広角視点: 名目マイナス金利のプラス効果; ホセ・ビニャルス、 サイモン・グレイ、 ケリー・エコールド; 2016年4月10日



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●電力自由化推進法案

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平成24年度 業務概況書

1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

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第 3 四 半 期 運 用 状 況 の 概 要 第 3 四 半 期 末 の 運 用 資 産 額 は 2,976 億 円 となりました 第 3 四 半 期 の 修 正 総 合 収 益 率 ( 期 間 率 )は +1.79%となりました なお 実 現 収 益 率 は +0.67%です 第 3 四 半 期

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損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

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質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定


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別紙3

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2. 会 計 規 程 の 業 務 (1) 規 程 と 実 際 の 業 務 の 調 査 規 程 や 運 用 方 針 に 規 定 されている 業 務 ( 帳 票 )が 実 際 に 行 われているか( 作 成 されている か)どうかについて 調 べてみた 以 下 の 表 は 規 程 の 条 項 とそこに

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は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

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( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

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科 売 上 原 価 売 上 総 利 益 損 益 計 算 書 ( 自 平 成 26 年 4 月 1 日 至 平 成 27 年 3 月 31 日 ) 目 売 上 高 販 売 費 及 び 一 般 管 理 費 営 業 利 益 営 業 外 収 益 受 取 保 険 金 受 取 支 援 金 補 助 金 収 入 保

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4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 新 規 社 ( 社 名 ) 除 外 社 ( 社 名 ) (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の

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った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

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Transcription:

広 角 視 点 : 名 目 マイナス 金 利 のプラス 効 果 ホセ ビニャルス サイモン グレイ ケリー エコールド 2016 年 4 月 10 日 成 長 見 通 しとインフレ 率 への 重 大 なリスクが 認 識 される 中 で IMF は 一 部 の 中 央 銀 行 が 実 施 した マイナス 政 策 金 利 を 支 持 しています このような 大 胆 な 政 策 は 過 去 に 例 がなく その 効 果 は 国 に よって 異 なるでしょう これまでにいくつかの 国 で 実 質 金 利 がマイナスとなったことはあります が 今 回 新 しいのは 名 目 金 利 がマイナスとなっていることです 何 が 新 しいのか 各 国 でのこれ までの 経 緯 名 目 マイナス 金 利 の 実 効 性 とその 限 界 および 意 図 しなかった 副 作 用 を 調 べるため に 最 近 の 動 向 を 幅 広 く 見 てみました 名 目 マイナス 金 利 の 経 験 はまだ 限 られたものですが 全 体 としてみると 需 要 と 物 価 の 安 定 を 支 援 する 追 加 的 金 融 刺 激 と 金 融 環 境 の 緩 和 をより 一 段 と 進 める 上 で 名 目 マイナス 金 利 は 貢 献 する とわれわれは 暫 定 的 に 結 論 付 けています とはいえ マイナス 金 利 を 幅 や 時 間 的 にこれ 以 上 どこまで 伸 ばせるかについては 限 界 があります 中 央 銀 行 がマイナス 金 利 政 策 を 採 用 する 理 由 政 策 金 利 がいわゆる ゼロ 金 利 制 約 まで 引 き 下 げられたのに 実 質 金 利 が 物 価 の 安 定 と 完 全 雇 用 に 整 合 する 水 準 より 依 然 として 高 い 場 合 は 中 央 銀 行 は 経 済 に 一 段 の 刺 激 を 与 えるために 非 伝 統 的 な 金 融 政 策 を 採 用 することを 検 討 します 名 目 マイナス 金 利 はその 非 伝 統 的 金 融 政 策 の 最 新 の 手 段 です これまでに 6 つの 中 央 銀 行 が 民 間 銀 行 による 預 入 残 高 の 一 部 について マイナス 金 利 の 適 用 を 開 始 しました( 表 1) マイナス 金 利 は 金 融 状 況 をさらに 緩 和 することにより 民 間 部 門 の 支 出 を 増 加 させ 物 価 を 一 層 安 定 させることを 目 指 しています 小 国 開 放 経 済 にとって マイナス 金 利 は 資 本 流 入 を 抑 制 し その 国 の 通 貨 の 上 昇 圧 力 を 低 下 させる 一 助 となります imf ダイレクト ブログホームページ: http://blog-imfdirect.imf.org/

