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Transcription:

第 6 章 北 極 海 と 日 米 同 盟 金 田 秀 昭 はじめに 近 年 地 球 温 暖 化 の 影 響 を 受 けて 夏 季 においては 北 極 海 の 万 年 氷 が 融 氷 するという 変 化 が 生 じ 砕 氷 能 力 の 無 い 船 舶 の 航 行 が 可 能 となった この 結 果 北 極 海 に 関 しては 欧 州 とアジアを 短 距 離 で 結 ぶ 国 際 的 な 海 上 交 通 路 としての 利 用 や 海 洋 海 底 資 源 の 開 発 など に 展 望 が 開 けることとなった 一 方 北 極 海 の 急 激 な 変 容 に 起 因 する 安 全 保 障 防 衛 面 へ の 影 響 も 見 逃 せなくなっている 早 くも 米 国 ロシア カナダといった 北 極 圏 諸 国 が 北 極 海 を 巡 る 安 全 保 障 上 の 問 題 に 関 して 敏 感 になっているのに 加 え 海 洋 への 侵 出 傾 向 の 著 しい 中 国 などの 諸 国 が 北 極 海 を 巡 って 安 全 保 障 面 でのつば 迫 り 合 いを 始 めている こういった 状 況 を 目 の 当 たりにして 日 本 の 官 民 も 遅 ればせながら 北 極 海 への 関 心 を 強 め 始 めたが その 視 点 は 未 だ 海 運 や 資 源 開 発 といった 側 面 が 主 となっており 安 全 保 障 防 衛 面 での 関 心 は 未 だ 低 調 である 折 しも 安 倍 政 権 下 2013 年 末 に 国 家 安 全 保 障 会 議 (JNSC)が 創 設 され JNSC により 初 となる 国 家 安 全 保 障 戦 略 を 始 め 見 直 しを 進 めてい た 防 衛 計 画 の 大 綱 や 中 期 防 衛 力 整 備 計 画 が 採 択 承 認 された 2014 年 夏 には 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 等 に 関 する 憲 法 解 釈 の 変 更 政 策 の 転 換 も 行 われ 2014 年 末 には 日 米 防 衛 協 力 指 針 が 改 定 される 運 びとなっている 本 稿 では こういった 国 内 外 の 変 化 を 捉 えつつ 北 極 海 変 容 の 及 ぼす 安 全 保 障 防 衛 面 での 影 響 を 分 析 し 今 後 の 北 極 海 を 巡 る 日 米 同 盟 のあり 方 を 中 心 として 提 言 する 1. 北 極 海 変 容 の 安 全 保 障 防 衛 面 の 影 響 北 極 海 変 容 の 安 全 保 障 防 衛 面 での 影 響 を 分 析 するに 際 しては 北 極 海 の 自 然 環 境 的 な 変 化 といった 比 較 的 進 展 の 緩 やかな 現 象 と 北 極 圏 諸 国 や 関 係 国 の 安 全 保 障 防 衛 上 の 関 心 の 変 化 という 比 較 的 反 応 の 速 やかな 事 象 を 同 時 に 捉 えていくという 異 なった 側 面 がある ため 短 期 中 期 長 期 に 分 けて 考 察 することが 適 当 であり 本 稿 ではこの 視 点 で 考 察 を 進 める 短 期 的 には 新 たに 国 際 的 に 重 要 な 海 上 交 通 路 が 誕 生 しつつあるということである こ の 面 に 関 しては 未 だ 商 業 用 航 路 としては 本 格 的 な 段 階 にはないが 既 に 北 極 圏 諸 国 や 関 係 国 において 開 発 利 用 が 進 むようになり 現 実 に 商 業 目 的 の 海 上 輸 送 も 行 われ 始 めて おり 北 極 海 域 の 経 済 面 での 利 用 という 点 に 国 際 的 な 関 心 が 高 まりを 見 せるようになっ -65-

