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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

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( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

[2] 控 除 限 度 額 繰 越 欠 損 金 を 有 する 法 人 において 欠 損 金 発 生 事 業 年 度 の 翌 事 業 年 度 以 後 の 欠 損 金 の 繰 越 控 除 にあ たっては 平 成 27 年 度 税 制 改 正 により 次 ページ 以 降 で 解 説 する の 特 例 (

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2. 会 計 規 程 の 業 務 (1) 規 程 と 実 際 の 業 務 の 調 査 規 程 や 運 用 方 針 に 規 定 されている 業 務 ( 帳 票 )が 実 際 に 行 われているか( 作 成 されている か)どうかについて 調 べてみた 以 下 の 表 は 規 程 の 条 項 とそこに

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弁護士報酬規定(抜粋)

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公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

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(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

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入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

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検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

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ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

1. 決 算 の 概 要 法 人 全 体 として 2,459 億 円 の 当 期 総 利 益 を 計 上 し 末 をもって 繰 越 欠 損 金 を 解 消 しています ( : 当 期 総 利 益 2,092 億 円 ) 中 期 計 画 における 収 支 改 善 項 目 に 関 して ( : 繰 越

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の 属 性 等 を 用 いることができるからだ (インターネットによるアンケート 調 査 の 利 点 は 同 じ 回 答 者 に 対 して 繰 り 返 し 調 査 を 行 えるところにある ) 1-2 アンケート 調 査 のデザイン 以 下 では 平 成 21 年 度 地 震 保 険 消 費 者 ア

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

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の 基 礎 の 欄 にも 記 載 します ア 法 人 税 の 中 間 申 告 書 に 係 る 申 告 の 場 合 は 中 間 イ 法 人 税 の 確 定 申 告 書 ( 退 職 年 金 等 積 立 金 に 係 るものを 除 きます ) 又 は 連 結 確 定 申 告 書 に 係 る 申 告 の 場

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22 第 1 章 資 本 金 等 利 益 積 立 金 貴 見 のとおり 資 本 等 取 引 は 本 来 は 増 資 とか 減 資 と か さらには 旧 資 本 積 立 金 額 の 増 加 または 減 少 をいうこと になる ただ 利 益 の 配 当 はいわゆる 資 本 金 等 取 引 である か 損

10 期 末 現 在 の 資 本 金 等 の 額 次 に 掲 げる 法 人 の 区 分 ごとに それぞれに 定 める 金 額 を 記 載 します 連 結 申 告 法 人 以 外 の 法 人 ( に 掲 げる 法 人 を 除 きます ) 法 第 292 条 第 1 項 第 4 号 の5イに 定 める