2 マイナス 政 策 金 利 と 量 的 緩 和 策 には 相 乗 効 果 があります これまではマイナス 金 利 は 量 的 緩 和 策 の 結 果 としての 中 央 銀 行 の 拡 大 したバランスシートや あるいは 大 規 模 な 外 国 為 替 の 購 入 と 結 び 付 けられてきました 量 的 緩 和 策 は 債 券 の 利 回 りやターム プレミアムを 圧 縮 します しかし それにはある 程 度 限 度 があります というのは 時 間 と 共 にこれが 中 銀 が 購 入 できる 資 産 を 減 少 さ せるからです 政 策 金 利 をマイナスにすることにより 短 期 金 融 市 場 の 金 利 を 一 段 と 低 下 させ イールドカーブをさらに 引 き 下 げ ポートフォリオのリバランスを 加 速 させる 効 果 を 狙 うことに より 金 融 政 策 の 効 果 を 高 めることができます 実 際 マイナス 預 金 金 利 は 民 間 銀 行 の 準 備 預 金 の 大 半 がマイナス 金 利 となっているときに より 効 果 を 発 揮 する 傾 向 があります 何 が 新 しいのか 実 質 マイナス 金 利 は インフレ 率 が 名 目 金 利 より 高 いとき 先 進 国 でも 新 興 市 場 国 でも 発 展 途 上 国 でも 起 きたことがあります 今 回 新 しい 点 は マイナスなのが 名 目 金 利 であることです 名 目 金 利 がマイナスになれば 金 融 政 策 の 波 及 メカニズムも 変 化 する 可 能 性 があります 一 般 預 金 金 利 の 下 方 硬 直 性 と 非 線 形 性 の 関 係 があるためです 一 般 預 金 金 利 はマイナス 金 利 になりそうもあ りません 一 般 預 金 金 利 がマイナスならば 預 金 者 は 現 金 保 有 に 切 り 替 える 可 能 性 があるためです マイナス 金 利 はどう 作 用 するか これまでの 状 況 マイナス 金 利 の 波 及 経 路 は 複 数 あります ポートフォリオの 再 構 成 銀 行 融 資 そして 為 替 変 動 を 通 じたものです ポートフォリオ リバランスの 経 路 は マイナス 金 利 でも 正 常 に 働 いているようです 市 場 金 利 は 中 央 銀 行 預 入 金 利 とともに 低 下 しています( 図 表 1) 短 期 金 融 市 場 の 取 引 は 減 少 しましたが マイナス 金 利 自 体 の 影 響 によるのか 量 的 緩 和 によって 過 剰 流 動 性 が 生 じたためなのかは 判 然 と していません 無 リスク 資 産 の 市 場 金 利 は 投 資 家 に 利 回 りの 低 い 政 府 債 からよりリスクの 高 い 株 式 や 社 債 あるいは 不 動 産 などへの 資 金 移 動 を 促 します それに 加 え コマーシャルペーパー の 発 行 や 起 債 により 資 金 調 達 を 行 う 大 企 業 などの 借 り 手 の 資 金 調 達 コストを 引 き 下 げました

