中 国 でのパッシング オフ 事 件 の 対 応 策 高 国 征 * 増 田 由 希 子 ( 訳 ) ** Gordon Gao 目 次 関 連 法 規 商 標 及 びトレード ドレスの 保 護 未 登 録 商 標 の 保 護 ケース スタディ 1 ケース スタディ2 ケース スタディ3 パッシング オフ 行 為 ( 詐 称 通 用 )とは, 商 品 また は 役 務 が 他 者 の 商 品 または 役 務 と 関 連 性 があるかのよ うに 偽 った 外 観 を 作 り 出 す 行 為 で, 中 国 においては 一 般 に 包 装 や 装 飾 (トレード ドレス)の 模 倣 行 為 がそ れにあたる (1) 中 国 の 法 学 部 教 育 においてパッシング オフ 関 連 法 規 は 重 視 されておらず,また 膨 大 な 中 国 司 法 試 験 の 教 材 にもそれに 関 する 記 述 は 数 ページしか 割 かれていない 結 果 として, 中 国 の 弁 護 士 の 多 くはパッ シング オフに 関 する 法 律 に 対 する 理 解 が 不 十 分 で, 訴 訟 において 効 果 的 とはいえない 戦 略 や 戦 術 を 用 いて いる 本 稿 では,ケース スタディを 参 照 しつつ,パッ シング オフ 事 件 において 代 理 人 が 依 頼 者 の 利 益 をよ り 有 効 に 保 護 するための 方 法 について 検 討 する 関 連 法 規 中 国 民 法 通 則 は 不 正 競 争 の 防 止 に 関 する 基 本 原 則 を 規 定 しており, 同 法 第 4 条 は, 民 事 活 動 においては, 自 由 意 志, 公 平, 等 価 有 償 及 び 信 義 誠 実 の 原 則 を 遵 守 しなければならない と 定 める 中 国 では, 裁 判 官 や 学 者 の 解 釈 により 同 条 項 から 導 き 出 された 信 義 誠 実 の 原 則 などが, 長 きにわたり 不 正 競 争 事 件 における 唯 一 の 根 拠 となっていたが, 同 条 の 文 言 が 曖 昧 であるため, 実 際 にはほとんど 役 に 立 たないものであった その 後,1993 年 12 月 1 日 に 中 国 不 正 競 争 防 止 法 が 施 行 された 同 法 第 2 条 は, 第 1 文 において 民 法 通 則 第 4 条 の 精 神 を 示 し, 第 2 文 において 本 法 に 言 う 不 正 競 争 とは, 事 業 者 が 本 法 の 定 めに 違 反 し, 他 の 事 業 者 の 合 法 的 な 権 益 に 損 害 を 与 え, 社 会 の 経 済 秩 序 を 乱 す 行 為 を 言 う と 定 める 不 正 競 争 防 止 法 はいくつか の 不 正 競 争 行 為 について 具 体 的 定 めを 置 いているが, 列 挙 されていない 他 の 不 正 競 争 行 為 については 第 2 条 を 通 じて 本 法 を 適 用 することが 意 図 されている 商 標 及 びトレード ドレスの 保 護 不 正 競 争 防 止 法 第 5 条 はパッシング オフ 行 為 の 形 態 を 列 挙 する 第 2 号 及 び 第 3 号 は 商 号 に 関 する 規 定 である 事 業 者 は, 次 の 各 号 にかかる 不 正 な 手 段 を 用 いて 市 場 取 引 に 従 事 し, 競 争 相 手 に 損 害 を 与 えてはなら ない 著 名 商 品 特 有 の 名 称, 包 装, 装 飾 を 無 断 で 使 用 し, または 著 名 商 品 に 類 似 する 名 称, 包 装, 装 飾 を 使 用 し, 他 人 の 著 名 商 品 との 混 同 をもたらし, 顧 客 にその 著 名 商 標 と 誤 認 させること ( 第 2 号 ) 他 人 の 企 業 名 称 または 姓 名 を 無 断 で 使 用 し, 