戦 争 法 Q& - 安 全 保 障 法 制 は この 国 をどこに 導 くのか- 自 由 法 曹 団 2015 年 7 月 3 日
目 次 Q1 安 倍 内 閣 が 国 会 に 提 出 成 立 させようとしている 安 全 保 障 法 制 は 何 を 決 めようとしているのですか? 安 倍 首 相 は 安 保 法 制 について 戦 争 法 と 呼 ぶことは レッテル 貼 り だといっていますが Q2 備 えあれば 憂 いなし ともいうように 万 が 一 を 想 定 して 準 備 するこ とは 当 然 で 日 本 の 自 衛 力 ( 軍 備 )を 充 実 したり アメリカとの 同 盟 関 係 を 強 めて 北 朝 鮮 や 中 国 に 対 する 抑 止 力 を 強 化 することは 侵 略 を 未 然 に 防 ぐうえで 有 効 ではないでしょうか? Q3 安 倍 首 相 は これまでは 消 極 的 な 平 和 主 義 だったが これからは 積 極 的 平 和 主 義 でいくといいます 受 け 身 で 平 和 を 守 るのではなく よ り 積 極 的 に 能 動 的 に 平 和 を 実 現 するというのは 大 事 なことではないで すか? Q4 自 衛 隊 の 海 外 派 遣 と 海 外 派 兵 とは 違 うのですか?また 政 府 は 戦 闘 目 的 で 自 衛 隊 を 海 外 に 派 遣 することはしないと 言 っていますが 本 当 な のでしょうか? Q5 政 府 は 我 が 国 として 自 主 的 に 判 断 するのであって アメリカの 戦 争 に 巻 き 込 まれることはないといっていますが 本 当 なのでしょうか? Q6 集 団 的 自 衛 権 を 行 使 できる 場 合 は 存 立 危 機 事 態 など 限 られた 場 合 で しかも 厳 格 な 要 件 を 定 めているので 武 力 行 使 の 歯 止 め となるので はありませんか? Q7 専 守 防 衛 とは 何 ですか? 集 団 的 自 衛 権 を 認 めることは 専 守 防 衛 といえるのですか? Q8 今 回 の 法 改 正 によって 自 衛 隊 の 役 割 や 任 務 は 変 わるのでしょうか? Q9 周 辺 事 態 法 を 重 要 影 響 事 態 法 に 代 えるそうですが それはどのような 法 律 ですか?どこが 変 わるのですか? Q10 国 際 平 和 支 援 法 というのはどのような 法 律 ですか これまでの 法 律 とどこが 違 うのですか? Q11 国 際 平 和 支 援 法 に 基 づいて 自 衛 隊 を 海 外 に 派 遣 するには 国 連 総 会 又 は 国 連 安 保 理 決 議 の 存 在 が 要 件 とされていると 聞 きましたが それで 十 分 な 歯 止 めになるのではないですか?
Q12 国 際 平 和 支 援 法 に 基 づいて 自 衛 隊 を 海 外 に 派 遣 するには 例 外 なく 事 前 に 国 会 の 承 認 が 必 要 と 聞 きましたが それで 十 分 な 歯 止 めにはなり ませんか? Q13 重 要 影 響 事 態 に 際 して 実 施 される 後 方 支 援 や 国 際 平 和 共 同 対 処 事 態 に 際 して 実 施 される 協 力 支 援 は 前 線 から 遠 く 離 れた 安 全 な 場 所 で あることを 確 認 して 行 うので 危 険 度 は 高 くなく 自 衛 隊 員 のリスクは これまでと 変 わらない というのは 本 当 ですか? Q14 重 要 影 響 事 態 法 案 と 国 際 平 和 支 援 法 案 には 自 衛 隊 が 海 外 で 捜 索 救 助 活 動 に 従 事 するための 規 定 があると 聞 きました 自 衛 隊 が 海 外 で 捜 索 救 助 活 動 に 従 事 することは 自 衛 隊 の 能 力 を 人 道 支 援 に 活 用 す るものとして 評 価 できるのではないですか? Q15 これまでの 船 舶 検 査 は わが 国 の 平 和 と 安 全 に 関 わる 状 況 でしかで きなかったものを 国 際 社 会 が 一 致 団 結 して 行 う 船 舶 検 査 活 動 にも 参 加 できるようにするためだというのは 本 当 ですか? 国 際 社 会 の 一 員 として の 責 任 を 果 たすためには 必 要 ではありませんか? Q16 国 際 平 和 協 力 法 (PKO 法 )が 改 定 され 保 安 のための 監 視 駐 留 巡 回 検 問 警 護 が 追 加 されますが 自 衛 隊 が 戦 闘 行 為 に 及 んだり 自 衛 隊 員 に 死 傷 者 が 出 たりする 等 のリスクが 高 まることはありません か? Q17 平 和 安 全 法 制 整 備 法 案 では 自 衛 隊 が 米 軍 その 他 の 外 国 の 軍 隊 の 武 器 を 防 護 するために 武 器 使 用 をできるように 自 衛 隊 法 を 改 正 しよう としているようですが どのような 危 険 性 があるのでしょうか? Q18 中 国 の 軍 事 大 国 化 や 覇 権 的 行 為 は 尖 閣 列 島 をめぐる 行 為 や 南 シナ 海 での 行 動 を 見 れば 明 らかで それに 対 抗 するためには 日 本 が 防 衛 力 を 増 強 したりアメリカとの 同 盟 関 係 を 強 化 して 中 国 への 抑 止 力 を 高 める ことは 必 要 な 対 応 措 置 ではないでしょうか? Q19 アメリカの 戦 争 に 日 本 が 参 加 して 死 者 が 出 たという 話 を 聞 いたので すが 本 当 ですか? Q20 国 会 で 3 人 の 憲 法 学 者 がそろって 安 保 法 制 は 違 憲 であると 述 べ ました 多 くの 憲 法 学 者 が 違 憲 であると 言 っています どういう 点 が 違 憲 なのでしょうか?
