BTMU(China) 経 済 週 報 中 国 都 市 化 の 関 連 措 置 が 次 々と 発 表 ~ 人 の 市 民 化 に 注 目 する 新 たな 段 階 に 中 国 投 資 銀 行 部 中 国 調 査 室 メイントピックス... 2 中 国 都 市 化 の 関 連 措 置 が 次 々と 発 表 ~ 人 の 市 民 化 に 注 目 する 新 たな 段 階 に...2 2015 年 末 までに 中 国 常 住 人 口 の 都 市 化 率 はおよそ 56.10%まで 上 昇 しており 農 村 社 会 から 都 市 社 会 の 段 階 へと 転 換 しつつあるといえる 経 済 の 減 速 や 社 会 構 造 の 変 化 に 対 応 するため 今 まで 実 施 してきた 都 市 化 の 方 針 と 管 理 体 制 の 見 直 しが 必 要 となっている 2016 年 2 月 21 日 に 発 表 された 都 市 の 計 画 的 建 設 に 対 する 管 理 工 作 の 更 なる 強 化 に 関 する 若 干 意 見 ( 以 下 意 見 という)は これからの 都 市 建 設 のロードマップとして 注 目 を 集 めている 現 在 中 国 の 都 市 化 には 都 市 建 設 計 画 の 作 成 と 実 施 住 宅 政 策 の 改 革 都 市 人 口 規 模 のコントロール 環 境 汚 染 の 防 止 インフラ 建 設 の 強 化 や 公 共 サービスの 改 革 など 様 々な 課 題 を 抱 えているが それを 解 決 する 過 程 においては 新 たな 産 業 の 育 成 や 民 間 投 資 の 喚 起 による 様 々なビジネスチャンスも 生 み 出 さ れてくると 思 われる 稲 垣 清 の 経 済 産 業 情 報... 8 2016 年 全 人 代 と 軍 改 革...8 本 年 の 全 人 代 においては 世 界 経 済 に 大 きな 影 響 を 与 えるに 至 っている 中 国 経 済 の 成 長 の 見 通 しと 本 年 から 始 まる 第 13 次 5 カ 年 計 画 の 審 議 と 承 認 が 大 きな 議 題 の 一 つである 成 長 については 李 克 強 政 府 活 動 報 告 において 6.5% 7.0%に 幅 を 持 たしているが これまでの 実 績 からは 大 きく 後 退 を 示 している しかし 中 国 経 済 がハードランディング( 失 速 )することはあり 得 ないと 強 気 である 中 国 の 2015 年 の 国 防 費 を 世 界 と 比 較 してみると 米 国 がトップであり 中 国 は 第 2 位 となっているが その 差 は 4 倍 以 上 である( 中 国 系 ネットニュース 環 球 網 香 港 大 公 報 2016 年 3 月 6 日 ) 同 時 に 第 8 位 である 日 本 との 差 も 3.6 倍 に 及 んでいる 軍 隊 の 規 模 が 異 なるため 軍 事 予 算 だけで その 脅 威 論 を 振 りかざすことはできないが 中 国 の 国 防 費 の 行 方 は 世 界 の 関 心 事 であることは 間 違 いない BTMUの 中 国 調 査 レポート(2016 年 2~3 月 )... 11 1
メイントピックス 中 国 都 市 化 の 関 連 措 置 が 次 々と 発 表 ~ 人 の 市 民 化 に 注 目 する 新 たな 段 階 に 2015 年 12 月 22 日 に 中 央 都 市 工 作 会 議 が 37 年 ぶりに 開 催 され 国 家 レベルでの 都 市 建 設 開 発 計 画 が 検 討 された 前 回 の 中 央 都 市 工 作 会 議 が 開 かれたのは 1978 年 であり その 後 に 発 表 された 都 市 建 設 工 作 の 強 化 に 関 する 意 見 はその 後 の 30 年 ほどの 都 市 建 設 に 関 する 指 針 となっていた 2015 年 末 時 点 で 中 国 常 住 人 口 の 都 市 化 率 はおよそ 56.10%まで 上 昇 しており 農 村 社 会 から 都 市 社 会 の 段 階 へと 転 換 しつつあ るといえる 経 済 の 減 速 や 社 会 構 造 の 変 化 に 対 応 するため 今 まで 実 施 してきた 都 市 化 の 方 針 と 管 理 体 制 の 見 直 しが 必 要 となっている 今 回 の 会 議 を 受 けて 2016 年 2 月 21 日 に 発 表 された 都 市 の 計 画 的 建 設 に 対 す る 管 理 工 作 の 更 なる 強 化 に 関 する 若 干 意 見 ( 以 下 意 見 という)は これからの 都 市 建 設 のロードマップと して 注 目 を 集 めている 現 在 中 国 の 都 市 化 は 都 市 建 設 計 画 の 作 成 と 実 施 住 宅 政 策 の 改 革 都 市 人 口 規 模 のコントロール 環 境 汚 染 の 防 止 インフラ 建 設 の 強 化 や 公 共 サービスの 改 革 など 様 々な 課 題 を 抱 えているが それを 解 決 する 過 程 においては 新 たな 産 業 の 育 成 や 民 間 投 資 の 喚 起 による 様 々なビジネスチャンスも 生 み 出 されてくると 思 われる 本 稿 では 中 国 都 市 化 の 進 捗 状 況 直 面 している 課 題 を 紹 介 した 上 で 意 見 を 初 めとする 都 市 化 の 関 連 政 策 を 踏 まえ 中 国 都 市 化 のこれからの 方 向 性 を 探 ってみる Ⅰ. 中 国 都 市 化 の 進 捗 状 況 中 国 における 都 市 化 とは 都 市 化 は 産 業 化 の 進 展 高 速 交 通 網 の 発 達 情 報 化 などに 伴 う 人 口 の 都 市 への 集 中 都 市 的 ライフスタイ ルの 形 成 とその 農 村 部 への 浸 透 過 程 と 一 般 的 に 解 釈 される 中 国 では 都 市 化 1 のことを 城 鎮 化 と 呼 び 行 政 区 域 の 観 点 から 言 うと 城 鎮 化 の 対 象 となるのは 市 という 行 政 区 域 に 限 られず 農 村 地 域 の 中 で 非 農 業 人 口 が 比 較 的 集 中 する 建 制 鎮 と 呼 ばれる 小 さい 行 政 区 域 も 含 まれている 両 者 の 内 容 はさほど 変 わ らないが 中 国 政 府 はあえて 城 鎮 化 を 掲 げるのは 北 京 や 上 海 のような 大 都 市 への 人 口 集 中 だけでなく 建 制 鎮 のような 農 村 部 への 人 口 集 中 および 都 市 的 ライフスタイル の 浸 透 に 対 する 促 進 を 強 調 しているた めだと 思 われる 一 般 的 