てきた 中 長 期 的 には 北 極 海 での 北 極 圏 諸 国 や 関 係 国 間 の 資 源 獲 得 競 争 が 激 化 すると 予 測 さ れ 今 後 の 資 源 開 発 の 成 り 行 きによっては 欧 亜 の 新 規 参 入 国 が 開 発 競 争 に 殺 到 する 可 能 性 も 生 じよう また 大 西 洋 と 太 平 洋 を 最 短 距 離 で 結 ぶ 新 たな 海 上 交 通 路 の 開 設 という 事 実 は 単 に 経 済 面 での 影 響 だけではなく グローバルな 安 全 保 障 防 衛 問 題 に 関 心 を 持 つ 国 にとっては 戦 略 的 な 機 動 展 開 能 力 に 係 わる 重 大 な 変 化 を 意 味 することになる またこれ に 関 連 して 米 国 やロシアの 拡 大 核 抑 止 力 の 信 頼 性 の 低 下 や 日 本 周 辺 海 域 を 含 む 北 極 海 周 辺 海 域 や 航 路 での 多 様 な 安 全 保 障 課 題 が 生 起 することが 危 惧 される こうしたことか ら 北 極 海 を 巡 る 安 全 保 障 上 の 視 点 も 含 めた 新 たな 国 際 ルールを 設 定 する 必 要 性 が 生 じて いる 長 期 的 には 北 極 海 自 身 や 地 球 規 模 での 環 境 変 化 の 悪 影 響 に 拍 車 が 掛 かる 懸 念 があり この 問 題 に 対 する 国 際 的 枠 組 み 作 りが 求 められる (1) 新 たな 国 際 的 海 上 交 通 路 の 誕 生 の 及 ぼす 影 響 新 たに 国 際 的 に 重 要 な 海 上 交 通 路 が 誕 生 するという 点 については 既 に 北 極 圏 諸 国 の みならず 日 本 を 含 む 欧 亜 の 関 係 国 が 強 い 関 心 を 示 している 近 年 これら 諸 国 には 北 極 海 の 北 東 航 路 (ロシア 沿 岸 ) 北 西 航 路 (カナダ 沿 岸 ) 中 央 航 路 の 利 用 への 強 い 期 待 を 背 景 として 未 だ 本 格 的 とはいかないまでも 既 にその 航 行 実 績 も 増 加 しつつある とり わけ 中 国 や 韓 国 に 加 え インドやシンガポールなどの 新 興 海 洋 国 家 が 積 極 姿 勢 を 示 してい ることが 特 徴 的 であり そのことにより 本 問 題 は 必 然 的 に 資 源 開 発 問 題 へと 繋 がり 行 き 着 くところは 安 全 保 障 防 衛 問 題 と 関 連 付 けられる 傾 向 にある しかし 現 状 では 北 極 海 の 海 上 交 通 路 としての 利 用 は 通 年 とはいかず 夏 季 に 限 定 され ている これに 加 え 北 極 圏 諸 国 による 国 内 法 の 適 用 や 通 航 料 の 賦 課 ( 北 東 航 路 でのロシ ア)や 自 国 内 水 との 宣 言 ( 北 西 航 路 でのカナダ)といった 形 で 通 航 には 何 らかの 制 約 や 制 限 があり 恒 常 的 な 利 用 には 不 確 実 性 がある その 上 北 極 海 は 従 来 万 年 氷 に 閉 ざされ た 海 として 広 く 認 識 され 学 術 目 的 以 外 には 海 上 交 通 路 としての 利 用 や 冷 戦 さなか の 米 ソ 戦 略 原 潜 の 活 動 以 外 では 軍 事 作 戦 の 舞 台 として 顧 みられることはほとんどなかった ため そもそも 北 極 海 の 利 用 やルールに 関 する 国 際 条 約 や 協 定 が 存 在 せず 現 実 に 経 済 的 に 成 り 立 つ 海 上 交 通 路 として あるいは 軍 事 目 的 での 利 用 に 関 しては 容 易 には 解 決 でき ない 課 題 が 山 積 しているのが 実 情 である -66-

(2) 北 極 海 を 舞 台 とする 軍 事 面 のつば 迫 り 合 い 北 極 海 を 舞 台 とする 軍 事 面 でのつば 迫 り 合 いを 見 てみると 一 つには 北 極 圏 諸 国 間 の 領 土 確 定 問 題 が 背 景 となっており 従 来 は 具 体 的 な 政 治 的 対 立 には 至 らなかったケースでも 現 実 に 国 家 主 権 や 領 域 確 定 問 題 として 認 識 されるようになったという 側 面 がある それ 以 上 に 今 後 深 刻 化 すると 思 われる 問 題 は 米 露 間 の 戦 略 核 抑 止 態 勢 への 影 響 であり 今 後 は 