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為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

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入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

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Taro-契約条項(全部)

( 補 助 金 の 額 ) 第 6 条 補 助 金 の 額 は 第 5 条 第 2 項 の 規 定 による 無 線 LAN 機 器 の 設 置 箇 所 数 に 1 万 5 千 円 を 掛 けた 金 額 と 第 5 条 第 3 項 に 規 定 する 補 助 対 象 経 費 の2 分 の1のいずれか 低

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(3) 区 分 所 有 法 第 7 条 の 先 取 特 権 の 実 行 滞 納 管 理 費 等 に 係 る 債 権 は 区 分 所 有 法 第 7 条 の 先 取 特 権 の 被 担 保 債 権 となってい るため 債 務 名 義 ( 確 定 判 決 等 )を 取 得 せずとも 先 取 特 権 の

続 に 基 づく 一 般 競 争 ( 指 名 競 争 ) 参 加 資 格 の 再 認 定 を 受 けていること ) c) 会 社 更 生 法 に 基 づき 更 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなされている 者 又 は 民 事 再 生 法 に 基 づき 再 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなさ

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3. 選 任 固 定 資 産 評 価 員 は 固 定 資 産 の 評 価 に 関 する 知 識 及 び 経 験 を 有 する 者 のうちから 市 町 村 長 が 当 該 市 町 村 の 議 会 の 同 意 を 得 て 選 任 する 二 以 上 の 市 町 村 の 長 は 当 該 市 町 村 の 議

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2. 会 計 規 程 の 業 務 (1) 規 程 と 実 際 の 業 務 の 調 査 規 程 や 運 用 方 針 に 規 定 されている 業 務 ( 帳 票 )が 実 際 に 行 われているか( 作 成 されている か)どうかについて 調 べてみた 以 下 の 表 は 規 程 の 条 項 とそこに

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後 にまで 及 んでおり(このような 外 部 研 究 資 金 を 以 下 契 約 理 由 研 究 という ) かつ その 者 が 退 職 後 も 引 き 続 き 研 究 代 表 者 となることを 研 究 所 が 認 める 場 合 とし 理 事 室 の 命 を 受 けて 発 議 書 ( 別 に 定 め

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失 によって 告 知 事 項 について 事 実 を 告 げずまたは 不 実 のことを 告 げたときは 共 済 契 約 者 に 対 する 書 面 による 通 知 をもって 共 済 契 約 を 解 除 することができます た だし 当 組 合 がその 事 実 を 知 りまたは 過 失 によってこれを 知

