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Transcription:

緊 急 意 見 書 参 議 院 での 海 賊 対 処 法 案 廃 案 を 求 める はじめに いま 起 っている 事 態 永 田 町 とソマリア 沖 で 第 1 不 審 船 対 処 から 三 軍 統 合 派 兵 へ 1 船 団 護 衛 と 不 審 船 対 処 2 P3Cの 派 遣 と 米 日 軍 事 一 体 化 3 三 軍 統 合 根 拠 地 と 共 同 作 戦 第 2 衆 議 院 審 議 が 投 げかけたもの 1 超 スピード 審 議 と 既 成 事 実 の 先 行 2 自 衛 隊 派 兵 の 本 質 の 露 呈 3 投 げかけられた 問 題 点 第 3 修 正 では 解 決 しない 1 修 正 協 議 と 民 主 党 修 正 案 2 本 質 は 変 わらず 構 造 的 問 題 は 解 決 しない 3 方 向 を 誤 った 法 案 と 修 正 案 おわりに 参 議 院 の 良 識 の 発 揮 を 2009 年 5 月 11 日 自 由 法 曹 団 はじめに いま 起 っている 事 態 ソマリア 沖 と 永 田 町 で 2009 年 3 月 13 日 海 賊 行 為 の 処 罰 及 び 海 賊 行 為 への 対 処 に 関 する 法 律 案 ( 海 賊 対 処 法 案 )が 国 会 に 提 出 された 海 賊 対 処 を 口 実 に 自 衛 隊 の 恒 常 的 な 海 外 派 兵 を 認 めよ うとするものであり 4 月 15 日 から 衆 議 院 海 賊 テロ 対 策 特 別 委 員 会 での 審 議 が 開 始 さ れた 翌 3 月 14 日 さざなみ さみだれ の2 隻 の 護 衛 艦 が 呉 を 出 航 し ソマリアに 向 かった 2 隻 の 護 衛 艦 は3 月 末 からアデン 湾 で 日 本 関 係 船 舶 の 護 衛 任 務 につき すでに 4 回 にわたって 不 審 船 と 対 峙 する 事 態 を 発 生 させている 全 国 1800 名 余 の 弁 護 士 で 構 成 する 自 由 法 曹 団 は 4 月 9 日 警 察 活 動 を 口 実 にした 海 外 派 兵 武 力 の 行 使 ソマリア 沖 派 兵 と 海 賊 対 処 法 案 に 反 対 する ( 以 下 意 見 書 )を 発 表 した 意 見 書 では ソマリア 沖 の 事 態 は 国 際 紛 争 であって 護 衛 艦 の 武 力 行 使 は 日 本 国 憲 法 を 蹂 躙 するものであること( 第 Ⅰ 部 ) 問 題 解 決 にはソマリアの 政 治 経 済 の 再 建 と 治 安 の 回 復 以 外 に 道 がなくそのための 協 力 こそ 求 められていること( 第 Ⅲ 部 )を 指 摘 する ととともに 海 賊 対 処 法 案 の 問 題 点 を 逐 条 ごとに 詳 細 に 解 明 している( 第 Ⅱ 部 ) 1

これらの 問 題 は 国 権 の 最 高 機 関 であり 唯 一 の 立 法 機 関 である 国 会 で 十 二 分 に 審 議 され 解 明 されねばならない 問 題 のはずであった だが 法 案 審 議 がはじまったば かりの 段 階 で 政 府 与 党 からは 早 くも 衆 議 院 での 採 決 が 叫 ばれ 野 党 第 一 党 の 民 主 党 か らは 呼 応 するように 修 正 協 議 による 早 期 収 拾 の 方 向 が 打 ち 出 された また 防 衛 省 は 海 上 自 衛 隊 に 所 属 するP3C 哨 戒 機 を 派 遣 してソマリアに 隣 接 するジ ブチに 根 拠 地 をおき その 根 拠 地 の 警 備 や 補 給 のために 陸 上 自 衛 隊 航 空 自 衛 隊 を 派 兵 す るとの 発 表 を 行 った そうなれば ジブチには 三 軍 統 合 の 海 外 軍 事 拠 点 が 出 現 するこ とになる 自 由 法 曹 団 は 4 月 21 日 緊 急 意 見 書 修 正 で 問 題 は 解 決 しない-ソマリア 沖 派 兵 の 中 止 と 対 処 法 案 の 廃 案 を 求 める を 発 表 し こうした 事 態 に 解 明 批 判 を 加 えるとと もに 派 兵 中 止 と 廃 案 を 強 く 要 求 した だが 政 府 与 党 は4 月 23 日 に 委 員 会 と 本 会 議 での 採 決 を 強 行 し 法 案 は 参 議 院 に 送 付 された 本 緊 急 意 見 書 は 4 月 21 日 付 緊 急 意 見 書 をベースに 増 派 をめぐる 問 題 や 衆 議 院 で の 審 議 民 主 党 修 正 案 をめぐる 問 題 を 大 幅 に 補 充 したものである 4 月 9 日 付 意 見 書 と 本 緊 急 意 見 書 が 参 議 院 での 法 案 審 議 と 国 民 的 な 検 討 批 判 に 寄 与 できれば 幸 甚 である 第 1 不 審 船 対 処 から 三 軍 統 合 派 兵 へ 1 船 団 護 衛 と 不 審 船 対 処 (1) 日 本 関 係 船 舶 の 護 衛 作 戦 ソマリア 沖 への 護 衛 艦 の 派 遣 は 連 合 海 軍 の 海 賊 掃 討 作 戦 が 展 開 されている 海 域 への 戦 闘 艦 艇 の 派 遣 であり これまでのどの 自 衛 隊 派 兵 にもまして 海 賊 船 等 との 対 峙 交 戦 に 及 ぶ 可 能 性 がおおきい その 護 衛 艦 は3 月 30 日 からアデン 湾 で 船 団 護 衛 の 任 務 につき 5 月 6 日 までに15 回 の 船 団 護 衛 を 行 った( 以 下 月 日 は 日 本 時 間 で 表 記 ) 護 衛 の 対 象 とした 日 本 関 係 船 舶 ( 日 本 籍 船 と 日 本 企 業 が 運 用 する 他 国 籍 船 )は44 隻 とされている(1 回 平 均 は2.9 隻 ) 政 府 の 説 明 によれば アデン 湾 を 航 行 する 日 本 関 係 船 舶 は 年 間 2000 隻 を 下 らず 平 均 10 隻 程 度 の 船 団 を 護 衛 するとのことであった 3 分 の1 以 下 だったのは 世 界 同 時 不 況 の 影 響 で 航 行 する 船 舶 が 減 ったこと 舷 側 の 高 い 高 速 船 は 護 衛 を 受 けずに 航 行 している こと 喜 望 峰 を 迂 回 する 船 舶 が 増 えたことなどが 原 因 と 言 われている この15 回 の 護 衛 作 戦 では 日 本 関 係 船 舶 に 接 近 する 海 賊 船 不 審 船 等 は 出 現 しなかっ たが もし 不 審 船 等 が 現 れていたら 停 船 命 令 や 威 嚇 射 撃 などの 事 態 が 発 生 していた 可 能 性 は 十 分 にある 護 衛 艦 派 遣 の 根 拠 とされている 海 上 警 備 行 動 ( 自 衛 隊 法 第 82 条 )で 2

