Microsoft Word - 安村4.docx



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(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

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文化政策情報システムの運用等

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

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01.活性化計画(上大久保)

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

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容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

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預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

●幼児教育振興法案

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(Microsoft Word - \221\346\202P\202U\201@\214i\212\317.doc)

経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

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18 国立高等専門学校機構

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職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (5 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 区 類 団 府 分 似 体 平 均 年 齢

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

別紙3

ほかに パート 従 業 員 らの 厚 生 年 金 加 入 の 拡 大 を 促 す 従 業 員 五 百 人 以 下 の 企 業 を 対 象 に 労 使 が 合 意 すれば 今 年 十 月 から 短 時 間 で 働 く 人 も 加 入 できる 対 象 は 約 五 十 万 人 五 百 人 超 の 企 業

一般競争入札について

Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

資料3 家電エコポイント制度の政策効果等について

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は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

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注 記 事 項 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 : 無 (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 有 ( 注 ) 詳 細 は 添 付 資 料 4ページ 2.サマリー 情 報 (

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資料2-2 定時制課程・通信制課程高等学校の現状

別 表 1 土 地 建 物 提 案 型 の 供 給 計 画 に 関 する 評 価 項 目 と 評 価 点 数 表 項 目 区 分 評 価 内 容 と 点 数 一 般 評 価 項 目 立 地 条 件 (1) 交 通 利 便 性 ( 徒 歩 =80m/1 分 ) 25 (2) 生 活 利 便

市況トレンド

(6) 事 務 局 職 場 積 立 NISAの 運 営 に 係 る 以 下 の 事 務 等 を 担 当 する 事 業 主 等 の 組 織 ( 当 該 事 務 を 代 行 する 組 織 を 含 む )をいう イ 利 用 者 からの 諸 届 出 受 付 事 務 ロ 利 用 者 への 諸 連 絡 事 務

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1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

0605調査用紙(公民)

調 査 結 果 トピック1: 性 年 代 別 利 用 率 の 利 用 率 は 男 女 ともに 各 年 代 で 大 きく 伸 長 している 2011 年 9 月 の 調 査 では の 年 代 別 利 用 率 は 男 女 とも が 最 も 高 く が 23.9% が 20.5%だったが 今 年 の 調

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

弁護士報酬規定(抜粋)

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03 平成28年度文部科学省税制改正要望事項

( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

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1.3. 距 離 による 比 較 距 離 による 比 較 を 行 う ( 基 本 的 に 要 求 される 能 力 が 違 うと 思 われるトラック 別 に 集 計 を 行 った ) 表 -3 に 距 離 別 の 比 較 を 示 す 表 -3 距 離 別 比 較

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別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

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公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

小 売 電 気 の 登 録 数 の 推 移 昨 年 8 月 の 前 登 録 申 請 の 受 付 開 始 以 降 小 売 電 気 の 登 録 申 請 は 着 実 に 増 加 しており これまでに310 件 を 登 録 (6 月 30 日 時 点 ) 本 年 4 月 の 全 面 自 由 化 以 降 申

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

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課 税 ベ ー ス の 拡 大 等 : - 租 税 特 別 措 置 の 見 直 し ( 後 掲 ) - 減 価 償 却 の 見 直 し ( 建 物 附 属 設 備 構 築 物 の 償 却 方 法 を 定 額 法 に 一 本 化 ) - 欠 損 金 繰 越 控 除 の 更 な る 見 直 し ( 大

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職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 福 岡 県 技 能 労 務 職 歳 1,19,98 9,9 歳 8,

Transcription:

デジタル 化 によって 起 きた 日 韓 音 楽 業 界 のエコシステムの 違 い 指 導 教 員 名 : 水 越 康 介 氏 名 : 安 村 友 里 枚 数 :22 枚 1

目 次 1 はじめに 2 先 行 研 究 2-1 ビジネスエコシステムの 概 念 2-2 ビジネスエコシステムの 生 成 過 程 2-3 ビジネスエコシステムの 健 全 性 2-3-1 生 産 性 2-3-2 堅 牢 性 2-3-3 ニッチの 創 出 2-4 エコシステム 内 でのプレイヤーの 役 割 3 事 例 分 析 日 韓 音 楽 業 界 3-1 世 界 から 見 た 日 韓 音 楽 業 界 3-2 1990 年 代 CD の 誕 生 によって 急 成 長 した 大 衆 音 楽 3-2-1 J-POP K-POP の 誕 生 3-3 2000 年 代 デジタル 音 源 配 信 による 音 楽 消 費 スタイルの 変 化 3-3-1 日 本 のデジタル 音 源 配 信 システム 3-3-2 韓 国 のデジタル 音 源 配 信 システム 3-3-3 日 韓 のデジタル 化 への 対 応 の 違 い 3-4 巨 大 化 する 韓 国 の 音 楽 エコシステム 3-4-1 政 府 と 音 楽 業 界 3-4-2 観 光 産 業 と 音 楽 業 界 3-5 テレビと 音 楽 業 界 3-5-1 90 年 代 のテレビが 与 えた 音 楽 業 界 への 影 響 3-5-2 日 韓 での 音 楽 番 組 3-5-3 音 楽 ランキングの 違 いによるエコシステム 生 成 の 違 い 3-6 日 韓 のCD 販 売 戦 略 3-7 エコシステム 内 の 健 全 度 イノベーションの 伝 達 ニッチの 創 出 4 考 察 まとめ 5 参 考 文 献 2

1 はじめに 近 年 インターネットの 普 及 や 消 費 者 の 嗜 好 の 多 様 化 によって 一 つの 製 品 ができるまで に 設 計 生 産 流 通 に 多 数 の 組 織 が 関 与 し 産 業 構 造 がより 複 雑 に 変 化 している 音 楽 業 界 もその 産 業 の 一 つであり 特 に 流 通 過 程 において 大 きく 変 化 を 遂 げているといえる 2010 年 11 月 8 日 歌 手 の 宇 多 田 ヒカルが Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL2 からのリードトラック Goodbye Happiness の PV 解 禁 と 共 に YouTube に 自 身 の 公 式 ア カウントを 開 設 し 過 去 のミュージックビデオをフルコーラスで 一 挙 公 開 した( 音 楽 情 報 サ イト アールオーロック) 現 在 でもツイッターなどの 言 動 がニュースに 取 り 上 げられるほ どの 彼 女 であるが 当 時 はミュージックビデオが 有 料 という 認 識 があったためこの 行 動 に 私 は 驚 かされた また 宇 多 田 ヒカルのみならず 同 年 スピッツや GLAY などのほかのアーテ ィストも YouTube にアップロードしている ここで 注 目 してほしいのが それまでのミュ ージックビデオは 有 料 でクリップ 集 や CD とセット 販 売 されていたが 宇 多 田 ヒカルのよ うにアーティストが 公 認 でミュージックビデオを 無 料 で 流 通 するようになったという 点 だ しかし 実 はこれ 以 前 からインターネットの 普 及 に 伴 い 音 源 がアップロードされたりファ イル 交 換 ソフトによって 違 法 ダウンロードが 蔓 延 していた その 結 果 音 楽 業 界 は CD な どパッケージから 大 きく 収 入 を 得 ていたそれまでの 産 業 構 造 の 変 化 を 余 儀 なくされた 日 本 レコード 協 会 によると CD や DVD カセットなどパッケージ 化 された 音 楽 ソフトの 売 上 推 移 は 1998 年 の 6075 億 円 をピークに 2011 年 では 2819 億 円 にまで 落 ち 込 んでいる 状 態 だ メディアによっては 音 楽 業 界 が 不 況 と 報 じられるのを 目 にするが 実 はここで 使 われている 指 標 は CD など 音 楽 ソフトのみの 生 産 状 況 や 売 上 推 移 を 述 べているだけであ って 著 作 権 やライブ 収 入 が 換 算 されていない デジタルコンテンツ 白 書 (2009)によると 音 楽 コンテンツ 産 業 の 売 上 は 2007 年 から 08 年 でほぼ 横 ばい 状 態 であるのだ インターネット の 影 響 を 受 けるなど 外 部 環 境 が 変 化 し CD 売 上 が 減 少 しているなかどのように 収 入 を 保 っ ているのであろうか ここが 本 論 文 の 注 目 すべき 点 である 本 論 文 ではまず Moore や Iansiti and Levien が 唱 えたビジネスエコシステムの 概 念 を 今 一 度 整 理 し 武 石 李 の 日 韓 モバイ ル 音 楽 ビジネスエコシステム 論 2005 年 以 降 の 両 国 の 音 楽 業 界 の 動 きを 見 ていく なお 音 楽 コンテンツの 規 模 は 音 楽 ソフト ネット 配 信 モバイル 配 信 カラオケ コ ンサート 入 場 料 のそれぞれの 売 上 収 入 の 合 算 値 2-1 ビジネスエコシステムの 概 念 ビジネスエコシステムは Moore(1993)や Iansiti and Levien(2004)によって 提 唱 された 概 念 であり 彼 らは 本 来 生 態 系 を 意 味 しているエコシステムをメタファーとしてビジネスや 産 業 の 分 析 に 応 用 した Iansiti and Levien(2004)によると 従 来 のビジネスモデルは 企 業 の 内 部 能 力 とビジネスモデルの 発 展 に 焦 点 があてられ 次 世 代 技 術 や 自 社 を 脅 かす 新 しいビ ジネスモデルの 出 現 は 外 部 環 境 として 位 置 づけられていた それに 対 し 複 数 の 組 織 が 共 3