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平 成 14 年 (ワ) 第 1157 号 出 版 差 止 等 請 求 事 件 口 頭 弁 論 終 結 日 平 成 14 年 5 月 15 日 判 決 原 告 A 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 武 田 博 孝 同 長 島 亘 被 告 株 式 会 社 ポプラ 社 被 告 B 被 告 ら 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 蜂 須 優 二 主 文 1 原 告 の 請 求 をいずれも 棄 却 する 2 訴 訟 費 用 は 原 告 の 負 担 とする 事 実 及 び 理 由 第 1 請 求 1 被 告 株 式 会 社 ポプラ 社 は, 別 紙 書 籍 目 録 記 載 の 書 籍 の 印 刷, 製 本, 販 売 又 は 頒 布 をしてはならない 2 被 告 株 式 会 社 ポプラ 社 は, 既 に 販 売 又 は 頒 布 した 別 紙 書 籍 目 録 記 載 の 書 籍 を 回 収 せよ 3 被 告 らは, 原 告 に 対 して, 連 帯 して 金 330 万 円 及 び 内 金 300 万 円 に 対 す る 平 成 14 年 2 月 1 日 から 支 払 済 みまで 年 5 分 の 割 合 による 金 員 を 支 払 え 第 2 事 案 の 概 要 本 件 は,かえでの 木 を 所 有 する 原 告 が, 同 かえでの 木 の 写 真 を 掲 載 した 書 籍 を 出 版, 販 売 等 した 被 告 株 式 会 社 ポプラ 社 ( 以 下 被 告 ポプラ 社 という )に 対 して,かえでの 木 の 所 有 権 に 基 づき 上 記 書 籍 の 出 版 等 の 差 止 めを, 被 告 ポプラ 社 及 び 上 記 書 籍 に 掲 載 された 写 真 を 撮 影 した 被 告 Bに 対 して,かえでの 木 の 所 有 権 侵 害 による 不 法 行 為 に 基 づき 損 害 賠 償 金 の 支 払 を 求 めた 事 案 である 1 争 いのない 事 実 等 ( 証 拠 により 認 定 した 事 実 は 当 該 証 拠 番 号 を 末 尾 に 摘 示 し た ) (1) 原 告 は, 長 野 県 北 安 曇 郡 池 田 町 14458 番 1の 土 地 ( 以 下 本 件 土 地 という ) 上 に, 高 さ 約 15メートルの 巨 大 なかえでの 木 ( 以 下 本 件 かえで と いう )を 所 有 している (2) 被 告 ポプラ 社 は, 図 書 及 び 雑 誌 等 の 出 版 等 を 業 とする 株 式 会 社 であり, 被 告 Bは,フリーカメラマンである (3) 平 成 7,8 年 ころに 本 件 かえでの 美 しさが 新 聞 で 報 道 されたため, 本 件 か えでを 観 賞 するために 多 数 の 観 光 客 が 訪 れるようになった (4) 原 告 は, 平 成 12 年 7 月 ころ, 個 人 が 楽 しむ 目 的 以 外 で, 本 件 かえでを 撮 影 すること 及 び 撮 影 した 映 像 を 使 用 することについては, 原 告 の 許 可 が 必 要 である 旨 の 看 板 ( 以 下 本 件 看 板 という )を 設 置 した( 甲 4) (5) 被 告 Bは 本 件 かえでを 多 数 回 にわたり 撮 影 し, 被 告 ポプラ 社 は, 平 成 13 年 11 月, 同 写 真 を 掲 載 した 別 紙 書 籍 目 録 記 載 の 書 籍 ( 以 下 本 件 書 籍 とい う )を 出 版 した なお, 本 件 書 籍 に 掲 載 された 本 件 かえでの 写 真 の 例 として, 別 紙 本 件 かえでの 写 真 がある 2 争 点 (1) 原 告 は, 被 告 らに 対 して, 本 件 かえでの 所 有 権 に 基 づいて, 本 件 書 籍 の 出 版 等 の 差 止 め 及 び 本 件 書 籍 の 回 収 を 請 求 することができるか 原 告 は, 本 件 かえでの 所 有 権 侵 害 の 不 法 行 為 に 基 づいて, 被 告 Bが 本 件 か えでの 写 真 を 撮 影 し, 被 告 らが 本 件 書 籍 を 出 版 したことについて 損 害 賠 償 を 請 求 す ることができるか (2) 損 害 額 はいくらか 3 当 事 者 の 主 張 (1) 争 点 (1)について ( 原 告 の 主 張 ) ア 本 件 かえでの 管 理, 保 全 に 至 った 経 緯 及 び 管 理 の 状 況 (ア) 原 告 は, 昭 和 43 年 9 月 ころ,Cと 共 同 で, 本 件 土 地 を 含 む 長 野 県 池 田 町 内 の 土 地 の 所 有 権 を 取 得 し, 同 所 有 権 をCと 共 有 していたが, 昭 和 59 年 6 月 20 日 に 上 記 土 地 についてのCの 共 有 持 分 の 譲 渡 を 受 けた 原 告 は, 本 件 土 地 を 取 得 する 前 の 現 地 調 査 の 際, 又 は, 本 件 土 地 の 所 有 権 を 取 得 した 後, 本 件 土 地 を 牧 場 とするために, 雑 木 を 伐 採, 撤 去 するなどして