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博 士 論 文 要 旨 Pricing under Asymmetric Information: Advertisements and Internet Auctions ( 非 対 称 情 報 下 の 価 格 戦 略 : 広 告 とインターネットオークション) 一 橋 大 学 大 学 院 経 済 学 研 究 科 博 士 後 期 課 程 土 橋 俊 寛 企 業 にとってもっとも 重 要 な 経 営 戦 略 のひとつが 価 格 戦 略 であるが 製 品 価 格 をいくら に 設 定 すればよいかは 非 常 に 難 しい 問 題 である 消 費 者 が 製 品 に 対 して 支 払 っても 良 いと 考 える 価 格 ( 知 覚 価 値 )は その 製 品 に 対 する 消 費 者 の 関 心 といった 多 くの 要 素 に 依 存 し ており 通 常 は 消 費 者 の 私 的 情 報 となっている このような 私 的 情 報 が 企 業 に 事 後 的 な 損 失 をもたらす 事 例 は 多 数 存 在 する たとえば 日 本 の 百 貨 店 産 業 において 消 費 者 の 知 覚 価 値 に 合 致 しない 価 格 が 百 貨 店 にもたらした 損 失 は 500 億 円 にのぼるという 指 摘 もある( 野 村 総 研 (2003) ) さらに 製 品 の 品 質 という 企 業 の 私 的 情 報 も 消 費 者 の 知 覚 価 値 に 影 響 を 与 える 場 合 には 企 業 は 双 方 向 の 非 対 称 情 報 の 下 で 価 格 を 決 定 しなければならず 価 格 戦 略 は 非 常 に 困 難 な 意 思 決 定 問 題 となる 最 適 な 価 格 決 定 のために 企 業 は 情 報 の 非 対 称 性 を 解 消 したいと 考 えるだろう 実 際 に 企 業 が 展 開 する 市 場 調 査 や 広 告 が 非 対 称 情 報 の 解 消 手 段 として 機 能 すると 考 えられる グループディスカッション 郵 便 調 査 電 話 質 問 などの 市 場 調 査 によって 企 業 は 消 費 者 の 知 覚 価 値 を 推 定 できるし テレビ CM ウェブ 広 告 または 試 供 品 配 布 などの 宣 伝 広 告 によ って 製 品 の 品 質 を 消 費 者 に 伝 達 できる 他 方 で インターネットオークションなどの 販 売 チャネルも 企 業 の 価 格 戦 略 を 補 佐 しているだろう 実 際 1995 年 に Onsale や ebay が インターネットオークションを 開 始 して 以 来 インターネットオークションを 通 じた 取 引 量 は 高 い 水 準 で 成 長 している ただしインターネットオークションは 細 かな 設 定 によって 異 なる 構 造 をとりうるので オプション 設 定 を 熟 慮 しなければならない 本 稿 では 非 対 称 情 報 が 存 在 する 経 済 モデルを 用 いて 売 り 手 と 買 い 手 が 有 する 情 報 の 非 対 称 性 を 解 消 する 手 段 としての 市 場 調 査 および 広 告 の 役 割 および 異 なる 構 造 を 持 つイン ターネットオークションにおける 売 り 手 の 最 適 な 価 格 戦 略 を 分 析 する 第 1 章 で 全 体 を 通 じた 問 題 意 識 を 明 らかにしたうえで 第 2 章 から 第 4 章 では 以 下 の 問 題 を 取 りあげる どのような 条 件 のもとで 市 場 調 査 と 広 告 は 売 り 手 の 収 益 および 市 場 の 効 率 性 を 改 善 す るのか また 市 場 調 査 と 広 告 との 間 にどのような 関 係 があるのか ( 第 2 章 ) テレビ CM 型 の 広 告 と 試 供 品 配 布 型 の 広 告 の 役 割 の 違 いはなにか また 両 者 を 併 用 す ることに 利 点 はあるのか ( 第 3 章 ) インターネットオークションの 終 了 設 定 の 違 いが 最 適 な 留 保 価 格 にどのような 違 いを もたらすのか また 売 り 手 の 収 益 に 対 してはどのような 違 いをもたらすのか ( 第 4 章 ) 終 章 では 各 章 で 得 られた 結 果 を 概 観 する 1