他 人 の 商 品 と 誤 認 させること ( 第 3 号 ) また, 国 家 工 商 行 政 管 理 局 は 1995 年 に 周 知 商 品 の 特 有 名 称, 包 装, 装 飾 を 偽 る 不 正 競 争 行 為 の 禁 止 に 関 する 若 干 の 規 定 を 公 布 した 本 規 定 でいう 周 知 商 品 の 特 有 名 称 とは, 通 常 使 用 される 名 称 と 顕 著 な 区 別 のある 独 特 な 商 品 名 称 を 指 すが, 登 録 商 標 は 除 外 されている 包 装 とは, 商 品 を 識 別 し, 携 帯 に 便 利 で, 保 存 や 輸 送 に 使 用 される 商 品 上 の 付 属 物 及 び 容 器 を 指 す 一 方, 装 飾 とは, 識 別 及 び 商 品 美 観 の ために 商 品 上 に 付 される 文 字,デザイン, 色 彩 及 びそ の 組 み 合 わせを 指 す * 米 国 カリフォルニア 州 弁 護 士, 米 国 弁 理 士 (ポール ヘイス ティングス ジャノフスキー アンド ウォーカー LLP 北 京 事 務 所 オフカウンセル) ** 米 国 ニューヨーク 州 弁 護 士 (ポール ヘイスティングス ジャ ノフスキー アンド ウォーカー LLP 北 京 事 務 所 アソシエイ ト) パテント 2005-21 -
一 般 消 費 者 が 通 常 の 注 意 を 払 って 二 つの 商 品 の 名 称, 包 装, 装 飾 を 混 同 するであろう 場 合 または 実 際 に 混 同 が 生 じた 場 合 に, 混 同 があると 判 断 される また, 周 知 性 の 立 証 の 困 難 を 緩 和 するため, 同 規 定 は, 同 一 または 類 似 の 商 品 名 称, 包 装, 装 飾 が 他 人 に 使 用 され, 購 買 者 が 誤 認 する 場 合 に, 同 商 品 を 周 知 商 品 と 判 断 し うると 定 める パッシング オフの 存 在 が 認 定 される と, 関 連 当 局 は 違 反 者 に 同 行 為 の 停 止 を 命 じ, 罰 金 ま たは 商 品 没 収 といった 罰 則 を 課 すことができる 工 業 所 有 権 の 保 護 に 関 するパリ 条 約 ( 以 下, パリ 条 約 という)の 加 盟 国 である 中 国 は, 商 号 の 保 護 を 義 務 付 けられている パリ 条 約 第 8 条 は, 商 標 の 一 部 を 構 成 するか 否 かに 関 わらず,また 出 願 や 登 録 を 要 件 とすることなく 商 号 を 保 護 するよう 義 務 付 けている 上 述 の 国 家 工 商 行 政 管 理 局 規 定 は, 周 知 商 品 の 名 称 に 対 しパリ 条 約 第 8 条 に 沿 った 保 護 を 与 えていると 言 える 未 登 録 商 標 の 保 護 パリ 条 約 第 6 条 の 2 は, 加 盟 国 が 登 録 国 または 使 用 国 で 著 名 と 認 識 されている 商 標 の 保 護 を 義 務 付 けてい る 中 国 は 同 条 遵 守 のため, 商 標 法 を 修 正 し, 修 正 後 の 商 標 法 第 13 条 は 以 下 のように 規 定 されている 同 一 または 類 似 の 商 品 について 出 願 した 商 標 が, 中 国 で 登 録 していない 他 人 の 著 名 商 標 を 複 製, 模 倣 または 翻 訳 したもので, 当 該 著 名 商 標 と 混 同 しやす い 場 合 は,これを 登 録 せず,かつその 使 用 を 禁 止 する 同 一 でないまたは 類 似 しない 商 品 について 出 願 し た 商 標 が, 中 国 で 登 録 した 他 人 の 著 名 商 標 を 複 製, 模 倣 または 翻 訳 したもので,かつ 公 衆 が 誤 認 し, 当 該 著 名 商 標 