も 停 船 命 令 などの 権 限 は 行 使 でき 警 職 法 第 7 条 による 危 害 射 撃 も 不 可 能 ではない 構 造 になっているからである( 自 衛 隊 法 第 93 条 ) (2) 海 上 警 備 行 動 を 逸 脱 した 不 審 船 への 対 処 日 本 関 係 船 舶 の 護 衛 で 不 審 船 と 対 峙 することがなかった 護 衛 艦 は 以 下 のとおり 外 国 船 舶 に 接 近 する 不 審 船 との 対 峙 を 繰 り 返 した 1 4 月 4 日 シンガポール 籍 のタンカーの 通 報 によって さざなみ が 急 行 サーチ ライトで 照 射 したうえ 大 音 響 発 生 装 置 によって 現 地 用 語 で 海 上 自 衛 隊 の 艦 艇 であ ることを 通 告 4 隻 の 不 審 船 は 現 場 を 離 脱 2 4 月 11 日 マルタ 籍 の 商 船 の 通 報 によって さみだれ が 急 行 大 音 響 発 生 装 置 で 告 知 したうえで 搭 載 ヘリコプターを 派 遣 不 審 船 は 現 場 を 離 脱 3 4 月 18 日 カナダ 籍 のクルーザーの 通 報 を 受 け さざなみ が 搭 載 ヘリを 派 遣 ヘリは3 隻 の 不 審 船 の 上 空 を 旋 回 不 審 船 はクルーザーから 離 脱 4 4 月 30 日 他 国 海 軍 から パナマ 船 籍 商 船 が 不 審 船 に 追 われている との 通 報 を 受 け さみだれ が 搭 載 ヘリを 派 遣 商 船 の 安 全 を 確 認 した 不 審 船 は 確 認 できず 護 衛 艦 派 遣 の 根 拠 は 海 上 警 備 行 動 であり 政 府 の 説 明 によっても 保 護 の 対 象 は 日 本 関 係 船 舶 に 限 定 されている だが この4 隻 はいずれも 日 本 関 係 船 舶 ではなく 海 上 警 備 行 動 によっては 対 処 することができない 4 回 の 不 審 船 対 処 は 海 上 警 備 行 動 すら 逸 脱 したものと 言 わざるを 得 ない (3) 船 員 法 は 理 由 にならない 防 衛 省 は これらの 対 処 を 船 員 法 第 14 条 にもとづく 行 為 と 説 明 している 船 員 法 第 14 条 とは 船 長 は 他 の 船 舶 又 は 航 空 機 の 遭 難 を 知 つたときは 人 命 の 救 助 に 必 要 な 手 段 を 尽 さなければならない とするものであり シーマンシップ による 相 互 救 助 を 義 務 づけた 規 定 である ここで 言 う 遭 難 とは 暴 風 雨 や 流 氷 などの 異 常 気 象 と の 遭 遇 や 船 舶 そのものの 故 障 を 原 因 とするもので 戦 争 や 国 際 紛 争 などは 含 まれない こ のことは 第 14 条 の2が 異 常 気 象 等 の 通 報 の 規 定 であることからも 明 らかである この 相 互 救 助 義 務 を 戦 争 や 国 際 紛 争 などの 場 面 に 持 ち 込 めば 一 般 船 舶 には 巻 き 込 まれ 義 務 を なんらかの 武 装 をした 船 舶 には 参 戦 義 務 を 課 すに 等 しいことになる こうした 理 解 が 船 員 法 の 理 念 を 蹂 躙 することは 論 を 待 たない また 4 回 目 の 救 助 は パナマ 商 船 からの 救 難 信 号 受 信 によるものではなく 他 国 の 海 軍 ( 米 海 軍 も 可 能 性 が 大 きい)の 要 請 (あるいは 指 示 )によって 救 援 に 入 ったもので あり 船 員 法 の 相 互 救 助 とは 明 らかに 異 質 である 船 員 法 によって 不 審 船 対 処 を 合 法 化 することはできないのである (4) 実 質 は 武 力 による 威 嚇 4 月 9 日 付 意 見 書 で 指 摘 したとおり ソマリア 沖 やアデン 湾 で 展 開 されているのは 武 力 行 使 を 含 むあらゆる 手 段 を 用 いての 海 賊 掃 討 作 戦 であり 2 隻 の 護 衛 艦 はその 一 翼 を 3

担 っている しかも 両 艦 は5 千 トン 近 い 排 水 量 を 持 ち 速 射 砲 や 高 性 能 機 関 砲 を 搭 載 し た 最 新 鋭 の 艦 船 であり 不 審 船 の 側 からすれば サーチライトの 照 射 や ヘリコプタ ーの 接 近 は 巨 大 な 軍 艦 が 発 砲 準 備 に 入 った としか 映 らない 強 制 力 の 行 使 ではない という サーチライト 照 射 も こうした 場 面 では 憲 法 違 反 の 武 力 による 威 嚇 とならざるを 得 ないのである (5) 海 賊 対 処 法 のもとではどうなるか 4 回 の 対 処 は 海 賊 対 処 法 が 強 行 されたとき 発 生 する 事 態 を 暗 示 するものでもある この4 回 の 対 処 では 不 審 船 の 離 脱 などのため 発 砲 には 至 っていない では もし 不 審 船 が 現 地 用 語 での 通 告 にもかかわらず 接 近 し 続 けたらどうなったのだろうか 海 賊 対 処 法 が 成 立 すれば 国 籍 を 問 わずあらゆる 船 舶 が 保 護 の 対 象 にできることになり 停 船 命 令 を 受 けてなお 接 近 を 続 ける 海 賊 船 (と 思 しき 船 舶 )を 停 船 させるための 射 撃 が 可 能 になる そうなれば 現 地 用 語 で 停 船 命 令 を 告 げたが 停 船 しなかったので 船 体 を 射 撃 した その 結 果 不 審 船 は 沈 没 した という 事 態 が 現 実 化 する しかして この4 回 の 対 峙 対 処 で 接 近 していたのが 海 賊 船 だったという 事 実 は 確 認 されておらず 現 地 用 語 での 大 音 量 の 通 告 の 意 味 が 認 識 されたかどうかの 確 証 も 得 られ ていない 接 近 を 続 ける 不 審 船 が 通 告 の 意 味 が 理 解 できなかった 難 民 船 だった となる 可 能 性 も 十 分 に 存 在 するのである 2 P3Cの 派 遣 による 米 日 軍 事 一 体 化 (1) P3C 哨 戒 機 の 派 遣 4 月 17 日 浜 田 靖 一 防 衛 相 は ソマリア 沖 の 海 賊 対 策 のために 海 上 自 衛 隊 のP3C 哨 戒 機 2 機 の 派 遣 準 備 を 指 示 した 2 機 のP3C 哨 戒 機 は この5 月 にジブチに 派 遣 され 6 月 から 哨 戒 活 動 を 開 始 することになっている P3Cの 派 遣 は 海 賊 対 処 法 の 成 立 を 前 提 にしていないから この 派 遣 の 根 拠 もまた 海 上 警 備 行 動 ということになる P3Cは ソ 連 原 子 力 潜 水 艦 に 対 抗 するための 対 潜 哨 戒 機 として 開 発 された 機 種 であり 米 軍 が 約 200 機 海 上 自 衛 隊 が 約 100 機 配 備 している その 後 汎 用 目 的 の 哨 戒 機 に 機 種 変 更 され 不 審 船 対 策 や 東 シナ 海 ガス 田 に 対 する 監 視 なども 主 要 任 務 とされるようにな った 航 続 距 離 は9000キロにおよび 10 時 間 を 超 える 哨 戒 飛 行 が 可 能 で データリ ンクによって 海 上 自 衛 隊 や 米 海 軍 の 艦 船 にリアルタイムで 映 像 等 の 情 報 を 送 ることが 可 能 である P3Cの 派 遣 の 派 遣 には 発 着 のための 地 上 基 地 が 必 要 になるため 4 月 3 日 ジブチ 共 和 国 との 間 で 派 遣 する 自 衛 隊 員 の 刑 事 民 事 の 免 責 を 含 む 地 位 協 定 が 結 ばれている (2) 海 賊 を 口 実 にした 日 米 共 同 作 戦 ジブチにはすでに 米 軍 のP3CおよびEUの 哨 戒 機 が 派 遣 されており 今 回 のP3Cの 派 遣 はアメリカやEUの 要 請 によるものとされている となれば 派 遣 されたP3Cが 連 4