にいうと 一 国 の 都 市 化 水 準 を 図 るには 都 市 人 口 が 総 人 口 に 占 める 割 合 ( 都 市 化 率 )の 上 昇 労 働 力 の 第 1 次 産 業 から 第 2 次 産 業 第 3 次 産 業 への 移 転 都 市 用 地 規 模 の 拡 大 という 3 つの 要 素 が 挙 げられ る そのうち 都 市 化 率 は 最 も 重 要 な 要 素 だと 考 えられる 中 国 の 都 市 化 率 中 国 の 都 市 化 が 加 速 し 始 めたのは 1978 年 の 改 革 開 放 が 打 ち 出 されて 以 降 と 見 られる 市 場 経 済 の 導 入 ( 改 革 )や 外 国 から 資 本 と 技 術 の 導 入 ( 開 放 )によって 労 働 集 約 型 産 業 が 沿 海 都 市 を 中 心 に 集 積 するように なり 大 量 の 労 働 力 需 要 が 生 み 出 され 労 働 力 の 農 村 から 都 市 への 移 転 が 始 まった 政 府 は 1958 年 から 農 業 戸 籍 と 非 農 業 戸 籍 に 分 けて 管 理 する 戸 籍 制 度 を 実 施 するようになり 労 働 力 の 自 由 な 移 動 を 認 め ていなかったが この 規 制 が 継 続 してきたにも 関 わらず 都 市 へ 出 稼 ぎするいわゆる 農 民 工 が 増 え 続 けて いる その 中 には 事 実 上 都 市 に 定 住 するようになった 元 農 民 も 少 なくない 1978 年 の 全 国 都 市 人 口 2が 総 人 口 に 占 める 割 合 はわずか 17.92%であったが 2015 年 末 都 市 の 常 住 人 口 3は 7 億 7,116 万 人 で 総 人 口 1 特 別 な 説 明 がない 場 合 本 稿 では 城 鎮 化 のことを 都 市 化 という 2 1981 年 およびそれ 以 前 は 戸 籍 人 口 で 都 市 化 率 を 計 算 していたが その 後 戸 籍 の 所 在 地 と 定 住 地 域 が 分 離 する 人 口 が 増 えたため 都 市 化 率 の 統 計 対 象 を 都 市 常 住 人 口 に 変 更 した 3 都 市 常 住 人 口 は 都 市 に6ヶ 月 以 上 住 み 続 けている 人 口 を 指 す 2
に 占 める 割 合 は 56.10%まで 上 昇 した( 図 表 1) しかし 2014 年 末 時 点 で 常 住 人 口 ベースでの 都 市 化 率 が 54.77%であるのに 対 し 戸 籍 人 口 ベースでの 都 市 化 率 は 36.63%に 過 ぎず 両 者 の 間 には 17.7%ポイントの 差 がある これを 人 口 数 に 換 算 すれば 約 2 億 6,000 万 人 に 達 する このような 都 市 戸 籍 を 持 っていない 出 稼 ぎ 労 働 者 は 都 市 戸 籍 の 住 民 と 同 様 の 社 会 福 祉 サービ スを 享 受 できないことが 社 会 問 題 として 見 られて おり 中 国 の 都 市 化 に 対 する 大 きな 課 題 でもあ る( 次 節 で 詳 述 する) 図 表 1 中 国 の 都 市 人 口 数 と 都 市 人 口 比 率 ( 都 市 化 率 )の 推 移 ( 万 人 ) (%) 80,000 60 都 市 人 口 数 70,000 都 市 人 口 比 率 (%) 50 都 市 戸 籍 の 対 戸 籍 人 口 比 率 ( 右 目 盛 リ) 60,000 40 50,000 30 40,000 20 30,000 20,000 10 10,000 0 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 出 所 : 国 家 統 計 局 公 安 部 より 当 行 中 国 調 査 室 作 成 注 :1981 年 およびそれ 以 前 の 都 市 人 口 比 率 は 戸 籍 人 口 を 統 計 対 象 としているが それ 以 降 は 常 住 人 口 を 統 計 対 象 とする 1981 年 およびその 前 の 都 市 人 口 比 率 は 国 家 統 計 局 の 統 計 結 果 であるため 公 安 部 の 都 市 戸 籍 人 口 比 率 との 間 には 多 少 相 違 がある 労 働 力 の 産 業 間 における 分 布 人 口 が 都 市 に 集 まってくるのは 大 都 市 における 産 業 の 高 度 化 に 伴 い 大 量 の 労 働 力 が 必 要 とされるからだ といわれる 農 業 に 従 事 する 労 働 力 が 工 業 サービス 業 に 移 転 しつつある 結 果 労 働 力 人 口 の 産 業 間 にお ける 分 布 も 大 きく 変 化 してきた 第 1 次 産 業 の 労 働 者 比 率 は 1978 年 の 70.5%から 2014 年 の 29.5%まで 大 幅 に 低 下 した 1994 年 に 第 3 次 産 業 の 労 働 者 比 率 が 初 めて 第 2 次 産 業 を 超 え その 後 上 昇 する 一 方 となっており 2011 年 についに 第 1 次 産 業 を 超 えて 最 も 高 くなった なお 第 2 次 産 業 に 従 事 する 労 働 者 の 比 率 の 上 昇 は 近 年 になって 緩 やかになっている( 図 表 2) 都 市 用 地 規 模 の 拡 大 人 口 の 増 加 と 産 業 の 集 中 に 対 応 するため 各 都 市 は 住 宅 や 商 業 施 設 などの 建 設 を 加 速 している そのような 都 市 用 地 規 模 の 拡 大 も 都 市 化 の 現 れと 見 られる 2014 年 末 までに 中 国 の 都 市 建 設 完 成 区 面 積 は 1995 年 末 と 比 べ 19 年 間 でおよそ 2.5 倍 拡 大 した 2001 年 に 都 市 建 設 完 成 区 面 積 の 伸 び 率 が 都 市 常 住 人 口 の 伸 び 率 を 超 えて 以 降 は 年 平 均 8.7%の 伸 び 率 で 推 移 してきた( 図 表 3) 都 市 部 の 建 設 規 模 が 人 口 規 模 の 拡 大 を 超 えてハイペースで 進 められたことから 土 地 の 都 市 化 が 人 の 都 市 化 に 先 行 してしまうと 問 題 視 され るようになった( 次 節 で 詳 述 する) 図 表 2 産 業 別 労 働 者 数 比 率 図 表 3 都 市 建 設 完 成 区 面 積 と 人 口 都 市 化 率 80.0(%) 70.0 70.5% 60.0 50.0 40.0 30.0 17.3% 20.0 第 1 次 産 業 第 2 次 産 業 第 3 次 産 業 40.6% 29.9% 29.5% 10.00% 9.00% 8.00% 7.00% 6.00% 5.00% 4.00% 3.00% 2.00% 1.00% 0.00% 都 市 部 建 設 完 成 区 面 積 の 伸 び 率 都 市 常 住 人 口 の 伸 び 率 10.0 0.0 12.2% 1996 1997 1998 1999 2000 2001 出 所 : 住 宅 都 市 農 村 建 設 部 国 家 統 計 局 より 当 行 中 国 調 査 室 作 成 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2014 2012 2010 2008 2006 2004 2002 2000 1998 1996 1994 1992 1990 1988 1986 1984 1982 1980 1978 出 所 : 中 国 統 計 年 鑑 より 当 行 中 国 調 査 室 作 成 Ⅱ. 