1. 市 場 調 査 と 広 告 ( 第 2 章 ) 食 品 化 粧 品 電 化 製 品 をはじめ 多 くの 製 品 に 対 する 消 費 者 の 知 覚 価 値 は 多 様 である 製 品 に 対 する 好 みや 関 心 といった 消 費 者 の 私 的 情 報 だけでなく 製 品 の 品 質 といった 企 業 の 私 的 情 報 の 双 方 が 消 費 者 の 知 覚 価 値 を 決 定 している 企 業 は 双 方 向 の 非 対 称 情 報 に 直 面 しながら 価 格 を 決 定 しなければならない もし 企 業 が 一 方 向 の 非 対 称 情 報 に 直 面 している だけならば 市 場 調 査 によって 製 品 に 対 する 消 費 者 の 好 みや 関 心 を 推 定 し その 好 みや 関 心 に 応 じた 価 格 を 設 定 できるだろう ところが 企 業 が 双 方 向 の 非 対 称 情 報 に 直 面 してい る 場 合 には 市 場 調 査 は 必 ずしも 企 業 の 価 格 戦 略 に 有 効 ではないかもしれない 本 章 は 双 方 向 の 非 対 称 情 報 が 存 在 する 市 場 モデルを 用 いて 買 い 手 の 私 的 情 報 を 解 消 する 手 段 と しての 市 場 調 査 および 売 り 手 の 私 的 情 報 を 解 消 する 手 段 としての 広 告 の 役 割 を 明 らかに する 第 2 章 の 目 的 は 次 の 2 つの 疑 問 に 答 えることである 市 場 調 査 が 売 り 手 の 収 益 を 増 加 し 市 場 の 効 率 性 を 改 善 するための 条 件 はなにか 非 対 称 情 報 を 解 消 する 手 段 としての 市 場 調 査 と 広 告 の 関 係 はなにか 第 2 章 では 売 り 手 が 利 用 できる 手 段 によって 次 の 4 つの 場 合 を 比 較 分 析 する (1) 市 場 調 査 と 広 告 のいずれも 利 用 できない 場 合 (ベンチマーク) (2) 広 告 のみ 利 用 できる 場 合 (3) 市 場 調 査 のみ 利 用 できる 場 合 (4) 市 場 調 査 と 広 告 の 両 方 を 利 用 できる 場 合 売 り 手 の 私 的 情 報 は 製 品 の 品 質 であり 高 品 質 (H) または 低 品 質 (L) という 2 つの 可 能 性 がある 買 い 手 の 私 的 情 報 は 製 品 に 対 する 関 心 の 度 合 いであり 関 心 が 高 い (H) または 関 心 が 低 い (L) という 2 つの 可 能 性 がある 高 品 質 財 の 生 産 費 用 は 低 品 質 財 の 生 産 費 用 よ りも 高 いが 財 に 対 する 売 り 手 の 価 値 は 品 質 によらずゼロに 基 準 化 されている 財 に 対 す る 買 い 手 の 価 値 は 財 の 品 質 および 関 心 の 両 方 に 依 存 する 市 場 調 査 および 広 告 という 2 つのマーケティング 手 法 は 自 らの 利 潤 最 大 化 を 図 る 市 場 調 査 会 社 および 広 告 会 社 によっ てそれぞれ 提 供 される 売 り 手 は 市 場 調 査 を 実 施 すると 買 い 手 のタイプを 完 全 に 知 ること ができ 広 告 を 展 開 すると 買 い 手 に 売 り 手 のタイプを 完 全 に 伝 えられると 仮 定 する 4 つの 場 合 に 均 衡 はそれぞれただ 1 つ 定 まり 均 衡 の 比 較 分 析 によって 以 下 の 結 論 が 得 ら れる 第 一 に 市 場 調 査 のみが 利 用 できる 場 合 に 市 場 調 査 の 費 用 がゼロであったとして も H タイプの 売 り 手 は 市 場 調 査 を 利 用 しない 他 方 で L タイプの 売 り 手 は 市 場 調 査 を 実 施 して 買 い 手 のタイプに 応 じて 異 なる 価 格 を 提 示 する H タイプの 売 り 手 が 市 場 調 査 を 利 用 しない 理 由 は 次 のとおりである 買 い 手 が L タイプならば 売 り 手 は 低 価 格 を 提 示 したい と 考 える しかしながら 低 価 格 は 逆 選 択 問 題 を 引 き 起 こすために H タイプの 売 り 手 は L タイプの 買 い 手 と 取 引 できない 結 局 H タイプの 売 り 手 は 高 価 格 を 提 示 して H タイプの 買 い 手 と 取 引 することしかできないので 市 場 調 査 によって 買 い 手 のタイプを 知 っても 意 味 が 無 い 他 方 生 産 費 用 が 十 分 に 低 い L タイプの 売 り 手 にとっては 十 分 な 低 価 格 によ 2