Q1 安 保 法 制 って 戦 争 法? 安 倍 内 閣 が 国 会 に 提 出 成 立 させようとしている 安 全 保 障 法 制 は 何 を 決 め ようとしているのですか? 安 倍 首 相 は 安 保 法 制 について 戦 争 法 と 呼 ぶことは レッテル 貼 り だといっていますが 現 在 国 会 ( 第 189 回 通 常 国 会 )に 提 出 されている 安 全 保 障 関 連 の 法 案 は 日 本 ( 自 国 )が 攻 撃 された 場 合 だけでなく アメリカ( 他 国 )が 攻 撃 を 受 けた 場 合 であっても アメリカを 攻 撃 した 国 に 対 して 日 本 の 自 衛 隊 が 武 力 行 使 できるとしています( 存 立 危 機 事 態 における 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 ) また 我 が 国 の 平 和 及 び 安 全 に 重 要 な 影 響 を 与 える 事 態 ( 重 要 影 響 事 態 ) や 国 際 社 会 の 平 和 や 安 全 を 脅 かす 事 態 ( 国 際 平 和 共 同 対 処 事 態 )には ア メリカ 軍 やその 他 の 国 の 軍 隊 に 対 し 自 衛 隊 が 後 方 支 援 活 動 や 協 力 支 援 活 動 具 体 的 には 燃 料 や 弾 薬 の 補 給 や 運 搬 などを 行 うとしています これまでは 自 衛 隊 が 海 外 に 出 て 行 ったり 武 器 を 使 うことは できるだけ 避 けるよういろいろな 制 限 が 加 えられてきました 今 回 の 法 改 正 新 法 制 定 は これまでの 制 約 の 多 くを 取 り 払 い より 積 極 的 に 自 衛 隊 が 海 外 で 活 動 できる ようにするものです 日 本 が 直 接 武 力 により 攻 撃 を 受 けた 場 合 に 限 らず ア メリカが 攻 撃 されている 場 合 あるいは 海 外 での 紛 争 に 際 して 平 和 と 安 全 を 実 現 するために 自 衛 隊 の 武 力 を 活 用 しようとするものです あくまでも 非 軍 事 的 な 手 段 で 平 和 と 安 全 を 実 現 しようとするのではな く 平 和 と 安 全 の 実 現 を 名 目 に 自 衛 隊 の 武 力 を 積 極 的 に 使 うことを 正 当 化 しようとする 点 において 戦 争 法 そのものです - 1 -
Q2 目 的 は 戦 争 の 防 止? 備 えあれば 憂 いなし ともいうように 万 が 一 を 想 定 して 準 備 することは 当 然 で 日 本 の 自 衛 力 ( 軍 備 )を 充 実 したり アメリカとの 同 盟 関 係 を 強 め て 北 朝 鮮 や 中 国 に 対 する 抑 止 力 を 強 化 することは 侵 略 を 未 然 に 防 ぐ うえで 有 効 ではないでしょうか? 万 が 一 の 事 態 だとして 相 手 方 との 軍 事 的 衝 突 を 想 定 し そのための 軍 備 増 強 同 盟 強 化 をはかることは 一 見 抑 止 力 の 強 化 に 役 立 つように 見 えます しかし 日 本 の 軍 事 力 を 強 くしたり 世 界 最 強 の 軍 事 大 国 アメリカとの 同 盟 を 強 化 するというのは 武 力 を 誇 示 し 相 手 方 を 威 嚇 することを 意 味 します これは 国 際 紛 争 の 解 決 にあたって 武 力 による 威 嚇 を 禁 じた 憲 法 9 条 の 精 神 に 反 します また この 軍 事 力 で 相 手 方 を 押 さえ 込 むという 考 え 方 には こちらが 軍 備 増 強 を 行 えば 相 手 方 もそれに 対 抗 して 軍 備 を 強 化 するので 無 限 の 軍 拡 競 争 を 起 してしまう( 安 全 保 障 のジレンマ)という 問 題 があります さらには 抑 止 効 果 が 働 かず 失 敗 してしまった 場 合 には 戦 争 に 突 入 し 増 強 した 軍 備 同 士 が 全 面 衝 突 せざるをえません これは 一 か 八 か の 危 険 な 考 え 方 です 現 在 の 兵 器 は 非 常 に 強 力 で 残 虐 なものです これらを 用 いた 全 面 衝 突 が 起 きれば 双 方 に 壊 滅 的 な 被 害 をもたらすことになります そこに 至 らないと しても 軍 備 増 強 は 膨 大 な 支 出 が 必 要 となり 大 増 税 や 財 政 破 綻 の 呼 び 水 に なりかねません そもそも 抑 止 力 論 は 相 手 方 は 思 いとどまるであろうという 仮 定 の 上 に 成 り 立 つ 考 え 方 で その 実 効 性 もよくわかりません 戦 争 がもたらすリスクの 大 きさからすれば とても 備 えあれば 憂 いなし といえるようなものでは ありません - 2 -
Q3 積 極 的 に 平 和 を 実 現 する? 安 倍 首 相 は これまでは 消 極 的 な 平 和 主 義 だったが これからは 積 極 的 平 和 主 義 でいくといいます 受 け 身 で 平 和 を 守 るのではなく より 積 極 的 に 能 動 的 に 平 和 を 実 現 するというのは 大 事 なことではないですか? 安 倍 首 相 の 唱 える 積 極 的 平 和 主 義 というのは 平 和 の 実 現 に 積 極 的 かどうかではなくて 自 衛 隊 など 軍 事 的 組 織 を 使 うことに 積 極 的 という 意 味 です そのため 今 国 会 で 問 題 となっている 安 全 保 障 法 制 では NGOの 活 動 支 援 や 非 軍 事 外 交 について 議 論 しているのではなく 武 器 を 携 えた 自 衛 隊 の 活 動 の 拡 大 が 焦 点 とされているのです いわば 軍 事 積 極 主 義 あるい は 武 力 積 極 主 義 というべきものなのです アメリカは 民 主 主 義 発 展 自 由 市 場 自 由 交 易 の 希 望 を 世 界 の 隅 々に までもたらすために 積 極 的 に 行 動 する (2002 年 ブッシュドクトリン)と して アフガニスタンやイラクで 対 テロ 戦 争 を 積 極 的 に 推 し 進 めてきま した しかし アフガニスタンやイラクでは アメリカの 軍 事 介 入 によって 国 そのものが 破 壊 され 未 だに 平 和 は 実 現 していません これらから 明 らかなように 軍 事 力 で 平 和 が 実 現 されたことなどありませ ん - 3 -