存 し 発 展 することを 目 的 に 互 いの 技 術 を 生 かしながら 設 計 生 産 流 通 さらには 消 費 者 や 社 会 政 府 までを 含 むこの 一 連 の 収 益 構 造 を 一 つの 体 系 と 捉 え それをビジネスエコシ ステムとした(Iansiti and Levien 2004 15 頁 ) 武 石 李 (2005)は Iansiti and Levien の 考 えは 複 数 の 業 界 を 扱 うことの 重 要 性 を 強 調 しているものの その 他 の 環 境 要 素 にはあまり 目 を 向 けていないとして 制 度 や 技 術 までを 含 めて 捉 えることが 重 要 とした ただし Hughes の 唱 える 大 規 模 技 術 システムは 構 成 する 要 素 が 間 接 直 接 に 共 通 する 目 的 に 貢 献 していることを 要 件 にしているが 彼 らは 必 ずしも 共 通 の 目 的 をもたないものもあり 得 る とし それをビジネスエコシステムとしている エコシステム 内 を 構 成 する 要 素 間 の 結 び つきが 緩 やかであるということは 各 要 素 は 他 の 要 素 をあまり 気 にすることなく 振 る 舞 え ることを 意 味 する しかし エコシステム 内 の 要 素 のいずれかに 何 らかの 変 化 が 起 きると 平 時 には 相 互 に 自 立 していた 業 界 同 士 が 非 常 時 になると 相 互 の 関 係 を 認 識 させられ 何 ら かの 調 整 や 変 化 が 余 儀 なくされる( 武 石 李 2005 75 頁 ) 次 では Moore や Iansiti and Levien のビジネスエコシステムの 生 成 条 件 や 健 全 度 中 核 企 業 となる 役 割 を 見 ていく 2-2 ビジネスエコシステムの 生 成 Moore(1993)は 時 系 列 をもって 4 つの 段 階 でエコシステムの 生 成 過 程 を 表 した(Moore 1993 77 頁 ) 誕 生 (Birth)-この 段 階 では 企 業 はエコシステム 内 で 重 要 となる 顧 客 サプライヤー チャ ネルの 獲 得 が 必 要 である そして 彼 らとともにイノベーションから 新 しい 価 値 を 生 み 出 し 彼 らに 提 供 していく このとき 互 いに 共 存 しているという 意 識 が 重 要 である 拡 大 (Expansion)- 次 にシステムを 発 展 させることである パートナーと 共 にマーケットセ グメントでの 標 準 化 をはかり 範 囲 を 増 加 させることによって 最 適 な 大 きさの 集 合 体 にな る リーダーシップ(Leadership)- 第 3 ステージでは 権 威 者 もしくはリーディング 企 業 によっ て 特 徴 づけられる ここで 企 業 がサプライヤーや 顧 客 に 対 して 強 い 交 渉 力 を 維 持 させたい ところだが 彼 らの 要 望 に 対 し 持 続 的 に 改 善 するために 協 力 していくということが 共 生 し ていくために 重 要 な 点 だ 自 己 革 新 (Self renewal)- 最 後 の 段 階 は 自 己 革 新 である 類 似 した 新 しいアイディアを 持 つ 他 のビジネスエコシステムには 消 費 者 の 切 り 替 えコストや 競 合 他 社 の 参 入 コストのような 障 壁 を 手 段 に 用 いて 成 長 を 遅 らせる 必 要 がある この 生 成 過 程 において 重 要 な 役 割 を 担 うのは 中 核 企 業 である 特 に 第 1 2 ステージでは 中 核 企 業 がシステム 全 体 で 協 働 し 価 値 を 創 出 できるようなシステムを 構 築 しなければなら ない 2-3 ビジネスエコシステムの 健 全 性 4

エコシステム 内 では 多 数 の 緩 やかに 結 びついた 参 加 者 たちがお 互 いの 発 展 と 生 き 残 りを 目 的 として 相 互 依 存 しているため それぞれの 種 は 自 分 たちの 生 き 残 りの 可 能 性 を 互 いに 共 有 している そして 同 じネットワーク 内 に 属 する 企 業 はその 健 全 性 を 守 っていく 行 動 を していかなければならない もしその 均 衡 が 崩 れ エコシステム 内 が 不 健 全 になれば 個 々 の 種 は 厳 しい 運 命 に 直 面 してしまう(Iansiti and Levien 2004 12 頁 ) さてここで 述 べら れている 健 全 性 とはいかなる 指 標 をもって 測 ることができるのであろうか 彼 らはエコシ ステム 内 の 3 つの 側 面 である 生 産 性 堅 牢 性 ニッチの 創 出 について 検 証 していくべきだ と 述 べた(Iansiti and Levien 2004 61 頁 ) 2-3-1 生 産 性 イノベーションを 低 コスト 新 製 品 機 能 に 変 換 するエコシステムの 有 効 性 も 捉 える 必 要 があるとし 生 産 性 に 関 連 した 指 標 は3つの 種 類 を 考 えることができる(Iansiti and Levien 2004 63-67 頁 ) 1 要 素 生 産 性 2 時 系 列 を 用 いての 変 化 3 イノベーションの 伝 達 一 つ 目 の 要 素 生 産 性 は 伝 統 的 な 経 済 学 の 生 産 性 分 析 で 用 いられている 手 法 を 活 用 し 参 加 者 の 生 産 性 を 比 較 検 証 していく ここで 最 もよく 使 われているのは 投 下 資 本 利 益 率 (ROIC)である 二 つ 目 の 時 系 列 を 用 いての 変 化 は 1 の ROIC に 時 系 列 を 持 たせ 一 定 期 間 にわたって 生 産 性 を 増 大 させているか 同 一 の 製 品 の 生 産 と 業 務 遂 行 を 業 務 をコストを 下 げながら 実 行 で きているのかに 焦 点 をあてて 検 証 していく 三 つ 目 の 指 標 Iansiti and Levien(2004)はイノベーションの 伝 達 は 重 要 な 指 標 であると している この 指 標 は 新 しい 技 術 が 次 第 に 発 展 し エコシステムに 浸 透 し それに 対 する 企 業 の 動 きを 評 価 できる 彼 らはこの 点 に 関 して ソフトウェア 産 業 は 興 味 深 い 事 例 を 提 示 している モザイクブラウザの 最 初 のベータ 版 が 出 た 1993 年 から すべてのウィンドウ ズに 対 応 したインターネットエクスプローラーが 導 入 されたのは 1995 年 であり その 間 た った 2 年 間 しか 経 ってない このとき 技 術 の 出 現 とその 伝 播 との 間 のタイムラグに 注 目 す べきである これらを 明 確 にしていくことでエコシステム 内 が 互 いに 共 栄 しているのかを 見 ることが できる 2-3-2 堅 牢 性 生 態 系 のエコシステムは 環 境 変 化 に 直 面 しても 生 き 残 らなければならない それはビジ ネスエコシステムも 同 様 である 企 業 は 堅 牢 なエコシステムに 組 み 込 まれることにより 広 範 にわたる 便 益 を 享 受 でき またそれによって 比 較 的 予 測 可 能 な 環 境 で 事 業 運 営 を 行 うこ 5

とができるため 安 定 した 環 境 を 壊 す 可 能 性 である 新 しい 技 術 上 の 変 化 や 外 部 環 境 の 変 化 による 衝 撃 を 和 らげられる ここではその 重 要 な 堅 牢 性 の 指 標 を5つ 示 していく(Iansiti and Levien 2004 67-71 頁 ) 1 生 存 率 2 エコシステム 構 造 の 持 続 性 3 予 測 可 能 性 4 陳 腐 化 の 回 避 5 利 用 者 の 経 験 とケースの 持 続 性 一 つ 目 は 生 存 率 である エコシステム 内 の 企 業 は 長 期 間 にわたって あるいは 他 のエコ システムと 比 べ より 高 い 生 存 率 を 記 録 しているということはエコシステムが 堅 牢 である といえる 二 つ 目 はエコシステム 構 造 の 持 続 性 で 堅 牢 なエコシステムではメンバー 同 士 の 関 係 性 の 変 化 は 抑 制 され エコシステムの 構 造 は 外 部 の 衝 撃 から 影 響 を 受 けにくくなっている 三 つ 目 は 予 測 可 能 性 エコシステム 構 造 の 変 化 は 単 に 抑 制 されているだけでなく 局 部 に 制 限 される この 事 例 として Iansiti and Levien(2004)は PC デスクトップ 環 境 の 発 展 を 挙 げている PC デスクトップは 今 や 資 料 作 成 や 管 理 といった 用 途 だけでなく ショッピン グや 映 画 鑑 賞 ゲームや 音 楽 を 聴 くといった 用 途 にまで 拡 張 したがこの 発 展 において 飛 躍 的 な 技 術 があったわけではないとしている 四 つ 目 に 陳 腐 化 の 回 避 である 健 全 なエコシステム 内 では 大 変 動 した 環 境 への 対 応 と して 陳 腐 化 した 能 力 を 一 気 に 手 放 さず 引 き 続 き 活 用 していく 例 えば デジタルカメラ が 出 現 したときもパソコンはデジタル 画 像 の 編 集 や 撮 影 のためのツールを 採 用 したり 画 像 関 連 機 能 を 拡 張 するなど 新 しい 分 野 へ 自 らを 適 合 していった 五 つ 目 は 利 用 者 の 経 験 とケースの 持 続 性 である 堅 牢 なエコシステムの 製 品 に 関 わる 消 費 者 の 経 験 は 新 しい 技 術 が 導 入 されることによって 急 激 に 変 化 するというよりもむしろ 緩 やかに 進 化 していく これらの 指 標 全 てがあらゆる 環 境 に 適 応 可 能 とはいえないが 一 連 の 指 標 は 堅 牢 性 を 評 価 するための 効 果 的 なツールを 提 供 している 2-3-3 ニッチの 創 出 そして 上 記 で 見 てきた 生 産 性 と 堅 牢 性 だけでは 健 全 なエコシステムの 特 性 を 捉 えるこ とができない 生 態 学 的 な 意 味 において エコシステムが 多 様 性 を 有 することは 重 要 な 特 性 ではあるがすべてがプラスの 特 性 とは 限 らない ここで 議 論 している 多 様 性 では 価 値 を 生 み 出 す 多 様 性 が 重 要 である 事 業 における 新 しいカテゴリーがエコシステム 内 で 意 味 の ある 斬 新 さであることが 最 も 重 要 なのだ そこでニッチの 視 点 が 重 要 となるのである ニ ッチは 自 らの 専 門 性 を 特 化 させることで エコシステム 内 に 価 値 をもたらしている 健 全 なエコシステムは 長 期 間 にわたってニッチを 創 出 していく そこでニッチ 創 出 能 力 を 測 る 6