中 国 が 本 問 題 に 参 入 する 可 能 性 があることである 北 極 圏 諸 国 の 中 でもロシアは 北 極 海 航 路 の 利 用 確 保 北 極 圏 での 国 益 確 保 のための 北 極 圏 国 境 警 備 機 能 の 統 合 のため 北 極 軍 の 創 設 や 基 地 の 新 設 など 軍 事 的 な 関 心 を 増 大 さ せつつある 冷 戦 終 結 以 降 中 断 していた 北 極 圏 での 監 視 哨 戒 飛 行 を 再 開 し 原 子 力 潜 水 艦 の 行 動 も 活 発 化 させるとともに 新 たに 北 極 旅 団 を 新 設 し 砕 氷 艦 船 の 増 強 にも 着 手 した 2013 年 には 北 極 海 にあるノボシビルスク 諸 島 付 近 で 水 上 機 動 部 隊 が 演 習 を 実 施 し 20 年 ぶりで 同 諸 島 の 陸 上 基 地 の 整 備 にも 着 手 している また 米 国 が 核 抑 止 力 強 化 の 一 環 と して バレンツ 海 など 北 極 圏 にもイージス 艦 を 配 備 するなど 今 後 弾 道 ミサイル 防 衛 (BMD) 機 能 を 高 めていく 可 能 性 があると 見 て 機 先 を 制 する 形 で 欧 州 への BMD 機 能 強 化 (EPAA)に 対 すると 同 様 に 北 極 海 についても 反 対 の 意 図 を 強 く 表 明 する 一 方 2013 年 には 新 型 戦 略 原 潜 を 北 洋 艦 隊 に 配 備 した また 最 近 では 中 国 の 砕 氷 船 雪 龍 が 宗 谷 海 峡 を 経 由 して ロシアにとっての 軍 事 上 の 聖 域 であるオホーツク 海 ルートを 利 用 し さらにロシアの 管 轄 外 となる 北 極 海 の 中 央 航 路 を 航 行 するなどの 動 きを 見 せていることに 対 しても 強 い 警 戒 心 を 持 って 敏 感 な 反 応 を 見 せるようになった カナダは ロシアとは 異 質 ではあるが 同 様 に 高 い 軍 事 的 関 心 を 示 しており 北 極 圏 で の 哨 戒 迎 撃 輸 送 救 難 行 動 に 適 応 する 航 空 機 や 無 人 航 空 ビークル(UAV) 兵 力 の 整 備 を 進 めている また 砕 氷 能 力 を 持 った 哨 戒 艦 艇 等 の 更 新 を 進 めているほか 局 地 陸 軍 の 能 力 も 増 強 中 である 米 国 は 今 までのところ 露 加 両 国 に 比 べれば 北 極 海 での 軍 事 的 関 心 は 高 くないよう に 見 受 けられるが 遅 ればせながら 海 軍 を 中 心 に 北 極 海 への 安 全 保 障 防 衛 面 での 関 心 を 増 大 させており 2013 年 11 月 には 国 防 省 が 北 極 戦 略 (Arctic Strategy)を 発 表 し 敵 意 をもった 存 在 の 侵 入 に 備 え 海 洋 での 探 知 追 尾 能 力 の 向 上 を 図 るとともに 北 極 圏 の 安 全 保 障 に 関 して 長 期 的 な 視 点 をもって 関 係 国 と 連 携 する 必 要 性 を 強 調 している 海 軍 は 2014 年 中 を 目 処 に ロードマップの 策 定 に 取 り 掛 かっており その 結 果 に 注 目 が 集 まっている 欧 州 諸 国 の 中 では ノルウェーの 関 心 が 最 も 高 く 軍 全 体 としての 北 極 海 での 行 動 を 意 識 した 軍 備 の 改 善 が 図 られており ロシアとの 連 携 の 強 化 が 図 られている スウェーデン -67-