中 国 の 都 市 化 が 直 面 している 課 題 経 済 の 高 度 成 長 に 伴 い 人 口 が 産 業 集 積 地 である 大 都 市 に 急 速 に 集 中 することで 引 き 起 こされる 水 不 足 大 気 汚 染 交 通 渋 滞 といった 都 市 病 は 中 国 だけでなく イギリスや 日 本 などの 先 進 国 も 一 度 は 悩 まされた 3
経 験 がある また 中 国 は 独 自 の 戸 籍 制 度 土 地 制 度 など 制 度 上 の 問 題 による 課 題 も 抱 えている 総 じてい えば 中 国 では 都 市 人 口 と 都 市 建 設 完 成 区 面 積 を 代 表 とする 都 市 規 模 が 急 速 に 拡 大 する 一 方 それに 相 応 する 公 共 サービスやインフラ 施 設 など 都 市 機 能 の 発 展 が 遅 れていること つまり 都 市 規 模 と 都 市 機 能 の 間 の ギャップが 中 国 の 都 市 化 における 最 大 の 課 題 だと 思 われる 都 市 規 模 の 急 拡 大 : 土 地 開 発 に 対 する 過 度 な 依 存 前 述 のように 都 市 化 を 図 るための 一 番 の 要 素 は 人 口 であるが 中 国 で 行 われてきた 都 市 化 は 人 の 市 民 化 より 土 地 開 発 を 重 視 していた 地 方 政 府 は 長 期 的 なビジョンに 基 づくことなく 短 期 間 で 多 くの 投 資 によ り 経 済 成 長 を 押 し 上 げたため 地 域 の 外 観 の 都 市 化 を 追 求 し 無 計 画 に 都 市 開 発 を 進 めてきた 都 市 化 を 不 動 産 開 発 として 捉 え 地 域 住 民 の 需 要 に 対 応 していないマンションや 開 発 区 を 次 々と 建 設 していく 地 方 政 府 も 少 なくない 地 方 政 府 が 土 地 開 発 に 力 を 入 れてきたもう 1 つのインセンティブは 地 方 政 府 の 収 入 が 土 地 の 転 売 や 譲 渡 に 依 存 していることである 地 方 政 府 は 農 村 用 地 4 を 収 用 し 開 発 業 者 に 転 売 或 いは 都 市 国 有 地 の 使 用 権 を 民 間 企 業 に 譲 渡 することによって 得 た 土 地 譲 渡 金 収 入 を 地 方 政 府 の 収 入 に 当 てている 地 方 政 府 にとって は 不 動 産 投 資 によって 経 済 成 長 を 押 し 上 げたというように 見 栄 えがいいうえに 土 地 譲 渡 金 収 入 が 歳 入 の 増 加 にもつながる 得 策 だといえる 需 要 に 対 応 しない 不 動 産 開 発 が 急 成 長 した 結 果 北 京 や 上 海 などの 大 都 市 では 不 動 産 価 格 が 高 騰 する 一 方 不 動 産 在 庫 の 高 まりに 悩 まされる 中 小 都 市 も 多 くなっている 都 市 機 能 不 全 : 公 共 サービスの 普 及 の 壁 とインフラ 施 設 の 整 備 の 遅 れ 都 市 化 が 進 むことに 伴 い 都 市 の 常 住 人 口 の 割 合 が 上 昇 する 一 方 戸 籍 制 度 による 都 市 と 農 村 の 二 元 的 社 会 構 造 は 依 然 として 存 続 しており この 二 分 化 した 戸 籍 制 度 は 都 市 の 公 共 サービスの 普 及 への 障 壁 となって いる 都 市 部 の 出 稼 ぎ 労 働 者 がその 都 市 の 戸 籍 を 保 有 しなければ 都 市 戸 籍 保 有 者 と 同 じように 納 税 してい たとしても 都 市 戸 籍 保 有 者 と 同 じような 子 女 の 就 学 住 宅 年 金 や 医 療 などの 公 共 サービスを 享 受 できない ばかりか 場 合 によっては 様 々な 制 限 がかけられる このような 戸 籍 による 公 共 サービスの 区 別 は 都 市 化 水 準 が 低 く 資 源 が 限 られた 時 代 に 大 都 市 への 人 口 の 過 度 な 集 中 を 防 止 するための 措 置 であったが 都 市 化 と 工 業 化 の 発 展 に 伴 い 現 行 の 戸 籍 制 度 では 大 都 市 への 人 口 集 中 を 阻 止 できなくなる 一 方 新 たな 不 平 等 を 生 み 出 す 要 因 となっている 本 格 的 な 都 市 化 を 達 成 するには 人 口 流 動 への 制 限 より 地 域 における 産 業 構 造 の 合 理 化 都 市 の 社 会 保 障 体 制 の 完 備 などに 力 を 入 れることが 望 まれる インフラ 施 設 の 建 設 をみると 無 秩 序 な 開 発 や 人 口 の 過 度 な 集 中 により 交 通 渋 滞 をはじめ 大 気 土 壌 など の 環 境 汚 染 の 深 刻 化 汚 水 とゴミの 処 理 能 力 の 不 足 など 様 々な 問 題 が 顕 在 化 している 例 えば 北 京 大 学 の 2014 年 の 研 究 によると 北 京 市 の 交 通 渋 滞 による 損 失 は 年 間 700 億 元 に 上 った インフラ 施 設 を 整 えるため には 多 額 の 資 金 が 必 要 であるため 政 府 が 社 会 資 本 を 導 入 する PPP( 官 民 協 力 )モデルの 普 及 や 地 方 債 の 発 行 など 新 たな 資 金 調 達 ツールに 積 極 的 に 取 り 組 んでいる さらに 従 来 のような 無 秩 序 無 計 画 な 誤 りを 繰 り 返 さないように 適 切 な 都 市 建 設 計 画 も 不 可 欠 であろう Ⅲ. 