指 標 として 2 つの 関 連 指 標 があげられる(Iansiti and Levien 2004 72-75 頁 ) 1 企 業 の 多 様 性 の 増 大 一 定 の 期 間 においてエコシステムのなかで 誕 生 した 新 企 業 の 数 2 製 品 および 技 術 の 多 様 性 の 増 大 一 定 の 期 間 においてエコシステムのなかで 出 現 した 新 製 品 の 選 択 肢 技 術 的 な 基 礎 単 位 カテゴリー 製 品 事 業 の 数 しかし Iansiti and Levien(2004)はここで 古 いニッチが 持 続 することは 必 要 ではないとし ている ここまでエコシステムの 生 成 条 件 や 健 全 性 などのエコシステムのフレームワーク を 見 てきたが 次 の 節 ではエコシステム 内 にあるその 個 々の 要 素 の 役 割 を 明 らかにしてい く 2-4 エコシステム 内 のプレイヤーの 役 割 複 雑 なネットワーク 構 造 が 効 率 的 安 定 的 に 機 能 するにはハブの 存 在 が 必 要 である ハ ブは 異 なるネットワーク ノード 同 士 が 相 互 に 結 びつく 可 能 性 を 容 易 にすることで 生 産 性 の 改 善 や 成 長 の 実 現 に 必 要 な 調 整 や 統 合 に 関 わる 複 雑 さを 低 減 し さらにさまざまな 種 類 の 環 境 の 変 化 に 対 する 堅 牢 性 も 高 めてくれる しかしすべてのハブがそのような 効 果 を もたらすとは 限 らない 組 織 がどのような 行 動 をするかによって 決 定 するのである(Iansiti and Levien 2004 88-90 頁 ) ここではまずエコシステムを 構 成 するメンバーの 役 割 を 明 らかにし それらの 行 動 によってエコシステムにどのような 効 果 をもたらすのかを 見 て いく(Iansiti and Levien 2004 88-100 頁 ) キーストーン この 理 論 での 鍵 となる 重 要 な 役 割 である キーストーンはエコシステム 内 で 不 相 応 に 生 産 性 を 減 少 させる 種 を 取 り 除 いたり その 数 を 制 限 することでエコシステ ムの 生 産 性 を 高 めることができる またキーストーンが 確 実 に 生 き 残 るためにはエコシス テムの 安 定 性 を 高 めることであるため 多 様 性 を 高 めるために 働 きながらも 安 定 性 を 維 持 するようにも 努 める このように 健 全 性 を 積 極 的 に 改 善 していくため その 結 果 自 社 も 持 続 的 なパフォーマンスにより 利 益 を 得 ることができる エコシステム 内 での 影 響 力 は 大 きいが 物 理 的 な 存 在 感 は 一 般 に 小 さい 支 配 者 支 配 者 とキーストーンでは 以 下 の 2 点 から 分 けることができる 一 つ 目 はエコ システム 内 での 物 理 的 な 存 在 量 といった 指 標 で 支 配 者 はキーストーンに 比 べエコシステ ムの 多 くを 占 有 する 二 つ 目 は 垂 直 的 水 平 的 に 統 合 し その 企 業 の 機 能 を 乗 っ 取 ったり 排 除 したりと 侵 略 的 な 点 である つまり エコシステムでの 価 値 創 出 の 大 半 を 単 独 で 行 っ たり その 価 値 を 自 社 のみで 独 占 してしまう ハブの 領 主 支 配 者 には 2 つのタイプがいる 上 記 のようなネットワークの 大 部 分 をコ ントロールし 価 値 創 出 と 価 値 獲 得 の 双 方 に 支 配 していくタイプとハブの 領 主 のようにネッ トワークはコントロールしないが できるだけ 多 くの 価 値 を 強 奪 するタイプである キー 7

ストーンはエコシステムでの 価 値 創 出 と 価 値 獲 得 のバランスを 注 意 深 く 考 慮 しなければな らない その 配 分 を 間 違 うとキーストーンも 領 主 へと 変 わってしまうかもしれない ニッチプレイヤー エコシステムにはキーストーンと 支 配 者 に 加 えて 第 3 の 種 ニッ チが 存 在 する ビジネスエコシステムではニッチは 一 部 のネットワーク 資 源 を 利 用 しなが ら 他 社 と 差 別 化 を 図 り 自 社 の 専 門 性 に 特 化 した 価 値 を 生 み 出 し 自 らで 獲 得 する ニッチ 企 業 個 々ではエコシステムに 対 し 大 きな 影 響 力 は 持 たないが 集 合 的 にはその 総 数 多 様 性 においてエコシステムの 大 部 分 を 占 める 先 行 研 究 を 踏 まえて Moore のエコシステムができるまでの 生 成 条 件 から Iansiti and Levien のシステム 内 の 健 全 性 やプレイヤーの 役 割 などを 見 てきたが 彼 らもまた 武 石 李 と 同 じようにエコシス テム 内 の 中 核 となる 企 業 そして 各 要 素 はシステムの 健 全 という 共 通 の 目 的 を 持 っている ことが 分 かる また Iansiti and Levien は 著 書 の 中 で 生 産 過 程 でのエコシステムの 事 例 を 多 く 提 示 していたが 本 論 文 では 武 石 と 李 によるビジネスエコシステムの 概 念 をベースに 日 韓 の 音 楽 業 界 の 流 通 の 変 化 やその 違 いに 焦 点 を 当 てて 見 ていく さらにその 流 通 の 変 化 に 対 して 両 国 間 がどのようにエコシステムを 変 化 させてきたのか 健 全 度 や 中 核 企 業 の 役 割 を 踏 まえながら 日 韓 音 楽 業 界 の 違 いを 追 っていく 事 例 分 析 日 韓 音 楽 業 界 3-1 世 界 から 見 た 日 韓 音 楽 業 界 まずは 日 韓 音 楽 業 界 の 市 場 規 模 を 見 ていこう 冒 頭 で 述 べたようにここ 15 年 間 で CD の 売 上 が 大 きく 落 ちている 日 本 であるが 世 界 規 模 でみると 2009 年 日 本 の 音 楽 市 場 はアメ リカに 次 いで 2 位 の 市 場 規 模 であり アメリカと 日 本 で 世 界 市 場 の 半 分 を 占 めている 君 塚 によると 多 くの 分 野 の 経 済 活 動 において 国 外 マーケットを 視 野 にいれることは 当 たり 前 になっているが 日 本 の 音 楽 産 業 は 国 内 アーティスト 達 で 一 定 の 規 模 が 保 てる 内 向 き の 市 場 なのである ビジネス 面 だけ 考 えればリスクの 高 い 海 外 進 出 を 目 指 す 必 要 性 はな い 一 方 韓 国 の 音 楽 市 場 は 世 界 上 位 10 カ 国 にも 入 らない 規 模 で 日 本 と 比 べると 約 28 分 の 1 に 過 ぎない 小 さなマーケットであり 隣 国 である 日 本 をターゲットに 定 める K-POP ア ーティストが 多 いのは 当 然 である( 君 塚 2011 70-72 頁 ) 近 年 東 南 アジアを 中 心 に 積 極 的 に KPOP を 推 し 進 めているのは 韓 国 内 では 市 場 が 小 さいため 大 きなマーケットである 海 外 に 進 出 せざるを 得 なかったという 背 景 がある 8

スペイン, 246 イタリア, 252 オランダ, 265 オーストラリア, 382 フランス, 948 その 他, 2748 アメリカ, 4632 ドイツ, 1533 イギリ ス, 1574 日 本, 4050 音 楽 産 業 総 売 上 金 額 の 世 界 上 位 10 カ 国 とシェア(2009 年 のパッケージ 売 上 音 楽 配 信 著 作 権 収 入 を 合 計 したもの) 国 際 レコード 産 業 連 盟 Recording Industry in Numbers 2010 また 市 場 規 模 だけでなく その 内 訳 にも 両 国 では 大 きな 違 いがある IFPI によると 2011 年 の 日 本 の 音 楽 市 場 はパッケージ 売 上 75% 有 料 音 楽 配 信 売 上 22%の 内 訳 に 対 して 韓 国 の 音 楽 市 場 ではパッケージ 売 上 44% 有 料 音 楽 配 信 売 上 が 54%となっており ネットやモ バイルでの 配 信 が 過 半 数 を 超 えている 結 果 となった またこのとき 日 本 はパッケージ 売 上 だけの 順 位 だと 世 界 1 位 である なぜこのように 両 者 間 で 大 きく 流 通 過 程 で 違 いが 起 き たのだろうか 次 の 節 では 日 韓 共 に CD 売 上 がピークだった 90 年 代 の 音 楽 市 場 そして CD 売 上 に 大 きく 関 わっていたテレビ 産 業 との 関 わりを 見 ていく 3-2 90 年 代 CD の 誕 生 によって 急 成 長 した 大 衆 音 楽 3-2-1 J-POP K-POP の 誕 生 J ポップ という 言 葉 が 誕 生 した 1988 年 それから 10 年 後 の 1998 年 の 間 に 日 本 のレ コード 生 産 金 額 は 3429 億 円 から 6074 億 円 と 市 場 規 模 がほぼ 2 倍 に 成 長 した( 烏 賀 陽 2005 26 頁 ) この 急 成 長 の 要 因 には CD の 登 場 が 挙 げられる CD が 登 場 するまでのアナログ 時 代 レコードプレイヤーにアンプ スピーカーなどコンポをそろえて LP を 楽 しむことがで きたのは 購 買 力 の 高 い 層 でその 中 心 は 成 人 男 性 だった この LP に 対 して 補 完 的 な 役 割 を 担 っていた 音 楽 メディアがカセットテープである レコードを 日 常 的 に 購 買 力 のない 層 若 者 や 女 性 などはラジオやレンタルレコード 店 や 友 人 から 借 りたレコードをカセットに 録 音 し ラジカセ カセットテープウォークマンで 聞 くというのが 一 般 的 な 姿 だった LP を 9