整 地 した 際, 本 件 かえでを 発 見 し, 本 件 かえでの 美 しさに 感 動 し, 枯 れ 枝 の 剪 定 及 び 除 去 などをして, 本 件 かえでを 管 理, 保 全 することにし, 以 来,30 年 以 上 にわ たり 本 件 かえでの 管 理, 保 全 に 努 めてきた (イ) 本 件 かえでは, 美 しく 生 育 し, 平 成 の 初 めころには, 隠 れた 観 光 名 所 として 知 られるようになった その 後, 平 成 7,8 年 ころに, 本 件 かえでが 新 聞 で 報 道 されたため, 以 後, 観 光 客 が 多 数 訪 れるようになった (ウ) このように, 本 件 かえでが 有 名 になり, 多 くの 観 光 客 が 見 学 するよ うになったことにより, 本 件 かえでの 根 の 部 分 の 土 が 踏 み 固 められたり, 本 件 かえ での 枝 が 折 られたりした 特 に,カメラマンは, 美 しい 映 像 を 撮 影 しようとして, 長 期 間 にわた り, 本 件 かえでに 悪 影 響 を 与 える 行 為 を 行 うことが 多 かった (エ) そのため, 原 告 は, 本 件 かえでを 管 理, 保 全 する 必 要 性 を 痛 感 し, 平 成 12 年 4 月, 個 人 で 楽 しむ 以 外 の 営 利 目 的 での 本 件 かえでの 撮 影 やその 映 像 の 使 用 については 原 告 の 許 可 を 受 けること, 及 び 許 可 を 受 ける 場 合 には, 本 件 かえで の 保 全 のための 金 銭 的 援 助 をするよう 求 めることを 決 めた そして, 原 告 は, 本 件 かえでの 撮 影 等 の 許 可 等 に 関 する 事 務 をDにゆだねた また, 原 告 は, 平 成 12 年 7 月 ころ, 本 件 かえでの 撮 影 等 には, 許 可 を 得 ることが 必 要 である 旨 を 表 示 した 看 板 ( 本 件 看 板 )を 設 置 した なお, 本 件 看 板 設 置 後,NHK, 朝 日 新 聞 社, 毎 日 新 聞 社 等 の 多 くの 撮 影 者 が 原 告 から 本 件 かえでの 撮 影 の 許 可 を 得 ている (オ) 平 成 13 年 11 月 に 行 われた 樹 医 の 診 断 によると, 本 件 かえでは, 現 在 のような 根 本 周 辺 が 踏 み 固 められる 状 態 が 続 けば,あと2ないし3 年 で 致 命 的 な 損 傷 を 被 るとのことである このように, 本 件 かえでは, 危 機 的 な 状 態 にあり, その 保 全 のための 処 置 が 急 務 である なお, 原 告 は, 本 件 かえでの 保 全 のために, 平 成 13 年 だけでも, 牧 草 地 の 草 刈 り,クローバー 等 の 植 え 付 け, 枝 打 ちによる 樹 形 整 備, 霜 及 び 雪 対 策, 有 機 肥 料 作 成 及 び 施 行, 観 光 シーズンの 人 員 整 理 並 びに 駐 車 場 の 増 設 及 び 整 備 等 を 行 った イ 被 告 Bとの 交 渉 の 経 緯 被 告 Bは, 平 成 12 年 11 月 ころ,Dに 対 し, 電 話 で, 本 件 かえでの 看 板 を 見 た 本 件 かえでの 写 真 集 を 被 告 ポプラ 社 から 出 版 する 計 画 がある 原 告 の 承 諾 は7 年 ほど 前 に 得 ている 旨 の 連 絡 をしてきた しかし, 原 告 は 上 記 の 承 諾 をしたことはないことから,Dを 通 じて, 被 告 Bに 対 し, 出 版 が 決 まった 段 階 で 許 可 願 いを 提 出 するよう 求 めた 原 告 はDを 通 じて, 平 成 13 年 4 月, 被 告 Bに 対 し, 映 像 の 使 用 許 可 願 書 を 送 付 してその 提 出 を 求 めたが, 被 告 Bはこれを 拒 否 した 原 告 はDを 通 じて, 同 年 5 月, 被 告 ポプラ 社 に 対 して, 電 話 で 上 記 の 経 緯 を 伝 え, 映 像 の 使 用 に 関 する 許 可 願 いを 提 出 するよう 申 し 入 れた 原 告 はDを 通 じて, 同 月 22 日, 被 告 ポプラ 社 に 対 し, 本 件 かえでを 撮 影 した 映 像 を 個 人 が 個 人 で 楽 しむ 以 外 の 営 利 的 な 目 的 で 使 用 する 場 合 は 金 銭 的 援 助 を 求 めており, 被 告 ポプラ 社 も 映 像 使 用 許 可 願 いを 提 出 してほしい 旨 記 載 した 書 面 を 送 付 した しかし, 被 告 ポプラ 社 は, 原 告 の 上 記 要 請 を 拒 絶 した さらに,その 後 も, 原 告 はDを 通 じて, 被 告 ポプラ 社 に 対 し, 同 年 7 月 18 日, 同 年 10 月 24 日, 同 年 12 月 25 日 と3 度 にわたり, 被 告 ポプラ 社 の 誠 意 ある 対 応 を 要 請 してきたが, 被 告 ポプラ 社 は,これらすべてに 対 して 拒 絶 する 姿 勢 を 続 けた ウ 所 有 権 に 基 づく 差 止 請 求 権, 所 有 権 侵 害 による 不 法 行 為 成 立 の 根 拠 (ア) 被 告 Bは, 少 なくとも,1 年 を 通 じて 本 件 かえでを 原 告 に 無 断 で 多 数 回 に 及 び 撮 影 してきた そして, 被 告 Bは, 原 告 の 許 可 なく, 本 件 かえでを 撮 影 し, 被 告 ポプ ラ 社 は, 平 成 13 年 11 月, 原 告 の 許 可 なく, 本 件 かえでの 写 真 が 掲 載 された 本 件 書 籍 を 出 版 した 本 件 書 籍 には, 本 件 かえでの 根 本 付 近 で 走 り 回 る 子 供 達 の 写 真 が 掲 載 されており,このような 写 真 は, 本 件 かえでの 保 全 面 で, 有 害 かつ 悪 影 響 を 与 え る (イ) 本 件 かえでのように, 独 特 の 美 しさ, 魅 力 があり,その 管 理, 生 育 にもそれなりの 工 夫 と 人 知 れぬ 苦 労 があり, 長 年 の 努 力 の 積 み 重 ねの 結 果 育 てられ