都 市 化 関 連 政 策 の 分 析 と 展 望 第 12 次 5 ヵ 年 計 画 期 間 (2011 年 ~2015 年 )に 入 ってから 全 国 における 都 市 化 の 地 域 的 構 図 の 設 計 や 新 型 都 市 化 建 設 の 全 体 目 標 の 決 定 など 様 々な 角 度 から 中 国 国 土 全 体 の 都 市 化 の 方 針 と 管 理 体 制 の 見 直 しが 着 実 に 進 展 してきた (2011 年 3 月 ) 全 国 における 都 市 化 の 地 域 的 構 図 の 策 定 2011 年 に 決 定 された 第 12 次 5 ヵ 年 計 画 では 全 国 における 都 市 の 両 横 三 縦 という 構 図 を 国 土 計 画 として 取 り 上 げた 両 横 は 東 西 方 向 の 連 雲 港 から 新 疆 のアラシャンコウまでの 運 輸 通 路 と 沿 長 江 運 輸 通 路 を 意 味 し 三 縦 は 南 北 方 向 の 沿 海 運 輸 通 路 ハルピン 北 京 広 州 包 頭 昆 明 という 3 つの 重 要 運 輸 通 路 を 4 中 国 の 土 地 制 度 については 経 済 週 報 第 235 号 (https://reports.btmuc.com/file/pdf_file/info001/info001_20150105_001.pdf)をご 参 照 く ださい 4
指 している この 両 横 三 縦 によって 東 部 沿 海 地 域 の 伝 統 的 産 業 が 運 輸 通 路 を 通 じて 西 部 へと 移 転 してい き 運 輸 通 路 沿 線 の 中 小 都 市 にも 恩 恵 を 与 えることが 狙 いであると 思 われる (2013 年 12 月 ) 都 市 化 の 進 展 に 本 腰 を 入 れる 会 議 の 開 催 2013 年 末 に 開 催 された 全 国 都 市 化 工 作 会 議 は 再 び 両 横 三 縦 の 都 市 化 地 域 計 画 を 強 調 した 上 で すで に 形 成 された 京 津 冀 ( 北 京 天 津 河 北 ) 長 江 デルタ 珠 江 デルタという 3 大 都 市 群 の 機 能 を 強 化 し 他 の 都 市 群 並 びに 中 西 部 地 域 と 東 北 地 域 の 発 展 を 牽 引 する 主 役 として 構 築 していくことを 決 定 した 2015 年 か ら 成 渝 都 市 群 と 長 江 中 遊 都 市 群 は 次 々と 国 家 級 の 都 市 群 として 批 准 を 受 けた 現 在 全 部 で 5 つある 国 家 級 都 市 群 の 人 口 数 は 全 国 人 口 の 40%を 占 めており これら 都 市 群 が 全 国 GDP の 51%を 創 出 している ( 図 表 4) また 前 述 の 会 議 では 都 市 化 地 域 的 配 置 の 改 善 に 加 え 農 業 移 転 人 口 の 市 民 化 都 市 建 設 用 地 の 使 用 率 の 向 上 持 続 可 能 性 と 多 様 性 のある 地 域 建 設 用 資 金 の 調 達 システムの 構 築 伝 統 と 歴 史 を 重 視 するような 都 市 開 発 の 推 進 都 市 開 発 計 画 の 持 続 性 の 確 保 という 6 つの 都 市 化 における 重 要 任 務 が 明 ら かにされた 図 表 4 都 市 化 計 画 の 両 横 三 縦 構 想 および 都 市 規 模 新 基 準 による 分 布 ハルピン 市 ウルムチ 市 フフホト 市 北 京 市 瀋 陽 市 ラサ 市 銀 川 市 蘭 州 市 西 寧 市 西 安 市 成 都 市 重 慶 市 天 津 市 大 連 市 京 津 冀 都 市 群 青 島 市 鄭 州 市 連 雲 港 市 蘇 州 市 長 江 デルタ 都 市 群 南 京 市 上 海 市 武 漢 市 杭 州 市 長 江 中 遊 都 市 群 貴 陽 市 福 州 市 成 渝 都 市 群 超 大 都 市 (1,000 万 人 以 上 ) 特 大 都 市 (500 万 ~1,000 万 人 ) 両 横 両 横 三 縦 構 想 三 縦 国 家 級 都 市 群 昆 明 市 広 州 市 東 莞 市 南 寧 市 佛 山 市 汕 頭 市 深 セン 市 香 港 珠 江 デルタ 都 市 群 出 所 : 公 開 情 報 より 当 行 中 国 調 査 室 作 成 (2014 年 3 月 ) 都 市 化 の 指 針 : 新 型 都 市 化 計 画 (2014-2020) の 発 足 2014 年 3 月 に 政 府 は 新 型 都 市 化 計 画 (2014-2020) を 発 表 し 人 の 都 市 化 を 中 心 に 2020 年 までの 都 市 化 の 方 向 性 を 示 した この 計 画 は 中 央 政 府 が 初 めて 打 ち 出 した 都 市 化 計 画 となっている 計 画 では 都 市 化 率 公 共 サービス インフラ 設 備 資 源 環 境 と 4 つの 分 野 における 2020 年 までの 数 値 目 標 が 明 らかにさ れた( 図 表 5) 従 来 の 都 市 化 に 比 べると 新 型 都 市 化 では 都 市 規 模 のひたすらな 拡 張 に 集 中 する 土 地 の 都 市 化 ではなく 都 市 の 文 化 公 共 サービスなど 中 身 的 な 機 能 を 強 化 することを 通 じて 人 々の 生 活 水 準 の 向 上 につながるような 人 の 都 市 化 を 重 視 することを 強 調 している 5
図 表 5 国 家 新 型 都 市 化 計 画 (2014~2020) の 主 な 目 標 分 類 指 標 項 目 2012 年 2020 年 都 市 化 水 準 常 住 人 口 の 都 市 化 率 (%) 52.6 60 前 後 戸 籍 人 口 の 都 市 化 率 (%) 35.3 45 前 後 農 民 工 子 女 の 義 務 教 育 享 受 割 合 (%) 99 都 市 部 失 業 者 農 民 工 などの 基 本 的 職 業 訓 練 実 施 のカバー 率 (%) 95 公 共 サービス 都 市 部 常 住 人 口 基 本 養 老 保 険 カバー 率 (%) 66.9 90 都 市 部 常 住 人 口 医 療 保 険 カバー 率 (%) 95 98 都 市 部 常 住 人 口 保 障 性 住 宅 カバー 率 (%) 12.5 23 人 口 百 万 人 以 上 の 都 市 における 公 共 交 通 の 利 用 割 合 (%) 45 * 60 都 市 部 公 共 用 水 普 及 率 (%) 81.7 90 インフラ 施 設 都 市 部 汚 水 処 理 率 (%) 87.3 95 都 市 部 生 活 ゴミ 無 害 化 処 理 率 (%) 84.8 95 都 市 部 家 庭 