Q4 戦 争 目 的 の 派 兵 では? 自 衛 隊 の 海 外 派 遣 と 海 外 派 兵 とは 違 うのですか?また 政 府 は 戦 闘 目 的 で 自 衛 隊 を 海 外 に 派 遣 することはしないと 言 っていますが 本 当 なのでしょう か? これまで 政 府 は 武 力 行 使 を 目 的 に 自 衛 隊 を 海 外 に 出 すこと( 派 兵 ) は 憲 法 9 条 に 違 反 してできないが 武 力 行 使 を 目 的 としない 場 合 ( 派 遣 )は 禁 止 されていないとしています しかし 派 遣 の 名 のもとに なし 崩 し 的 に 自 衛 隊 を 海 外 に 出 してきました 1991 年 の 湾 岸 戦 争 では 敷 設 機 雷 を 取 り 除 くために 掃 海 艇 を 1992 年 にはカンボジアPKO( 国 連 平 和 維 持 活 動 )に 自 衛 隊 の 部 隊 を 派 遣 しまし た そして 1997 年 に 日 米 間 で 新 防 衛 協 力 のための 指 針 (ガイドラ イン)が 合 意 され 1999 年 には 周 辺 事 態 法 を 制 定 戦 闘 行 為 を 行 う 米 軍 に 対 し 自 衛 隊 が 物 資 の 補 給 輸 送 医 療 通 信 などの 後 方 地 域 支 援 を 行 うことが 定 められました さらに 2001 年 のアメリカのアフガニスタン 戦 争 では テロ 特 措 法 を 制 定 し 海 上 自 衛 隊 がアメリカ 艦 船 への 洋 上 給 油 を 2003 年 のイ ラク 戦 争 では イラク 特 措 法 を 制 定 し 陸 上 自 衛 隊 や 航 空 自 衛 隊 がイラ ク 本 土 で 給 水 活 動 や 空 輸 活 動 を 行 いました これらのなし 崩 し 的 な 海 外 派 兵 においても 海 外 での 自 衛 隊 の 活 動 には 厳 格 な 制 限 が 加 えられてきましたが イラク 戦 争 での 自 衛 隊 の 活 動 は 違 憲 違 法 という 判 断 がなされています( 平 成 20 年 4 月 17 日 名 古 屋 高 裁 判 決 ) ところが 今 回 の 法 案 は それらの 制 約 を 取 り 払 い 戦 地 における 自 衛 隊 の 活 動 範 囲 や 活 動 内 容 を 大 幅 に 拡 大 しようとするものです - 4 -
Q5 自 主 的 判 断 本 当 にできるの? 政 府 は 我 が 国 として 自 主 的 に 判 断 するのであって アメリカの 戦 争 に 巻 き 込 まれることはないといっていますが 本 当 なのでしょうか? もちろんアメリカからの 申 し 入 れに 対 して わが 国 は 自 主 的 に 参 戦 を 決 めたという 形 はとるでしょう しかし これまでアメリカはグレナダ パナマ リビアなどへの 侵 略 行 為 をたびたび 行 い 国 際 社 会 から 厳 しく 非 難 されましたが このような 場 合 であっても 日 本 はいつもアメリカを 支 持 し 擁 護 してきました この 前 科 前 歴 からは 将 来 日 本 がアメリカの 要 求 に 対 して 自 主 的 判 断 ができるとは 思 われません もし 自 主 的 に 判 断 できるというのであれば 今 南 シナ 海 で 米 中 が 繰 り 広 げている 覇 権 争 いとは 明 確 に 一 線 を 画 し 日 米 共 同 の 偵 察 活 動 や 共 同 軍 事 訓 練 の 申 入 れをきっぱりと 断 るべきです しかし 新 ガイドラインを 結 び 偵 察 や 訓 練 を 一 緒 にやろうというのですから これからもアメリカ 追 随 が 続 く でしょう - 5 -
Q6 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 は 一 部 だけの 限 定 されたもの? 集 団 的 自 衛 権 を 行 使 できる 場 合 は 存 立 危 機 事 態 など 限 られた 場 合 で しか も 厳 格 な 要 件 を 定 めその 行 使 を 限 定 しているので 武 力 行 使 に 対 する 歯 止 め となるのではありませんか? 集 団 的 自 衛 権 は 1わが 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が 発 生 したこと 又 はわ が 国 と 密 接 な 関 係 にある 他 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が 発 生 し これにより 我 が 国 の 存 立 が 脅 かされ 国 民 の 生 命 自 由 及 び 幸 福 追 求 の 権 利 が 根 底 から 覆 され る 明 白 な 危 険 があること 2これを 排 除 し わが 国 の 存 立 を 全 うし 国 民 を 守 るために 他 に 適 当 な 手 段 がないこと 3 必 要 最 小 限 度 の 実 力 を 行 使 するに とどまる 場 合 ( 自 衛 の 措 置 としての 武 力 行 使 の 新 3 要 件 )に 限 定 して 認 めら れるとされています 一 見 存 立 が 脅 かされ や 権 利 が 根 底 から 覆 される であるとか 明 白 な 危 険 などが 要 件 とされているため 武 力 行 使 の 条 件 が 厳 格 に 絞 り 込 ま れ 歯 止 め として 役 立 つように 見 えます しかし 存 立 が 脅 かされる とか 根 底 から 覆 される などといった 判 断 は 何 がそれにあたるのか 一 義 的 に 明 確 ではありません その 結 果 それ を 判 断 する 主 体 の 主 観 や 価 値 観 に 大 きく 左 右 されてしまいます その 判 断 は 政 府 が 行 うことになるので 政 府 が 脅 かされている だとか 明 白 だと 判 断 すれば 要 件 をクリアしてしまうことになります その 意 味 で 歯 止 め になるような 条 件 ではありません また 安 倍 首 相 は どんな 場 合 が 存 立 危 機 事 態 なのかと 国 会 で 質 問 され どういうことでなければ 武 力 を 行 使 しないのか を 一 々すべて 述 べてい る 海 外 のリーダーはいない と 答 弁 を 拒 否 しました 時 の 政 府 に 白 紙 で 委 ね ようというものです - 6 -