って L タイプの 売 り 手 とも 取 引 が 実 現 可 能 であるために 市 場 調 査 は 有 効 なマーケティン グ 手 法 である 買 い 手 が H タイプである 確 率 が 十 分 に 低 い 場 合 には ベンチマークにおい て H タイプの 売 り 手 と L タイプの 買 い 手 との 取 引 は 成 立 しない そのため この 場 合 には 市 場 調 査 は 取 引 の 効 率 性 を 改 善 することもない この 結 果 は 生 産 費 用 や 品 質 が 低 い 売 り 手 ほど 市 場 調 査 を 有 効 に 活 用 できるという 特 徴 を 明 らかにし また 情 報 の 非 対 称 性 が 一 方 向 から 双 方 向 へと 拡 大 すると 市 場 調 査 を 利 用 した 価 格 差 別 が 必 ずしも 有 効 ではなくなるこ とを 意 味 している 第 二 に 市 場 調 査 と 広 告 を 同 時 に 実 施 することには 相 乗 効 果 が 存 在 する 第 一 の 結 論 にあ るとおり H タイプの 売 り 手 は 逆 選 択 問 題 があるために 市 場 調 査 を 有 効 に 利 用 できない しかし 市 場 調 査 と 同 時 に 広 告 を 実 施 することで 逆 選 択 問 題 を 解 消 しつつ 市 場 調 査 で 判 明 した 買 い 手 のタイプに 応 じて 価 格 差 別 を 実 行 できる そのため H タイプの 売 り 手 は ベンチマークと 比 較 して 十 分 に 大 きな 収 益 を 獲 得 できる 他 方 で L タイプの 売 り 手 は 広 告 を 展 開 しないために 相 乗 効 果 を 享 受 できない また 市 場 調 査 と 広 告 が 両 方 利 用 できる 場 合 には 双 方 向 の 非 対 称 情 報 が 完 全 に 解 消 されるため 取 引 は 確 率 1 で 達 成 される この 結 果 は ( 価 格 広 告 に 関 する)マーケティング ミックスの 重 要 性 を 経 済 学 的 に 示 してい ると 考 えられる 本 章 では 市 場 調 査 によって 完 全 に 価 格 差 別 が 実 行 できると 仮 定 している 経 済 学 の 多 く の 既 存 文 献 が 非 対 称 情 報 下 での 価 格 差 別 を 分 析 しており 買 い 手 のみが 私 的 情 報 を 有 して いる 場 合 には 売 り 手 は 価 格 差 別 によって 常 に 収 益 を 増 加 できる(Varian (1989)) 他 方 で 本 章 が 分 析 の 対 象 とする 双 方 向 の 非 対 称 情 報 が 存 在 する 場 合 に 価 格 差 別 が 有 効 かどうかは これまで 議 論 されてこなかった 広 告 を 分 析 した 研 究 は 多 数 存 在 する 製 品 の 品 質 を 伝 達 する 手 段 としての 広 告 は Nelson (1970) によって 初 めて 分 析 された Nelson (1970) は 売 り 手 が 広 告 を 通 じて 経 験 財 の 品 質 を 消 費 者 に 伝 達 できると 論 じ テレビ CM 型 の 広 告 には 製 品 の 品 質 に 関 するシグナ ルとしての 役 割 があると 結 論 付 けた 他 方 で Moraga-Gonzalez (2000) が 論 じた 試 供 品 配 布 型 の 製 品 の 品 質 を 直 接 買 い 手 に 伝 えられる 広 告 手 段 の 分 析 は 経 済 学 ではあまり 盛 ん ではないが 経 営 学 の 分 野 では 多 くの 研 究 が 存 在 する( Heiman et al. (2001), Bawa and Shoemaker (2004) ) 2. テレビ CM 型 の 広 告 と 試 供 品 配 布 型 の 広 告 ( 第 3 章 ) 企 業 の 私 的 情 報 である 製 品 の 品 質 が 消 費 者 の 知 覚 価 値 を 決 定 するひとつの 要 因 である 場 合 企 業 は 消 費 者 に 製 品 の 品 質 を 伝 達 するために 広 告 を 展 開 する 少 なくとも 2 種 類 の 広 告 が 考 えられる 一 つ 目 は 製 品 の 試 供 品 を 配 布 することである 消 費 者 は 受 け 取 った 試 供 品 を 実 際 に 試 してみることで その 製 品 の 品 質 を 確 実 に 認 識 できる 試 供 品 は 街 頭 で 配 布 されるだけではなく 米 国 の freesample.com や 日 本 のフリーサンプル 百 貨 店 のよう なウェブサイトを 通 じて 配 布 されることもある 二 つ 目 はテレビ CM を 放 映 することであ 3