合 哨 戒 部 隊 の 一 翼 を 担 うことは 火 を 見 るより 明 らかである 海 上 自 衛 隊 のP3Cは 米 艦 とのデータリンク 機 能 をもっているから P3Cの 情 報 はリ アルタイムで 米 艦 に 伝 達 され 米 軍 中 心 の 第 151 合 同 任 務 部 隊 (CTF151)に 共 有 されることになる 日 本 のP3Cからの 情 報 にもとづいてCTF151の 艦 艇 が 急 行 し 不 審 船 を 掃 討 という 事 態 も 日 常 的 に 発 生 するだろう また 米 軍 は 海 賊 委 根 拠 地 に 対 す る 爆 撃 まで 検 討 していると 伝 えられている 自 衛 隊 のP3Cの 情 報 をもとに 根 拠 地 への 爆 撃 が 行 われる 可 能 性 も 否 定 できない P3Cの 派 遣 は これまで 訓 練 の 世 界 にあった 日 米 共 同 作 戦 を 海 賊 掃 討 を 口 実 に して 実 戦 の 世 界 に 移 行 させるのである (3) 反 テロ 戦 争 戦 略 とも 連 動 それだけではない 最 大 哨 戒 半 径 4500キロに 及 ぶP3Cがジプチを 基 地 に 活 動 すれば アデン 湾 のみな らず アラビア 海 からパキスタン アフガニスタンまで 哨 戒 の 対 象 にできる 米 軍 が 反 テロ 戦 争 の 主 戦 場 にしている 海 域 空 域 であり アラビア 海 には 米 軍 中 心 の 第 150 合 同 任 務 部 隊 (CTF150)が 展 開 し 新 テロ 特 措 法 で 派 遣 された 補 給 艦 護 衛 艦 各 1 隻 が 給 油 活 動 を 続 けている P3Cが 米 艦 に 伝 達 する 情 報 は 海 賊 に 限 定 されるわけでは ないから テロリストへの 武 器 供 給 船 など 反 テロ 戦 争 に 関 連 する 情 報 がCTF15 0に 伝 達 される 可 能 性 は 十 分 にある これは 反 テロ 戦 争 への 直 接 参 戦 以 外 のなにもの でもない 仮 に 海 上 自 衛 隊 のP3Cが 哨 戒 対 象 をアデン 湾 に 絞 ってアラビア 海 に 向 かわなくても アデン 湾 を 海 上 自 衛 隊 のP3Cに 委 ねた 米 軍 のP3Cは 反 テロ 戦 争 の 主 戦 場 とするア ラビア 海 などでの 哨 戒 活 動 に 専 念 するに 違 いない 海 賊 を 口 実 にしたP3Cの 派 遣 が 米 軍 戦 略 に 組 み 込 まれたものであることは 明 らかなのである 3 三 軍 統 合 根 拠 地 と 共 同 作 戦 (1) 陸 上 自 衛 隊 と 航 空 自 衛 隊 の 派 兵 4 月 17 日 P3Cの 派 遣 準 備 を 指 示 した 浜 田 防 衛 相 は 基 地 の 管 理 業 務 等 (= 警 備 など)を 行 うための 陸 上 自 衛 隊 人 員 や 物 資 の 輸 送 (= 補 給 )のための 航 空 自 衛 隊 の ジブチ 派 遣 準 備 をも 指 示 した この 派 兵 が 実 現 すれば 船 団 護 衛 と 海 賊 掃 討 を 直 接 担 当 する 海 上 自 衛 隊 の 艦 船 航 空 機 に それらを 支 援 する 陸 上 自 衛 隊 と 航 空 自 衛 隊 が 加 わり 三 軍 統 合 根 拠 地 がジブチに 設 営 されることになる アデン 湾 の 護 衛 艦 2 隻 やアラビア 海 の 補 給 艦 護 衛 艦 の 乗 員 を 含 め れば 3 自 衛 隊 をあわせた 派 兵 人 員 は1000 名 に 及 ぶとされている しかも 根 拠 地 警 備 を 担 う 陸 上 自 衛 隊 の 中 心 は 中 央 即 応 連 隊 の1 個 小 隊 ( 約 40 名 ) とされている 中 央 即 応 連 隊 は 米 軍 再 編 に 伴 う 米 日 統 合 軍 化 外 征 軍 化 のために 防 衛 5

省 昇 格 海 外 派 兵 本 務 化 に 伴 って 新 設 された 編 成 された 部 隊 である レインジャー 訓 練 や 格 闘 訓 練 を 経 た 隊 員 を 集 めた 最 精 鋭 の 部 隊 であり 米 軍 の 海 兵 隊 や 空 挺 部 隊 などとともに 紛 争 地 域 に 緊 急 投 入 されることが 予 定 されている 中 央 即 応 連 隊 の 動 員 は ソマリア 沖 とジブチへの 派 兵 が 実 戦 を 想 定 した 派 兵 であり 実 戦 体 験 を 積 み 上 げるための 派 兵 であることを 示 している (2) 憲 法 を 逸 脱 した 三 軍 統 合 派 兵 防 衛 相 の 準 備 指 示 は 現 行 法 を 前 提 にしたものであり 三 軍 統 合 根 拠 地 化 の 根 拠 も また 自 衛 隊 法 第 82 条 による 海 上 警 備 行 動 ということになる 自 衛 隊 法 第 82 条 は 自 衛 隊 に 海 上 において 必 要 な 行 動 をとることを 命 ずることがで きる というものであり 領 海 付 近 での 活 動 を 想 定 したものである この 規 定 によって 海 上 自 衛 隊 のみならず 陸 上 自 衛 隊 や 航 空 自 衛 隊 を 海 外 に 派 兵 することは 憲 法 のみなら ず 自 衛 隊 法 をも 逸 脱 したものである また 審 議 中 の 海 賊 対 処 法 案 の 海 賊 対 処 行 動 も 海 上 において 海 賊 行 為 に 対 処 する ため であって 地 上 部 隊 や 航 空 部 隊 の 出 動 は 想 定 していない 海 賊 との 地 上 戦 や 航 空 部 隊 による 海 賊 船 攻 撃 まで 組 み 込 めば 海 賊 対 処 法 案 は 海 賊 との 戦 争 法 案 以 外 の なにものでもなくなるのである そのこともあってか 陸 上 自 衛 隊 と 航 空 自 衛 隊 の 派 兵 は 警 備 や 補 給 などのいわゆる 兵 站 任 務 のためのものとされてはいる だが 前 記 のとおり 中 央 即 応 連 隊 は 兵 站 任 務 を 目 的 とした 部 隊 ではなく こうした 最 精 鋭 部 隊 が 警 備 につくほどの 危 険 があるのなら 敵 は 犯 罪 者 ではなく 国 に 準 ずる 組 織 と 考 えるしかない こうした 場 面 での 武 器 の 使 用 は 憲 法 違 反 の 武 力 による 威 嚇 や 武 力 の 行 使 とならざるを 得 ないのである 三 軍 統 合 派 兵 の 既 成 事 実 化 は 恒 常 的 な 海 外 派 兵 態 勢 を 生 み 出 そうとするソマリア 沖 派 兵 と 海 賊 対 処 法 案 の 本 質 を 雄 弁 に 物 語 っているのである (3) 陸 海 空 での 共 同 作 戦 派 遣 される 陸 空 の 自 衛 隊 は どのような 軍 事 環 境 のもとで 行 動 するか 陸 上 自 衛 隊 が 警 備 にあたるジブチは 連 合 海 軍 の 出 撃 拠 点 であって 各 国 の 警 備 部 隊 が 駐 屯 している そのジブチの 根 拠 地 が 海 賊 勢 力 (あるいは 海 賊 を 支 援 する 勢 力 )の 襲 撃 を 受 けたとき 陸 上 自 衛 隊 の 警 備 部 隊 は 連 合 警 備 部 隊 として 共 同 で 対 処 することにな らざるを 得 ない そうなれば ともに 海 外 への 殴 り 込 み を 任 務 とする 米 海 兵 隊 と 中 央 即 応 連 隊 が 共 同 作 戦 を 展 開 する 場 面 が 実 現 することになるだろう これこそ 米 軍 再 編 (トランスフォ ーメーション)がめざした 統 合 軍 化 された 米 日 両 軍 の 姿 である 連 合 海 軍 の 一 翼 をになって 海 で 海 賊 掃 討 作 戦 を 展 開 する 護 衛 艦 のみならず 空 や 陸 でも 自 衛 隊 は 共 同 作 戦 を 展 開 することになる これが 集 団 的 自 衛 権 は 行 使 でき ない とする 政 府 答 弁 すら 踏 みにじる 憲 法 の 蹂 躙 であることは 論 を 待 たない 6