たものについては,そのものの 所 有 者 が,これを 撮 影 し, 写 真 集 等 として 出 版 する 行 為 を, 専 有 できるというべきである( 高 知 地 裁 昭 和 59 年 10 月 29 日 判 決 判 例 タイムズ559 号 291 頁, 東 京 地 裁 昭 和 52 年 3 月 17 日 判 決 判 例 時 報 86 8 号 64 頁, 神 戸 地 裁 平 成 3 年 11 月 28 日 判 決 判 例 時 報 1412 号 136 頁 ) この 点, 被 告 らは, 最 高 裁 昭 和 59 年 1 月 20 日 判 決 を 被 告 らの 主 張 の 根 拠 として 引 用 する しかし, 上 記 最 高 裁 判 決 は, 所 有 者 の 許 諾 を 受 けて 直 接 撮 影 により 作 成 された 写 真 乾 板 を 第 三 者 から 譲 り 受 け,これを 所 有 者 の 承 諾 を 得 ることなく 使 用 して 複 製 した 行 為 が, 所 有 権 侵 害 に 当 たるか 否 かが 問 題 となった 事 案 において, 目 的 物 の 所 有 権 を 侵 害 することなく 適 法 に 作 成 された 著 作 物 については, 目 的 物 の 所 有 権 に 基 づいて 著 作 物 自 体 を 直 接 排 他 的 に 支 配 することはできないという 法 理 を 示 したものである すなわち, 上 記 最 高 裁 判 決 は, 複 製 行 為 の 基 になった 著 作 物 自 体 が 所 有 者 の 許 諾 を 受 けて 適 法 に 作 成 されたものであることが 前 提 となっているので あり,このことは, 同 判 決 の 第 三 者 が 有 体 物 としての 美 術 の 著 作 物 の 原 作 品 に 対 する 排 他 的 支 配 権 能 をおかすことなく 原 作 品 の 著 作 物 の 面 を 利 用 したとしても, 右 行 為 は, 原 作 品 の 所 有 権 を 侵 害 するものではない, 被 上 告 人 らの 右 行 為 は, 被 上 告 人 らが 適 法 に 所 有 権 を 取 得 した 写 真 乾 板 を 用 いるにすぎず, 上 告 人 の 所 有 する 自 書 告 身 帖 を 使 用 するなどして 上 告 人 の 自 書 告 身 帖 に 対 する 排 他 的 支 配 をおかすも のではなく, 上 告 人 の 自 書 告 身 帖 に 対 して 有 する 所 有 権 を 何 ら 侵 害 するものではな い との 判 示 に 示 されている ところが, 本 件 では,そもそも 本 件 書 籍 の 基 になった 本 件 かえでの 写 真 自 体 が 被 告 Bにおいて 無 断 撮 影 され, 原 告 の 所 有 権 を 侵 害 する 形 で 違 法 に 作 成 さ れたものであり,その 写 真 を 複 製 出 版 した 被 告 ポプラ 社 も 出 版 前 にその 点 を 知 悉 していたものである 作 品 が 適 法 に 作 成 されたものであるのか 否 かという 点 におい て, 本 件 と 上 記 最 高 裁 判 決 の 事 案 とは 全 く 異 なる (ウ) したがって, 本 件 かえでを 撮 影 し,その 写 真 を 掲 載 した 書 籍 を 出 版 する 権 利 ( 独 占 権 )は, 本 件 かえでの 所 有 者 たる 原 告 にあり, 原 告 は, 被 告 ポプラ 社 に 対 し, 本 件 かえでの 所 有 権 に 基 づき, 本 件 かえでの 写 真 を 掲 載 した 本 件 書 籍 の 出 版 等 を 差 し 止 めることを 請 求 できる また, 本 件 かえでを 撮 影 した 被 告 Bの 行 為 及 び 本 件 書 籍 を 出 版 した 被 告 ポプラ 社 の 行 為 は, 原 告 の 本 件 かえでに 対 する 所 有 権 を 侵 害 し, 不 法 行 為 を 構 成 するから, 原 告 は, 被 告 らに 対 して, 不 法 行 為 に 基 づく 損 害 賠 償 を 請 求 できる ( 被 告 らの 主 張 ) ア 原 告 の 主 張 は 争 う 原 告 が 本 件 かえでを 発 見 したこと, 原 告 が30 年 以 上 にわたり 本 件 かえ での 管 理, 保 全 に 努 めてきたことは 否 認 する 被 告 Bは, 平 成 元 年 10 月 ころ, 本 件 かえでを 初 めて 見 たときに 感 動 を 覚 え, 本 件 かえでの 写 真 を 長 期 間 にわたって 撮 影 し, 写 真 集 として 出 版 しようと 考 えた その 後,まもなく, 被 告 Bは, 原 告 宅 を 訪 れ, 本 件 かえでの 美 しさを 説 明 し, 自 己 がプロのカメラマンであることを 伝 えた 上 で, 本 件 かえでの 撮 影 とそのた めの 本 件 土 地 への 立 ち 入 り 及 び 撮 影 した 写 真 を 掲 載 した 書 籍 を 出 版 することについ て 承 諾 を 得 た 被 告 Bは, 原 告 の 承 諾 の 下 に, 本 件 かえでの 撮 影 を 行 い,まず, 平 成 7 年 3 月 に, 写 真 集 かえでのきのいちねん ( 株 式 会 社 学 習 研 究 社 出 版 )を 刊 行 し た 被 告 Bは, 原 告 に 対 して, 同 写 真 集 を 数 部 持 参 したところ, 原 告 は, 同 写 真 集 の 出 版 を 喜 んでいた このことからも, 被 告 Bが, 本 件 かえでの 撮 影 等 について, 原 告 の 承 諾 を 受 けたことは 明 きらかである また, 被 告 Bが 本 件 書 籍 に 掲 載 された 写 真 を 撮 影 したのは, 原 告 が 本 件 看 板 を 設 置 した 平 成 12 年 7 月 よりも 前 である イ 所 有 権 の 客 体 は 有 体 物 であるから, 原 告 の 本 件 かえでに 対 する 所 有 権 の 内 容 は,その 有 体 物 としての 排 他 的 支 配 権 能 にとどまり, 本 件 かえでを 撮 影 した 写 真 の 複 製, 出 版 等 を 排 他 的 に 支 配 する 権 能 を 含 まない( 最 高 裁 昭 和 59 年 1 月 20 日 判 決 民 集 38 巻 1 号 1 頁 ) また, 差 止 請 求 権 は, 法 律 に 明 文 規 定 がある 場 合 にのみ 認 められるもの である したがって, 原 告 が 被 告 らに 対 して, 本 件 かえでの 所 有 権 に 基 づき, 本 件 書 籍 の 出 版 等 の 差 止 めをすることはできない また, 原 告 は, 本 件 かえでの 所 有