好 む 層 は 高 価 な 再 生 装 置 をそろえているだけあり 音 質 に 敏 感 であり クラシック ジャ ズなど 生 楽 器 を 多 用 する 音 楽 あるいはロックの 中 でも 欧 米 の 洋 楽 を 好 む 人 が 多 かったが カセットテープを 使 用 していた 層 はロックやフォーク ニューミュージック 歌 謡 曲 を 好 んで 聞 いていた このように CD 誕 生 以 前 のアナログ 時 代 には 再 生 機 器 の 違 いによって 年 齢 層 性 別 所 得 層 好 む 音 楽 のジャンルの 違 いが 明 確 に 分 かれていた しかし CD 誕 生 後 ソニーが CD を 音 楽 メディアとして 普 及 させるためにハード 部 分 の 再 生 機 器 を 製 造 価 格 の 半 分 以 下 で 販 売 するという 戦 略 が 功 を 奏 し 誰 もが 再 生 機 器 を 購 入 できるようになっ た アナログ 時 代 にあった 再 生 機 器 による 違 いは CD により 平 準 化 し またそれまでハー ドにかけていたお 金 をソフトの 部 分 に 回 せるようになった また 90 年 代 にヒットソングを 生 む 購 買 層 として 10 代 の 若 者 や 女 性 が 大 きな 影 響 を 持 ち 始 めたのも CD 誕 生 による 変 化 で ある このように 新 しい 時 代 の 幕 開 けに 音 楽 産 業 が 用 意 した 邦 楽 歌 謡 曲 にかわる 新 しいブランド 名 が J-POP でいえるのではないかと 烏 賀 陽 は 述 べている( 烏 賀 陽 2005 34-44 頁 ) 一 方 で 90 年 代 の 韓 国 音 楽 産 業 も 大 きな 変 化 を 迎 えている 90 年 代 韓 国 のレコード 産 業 は 成 長 と 下 落 を 繰 り 返 した 1997 年 に 4104 億 ウォン( 現 在 のレートで 約 348 億 円 )に 達 す るが その 後 IMF 経 済 危 機 により 下 落 し そして 2000 年 まで 増 加 していった また 90 年 代 は 日 本 同 様 韓 国 歌 謡 業 界 にも 大 きな 変 化 が 訪 れた それまではバラードやトロット( 日 本 で 言 う 演 歌 )が 中 心 だった 韓 国 歌 謡 業 界 であったが 90 年 代 初 めに ソテジワアイドル の 登 場 により 現 在 の 韓 国 の 音 楽 のスタイルが 方 向 づけられた 彼 らはパワフルなダンスと ラップという 今 までにないジャンルの 歌 を 歌 い 爆 発 的 な 人 気 を 集 め また 韓 国 にミュー ジックビデオの 文 化 を 定 着 させた その 後 H.O.T ジェクスキス 神 話 G.O.D な ど 男 性 グループを 筆 頭 に 韓 国 音 楽 業 界 はアイドルグループ 中 心 になり 第 1 次 アイドルブ ームが 巻 き 起 こった( 韓 国 台 湾 アジアエンタメ ブロコリ) 3-3 2000 年 代 デジタル 音 源 配 信 誕 生 による 音 楽 消 費 スタイルの 変 化 90 年 代 順 調 に 売 り 上 げを 伸 ばしていた CD 産 業 だが 日 本 では 1998 年 韓 国 では 2000 年 にそれぞれ 頭 打 ち 状 態 になり その 後 2000 年 代 には 両 国 とも 減 少 の 一 途 を 辿 っている その 背 景 には MP3 プレイヤーや P2P 技 術 を 用 いたファイル 共 有 ソフトの 誕 生 によって 違 法 配 信 や 音 楽 の 共 有 また CD 海 賊 版 の 蔓 延 化 などがあげられる これにより 誰 もが 簡 単 に 音 源 を 低 コストで 手 に 入 れることができるようになった また 携 帯 電 話 の 普 及 が 進 み 通 信 費 コストが 上 がり その 分 CD 購 入 の 余 力 がなくなったなど CD 売 り 上 げ 減 少 に 拍 車 をかけた 下 のグラフを 見 てもらえばわかるように 韓 国 の CD 売 上 は 日 本 以 上 に 急 速 に 落 ちていった このようにインターネットやモバイルの 普 及 は 大 きく 音 楽 の 消 費 パターンが 変 えた この 節 では 技 術 革 新 によって 変 わっていった 音 楽 消 費 スタイルに 対 し 日 韓 音 楽 業 界 ではどのように 対 応 していったのかを 見 ていく 10

韓 国 レコード 産 業 売 上 4500 4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 35303800 4104 3733 2861 1833 1338 1087 848 788 811 802 823 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 単 位 ( 億 ウォン) (サ) 韓 国 音 楽 コンテンツ 産 業 協 会 資 料 編 集 3-3-1 日 本 のデジタル 音 源 配 信 システム 1999 年 に NTT ドコモがiモードとして 始 めた 着 メロを 始 まりに それまで 別 の 産 業 で あったモバイルと 音 楽 業 界 の 関 係 性 が 変 化 していった その 後 ドコモに 続 き KDDI ボーダ フォンが 参 入 していき 着 メロはどの 携 帯 でも 楽 しめるようになりモバイル 音 楽 は 徐 々に 一 般 的 になっていった 2002 年 には KDDI が 楽 曲 の 一 部 を 切 り 取 って 携 帯 電 話 の 着 信 音 に できるサービス 着 うた を 発 表 した このサービスは 順 調 に 利 用 が 伸 び サービス 開 始 から 一 年 半 で 着 うたの 累 計 利 用 件 数 が 一 億 曲 を 突 破 し 100 億 円 前 後 の 売 上 を 確 保 した( 日 本 経 済 新 聞 2004 年 7 月 10 日 11 頁 ) しかしこの 着 うたと 着 メロは 著 作 権 の 観 点 では 大 きく 異 なる 着 メロは 作 曲 者 の 著 作 権 だけが 関 係 するのに 対 して 着 うたは 作 詞 家 作 曲 家 のほかに 実 演 家 ( 歌 手 演 奏 者 ) レコード 製 作 者 などが 関 係 してくるため 楽 曲 使 用 許 可 を 得 ることを 考 えるとこのサービスを 提 供 できるのはおのずと 限 られる ( 武 石 李 2005 78 頁 ) こういった 著 作 権 の 話 があるため 原 盤 権 を 所 有 しているレコード 会 社 が 市 場 に 参 入 しやすい レコード 会 社 が 共 同 出 資 して 作 られたレーベルモバイル( 現 在 のレコチョク) がモバイル 音 楽 市 場 で 成 功 できたのはこれが 一 つの 要 因 であろう 着 うたに 引 き 続 き 2004 年 に KDDI は 携 帯 電 話 に 音 楽 を 一 曲 まるごとダウンロードできる 音 楽 配 信 サービス 着 う たフル を 発 表 し 開 始 1 ヶ 月 後 にダウンロードが 100 万 曲 を 超 えるなど 瞬 く 間 に 広 まっ ていった ( 日 本 経 済 新 聞 2004 年 12 月 28 日 31 頁 ) これをきっかけに 携 帯 電 話 が 音 楽 を 聴 くツールとして 変 わっていった 着 うたや 着 うたフルの 誕 生 後 の 2006 年 には 有 料 音 楽 配 信 の 市 場 規 模 が 約 534 億 円 と 前 年 比 1.5 倍 に 膨 らみ このうち 約 9 割 が 携 帯 電 話 向 けのものが 占 める 結 果 となった このと き 大 手 レコード 会 社 をきっかけに 新 しい 料 金 体 系 も 発 表 され 量 販 競 争 が 勃 発 した エイ 11