の 登 録 者 の 利 益 に 損 害 を 与 えるおそれの ある 場 合 は,これを 登 録 せず,かつその 使 用 を 禁 止 する 従 って 本 条 によれば, 登 録 商 標 の 保 護 は 非 類 似 の 商 品 にも 及 ぶのに 対 し, 未 登 録 商 標 の 保 護 はそれが 著 名 である 商 品 分 野 に 限 定 される 著 名 商 標 の 問 題 に 対 する 補 充 規 定 として, 国 家 工 商 行 政 管 理 局 から 著 名 商 標 の 認 定 及 び 保 護 に 関 する 規 則 ( 以 下, 著 名 商 標 規 則 という) が 公 布 され, 2003 年 6 月 1 日 に 施 行 された 同 規 則 第 2 条 は, 本 規 定 中 の 著 名 商 標 とは, 中 国 において 関 係 する 公 衆 に 熟 知 され,かつ 比 較 的 高 い 名 声 を 有 する 商 標 と 定 義 する これによれば,パリ 条 約 第 6 条 の 2 の 保 護 を 具 体 化 した 中 国 商 標 法 第 13 条 の 適 用 を 受 けるためには, 商 標 は 中 国 において 著 名 でなくてはならないことにな る パリ 条 約 第 6 条 の 2 が 登 録 国 または 使 用 国 での 著 名 性 のみを 要 求 するのに 対 し, 中 国 では 同 国 内 での 著 名 性 という 加 重 要 件 が 課 されているため, 中 国 法 は 外 国 の 著 名 商 標 に 対 する 保 護 が 不 十 分 であるとの 批 判 を 受 けている 著 名 商 標 規 則 の 下, 保 護 を 求 める 商 標 権 者 は 省 級 市 級 またはそれ 以 上 の 工 商 行 政 管 理 局 に 対 し, 商 標 法 第 13 条 の 下 の 商 標 侵 害 行 為 に 関 する 申 立 てを 行 わな ければならない この 申 立 ては 同 局 により 商 標 局 に 送 られ,そこにおいて 対 象 商 標 が 著 名 商 標 か 否 かが 判 断 される 商 標 が 著 名 と 判 断 されると, 第 三 者 はかかる 商 標 を 使 用 または 登 録 することができない 著 名 でな いと 判 断 された 場 合, 申 立 てを 行 った 商 標 権 者 はその 判 断 から 1 年 間,かかる 商 標 に 関 する 再 度 の 申 立 てを 行 うことができない なお, 著 名 商 標 規 則 第 12 条 は, 商 標 がひとたび 著 名 商 標 として 保 護 されると,かかる 商 標 が 後 の 案 件 においても 著 名 商 標 と 推 定 されると 規 定 していることに 留 意 されたい 84 消 毒 液 を 巡 る 2001 年 最 高 裁 判 所 事 件 (ケース スタディ 3 参 照 )は 未 登 録 商 標 の 保 護 に 関 する 裁 判 所 の 基 本 姿 勢 を 示 すものであるが,ここから 中 国 におけ るパッシング オフ 事 件 に 対 処 するにあたり 留 意 すべ き 点 として 以 下 の 三 点 が 導 かれよう 第 一 は, 知 的 財 産 権 の 保 護 戦 略 の 重 要 性 である 本 件 において, 原 告 が 知 的 財 産 権 保 護 戦 略 を 事 前 に 検 討 していたならば, 被 告 による 権 利 侵 害 に 当 たってより 多 くの 法 的 解 決 手 段 があったと 思 われる 例 えば, 原 告 はその 製 法 の 特 許 を 取 得 し, 営 業 秘 密 として 保 護 し,または 84 の 名 称 を 商 標 登 録 し,かつライセン ス 契 約 において 同 製 法 及 びその 名 称 の 普 及 を 制 限 する こともできたであろう さらに,これらの 戦 略 をとっ ていれば, 原 告 は 特 許 侵 害, 