Q7 専 守 防 衛 はどこへ? 専 守 防 衛 とは 何 ですか? 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 を 認 めることは 専 守 防 衛 の 範 囲 内 といえるのですか? 専 守 防 衛 というのは 自 国 が 相 手 国 から 武 力 攻 撃 をうけたときにはじ めて 武 力 ( 防 衛 力 )を 行 使 し その 態 様 も 自 衛 のために 必 要 最 小 限 にとどめ また 保 持 する 防 衛 力 も 自 衛 のための 必 要 最 小 限 のものに 限 るなど 憲 法 の 精 神 に 則 った 受 動 的 な 防 衛 戦 力 の 姿 勢 をいいます 憲 法 9 条 という 他 に 類 をみない 平 和 条 項 を 有 するわが 国 において 政 府 は 戦 後 一 貫 してこの 専 守 防 衛 の 立 場 を 堅 持 するとし 政 府 解 釈 も 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 は わが 国 防 衛 のための 必 要 最 小 限 の 範 囲 を 越 えるもので 認 めら れないとしてきました ところが 安 倍 首 相 は わが 国 の 存 立 が 脅 かされる 事 態 に 国 民 を 防 衛 する のが 専 守 防 衛 で 他 国 が 攻 撃 されてきたときに 反 撃 する 集 団 的 自 衛 権 も 自 衛 の 措 置 の 一 環 だというのです しかし 集 団 的 自 衛 権 は その 国 が わが 国 と 密 接 な 関 係 にある 国 であ ろうとも 他 国 への 攻 撃 に 対 する 反 撃 ですから 自 国 が 相 手 から 武 力 攻 撃 をうけたことを 前 提 とする 専 守 防 衛 と 明 らかに 矛 盾 します 政 府 が 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 として 想 定 する 事 例 をみても 例 えば 中 東 ホル ムズ 海 峡 での 機 雷 掃 海 など 専 守 防 衛 とは 明 らかに 異 なります - 7 -
Q8 変 わる? 自 衛 隊 の 任 務 今 回 の 法 改 正 によって 自 衛 隊 の 役 割 や 任 務 は 変 わるのでしょうか? 自 衛 隊 法 3 条 は 自 衛 隊 の 任 務 が 何 かを 定 める 基 本 的 規 定 です 現 行 の 規 定 では 国 の 安 全 を 保 つため 直 接 侵 略 及 び 間 接 侵 略 に 対 し 我 が 国 を 防 衛 することを 主 たる 任 務 とするとなっています ところが 法 案 では ここから 直 接 侵 略 及 び 間 接 侵 略 に 対 し という 字 句 が 削 除 されようとして います 自 衛 隊 法 3 条 の 直 接 侵 略 及 び 間 接 侵 略 に 対 し との 文 言 は わが 国 が 侵 略 された 場 合 に 初 めて 防 衛 力 を 行 使 する やむにやまれぬ 武 力 行 使 という 意 味 で 専 守 防 衛 の 象 徴 的 な 規 定 です これを 今 回 の 改 正 で 削 除 しようと いうのです 侵 略 があってはじめて 防 衛 という 受 け 身 の 姿 勢 から 国 益 を 口 実 に 積 極 的 に 国 外 に 出 て 行 く 能 動 的 積 極 的 に 海 外 での 軍 事 行 動 に 打 って 出 ることを 宣 言 したものです 2014 年 12 月 の 国 家 安 全 保 障 戦 略 や 今 年 4 月 の 新 ガイドラインで は 自 衛 隊 の 世 界 規 模 での 軍 事 行 動 が 宣 言 されています 直 接 侵 略 及 び 間 接 侵 略 の 削 除 は 専 守 防 衛 の 原 則 を 放 棄 した 上 で 自 衛 隊 を 国 土 国 民 を 守 る 組 織 から 海 外 に 機 動 展 開 していく 外 征 軍 遠 征 軍 へと その 性 質 を 根 本 的 に 変 質 させるものといえます - 8 -
Q9 自 衛 隊 の 活 動 範 囲 は 日 本 近 辺 に 限 られないの? 周 辺 事 態 法 を 重 要 影 響 事 態 法 に 代 えるそうですが それはどのような 法 律 で すか?どこが 変 わるのですか? 周 辺 事 態 法 というのは 朝 鮮 半 島 での 戦 争 の 際 にアメリカ 軍 を 後 方 地 域 から 支 援 する 目 的 で 制 定 された 法 律 で あくまでも 日 本 の 周 辺 で 起 きる 事 態 を 想 定 したものです ところが 今 回 提 出 の 重 要 影 響 事 態 法 案 は 日 本 周 辺 という 地 理 的 制 限 をな くし 南 シナ 海 インド 洋 ホルムズ 海 峡 であっても 政 府 が わが 国 の 平 和 及 び 安 全 に 重 要 な 影 響 を 与 える 事 態 ( 重 要 影 響 事 態 )だと 判 断 すれば そこで 活 動 するアメリカ 軍 やその 他 の 国 の 軍 隊 を 支 援 することができること になります しかも 後 方 地 域 という 限 定 も 削 除 し 戦 闘 現 場 以 外 であ れば いかなる 場 所 時 期 であっても 支 援 活 