はグリペン 戦 闘 偵 察 機 や 潜 水 艦 など 海 空 軍 を 中 心 に 北 極 行 動 を 意 識 した 軍 備 の 拡 充 を 図 っている またデンマークは グリーンランドに 北 極 任 務 部 隊 を 新 編 し F-16 戦 闘 機 の 配 備 を 開 始 した (3) 北 極 海 での 資 源 獲 得 競 争 の 激 化 北 極 海 には 世 界 の 未 発 見 天 然 ガスの 30% 石 油 の 13%が 存 在 すると 見 られており その 大 部 分 がロシアの 管 轄 領 内 の 浅 海 域 に 集 中 しているが ロシアの 現 有 する 技 術 力 での 開 発 は 難 点 があり ノルウェーなどとの 提 携 を 模 索 している しかし 計 画 策 定 や 税 制 問 題 など 未 解 決 の 問 題 が 多 く 開 発 計 画 は 後 ろ 倒 しの 状 況 となっている 北 極 圏 諸 国 は 北 極 海 の 資 源 に 関 して 大 幅 な 主 権 的 権 限 を 主 張 し 開 発 に 注 力 する 姿 勢 を 強 めている 取 り 分 けロシアは 北 極 海 の 大 陸 棚 での 資 源 開 発 と 関 連 させた 形 で シベ リアでの 陸 上 交 通 網 の 開 発 ロシア~アラスカ 間 の 大 陸 間 トンネルの 開 設 までも 視 野 に 入 れている 中 国 韓 国 インドなどは 北 極 海 の 資 源 に 狙 いを 定 めつつある 特 に 顕 著 なのは 中 国 であり 近 年 は 北 極 評 議 会 の 加 盟 国 への 接 近 をあからさまにし 始 め 2012 年 には 温 家 宝 首 相 ( 当 時 )がスウェーデンおよびアイスランドを 胡 錦 濤 中 国 国 家 主 席 ( 当 時 )がデ ンマークを 訪 問 2013 年 12 月 には 北 欧 5 ヵ 国 の 北 極 研 究 機 構 との 間 で 中 国 - 北 欧 北 極 研 究 センター を 上 海 に 設 置 することで 合 意 した 中 国 は 特 にアイスランドに 関 心 を 強 めており 同 国 のレイキャビックに 大 使 館 を 設 置 するなど 同 市 港 湾 を 中 国 が 独 占 的 に 利 用 し 得 る 北 極 海 運 のハブ 港 として 位 置 づけ その 開 発 を 期 しているのではないかとして 他 の 関 係 国 からの 反 発 を 買 っている また 中 国 はこの 戦 略 の 一 環 として 前 述 したように 夏 季 の 融 氷 期 には 砕 氷 船 雪 龍 を 北 極 海 に 周 航 させ レイキャビク 港 にも 寄 港 させて いる (4) 戦 略 的 な 機 動 展 開 能 力 の 変 化 北 極 海 ルートを 利 用 することが 可 能 となった 場 合 の 軍 事 面 に 及 ぼす 影 響 は 多 種 多 様 で あるが 中 でも 欧 州 とアジアを 結 ぶ 戦 略 的 な 機 動 展 開 能 力 の 改 善 は 顕 著 となる 海 運 業 的 視 点 から オランダのロッテルダムから 釜 山 までの 航 海 日 数 を 計 算 すると 北 極 海 を 経 由 する 場 合 と スエズ 運 河 を 利 用 する 場 合 とでは 距 離 にして 約 30%( 苫 小 牧 では 約 40% 横 浜 では 約 34%) 削 減 できるとの 試 算 がある この 数 字 は 海 上 運 行 日 数 という 点 からは 大 きな 差 となり 海 運 業 的 に 経 済 的 な 効 果 をもたらすことが 期 待 できるが それ 以 上 に 軍 事 戦 略 的 に 見 れば 圧 倒 的 なメリットが 生 まれることとなる -68-

このことはグローバルな 戦 略 環 境 に 革 新 的 な 変 化 を 与 えることとなる まずは NATO の 関 心 領 域 が 増 大 し 北 極 海 への 常 続 的 なプレゼンスを 示 す 傾 向 が 生 じる 米 国 単 独 で 考 え れば 大 西 洋 と 太 平 洋 を 連 結 する 海 上 戦 略 機 動 能 力 の 改 善 が 顕 著 となり また 北 極 海 を 基 盤 とするパワープロジェクションが 可 能 となる これらの 変 化 により 北 極 地 域 を 担 当 す る 地 域 軍 の 性 格 にも 変 化 が 生 じるであろう 特 段 の 担 当 の 無 かった 北 極 海 地 域 担 当 軍 の 区 分 は カナダ 側 が 北 方 軍 ロシア 側 が 欧 州 軍 と 分 割 されることとなり 実 兵 力 を 持 たない 北 方 軍 に 太 平 洋 軍 が 兵 力 を 提 供 するという 形 を 取 る 可 能 性 があり 得 る 仮 にそうなった 場 合 には アジア 太 平 洋 における 軍 事 バランスに 