3 マイナス 金 利 の 銀 行 貸 出 への 影 響 は 各 行 により 異 なっています 各 行 間 で 異 なる 資 金 調 達 モデ ルや 貸 出 慣 行 を 反 映 したためです 金 融 市 場 での 銀 行 の 資 金 調 達 コストは 低 下 しましたが 貸 出 金 利 の 低 下 幅 は 一 般 預 金 の 金 利 がゼロまたはそれ 以 上 に 固 定 されたため 限 定 的 となりました 個 人 客 の 預 金 に 資 金 源 をより 多 く 依 存 する 銀 行 は そうでない 銀 行 より 貸 出 金 利 を 引 き 下 げられ ませんでした 貸 出 金 利 は 大 半 の 場 合 低 下 しましたが 企 業 向 け 市 場 と 比 べると 推 移 にはより 大 きな 違 いがありました 個 人 向 け 貸 出 金 利 の 一 部 は 上 昇 さえしました( 図 表 2) 変 動 金 利 融 資 の 割 合 が 高 い 融 資 期 限 が 短 い あるいは 各 行 間 の 競 争 が 激 しい 銀 行 システムでは 貸 出 金 利 が より 低 下 する 傾 向 がみられました これは 企 業 向 け 貸 出 金 利 が 個 人 向 け 貸 出 金 利 より 下 がった ことを 説 明 しているようです 企 業 向 け 融 資 資 金 は 銀 行 間 市 場 で 調 達 されたものが 大 きな 割 合 を 占 めていることを 一 部 反 映 したとみられます 貸 出 量 の 観 点 からすると 確 定 的 な 結 論 を 下 す には 時 期 尚 早 過 ぎますが 例 えばユーロ 圏 の 与 信 の 伸 びは マイナス 金 利 の 導 入 以 来 高 まった ようです 借 り 手 の 信 用 度 の 上 昇 不 良 債 権 の 減 少 引 当 金 の 調 達 コストの 低 下 保 有 証 券 のキャピタルゲ インなどにより 銀 行 は 物 価 安 定 と 成 長 を 支 援 する 政 策 からは 恩 恵 を 受 けます そして 金 融 市 場 での 資 金 調 達 の 依 存 度 の 高 い 銀 行 は 調 達 コストが 下 がりました とはいえ 銀 行 の 純 資 金 利 鞘 はマイナス 金 利 と 量 的 緩 和 の 組 み 合 わせの 実 施 で 縮 小 されたようです ただ 複 数 の 軽 減 要 因 に よって 利 鞘 縮 小 圧 力 はある 程 度 相 殺 されました 一 部 の 銀 行 では 手 数 料 やコミッションなどのほ かの 収 益 源 を 引 き 上 げることができました 多 くの 中 央 銀 行 が 民 間 銀 行 の 中 銀 に 預 ける 預 金 残 高 の 一 部 について マイナス 金 利 の 適 用 から 外 しました いわゆる 階 層 システムの 採 用 で 預 貸 利 鞘 への 潜 在 的 な 悪 影 響 を 軽 減 しようとしたものです 中 央 銀 行 のマイナス 金 利 の 為 替 相 場 へ 与 える 影 響 はまちまちとなっています ポートフォリオ 再 構 成 の 一 部 は 資 金 の 国 境 を 越 えた 流 出 と 為 替 相 場 の 下 落 につながりました デンマークなど 一 部 の 国 では 中 央 銀 行 のこうした 措 置 が 資 本 流 入 を 低 下 させるという 恩 恵 をもたらす 一 方 他 の 国 々では 他 の 要 因 が 為 替 相 場 を 動 かしました