営 業 秘 密 の 不 正 使 用, 商 標 侵 害 などを 根 拠 に 訴 訟 を 提 起 することもできたであ ろう 第 二 に, 上 記 のような 事 前 戦 略 を 欠 く 場 合 であって も,より 有 利 な 訴 訟 戦 略 を 選 択 することの 重 要 性 が 挙 げられる 本 件 において 原 告 は, 被 告 を 契 約 違 反 で 訴 えることもできたであろうし, 第 一 審 裁 判 所 が 被 告 に よる 原 告 と 類 似 の 包 装 や 装 飾 の 使 用 を 示 唆 していたこ とを 勘 案 すれば,トレード ドレス 侵 害 を 主 張 するこ - 22 - パテント 2005
ともできたであろう しかしながら 本 件 原 告 は, 著 名 商 品 の 特 有 名 称 の 不 正 使 用 に 基 づく 84 という 名 称 の 消 毒 剤 に 関 する 使 用 の 停 止, 公 衆 メディアにおける 同 マークを 使 用 した 広 告 の 停 止, 謝 罪 そして 損 害 賠 償 のみしか 請 求 しなかった これらの 主 張 は 不 十 分 と 言 わざるを 得 ない 第 三 の 点 として, 訴 訟 において 当 事 者 は, 個 々の 主 張 にのみとらわれず 事 件 を 全 体 として 捉 え, 裁 判 官 に も 事 件 の 全 体 像 を 把 握 させるよう 努 めなければならな い 本 件 において 原 告 は, 著 名 商 品 の 特 有 名 称 の 不 正 使 用 に 関 する 主 張 にのみ 労 力 を 注 ぎ, 被 告 がトレード ドレスやマーク 全 体 から 生 じる 印 象 を 模 倣 した 点 など を 主 張 しなかった このため, 裁 判 所 は 著 名 商 品 の 特 有 名 称 の 不 正 使 用 に 関 する 審 理 のみを 行 い, 事 件 全 体 から 見 た 被 告 の 侵 害 意 図 などを 考 慮 することがなかっ た 日 米 の 知 的 財 産 弁 護 士 が 訴 訟 において 可 能 な 一 切 の 主 張 を 行 うのに 対 し, 中 国 の 弁 護 士 は 訴 えを 成 立 さ せるのに 足 りるだけの 主 張 しか 行 わない 傾 向 がある が,これは 極 めて 危 険 な 行 為 である 知 的 財 産 権 に 関 する 案 件 は 往 々にして 事 実 関 係 が 複 雑 であるため, 裁 判 官 が 当 事 者 の 思 惑 と 異 なる 判 断 を 下 すことが 少 なく ないため,どのような 場 合 にも 対 応 できるよう 可 能 な 議 論 を 全 て 用 意 しておくことが 重 要 である 以 上 概 観 したように, 中 国 のパッシング オフ 関 連 法 規 は 最 新 のパッシング オフ 法 の 基 本 的 要 素 を 具 備 しており, 複 雑 な 訴 訟 案 件 においても 効 果 的 に 適 用 す ることが 可 能 である 本 稿 で 検 討 した 案 件 はパッシン グ オフ 事 件 に 関 する 良 い 先 例 となっているが, 全 て の 事 件 において 原 告 の 権 利 が 十 分 に 保 護 されたとはい えない 中 国 では 従 来, 訴 訟 における 主 導 的 かつ 積 極 的 な 役 割 は 裁 判 官 が 担 ってきたが, 最 近 はこのやり 方 を 煩 わしく 感 じる 裁 判 官 も 増 え 始 めている (2) 今 後 は, 中 国 の 訴 訟 においても 弁 護 士 が 積 極 的 な 役 割 を 担 うこ とになり, 担 当 する 弁 護 士 の 質 が 訴 訟 成 功 の 鍵 を 握 る ことになると 思 われる ケース スタディ 1 商 標 及 び 商 号 に 関 する 事 件 ( 上 海 市 高 級 裁 判 所 (2003 年 ) 知 的 財 産 権 案 件 41 号 ) 第 一 原 告 である HOYA 株 式 会 社 は 視 覚 光 学 レン ズを 製 造 販 売 する 日 本 企 業 である 同 社 は 1990 年 に 中 国 において HOYA を 商 標 登 録 し,1995 年 に 第 二 原 告 である 中 国 子 会 社, 豪 雅 ( 広 州 ) 公 司 を 設 立 した 1997 年,HOYA 株 式 会 社 は HOYA の 中 国 語 版 ( 豪 雅 )を 商 標 登 録 した 2001 年 上 海 豪 雅 光 学 眼 鏡 有 限 公 司 ( 以 下, 被 告 という)が 設 立 され, 原 告 らと 同 種 の 事 業 を 開 始 した 被 告 の 商 品 包 装 には, 上 海 豪 雅 光 学 及 び 上 海 豪 雅 光 学 眼 鏡 有 限 公 司 商 品 の 文 字 が 全 て 中 国 語 で 印 刷 されていた 第 一 審 の 上 海 市 第 一 中 級 裁 判 所 が 原 告 らの 請 求 を 支 持 し, 被 告 が 上 訴 した 上 海 市 高 級 裁 判 所 は, 判 決 において 被 告 による 信 義 誠 実 原 則 の 違 反 を 認 めた 一 方, 被 告 が 豪 雅 の 文 字 をその 商 号 として 使 用 したのは, 豪 雅 ( 広 州 ) 公 司 に 対 するパッシング オフ 行 為 であるが,HOYA 株 式 会 社 に 対 するパッシング オフ 行 為 ではないと 判 断 し た この 点 に 関 し 裁 判 所 は,HOYA 株 式 会 社 の 日 本 に おける 登 記 商 号 は ホーヤ 株 式 会 社 であり,それに 相 応 する 日 本 の 漢 字 名 称 は 保 谷 株 式 会 社 であった が, 関 連 消 費 者 が ホーヤ 及 び 保 谷 と 豪 雅 の 間 で 混 同 をする 可 能 性 はないと 理 由 付 けた 他 方, 被 告 が 豪 雅 を 商 号 の 一 部 に 使 用 した 行 為 及 び 上 海 豪 雅 光 学 の 文 字 を 包 装 に 使 用 した 行 為 は,HOYA 株 式 会 社 の 登 録 商 標 である 豪 雅 の 商 標 侵 害 であると 判 断 した ケース スタディ 2 フェア ユースとトレード ドレス 侵 害 に 関 する 事 件 ( 上 海 市 高 級 裁 判 所 (2003 年 ) 知 的 財 産 案 件 49 号 ) 原 告 の 上 海 避 風 塘 美 食 有 限 公 司 は 1998 年 に 設 立 さ れ,その 料 理 が 多 くの 賞 を 受 賞 したことにより 有 名 に なったレストランチェーンである 被 告 は 2001 年 に レストランを 開 き,ショーウインドー 及 び 店 内 に 避 風 塘 のサインを 掲 げた 被 告 はさらに, 原 告 と 同 じ ように, 白 地 に 緑 で 書 いた 避 風 塘 の 文 字 をメニュー に 使 い, 原 告 のドア サイン( 皆 がこぞって 食 べにやっ てくる ) 及 びスローガン( たった 20 ~ 30 元 で 美 味 し い 驚 き! )を 模 倣 した 原 告 のパンフレットには, 避 風 塘 の 語 が 香 港 の ビクトリア 港 の 漁 師 が 運 営 する 行 商 人 船 から 発 生 した 料 理 法 であると 説 明 されていた また 証 拠 によると, 2001 年 に 中 国 商 標 再 審 委 員 会 は 第 三 者 による 避 風 塘 商 標 のレストラン 役 務 分 野 での 出 願 を, 避 風 塘 パテント 2005-23 -