動 ができるとしています この 法 律 によって 遠 く 離 れた 中 東 でもアメリカ 軍 と 一 緒 に 戦 争 を 行 おうという ものです 現 在 南 シナ 海 について 中 国 は そのほとんどが 中 国 のもので 公 海 は 存 在 しないと 主 張 し(9 断 線 ) 岩 礁 を 基 地 化 するなど 実 効 支 配 を 拡 大 しつつあ ります それに 対 し 周 辺 国 フィリピンやベトナムはそれぞれ 領 海 を 主 張 するとともに アメリカも 中 国 の 主 張 を 認 めておらず 緊 張 関 係 が 高 まって います その 南 シナ 海 で 対 中 国 牽 制 策 として 日 米 による 共 同 監 視 体 制 が 提 唱 され ていますが 地 理 的 制 約 を 撤 廃 した 安 保 法 制 下 では シーレーンの 確 保 が わが 国 の 平 和 及 び 安 全 に 重 要 な 影 響 を 与 える 事 態 ( 重 要 影 響 事 態 )と 判 断 されれば 中 国 と 事 を 構 えるアメリカなど 他 国 軍 に 対 する 自 衛 隊 の 支 援 活 動 が 発 動 されかねません - 9 -
Q10 自 衛 隊 の 派 遣 が 恒 常 化 する? 国 際 平 和 支 援 法 というのはどのような 法 律 ですか これまでの 法 律 とどこが 違 うのですか? アフガン 戦 争 やイラク 戦 争 では それぞれ テロ 特 措 法 や イラク 特 措 法 という 個 別 の 時 限 立 法 でこれまでは 対 応 してきました( 現 在 は 期 限 切 れでいずれも 失 効 ) それでもイラク 戦 争 での 自 衛 隊 の 活 動 は 違 憲 違 法 という 判 断 がなされています( 平 成 20 年 4 月 17 日 名 古 屋 高 裁 判 決 ) こ の 個 別 の 特 措 法 を 一 般 法 化 し かつ 恒 久 法 としたのが 国 際 平 和 支 援 法 です 国 際 社 会 の 平 和 及 び 安 全 を 脅 かす 事 態 で 国 際 社 会 が 国 連 憲 章 の 目 的 に 従 って 共 同 して 対 処 する 活 動 を 行 い 我 が 国 が 国 際 社 会 の 一 員 として 積 極 的 に 寄 与 する 必 要 のある 事 態 ( 国 際 平 和 共 同 対 処 事 態 )だと 政 府 が 認 定 すれ ば 自 衛 隊 が 海 外 に 出 て 他 国 軍 ( 多 国 籍 軍 )に 対 する 協 力 支 援 活 動 ( 弾 薬 の 提 供 を 含 む)が 可 能 となります その 際 には 国 連 総 会 や 安 全 保 障 理 事 会 の 決 議 が 必 要 だとされていますが 国 際 社 会 の 平 和 に 対 する 脅 威 の 認 識 と 加 盟 国 の 取 り 組 みを 求 める 決 議 で 足 り 重 大 な 紛 争 に 関 する 決 議 であればほとんどの 場 合 条 件 を 満 たすことになる でしょう ホルムズ 海 峡 での 機 雷 敷 設 について 自 衛 隊 が 掃 海 行 動 を 行 うことは 機 雷 敷 設 国 との 交 戦 状 態 を 意 味 しますが 封 鎖 によって 原 油 が 来 なくなり 国 内 で 灯 油 がなくなれば 存 立 危 機 事 態 を 認 定 してアメリカ 軍 と 共 同 で 軍 事 行 動 を 行 う( 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 ) あるいはわが 国 の 平 和 及 び 安 全 に 重 要 な 影 響 を 与 えるとして( 重 要 影 響 事 態 )アメリカ 軍 の 軍 事 行 動 を 後 方 支 援 する さらには 対 応 を 求 める 安 保 理 決 議 を 根 拠 に 国 際 平 和 共 同 対 処 事 態 だとして アメリカ 軍 の 協 力 支 援 するなど 自 衛 隊 が 掃 海 行 動 などの 軍 事 行 動 を 行 うこ とが 想 定 されます - 10 -
Q11 国 連 決 議 が 歯 止 めになる? 国 際 平 和 支 援 法 に 基 づいて 自 衛 隊 を 海 外 に 派 遣 するには 国 連 総 会 又 は 国 連 安 保 理 決 議 の 存 在 が 要 件 とされていると 聞 きましたが それで 十 分 に 歯 止 め になるのではないですか? いいえ 全 く 歯 止 めにはなりません 条 件 とされている 決 議 は 当 該 外 国 が 当 該 活 動 を 行 うことを 決 定 し 要 請 し 勧 告 し 又 は 認 める 決 議 だけでなく 当 該 事 態 が 平 和 に 対 する 脅 威 又 は 平 和 の 破 壊 であるとの 認 識 を 示 すとともに 当 該 事 態 に 関 連 して 国 際 連 合 加 盟 国 の 取 組 を 求 める 決 議 でもよいとされています 後 者 の 取 組 を 求 める 決 議 というのは 抽 象 的 で 結 局 その 事 態 について 何 らかの 決 議 があればいいといっているようなものです イラク 戦 争 に 際 して イラクに 対 する 武 力 行 使 を 容 認 する 国 連 決 議 が 否 決 されました それにも 関 わらず アメリカは イラクが 査 察 受 け 入 れに 関 し て 重 大 な 違 反 があった 場 合 に 深 刻 な 結 果 に 直 面 する としたにすぎな い 国 連 安 保 理 決 議 1441に 基 づいてイラク 攻 撃 を 敢 行 しました この 国 連 安 保 理 決 議 1441のような 決 議 でも 国 際 平 和 支 援 法 に 基 づく 海 外 派 遣 の 要 件 とされる 決 議 をみたすことになります つまり 米 国 に よる 先 制 攻 撃 も 支 援 の 対 象 にしてしまうものであり 何 の 歯 止 めにもなりま せん - 11 -