ベックス マーケティングは 月 額 580 円 で 30 曲 ダウンロードできるサービスを 開 始 それ に 対 してユニバーサルミュージックは 長 い 楽 曲 を 複 数 の 着 うたに 分 割 し 歌 詞 の 内 容 など ストーリー 仕 立 てに 順 番 に 配 信 する 着 うたドラマ サービスを 始 めた CD の 市 場 規 模 が 縮 小 するなか レコード 会 社 は 積 極 的 にモバイル 音 楽 配 信 に 力 を 注 いでいった( 日 経 産 業 新 聞 2007 年 8 月 28 日 2 頁 ) しかしこの 好 調 なモバイル 音 楽 配 信 も 長 くは 続 かなかった 2009 年 にはモバイル 配 信 が 大 きく 牽 引 していた 音 楽 配 信 市 場 の 伸 びが 鈍 化 また 着 うた 平 均 ダウンロード 数 は 08 年 比 で 3 割 減 という 結 果 に 至 った この 原 因 には 携 帯 端 末 の 出 荷 の 減 少 や 無 料 ゲームや 個 性 を 示 すブログへと 嗜 好 の 変 化 があげられる( 日 本 経 済 新 聞 2010 年 3 月 10 日 35 頁 ) またスマートフォンの 普 及 もあるなか 着 うたフルを 携 帯 電 話 からスマホに 対 応 させることが 遅 れたのも 要 因 の 一 つに 挙 げられるだろう さてモバイル 音 楽 配 信 に 的 を 絞 って 見 てきたが 次 に 韓 国 のデジタル 音 源 システムを 見 たのち あらため て 日 韓 のデジタル 音 源 配 信 システムについてみていこう 3-3-2 韓 国 のデジタル 音 源 配 信 システム 1990 年 代 から 韓 国 では 国 家 が 主 導 して 通 信 網 の 構 築 に 莫 大 な 予 算 を 投 資 し 家 庭 でも 手 軽 に 100mbps 級 の 超 高 速 通 信 網 が 使 用 できるようにするなど インターネットの 普 及 を 進 めてきた 時 を 同 じくして MP3 が 誕 生 し それまで 順 調 に 推 移 していた CD 売 上 が 急 降 下 し 始 めた この 背 景 には 日 韓 の 著 作 権 管 理 の 認 識 の 違 いが 関 係 しており 韓 国 では 音 楽 流 通 会 社 だけでなく 本 来 著 作 権 を 保 護 すべき 立 場 にあるレコード 会 社 や 作 詞 作 曲 家 の 間 でも 著 作 権 管 理 の 認 識 が 薄 いという 問 題 があるほどだ( 武 石 李 2005 76 頁 ) インタ ーネットの 普 及 著 作 権 認 識 の 甘 さから 2000 年 に 始 まったバグズミュージック(ストリー ミング 方 式 )やソリバダ(P2P 方 式 )はのちに 提 訴 され 2005 年 にはどちらも 有 料 化 へと 移 行 していった ( 日 経 産 業 新 聞 2005 年 3 月 22 日 ) しかし そんな PC による 違 法 ダウン ロードが 猛 威 をふるっている 中 通 信 キャリアのサービスは 唯 一 合 法 ダウンロード サー ビスとして 定 着 していった 本 論 文 ではその 中 でも 最 大 手 の 無 線 キャリア 通 信 である SK Telecom(SKT)の MelOn サービスの 事 例 を 見 ていく SKT は 携 帯 電 話 の 普 及 により 音 楽 を 携 帯 電 話 の 着 うたで 使 えるメロディーコール 着 メロなどの 新 しい 音 楽 の 形 態 に 目 をつけ 大 規 模 な 資 本 を 投 じて 市 場 の 先 取 りに 乗 り 出 し た その 際 SKT は PC とケータイを 併 せた 初 の 配 信 サービスを 始 めたという 点 が 大 変 意 味 深 い 違 法 ダウンロードが 横 行 するなか 同 社 はあえてインターネットのポータルサイト を 立 ち 上 げ ブラウザ 兼 用 の 音 楽 ソフトウェアを 開 発 し 会 員 制 中 心 の 音 楽 サービス MelOn をスタートしたのである MelOn はユーザーの 半 分 が 携 帯 電 話 の 他 に MP3 プ レイヤーを 所 持 していることに 着 目 し 一 度 自 社 のポータルサイトで 購 入 するとその 楽 曲 をパソコン ケータイ PDA MP3 プレイヤーなどあらゆるデバイスに 使 いまわすことが できる 世 界 初 のユビキタス 音 楽 志 向 のサービスを 提 供 した また MelOn は 月 額 制 でのスト リーミングだけでなく 一 曲 ごとの 購 入 やレンタルと 所 有 を 混 合 したものなど 低 価 格 で 幅 広 12

いサービスを 提 供 したことでさまざまな 顧 客 のニーズに 対 応 した このようなマルチデバ イス 化 や 低 価 格 でのサービス 提 供 により 有 料 化 が 定 着 しているモバイル 分 野 と 無 料 認 識 が 一 般 化 されている 有 線 分 野 を 統 合 し 多 くの 顧 客 の 獲 得 へとつなげていった( 崔 2009 364 365 頁 ) 3-3-3 日 韓 のデジタル 化 への 対 応 の 違 い 上 記 で MelOn のマルチデバイス 化 によるデジタル 音 源 配 信 を 述 べたが 驚 くべきことに 日 本 でこの 動 きが 高 まったのはここ 2 3 年 の 出 来 事 である これまで 日 本 では 音 源 配 信 サ ービスは 著 作 権 保 護 の 観 点 が 強 く 携 帯 電 話 や 音 楽 プレイヤーなど 市 場 が 断 絶 している 状 況 であったが アップルが 始 めた DRM(デジタル 著 作 権 管 理 )なし の 音 楽 配 信 によってそ れが 大 きく 変 わりつつある 2012 年 1 月 にアップル 日 本 法 人 は itunes イン ザ クラウ ドを 日 本 に 導 入 することを 発 表 した これは itunes ストアで 購 入 した 楽 曲 をクラウド 上 で 一 括 管 理 し 複 数 の 機 器 で 楽 しめるサービスだ また iphone で 購 入 した 楽 曲 をクラウドを 介 してすぐにパソコンでも 聴 けるなど 相 互 作 用 を 高 めた( 日 本 経 済 新 聞 2012 年 2 月 23 日 3 頁 ) ソニーも 対 抗 して 同 年 7 月 にクラウドベースの 定 額 性 音 楽 配 信 サービス Music Unlimited を 開 始 した これは 月 額 1480 円 で 1000 万 曲 以 上 が 聴 き 放 題 のサブスクリプ ション 型 のサービスで 海 外 では 2010 年 にスタートしており 日 本 でもついに 利 用 が 可 能 と なった しかし 韓 国 をはじめ 他 の 国 よりもサービスへの 対 応 が 遅 かったのは これは 日 本 のレコード 会 社 が 著 作 権 をたてに 支 配 者 になっていったからではないだろうか そのため エコシステムを 拡 大 し 再 形 成 していくのに 遅 れがでたのではないだろうか 日 本 レコード 協 会 の 日 本 のレコード 産 業 2012 によると 有 料 音 楽 配 信 は 2009 年 を 頂 点 に 年 々 減 少 傾 向 にあり また 内 訳 を 見 てみると 有 料 音 楽 配 信 売 上 の 8 割 をモバイルが 占 めている 状 態 である クラウド 化 以 前 にも itunes は 日 本 に 上 陸 していたにも 関 わらず 有 料 音 楽 配 信 売 上 の 衰 退 が 着 うたの 売 上 減 少 と 重 なっているのをみるとモバイルに 依 存 し ていたのがわかる 他 国 よりもエコシステム 形 成 が 遅 れた 日 本 は 今 後 インターネットに 上 手 くシフトできるのであろうか 一 方 で MelOn の 事 例 を 見 ると 日 本 と 比 べいち 早 くマルチデバイス 化 した 韓 国 であるが やはりその 背 景 には 著 作 権 保 護 に 関 する 認 識 が 日 韓 で 異 なっていたためであろう インタ ーネットとモバイルをいち 早 く 統 合 した 結 果 今 では 有 料 音 楽 配 信 市 場 は CD 売 上 を 超 え るほど 成 長 していった 元 々アメリカのようにシングルでの 販 売 ではなくアルバムでの 販 売 スタイルであったが 今 ではデジタルシングルとして 配 信 限 定 の 楽 曲 がリリースされる ことも 多 い こうしたデジタルシングルは アルバムが 出 た 際 に CD に 収 録 されることも あるがそのまま 配 信 のみで 終 わってしまうこともしばしばある(so-net K-POP 基 礎 知 識 ) しかし 韓 国 ではこのデジタル 音 源 の 増 加 は 喜 ばしいことばかりではなく 収 入 分 配 の 問 題 もある 韓 国 では 日 本 と 違 いレコード 会 社 と 流 通 業 者 が 異 なっているため この 流 通 業 者 に 多 くマージンを 取 られている 現 状 だ デジタル 化 されたときにレコード 会 社 ではなく 13

他 の 産 業 からエコシステムに 入 ってきたためであろう 現 在 では 分 配 に 関 して 法 改 正 も 進 んでいるが これら 問 題 は 著 作 権 認 識 が 曖 昧 だったからこそ 起 こったのだろう しかしな がら CD 売 上 の 急 激 な 減 少 に 関 わらず 音 楽 業 界 自 体 の 売 上 は 安 定 を 保 っている その 理 由 にはそれまで 韓 国 で 定 着 していなかったライブ 市 場 での 売 上 の 増 加 などが 挙 げられるが やはり 大 きな 要 因 となったのは 近 年 見 られる K-POP のグローバル 化 が 挙 げられるだろ う 次 の 節 では 韓 国 のグルーバル 化 に 伴 ってさらなるエコシステムの 拡 大 をみせる 韓 国 音 楽 市 場 を 見 ていこう 3-4 巨 大 化 する 韓 国 の 音 楽 エコシステム 前 の 節 では 韓 国 のデジタル 化 に 対 してのエコシステムの 変 化 を 見 てきたが そこでデジ タル 化 にいち 早 く 対 応 したからこそグローバル 化 へとつなげていけたと 私 は 考 える ここ ではグローバル 戦 略 論 に 関 しては 多 くは 述 べないが K-POP がグローバル 化 していったの は YouTube を 使 った 動 画 配 信 がきっかけと 言 われている( 木 戸 2011 29 頁 ) YouTube では 無 料 で 動 画 が 配 信 されるため 日 本 では 規 制 もあったが MP3 合 法 化 への 対 策 も 早 かっ た 韓 国 ではこれをプロモーションツールとして 用 いた 少 女 時 代 が 日 本 デビュー 時 に 行 っ たショーケースで 約 2 万 人 の 観 客 を 集 めたのも YouTube の 影 響 があったといえるだろう そしてこの K-POP がグローバル 化 していくことに 政 府 が 目 を 付 けていった この 節 では 政 府 や 観 光 産 業 をもエコシステムに 取 り 入 れていった 韓 国 音 楽 業 界 を 詳 しく 見 ていきたいと 思 う 3-4-1 政 府 と 音 楽 業 界 なぜ 政 府 が 積 極 的 にコンテンツを 支 援 していったのか それは 韓 国 コンテンツいわゆる 韓 流 は 韓 国 経 済 を 活 性 化 させるための 起 爆 剤 なのだ 例 えば ある 歌 手 が 流 行 するとまず 彼 らに 関 連 する 商 品 DVD や CD キャラクターグッズの 販 売 が 増 加 する それらの 影 響 で さらに 彼 らに 対 する 関 心 が 強 くなると 次 は 広 告 を 務 める 商 品 を 購 入 し 韓 国 商 品 の 販 売 が 増 加 する また 新 大 久 保 で 彼 らが 好 きな 韓 国 料 理 を 食 べたり 握 手 会 やライブのために 韓 国 へ 行 きそのついでに 観 光 をしたりと どんどん 韓 国 文 化 へと 触 れる 機 会 が 増 えてくる このころには 歌 手 が 好 きから 韓 国 大 好 きという 風 に 意 識 が 変 化 し 韓 国 への 好 感 が 高 まっ ていく( 酒 井 2012 35 頁 ) なぜ 近 年 韓 国 歌 手 が 日 本 に 来 るのかを 日 韓 の 音 楽 市 場 の 違 いを 見 ながら 説 明 したが も ちろん 海 外 進 出 には 大 きな 投 資 が 必 要 でありまたその 投 資 を 回 収 できないリスクもはらん でいるため 大 きなレコード 会 社 しか 海 外 進 出 できない しかし 政 府 が 国 策 として 所 属 アー ティストが 少 ない 小 さなレコード 会 社 を 支 援 していった それではその 政 府 の 対 策 を 事 例 とともに 詳 しく 見 ていこう 2009 年 5 月 7 日 文 化 産 業 の 振 興 発 展 を 効 果 的 にサポートするため 文 化 産 業 振 興 基 本 法 31 条 に 基 づき それまでにあった 放 送 映 像 やソフトウェア 文 化 ゲーム 産 業 振 興 院 をひ 14