権 侵 害 の 不 法 行 為 に 基 づいて, 被 告 Bが 本 件 かえでの 写 真 を 撮 影 し, 被 告 らが 本 件 書 籍 を 出 版 したことについて 損 害 賠 償 を 請 求 することもできない (2) 争 点 (2)について ( 原 告 の 主 張 ) ア 物 的 損 害 原 告 は, 本 件 かえでの 撮 影 を 許 可 する 場 合 は, 撮 影 協 力 金 の 支 払 を 求 め ているところ, 同 撮 影 協 力 金 は, 撮 影 1 回 当 たり3000 円 が 相 当 である そし て, 原 告 は, 本 件 かえでを1 年 を 通 じて 撮 影 したと 考 えられるため,365 回 は 撮 影 したものと 推 測 される したがって, 撮 影 協 力 金 相 当 額 は,109 万 5000 円 (3000 円 365 回 )となる 原 告 は, 上 記 金 額 のうち,100 万 円 の 支 払 を 求 める イ 精 神 的 損 害 (ア) 原 告 は, 本 件 かえでを30 年 以 上 にわたり 丹 精 込 めて 育 ててきた が, 現 在 では 本 件 かえでの 保 全 は 危 機 的 状 況 にあり,この 保 全 に 心 を 砕 いている それにもかかわらず, 被 告 らは, 原 告 に 無 断 で 本 件 かえでを 撮 影 し,これを 出 版 し たのであり,このことにより 原 告 は 精 神 的 な 苦 痛 を 味 わった (イ) 本 件 書 籍 の 中 には, 本 件 かえでの 根 本 付 近 で 走 り 回 る 子 供 たちの 写 真 が 掲 載 されているが, 同 写 真 は, 原 告 の 本 件 かえでを 保 全 しようとする 努 力 を 無 にするものである また,このような 写 真 の 公 表 により, 本 件 かえでの 保 全 に 対 す る 有 害 な 事 態 が 生 じるおそれがあるから,この 点 においても, 原 告 は 精 神 的 な 損 害 を 受 けた また, 被 告 らが, 原 告 に 無 許 可 で 写 真 集 を 出 版 したことになると, 原 告 が 本 件 かえでの 保 全 のために 採 用 してきたルールが 乱 れ,この 点 においても, 原 告 は 精 神 的 な 損 害 を 受 けた (ウ) 以 上 の 事 情 を 考 慮 すると, 本 件 書 籍 の 出 版 により 原 告 が 被 った 精 神 的 損 害 は, 少 なくとも200 万 円 を 下 らない ウ 弁 護 士 費 用 原 告 は, 本 件 訴 訟 の 遂 行 を 原 告 代 理 人 に 依 頼 し,その 費 用 として30 万 円 を 支 払 うことを 約 した エ したがって, 被 告 らの 不 法 行 為 により 原 告 が 被 った 損 害 額 は,330 万 円 である なお, 原 告 は, 上 記 精 神 的 損 害 の300 万 円 に 対 する 訴 状 送 達 の 日 の 翌 日 である 平 成 14 年 2 月 1 日 から 年 5 分 の 割 合 による 遅 延 損 害 金 の 支 払 を 請 求 す る ( 被 告 らの 主 張 ) 争 う 第 3 当 裁 判 所 の 判 断 1 争 点 (1)について (1) 事 実 認 定 証 拠 ( 甲 1ないし5,6の1 及 び2,7ないし13,15ないし18,2 0, 乙 1) 並 びに 弁 論 の 全 趣 旨 によれば, 以 下 の 事 実 が 認 められ,これに 反 する 証 拠 はない ア 原 告 は, 本 件 かえで 及 び 本 件 かえでが 生 育 している 本 件 土 地 を30 年 以 上 前 から 所 有 していた 本 件 かえでは 高 さが15メートルほどの 大 木 であり,その 美 しさがマスコミで 紹 介 されたこともあって, 大 峰 高 原 の 大 かえで として 有 名 になり, 数 多 くの 人 々が 本 件 かえでを 見 物 に 訪 れ, 自 由 に 写 真 撮 影 をしてきた 原 告 は, 本 件 かえでの 管 理 をし,その 保 全 に 努 めてきたが,その 根 本 が 踏 み 固 められ たりしたことにより, 本 件 かえでが 危 機 的 な 状 況 に 陥 っていることが 分 かり,その 保 全 の 必 要 性 を 痛 切 に 感 じた イ 原 告 は, 平 成 12 年 4 月 ころ, 本 件 かえでの 保 全 のために, 営 利 目 的 で 本 件 かえでを 撮 影 し, 撮 影 した 映 像 を 使 用 することについては, 原 告 の 許 可 を 得 る こと, 許 可 を 得 て 本 件 かえでを 撮 影 等 した 者 に 対 しては, 金 銭 的 援 助 を 求 めること を 決 めて, 同 年 7 月 には, 本 件 土 地 上 に, 根 を 踏 まない, 枝 を 折 らないなど 樹 を 大 切 にして 下 さい 本 件 かえでに 対 する 私 有 地 での 撮 影 及 び 映 像 使 用 の 権 利 は 所 有 者 にあります 撮 影 した 映 像 を 個 人 が 個 人 として 楽 しむ 以 外 は 撮 影, 使 用 許 可 を 得 て 下 さい 無 断 で 公 に 使 用 することはできません と 記 載 した 看 板 ( 本 件 看 板 ) を 設 置 した 原 告 がこのような 措 置 を 採 ったことにより, 原 告 に 対 して, 本 件 かえ での 撮 影 とその 映 像 の 使 用 許 可 を 求 め, 同 許 可 を 得 た 上 で 撮 影 等 をした 者 もいた ウ 被 告 Bは, 平 成 元 年 ころ, 本 件 かえでを 見 て 感 動 を 覚 え,それ 以 来, 原 告 が 本 件 看 板 を 設 置 する 以 前, 長 期 間 にわたって, 本 件 かえでの 撮 影 を 続 け, 平 成