第 2 衆 議 院 審 議 が 投 げかけたもの 1 超 スピード 審 議 と 既 成 事 実 の 先 行 (1) 趣 旨 説 明 から 採 択 まで1 週 間 衆 議 院 での 海 賊 対 処 法 案 の 審 議 は 以 下 のとおり 進 展 した 4 月 14 日 本 会 議 趣 旨 説 明 代 表 質 問 海 賊 テロ 特 別 委 員 会 趣 旨 説 明 15 日 委 員 会 審 議 (7 時 間 ) 17 日 委 員 会 審 議 (7 時 間 ) 21 日 委 員 会 参 考 人 質 疑 (3 時 間 ) 22 日 委 員 会 審 議 (7 時 間 ) 23 日 委 員 会 審 議 ( 麻 生 首 相 出 席 3 時 間 ) 採 択 本 会 議 採 択 趣 旨 説 明 から 採 択 までわずかに1 週 間 余 委 員 会 の 審 議 日 数 は5 日 審 議 時 間 は 参 考 人 質 疑 を 含 めても27 時 間 にすぎなかった しかも 特 別 委 員 会 を 悪 用 した 連 日 審 議 が 設 定 され 速 記 録 すら 配 布 されない 状 態 での 審 議 が 強 行 され 続 けた これでは 先 行 する 質 問 や 答 弁 についての 慎 重 な 検 討 や 論 戦 を 発 展 させるための 十 分 な 質 問 準 備 は 極 めて 困 難 というほかはない 議 員 の 審 議 権 を 奪 うに 等 しい 異 常 な 進 行 である (2) 早 期 採 決 早 期 収 拾 は 最 初 からの 目 論 見 進 行 の 異 常 はこれにとどまらない 4 月 21 日 に 行 われた 参 考 人 質 疑 の 実 施 が 決 められ たのは 委 員 会 審 議 初 日 である4 月 15 日 の 午 後 1 時 過 ぎであった この 段 階 で 自 民 公 明 の 与 党 委 員 の 質 問 は 行 われていたが 野 党 委 員 はだれ 一 人 として 質 問 をしていなかっ た 永 田 町 では 法 案 採 択 の 条 件 とされる 参 考 人 質 疑 が 野 党 委 員 の 質 問 がまったく 行 われていない 段 階 で 決 定 されたことになる また 委 員 会 審 議 の 冒 頭 の 段 階 で 与 党 からは 週 明 けの 早 期 採 決 が 打 ち 出 され 野 党 第 一 党 の 民 主 党 からはこれに 呼 応 するように 修 正 協 議 での 早 期 収 拾 が 叫 ばれた い ずれも 論 戦 を 通 じて 問 題 を 国 民 の 前 に 明 らかにすべき 議 会 制 民 主 主 義 を 放 棄 するに 等 し い 姿 勢 である (3) 既 成 事 実 が 先 行 法 案 審 議 はアリバイ 法 案 審 議 にかける 時 間 は 1 週 間 しかなかったか 法 案 が 提 出 された3 月 13 日 から 趣 旨 説 明 までの1か 月 間 政 府 与 党 は 法 案 の 審 議 を 行 おうとはせず 民 主 党 もまた 審 議 を 求 めようともしなかった 法 案 が 付 託 される 海 賊 イラク 特 別 委 員 会 に 先 行 する 案 件 などなく 閣 僚 や 委 員 が 重 複 する 外 交 委 員 会 (グア ム 協 定 を 審 議 していた)は 開 会 日 が 限 定 されていたにもかかわらずである その 間 派 遣 された 護 衛 艦 は 船 団 護 衛 や 不 審 船 対 処 の 実 績 を 積 み 重 ね 不 審 船 を 追 い 払 う 自 衛 官 の 活 躍 が 鬼 を 退 治 する 桃 太 郎 のようにメディアで 紹 介 された ようや く 法 案 審 議 が 始 まった 矢 先 に 浜 田 防 衛 相 はP3C 哨 戒 機 や 陸 上 航 空 両 自 衛 隊 の 増 派 7

を 発 表 し 自 衛 隊 は 派 遣 の 準 備 を 着 々と 進 行 させた この1か 月 半 政 府 防 衛 省 と 与 党 は 船 団 護 衛 や 不 審 船 対 処 三 軍 統 合 派 兵 の 既 成 事 実 の 積 み 上 げに 狂 奔 し その 既 成 事 実 のうえにアリバイだけの 審 議 で 法 案 の 強 行 をはか ったのである 法 案 審 議 を 無 視 した 既 成 事 実 の 積 み 上 げは 海 賊 対 処 法 案 の 存 在 理 由 にもかかわる 問 題 であった だが この 既 成 事 実 をめぐって 国 会 が 紛 糾 することはなく 審 議 はまったく 中 断 しなかった 国 会 そのものの 存 在 意 味 が 問 われる 事 態 と 言 わねばならない 2 自 衛 隊 派 兵 の 本 質 の 露 呈 (1) 制 海 権 確 保 のための 自 衛 隊 派 兵 わずか1 週 間 の 審 議 にもかかわらず ソマリア 沖 派 兵 と 海 賊 対 処 法 案 がはらむ 日 本 国 憲 法 無 視 の 本 質 が あからさまに 示 されたのもおおきな 特 徴 であった とりわけ 与 党 委 員 の 質 問 では 憲 法 を 無 視 したあけすけな 指 摘 が 続 けられている( 以 下 質 問 答 弁 の 摘 示 は 趣 旨 を 変 えない 範 囲 で 議 事 録 の 表 記 を 圧 縮 している) * この 法 律 の 必 要 性 は 日 本 の 国 の 存 立 にかかわる 海 の 安 全 保 障 が 危 機 に 瀕 している ところにある( 中 谷 元 委 員 = 自 民 党 4 月 15 日 の 委 員 会 審 議 での 質 問 以 下 発 言 者 名 の 後 の 月 日 は 委 員 会 開 会 日 を 示 す) * シーレーンの 安 全 確 保 は 我 が 国 にとって 文 字 どおり 死 活 問 題 生 命 線 ( 小 池 百 合 子 委 員 = 自 民 党 4 月 15 日 ) * シーレーンあるいは 海 の 安 全 を 確 保 することは 国 民 の 生 活 の 安 全 安 心 を 確 保 す るものだ( 冬 柴 鐵 三 委 員 = 公 明 党 4 月 15 日 ) 法 案 の 目 的 が シーレーン 防 衛 による 制 海 権 確 保 であることを 公 然 と 表 明 した 指 摘 で ある 海 軍 力 をもってする 制 海 権 確 保 の 目 的 が 海 上 通 商 路 の 保 全 にあることは アルフレ ッド マハンの 海 上 権 力 史 論 以 来 軍 事 常 識 と 言 っていい 海 賊 対 処 法 案 が 踏 み 込 もうとしているのは 軍 事 力 による 制 海 権 の 確 保 であり 政 府 与 党 はそのことをあけすけ に 認 めているのである (2) 軍 事 こそが 王 道 憲 法 は 障 害 物 こうした 道 筋 は 必 然 的 に 軍 事 力 の 活 用 を 王 道 とすることになる 再 び 与 党 委 員 の 指 摘 から * 軍 を 出 す 最 高 のレベルにあるものを 出 すということは 非 常 に 大 きなことであり 抑 止 力 やプレゼンスという 言 葉 もあるが 国 家 としてこれだけの 対 応 をするという ことは 各 国 にも 伝 わり 海 賊 も 重 く 受 け 止 める( 中 谷 委 員 4 月 15 日 ) 語 られているのは 軍 隊 を 出 す ことが 最 高 のレベル の 対 応 であり 軍 事 プレゼ ンス を 示 すものになるという あけすけな 軍 事 力 礼 賛 論 である ここでは 海 上 保 安 庁 では 対 応 困 難 だからやむなく 自 衛 隊 が 出 て 行 く などという ためにする 論 理 は 影 8