ブロードバンド 接 続 率 (%) 4 50 都 市 部 社 区 総 合 サービス 施 設 カバー 率 (%) 72.5 100 1 人 当 たり 都 市 部 建 設 用 地 ( 平 方 メートル) 100 都 市 部 再 生 可 能 エネルギー 消 費 率 (%) 8.7 13 資 源 環 境 都 市 部 新 築 建 築 に 占 めるグリーン 建 築 の 比 率 (%) 84.8 50 都 市 部 建 設 完 成 区 の 緑 地 率 (%) 4 38.9 地 級 以 上 都 市 の 空 気 質 の 国 家 基 準 への 達 成 水 準 (%) 40.9 60 出 所 : 国 務 院 国 家 新 型 都 市 化 計 画 (2014~2020) より 当 行 中 国 調 査 室 作 成 注 :*は2011 年 のデータである (2014 年 7 月 ) 人 の 市 民 化 の 第 一 歩 : 戸 籍 制 度 改 革 5 公 共 サービスの 普 及 の 壁 となる 二 元 的 戸 籍 制 度 を 見 直 すため 2014 年 7 月 に 戸 籍 制 度 改 革 を 更 に 推 進 することに 関 する 意 見 が 発 表 され 2020 年 までに 都 市 における 1 億 人 の 農 業 戸 籍 の 出 稼 ぎ 労 働 者 や 他 の 常 住 人 口 を 都 市 戸 籍 に 変 更 させる 目 標 を 掲 げた これを 受 けて 各 地 方 政 府 が 居 住 証 制 度 の 確 立 を 加 速 さ せた (2014 年 11 月 ) 都 市 化 の 準 備 工 作 : 都 市 規 模 分 類 基 準 の 更 新 国 連 は 世 界 各 国 の 都 市 人 口 および 都 市 化 率 に 関 する 推 計 において 各 都 市 の 人 口 規 模 に 基 づいて 50~100 万 人 100~500 万 人 500~1,000 万 人 1,000 万 人 以 上 という 4 段 階 に 都 市 の 規 模 を 分 類 しているが 中 国 は 2014 年 11 月 に 都 市 規 模 分 類 基 準 の 調 整 に 関 する 通 知 を 発 表 し 常 住 人 口 に 基 づいて 小 都 市 中 規 模 都 市 大 都 市 特 大 都 市 超 大 都 市 と 分 けるようになっており 小 都 市 と 大 都 市 に 対 し ては それぞれ 更 にサブ 分 類 を 設 置 している( 図 表 6 ) 国 連 の 統 計 では 50 万 人 以 下 の 地 域 は 都 市 化 統 計 の 対 象 外 と されるが 中 国 では 都 市 化 の 対 象 は 20 万 人 以 下 の 地 域 も 含 まれるとかなり 広 範 囲 にわたっている また 急 激 に 拡 大 した 都 市 人 口 規 模 に 合 わせて 調 整 前 の 分 類 基 準 に 比 べ 各 分 類 の 基 準 人 口 数 をそれぞれ 引 き 上 げた 上 で 常 住 人 口 が 1,000 万 人 以 上 という 超 大 都 市 を 追 加 している この 新 基 準 が 発 効 した 後 中 国 の 特 大 都 市 の 基 準 に 合 う 都 市 数 は 140 から 16 まで 激 減 した また 重 慶 上 海 北 京 広 州 天 津 深 センという 6 都 市 が 超 大 都 市 となっている この 新 たな 図 表 6 都 市 規 模 の 分 類 基 準 の 変 化 従 来 の 分 類 基 準 万 人 新 たな 分 類 基 準 都 市 分 類 都 市 分 類 超 大 都 市 サブ 分 類 1,000 特 大 都 市 大 都 市 中 規 模 都 市 小 都 市 500 300 100 50 20 特 大 都 市 大 都 市 中 規 模 都 市 小 都 市 Ⅰ 型 大 都 市 Ⅱ 型 大 都 市 Ⅰ 型 小 都 市 Ⅱ 型 小 都 市 出 所 : 都 市 規 模 分 類 基 準 の 調 整 に 関 する 通 知 より 当 行 中 国 調 査 室 作 成 注 :ここでは 基 準 数 値 以 上 の 場 合 は 該 当 数 値 と 同 じ 数 値 も 含 まれる が 基 準 数 値 以 下 の 場 合 は 該 当 数 値 が 含 まれないとする 5 戸 籍 制 度 およびその 関 連 改 革 政 策 について 経 済 週 報 第 274 号 (https://reports.btmuc.com/file/pdf_file/info001/info001_20151029_001. pdf)をご 参 照 ください 6
都 市 分 類 基 準 は 次 の 段 階 に 入 りつつある 都 市 化 を 順 調 に 進 めるための 準 備 作 業 とも 考 えられる (2016 年 2 月 ) 都 市 建 設 計 画 の 管 理 工 作 を 強 化 冒 頭 で 述 べたように 2016 年 2 月 21 日 に 発 表 された 意 見 は 37 年 ぶりに 再 開 された 中 央 都 市 工 作 会 議 の 関 連 政 策 とされる 意 見 は 土 地 の 開 発 計 画 と 都 市 全 体 計 画 との 協 調 性 を 強 調 し 都 市 計 画 に 当 たっては 歴 史 文 化 を 尊 重 し 都 市 建 築 の 設 計 基 準 を 決 定 し 奇 抜 な 設 計 を 避 けることなど 具 体 的 な 要 求 を 明 らかにし た( 図 表 7) 図 表 7 都 市 化 の 計 画 的 建 設 に 対 する 管 理 工 作 の 更 なる 強 化 に 関 する 若 干 意 見 の 抜 粋 分 野 内 容 目 標 都 市 計 画 都 市 風 貌 都 市 建 築 インフラ 環 境 改 善 都 市 管 理 都 市 全 体 計 画 と 土 地 開 発 計 画 との 協 調 性 を 強 化 計 画 の 実 行 力 を 強 化 新 設 の 建 築 における 形 色 大 きさ 高 さなどを 都 市 設 計 全 体 の 要 求 に 適 応 させる 都 市 設 計 管 理 の 法 律 や 規 定 の 作 成 を 加 速 組 み 立 て 式 建 築 の 普 及 によって 建 築 ゴミや 建 築 による 汚 染 を 防 止 し 建 築 期 間 を 短 縮 建 築 部 品 の 生 産 基 準 を 決 定 し 建 築 部 品 の 工 場 生 産 を 実 現 5 年 以 内 に 法 律 や 規 制 違 反 している 建 築 の 処 分 を 完 成 5 年 前 後 で 全 ての 都 市 の 歴 史 文 化 市 街 と 歴 史 建 築 の 認 定 作 業 を 完 成 10 年 前 後 で 組 み 立 て 式 建 築 が 全 体 新 設 建 築 に 占 める 割 合 を30%に 向 上 原 則 的 には 新 築 