8 少 花 粉 ヒノキ 品 種 の 挿 し 木 技 術 の 確 立 県 単 :H21~23 年 度 大 川 雅 史 1.はじめに 林 業 の 主 要 な 樹 種 であるヒノキの 花 粉 症 が 花 粉 症 と 並 んで 社 会 問 題 化 している 福 岡 県 では 独 立 行 政 法 人 森 林 総 合 研 究 所 林 木 育 種 ター 九 州 育 種 場 や 九 州 各 県 と 協 力 して 2007 年 度 に 少 花 粉 ヒノ キ17 品 種 を 開 発 した これら 品 種 の 花 粉 が 少 ない という 特 性 を 保 持 した 苗 木 を 簡 易 に 生 産 するには 挿 し 木 による 増 殖 技 術 の 確 立 が 必 要 である そこで 本 研 究 では 少 花 粉 ヒノキ 品 種 の 挿 し 木 増 殖 技 術 の 確 立 を 目 的 とした 試 験 を 行 った 2. 材 料 と 方 法 1) 挿 し 木 環 境 条 件 の 検 討 材 料 は 筑 前 町 にあるヒノキ 採 種 園 ( 昭 和 42 年 設 定 )の 少 花 粉 ヒノキ6 品 種 ( 県 浮 羽 14 号 県 遠 賀 1 号 県 藤 津 4 号 県 唐 津 1 号 県 阿 蘇 3 号 県 阿 蘇 11 号 )であり 2010 年 3 月 に 穂 を 採 取 した 穂 は 長 さ 15cmとし これら 穂 の 切 り 口 を1 昼 夜 流 水 にさらした 後 オキシベロ TM液 剤 原 液 (イエクロッ プサイエ 社 イドー 酪 酸 (IBA):0.4%)に10 秒 間 浸 漬 後 直 ちにーミキュイト 小 粒 を 敷 きつめた 育 苗 箱 に 挿 し 付 けた 試 験 区 は 屋 外 で 棒 を 用 いて 半 円 状 のトネを 作 り 農 業 用 フィムで 密 閉 した 屋 外 密 閉 区 ( 寒 冷 紗 あり: 遮 光 率 50%) 温 室 内 に 屋 外 密 閉 区 と 同 じものを 設 置 した 温 室 密 閉 区 ( 寒 冷 紗 なし) 温 室 内 にミ ト 散 水 装 置 を 設 置 した 温 室 ミト 区 ( 寒 冷 紗 なし)の3 試 験 区 とした 挿 し 木 は 各 試 験 区 ごとに1 品 種 あたり10 本 の3 回 繰 返 しとした また 育 苗 箱 の 地 際 に 温 度 計 を 設 置 し 調 査 終 了 日 まで 温 度 を 測 定 した 灌 水 は 温 室 ミト 区 では 毎 回 3 分 間 のミト 灌 水 を1 日 4 回 行 った 屋 外 温 室 両 密 閉 区 で は1 週 間 に1 回 育 苗 箱 の 底 から 水 が 出 てくるまで 灌 水 を 行 った 2010 年 5 月 に 屋 外 屋 内 両 密 閉 区 の 密 閉 を 解 除 し 同 年 8 月 に 発 根 調 査 を 行 った 2)ブシノイドの 検 討 ブシノイド( 以 下 BL)は 植 物 ホモのブシノテロイドの 一 種 である 竹 松 ら(1985)は ブシノテロイドとオーキシの 組 合 せによる 発 根 促 進 効 果 を 報 告 している そこで オーキシの 一 種 であるIBAを 含 有 しているオキシベロ TM液 剤 原 液 (イエクロップサイエ 社 イドー 酪 酸 (IBA):0.4%)とBLの 併 用 がヒノキの 発 根 率 向 上 に 寄 与 するか 調 査 した 試 験 区 は 蒸 留 水 のみの0ppb 区 BL10ppm 液 (ブシノ 社 )を 蒸 留 水 で 希 釈 した0.01ppb 区 1ppb 区 100ppb 区 (1ppm=1,000ppb)の4 条 件 ( 表 -1)とした 2010 年 3 月 に1)と 同 じ 少 花 粉 ヒノキ6 品 種 から 採 取 した 穂 を15cmに 調 整 し 各 試 験 区 ごとに1 昼 夜 浸 漬 した その 後 オキシベロ 液 剤 原 液 に10 秒 間 浸 漬 し 直 ちにーミキュイト 小 粒 を 敷 きつめた 育 苗 箱 に 挿 し 付 け ミト 灌 水 が 可 能 な 温 室 に 設 置 した 灌 水 は 毎 回 3 分 間 のミト 灌 水 を1 日 4 回 行 った 2010 年 8 月 に 発 根 調 査 を 行 った 3. 