る 消 費 者 は テレビ CM を 観 賞 して 製 品 の 品 質 を 推 測 する Moraga-Gonzalez (2000) は 試 供 品 型 の 広 告 手 法 を 情 報 的 な 広 告 (informative advertising) と 呼 び テレビ CM 型 の 広 告 手 法 を 非 情 報 的 な 広 告 (uninformative advertising) と 呼 んだ 現 実 には 多 くの 企 業 が この 2 つの 手 法 を 組 み 合 わせて 広 告 を 展 開 している この 事 実 は 広 告 を 組 み 合 わせるこ とに 何 かしらの 相 乗 効 果 が 存 在 することを 示 唆 しているかもしれない 第 3 章 の 目 的 は 次 の 2 つの 疑 問 に 答 えることである 情 報 的 な 広 告 と 非 情 報 的 な 広 告 の 役 割 に 関 して 相 違 点 および 類 似 点 はなにか 品 質 を 伝 達 する 手 段 としての 2 つの 広 告 手 法 の 関 係 はなにか 第 3 章 では 売 り 手 が 利 用 できる 手 段 によって 次 の 4 つの 場 合 を 比 較 分 析 する (1) 情 報 的 な 広 告 と 非 情 報 的 な 広 告 のいずれも 利 用 できない 場 合 (ベンチマーク) (2) 情 報 的 な 広 告 のみ 利 用 できる 場 合 (3) 非 情 報 的 な 広 告 のみ 利 用 できる 場 合 (4) 情 報 的 な 広 告 と 非 情 報 的 な 広 告 の 両 方 を 利 用 できる 場 合 売 り 手 の 私 的 情 報 は 製 品 の 品 質 であり 高 品 質 (H) 中 品 質 (M) または 低 品 質 (L) と いう 3 つの 可 能 性 がある 買 い 手 の 私 的 情 報 は 製 品 に 対 する 関 心 の 度 合 いであり 関 心 が 高 い (H) または 関 心 が 低 い (L) という 2 つの 可 能 性 がある 財 の 品 質 が 高 いほど 生 産 費 用 は 高 いが 財 に 対 する 売 り 手 の 価 値 は 品 質 によらずゼロに 基 準 化 されている 他 方 財 に 対 する 買 い 手 の 価 値 は 財 の 品 質 および 関 心 の 両 方 に 依 存 する 売 り 手 は 情 報 的 な 広 告 を 通 じて 買 い 手 に 製 品 の 真 の 品 質 をある 認 知 確 率 で 伝 えられる 高 い 認 知 確 率 を 実 現 するに は 高 い 費 用 が 必 要 である 売 り 手 は 費 用 を 勘 案 して 認 知 確 率 を 決 定 する ただし 品 質 が 伝 わらなかった 買 い 手 にとって 売 り 手 の 選 択 は 観 察 可 能 ではないと 仮 定 する 他 方 で 売 り 手 が 展 開 する 非 情 報 的 な 広 告 は 確 率 1 で 買 い 手 にとって 観 察 可 能 であり 買 い 手 は 広 告 の 水 準 から 品 質 を 推 測 する また 第 3 章 では 買 い 手 が H タイプである 確 率 が 十 分 に 大 きな 場 合 のみを 考 える 4 つの 場 合 を 比 較 することによって 以 下 の 結 論 が 得 られる 第 一 に 情 報 的 な 広 告 と 非 情 報 的 な 広 告 は 取 引 確 率 と 価 格 に 対 して 異 なる 影 響 を 与 える 情 報 的 な 広 告 は 取 引 確 率 を 上 昇 させる 半 面 価 格 を 下 落 させる 非 情 報 的 な 広 告 は 価 格 を 上 昇 させるものの 取 引 確 率 には 影 響 を 与 えない 買 い 手 のタイプが H である 確 率 が 十 分 に 高 いという 仮 定 は 売 り 手 に 高 価 格 を 提 示 して H タイプの 買 い 手 とのみ 取 引 をする 誘 因 を 与 える しかしその 高 価 格 が L タイプの 書 いての 高 品 質 財 に 対 する 知 覚 価 値 よりも 低 い 場 合 には H タイプの 売 り 手 は 情 報 的 な 広 告 を 展 開 して 取 引 確 率 を 増 加 させられる 情 報 的 な 広 告 を 受 け 取 らなか った 買 い 手 は ベイズルールに 従 って 期 待 品 質 を 低 く 評 価 するので 均 衡 価 格 は 下 落 する 他 方 非 情 報 的 な 広 告 は 高 品 質 のシグナルとして 機 能 するので 均 衡 価 格 は 上 昇 する ただ し 相 変 わらず 均 衡 価 格 は H タイプの 買 い 手 のみが 受 容 できるような 高 い 水 準 なので 取 引 確 率 は 変 化 しない この 結 果 は 売 り 手 が 目 的 に 応 じて 広 告 手 段 を 使 い 分 けられること を 示 唆 している 4