7 年 3 月 には, 写 真 集 かえでのきのいちねん ( 株 式 会 社 学 習 研 究 社 出 版 )を 発 表 した さらに, 原 告 は, 本 件 かえでを 撮 影 した 写 真 を 掲 載 した 本 件 書 籍 が 被 告 ポ プラ 社 により 出 版 されることが 決 まったため, 平 成 12 年 11 月 ころ, 原 告 に 本 件 書 籍 を 出 版 することを 連 絡 したところ, 原 告 から, 本 件 かえでの 映 像 の 使 用 許 諾 を 得 ることを 要 求 されたが, 被 告 らは, 原 告 が 要 求 した 許 可 手 続 を 経 ることなく 本 件 書 籍 を 出 版 した 本 件 書 籍 は, 本 件 かえでを 被 写 体 とした 写 真 集 であり, 本 件 かえ でをテーマにした 被 告 Bの 執 筆 した 短 い 文 章 が, 写 真 とともに 掲 載 されている (2) 判 断 ア 本 件 かえでの 所 有 権 に 基 づく 本 件 書 籍 の 出 版 差 止 めの 可 否 原 告 は, 本 件 かえでを 撮 影 した 写 真 を 複 製 したり, 複 製 物 を 掲 載 した 書 籍 を 出 版 等 する 権 利 は, 本 件 かえでの 所 有 者 たる 原 告 のみが 排 他 的 に 有 すると 主 張 して, 被 告 らの 本 件 書 籍 の 出 版 行 為 等 の 差 止 めを 求 める しかし, 所 有 権 は 有 体 物 をその 客 体 とする 権 利 であるから, 本 件 かえで に 対 する 所 有 権 の 内 容 は, 有 体 物 としての 本 件 かえでを 排 他 的 に 支 配 する 権 能 にと どまるのであって, 本 件 かえでを 撮 影 した 写 真 を 複 製 したり, 複 製 物 を 掲 載 した 書 籍 を 出 版 したりする 排 他 的 権 能 を 包 含 するものではない そして, 第 三 者 が 本 件 か えでを 撮 影 した 写 真 を 複 製 したり, 複 製 物 を 掲 載 した 書 籍 を 出 版, 販 売 したとして も, 有 体 物 としての 本 件 かえでを 排 他 的 に 支 配 する 権 能 を 侵 害 したということはで きない したがって, 本 件 書 籍 を 出 版, 販 売 等 したことにより, 原 告 の 本 件 かえで に 対 する 所 有 権 が 侵 害 されたということはできない したがって, 原 告 の 上 記 主 張 は, 主 張 自 体 失 当 である イ 本 件 かえでの 所 有 権 侵 害 の 不 法 行 為 の 成 否 (ア) 原 告 は, 本 件 かえでを 撮 影 し,その 写 真 を 掲 載 した 本 件 書 籍 を 出 版, 販 売 等 したことにより 本 件 かえでの 所 有 権 が 侵 害 されたとして, 不 法 行 為 に 基 づく 損 害 賠 償 を 求 める しかし, 前 記 アで 判 示 したように, 本 件 かえでを 撮 影 し,その 写 真 を 掲 載 した 本 件 書 籍 を 出 版, 販 売 等 したことにより, 原 告 の 本 件 かえでに 対 する 所 有 権 が 侵 害 されたということはできない また, 本 件 全 証 拠 によっても, 被 告 Bが, 本 件 かえでの 枝 を 折 るなど, 本 件 かえでの 所 有 権 を 侵 害 する 行 為 を 行 ったと 認 める ことはできない したがって, 