結 果 と 考 察 1) 挿 し 木 環 境 条 件 の 検 討 試 験 区 別 の 発 根 率 と 地 際 温 度 の 推 移 を 図 -1 2に 示 す 発 根 率 は 屋 外 密 閉 区 が67.2% 温 室 ミ ト 区 が49.7% 温 室 密 閉 区 が41.6%であった 発 根 率 が 最 も 高 かった 屋 外 密 閉 区 の 平 均 地 際 温 度 は 密 閉 解 除 前 (1~6 週 )までは17.4 で 温 室 密 閉 区 より4 低 く 温 室 ミト 区 より1 高 く 推 移 した 密 閉 解 除 後 (7~21 週 )は25.3 で 温 室 密 閉 区 より1 低 く 温 室 ミト 区 より0.4 低 く 推 移 した - 20 -
2)ブシノイドの 検 討 BL 濃 度 および 品 種 別 の 発 根 率 を 図 -3に 示 す すべての 品 種 で1ppb 区 のときに 発 根 率 が 向 上 する 傾 向 が 見 られ た 一 方 1ppb 区 以 外 では 発 根 率 が 低 下 する 傾 向 が 見 ら れたことから BLは 濃 度 によって 発 根 を 阻 害 する 可 能 性 も 示 唆 された BL 濃 度 による 発 根 率 の 分 散 分 析 を 行 った ところ 品 種 濃 度 および 交 互 作 用 に1% 水 準 で 有 意 差 が 見 られた すなわち 品 種 によって 発 根 促 進 効 果 に 差 はあるものの BL 処 理 によって 発 根 率 が 向 上 すると 考 え られた 以 上 のことから 最 適 な 濃 度 条 件 ( 今 回 は1ppb) において BLが 少 花 粉 ヒノキの 発 根 促 進 剤 として 使 用 で きる 可 能 性 が 示 唆 された 表 -1 ブシノイド 濃 度 と 供 試 本 数 家 系 処 理 0ppb 0.01ppb 1ppb 100ppb 浮 羽 14 号 30 30 30 30 遠 賀 1 号 30 30 30 30 藤 津 4 号 30 30 30 30 唐 津 1 号 30 30 30 30 阿 蘇 3 号 30 30 30 30 阿 蘇 11 号 30 30 30 30 本 数 ( 本 ) 180 180 180 180 *1ppm=1000ppb 引 用 文 献 1) 竹 松 哲 夫 ら: 植 調 18(12),2-10,1985. 発 根 率 (%) 100 80 60 40 20 0 * a ** b b 屋 外 密 閉 区 温 室 密 閉 区 温 室 ミト 区 温 度 ( ) 35 30 25 屋 外 密 閉 区 温 室 密 閉 区 温 室 ミト 区 20 平 均 温 度 屋 外 密 閉 区 : 22.7 15 温 室 密 閉 区 : 25.8 温 室 ミト 区 : 22.7 密 閉 解 除 10 1 週 目 5 週 目 9 週 目 13 週 目 17 週 目 21 週 目 図 -1 異 なる 挿 し 木 環 境 での 発 根 率 異 なる 記 号 間 は 有 意 な 差 あり(**1% *5% 水 準 ) 図 -2 異 なる 挿 し 木 環 境 での 地 際 温 度 の 推 移 図 -3 ブシノイド 処 理 濃 度 と 品 種 別 発 根 率 藤 津 4 号 の0ppb 0.01ppbの2 処 理 は 発 根 せず - 21 -