が 料 理 法 の 説 明 であるとの 理 由 で 拒 絶 していた 裁 判 所 は 原 告 の 商 号 に 避 風 塘 の 文 字 が 含 まれており, その 役 務 が 著 名 であることを 認 める 一 方, 避 風 塘 マークの 使 用 について 独 占 権 を 認 めるべきではないと 判 断 した 法 律 によって 保 護 される 著 名 役 務 の 名 称 は, 役 務 の 一 般 的 名 称 から 区 別 できるような 特 別 な 名 称 で なくてはならないとの 理 由 から, 料 理 法 の 説 明 である 避 風 塘 の 語 は 原 告 に 特 有 のものではなく, 例 え 避 風 塘 の 文 字 が 原 告 の 使 用 によって 識 別 力 を 獲 得 し, 原 告 に 特 有 の 名 称 であると 認 められたとしても, 被 告 が 避 風 塘 の 語 を 料 理 法 の 説 明 として 使 用 するのは フェア ユースであり,パッシング オフ 行 為 を 構 成 しないと 判 断 された 被 告 によるドア サイン,スローガン 及 びメニュー の 色 彩 の 模 倣 について 裁 判 所 は, 本 件 は 商 号, 著 名 役 務 の 名 称 および 虚 偽 広 告 についての 紛 争 であり,ド ア サイン,スローガン 及 びメニューの 色 彩 の 模 倣 は 本 件 と 無 関 係 であり, 上 訴 審 の 審 理 対 象 ではない と 判 断 した これは 原 告 が 訴 訟 提 起 に 当 たり, 被 告 の 行 為 が 原 告 の 商 号 及 び 著 名 役 務 の 名 称 の 侵 害 及 び 虚 偽 広 告 を 構 成 する と 主 張 する 一 方,トレード ドレス 侵 害 に 基 づく 被 告 によるドア サイン,スローガン 及 びメニューの 色 彩 の 模 倣 行 為 差 止 めに 関 する 請 求 を 行 っていなかったためと 思 われる 原 告 がトレード ドレス 侵 害 の 主 張 をしていたならば, 裁 判 所 がかかる 模 倣 を 無 関 係 と 判 断 することはなかったであろう ま た, 被 告 の 避 風 塘 文 字 の 使 用 がフェア ユースと 判 断 されたとしても,トレード ドレス 侵 害 を 根 拠 に 原 告 は 本 件 の 勝 訴 を 得 られたかもしれない ケース スタディ 3 未 登 録 商 標 に 関 する 事 件 ( 最 高 裁 判 所 (2001 年 ) 知 的 財 産 案 件 1 号 ) 1984 年 に 原 告 の 北 京 地 坦 医 院 は, 消 毒 液 ( 以 下, 本 件 消 毒 液 という)の 製 法 を 発 見 し,これについて 84 という 名 称 を 使 用 していた 同 病 院 はこの 発 見 につい ていくつかの 賞 を 受 賞 し,その 後 本 件 消 毒 液 を 製 造 販 売 する 会 社 を 設 立 し, 龍 安 ブランド 84 消 毒 液 とい う 商 標 を 使 用 した 1997 年 までに, 国 内 の 30 社 に 対 し 本 件 消 毒 液 を 製 造 販 売 するライセンスを 与 え,ライ センシーは 全 て, 84 という 名 称 と 共 に 自 己 の 商 標 を 製 品 に 付 していた 国 家 工 商 行 政 管 理 局 は, 増 加 す る 模 造 品 からの 保 護 のために 2000 年 に 特 別 通 知 を 出 し, 地 方 の 工 商 行 政 管 理 局 に 対 し 84 という 名 称 を 周 知 商 品 の 名 称 として 保 護 するよう 要 請 した (3) 1987 年, 原 告 は 金 湖 県 有 機 工 場 に 対 し 江 蘇 省 で 本 件 消 毒 液 を 製 造 販 売 するライセンスを 与 えた 金 湖 県 有 機 工 場 はその 後 香 港 会 社 との 間 で 合 弁 会 社 である 愛 特 福 保 険 品 公 司 ( 以 下, 被 告 という)を 設 立 し, 愛 特 福 ブランド 84 消 毒 液 の 商 標 を 使 用 して 本 件 消 毒 液 を 全 国 で 販 売 した 原 告 は 被 告 による 