をひそめている ソマリア 海 賊 問 題 を 口 実 に 海 の 憲 兵 としての 恒 常 的 な 自 衛 隊 派 兵 態 勢 を 構 築 するもの とした 自 由 法 曹 団 意 見 書 の 指 摘 に まさしくそのとおり と 応 えて いるに 等 しい ここまでくれば 戦 争 を 放 棄 し 戦 力 の 不 保 持 や 交 戦 権 の 否 認 を 誓 った 日 本 国 憲 法 は あるべき 王 道 に 対 する 障 害 物 とされることになる * 日 本 が 憲 法 の 制 約 をどう 説 明 しようと 各 国 からすればしょせん 自 分 たちと 関 係 の ない 日 本 の 特 殊 事 情 にすぎず 懸 命 に 取 り 組 んでいる 国 から 見 れば 汗 もかかない で 金 もうけだけやっているんじゃないかと 映 る( 中 谷 委 員 4 月 15 日 ) 制 海 権 を 確 保 して 海 上 利 権 を 保 全 するために 憲 法 の 制 約 を 撤 廃 ないし 無 視 すべしと の 公 然 たる 宣 言 にほかならない (3) 立 法 理 由 も 軍 事 優 先 13 条 からなる 法 案 が これまでの 派 兵 法 にないほどに 軍 事 突 出 に 彩 られているこ との 意 味 合 いも 委 員 会 審 議 で 明 らかになっている いくつか 論 点 を 抽 出 する なぜ 国 会 の 事 前 承 認 を 要 件 とせず 緊 急 時 には 首 相 への 通 報 でことたりるとするか * 自 衛 艦 が 洋 上 で 偶 然 に 海 賊 行 為 に 居 合 わせることが 想 定 される こうした 事 態 の 場 合 国 会 の 事 前 承 認 などの 手 続 をとっていたらとてもじゃないが 間 に 合 わない( 佐 藤 茂 樹 委 員 = 公 明 党 4 月 22 日 ) これが 防 衛 相 専 権 での 対 処 出 動 を 認 めた 法 案 第 7 条 第 2 項 但 書 の 立 法 理 由 である こうした 不 意 遭 遇 が 発 生 する 確 率 がどれだけあるかはひとまずおこう 航 海 中 の 護 衛 艦 が 遭 遇 した 海 賊 行 為 (と 思 しき 行 為 ) の 認 定 は 艦 長 もしくはデータリンクで 映 像 を 受 け 取 った 上 級 指 揮 官 の 判 断 に 委 ねざるを 得 ないから 現 地 軍 司 令 官 の 判 断 で 武 力 行 使 に 突 入 できる と 言 っているに 等 しい このような 軍 事 突 出 が いかなる 事 態 を 引 き 起 こ すかは 戦 争 の 歴 史 が 実 証 を 重 ねているのではなかったか 海 賊 行 為 はなぜ つきまとい や 接 近 などにまで 拡 張 されているか * 相 手 の 船 に 呼 びかけたり 存 在 を 誇 示 したり サーチライトの 照 射 をしたりする さらに 近 寄 ってくる 場 合 には 警 告 射 撃 を 行 う こうした 一 連 の 行 為 をして 抑 止 をす る さらに 実 際 に 近 づいてきても 追 い 払 う( 徳 地 秀 士 防 衛 省 運 用 企 画 局 長 4 月 1 7 日 三 谷 光 男 委 員 = 民 主 党 の 質 問 に) 語 られているのは 接 近 する 海 賊 船 の 撃 退 であって 襲 撃 した 海 賊 の 検 挙 ではな い 襲 撃 の 前 に 撃 退 するには 停 船 命 令 や 威 嚇 行 為 が 行 えねばならず それには 接 近 つ きまとい 段 階 の 行 為 を 海 賊 行 為 とするしかない 抑 止 追 い 払 い が 強 調 されている が 停 船 命 令 に 反 して 接 近 する 船 には 船 体 射 撃 (= 目 的 遂 行 のための 武 器 の 使 用 )が 認 め られているから 警 告 射 撃 が 船 体 射 撃 に 連 続 する 可 能 性 は 大 きい 襲 撃 した 海 賊 の 検 挙 を 考 えなければ 刑 事 司 法 手 続 との 整 合 など 確 かに 不 要 だろう だが そのことは 追 い 払 えなければ 殺 害 する と 言 っているに 等 しい 9

3 投 げかけられた 問 題 点 (1) ソマリアの 事 態 をどう 考 えるか わずか1 週 間 であったが 委 員 会 審 議 が 明 らかにした 問 題 点 もまた 大 きい 自 衛 隊 のソマリア 沖 派 兵 は 海 賊 は 犯 罪 行 為 であって 海 賊 への 武 器 の 使 用 は 憲 法 が 禁 止 する 武 力 の 行 使 にあたらない との 説 明 が 前 提 になっている 国 連 安 保 理 決 議 が 国 連 憲 章 第 7 章 のもとでの 行 動 を 提 起 し 武 力 行 使 を 含 むあらゆる 手 段 を 許 容 していることを 指 摘 し 海 賊 が 国 に 準 ずる 組 織 となっているのではないか とただした 平 岡 秀 夫 委 員 ( 民 主 党 )の 質 問 への 政 府 側 の 答 弁 * 国 連 安 保 理 決 議 は 一 定 期 間 ソマリアにおいて 適 当 なすべての 必 要 な 措 置 をとること ができるとしており そのなかで 空 爆 の 可 能 性 も 否 定 されていない ソマリア 沖 で 国 に 準 ずる 組 織 が 活 動 しているともいないとも 判 断 をしていない( 中 曽 根 弘 文 外 相 4 月 15 日 ) * 日 本 国 民 の 人 命 財 産 を 保 護 する 必 要 から 海 上 警 備 行 動 を 発 令 したもので 国 連 安 保 理 決 議 の 要 請 に 応 じての 派 遣 ではない( 浜 田 靖 一 防 衛 相 同 日 ) 支 離 滅 裂 な 答 弁 であることはただちに 見 て 取 れるだろう 空 爆 の 可 能 性 も 否 定 されな い 安 保 理 決 議 のもとでの 連 合 海 軍 の 活 動 は 警 察 活 動 と 言 えるものではなく どんな 理 屈 で 派 兵 しようとその 一 翼 を 担 えば 武 力 による 掃 討 活 動 にほかならない また 海 賊 が 国 に 準 ずる 組 織 なら 発 砲 は 政 府 の 解 釈 でも 武 力 の 行 使 となり 危 害 射 撃 や 船 体 射 撃 が 憲 法 9 条 1 項 違 反 となるのであるから 国 に 準 ずる 組 織 が 活 動 しているともいな いとも 判 断 をしていない ですむ 話 ではないのである (2) 海 賊 とテロリストをどう 区 別 する ソマリア 沖 の 海 賊 問 題 をめぐっては アルカイダの 一 部 が 連 帯 を 表 明 するなど テロ 組 織 との 連 結 が 伝 えられている 連 合 海 軍 が 展 開 する 海 賊 とのたたかい が テロとの たたかい に 連 動 する 可 能 性 も 十 分 にある 以 下 は 海 賊 とテロリストの 異 同 にかかわる 田 島 要 委 員 や 三 日 月 大 造 委 員 (いずれも 民 主 党 )の 質 問 への 答 弁 * 私 的 目 的 が 海 賊 行 為 の 要 件 だが テロリストの 行 為 が 海 賊 行 為 に 合 致 する 場 合 もある( 大 場 靖 雄 海 洋 政 策 本 部 事 務 局 長 田 島 委 員 の 質 問 に 4 月 17 日 ) * テロであれ 海 賊 であれ 接 舷 する 以 前 に 追 い 払 いの 措 置 をする( 浜 田 防 衛 相 三 日 月 委 員 の 質 問 に 同 日 ) テロリストには 国 に 準 ずる 組 織 の 構 成 員 も 含 まれるから 追 い 払 いの 措 置 すなわ ち 停 船 命 令 違 反 の 船 への 船 体 射 撃 は 憲 法 が 許 容 しない 先 制 的 な 武 力 行 使 になるのである (3) 軍 事 的 対 応 で 解 決 できるか 連 合 海 軍 の 海 賊 掃 討 作 戦 にもかかわらず 海 賊 事 案 が 減 少 せず 海 域 も 拡 大 してい 10