9 林 木 の 遺 伝 育 種 に 関 する 研 究 - 花 粉 が 少 ない 在 来 品 種 の 材 質 - 県 単 :H21~22 年 度 大 川 雅 史 森 康 浩 宮 原 文 彦 1. 目 的 花 粉 症 対 策 として 少 花 粉 品 種 の 開 発 が 進 んでいる 一 方 林 業 経 営 の 観 点 から 少 花 粉 品 種 であ っても 材 質 が 優 れていなければ 普 及 しないことが 予 想 される 花 粉 症 対 策 と 林 業 活 性 化 の 両 方 を 効 果 的 に 進 めるにあたって 少 花 粉 で 材 質 が 優 れている 品 種 を 選 抜 することが 重 要 であると 考 えられるた め 本 研 究 では 花 粉 が 少 ない 在 来 品 種 について 材 質 を 調 査 し 評 価 を 行 った 2. 材 料 と 方 法 供 試 木 は 雄 花 着 花 性 に 関 する 調 査 実 施 要 領 ( 林 野 庁 1991)に 基 づき 1995~1997 年 の 平 均 着 花 指 数 が1.5 以 下 であった 福 岡 県 小 郡 市 の 在 来 品 種 保 存 林 内 の 14 品 種 (20 年 生 )とした( 表 -1) FFTナイザにより 求 めた 丸 太 の 率 とFAKOPP(ナ 社 )により 測 定 した 立 木 の 応 力 波 伝 搬 速 度 ( 音 速 )は 高 い 正 の 相 関 を 示 す( 藤 澤 ら 2003) そこで 率 の 評 価 にFAKOPPを 用 いた 2009 年 9 月 および2010 年 10 月 に 品 種 ごとに3~10 本 選 び( 表 -2) 立 木 の 地 上 高 1.7mに 送 信 部 を 0.7 mに 受 信 部 を 設 置 し 送 信 部 をハマで 打 撃 してその 応 力 波 伝 搬 時 間 から 音 速 値 を 求 めた 1 個 体 につ き 長 径 および 短 径 方 向 それぞれ2 方 向 測 定 し その 平 均 を 品 種 のFAKOPP 音 速 値 (m/s)とした さらに 2010 年 8~10 月 に 品 種 ごとに1~3 本 伐 倒 し 胸 高 部 から 円 盤 を 採 取 し 絶 乾 法 により 心 材 含 水 率 を 測 定 した( 表 -2) 3. 結 果 と 考 察 各 品 種 のFAKOPP 音 速 値 および 心 材 含 水 率 を 図 -1 2に 示 す FAKOPP 音 速 値 は2080~3014 m/s の 範 囲 を 示 し 品 種 間 で 有 意 な 差 が 見 られた(ANOVA p<0.01) FAKOPP 音 速 値 はュで 最 も 高 く ブクが 最 も 低 かった 心 材 含 水 率 は65~231%の 範 囲 を 示 し が 最 も 高 く が 最 も 低 い 結 果 となった 次 に FAKOPP 音 速 値 と 心 材 含 水 率 の 関 係 を 図 -3に 示 す ュや 星 野 1 号 イチなどの 福 岡 県 産 在 来 品 種 や 県 外 のサブ シャイは 心 材 含 水 率 が 低 く 率 が 高 い 傾 向 を 示 した 一 方 は 心 材 含 水 率 が 高 く 率 が 低 い 結 果 となった これら 花 粉 が 少 ない 在 来 品 種 の 形 質 ( 強 度 率 )を 評 価 した 結 果 率 が 高 く 心 材 含 水 率 が 低 い 品 種 の 傾 向 が 確 認 された しかし 供 試 本 数 が 少 ないことから 今 後 供 試 本 数 および 調 査 場 所 を 増 やすなど 精 度 の 高 い 材 質 評 価 を 行 う 必 要 がある 少 花 粉 でありながら 材 質 の 優 れた 品 種 を 選 抜 することができれば 林 業 経 営 に 求 められる 形 質 を 担 保 した 効 果 的 な 花 粉 症 対 策 が 可 能 になるのではな いかと 考 えられた 4. 引 用 文 献 藤 澤 義 武 ら: 日 本 木 材 学 会 大 会 研 究 発 表 要 旨 集 53,55,2003. 林 野 庁 : 平 成 3 年 林 野 庁 長 官 通 達,1991. - 22 -