第 二 に 2 つの 広 告 手 法 を 併 用 すると 情 報 的 な 広 告 を 単 独 で 展 開 する 場 合 と 比 較 して 取 引 確 率 が 上 昇 する このことは 売 り 手 が 情 報 的 な 広 告 を 展 開 するときに 決 定 する 最 適 な 認 知 確 率 が 均 衡 価 格 と 正 の 相 関 をもつことに 起 因 する 非 情 報 的 な 広 告 が 均 衡 価 格 を 押 し 上 げ 間 接 的 に 情 報 的 な 広 告 の 認 知 確 率 を 上 昇 させる その 結 果 H タイプの 売 り 手 と L タイプの 買 い 手 がとの 取 引 確 率 は 売 り 手 が 情 報 的 な 広 告 のみを 展 開 する 場 合 よりも 上 昇 する この 結 果 は 既 存 研 究 においてシグナルとしての 役 割 を 分 析 されていた 情 報 的 な 広 告 の 新 たな 機 能 を 明 らかにし 2 つの 手 法 の 併 用 には 取 引 の 効 率 性 に 関 して 相 乗 効 果 が 存 在 することを 示 している 2 つの 広 告 手 法 には 補 完 的 な 関 係 があるといえる 前 述 のとおり 製 品 の 品 質 を 伝 達 する 手 段 としての 広 告 は Nelson (1970) によって 初 め て 分 析 された Nelson (1970) が 売 り 手 は 広 告 を 通 じて 経 験 財 の 品 質 を 消 費 者 に 伝 達 できると 論 じて 以 来 多 くの 研 究 が Nelson (1970) の 議 論 を 定 式 化 してきた(Kihlstrom and Riordan (1983), Milgrom and Roberts (1986)) 実 証 研 究 も 盛 んで テレビ CM のよ うな 広 告 が 高 品 質 のシグナルとして 機 能 することを 示 す 研 究 が 存 在 する(Tellis and Fornell (1988), Nichols (1998)) 一 方 否 定 的 な 結 論 を 示 す 研 究 も 存 在 する(Caves and Greene (1996)) 本 章 は Moraga-Gonzalez (2000) を 拡 張 したモデルを 用 いて 分 析 しているが Moraga-Gonzalez (2000) が 情 報 的 な 広 告 によって 均 衡 価 格 が 上 昇 すると 結 論 したのとは 反 対 の 結 論 を 得 ている しかしながら 実 際 の 企 業 行 動 では 試 供 品 配 布 が 実 施 される 際 には 低 価 格 プロモーションが 必 要 とされることが 指 摘 されている(Scott (1976))ことを 勘 案 すると 本 章 の 結 論 は 現 実 に 即 してより 妥 当 であるように 考 えられる 3. インターネットオークションにおける 2 つの 終 了 設 定 ( 第 4 章 ) Yahoo! オークションでは 出 品 者 はオークションの 終 了 規 則 を 自 動 延 長 なし または 自 動 延 長 あり から 無 料 で 選 択 できる 自 動 延 長 なし のオークションでは 出 品 者 が 設 定 したオークション 終 了 時 刻 にオークションは 自 動 的 に 終 了 する そのため オークシ ョン 終 了 間 際 に 入 札 があった 場 合 他 の 入 札 者 はそれに 対 抗 して 再 入 札 する 機 会 がないま まにオークションが 終 了 してしまう それに 対 し 自 動 延 長 あり のオークションでは あらかじめ 出 品 者 に 設 定 されたオークション 終 了 時 刻 の 5 分 前 以 降 に 入 札 があった 場 合 に 終 了 時 刻 が 自 動 的 に 5 分 間 延 長 される その 結 果 本 来 の 終 了 時 刻 間 際 に 誰 かが 入 札 して も 他 の 入 札 者 は 再 入 札 の 機 会 を 得 られる このように 他 の 入 札 者 の 入 札 を 観 察 した 後 に 常 に 自 分 の 再 入 札 が 可 能 である 点 が 自 動 延 長 あり オークションの 特 徴 である 第 4 章 の 目 的 は 次 の 2 つの 疑 問 に 答 えることである 自 動 延 長 あり オークションにおける 売 り 手 の 最 適 戦 略 はなにか 自 動 延 長 あり と 自 動 延 長 なし において 売 り 手 が 設 定 する 留 保 価 格 (reserve price) に 違 いはあるか 第 4 章 では 自 動 延 長 あり のインターネットオークションを McAfee and Vincent 5