原 告 の 上 記 主 張 は 理 由 がない (イ) 不 法 行 為 の 成 否 について, 付 加 して 判 断 する 本 件 において, 被 告 らから 原 告 に 対 し, 本 件 損 害 賠 償 請 求 の 根 拠 につ いて 求 釈 明 がされ( 答 弁 書 第 3,2 項 ),これに 対 して, 原 告 は, 本 件 かえでの 所 有 権 侵 害 に 基 づく 請 求 である 旨 釈 明 し( 原 告 第 1 準 備 書 面 第 1,2 項 ), 請 求 に 係 る 原 告 の 被 侵 害 利 益 は, 本 件 かえでの 所 有 権 であると 明 言 している しかし, 原 告 の 釈 明 にかかわらず, 念 のために, 被 告 Bの 撮 影 態 様 等 が, 本 件 かえでの 所 有 権 以 外 の 法 的 利 益 を 害 すると 評 価 されることにより, 不 法 行 為 を 構 成 するといえるか 否 かについても 進 んで 検 討 する 前 記 認 定 事 実 及 び 弁 論 の 全 趣 旨 によれば, 以 下 のとおりの 事 実 が 認 め られる a 本 件 かえでは 高 さが15メートルほどある 大 木 であって,その 美 し さがマスコミで 紹 介 されたこともあって, 数 多 くの 見 物 客 が 観 賞 するために, 本 件 土 地 に 自 由 に 立 ち 入 っていたこと, 原 告 が 本 件 看 板 を 設 置 した 平 成 12 年 7 月 ころ 以 前 において, 原 告 は,これらの 立 ち 入 りを 問 題 としたことはなかったことに 照 ら すならば, 原 告 は, 同 時 期 以 前 は, 本 件 かえでを 観 賞 するために 平 穏 な 態 様 で 本 件 土 地 へ 立 ち 入 ることを 一 般 に 容 認 していたものと 認 められる b その 後, 原 告 は, 本 件 かえでの 状 態 を 憂 慮 し,その 保 全 を 図 るた め, 営 利 目 的 での 撮 影 について, 条 件 を 付 けて 認 める 方 針 を 立 て, 同 年 7 月 に, 本 件 土 地 上 に, 根 を 踏 まない, 枝 を 折 らないなど 樹 を 大 切 にして 下 さい 本 件 かえ でに 対 する 私 有 地 での 撮 影 及 び 映 像 使 用 の 権 利 は 所 有 者 にあります 撮 影 した 映 像 を 個 人 が 個 人 として 楽 しむ 以 外 は 撮 影, 使 用 許 可 を 得 て 下 さい 無 断 で 公 に 使 用 す ることはできません と 記 載 した 看 板 ( 本 件 看 板 )を 設 置 した このような 看 板 の 設 置 によって, 同 年 7 月 ころ 以 降 は, 原 告 が, 本 件 かえでの 根 を 踏 む 等 の 本 件 か えでの 生 育 に 悪 影 響 を 及 ぼす 行 為 や, 営 利 目 的 で 本 件 土 地 に 立 ち 入 って 本 件 かえで を 撮 影 する 行 為 について 制 限 を 設 けたたことが, 本 件 土 地 に 赴 いた 者 の 間 では 周 知 されるようになった しかし, 本 件 看 板 を 設 置 した 後 においても, 観 光 客 が, 本 件 かえでを 観 賞 したり, 本 件 かえでを 私 的 な 目 的 で 撮 影 したりすること,そのために 本 件 土 地 に 立 ち 入 ることについては, 何 ら 禁 止 をしていなかった