品 種 名 表 -1 3 年 間 の 着 花 指 数 1995 1996 1997 大 豊 作 凶 作 並 作 平 均 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 サブ 1.00 1.00 1.00 1.00 シャイ 1.00 1.00 1.00 1.00 星 野 1 号 1.00 1.00 1.00 1.00 ホ 1.00 1.00 1.00 1.00 メサ 1.00 1.00 1.00 1.00 ブク 1.00 1.00 1.00 1.00 マチ 1.10 1.00 1.00 1.03 ュ 1.30 1.00 1.00 1.10 イチ 1.00 1.00 1.00 1.00 オビ 1.00 1.00 1.05 1.02 コノ 1.00 1.00 1.07 1.02 表 -2 品 種 名 FAKOPPと 心 材 含 水 率 の 供 試 本 数 供 試 本 数 ( 本 ) FAKOPP 心 材 含 水 率 3 3 10 1 10 1 サ ブ 10 1 シ ャ イ 10 1 星 野 1 号 10 3 ホ 9 3 メ サ 7 1 ブ ク 10 1 マ チ 10 3 ュ 9 3 イ チ 10 3 オ ビ 10 1 コ ノ 9 1 FAKOPP 音 速 値 (m/s) 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 平 均 値 ± 標 準 偏 差 ブ ク マ チ メ サ ホ オ ビ コ ノ シ ャ イ サ イ チ ブ 星 野 1 号 n=3~10 ュ 心 材 含 水 率 (%) 250 200 150 100 50 0 平 均 値 ± 標 準 偏 差 ブ ク ホ シ ャ イ サ ブ イ チ 星 野 1 号 オ ビ n=1~3 メ サ ュ マ チ コ ノ 図 -1 品 種 別 のFAKOPP 音 速 値 図 -2 品 種 別 の 心 材 含 水 率 3200 3000 ュ FAKOPP 値 (m/s) 2800 サ ブ 星 野 1 号 2600 シャ イ イチ 2400 コ ノ オビ 2200 メ サ ホ マ チ ブク 2000 50 100 150 200 250 心 材 含 水 率 (%) 図 -3 FAKOPP 音 速 値 と 心 材 含 水 率 の 関 係 - 23 -
10 京 築 ヒノキの 流 通 実 態 調 査 と 品 種 化 に 向 けた 新 たな 個 体 選 抜 県 単 :H22~24 年 度 森 康 浩 大 川 雅 史 宮 原 文 彦 1.はじめに 京 築 地 方 で 生 産 されるヒノキは 京 築 ヒノキ としてブド 化 され 心 材 色 が 赤 い と 評 価 されて いる 地 元 ではこれまで 京 築 ヒノキの 特 産 品 化 を 狙 ってきたが 流 通 実 態 や 特 性 の 多 くが 不 明 なため どこを 相 手 に 何 をPR 材 料 として 販 売 促 進 に 結 び 付 けていくべきか といった 具 体 的 戦 略 が 十 分 に 練 られ なかった 一 方 先 行 研 究 では 京 築 ヒノキの 中 で 好 まれる 心 材 色 を 評 価 し その 色 を 挿 し 木 クロー で 再 現 できるよう 特 定 の 母 樹 1 個 体 を 選 抜 した( 森 ら 2010) もしもその 母 樹 から 生 産 される1 品 種 (ク ロー)を 植 栽 していった 場 合 心 材 色 の 特 徴 が 安 定 するというメットがある 一 方 林 分 の 遺 伝 的 多 様 性 が 小 さくなるという 危 険 性 もある 以 上 のことから 本 研 究 では 京 築 ヒノキが 川 上 から 川 下 へどの ように 流 通 しているかを 調 査 するとともに 現 行 の 京 築 ヒノキのピーポイトを 明 確 にするための 特 性 調 査 を 行 う 加 えて 将 来 の 京 築 ヒノキの 品 質 安 定 化 と 環 境 変 化 に 対 応 可 能 な 森 づくりのために 母 樹 を 追 加 選 抜 する 本 年 度 は 昨 年 度 1 年 間 の 流 通 実 態 および 京 築 ヒノキの 強 度 について 報 告 する 本 研 究 は 豊 築 森 林 組 合 同 木 材 流 通 ター 京 都 森 林 組 合 行 橋 農 林 事 務 所 の 各 職 員 ならびに 熊 本 県 林 業 研 究 指 導 所 の 草 野 僚 一 博 士 に 多 大 な 協 力 をいただきました ここに 深 甚 なる 謝 意 を 表 します 2. 