84 という 名 称 の 消 毒 液 に 関 する 使 用 とこれを 利 用 した 広 告 の 停 止 を 求 め 訴 訟 を 提 起 した 第 一 審 の 北 京 市 高 級 裁 判 所 が 被 告 の 権 利 侵 害 を 認 めたため, 被 告 が 上 訴 した 上 訴 審 において,1996 年 に 被 告 が 84 という 名 称 を 一 部 に 含 む 商 標 の 登 録 出 願 をし,1999 年 に 原 告 が 類 似 の 出 願 を 行 っていたことが 判 明 した さらにラ イセンシーのうちの 一 社 がやはり 84 商 標 の 出 願 を したが,これらの 出 願 は 全 て 記 述 的 であることを 理 由 に 商 標 局 に 登 録 が 拒 絶 されていた また, 被 告 に 対 し 手 違 いによって 認 められた 84 商 標 に 対 し, 原 告 が 取 消 し 申 立 てを 行 い, 商 標 再 審 委 員 会 に 対 する 意 見 の 中 で 84 が 既 に 商 品 の 俗 称 になっている 旨 の 主 張 を 行 ったことも 判 明 した さらに, 衛 生 部 公 布 の 健 康 関 連 商 品 の 名 称 に 関 す る 規 則 は, 保 険 関 連 商 品 の 名 称 中 に 商 標, 一 般 的 名 称 及 び 特 性 の 三 要 素 を 含 むべきことを 定 めている 2002 年 の 時 点 で 衛 生 部 には 84 を 名 称 の 一 部 に 含 む 商 品 名 が 5 つ 登 録 されており,その 中 には 原 告 の 龍 安 ブランド 84 消 毒 液 及 び 被 告 の 愛 特 福 ブランド 84 消 毒 液 があった これらの 事 実 に 基 づき, 最 高 裁 判 所 は 以 下 のように 判 断 した 著 名 商 品 に 特 有 の 名 称 は 商 品 の 一 般 的 名 称 であるべきではなく, 同 名 称 には 著 名 商 品 を 同 類 の 他 商 品 と 区 別 する 顕 著 な 特 徴 がなくてはならない 取 引 において 一 般 に 使 用 される 名 称 は 一 般 的 名 称 とみなさ れるべきである 原 告 は 本 件 消 毒 液 の 技 術 を 数 社 にラ イセンスしたが,そのライセンス 契 約 において 84 という 名 称 の 使 用 を 制 限 しなかった 結 果 として, 84 という 名 称 は 各 ライセンシー 独 自 の 商 標 と 共 に 一 般 的 名 称 として 使 用 されるようになり, 出 所 識 別 力 を 失 っ た さらに 原 告 自 身 が 商 標 再 審 委 員 会 に 対 する 被 告 商 標 の 取 り 消 し 申 し 立 てにおいて, 84 という 名 称 が 当 該 商 品 の 俗 称 であることを 認 めており, 84 は 周 - 24 - パテント 2005
知 商 品 の 名 称 とは 認 められない 注 (1) 侵 害 された 商 標 が 登 録 商 標 である 場 合 には, 商 標 法 に 基 づいて 事 案 が 審 理 され,パッシング オフの 問 題 には ならないのが 通 常 である (2) 例 えば,2003 年 12 月 に 北 京 市 高 級 裁 判 所 で 開 催 された 会 議 において, 同 会 議 に 出 席 していた 裁 判 官 は 英 米 の 当 事 者 対 抗 主 義 の 裁 判 に 見 られるような 審 理 進 行 の 指 針 を 中 国 弁 護 士 が 裁 判 官 に 提 供 することを 率 直 に 要 求 した (3) 周 知 商 品 の 特 有 名 称, 包 装, 装 飾 の 保 護 に 関 する 規 定 については, 本 稿 商 標 及 びトレード ドレスの 保 護 部 分 参 照 ( 原 稿 受 領 2005.4.22) パテント 2005-25 -