4 マイナス 金 利 の 利 用 には 限 界 があるのか マイナス 金 利 には 限 界 があるかもしれません どの 程 度 までのマイナス 金 利 にできるか とい うことと どのくらいの 時 間 マイナス 金 利 を 適 用 できるかという 両 面 からの 限 界 です もし 金 利 が 相 当 なマイナス 幅 で 長 期 間 続 くと 予 測 されれば 個 人 も 企 業 も 価 値 を 保 つ 手 段 あるい は 決 済 する 手 段 として 現 金 を 使 う 割 合 を 大 幅 に 増 やす 可 能 性 があります 実 際 銀 行 もそう する 可 能 性 があります 銀 行 間 の 資 金 融 通 をカバーするために 中 央 銀 行 の 口 座 に 資 金 を 預 ける のではなく 自 行 の 金 庫 に 現 金 を 置 いて 直 接 各 行 間 の 決 済 に 充 てることもあり 得 ます スタッフの 大 まかな 試 算 によると 現 金 として 保 有 した 方 が 有 利 になる 金 利 の 水 準 は マイナス 75 からマイナス 200 ベーシスポイント(1 ベーシスポイントは 0.01%)の 間 です 現 金 を 価 値 の 貯 蔵 手 段 として あるいは 多 額 取 引 の 決 済 に 使 うコストの 一 部 は 一 回 きりで 終 わる 性 格 のもの です たとえば 金 庫 の 容 量 拡 大 民 間 部 門 の 金 庫 への 現 金 運 搬 そして 必 要 なシステムの 構 築 などです これらの 一 時 的 なコストは 時 間 的 に 分 散 されるので マイナス 金 利 がどの 程 度 の 時 間 継 続 されるのかは 金 庫 の 拡 張 などをすべきかどうかの 決 定 そして 決 済 に 付 随 する 金 利 相 当 分 の 追 加 コストの 面 でも 重 要 なものです また コストの 水 準 は 国 によっても 異 なると 考 えられ ます 銀 行 券 の 最 大 額 面 にも 影 響 されるでしょう 100 万 米 ドルを 貯 蔵 する 物 理 的 スペースはデ ンマーク ハンガリー 日 本 米 国 ではほぼ 似 たようなものです しかし 500 ユーロ 券 や 1000 スイスフラン 券 という 価 値 単 位 が 大 きい 紙 幣 を 持 つユーロ 圏 やスイスではそれより 小 さくなりま す スイスでは 既 に 一 段 と 高 額 な 額 面 の 紙 幣 への 需 要 があることを 示 唆 する 証 拠 があります ( 図 表 3 参 照 ) しかしこれらの 物 理 的 な 限 界 より 重 要 なことは マイナス 金 利 を 使 うには 大 きな 政 治 経 済 的 社 会 的 限 界 もあるとみられることです 預 金 金 利 がどんどんマイナスに 向 かえば 民 衆 は 違 った 形 の 増 税 と 感 じるかもしれません その 結 果 マイナス 金 利 に 対 する 世 論 の 支 持 は 弱 まる 可 能 性 があります