材 料 と 方 法 1) 京 築 ヒノキの 流 通 実 態 京 築 地 方 の 豊 築 森 林 組 合 木 材 流 通 ターおよび 京 都 森 林 組 合 から 2010 年 4 月 1 日 から2011 年 3 月 31 日 までに 生 産 されたヒノキ 素 材 ( 丸 太 ) 量 を 定 期 的 に 報 告 してもらった また 豊 築 森 林 組 合 木 材 流 通 ターについてはヒノキ 素 材 の 販 売 先 京 都 森 林 組 合 については 出 荷 先 についても 報 告 を 要 請 した さらに 豊 築 森 林 組 合 木 材 流 通 ターに 出 材 されたヒノキ 素 材 を 購 入 した 製 材 所 などを 対 象 に 1) 京 築 ヒノキとして 加 工 品 を 出 荷 しているかどうか 2) 出 荷 してなければ その 理 由 3) 京 築 ヒノキ は 他 地 域 のヒノキと 比 べて 良 質 と 思 うかどうかを 行 橋 農 林 事 務 所 を 通 じてケート 調 査 した 2) 京 築 ヒノキの 強 度 携 帯 型 の 応 力 波 伝 搬 時 間 測 定 装 置 FAKOPP Microsecond Timer(FAKOPP ENTERPRISE 社 製 ハガー) ( 以 下 FAKOPPとする)を 用 いて 非 破 壊 的 に( 伐 採 せずに) 京 築 ヒノキの 強 度 を 評 価 した 8ヵ 所 の 京 築 ヒノキ 林 ( 豊 前 市 川 内 同 市 畑 みやこ 町 犀 川 大 熊 同 町 犀 川 花 熊 築 上 町 岩 丸 同 町 本 庄 上 毛 町 西 友 枝 同 町 東 下 )および 熊 本 県 南 阿 蘇 村 河 陽 のナゴヒ( 既 存 のヒノキ 栽 培 品 種 ) 林 において 無 作 為 に 選 んだ 30 個 体 ずつを 対 象 とした いずれも 30 年 生 前 後 (28 ~ 33 年 生 )の 林 分 とした FAKOPP の 発 信 サを 測 定 対 象 木 の 地 上 高 1.7 mの 位 置 に 受 信 サを 0.7 mの 位 置 に 取 り 付 け 前 者 をハ マで 打 撃 した 際 の 応 力 波 伝 搬 時 間 から 伝 搬 速 度 を 求 めた 1 個 体 につき 長 径 および 短 径 方 向 を3 回 ず つ 測 定 し 得 られた6 個 のデータを 平 均 し その 個 体 の 値 とした 30 個 体 の 平 均 をその 林 分 の 値 とした 3. 結 果 と 考 察 1) 京 築 ヒノキの 流 通 実 態 豊 築 森 林 組 合 木 材 流 通 ターに 出 材 された 2010 年 度 1 年 間 のヒノキ 素 材 量 は5,879.0m3(は 4,635.4m3)で これらを 購 入 した 製 材 所 の 内 訳 を 図 -1に 示 した 製 材 所 の 数 や 規 模 の 地 域 差 も 要 因 として 考 えられるが 日 田 市 中 津 市 天 瀬 町 など 大 分 県 の 製 材 所 が 全 体 の77%を 購 入 していた 地 元 の 豊 前 市 の 製 材 所 は 約 5%にとどまった これら 京 築 ヒノキを 購 入 した 製 材 所 は 全 体 で13 社 あり うち6 社 ( 豊 前 市 内 の1 社 を 含 む)から ケートの 回 答 が 得 られた その 結 果 3 社 が 京 築 ヒノ - 24 -