とつに 統 合 して 韓 国 コンテンツ 振 興 院 (KOrea Creative Content Agency 通 称 KOCCA)を 公 共 機 関 として 設 立 した 韓 国 のコンテンツ 産 業 が 創 造 経 済 をリードするグローバルリーダ ーに 成 長 できるように 支 援 事 業 を 繰 り 広 げており 日 本 アメリカ 中 国 ヨーロッパに 事 務 所 を 置 いている 具 体 的 な 事 業 としては 制 作 海 外 進 出 人 材 養 成 CT 融 合 コンテン ツ 施 設 の 構 築 / 運 営 など 多 岐 に 渡 っている 音 楽 コンテンツに 関 しては さまざまなジ ャンルのミュージシャンの 発 掘 戦 略 的 な 広 報 支 援 を 通 して 韓 国 内 の 音 楽 産 業 の 創 作 底 辺 を 拡 大 また 日 本 事 務 所 では 日 本 コンテンツ 産 業 のデータを 収 集 流 通 システムを 把 握 し それらの 情 報 を 韓 国 企 業 に 提 供 さらにはトータル コンサルティングまで 行 っている (KOCCA 日 本 事 務 所 HP 内 ) そして 2011 年 韓 国 の 音 楽 事 務 所 であるスター 帝 国 所 属 のアイドルグループ ZE:A が 海 外 進 出 に 際 し 韓 国 大 衆 音 楽 海 外 進 出 プロジェクト 支 援 事 業 の 支 援 を 受 けた 会 社 代 表 であるシン ジュハク 氏 は 弊 社 のような 中 堅 事 務 所 が 海 外 進 出 をし CD 制 作 やライ ブ プロモーション 活 動 するとなると 巨 額 の 投 資 が 必 要 となるので 海 外 進 出 に 二 の 足 を 踏 んでいたが 支 援 金 のおかげでその 準 備 ができました ( 酒 井 2012 71 72 頁 )と 述 べて いる 3-4-2 観 光 産 業 と 音 楽 業 界 上 では 政 府 が 音 楽 業 界 のエコシステムへ 入 りこんでいく 理 由 と 政 府 の 実 際 の 支 援 してい る 例 をみてきたが 韓 国 の 音 楽 業 界 は 観 光 産 業 とも 結 びついていった 2012 年 9 月 9 日 韓 国 の 仁 川 (インチョン)で 仁 川 都 市 公 社 が 主 催 のもと 仁 川 K-POP コンサート 2012 が 開 催 された 仁 川 はソウルから 電 車 で 約 1 時 間 ほどの 都 市 で 大 きな 国 際 空 港 があり コ ンサートは 仁 川 ワールドカップ 競 技 場 で 行 われた 出 演 者 には 日 本 でもヒットを 飛 ばした KARA や 超 新 星 BOA にはじまり SHINee や IU 4minute など 日 本 でもデビューを 果 たしている K-POP 歌 手 や 韓 国 でデビューしたばかりの 新 人 など 多 彩 な 顔 ぶれだった( 韓 国 観 光 公 社 公 式 サイト 内 ニュースより) 私 はそのときちょうど 韓 国 に 旅 行 中 で 友 達 に 誘 われ ライブに 行 ったのだが 観 覧 料 金 が 無 料 だったことには 驚 いた また 一 般 的 なライブとは 違 ってライブが 始 まる 前 に 仁 川 の 観 光 に 関 するアンケートの 記 入 や 舞 台 で 市 長 があいさ つをしていた また 観 光 客 は 優 遇 措 置 で 舞 台 目 の 前 のいわゆるアリーナ 席 で 現 地 の 方 は 後 方 のスタンド 席 であった 韓 国 芸 能 ニュース wow!korea によるとこのコンサートで 3 万 8 千 人 の 観 客 を 動 員 し そのうち 約 6600 人 は 外 国 人 で 欧 州 東 南 アジアなど 約 60 カ 国 の 地 域 から 訪 れるなど 観 光 産 業 支 援 に 大 きく 結 びついたといえる(wow!Korea 2012 年 9 月 12 日 ) これは 一 つの 事 例 であるが 実 際 韓 国 に 訪 れる 外 国 人 観 光 旅 行 者 も 2004 年 から 増 加 しており 2010 年 には 879 万 人 を 突 破 した( 酒 井 2012 37 頁 ) このライブは 韓 国 内 の テレビでも 放 映 され 結 果 TV 音 楽 観 光 産 業 の 3 つが 結 びついていき どんどんエコシ ステムが 拡 大 化 していった 15

3-5 テレビと 音 楽 業 界 3-5-1 90 年 代 のテレビが 与 えた 音 楽 業 界 への 影 響 これまで CD 誕 生 からデジタル 音 源 への 流 れ またそれに 対 する 日 韓 音 楽 業 界 の 違 いを 見 てきたが この 節 では 音 楽 業 界 と 近 い 存 在 であるテレビ 業 界 とのつながりの 変 遷 を 見 て いく 90 年 代 に CD 産 業 が 急 成 長 を 遂 げた 要 因 にはテレビの 影 響 も 大 きい それ 以 前 にもテレ ビ 業 界 はヒット 曲 に 影 響 を 与 えていたが 80 年 代 以 降 テレビとの タイアップ というビ ジネスモデルが 登 場 したことで 音 楽 業 界 とテレビ 業 界 の 関 係 がより 密 接 になった 数 字 で 見 てみると CD 産 業 が 活 発 だった 90 年 から 98 年 の 間 ずっと オリコン 年 間 シングルセ ールストップ 50 のうち 40 曲 以 上 がタイアップとしてテレビで 流 されていた タイアップ には 基 本 的 に CM とドラマの 2 種 類 がある 前 者 の CM タイアップではレコード 業 界 にと って 莫 大 な 広 告 費 を 使 わずにテレビで 大 規 模 なオンエアができるし スポンサー 企 業 側 は 広 告 料 を 支 払 う 代 わりに 楽 曲 使 用 料 が 免 除 されるというのが タイアップの 基 本 的 な 商 習 慣 で 双 方 にとってうまみの 多 い 取 引 であった またタイアップがヒットすれば 話 題 にもな りやすく 音 楽 の 印 象 によっては 商 品 や 企 業 のイメージも 上 がる このように 両 者 にとっ てはこの 関 係 性 は 共 存 共 栄 のビジネスモデルであった またドラマタイアップが 91 年 にはヒットメーカーとして 大 きく 活 躍 した ドラマ 東 京 ラブストーリー の 主 題 歌 だっ た 小 田 和 正 の ラブストーリーは 突 然 に 同 じく 百 一 回 目 のプロポーズ の 主 題 歌 SAY YES (CHAGE&ASKA)がシングル 年 間 売 上 記 録 の 1 位 2 位 を 占 め 前 年 のシングル 1 位 の 売 上 枚 数 の 約 2 倍 を 売 り 上 げたことから ドラマタイアップの 影 響 力 がどれだけ 大 き かったかわかる ドラマそのものが 人 気 だったということもあるが 曲 自 体 もドラマの 内 容 を 反 映 させて 書 かれており オーケストラやピアノで 演 奏 したメロディだけを 劇 中 に 流 すなど ドラマと 歌 がどちらもヒットするよう 隅 から 隅 まで 設 計 が 行 きとどいていた( 烏 賀 陽 2005 69-76 頁 ) 一 方 で 韓 国 では 日 本 のようなタイアップの 形 はない 日 本 ではドラマでも CM でも 曲 を そのまま 使 用 し その 後 CD として 売 り 出 していくが 韓 国 では CF(commercial film)やド ラマでは 基 本 それぞれのストーリーにあったオリジナルソングを 制 作 し 販 売 することは ない ドラマの 場 合 OST アルバムとして 販 売 されることもあるが 日 本 のようにアーティ ストが 一 曲 一 曲 ずつシングル CD として 売 り 出 すことはない エコシステムの 観 点 で 比 べ てみると 日 本 の 音 楽 業 界 とテレビ 業 界 のように 強 く 相 互 作 用 しているわけではないといえ る 3-5-2 日 韓 での 音 楽 番 組 90 年 代 日 本 では うたばん や HEY!HEY!HEY! など その 後 10 年 以 上 続 く 長 寿 音 楽 番 組 も 誕 生 した 年 代 でもある HEY!HEY!HEY! は 99 年 6 月 21 日 には 番 組 史 上 最 高 の 視 聴 率 28.5%を 記 録 するなど 人 気 音 楽 番 組 で 当 時 は 音 楽 業 界 にとって 大 きな 16