c 被 告 Bが 本 件 書 籍 に 掲 載 した 本 件 かえでの 写 真 を 撮 影 したのは, 本 件 看 板 が 設 置 されるより 以 前 の 時 期 である 本 件 全 証 拠 によっても, 被 告 Bが, 本 件 看 板 の 設 置 以 降, 本 件 土 地 に 立 ち 入 って 本 件 かえでを 撮 影 したことを 認 めること はできず,また, 本 件 かえでの 生 育 等 に 悪 影 響 を 及 ぼす 可 能 性 のある 行 為 をしたこ とも 認 めることはできない 上 記 の 経 緯 に 照 らすならば, 第 三 者 が, 原 告 が 本 件 看 板 を 設 置 した 以 降 に, 本 件 かえでの 生 育 に 悪 影 響 を 及 ぼすと 考 えて 原 告 が 明 示 的 に 禁 止 した 行 為 を 行 うために 本 件 土 地 に 立 ち 入 った 場 合 には, 原 告 の 本 件 土 地 の 所 有 権 を 侵 害 する 不 法 行 為 を 構 成 することは 明 らかであり, 本 件 土 地 の 所 有 権 侵 害 行 為 と 相 当 因 果 関 係 を 有 する 範 囲 の 損 害 を 賠 償 すべきことになる しかし, 上 記 のとおり, 本 件 看 板 を 設 置 した 後 に, 被 告 Bが,そのよ うな 行 為 をしたことは 認 められないから, 被 告 Bの 原 告 に 対 する 不 法 行 為 は 成 立 し ない その 他, 本 件 全 証 拠 によるも, 原 告 の 法 的 保 護 に 値 する 何 らかの 利 益 を 侵 害 したことも 認 められない (3) なお, 付 言 する 原 告 は, 本 件 かえでの 所 有 権 に 基 づき 上 記 の 各 行 為 を 阻 止 できない 限 り, 本 件 かえでを 保 全 することができない 旨 述 べる しかし, 原 告 が, 本 件 土 地 上 に 所 在 する 本 件 かえでの 生 育 環 境 の 悪 化 を 憂 慮 して, 本 件 かえでの 生 育 等 に 悪 影 響 を 及 ぼすような 第 三 者 の 行 為 を 阻 止 するためであれば, 本 件 土 地 の 所 有 権 の 作 用 によ り, 本 件 かえでを 保 全 する 目 的 を 達 成 することができる 既 に 述 べたとおり, 現 に, 原 告 は, 本 件 土 地 への 立 ち 入 りに 際 しては, 本 件 かえでの 生 育 等 に 悪 影 響 を 及 ぼす 可 能 性 のある 行 為 をしてはならないこと, 許 可 なく 本 件 かえでを 営 利 目 的 で 撮 影 してはならないことを 公 示 しているのであるから, 第 三 者 が 上 記 の 趣 旨 に 反 して 本 件 土 地 へ 立 ち 入 る 場 合 には, 原 告 は 当 該 立 入 り 行 為 を 排 除 することもできるし, 上 記 第 三 者 には 不 法 行 為 も 成 立 する また, 本 件 土 地 内 に, 美 観 を 損 ねないような 柵 を 設 けること 等 によって,より 確 実 に 上 記 目 的 を 達 成 することもできるというべ きである 2 以 上 のとおりであり, 原 告 の 本 訴 請 求 はいずれも 理 由 がない 東 京 地 方 裁 判 所 民 事 第 29 部 裁 判 長 裁 判 官 飯 村 敏 明 裁 判 官 榎 戸 道 也 裁 判 官 佐 野 信 別 紙 書 籍 目 録 書 発 名 行 シリーズ 自 然 いのち ひと2 わたしのもみじ 平 成 13 年 11 月 写 真 文 B 編 集 E 発 行 者 F 発 行 所 株 式 会 ポプラ 社 本 件 かえでの 写 真