Q12 事 前 の 国 会 承 認 が 歯 止 めになる? 国 際 平 和 支 援 法 に 基 づいて 自 衛 隊 を 海 外 に 派 遣 するには 例 外 なく 事 前 に 国 会 の 承 認 が 必 要 と 聞 きましたが それで 十 分 な 歯 止 めにはなりませんか? いいえ 全 く 歯 止 めにはなりません 確 かに 事 前 に 国 会 の 承 認 は 必 要 とされていますが 内 閣 総 理 大 臣 が 国 会 の 承 認 を 求 めた 場 合 には 先 議 の 議 院 については7 日 以 内 後 議 の 議 院 につ いては 議 案 の 送 付 を 受 けたときから7 日 以 内 に 議 決 する 努 力 規 定 が 設 けられ ています このように 審 議 期 間 は 衆 参 ともにたったの7 日 であり 国 会 で 十 分 な 議 論 が 尽 くされるとは 到 底 考 えられません しかも 秘 密 保 護 法 により 特 定 秘 密 とされた 防 衛 外 交 等 の 情 報 は 国 会 でもほとんど 知 り 得 ることはで きず この 特 定 秘 密 の 存 在 とあいまって 国 会 が 歯 止 めとなることもおよそ 不 可 能 です - 12 -
Q13 前 線 から 離 れて 行 うから 安 全? 重 要 影 響 事 態 に 際 して 実 施 される 後 方 支 援 や 国 際 平 和 共 同 対 処 事 態 に 際 し て 実 施 される 協 力 支 援 は 前 線 から 遠 く 離 れた 安 全 な 場 所 であることを 確 認 して 行 うので 危 険 度 は 高 くなく 自 衛 隊 員 のリスクはこれまでと 変 わら ない というのは 本 当 ですか? 政 府 は 戦 闘 現 場 ( 前 線 )から 離 れていることや 派 遣 期 間 を 通 じて 安 全 な 場 所 を 活 動 区 域 とするのだから 危 険 性 (リスク)は 高 くないと 説 明 しています しかし 後 方 支 援 や 協 力 支 援 つまり 戦 闘 部 隊 への 補 給 や 輸 送 などの 戦 闘 遂 行 に 必 要 とされる 兵 站 活 動 ( ロジスティック といいます)について 区 域 は 危 険 だから 行 えない とか 安 全 な での 補 給 や 輸 送 なら 実 施 する などとアメリカ 軍 に 言 えるでしょうか 現 に 法 案 では 支 援 活 動 を 行 う 場 所 を 後 方 地 域 に 限 るという 限 定 をはずし 戦 闘 現 場 以 外 であれば どこでも 実 施 可 能 となっていて 安 全 な 場 所 でのみ 行 うなどとは 書 かれてい ません また 現 実 の 戦 闘 では 前 線 の 部 隊 を 孤 立 させようとすれば 補 給 輸 送 の 兵 站 ( 後 方 支 援 協 力 支 援 ) 部 隊 を 攻 撃 することになるでしょう 敵 国 に その 意 思 と 実 力 があれば 兵 站 部 隊 を 攻 撃 することは 当 然 ありうる 事 態 です このように 兵 站 ( 後 方 支 援 協 力 支 援 ) 活 動 は 大 きな 危 険 を 伴 う 活 動 であ って 自 衛 隊 員 のリスクは 高 まります - 13 -
Q14 自 衛 隊 の 捜 索 救 助 活 動 は 人 道 支 援? 重 要 影 響 事 態 法 案 と 国 際 平 和 支 援 法 案 には 自 衛 隊 が 海 外 で 捜 索 救 助 活 動 に 従 事 するための 規 定 があると 聞 きました 自 衛 隊 が 海 外 で 捜 索 救 助 活 動 に 従 事 することは 自 衛 隊 の 能 力 を 人 道 支 援 に 活 用 するものとして 評 価 できるのではないですか? 重 要 影 響 事 態 法 案 と 国 際 平 和 支 援 法 案 に 規 定 がおかれている 捜 索 救 助 活 動 というは 災 害 にあった 人 や 戦 闘 行 為 に 巻 き 込 まれた 市 民 を 救 助 す るための 活 動 ではありません 予 定 されている 捜 索 救 助 活 動 は 重 要 影 響 事 態 あるいは 国 際 平 和 共 同 対 処 事 態 において 戦 闘 行 為 に 従 事 している 戦 闘 員 ( 主 として 米 兵 が 想 定 されています)が 負 傷 遭 難 等 した 場 合 に 戦 闘 員 を 捜 索 し 救 助 し 輸 送 することを 主 たる 目 的 とする 活 動 のことです このような 活 動 の 目 的 は 救 護 した 戦 闘 員 を 再 び 戦 闘 地 域 に 送 り 出 すこと を 支 援 する 点 にあり まさに 戦 闘 行 為 と 一 体 化 した 行 為 として 憲 法 第 9 条 に 反 することは 明 らかです また 戦 闘 の 相 手 方 からみれば 捜 索 救 助 活 動 に 従 事 する 自 衛 隊 の 活 動 は 利 敵 行 為 であり 攻 撃 反 撃 の 対 象 とな りかねません しかも 法 案 では 既 に 米 兵 などの 戦 闘 員 が 発 見 され 自 衛 隊 がその 救 助 を 開 始 している 場 合 は そこが 戦 闘 現 場 となっても 活 動 を 継 続 するとしており 自 衛 隊 が 戦 闘 に 巻 き 込 まれる 危 険 の 極 めて 高 い 行 為 です - 14 -
Q15 船 舶 検 査 活 動 は 国 際 社 会 の 責 務? これまでの 船 舶 検 査 は わが 国 の 平 和 と 安 全 に 関 わる 状 況 でしかできなかっ たものを 国 際 社 会 が 一 致 団 結 して 行 う 船 舶 検 査 活 動 にも 参 加 できるように するためだというのは 本 当 ですか? 国 際 社 会 の 一 員 としての 責 任 を 果 たすた めには 必 要 ではありませんか? 今 回 の 法 案 では 重 要 影 響 事 態 や 国 際 平 和 共 同 対 処 事 態 に 伴 う 船 舶 検 査 活 動 の 実 施 が 規 定 されていますが そこにはアメリカ 軍 やその 有 志 連 合 が 武 力 を 行 使 する 場 合 も 念 頭 に 置 かれており 国 際 社 会 が 一 致 して 行 う 活 動 への 参 加 というのはミスリーディングといわざるをえません そもそも ここでいう 船 舶 検 査 活 動 というのは 戦 闘 艦 艇 以 外 のなにもの でもない 護 衛 艦 が 停 船 や 積 荷 検 査 を 要 求 し 応 じなければ 説 得 を 行 うた め 必 要 な 限 度 において 当 該 船 舶 に 対 し 接 近 追 尾 伴 走 および 進 路 前 方 における 待 機 を 行 うというもので 武 力 による 威 嚇 に 他 なりません こう したいわば 海 上 の 憲 兵 活 動 をアメリカ 軍 等 とともに 世 界 規 模 で 行 おうと するもので 平 和 憲 法 を 有 する 日 本 が 国 際 社 会 で 果 たすべき 責 任 とは 程 遠 い ものです - 15 -
