカ 海 峡 を 航 行 しようとする 船 舶 は 自 由 アチェ 運 動 の 許 可 を 受 けなければならないと 宣 言 し 小 型 タンカーを 襲 撃 するなど 反 政 府 組 織 による 海 賊 行 為 が2001 年 から2004 年 にかけマラッカ 海 峡 などで 増 加 した 反 政 府 組 織 と 連 携 した 海 賊 は 自 動 小 銃 やライフル 銃 で 武 装 し 小 型 のタンカー タグボート 漁 船 などを 襲 い 船 員 を 誘 拐 し 身 代 金 の 要 求 を 行 う これら の 海 賊 の 出 現 は 国 境 の 壁 を 越 えた 対 応 の 必 要 性 を 示 した 2002 年 10 月 ₆ 日 イエメン 沿 岸 のアデン 湾 で フランスの 大 型 タンカー ランブール 号 (15 万 8,000 総 トン)にイスラム 過 激 派 の 小 型 艇 が 突 入 する 自 爆 テロ 事 件 が 起 こった ア ジア 諸 国 は 民 族 紛 争 宗 教 対 立 などの 紛 争 を 抱 えている 国 が 多 い インドネシア フィ リピン タイなどでは イスラム 過 激 派 によるテロが 続 発 している シンガポールでは テロリストにより 沿 岸 部 の 石 油 精 製 プラントを 破 壊 されることを 最 悪 なシナリオと 想 定 し また LNGタンカーなどの 危 険 物 搭 載 船 の 警 戒 を 厳 重 にしている これまでの アジア 各 国 の 沿 岸 部 は 海 上 テロに 対 して 無 防 備 だったが 現 在 はシンガポールなどのように 厳 戒 態 勢 をとる 港 湾 が 増 えている 海 上 テロに 対 する 国 際 的 な 対 応 が 求 められるようになり 2004 年 ₆ 月 アジア 海 上 警 備 機 関 長 官 級 会 議 が 東 京 で 開 催 された この 会 議 では 海 賊 および 海 上 テロに 対 する 国 際 連 携 が 議 題 となった 海 上 テロ 防 止 活 動 として 海 上 警 備 や 大 量 破 壊 兵 器 を 輸 送 する 船 舶 に 対 する 捕 捉 訓 練 も 9

行 われている 2003 年 米 国 の 提 唱 により 始 められた PSI( 核 拡 散 防 止 イニシアティブ) 合 同 訓 練 である テロ 支 援 国 家 を 基 点 とした 大 量 破 壊 兵 器 ミサイル 及 びそれらの 関 連 物 資 の 拡 散 を 阻 止 するために 世 界 の 各 国 が 協 力 体 制 をとる 枠 組 みで 日 米 英 ロシア など15カ 国 をコアメンバーとし 60カ 国 以 上 が 参 加 協 力 している 2005 年 ₈ 月 には シ ンガポール 沖 で 日 本 の 海 上 保 安 庁 と 海 上 自 衛 隊 の 艦 艇 も 参 加 して 合 同 訓 練 が 行 われた 海 賊 に 対 する 国 際 規 定 は 国 連 海 洋 法 条 約 にもとづいているが 海 上 テロや 海 賊 への 対 処 方 法 は SUA 条 約 (The Suppression of Unlawful Acts against the Safety of Maritime Navigation 海 上 航 行 の 安 全 に 対 する 不 法 な 行 為 の 防 止 に 関 する 条 約 )で 規 定 されてい る SUA 条 約 は1985 年 に 地 中 海 で 発 生 したパレスチナゲリラによるイタリア 船 籍 客 船 アキ レ ラウロ 号 ハイジャック 事 件 が 契 機 となり 1988 年 に 採 択 された 国 際 条 約 で 日 本 では 1998 年 に 発 効 している この 事 件 では 犯 人 からゲリラの 仲 間 の 解 放 が 要 求 され 米 国 人 旅 客 一 名 が 殺 害 された その 後 米 国 主 導 でSUA 条 約 が 締 結 され 二 カ 国 以 上 の 領 海 に またがる 海 賊 行 為 海 上 テロ 行 為 などの 重 大 な 犯 罪 は 沿 岸 国 以 外 の 国 でも 取 り 締 まるこ とができると 規 定 された しかし この 条 約 は 各 国 の 主 権 を 侵 す 可 能 性 があり 批 准 して いる 国 はまだ 少 ない 国 連 海 洋 法 条 約 における 海 賊 対 策 の 規 定 は 第 105 条 において いずれの 国 も 公 海 そ の 他 