の 集 合 住 宅 は 開 放 しない 団 地 にしてはならな 2020 年 までに 都 市 建 築 完 成 区 の 平 均 い 既 存 の 団 地 なども 段 階 的 に 開 放 し 道 路 の 公 共 性 を 向 上 統 道 路 密 度 を8km/km2まで 向 上 道 路 面 一 した 交 通 網 を 構 築 バラック 地 区 の 改 造 を 加 速 共 同 溝 の 建 設 積 率 を15%に 引 き 上 げる を 加 速 ゴミ 処 理 の 新 技 術 新 設 備 を 導 入 生 ゴミの 家 庭 内 粉 砕 処 理 技 術 の 普 及 を 推 進 汚 水 の 処 理 を 強 化 再 生 水 利 用 率 を 向 上 浸 透 保 水 貯 留 を 意 識 した 都 市 の 水 循 環 を 促 進 し 水 害 対 策 や 水 環 境 対 策 となる スポンジシティ の 構 築 を 加 速 スマートシティの 建 設 を 加 速 都 市 管 理 とサービスの 知 能 化 を 促 進 ビッグデータ モノのインターネット クラウドコンピューティン グなどの 技 術 が 都 市 管 理 サービスとの 融 合 を 促 進 2020 年 までに 地 級 以 上 の 都 市 建 設 完 成 区 における 汚 水 の 完 全 回 収 と 処 理 水 不 足 の 都 市 においては 水 の 再 利 用 率 を35% 以 上 に 向 上 2020 年 までに 幾 つかの 代 表 的 なスマ ートシティの 建 設 を 完 成 出 所 : 都 市 化 の 計 画 的 建 設 に 対 する 管 理 工 作 の 更 なる 強 化 に 関 する 若 干 意 見 により 当 行 中 国 調 査 室 作 成 2016 年 3 月 5 日 から 開 催 されている 両 会 ( 中 華 人 民 共 和 国 全 国 人 民 代 表 大 会 と 中 国 人 民 政 治 協 商 会 議 ) の 中 で 5 日 6 日 の 会 議 において 都 市 化 が 重 要 な 議 題 として 取 り 上 げられた 同 5 日 に 発 表 された 政 府 活 動 報 告 においても 第 13 次 5 ヵ 年 計 画 における 目 標 と 重 点 工 作 として 都 市 化 の 推 進 を 強 調 し 今 までの 土 地 開 発 が 中 心 になってしまっていた 中 国 の 都 市 化 工 作 を 人 の 市 民 化 に 重 点 を 移 す 意 向 を 示 した 具 体 的 には 農 業 移 転 人 口 の 都 市 戸 籍 取 得 促 進 中 西 部 地 域 における 中 小 都 市 と 建 制 鎮 の 発 展 の 加 速 バラッ ク 住 宅 の 改 造 と 外 来 人 口 向 けの 賃 貸 住 宅 供 給 の 強 化 都 市 計 画 建 設 管 理 体 制 の 整 備 などが 含 まれる 以 上 のような 一 連 の 措 置 からみると 中 国 政 府 が 今 までの 都 市 化 工 作 の 問 題 点 を 反 省 した 上 で 従 来 の 不 適 切 な 規 制 や 政 策 を 見 直 し 新 たな 段 階 に 向 けて 新 措 置 の 制 定 に 積 極 的 に 取 り 組 む 姿 勢 が 見 取 られる 過 剰 生 産 能 力 解 消 といった 構 造 改 革 が 行 われる 中 地 域 間 における 産 業 構 造 の 合 理 化 も 進 められ 中 小 都 市 に おいても 産 業 の 高 度 化 や 新 たな 産 業 の 創 出 による 労 働 力 需 要 の 増 加 が 人 口 を 集 められるようになると 思 われ る 都 市 化 は 生 活 水 準 を 向 上 させ 内 需 を 引 き 出 す 有 力 な 措 置 の 1 つとされており 方 向 が 修 正 された 新 段 階 の 都 市 化 の 効 果 が 大 いに 期 待 される 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 ( 中 国 ) 中 国 投 資 銀 行 部 中 国 調 査 室 于 瑛 琪 7
稲 垣 清 の 経 済 産 業 情 報 2016 年 全 人 代 と 軍 改 革 Ⅰ.2016 年 全 人 代 と 国 防 予 算 本 年 の 全 人 代 においては 世 界 経 済 に 大 きな 影 響 を 与 えるに 至 っている 中 国 経 済 の 成 長 の 見 通 しと 本 年 か ら 始 まる 第 13 次 5 カ 年 計 画 の 審 議 と 承 認 が 大 きな 議 題 の 一 つである 成 長 については 李 克 強 政 府 活 動 報 告 において 6.5% 7.0%に 幅 を 持 たしているが これまでの 実 績 からは 大 きく 後 退 を 示 している しかし 中 国 経 済 がハードランディング( 失 速 )することはあり 得 ない( 徐 紹 史 国 家 発 展 改 革 委 員 会 主 任 )と 強 気 である 13 次 5 カ 年 計 画 については すでにその 概 要 は 決 定 しており 全 人 代 最 終 日 に 承 認 の 運 びとなる 模 様 である そして その 目 玉 は 一 帯 一 路 の 積 極 的 推 進 である そして これを 実 現 するためには この 5 年 間 に 最 低 6.5%の 成 長 を 確 保 することが 必 要 であるとしている ところで 中 国 の 経 済 成 長 が 鈍 化 する 中 で 国 防 費 の 増 加 が 毎 年 の 全 人 代 の 世 界 的 関 心 事 となっている 2016 年 の 予 算 上 の 国 防 費 の 伸 び 率 は 7.6%であり GDP 成 長 を 上 回 る 国 防 費 が GDP の 伸 びを 上 回 るの は 過 去 10 年 では 2009 年 を 除 いて 一 貫 している しかし 2016 年 の 予 算 では 過 去 の 二 桁 成 長 からみれ ば 国 防 費 の 伸 び 率 も 一 桁 成 長 を 余 儀 なくされている 他 方 で 中 国 は 後 述 するように 軍 の 改 革 を 進 めてい る また 2020 年 までには 軍 の 30 万 削 減 も 宣 言 している( 習 近 平 ) 改 革 と 人 員 削 減 は 国 防 費 の 相 対 的 な 減 少 をもたらすが 同 時 に 軍 改 革 の 一 環 としての 軍 の 近 代 的 兵 器 の 充 実 や 軍 人 への 生 活 保 障 の 充 実 など により 国 防 費 の 増 加 も 不 可 欠 となっている 中 国 の 国 防 費 の 増 加 によって 世 界 が 中 国 脅 威 論 を 吹 聴 す る 事 に 対 し 中 国 は 国 防 費 の 透 明 性 を 高 める 方 針 を 打 ち 出 してはいるものの 世 界 はまだ 不 十 分 としている 中 国 の 2015 年 の 国 防 費 を 世 界 と 比 較 してみると 米 国 がトップであり 中 国 は 第 2 位 となっているが その 差 は 4 倍 以 上 である( 中 国 系 ネットニュース 環 球 網 香 港 大 公 報 2016 年 3 月 6 日 ) 同 時 に 第 8 位 である 日 本 との 差 も 3.6 倍 に 及 んでいる 軍 隊 の 規 模 が 異 なるため 軍 事 予 算 だけで その 脅 威 論 を 振 りかざすこ とはできないが 中 国 の 国 防 費 の 行 方 は 世 界 の 関 心 事 であることは 間 違 いない Ⅱ. 