5 意 図 しない 副 作 用 はあるか エコノミストはマイナス 金 利 の 銀 行 収 益 に 対 する 潜 在 的 な 悪 影 響 に 注 目 しています 銀 行 は 個 人 向 け 預 金 金 利 をマイナスにすることに 消 極 的 であるか 或 いはマイナスにはできないようです 銀 行 の 純 資 金 利 鞘 は 圧 縮 されるでしょう 前 述 したように 全 体 としてみると マイナス 金 利 が 内 需 を 高 める 分 には 借 り 手 の 信 用 リスクが 改 善 し 不 良 債 権 が 減 少 し 貸 出 需 要 が 増 加 するこ とによって 銀 行 は 恩 恵 を 受 けるでしょう 保 有 する 債 券 からのキャピタルゲインも 増 えるかもし れません しかし 貸 出 を 増 やしたり 預 金 者 に 手 数 料 を 課 したりすることによって 収 益 を 増 やす ことができない 銀 行 は 確 かにマイナス 金 利 は 収 益 面 での 試 練 となる 可 能 性 があります 政 策 金 利 のマイナスが 長 引 くと 社 会 問 題 を 引 き 起 こし 預 金 者 への 影 響 が 拡 大 する 懸 念 もありま す ただ これは 金 利 がマイナスでなく 低 いプラス 金 利 でも 起 きることです 低 金 利 またはマ イナス 金 利 が 長 く 続 くと 生 命 保 険 会 社 や 年 金 基 金 貯 蓄 機 関 の 経 営 を 悪 化 させるでしょう 低 金 利 によって 保 険 会 社 は 保 証 したリターンを 支 払 うのが 困 難 になり デュレーションにミスマッ チが 生 じます それによって 最 終 的 に 生 命 保 険 会 社 の 契 約 者 の 損 失 につながるでしょう 過 剰 にリスクを 取 ることにもなりかねません 利 鞘 が 縮 小 するにつれ 銀 行 が 収 益 の 水 準 を 維 持 しようとしてリスクの 高 い 借 り 手 に 融 資 し 始 めるかもしれません またコストは 低 いものの 変 動 の 激 しい 金 融 市 場 での 資 金 調 達 を 増 やすかもしれません 質 の 良 くない 融 資 を 検 知 することがよ り 難 しくなる 可 能 性 があり 本 来 は 必 要 な 企 業 のリストラが 先 送 りされる 可 能 性 もあります 資 産 価 格 のバブルと 崩 壊 のサイクルを 加 速 させるかもしれません こうした 潜 在 的 リスクは 注 意 深 く 監 視 する 必 要 があり 厳 しく 監 督 する 必 要 があります 健 全 性 を 監 視 する 機 関 は 政 策 措 置 を 強 化 する 必 要 があるかもしれません 名 目 マイナス 金 利 の 経 験 は 限 られていますが われわれは 暫 定 的 に 総 じてマイナス 金 利 には 追 加 的 な 金 融 刺 激 の 効 果 があると 考 えます 市 場 金 利 は 一 部 の 銀 行 の 貸 出 金 利 とともに 低 下 しました これは 需 要 を 増 やし 価 格 の 安 定 に 役 立 つでしょう し かし 金 融 政 策 は 低 成 長 やデフレ 圧 力 に 対 処 するために 不 可 欠 である 一 方 マイナス 金 利 の 幅 や 継 続 できる 期 間 には 限 界 がありそうだということを 強 調 しておくことが 重 要 と 考 えています 金 融 政 策 だけが 政 策 ではないということです 金 融 政 策 は 精 緻 な 構 造 改 革 成 長 を 促 す 財 政 政 策 金 融 セクターの 体 力 を 増 強 するプルーデンス 政 策 などをはじめとするバランスの 取 れた 強 力 な 政 策 アプローチの 一 環 でなければならないのです ****** ホセ ビニャルス:IMF の 金 融 顧 問 兼 金 融 資 本 市 場 局 長 前 職 はスペイン 銀 行 ( 中 央 銀 行 ) 副 総 裁 それ 以 前 は 同 中 銀 や 欧 州 連 合 (EU)で 様 々な 顧 問 や 政 策 委 員 職 を 歴 任 欧 州 中 央 銀 行 (ECB)の 国 際 関 係 委 員 会 委 員 長 も 務 め た マクロ 経 済 や 金 融 政 策 金 融 問 題 に 関 する 著 書 多 数 サイモン グレイは 2015 年 から IMF 金 融 資 本 市 場 局 の 技 術 支 援 課 の 課 長 を 務 める それ 以 前 は 同 局 で 金 融 セクター 専 門 家 のトップを 務 め 中 央 銀 行 の 金 融 政 策 の 実 施 と 外 国 為 替 の 実 務 問 題 を 担 当 27 年 間 イングランド 銀 行 ( 中 央 銀 行 ) 勤 務 の 後 2007 年 から IMF に 参 加 米 国 や 中 国 の 金 融 セクタ ー 評 価 プログラムチームでの 活 動 や 多 くの 国 への 技 術 支 援 にも 参 加 した

6 オックスフォード 大 学 卒 業 ケリー エコールドは IMF 金 融 市 場 資 本 局 の 金 融 セクター 上 席 専 門 員 ニュージーランド 中 央 銀 行 での 20 年 間 の 勤 務 を 経 て 2011 年 に IMF に 参 加 中 央 銀 行 の 金 融 政 策 の 実 施 と 外 国 為 替 の 実 務 問 題 を 担 当 韓 国 や 英 国 の 金 融 セクター 評 価 プログラムのチームに 参 加 発 展 途 上 および 新 興 市 場 国 の 技 術 支 援 に 参 加 するなど 幅 広 く IMF 業 務 に 関 与 ニュージーラ ンドのオタゴ 大 学 で 経 済 金 融 分 野 の 学 位 ( 優 等 )を 取 得