ることが 多 くの 委 員 から 指 摘 され 軍 事 的 な 対 応 に 限 界 があることが 明 らかになった そ うしたもとで 海 賊 問 題 の 解 決 の 本 来 の 道 筋 が 自 衛 隊 派 兵 ではなく ソマリアにおける 政 府 の 再 建 貧 困 の 根 絶 と 治 安 の 再 生 にあることが 与 野 党 の 委 員 から 指 摘 され 続 けたこと は 注 目 されていい * 海 賊 対 策 に 税 金 をつぎ 込 み 続 けるわけにはいかないし そうすることはソマリア 国 民 にとっても 不 幸 なことだ 国 際 的 にソマリアという 国 をもう 一 度 再 興 させるとい うことが 遠 いようだが 一 番 近 い 道 ではないかと 思 う( 小 池 委 員 4 月 15 日 ) * ソマリアの 統 治 が 回 復 するまで 時 間 がかかるとすれば インドネシアでの 枠 組 みを 生 かして 沿 岸 諸 国 の 海 上 警 備 機 能 を 支 援 するなどの 行 動 をとるのが 基 調 ではないか ( 保 坂 展 人 委 員 = 社 民 党 4 月 22 日 ) などである 自 由 法 曹 団 が 意 見 書 で 提 起 した 解 決 の 道 筋 でもある だが 政 府 と 国 会 が 全 力 をあげて 検 討 し 国 際 機 関 やNGOと 連 携 して 実 現 にあたるべ きこうした 道 筋 が 審 議 を 通 じて 具 体 化 されることは 遂 になかった 政 府 与 党 が 海 賊 を 口 実 にした 自 衛 隊 派 兵 に 狂 奔 し 民 主 党 もまた 船 団 護 衛 と 海 賊 掃 討 という 同 じ 土 俵 を 一 歩 も 出 ようとしなかったためである (4) 船 団 護 衛 以 外 に 方 法 はないか 船 団 護 衛 と 海 賊 掃 討 という 路 線 以 外 に 対 応 の 方 法 はないか 遠 いようだが 一 番 近 い 道 というソマリア 復 興 をめざしながら 平 和 的 手 段 で 通 商 を 保 全 する 方 法 は 本 当 にないか 以 下 はいずれも 赤 嶺 政 賢 委 員 ( 共 産 党 )の 質 問 に 対 する 答 弁 * 護 衛 しなかった 日 本 関 係 船 舶 が 護 衛 した 船 舶 の 倍 以 上 あるとの 情 報 がある 舷 側 が 非 常 に 高 く スピードの 速 い 定 期 航 路 のコンテナ 船 などは 船 団 に 参 加 せずに 航 行 していると 推 定 される( 伊 藤 茂 国 土 交 通 省 海 事 局 長 4 月 15 日 ) * 喜 望 峰 回 りの 航 路 をとると 船 の 大 きさやスピードで 違 うが6 日 から10 日 程 度 増 加 し 距 離 が6500キロ 程 度 長 くなる コンテナ 船 の 場 合 だと 1 隻 につき2 千 万 円 程 度 の 負 担 増 になる 希 望 峰 回 りの 通 行 実 績 は 09 年 1~3 月 に36 隻 はあ る( 伊 藤 海 事 局 長 4 月 22 日 ) 漁 船 改 造 の 海 賊 船 の 追 跡 を 容 易 に 振 りきれる 性 能 をもった 船 であれば 護 衛 を 受 けなく ても 航 行 は 可 能 であり そうでない 船 も コスト を 覚 悟 すれば 安 全 な 航 路 をとることは 可 能 である 1 隻 2 千 万 円 は 平 和 憲 法 をもつこの 国 が 軍 事 的 な 掃 討 作 戦 に 加 担 しないこ との 対 価 と 考 えれば 高 価 にすぎるというものでもない 第 3 次 中 東 戦 争 勃 発 の1967 年 から 第 4 次 中 東 戦 争 終 結 の1975 年 まで イスラエ ルとエジプトの 軍 事 境 界 線 となったスエズ 運 河 は 閉 鎖 され 船 舶 は 希 望 峰 回 りあるいはパ ナマ 運 河 経 由 で 航 行 しなければならなかった 8 年 に 及 ぶ コスト 高 であったが 経 済 が 破 綻 し 国 民 生 活 が 脅 かされることはなかった そのときのことを いまいちど 想 起 す べきではないだろうか 11

第 3 修 正 では 解 決 しない 1 修 正 協 議 と 修 正 案 (1) 修 正 協 議 をめぐる 経 緯 4 月 9 日 民 主 党 外 交 防 衛 部 門 会 議 は 海 賊 対 処 法 案 への 対 応 と 修 正 ポイントについて ( 案 ) を 発 表 した 海 賊 対 策 は 海 上 保 安 庁 の 任 務 論 と 国 会 事 前 承 認 論 を 二 本 柱 とした 修 正 であり この 二 本 柱 は4 月 23 日 に 提 出 された 修 正 案 まで 変 わっ ていない 与 党 との 修 正 協 議 に 先 立 って 民 主 党 は 社 会 民 主 党 国 民 新 党 との 野 党 3 党 によ る 共 同 修 正 案 提 出 を 狙 っていたが 合 意 は 成 立 しなかった 社 会 民 主 党 は 政 府 法 案 の 違 憲 性 を 主 張 して 廃 案 を 求 め 国 民 新 党 は 恒 久 法 に 難 色 を 示 したためと 伝 えられている 海 賊 テロ 特 別 委 員 会 の 審 議 と 併 行 して 与 党 と 民 主 党 の 間 で 修 正 協 議 が 行 われた が 与 党 側 から 民 主 党 修 正 案 への 歩 み 寄 り は 見 られずなかった すでに 見 たとおり 委 員 会 での 審 議 では 民 主 党 委 員 からも 憲 法 が 禁 止 する 武 力 の 行 使 にあたるのではないか テロリストへの 武 力 行 使 が 可 能 になるのではないか などの 憲 法 にかかわる 問 題 の 指 摘 が 続 いていた 憲 法 にかかわる 問 題 は 徹 底 審 議 によって 問 題 の 所 在 と 解 決 の 方 向 が 国 民 の 前 に 示 されねばならず 与 野 党 の 協 議 によって 収 拾 がはから れていい 問 題 ではない 修 正 協 議 は こうした 憲 法 にかかわる 問 題 を 密 室 協 議 のな かに 閉 じ 込 め 問 題 の 隠 蔽 をはかろうとしたものにほかならない なお 民 主 党 が 修 正 協 議 を 優 先 しようとするのは 連 休 明 けは 補 正 予 算 案 審 議 に 集 中 して 総 選 挙 に 備 える 狙 いととともに 審 議 が 長 引 くと 党 内 での 意 見 の 違 いが 表 面 化 しか ねないためと 報 じられている そうだとすれば 政 権 とり を 狙 う 政 党 の お 家 の 事 情 を この 国 と 世 界 の 平 和 にかかわる 問 題 より 優 先 させたとの 批 判 を 免 れない (2) 民 主 党 修 正 案 4 月 23 日 民 主 党 は 海 賊 対 処 法 案 の 修 正 案 を 提 出 した 提 出 者 の 趣 旨 説 明 では 要 点 が 以 下 の6 点 にまとめられている 1 海 賊 対 処 本 部 設 置 の 要 請 ( 修 正 案 第 7 条 3 以 下 本 項 の 法 文 番 号 は 修 正 案 ) 海 上 保 安 庁 による 措 置 のみで 海 賊 行 為 への 対 処 が 困 難 であると 認 めるとき 国 土 交 通 大 臣 は 内 閣 総 理 大 臣 に 海 賊 対 処 本 部 設 置 の 要 請 ができる 2 海 賊 対 処 本 部 設 置 と 海 賊 対 処 隊 ( 第 8 条 ~ 第 11 条 第 13 条 ~ 第 17 条 ) 1の 要 請 があれば 内 閣 総 理 大 臣 が 特 別 の 必 要 があると 認 めるとき 内 閣 府 に 海 賊 対 処 本 部 を 設 置 できる 本 部 に 置 かれる 海 賊 対 処 隊 が 海 賊 対 処 実 施 計 画 に 従 い 海 賊 対 処 措 置 を 実 施 する 3 自 衛 隊 の 海 賊 対 処 措 置 についての 国 会 の 承 認 ( 第 11 条 3 第 12 条 ) 12