軍 改 革 の 方 向 中 国 は 2013 年 11 月 の 三 中 全 会 で 設 置 が 決 まった 中 央 軍 事 改 革 指 導 小 組 そして 自 ら 組 長 に 就 任 した 習 近 平 中 央 軍 事 委 員 会 主 席 のリーダーシップにより 軍 の 改 革 が 進 められた 2015 年 9 月 の 軍 事 パレードにお ける 習 近 平 の 30 万 削 減 が 改 革 の 覚 悟 が 秘 められていた その 軍 改 革 小 組 発 足 から 3 年 2015 年 11 月 24 日 から 26 日 に 開 催 された 中 央 軍 事 委 員 会 改 革 工 作 会 議 において 軍 改 革 の 骨 子 が 固 まった そして 改 革 の 一 部 が 公 表 されたのち 2015 年 12 月 31 日 2 月 1 日 そして 全 人 代 開 幕 日 新 たに 組 織 された 軍 指 導 部 の 将 軍 が 人 民 大 会 堂 に 姿 を 現 した 軍 改 革 は 1 表 にみるように 三 段 階 に 分 けて 実 行 される 2015 年 末 までに 陸 軍 を 中 心 として 軍 組 織 指 導 管 理 体 制 の 改 革 が 行 われた 全 容 はいまだ 発 表 されていないが 陸 軍 15 職 能 部 門 5 大 戦 区 などの 組 織 新 人 事 の 一 部 が 公 表 されている そして その 内 容 は 軍 四 総 部 の 名 称 変 更 陸 軍 戦 略 支 援 部 隊 の 新 設 第 二 砲 兵 部 隊 のロケット 軍 への 名 称 変 更 と 地 位 の 向 上 7 大 軍 区 の 5 大 戦 区 への 変 更 など 軍 改 革 は 予 想 以 上 に 大 胆 なものであった 2016 年 は 国 防 大 学 軍 事 科 学 院 などの 院 校 および 武 装 警 察 ( 武 警 総 隊 )の 改 革 が 行 われる 予 定 であり 2017 年 から 2020 年 までの 間 に 更 なる 軍 改 革 の 深 化 を 行 われ 最 終 的 にこの 過 程 で 30 万 削 減 を 実 現 する 方 針 である これまでの 軍 体 制 の 中 核 をなしてきた 四 総 部 ( 総 参 謀 部 総 政 治 部 総 後 勤 部 総 装 備 部 )は 改 組 され 軍 委 弁 公 庁 聯 合 参 謀 部 政 治 工 作 部 後 勤 保 障 部 装 備 発 展 部 訓 練 管 理 部 国 防 動 員 部 紀 律 検 査 委 員 8
会 政 法 委 員 会 科 学 技 術 委 員 会 戦 略 企 画 弁 公 室 改 革 和 編 制 弁 公 室 国 際 軍 事 合 作 弁 公 室 審 計 署 機 関 事 務 管 理 総 局 の 7 部 ( 庁 ) 3 委 員 会 5 直 属 機 構 計 15 の 職 能 部 門 に 再 編 された 紀 律 委 政 法 委 審 計 署 などの 設 置 による 軍 内 での 紀 律 違 反 腐 敗 の 摘 発 の 強 化 を 決 定 したことも 軍 改 革 の ポイントである 軍 内 の 紀 律 検 査 委 員 は 従 来 副 政 治 委 員 の 兼 務 職 であったが 今 回 の 改 革 において 分 離 した 軍 の 腐 敗 取 り 締 まり 強 化 の 一 環 である 各 軍 種 に 紀 律 委 をもうけるほか 機 関 および 戦 区 毎 に 紀 律 組 を 設 置 するこことも 決 定 した 1 表 軍 改 革 スケジュール 改 革 内 容 2015 年 軍 組 織 指 導 管 理 体 制 聯 合 作 戦 指 揮 体 制 の 改 革 2016 年 軍 隊 機 構 と 作 戦 能 力 体 系 の 改 革 院 校 武 警 部 隊 の 改 革 2017 年 2020 年 各 戦 力 強 化 完 成 のための 調 整 改 革 の 深 化 注 : 中 央 軍 委 関 於 深 化 国 防 和 軍 隊 改 革 的 意 見 ( 解 放 軍 報 2016 年 1 月 2 日 ) 図 中 国 人 民 解 放 軍 の 体 制 改 革 9
Ⅲ. 強 軍 の 夢 習 近 平 には 二 つの 夢 がある ひとつは 大 国 中 国 であり 二 つ 目 は 強 い 中 国 をつくりあげることであ る 軍 の 改 革 に 合 わせて 軍 人 事 も 刷 新 している その 人 事 には 四 つの 特 徴 がある ひとつは 軍 内 のかつて の 派 閥 ともいうべき 失 脚 死 亡 した 徐 才 厚 の 出 身 である 瀋 陽 軍 区 出 身 者 がこれまでのキャリアコースで あったが 最 近 では 習 近 平 が 17 年 に 亘 って 勤 務 した 福 建 省 を 含 み 台 湾 海 峡 をにらんだ 南 京 軍 区 出 身 者 の 登 用 が 目 立 っている 5 大 戦 区 のひとつであり 紛 争 の 南 沙 諸 島 を 所 管 とする 南 部 戦 区 司 令 員 には 南 京 軍 区 出 身 の 王 教 成 上 将 軍 (64 歳 )を 抜 擢 北 部 戦 区 政 治 委 員 の 褚 益 民 上 将 (63 歳 )も 南 京 軍 区 出 身 で ある 第 二 の 特 徴 は 1979 年 の 中 越 戦 争 従 軍 経 験 者 の 登 用 である 中 国 は 1979 年 の 対 ベトナムとの 戦 争 以 後 実 戦 の 経 験 がない その 実 戦 経 験 者 を 陸 軍 の 要 職 に 抜 擢 している 陸 軍 総 部 の 李 作 成 上 将 (63 歳 ) 東 部 戦 区 の 劉 粤 軍 上 将 (62 歳 ) そして 陸 軍 参 謀 長 の 劉 振 立 (52 歳 )も 中 越 戦 争 の 英 雄 である なお 劉 振 立 は 軍 人 における 60 後 (1960 年 代 生 まれ)の 代 表 最 年 少 副 大 軍 区 級 高 級 将 校 である 第 三 に 専 門 性 の 高 く 軍 事 理 論 および 軍 事 技 術 