いずれの 国 の 管 轄 権 にも 服 さない 場 所 においては 海 賊 船 舶 海 賊 航 空 機 又 は 海 賊 行 為 によって 奪 取 され かつ 海 賊 の 支 配 下 にある 船 舶 又 は 航 空 機 を 拿 捕 し 及 び 当 該 船 舶 又 は 航 空 機 内 の 人 を 逮 捕 し 又 は 財 産 を 押 収 することができる 拿 捕 を 行 った 国 の 裁 判 所 は 科 すべき 刑 罰 を 決 定 することができる ものとしている この 条 約 に 見 られるように 海 賊 行 為 への 国 際 法 における 対 応 は 船 が 乗 っ 取 られ 場 合 に 限 り 現 行 犯 であれば 逮 捕 でき るという 限 定 されたものである 2001 年 の 米 国 同 時 多 発 テロ 以 後 IMO( 国 際 海 事 機 関 )では 海 上 テロに 対 処 する 国 際 条 約 の 再 整 備 が 検 討 された これは 米 国 により 強 力 に 推 し 進 められ わずか 一 年 足 ら ずの 間 に SOLAS 条 約 ( 海 上 における 人 命 の 安 全 のための 国 際 条 約 ) の 改 正 案 としてま とめられ 2002 年 12 月 に 採 択 された その 中 で 海 上 テロ 海 賊 対 策 のため 港 湾 の 保 安 管 理 をおこなう ISPSコード( 国 際 船 舶 施 設 保 安 コード) が 導 入 され 港 への 立 ち 入 り 制 限 出 入 港 船 舶 の 検 査 の 実 施 が 徹 底 された これは テロリスト 対 策 であると 同 時 に 海 賊 対 策 としても 有 効 であると 考 えられる また 外 航 船 舶 は AIS( 船 舶 自 動 識 別 装 置 )を 搭 載 することが 義 務 付 けられた この 装 置 は 不 審 な 船 舶 を 発 見 した 場 合 その 船 に 関 する 情 報 を 海 上 でも 入 手 することができ 海 賊 船 や 密 輸 船 の 発 見 に 役 立 つ そのほか 船 舶 は 船 舶 標 識 番 号 を 船 体 外 板 などに 表 示 することや 船 の 旗 国 や 船 主 などの 変 更 の 記 録 ( 船 歴 )を 保 存 することが 義 務 化 され 盗 難 船 や 偽 装 船 を 発 見 するのに 効 果 を 発 揮 している また 船 舶 は 海 上 テロや 海 賊 に 襲 われたとき 速 やかに 沿 岸 国 等 へ 通 報 する 船 舶 保 安 警 報 装 置 を 設 置 し 事 件 の 情 報 がリアルタイムに 連 絡 されるシステムが 作 られた アジア 各 国 海 上 警 備 機 関 の 国 際 協 力 の 成 果 として 2006 年 ₉ 月 アジア 海 賊 対 策 地 域 協 力 協 定 が 発 効 した この 協 定 は 前 述 の アジア 海 賊 対 策 チャレンジ2000 をベースとし て 海 賊 に 対 する 国 際 協 力 関 係 を 具 現 化 したものである 2001 年 に 小 泉 純 一 郎 首 相 ( 当 時 ) 10

が 提 唱 し 日 本 の 外 務 省 が 中 心 となり 東 南 アジア 諸 国 連 合 (ASEAN) 十 カ 国 とインド スリランカ バングラデシュ 中 国 韓 国 日 本 の 計 16カ 国 により 議 論 された この 協 定 は 国 連 海 洋 法 条 約 における 海 賊 行 為 及 び 船 舶 に 対 する 武 装 強 盗 に 関 する 条 項 を 基 盤 とし アジア 各 国 の 協 力 体 制 の 構 築 を 謳 っている 具 体 的 には 締 約 国 間 の 海 賊 に 関 する 情 報 の 共 有 と 警 備 捜 査 能 力 の 向 上 を 目 指 し 情 報 共 有 センターがシンガポールに 設 置 された 2008 年 ₇ 月 現 在 海 賊 対 策 地 域 協 力 協 定 を 批 准 した 国 は シンガポール ラ オス タイ フィリピン ミャンマー 韓 国 カンボジア ベトナム インド スリラン カ ブルネイ バングラデシュ 中 国 および 日 本 の14カ 国 である 海 賊 多 発 国 であるイン ドネシアとマレーシアは 沿 岸 域 での 海 賊 行 為 は 国 内 犯 罪 であり 他 国 に 情 報 を 提 供 す ることは 国 家 の 主 権 を 損 なうと 考 え 協 定 に 署 名 