Q16 自 衛 隊 員 のリスクは 変 わらない? 国 際 平 和 協 力 法 (PKO 法 )が 改 定 され 保 安 のための 監 視 駐 留 巡 回 検 問 警 護 が 追 加 されますが 自 衛 隊 が 戦 闘 行 為 に 及 んだり 自 衛 隊 員 に 死 傷 者 が 出 たりする 等 のリスクが 高 まることはありませんか? PKO 法 の 改 定 で 保 安 のための 監 視 駐 留 巡 回 検 問 警 備 な どの 治 安 維 持 活 動 が 自 衛 隊 の 業 務 に 追 加 されようとしています しかもそ の 場 合 任 務 遂 行 に 対 する 妨 害 を 排 除 するための 武 器 使 用 が 認 められるとさ れています 治 安 維 持 活 動 については NTOが 行 ったアフガニスタンでの 国 際 治 安 支 援 部 隊 (ISF)の 実 例 があります そこでは 本 来 の 治 安 確 保 から 逸 脱 し 多 数 の 一 般 市 民 を 巻 き 込 んだ 武 装 組 織 の 掃 討 作 戦 と 化 し その 結 果 参 加 部 隊 からは3500 名 もの 戦 死 者 を 出 しています 武 装 勢 力 と 一 般 市 民 を 区 別 することがもともと 困 難 で 検 問 所 での 検 問 や 巡 回 中 の 部 隊 車 列 に 近 づいた 一 般 市 民 を 兵 士 が 武 装 勢 力 と 誤 認 して 銃 撃 することも 後 を 絶 ちません したがって 保 安 のための 監 視 駐 留 巡 回 検 問 警 備 ( 治 安 維 持 活 動 )が 追 加 されたことによって 自 衛 隊 が 戦 闘 行 為 に 及 んだり 死 傷 者 が 出 たりするリスクは 高 まります - 16 -
Q17 米 軍 の 武 器 を 守 るのは 何 故? 平 和 安 全 法 制 整 備 法 案 では 自 衛 隊 が 米 軍 その 他 の 外 国 の 軍 隊 の 武 器 を 防 護 するために 武 器 使 用 をできるように 自 衛 隊 法 を 改 正 しようとしているよ うですが どのような 危 険 性 があるのでしょうか? 現 行 の 自 衛 隊 法 では 武 器 等 防 護 のために 自 衛 隊 の 武 器 使 用 が 認 めら れるのは 自 衛 隊 の 武 器 等 を 防 護 する 場 合 に 限 られています しかし 平 和 安 全 法 制 整 備 法 案 は 米 軍 やその 他 の 外 国 の 軍 隊 等 の 武 器 を 防 護 するためにも 自 衛 隊 が 武 器 を 使 用 できるようにしています しかも 防 護 の 対 象 は 武 器 だけでなく 弾 薬 火 薬 船 舶 航 空 機 車 両 有 線 電 気 通 信 設 備 無 線 設 備 液 体 燃 料 に 至 ります 米 軍 の 艦 艇 を 防 護 するために 自 衛 隊 の 艦 艇 が 防 護 し 米 軍 の 艦 艇 が 攻 撃 を 受 けたら 自 衛 隊 の 艦 艇 も 武 器 を 使 用 し 反 撃 することができることになります 米 軍 とともに 自 衛 隊 が 事 実 上 日 米 共 同 軍 事 行 動 を 展 開 することが 可 能 になるのです 例 えば 南 シナ 海 での 警 戒 監 視 活 動 を 米 軍 とともに 自 衛 隊 が 行 う 際 米 軍 の 艦 艇 を 防 護 する 命 令 を 自 衛 隊 に 出 しておけば 何 らかの 攻 撃 が 米 軍 の 艦 艇 にあった 場 合 自 衛 隊 は 米 軍 の 艦 艇 とともに 武 器 を 使 用 した 反 撃 を 行 うこ とができるようになります 米 軍 と 自 衛 隊 の 武 器 使 用 に 対 し 対 立 国 が 更 なる 反 撃 を 行 った 場 合 米 軍 と 自 衛 隊 は これに 更 に 武 器 使 用 で 対 抗 することは 容 易 に 想 定 できます こ の 武 器 使 用 と 反 撃 が 積 み 重 なることで そのまま 戦 争 になだれ 込 んでしまう 危 険 性 があるのです また 平 和 安 全 法 制 整 備 法 案 は 米 軍 のみならずその 他 の 外 国 の 軍 隊 の 武 器 等 の 防 護 のための 武 器 使 用 も 認 めようとしていますので 自 衛 隊 の 武 器 使 用 の 機 会 とそこから 戦 争 に 突 入 する 危 険 性 が 際 限 なく 拡 大 して 行 くおそ れがあります - 17 -