少 なからぬ 影 響 を 与 え 日 本 の 負 担 が 増 大 することとなろう 何 れにせよ 従 来 の 地 政 学 や 軍 事 戦 略 では 全 く 顧 みられることがないか ほとんど 慮 外 とされていた 北 極 海 を 取 り 込 んだ 形 での 海 洋 軍 事 戦 略 の 構 築 が 北 極 圏 諸 国 や 関 係 国 に 必 要 となってくる (5) 米 国 拡 大 核 抑 止 力 の 信 頼 性 の 低 下 北 極 海 の 変 容 がもたらす 軍 事 面 でのもう 一 つの 大 きな 影 響 は 米 国 の 拡 大 核 抑 止 力 の 信 頼 性 の 低 下 の 可 能 性 が 生 じるということである まずは 間 違 いなくロシアの 戦 略 原 潜 の 活 動 期 間 や 哨 戒 範 囲 が 拡 大 する 一 方 米 国 の 戦 略 原 潜 や 攻 撃 型 原 潜 の 活 動 期 間 や 哨 戒 範 囲 の 拡 大 も 同 時 に 生 じ 得 るわけであるが 米 国 の 戦 略 原 潜 や 攻 撃 型 原 潜 の 活 動 に 対 するロ シアの 攻 撃 型 原 潜 の 活 動 期 間 や 哨 戒 範 囲 の 拡 大 もあり 得 る 一 般 に 原 潜 の 性 能 面 では 米 国 がロシアに 勝 っているが 対 潜 兵 力 の 展 開 を 含 め 地 の 利 を 得 ているのはロシアであり このことは 米 原 潜 の 行 動 制 約 という 意 味 ではロシアに 有 利 に 作 用 するであろう これに 加 え 中 長 期 的 視 点 で 見 れば そう 遠 く 無 い 将 来 中 国 の 戦 略 原 潜 の 哨 戒 ( 晋 級 またはポスト 晋 級 戦 略 原 潜 )や 攻 撃 型 原 潜 ( 商 級 またはポスト 商 級 原 潜 )が 展 開 するこ とも 想 定 しておかねばならない 冷 戦 中 を 最 盛 期 として 米 ソの 戦 略 原 潜 の 哨 戒 活 動 やそ れを 常 時 追 従 する 攻 撃 型 原 潜 の 活 動 に 関 して 平 素 からの 息 詰 まるようなつば 迫 り 合 いが 行 われてきたのは 周 知 のとおりである 現 代 においても この 点 に 関 する 米 露 の 関 係 は 基 本 的 には 不 変 であると 思 われる これに 加 え 中 国 がその 戦 略 原 潜 に 搭 載 する 弾 道 ミサ イルの 開 発 に 最 終 的 に 成 功 して 実 戦 化 が 可 能 となれば その 実 用 射 程 によっては 北 極 海 での 中 国 戦 略 原 潜 の 哨 戒 活 動 が 日 常 的 に 行 われるようになっても 不 思 議 では 無 い いずれにせよ 今 後 の 米 中 露 間 の 戦 略 原 潜 による 戦 略 核 第 2 撃 力 の 推 移 によっては 北 極 海 の 変 容 に 起 因 した 米 国 の 核 抑 止 能 力 の 低 下 が 起 こり 得 る 可 能 性 が 生 じる こういった ことも 踏 まえ 米 国 は 宇 宙 空 中 陸 上 海 上 配 備 型 の BMD 網 の 展 開 を 強 化 すると 思 わ -69-

れるが このことは 日 本 にとって 他 人 事 ではなく 米 国 の 核 拡 大 抑 止 力 に 大 きく 依 存 する 日 本 にとって 今 後 は 北 極 海 での 戦 略 原 潜 の 展 開 を 巡 って 生 じ 得 る 各 種 の 軍 事 問 題 への 強 い 関 心 を 払 うとともに この 点 に 関 する 米 国 へのなし 得 る 限 りの 協 力 が 必 要 となること を 銘 記 しなければならない (6) 周 辺 海 域 での 多 様 な 安 全 保 障 課 題 の 生 起 北 極 海 の 変 容 に 起 因 し 北 極 海 には 直 接 の 関 係 は 無 くとも 周 辺 海 域 において 多 様 な 安 全 保 障 問 題 が 生 起 する 可 能 性 があることも 重 要 な 点 である 北 極 海 での 航 路 利 用 が 増 加 す れば 北 極 海 に 連 接 する 周 辺 海 域 の 航 路 も 輻 輳 することは 当 然 の 結 果 として 起 こる 日 本 周 辺 で 考 