自 衛 隊 が 実 施 する 海 賊 対 処 措 置 は 内 閣 総 理 大 臣 が 国 会 の 事 前 承 認 を 得 なければなら ない 実 施 計 画 の 決 定 変 更 が 及 び 海 賊 対 処 措 置 の 終 了 は 遅 滞 なく 国 会 に 報 告 する 4 国 際 協 力 の 推 進 ( 第 23 条 ) 国 際 間 における 海 上 警 察 の 連 携 促 進 等 の 国 際 協 力 の 推 進 に 努 める 5 海 上 保 安 庁 の 体 制 の 整 備 ( 附 則 第 8 条 ) 海 賊 行 為 に 対 処 するための 装 備 充 実 等 の 海 上 保 安 庁 の 整 備 に 必 要 な 措 置 を 講 じる 6 見 直 し( 附 則 第 9 条 ) 施 行 後 3 年 を 目 途 に 施 行 状 況 を 検 討 し 必 要 に 応 じて 見 直 しを 行 う (3) 修 正 案 が 変 えるもの 民 主 党 修 正 案 は 海 上 保 安 庁 の 任 務 論 と 国 会 事 前 承 認 論 の 二 本 柱 を 脱 し ていない 海 賊 対 処 本 部 や 海 賊 対 処 計 画 にかかわる 手 続 規 定 などの 挿 入 の 結 果 修 正 案 の 法 文 は 政 府 法 案 の13 条 より10 条 増 えた23 条 になり 附 則 も7 条 から9 条 に 増 えて はいる だが このことによって 政 府 法 案 が 変 更 されるのは 自 衛 隊 派 兵 の 手 続 を 規 定 し た 第 7 条 だけである( 第 5 条 に 海 賊 対 処 に 海 上 警 備 行 動 を 適 用 しない 旨 の 規 定 が 追 加 されることになっているが 第 7 条 の 変 更 の 結 果 にすぎない) 意 見 書 で 指 摘 したとおり 13 条 からなる 法 案 はそれぞれの 法 文 が 深 刻 な 問 題 をはらん でいるが 修 正 案 が 変 更 を 加 えるのは 第 7 条 にすぎないのである この 修 正 案 は 提 出 された4 月 23 日 に 否 決 されたが 民 主 党 が 第 一 党 になっている 参 議 院 で ほとんど 同 一 の 修 正 案 が 再 び 浮 上 してくる 可 能 性 は 大 きい その 修 正 案 は 海 賊 対 処 法 案 のはらむ 問 題 を 解 決 することになるだろうか 2 本 質 は 変 わらず 構 造 的 問 題 は 解 決 しない (1) 法 案 の 本 質 =ソマリア 派 兵 の 追 認 を 否 定 するか 海 賊 対 処 法 案 の 特 徴 は 武 力 行 使 を 含 む 海 賊 掃 討 作 戦 が 展 開 されているソマリア 沖 で 2 隻 の 護 衛 艦 が 船 団 護 衛 作 戦 や 不 審 船 対 処 を 実 行 しており P3C 哨 戒 機 や 陸 上 航 空 両 自 衛 隊 の 増 派 準 備 が 着 々と 進 行 するなかでの 審 議 が 進 んでいるところにある 海 賊 対 処 法 案 とはこうした 派 兵 に 法 的 追 認 を 与 えるとともに その 派 兵 を 制 度 化 し 恒 久 化 するための 法 案 である これがソマリア 沖 派 兵 と 海 賊 対 処 法 の 本 質 であり この 本 質 を 没 却 した 議 論 にはいかなる 意 味 もない 民 主 党 修 正 案 の 2 本 柱 とは 現 に 自 衛 隊 が 出 撃 し しかもさらに 増 強 されよう としているもとで 海 賊 対 処 は 海 上 保 安 庁 の 任 務 と 叫 び 国 会 承 認 の 要 件 を 付 そうとし ていることになる では 修 正 案 どおり 修 正 されたら 民 主 党 は 現 に 行 われている 自 衛 隊 による ソマリア 沖 での 海 賊 対 処 業 務 の 承 認 に 反 対 し 参 議 院 で 承 認 を 否 決 して 自 衛 隊 を 帰 国 13

させるのだろうか 参 議 院 で 与 野 党 が 逆 転 しているもとで 容 易 に 実 現 できる 方 策 にもか かわらず 民 主 党 からそのような 意 思 や 意 欲 を 感 じ 取 ることはできない 現 に 行 われ 拡 大 強 化 されようとしているソマリア 沖 派 兵 の 抑 止 や 見 直 しに 結 びつかな い 海 上 保 安 庁 の 任 務 論 や 国 会 承 認 論 であるなら 民 主 党 の 面 子 を 保 つものに はなり 得 ても 本 質 をなにひとつ 変 じるものにはならないのである (2) 構 造 は 変 わらず 問 題 は 解 決 しない 意 見 書 で 明 らかにしたとおり 海 賊 対 処 法 案 は 1 海 上 輸 送 用 船 舶 の 安 全 と 海 上 における 治 安 維 持 を 掲 げて 世 界 の 海 の 憲 兵 として 権 益 擁 護 を 公 然 たる 目 的 とし( 第 1 条 ) 2 対 象 船 舶 にも 対 象 海 域 にもまったく 限 定 を 付 さず いつにても どこの 海 にでも 派 兵 して 自 由 自 在 に 共 同 作 戦 ができるようにし( 第 2 条 ) 3 抵 抗 や 逃 亡 を 行 う 海 賊 船 ( 容 疑 の 船 )には 危 害 射 撃 停 船 命 令 に 従 わない 海 賊 船 ( 容 疑 の 船 )には 船 体 射 撃 ( 任 務 遂 行 のための 射 撃 )を 認 めて 先 制 攻 撃 を 可 能 にし( 第 5 6 8 条 ) 4 防 衛 相 に 海 賊 対 処 出 動 命 令 権 を 付 与 して 国 会 承 認 は 不 要 とし( 第 7 条 ) 海 賊 対 処 を 軍 事 部 門 ( 防 衛 相 海 上 保 安 庁 長 官 )の 専 権 として 外 務 省 や 国 土 交 通 省 を 従 属 さ せ( 第 10 条 ) 船 舶 の 運 航 に 関 係 する 者 (= 国 民 )に 海 賊 対 処 に 協 力 する 責 務 を 課 し( 第 11 条 ) ことさら 国 際 約 束 の 遵 守 を 明 記 して ガイドライン をはじめと する 日 米 軍 事 約 束 を 優 先 させる( 第 12 条 ) という 構 造 をもった 法 制 である これほどあけすけな 目 的 を 掲 げ 先 制 攻 撃 や 共 同 作 戦 を 当 然 のように 許 容 し これほど の 専 権 的 地 位 を 軍 事 部 門 に 保 障 した 軍 事 法 制 は 存 在 していない こうした 海 賊 対 処 法 案 の 構 造 は 全 体 が ひとつの 体 系 として 組 みあがっており 部 分 的 な 修 正 を 加 えて も 変 動 するものではない 民 主 党 修 正 案 によって 4のうち 国 会 承 認 が 不 要 だけは 変 更 になり その 限 り では 意 味 がないわけではない だが そのことによって あけすけな 目 的 を 掲 げた 軍 事 部 門 優 先 の 軍 事 法 という 構 造 が 変 わるものではない しかも 政 権 与 党 が 両 院 の 多 数 を 占 めるか 与 野 党 の 密 室 調 整 で 処 理 されれば 国 会 の 審 議 と 承 認 は つけたし の 意 味 しか 持 たなくなる 法 案 審 議 がはじまったばかりで 与 党 との 修 正 協 議 を 求 めた 今 回 の 民 主 党 の 姿 勢 を 考 えれば 自 衛 隊 派 遣 の 国 会 承 認 でなに が 起 るかも 容 易 に 想 像 できるだろう 3 方 向 を 誤 った 法 案 と 修 正 案 (1) 本 来 の 解 決 方 向 の 欠 落 衆 議 院 の 委 員 会 審 議 では 真 の 解 決 がソマリアにおける 政 府 の 再 建 と 貧 困 の 根 絶 と 治 安 14