(1997) の 逐 次 オークションモデルを 拡 張 して 各 期 が 2 つのステージを 持 ちうる 無 限 会 繰 り 返 しオークションとして 定 式 化 した 売 り 手 は 1 単 位 の 財 を 出 品 し n 人 の 買 い 手 が 入 札 する 各 期 において 売 り 手 は 第 1 ステージのはじめに 留 保 価 格 を 提 示 する 買 い 手 は 入 札 するかどうか また 入 札 額 をいくらにするかを 同 時 に 決 定 する もし 第 1 ステージで 少 なくとも 1 人 の 買 い 手 が 入 札 した 場 合 オークションは 第 2 ステージに 移 行 し 買 い 手 は 再 び 入 札 するかどうか また 入 札 額 をいくらにするかを 同 時 に 決 定 する 最 も 高 い 金 額 を 入 札 した 買 い 手 が 2 番 目 に 高 い 金 額 を 支 払 って 財 を 購 入 する 他 方 で 第 1 ステージに 誰 も 入 札 しなかった 場 合 には オークションは 次 期 に 移 行 し 再 び 第 1 ステージが 始 まる 買 い 手 の 財 に 対 する 価 値 は 独 立 な 私 的 価 値 であると 仮 定 する また 売 り 手 と 買 い 手 の 利 得 は 等 しい 割 引 率 によって 利 得 が 割 り 引 かれると 仮 定 した 上 述 のモデルを 用 いて 得 られた 自 動 延 長 あり オークションの 均 衡 と 自 動 延 長 なし オークションとみなせる McAfee and Vincent (1997) の 均 衡 を 比 較 して 以 下 の 結 論 が 得 られた 第 一 に 自 動 延 長 あり オークションで 売 り 手 が 設 定 する 最 適 な 留 保 価 格 は 自 動 延 長 なし のオークションにおける 最 適 な 留 保 価 格 よりも 低 い ただし どちらのオー クションでも 期 が 進 むにつれて 留 保 価 格 は 単 調 減 少 する 理 由 は 以 下 の 通 りである 自 動 延 長 あり オークションでは 買 い 手 は 他 の 入 札 者 の 入 札 を 見 てから 自 分 の 入 札 を 決 める ことができるので 今 期 の 入 札 と 様 子 見 の 間 にトレードオフが 存 在 しない そのため 買 い 手 は 将 来 的 に 十 分 に 低 くなるだろう 留 保 価 格 を 待 つ 誘 因 が 存 在 する しかし 売 り 手 は 買 い 手 の 誘 因 を 知 っているため 早 めに 留 保 価 格 を 下 げて 利 得 が 割 り 引 かれるのを 回 避 し ようとする 第 二 に 自 動 延 長 なし オークションと 自 動 延 長 あり オークションでは すべての 期 について 収 入 同 値 定 理 が 成 立 する このことは 買 い 手 の 人 数 を 等 しいとすれば 売 り 手 にとってどちらの 終 了 規 則 を 選 択 するのかはまったく 無 差 別 であることを 意 味 する さらに 第 4 章 では Yahoo! Japan オークションの 開 始 価 格 ( 留 保 価 格 )データ(Nintendo DS 中 古 品 )を 用 いて 上 記 の 留 保 価 格 に 関 する 結 果 を 検 証 して 次 の 結 果 を 得 た 自 動 延 長 あり オークションにおける 平 均 開 始 価 格 は 自 動 延 長 なし オークションにおける 平 均 開 始 価 格 よりも 有 意 に 低 いという 結 論 を 得 た また 回 帰 分 析 の 結 果 からは オークシ ョンの 終 了 規 則 は 開 始 価 格 に 有 意 に 影 響 を 与 えるが 売 り 手 の 評 判 ( 取 引 評 価 数 )は 開 始 価 格 に 影 響 を 与 えないという 結 果 を 得 た オークションデータを 用 いた 分 析 の 結 果 は 上 記 の 第 一 の 結 論 と 整 合 的 である Roth and Ockenfels (2002) および Ockenfels and Roth (2006) もオークションの 終 了 規 則 を 分 析 している 彼 らは 1 回 限 りの 英 国 式 オークションモデルを 用 いて オークショ ンの 終 了 規 則 が 買 い 手 の 入 札 戦 略 に 違 いをもたらすことを 示 した 彼 らは 売 り 手 の 最 適 戦 略 を 考 察 しなかったが インターネットオークションでは 開 始 価 格 をいくらに 設 定 するの かは 非 常 に 重 要 である また 彼 らは 1 回 限 りのオークションモデルを 用 いてインターネ ットオークションを 分 析 したが 売 り 手 はいつでも 好 きなときに 財 を 出 品 できる また 落 6