影 響 力 を 与 えていたテレビ 業 界 しかし 近 年 ではゴールデンの 時 間 帯 の 音 楽 番 組 が 相 次 い で 終 了 を 迎 えるなど 日 本 の 音 楽 業 界 とテレビは 遠 ざかりつつある 最 近 ではゴールデンの 時 間 帯 であっても 視 聴 率 が 一 桁 台 に 落 ち 込 むこともあり またかつては 歌 番 組 に 出 演 すれ ば CD の 売 上 につながっていたが CD が 売 れない 今 はあまり 音 楽 番 組 に 出 演 するメリット がなくなったため アーティストの 所 属 事 務 所 やレコード 会 社 が 出 演 に 対 して 消 極 的 にな っているため それらが 原 因 で 番 組 が 打 ち 切 りになったようだ(エキサイトニュース 2012 年 9 月 18 日 ) また 最 近 では 新 しい 形 態 の 音 楽 番 組 も 出 てきており 新 堂 本 兄 弟 火 曜 曲 などトーク を 中 心 にしたバラエティ 要 素 が 含 まれているものや 深 夜 帯 に 放 送 している 音 楽 番 組 も 多 い 他 には 1 組 のアーティストに 焦 点 をあてた Music Lovers や 僕 らの 音 楽 など 音 楽 番 組 の 内 容 自 体 が 以 前 とは 変 化 しつつある またアーティストも 音 楽 番 組 に 出 演 するの ではなく 最 もプロモーション 効 果 が 高 いとされる 朝 の 情 報 番 組 に 日 本 や 海 外 のアーティ ストが 歌 を 披 露 することが 増 えてきている( 君 塚 2012 30 頁 ) 一 方 韓 国 の 音 楽 番 組 は K-POP アイドルブームの 影 響 もあってか 以 前 の 日 本 のように 盛 り 上 がっているようだ 韓 国 では 大 きく 分 けて 4 つの 音 楽 番 組 が 放 送 されている そして 4 つの 音 楽 番 組 に 共 通 しているのは 生 放 送 で 番 組 が 進 行 される 点 で そのもっとも 大 きな 理 由 はその 週 のランキングに 視 聴 者 の 投 票 が 直 接 的 に 反 映 されるシステムを 採 用 しているた めである また 後 で 詳 しく 言 及 するがこのランキング 日 韓 によって 少 し 異 なっているの が 興 味 深 い しかしこの 4 つの 音 楽 番 組 の 基 本 的 なスタイルは 日 本 の ミュージックステー ション にほとんど 似 ているため ここでは 日 本 にない 音 楽 番 組 を 紹 介 していく 近 年 韓 国 ではサバイバル 型 オーディション 番 組 の 流 行 もある 2009 年 から 始 まった ス ーパースターK という 番 組 では 歌 手 志 望 の 一 般 視 聴 者 がデビューを 目 指 してさまざまな 課 題 をクリアしていき ステージ 上 でのパフォーマンスを 披 露 し 有 名 レコード 会 社 代 表 がジャッジを 行 う またその 裏 側 もドキュメンタリー 風 に 見 せていくなど イギリスの ポ ップアイドル のような 番 組 構 成 だ 音 楽 専 門 のチャンネルにも 関 わらず 最 高 視 聴 率 21% を 記 録 し 現 在 シーズン 3 まで 放 映 され 韓 国 内 だけで 応 募 者 は 191 万 人 ( 全 国 民 の 約 25 人 に 一 人 )にまで 上 るほど 人 気 のある 番 組 だ( 君 塚 2012 21 頁 ) 2011 年 からはそれに 影 響 を 受 け 私 は 歌 手 だ という 音 楽 番 組 も 誕 生 した これは 上 記 のオーディション 番 組 のプロフェッショナル 版 で さまざまなジャンルのベテランから 若 手 の 歌 唱 力 を 誇 るアーティストが 参 加 し 一 般 公 募 で 集 められた 500 名 で 審 査 を 行 う こ れは 2 ステージのポイントの 合 算 で 最 下 位 が 脱 落 するというルールでベテラン 歌 手 のプラ イドもかかっており そこも 見 どころの 一 つとなり 人 気 を 集 めている このように 韓 国 の 音 楽 番 組 の 盛 況 ぶりの 一 方 で 音 楽 番 組 が 打 ち 切 りになっていく 日 本 を 見 ると 日 本 の 音 楽 業 界 がテレビ 業 界 から 離 れていっているのがわかる またオリコンの 2012 年 の CD シングル 年 間 ランキングをみても TOP20 には AKB48 グループやジャニー ズグループしかランクインしておらず 90 年 代 のタイアップが CD 売 上 に 影 響 していた 頃 17

とは 明 らか 異 なっている 以 前 はテレビがプロモーションのツールとして 非 常 に 大 きな 役 割 を 果 たしていたが 現 在 ではあまり 影 響 は 少 ないようだ 3-5-3 音 楽 ランキングの 違 いからみるエコシステム 生 成 の 違 い テレビ 産 業 との 関 わりを 見 てきたが 音 楽 番 組 内 でも 用 いられるランキングにも 日 韓 の 違 いがあると 言 及 したが この 節 では 細 かくその 違 いについて 見 ていく 日 本 では 代 表 的 なオリコンリサーチの 週 間 ランキングを 例 に 見 てみよう オリコンモニ ターリサーチによると 統 計 方 法 は 音 楽 映 像 ソフト 販 売 している 全 国 約 28,390 調 査 協 力 店 (CD ショップ レンタルや 書 籍 などを 扱 う 複 合 店 家 電 量 販 店 コンビニストア インタ ーネット 通 販 ジャンル 専 門 店 )の 店 頭 やイベント 会 場 などでの 販 売 実 績 をもとに 毎 週 月 曜 から 日 曜 までの 推 定 売 上 枚 数 に POS データを 基 に 推 定 しているデイリーランキング 協 力 店 からの 売 上 枚 数 を 加 えて 週 間 推 定 売 上 枚 数 を 算 出 している なお JAN コードの 付 与 され た 国 内 盤 を 集 計 対 象 としており CD アルバムのみ 国 内 盤 と 輸 入 盤 を 合 算 集 計 したランキン グとなっている (オリコンモニターリサーチ HP より) つまり オリコンではあくまで CD 販 売 数 をもとにランキングを 算 出 している 一 方 韓 国 には 日 本 ならオリコン アメリカならビルボードという 風 に 日 米 ほど 歴 史 と 権 威 があるチャートが 少 なく テレビ 局 の 番 組 で 独 自 の 基 準 を 設 けているという 状 態 だ KBS の MUSIC BANK Mnet M!カウントダウン の 基 準 を 参 考 に 見 ていく MUSIC BANK は CD 売 上 点 数 5% デジタル 音 源 チャート 点 数 65% 視 聴 者 選 好 度 チャート 点 数 10% 放 送 回 数 20%で 構 成 されている(KBS HP 内 より) また M!カウントダウン では CD 販 売 10% デジタル 音 源 50% 年 齢 別 選 好 度 20% SMS 投 票 5% ライブショ ーパフォーマンス 10% Global 投 票 で 算 出 されている(Mnet ジャパン HP 内 より) ここ で 日 韓 の 音 楽 ランキングの 統 計 の 違 いは はっきりと 異 なっているのがわかるだろうどち らのランキングが 純 粋 に 流 行 っている 曲 を 示 している 指 標 かどうか 判 断 するのが 難 しいが このランキングの 違 いは CD に 重 点 を 置 く 日 本 とデジタル 化 を 受 け 入 れた 韓 国 を 表 してい るともいえる 3-6 日 韓 の CD 販 売 戦 略 これまでエコシステムの 観 点 から 見 てきたが ここで 少 し 日 韓 の CD 販 売 戦 略 の 違 いも 見 ていこう デジタル 音 源 をこれまで 見 てきたが やはり 利 益 の 面 を 考 えると CD のほうがレコード 会 社 やアーティストにとっては 大 きい また 日 本 にとっては 音 楽 市 場 を 支 える 大 きな 資 源 でもあるためそれを 守 っていこうという 動 きが 強 い その 結 果 として 近 年 は CD の 高 付 加 価 値 化 が 進 んでいる 例 えば AKB48 の 握 手 権 や 投 票 権 がそれにあたる またミュージック ビデオ DVD やグッズが 付 いた CD も 発 売 れており 販 売 促 進 へとつなげている 韓 国 でも CD 市 場 は 大 きく 変 化 している 韓 国 では 2000 年 代 前 半 まではシングルレコー 18