していない また 海 賊 情 報 共 有 センター が 置 かれているシンガポールにインドネシア マレーシア 両 国 の 沿 岸 域 の 情 報 を 掌 握 され ることを 恐 れているようだ 未 だ 海 賊 情 報 共 有 センターには 課 題 が 多 い これまで 船 会 社 の 海 賊 対 策 は IMBに よる 情 報 の 提 供 に 頼 ってきた IMBとの 役 割 分 担 が 必 要 である また アジアの 国 家 の 枠 組 みだけでは 対 応 できない 便 宜 置 籍 船 の 問 題 があるなど 海 賊 情 報 共 有 センターがどれほ どの 海 賊 情 報 の 吸 引 力 を 持 つかが 今 後 のアジア 海 賊 対 策 地 域 協 力 協 定 の 効 力 を 左 右 する ことになる 国 家 だけでなく 民 間 の 理 解 と 協 力 を 求 める 必 要 がある 2007 年 海 上 保 安 庁 は 海 賊 対 策 室 を 新 設 した 海 賊 対 策 室 は アジア 海 賊 対 策 地 域 協 力 協 定 に 対 応 し 各 国 の 行 っている 海 賊 対 策 を 支 援 する 役 割 を 担 っている 今 後 は アジア 全 体 の 海 洋 安 全 のために 各 国 警 備 機 関 との 連 絡 調 整 の 核 となることが 求 められている 2008 年 外 務 省 にも 海 洋 安 全 保 障 を 担 当 するセクションが 新 設 された マレーシアは 2006 年 に 海 事 法 令 執 行 庁 (MMEA)を 立 ち 上 げ コーストガード 体 制 を 構 築 した また イ ンドネシアでも 同 年 に 海 上 治 安 調 整 機 構 (BAKORKAMLA)が 発 足 し 海 上 治 安 機 関 を 一 元 化 する 体 制 を 整 えた マレーシアの 海 事 法 令 執 行 庁 とインドネシアの 海 上 治 安 調 整 機 構 には 日 本 の 海 上 保 安 庁 からアドバイザーが 派 遣 されている このようにアジア 各 国 は 海 上 警 備 を 充 実 する 施 策 をとるようになった 現 在 最 も 危 険 であるソマリア 海 域 は 前 述 のように 多 国 籍 連 合 艦 隊 により 守 られてい るが 海 賊 の 発 生 は 減 少 にいたってはいない まとめ アジアの 海 賊 への 対 応 は 進 んでいるといえるが 問 題 が 残 るのは ソマリアなどアフ リカ 沿 岸 部 の 過 激 化 した 海 賊 である 今 後 国 連 安 全 保 障 理 事 会 決 議 の 決 議 にもとづき インド 洋 で 国 際 テロ 活 動 の 警 戒 に 当 たっている 多 国 籍 艦 隊 をはじめとした 各 国 の 海 軍 艦 艇 が ソマリア 海 賊 の 討 伐 に 臨 むとなると 本 格 的 な 戦 闘 に 発 展 することを 想 定 しなければ ならない この 多 国 籍 艦 隊 には 日 本 の 自 衛 隊 も 補 給 活 動 で 参 加 しているのである 現 在 日 本 ではこの 多 国 籍 艦 隊 への 支 援 するための テロ 特 措 法 を 継 続 するか 否 かが 国 家 において 審 議 されている 日 本 船 主 協 会 は 多 国 籍 艦 隊 によるアデン 湾 およびインド 洋 における 海 上 交 通 の 安 全 確 保 の 貢 献 を 評 価 し 補 給 支 援 特 措 法 の 継 続 を 求 めている インド 洋 およびアデン 湾 は 物 資 の 輸 入 の99%を 海 運 に 依 存 する 日 本 にとっては 中 東 および 欧 州 と 日 本 を 結 ぶ 重 要 航 路 である この 航 路 の 安 全 は 日 本 人 の 社 会 生 活 にとって 11

も 重 要 な 意 味 を 持 つが 他 国 の 貢 献 に 依 存 していてよいのだろうか 諸 外 国 のソマリア 海 賊 への 対 応 を 日 本 国 内 においても 周 知 し 日 本 の 取 るべき 対 策 を 早 急 に 検 討 しなければな らない さもなければ 海 洋 国 家 としての 日 本 のアイデンティティーを 失 うことになるだ ろう 海 は 人 類 共 通 の 財 産 であり 海 賊 は 人 類 共 通 の 敵 である 日 本 政 府 は 日 本 人 の 被 害 が 出 る 前 に 海 賊 への 対 策 を 明 確 に 打 ち 出 すべきである 12