の 長 けた 人 物 の 登 用 が 目 立 っていることである 新 設 され た 戦 略 支 援 部 隊 司 令 員 の 高 津 中 将 (57 歳 )は 戦 略 ミサイルの 専 門 家 であり 若 くして 軍 事 科 学 院 院 長 に 抜 擢 高 津 出 身 の 第 二 砲 兵 部 隊 は 戦 略 ミサイル 部 隊 核 兵 器 も 扱 う 特 殊 部 隊 であり これまでにミサイルに 関 する 20 以 上 の 論 文 を 発 表 している しかし 党 内 地 位 が 候 補 委 員 でありながら 軍 銜 が 中 将 というのは 異 例 である 次 期 党 大 会 での 中 央 委 員 および 上 将 への 昇 格 が 確 実 視 される 大 軍 区 正 官 クラスでは 最 年 少 である しかし 党 内 地 位 は 中 央 候 補 委 員 であり 次 期 党 大 会 での 中 央 委 員 および 上 将 への 昇 格 が 確 実 視 される 人 物 である 福 建 省 での 服 役 が 長 く 習 近 平 にも 近 い 海 軍 政 治 委 員 の 苗 華 上 将 (61 歳 )は 国 防 科 技 大 学 出 身 であり 陸 軍 の 政 治 畑 を 歩 いてきた 将 軍 であり かつ 海 軍 の 異 動 は 異 例 である 苗 華 も 中 央 委 員 ではなく 2017 年 党 大 会 での 中 央 入 りが 確 実 視 される 第 四 に 最 近 の 軍 幹 部 にも 海 外 留 学 経 験 者 が 多 く 輩 出 されていることである ただし 軍 の 場 合 にはそのほと んどがロシア 留 学 研 修 である 第 二 砲 兵 からその 名 をロケット 軍 となり その 初 代 司 令 員 に 就 任 した 魏 鳳 和 上 将 (62 歳 中 央 委 員 ) 新 設 された 訓 練 管 理 部 主 任 の 鄭 和 少 将 (58 歳 ) 陸 軍 副 司 令 員 の 彭 勃 中 将 (61 歳 ) 許 林 平 (59 歳 中 央 候 補 委 員 旧 蘭 州 軍 区 副 司 令 員 )もロシア 軍 事 学 院 留 学 経 験 があり 情 報 化 戦 争 の 専 門 家 といわれる 中 将 であ る そして 陸 軍 後 勤 務 部 長 の 韓 志 慶 少 将 (58 歳 )はロシア 軍 事 アカデミーからの 海 帰 派 ( 海 外 留 学 組 )であ る このように 習 近 平 の 軍 事 改 革 による 強 い 軍 実 現 の 夢 は 最 新 鋭 技 術 を 装 備 し 近 代 戦 争 を 戦 い 抜 く 専 門 性 をもった 将 軍 たちの 双 肩 にかかっている ( 本 レポートの 内 容 は 個 人 の 見 解 に 基 づいており BTMUCの 見 解 を 示 すものではありません ) 稲 垣 清 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 ( 中 国 ) 顧 問 1947 年 神 奈 川 県 生 まれ 慶 応 義 塾 大 学 大 学 院 終 了 後 三 菱 総 合 研 究 所 三 菱 UFJ 証 券 ( 香 港 ) 産 業 調 査 アナリストを 歴 任 現 在 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 ( 中 国 ) 顧 問 著 書 に 中 南 海 (2015 年 岩 波 新 書 ) 中 国 進 出 企 業 地 図 (2011 年 蒼 蒼 社 ) いまの 中 国 (2008 年 中 経 出 版 ) 中 国 ニューリーダーWho s Who (2002 年 弘 文 堂 ) 中 国 のしくみ (2000 年 中 経 出 10
BTMU の 中 国 調 査 レポート(2016 年 2~3 月 ) 海 外 経 済 フラッシュ 中 国 : 人 民 銀 行 が 預 金 準 備 率 を0.5%ポイント 引 き 下 げ https://reports.btmuc.com/file/pdf_file/info005/info005_20160301_002.pdf 経 済 調 査 室 経 済 見 通 し(2016 年 2 月 ) http://www.bk.mufg.jp/report/ecolook2016/index.htm 経 済 調 査 室 海 外 経 済 フラッシュ G20 財 務 相 中 央 銀 行 総 裁 会 議 : 過 度 な 金 融 緩 和 依 存 への 限 界 を 共 有 https://reports.btmuc.com/file/pdf_file/info005/info005_20160301_001.pdf 経 済 調 査 室 海 外 駐 在 情 報 供 給 側 構 造 改 革 を 推 進 する 中 国 https://reports.btmuc.com/file/pdf_file/info005/info005_20160201_001.pdf 経 済 調 査 室 ( 香 港 ) BTMU 中 国 月 報 (2016 年 2 月 号 ) http://www.bk.mufg.jp/report/inschimonth/116020101.pdf 国 際 業 務 部 ニュースフォーカス(2016 年 第 3 号 ) 2016-2017 年 度 香 港 財 政 予 算 案 https://reports.btmuc.com/file/pdf_file/info005/info005_20160307_001.pdf 業 務 開 発 室 ( 香 港 ) 当 資 料 は 情 報 提 供 のみを 目 的 として 作 成 されたものであり 何 らかの 行 動 を 勧 誘 するものではありません ご 利 用 に 関 しては 全 てお 客 様 御 自 身 でご 判 断 くださいますよう 宜 しくお 願 い 申 し 上 げます 当 資 料 は 信 頼 できると 思 われる 情 報 に 基 づいて 作 成 されていますが 当 店 はその 正 確 性 を 保 証 す るものではありません 内 容 は 予 告 なしに 変 更 することがありますので 予 めご 了 承 下 さい また 当 資 料 は 著 作 物 であり 著 作 権 法 により 保 護 されてお ります 全 文 または 一 部 を 転 載 する 場 合 は 出 所 を 明 記 してください 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 ( 中 国 ) 有 限 公 司 中 国 投 資 銀 行 部 中 国 調 査 室 北 京 市 朝 陽 区 東 三 環 北 路 5 号 北 京 発 展 大 厦 4 階 照 会 先 : 石 洪 TEL 010-6590-8888ext. 214 11