札 されずにオークションが 終 了 した 場 合 に 非 常 に 安 い 費 用 で 再 出 品 できる 点 を 考 慮 する と 本 稿 で 扱 ったように インターネットオークションは 繰 り 返 し 構 造 を 持 つと 考 えるの が 適 しているだろう 7

引 用 文 献 1. Bawa, K. and Shoemaker, R. The Effects of Free Sample Promotions on Incremental Brand Sales, Marketing Science, Vol.23, No.3, (2004), pp.345-363. 2. Caves, R.E. and Greene, D.P. Brands' quality levels, prices and advertising outlays: empirical evidence on signals and informations costs, International Journal of Industrial Organization, Vol.14 (1996), pp.29-52. 3. Heiman, A., McWilliams, B., Shen, Z. and Zilberman, D. Learning and Forgetting: Modeling Optimal Product Sampling over Time, Management Science, Vol.47, No.4, (2001), pp.532-546. 4. Kihlstrom, R.E. and Riordan, M.H. Advertising as a signal, Journal of Political Economy, Vol.92 (1984), pp.427-450. 5. McAfee, R.P., and Vincent, D. Sequentially Optimal Auctions, Games and Economic Behavior, Vol.18 (1997), pp.246-276 6. Milgrom, P. and Roberts, J. Price and Advertising Signals of Product Quality, Journal of Political Economy, Vol.94 (1986), pp.796-821. 7. Moraga-Gonzalez, J.L. Quality Uncertainty and Informative Advertising, International Journal of Industrial Organization, Vol.18 (2000), pp.615-640. 8. Nelson, P. Information and Consumer Behavior, Journal of Political Economics, Vol.78 (1970), pp.311-329. 9. Nichols, M.W. Advertising and Quality in the U. S. Market for Automobiles, Southern Economic Journal, Vol.64 (4), (1998), pp.922-939. 10. Ockenfels, A. and Roth, A. E. Late and multiple bidding in second price Internet auctions: Theory and evidence concerning different rules for ending an auction, Games and Economic behavior, Vol.55, (2006), 297-320 11. Roth, A.E., and Ockenfels, A. Last-minute Bidding and The Rules for Ending Second-price Auctions: Evidence from ebay and Amazon Auctions on the Internet, American Economic Review, Vol.92, (2002), pp.1093-1103 12. Scott, C.A. The effects of trial incentives on repeat purchase behavior, Journal of Marketing Research, Vol.13 (3), (1976), pp.263-269 13. Tellis, G.J. and Fornell, C. The Relationship between Advertising and Product Quality over the Product Life Cycle: A Contingency Theory, Journal of Marketing Research, Vol.25, (1998), pp.64-71. 14. Varian, H. Price Discrimination, R. Schmalensee, R. Willig, eds. Handbook of Industrial Organization, 1998, North-Holland, Amsterdam, Netherlands. 15. 野 村 総 研 NRI NEWS letter vol.11, (2003) 8