ドも 馴 染 みのないものだったが デジタル 音 楽 が 進 むことでシングルと 共 に 5 6 曲 をいれ たミニアルバムが 流 通 し 始 めた アルバムだと 10 曲 以 上 もあるため ダウンロードが 面 倒 になってしまうためミニアルバムにして 気 軽 に 曲 を 選 んでもらうようにした またコアな ファン 向 けに リパッケージ という 販 売 戦 略 もある これは 従 来 の 正 規 アルバムに 新 曲 1 2 曲 を 加 え パッケージを 新 調 して 販 売 するというもので ファン 層 をある 程 度 所 有 してい るアイドルグループを 中 心 に 行 われている CD 戦 略 である( 木 戸 2011 27 頁 ) 3-7 エコシステム 内 の 健 全 度 イノベーション 伝 達 ニッチの 創 出 これはデジタル 化 が 起 こったときの 日 韓 の 対 応 によって 健 全 度 の 違 いがわかるだろう 韓 国 では MP3 誕 生 から 約 5 年 ではマルチデバイス 化 したサービスを 提 供 し 柔 軟 にエコシ ステムを 対 応 させていった 一 方 で 日 本 がそれを 導 入 したのは 2012 年 のことで 韓 国 よりも 7 年 も 後 である またそのときの 有 料 音 楽 配 信 売 上 の 衰 退 を 見 るとイノベーション 伝 達 の 視 点 からみたエコシステム 内 の 健 全 度 は 韓 国 のほうが 高 いと 言 えるだろう 次 にニッチの 創 出 の 観 点 から 考 えてみる 下 の2つの 図 は 日 韓 のデビュー 歌 手 の 推 移 を 表 している 図 1 では CD の 売 上 が 落 ちると 同 時 にデビュー 歌 手 数 も 減 少 傾 向 になり 着 うたや 着 うたフルで 有 料 音 楽 配 信 が 順 調 なときには 増 加 有 料 音 楽 配 信 が 不 調 になれば 減 少 するなどこのグラフは 市 場 に 大 きくリンクしている また 図 2 ではグローバル 化 や 政 府 が 支 援 開 始 など 韓 国 音 楽 業 界 のエコシステムが 拡 大 時 期 とつながっている 両 国 ともデジ タル 化 に 伴 って 音 楽 ソフトが 売 れにくくなっているが 図 1 をみるとデビュー 歌 手 は 数 は それに 反 比 例 している 結 果 である これはニーズが 多 様 化 し それに 対 してレコード 会 社 が 新 しい 歌 手 を 生 産 したからではないのだろうか そしてそれはニッチの 創 出 を 表 してお り 日 本 の 音 楽 エコシステムの 健 全 度 は 減 少 傾 向 にあるといえる 図 1 日 本 の 新 譜 数 とデビュー 歌 手 の 推 移 600 500 400 300 200 100 0 日 本 デビュー 歌 手 の 推 移 25 20 15 10 5 0 新 譜 数 デビュー 歌 手 数 19

図 2 日 本 レコード 協 会 HP 内 統 計 より 作 成 韓 国 デビュー 歌 手 数 推 移 40 35 30 30 34 25 20 15 10 5 0 7 7 10 8 6 10 8 1 5 9 6 7 7 13 18 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 大 韓 民 国 の 大 衆 音 楽 アイドルグループのリスト Wikipedia wikipedia なので 細 かい 数 値 的 には 確 証 は 得 られないが 今 回 はおおまかな 傾 向 でも 日 韓 比 較 がしたかったため 掲 載 またシングルを 売 りだす 習 慣 がないため 新 譜 数 は 不 明 分 析 と 考 察 本 論 では 従 来 の 経 営 戦 略 の 見 かたとは 少 し 異 なるビジネスエコシステムの 視 点 を 用 いて 日 韓 音 楽 業 界 に 起 こった 技 術 革 新 に 対 する 動 きを 見 ていった 両 国 はそれぞれ 世 界 をリードするような 携 帯 会 社 をもち 同 じような 技 術 革 新 が 起 こっ たなか 現 在 の CD 重 視 型 の 日 本 とデジタル 配 信 型 の 韓 国 へと 大 きく 分 かれていった や はり SKT の MelOn の 事 例 が 現 在 のエコシステムの 違 いを 作 ったきっかけであることが 本 論 文 をとおしてわかった 違 法 ダウンロードが 横 行 するなかでのモバイル 音 楽 ビジネス を 行 うには 本 来 は 自 社 のサービスを 脅 かす 可 能 性 のある MP3 プレイヤーは 排 除 すべきで あったが 顧 客 の 半 分 以 上 が 所 有 しているという 点 に 目 を 付 け MP3 プレイヤーを 含 むあら ゆるデバイスに 対 応 させたことが 顧 客 のニーズと 合 致 し 人 気 を 集 めた SKT のマルチデバ イス 化 は 自 社 のおける 環 境 を 十 分 に 考 えられて 生 み 出 されたもので また 顧 客 のニーズに も 合 わされているので 利 用 者 が 増 え その 後 モバイルとネットを 結 びつけた 画 期 的 なサー ビスとなった SKT はこの 理 論 でのキーストーンへの 役 割 を 果 たしたといえる 一 方 で 日 本 のレコード 会 社 は 支 配 者 となり 自 社 の 利 益 のために 著 作 権 を 保 護 してきた 結 果 モバイ ル 音 源 配 信 からネットへの 移 行 が 遅 れ 有 料 音 楽 配 信 売 上 が 下 がる 結 果 となった 有 料 音 楽 配 信 の 内 訳 でモバイルの 割 合 が 高 いのも 著 作 権 保 護 によって 携 帯 音 楽 プレイヤーやモバ イルの 市 場 を 分 断 していたからだろう また MelOn がいち 早 く MP3 を 合 法 化 に 導 いたこ 20

とで それまでの 楽 曲 を 売 るビジネスから 楽 曲 を 無 料 で 配 布 し 認 知 を 高 め 改 めて CD や ライブで 利 益 を 得 るというビジネスにいち 早 くシフトし YouTube を 用 いてグローバル 化 へと 結 びついっていったのであろう 一 方 で 日 本 のレコード 会 社 は 技 術 革 新 以 降 も 著 作 権 を 握 り 支 配 者 としてエコシステム を 狭 めていった テレビ 業 界 からも 遠 ざかっていったが うまく CD の 高 付 加 価 値 化 やラ イブ 市 場 の 拡 大 化 を 成 功 させ 音 楽 業 界 自 体 の 市 場 規 模 は 保 っている また 日 本 の 2012 年 の 音 楽 ソフト 売 上 は 6 年 ぶりに 前 年 比 増 を 記 録 する 結 果 となった(オリコン 2012 年 年 間 音 楽 ソフトマーケットレポート ) Moore や Iansiti and Levien が 唱 えたエコシステム 理 論 か らいうと 支 配 者 がいるエコシステムは 衰 退 していくと 考 えられたが 環 境 が 変 わる 中 で CD を 高 付 加 価 値 化 したりと 従 来 の 資 源 を 用 いて 発 展 させたビジネスを 構 築 し 音 楽 市 場 全 体 の 規 模 をいまだに 保 っている 日 本 を 考 えるとエコシステムを 狭 めたからといって 必 ずしも 失 敗 していくとは 限 らないということが 本 論 文 を 通 してわかった つまりエコシステムの 縮 小 化 やシステム 内 に 支 配 者 がいることが 失 敗 の 要 因 になるので はなく 企 業 の 周 りにある 環 境 や 制 度 を 考 慮 し 戦 略 を 考 えていくことが 重 要 である 21

参 考 文 献 Moore,James F. (1993) Predators and Prey: A New Ecology of Competition Harvard Business Review May/June 75-86 頁 烏 賀 陽 弘 道 (2005) J ポップとは 何 か- 巨 大 化 する 音 楽 産 業 - 岩 波 新 書 木 戸 文 夫 (2011) K-POP 前 線 異 状 アリ! ぴあ 株 式 会 社 君 塚 太 (2012) 日 韓 音 楽 ビジネス 比 較 論 K-POP と J-POP 本 当 の 違 い 株 式 会 社 ア スペクト 崔 圭 皓 (2009) 音 楽 ビジネスの 新 展 開 -デジタル 音 源 配 信 ビジネスを 中 心 に 大 阪 商 業 大 学 論 集 第 5 巻 第 1 号 353-368 頁 酒 井 美 絵 子 (2012) なぜ K-POP スターは 次 から 次 に 来 るのか 韓 国 の 恐 るべき 輸 出 戦 略 朝 日 新 聞 出 版 社 武 石 彰 李 京 柱 (2005) 日 本 と 韓 国 のモバイル 音 楽 ビジネス その 発 展 の 過 程 とメカニズ ム 一 橋 ビジネスレビュー 53 巻 3 号 70-85 頁 イアンシティ マルコ ロイ レビーン(2007) キーストーン 戦 略 杉 本 幸 太 郎 訳 翔 泳 社 経 済 産 業 省 (2009) 音 楽 産 業 のビジネスモデル 研 究 会 報 告 書 エキサイトニュース フジ HEY!HEY!HEY の 終 了 で 浮 き 彫 りになった 音 楽 番 組 を 取 り 巻 く 厳 しい 現 状 2012 年 9 月 18 日 http://www.excite.co.jp/news/entertainment_g/20120918/real_live_11292.html 2013 年 1 月 18 日 韓 国 台 湾 アジアエンタメ ブロコリ 日 本 第 2 次 韓 流 ブームになるか!? http://selection.brokore.com/special/kpopxkbs.html 2013 年 1 月 18 日 KOCCA 日 本 事 務 所 HP http://www.kocca.kr/jpn/index.html 韓 国 観 光 公 社 公 式 サイト 2012 年 8 月 30 日 http://japanese.visitkorea.or.kr/jpn/ma/ma_ja_9_6_1.jsp?cid=1704314 2012/12/29 オリコンモニターリサーチ HP より http://www.oricon.co.jp/rank/index2.html 音 楽 情 報 サイト アールオーロック ro69.jp/news/detail/42721 12 月 14 日 so-net K-POP 基 礎 知 識 http://www.so-net.ne.jp/music/k-pop/boyslesson2_p2.html Mnet ジャパン HP http://jp.mnet.com/m_count/vote.m?mcdmenuid=menu2 KBS HP 内 より http://www.kbs.co.kr/2tv/enter/musicbank/chart/index.html Mnet ジャパン HP http://jp.mnet.com/m_count/vote.m?mcdmenuid=menu2 wow!korea 仁 川 K-POP コンサート 観 客 3 万 8 千 人 動 員 2012 年 9 月 12 日 配 信 http://www.wowkorea.jp/news/enter/2012/0912/10102685.html 2012/12/30 22