の 再 生 にあることが 多 くの 議 員 から 指 摘 された 海 賊 という 海 の 問 題 が 国 家 と 経 済 の 崩 壊 という 陸 の 問 題 によって 発 生 していることが 明 らかである 以 上 陸 の 問 題 を 解 決 することなしに 海 の 問 題 の 解 決 は 不 可 能 なのである だが こうした 解 決 の 道 筋 は 法 案 には 微 塵 も 認 めることはできない 権 益 擁 護 と 海 の 安 全 保 障 のための 海 賊 掃 討 が 眼 目 であり 陸 の 問 題 を 解 決 するための 国 際 的 な 努 力 など は 眼 中 にない まさしくこの 点 で 法 案 は 根 本 的 な 方 向 が 誤 っているのである このような 法 案 に 対 して 組 み 上 げるべき 対 案 があるとすれば 陸 の 問 題 の 平 和 的 解 決 によって 海 の 問 題 の 解 決 をはかるための 抜 本 的 対 案 であり それこそ 平 和 憲 法 を 持 つ 国 が 発 揮 すべきイニシアチブの 方 向 である だが 修 正 案 はこうした 見 地 に 立 つことな く 法 案 と 同 じ 方 向 に 立 ってうえで 国 会 の 承 認 や 海 上 保 安 庁 の 任 務 をつけ 加 えよ うとする 修 正 案 もまた 方 向 を 誤 ったものと 言 わざるを 得 ない (2) 海 上 保 安 庁 活 用 論 がもたらすもの 民 主 党 修 正 案 のもうひとつの 特 徴 は ソマリア 沖 で 護 衛 艦 が 行 っている 行 動 を 海 上 保 安 庁 の 巡 視 船 に 担 わせようとするところにある この 海 上 保 安 庁 活 用 論 は 二 重 の 意 味 で 誤 っている 意 見 書 で 明 らかにしたとおり ソマリア 沖 で 展 開 されているのは 国 連 海 洋 法 条 約 を 逸 脱 した 国 連 安 保 理 決 議 にもとづく 軍 事 行 動 であって 海 賊 を 検 挙 するための 警 察 活 動 ではな い そのソマリア 沖 の 軍 事 行 動 に 沿 岸 警 備 や 警 察 取 締 を 本 務 とする 海 上 保 安 庁 の 巡 視 船 を 派 遣 しようとするのは 木 に 竹 を 接 ぐ に 等 しい 誤 謬 である 次 に 法 案 に 即 して 考 えたとしても 眼 目 とされているのは 排 他 的 経 済 水 域 まで 進 攻 し ての 掃 討 作 戦 であり 原 因 となっている 陸 の 問 題 の 解 決 や 当 事 国 の 治 安 強 化 への 協 力 ではない こうした 軍 事 的 役 割 を 巡 視 船 に 委 ねようとすれば 排 水 量 や 航 続 距 離 装 備 や 装 甲 などを 海 上 自 衛 隊 の 護 衛 艦 ( 国 際 的 にはフリゲイトか 駆 逐 艦 )に 匹 敵 するものにせ ざるを 得 なくなる 海 上 保 安 庁 の 活 用 を 押 し 出 した 多 くの 民 主 党 議 員 の 質 問 は 大 型 巡 視 船 である し きしま や みずほ 級 の 排 水 量 や 装 備 が 護 衛 艦 に 遜 色 がないことを 力 説 し 装 甲 の 充 実 や 損 害 を 受 けたときの 継 戦 能 力 の 強 化 ( 隔 壁 の 拡 充 )を 要 求 することで 終 わっている ひと 言 で 言 えば 精 強 な 海 上 保 安 庁 をつくれ ということであり 護 衛 艦 と 同 等 の 戦 闘 能 力 をもった 巡 視 船 と 称 する 艦 船 の 量 産 の 要 求 にほかならない ソマリア 沖 で 現 に 発 動 され 海 賊 対 処 法 案 が 追 認 しようとする 軍 事 鎮 圧 路 線 のもとでの 海 上 保 安 庁 活 用 論 は 憲 法 9 条 をすり 抜 けるための 第 2 海 軍 の 創 設 に 行 き 着 かざ るを 得 ない どのような 名 称 を 冠 しようと そうした 巡 視 船 は 国 際 的 にはまごうこ となくフリゲイトもしくは 駆 逐 艦 (= 軍 艦 )であり その 発 砲 は 憲 法 が 禁 じる 武 力 行 使 に ほかならないのである 15

おわりに 参 議 院 の 良 識 の 発 揮 を 2007 年 7 月 29 日 投 票 の 参 議 院 選 挙 で 与 党 は 歴 史 的 な 敗 北 を 喫 し 与 野 党 逆 転 の 参 議 院 が 生 み 出 された あの 7 29の 審 判 で 断 罪 されたのは 市 場 競 争 万 能 を 掲 げて 格 差 を 限 界 まで 拡 大 した 構 造 改 革 であり 戦 後 レジームの 脱 却 を 掲 げた 改 憲 路 線 であり 議 会 制 民 主 主 義 を 放 棄 した 暴 走 国 会 であった あれから2 年 近 くを 経 過 したいま 新 自 由 主 義 の 破 綻 が 生 んだ 世 界 同 時 不 況 が 国 民 生 活 を 襲 っているなかで 再 び 憲 法 破 壊 の 暴 走 国 会 が 再 現 されようとしている 2 隻 の 護 衛 艦 が 呉 を 出 航 し 海 賊 対 処 法 案 が 国 会 に 提 出 された3 月 中 旬 から2か 月 弱 このわずかな 間 に 事 態 はあまりにも 急 激 に 展 開 している 日 本 関 係 船 舶 を 護 衛 するはずだった 護 衛 艦 は いつの 間 にか 船 員 法 第 14 条 というだ れも 考 えていなかった ロジック を 使 って 不 審 船 との 会 敵 を 続 け ソマリアに 隣 接 するジブチにはP3C 哨 戒 機 ばかりか 陸 上 自 衛 隊 航 空 自 衛 隊 までもが 出 向 いて 三 軍 統 合 根 拠 地 を 設 営 しようとしている その 重 大 な 問 題 を 審 議 すべき 国 会 では 国 民 にほ とんど 知 られていないなかで 海 賊 対 処 法 案 の 採 決 が 強 行 され あるいは 密 室 での 修 正 協 議 が 進 められようとしている いつの 間 にか 海 外 に 軍 事 拠 点 が 設 営 され いつの 間 にか 海 外 で 軍 隊 が 戦 端 を 開 く 政 府 の 行 為 によって 再 び 惨 禍 が 起 ることのないやうにすることを 決 意 し て 平 和 憲 法 を 制 定 したこの 国 で こんなことは 断 じて 許 されてはならない 平 和 憲 法 を 守 り ソマリアに 真 の 解 決 をもたらす 使 命 は いま 良 識 の 府 = 参 議 院 に 委 ね られている 参 議 院 は 7 29の 審 判 で 国 民 に 託 された 役 割 を 十 二 分 に 発 揮 しなけ ればならない 自 由 法 曹 団 は 参 議 院 で 海 賊 対 処 法 案 を 廃 案 にし ソマリア 沖 派 兵 を 中 止 させることを 強 く 要 求 する 参 議 院 での 海 賊 対 処 法 案 廃 案 を 求 める 2009 年 5 月 11 日 編 集 自 由 法 曹 団 改 憲 阻 止 対 策 本 部 発 行 自 由 法 曹 団 112-0002 東 京 都 文 京 区 小 石 川 2-3-28-201 Tel 03(3814)3971 Fax 03(3814)2623 URL http://www.jlaf.jp/ 16