Q18 中 国 は 危 険? 中 国 の 軍 事 大 国 化 や 覇 権 的 行 為 は 尖 閣 列 島 をめぐる 行 為 や 南 シナ 海 での 行 動 を 見 れば 明 らかで それに 対 抗 するためには 日 本 が 防 衛 力 を 増 強 したり アメリカとの 同 盟 関 係 を 強 化 して 中 国 への 抑 止 力 を 高 めることは 必 要 な 対 応 措 置 ではないでしょうか? 中 国 に 覇 権 的 行 動 が 見 られるとしても それに 対 して 軍 事 力 で 対 抗 す ることが 正 しいことか あるいは 効 果 があるのかについては 冷 静 かつ 理 性 的 に 対 応 する 必 要 があります まず 日 本 国 憲 法 では 武 力 の 行 使 や 武 力 の 威 嚇 での 紛 争 解 決 を 放 棄 して います 少 なくとも 隣 国 が 軍 事 力 を 増 強 しても それに 単 純 に 応 じないの が 憲 法 の 精 神 で 非 軍 事 による 問 題 解 決 が 正 しい 道 です 憲 法 の 規 定 や 精 神 をとりあえず 脇 に 置 くとしても 軍 事 力 や 日 米 同 盟 の 強 化 増 強 で 対 応 するのが 効 果 的 かは はなはだ 疑 問 です それは 中 国 が 脅 威 だとして 日 本 が 軍 備 を 増 強 したり 日 米 同 盟 強 化 と 称 して 軍 事 演 習 を 含 む 威 圧 を 加 えれば 中 国 は ならばそれ 以 上 に といって これまで 以 上 に 軍 備 増 強 に 走 ることが 考 えられます そうすると 結 局 互 いに 相 手 以 上 の 軍 事 力 を 備 えなければ 安 心 できないことになって 際 限 のない 軍 拡 競 争 に 陥 ってし まいます 不 法 な 行 動 に 対 しては 毅 然 とした 態 度 で 臨 みつつ 軍 事 力 によらない 対 応 が 求 められています - 18 -
Q19 戦 後 1 人 も 死 者 を 出 していない? アメリカの 戦 争 に 日 本 が 参 加 して 死 者 が 出 たことがあるという 話 を 聞 いたの ですが 本 当 ですか? 安 倍 首 相 は 日 米 同 盟 というのは 血 の 同 盟 であって 日 本 人 も 血 を 流 さないと 完 全 なイコール パートナーとはいえない といいます 第 2 次 世 界 大 戦 後 日 本 の 戦 争 にアメリカ 人 が 血 を 流 したことはありませ ん 戦 後 日 本 は 一 度 も 戦 争 を 行 っていないから 当 然 です しかし アメリカの 戦 争 で 日 本 人 が 血 を 流 したことはあります 今 から6 0 年 前 朝 鮮 戦 争 の 際 に 秘 密 裏 に 海 上 自 衛 隊 の 前 身 である 海 上 保 安 庁 に 所 属 する 機 雷 掃 海 艇 をアメリカ 軍 に 参 加 させました そのうちの1 隻 が 触 雷 し 1 人 の 隊 員 が 死 亡 しています このことを 日 米 両 政 府 は 最 近 までひた 隠 し にしてきました 掃 海 艇 の 派 遣 によりアメリカの 戦 争 に 参 加 したことが 憲 法 9 条 に 違 反 することが 明 らかだからです ホルムズ 海 峡 などへ 掃 海 艇 を 派 遣 することになれば 憲 法 に 反 する 共 同 軍 事 行 動 となります 朝 鮮 戦 争 の 時 のように 触 雷 等 による 死 傷 者 の 出 る 危 険 が きわめて 高 くなります - 19 -
Q20 安 保 法 制 はやっぱり 違 憲! 国 会 で 3 人 の 憲 法 学 者 がそろって 安 保 法 制 は 違 憲 であると 述 べました 多 くの 憲 法 学 者 が 違 憲 であると 言 っています どういう 点 が 違 憲 なのでし ょうか? 長 年 にわたり 自 民 党 政 権 は 我 が 国 が 武 力 攻 撃 を 受 けたときには 必 要 最 小 限 の 武 力 行 使 ができるのであり そのための 自 衛 隊 は 憲 法 9 条 に 反 し ないが 他 国 から 日 本 に 対 する 武 力 攻 撃 がないのに 武 力 行 使 を 行 う 集 団 的 自 衛 権 は その 範 囲 を 超 えて 違 憲 だとしてきました( 専 守 防 衛 論 ) 憲 法 学 者 には 自 衛 隊 そのものが 違 憲 だとするもの 自 国 防 衛 の 限 度 で 合 憲 とするものなど 様 々な 立 場 がありますが 集 団 的 自 衛 権 を 認 める 今 回 の 法 制 度 が 合 憲 だとする 憲 法 学 者 はごくわずかしかいません 圧 倒 的 多 数 の 憲 法 学 者 が 集 団 的 自 衛 権 は 他 国 防 衛 であり いくら 安 倍 政 権 が 我 が 国 の 存 立 を 脅 かす 事 態 に 限 って 限 定 的 に 行 使 する と 述 べても 他 国 防 衛 という 領 域 に 踏 み 込 んでしまっている 以 上 違 憲 であると 考 えているのです 政 府 は 明 白 な 危 険 を 要 件 にしているといいますが ホルムズ 海 峡 での 機 雷 掃 海 を 認 めるなど 基 準 が 不 明 確 で 政 府 の 恣 意 的 解 釈 を 許 すことになって います 相 手 国 から 見 れば 武 力 攻 撃 していない 日 本 から 攻 められるので 先 制 攻 撃 を 受 けたと 受 け 取 ります また 後 方 支 援 や 協 力 支 援 は 外 国 の 軍 隊 の 武 力 行 使 と 一 体 化 す るので 武 力 行 使 を 禁 じた 憲 法 9 条 1 項 に 違 反 すると 考 えられます 今 回 これまでは 認 められなかった 弾 薬 の 提 供 発 進 準 備 中 の 戦 闘 機 に 対 する 給 油 整 備 も 出 来 ることになりました ( 後 方 支 援 協 力 支 援 と は 政 府 の 造 語 であり 国 際 法 では 兵 站 (ロジィスティック) と 言 われて います )これら 兵 站 は 戦 闘 現 場 ( 前 線 ) 以 外 で 行 われていても 補 給 輸 送 ( 兵 士 武 器 弾 薬 燃 料 食 糧 等 ) 活 動 であり 戦 闘 現 場 ( 前 線 )と 一 体 化 した 武 力 行 使 そのものです 国 際 法 上 武 力 行 使 の 目 標 とされ 自 衛 隊 が 活 動 する 兵 站 活 動 の 場 所 が 戦 闘 現 場 となってしまいます - 20 -
戦 争 法 Q& 2015 年 8 月 31 日 編 集 自 由 法 曹 団 改 憲 阻 止 対 策 本 部 発 行 自 由 法 曹 団 112-0014 東 京 都 文 京 区 関 口 1-8-6 メゾン 文 京 関 口 Ⅱ202 号 Tel 03-5227-8255 Fax 03-5227-8257 URL http://www.jlaf.jp/