キの 方 が 他 地 域 のヒノキよりどちらかといえば 良 質 だと 回 答 ( 残 り3 社 は 違 いがないと 回 答 )してい るものの 京 築 ヒノキとして 加 工 品 を 出 荷 している 製 材 所 は 皆 無 だった 一 方 京 都 森 林 組 合 の2010 年 度 1 年 間 のヒノキ 素 材 生 産 量 は870.4m3(は221.3m3)で 福 岡 県 森 林 組 合 連 合 会 浮 羽 事 業 所 ( 原 木 市 場 )に 出 荷 されたが そこではすべて 産 地 ごとに 区 別 されず 混 載 されていた 一 部 で 自 家 山 林 やその 他 のートで 京 築 ヒノキを 購 入 している 地 元 製 材 所 もみられるため 生 産 される 京 築 ヒノキの 行 方 を 網 羅 的 に 追 跡 できたわけではないが 上 記 の 結 果 から 京 築 ヒノキが 京 築 ヒノキとして 他 の ヒノキと 区 別 して 取 り 扱 われるのは 豊 築 森 林 組 合 由 来 のもので 流 通 ターまで 京 都 森 林 組 合 由 来 は 素 材 生 産 土 場 までであった 今 後 は 引 き 続 き 流 通 量 の 動 きを 追 跡 するとともに 京 築 ヒノ キを 購 入 した 製 材 所 のメットを 明 らかにして 差 別 化 につなげたい 2) 京 築 ヒノキの 強 度 京 築 ヒノキ8 林 分 および 熊 本 県 のナゴヒ1 林 分 のFAKOPPの 伝 搬 速 度 を 図 -2に 示 す 京 築 ヒ ノキの 林 分 は 最 も 遅 い 豊 前 市 川 内 の2,766m/s から 最 も 速 い 築 上 町 岩 丸 の3,151m/sまでの 値 を とり 8 林 分 で 平 均 2,985m/sであった 一 方 ナゴヒは 京 築 ヒノキのどの 林 分 と 比 べても 有 図 -1 豊 築 森 林 組 合 木 材 流 通 ターに 出 荷 された 意 に 高 い4,086m/sであった FAKOPPの 伝 搬 速 度 ヒノキ 素 材 の 購 入 先 と 割 合 は 強 度 の 指 標 として 一 般 に 用 いられる 率 と 高 い 正 の 相 関 があることが 知 られており( 藤 澤 市 町 村 名 は 購 入 製 材 所 の 住 所 を () 内 の 数 字 は 製 材 所 数 を %は2010 年 度 総 生 産 量 5,879m3の 素 材 材 積 ベーの 内 訳 を 示 ら 2005) 今 回 調 べた 京 築 ヒノキの 林 分 はナ す ゴヒと 比 べ 有 意 に 強 度 が 小 さいといえる 同 様 の 手 法 で 調 べた 各 地 のヒノキ 林 分 の 平 均 をみて も 熊 本 県 芦 北 町 の 精 英 樹 遺 伝 試 験 林 (28 年 生 ) では3,351m/s( 藤 澤 ら 2003) 大 分 県 大 野 町 の 精 英 樹 次 代 検 定 林 (29 年 生 )では3,502m/s( 藤 澤 ら 2005) 宇 都 宮 大 学 演 習 林 (27 年 生 )で は3,150m/s( 石 栗 ら 2006)と 少 なくともデ ータの 公 表 されているヒノキ 林 と 比 べると 強 度 は 決 して 高 いとはいえなかった 今 後 は 心 材 色 について ナゴヒとの 違 いを 明 らかにする 予 定 である 引 用 文 献 1) 藤 澤 義 武 ら: 九 州 森 林 研 究 56,180-181,2003. 2) 藤 澤 義 武 ら: 九 州 森 林 研 究 58,142-143,2005. 3) 石 栗 太 ら: 材 料 55,576-582,2006. 4) 森 康 浩 ら: 木 材 学 会 誌 56,355-363,2010. 図 -2 京 築 ヒノキとナゴヒのFAKOPPの 伝 搬 速 度 平 均 値 ± 標 準 偏 差 を 表 す 異 なるファベットは 有 意 に 異 なることを 表 す(Scheffeの 多 重 比 較 :p<0.05) - 25 -