えても 日 本 海 やその 出 入 り 口 となる3 海 峡 ( 宗 谷 津 軽 対 馬 )が 輻 輳 化 する これに 加 えて ロシアの 東 シベリアにおける 原 油 や 天 然 ガスの 開 発 と 日 本 などへの 海 上 供 給 路 の 設 定 が 軌 道 に 乗 れば 日 本 海 を 経 由 したエネルギーの 重 要 な 海 上 交 通 路 が 現 出 した こととなり ますます 日 本 海 や3 海 峡 における 海 上 交 通 が 輻 輳 化 する 同 時 に 日 本 のみ ならず 中 国 や 韓 国 ( 北 朝 鮮 )による 利 用 も 増 加 することとなり 輻 輳 化 した 日 本 海 や 3 海 峡 において 海 上 保 安 や 安 全 保 障 面 での 問 題 が 生 起 する 可 能 性 が 高 まるものと 考 えられ よう また 北 極 海 や 北 方 海 域 での 海 上 交 通 が 輻 輳 化 すれば 捜 索 救 難 人 道 支 援 災 害 救 援 といった 面 が 新 たに 地 域 の 課 題 となり 北 極 圏 諸 国 や 周 辺 国 は それらに 対 する 新 たな 国 際 的 責 任 を 負 うこととなる 日 本 は こういった 点 での 貢 献 を 目 に 見 える 形 で 適 切 に 行 う ことにより 今 後 の 北 極 海 利 用 に 関 する 国 際 的 協 議 を 有 利 に 進 めるカードを 持 ち 得 ると 認 識 すべきである となれば 同 方 面 での 緊 急 事 態 や 有 事 に 備 え 北 極 海 や 北 方 海 域 での 活 動 をも 念 頭 に 置 いた 艦 船 航 空 機 などの 防 衛 装 備 品 の 開 発 や 取 得 などが 今 後 の 具 体 的 な 課 題 となってくるであろう (7) 北 極 海 を 巡 る 新 国 際 ルール 設 定 の 必 要 性 現 状 では 北 極 海 の 航 行 資 源 開 発 といった 経 済 的 側 面 のみならず 安 全 保 障 防 衛 面 での 国 際 的 ルールが 確 立 されているとはいえない 現 行 の 海 洋 法 条 約 や 国 際 的 な 航 行 に 関 する 各 種 の 国 際 合 意 や 南 極 の 平 和 的 な 利 用 についての 国 際 合 意 に 基 づく 南 極 条 約 などは 存 在 するが 北 極 に 関 してはほぼ 存 在 しないといってよい 確 かに 北 極 評 議 会 が 存 在 し グループ 内 での 幾 つかの 取 極 めは 存 在 するが 少 なくとも 現 状 における 同 評 議 会 の 性 格 は 北 極 海 の 利 用 などに 関 する 寡 占 的 な 協 議 体 であり 北 極 圏 諸 国 としての 既 得 権 の 維 持 を 第 一 に 置 いており 国 際 的 に 見 て 全 ての 国 に 開 かれた 公 平 な 組 織 体 として 機 能 することを -70-

期 待 することは 当 面 困 難 と 見 ざるを 得 ない そういう 意 味 からは 北 極 条 約 の 新 規 制 定 や 国 連 海 洋 法 条 約 の 改 定 を 念 頭 に 置 いた 国 際 的 に 開 かれた 公 正 な 議 論 が 必 要 となるが そういう 点 での 国 際 的 なコンセンサス 作 りの 機 運 は 目 下 現 れていない 現 状 では 北 極 評 議 会 にそれを 期 待 することは 望 み 薄 であるとすれ ば 国 際 政 治 経 済 産 業 国 際 海 運 安 全 保 障 防 衛 という 観 点 から 日 本 の 安 定 的 な 地 位 を 確 保 するためにも 日 本 が 主 導 的 な 位 置 を 確 保 しつつ 国 際 ルール 確 立 のための 議 論 を 展 開 していくことが 必 要 となるが そのための 日 本 にとっての 現 実 的 な 選 択 は 同 盟 国 米 国 との 提 携 である 北 極 評 議 会 の 有 力 な 加 盟 国 である 米 国 との 協 議 を 密 にし 両 国 間 の 安 全 保 障 防 衛 面 の 利 害 関 係 を 調 整 した 上 で 米 国 を 通 じて 北 極 評 議 会 での 議 論 を 有 利 に 進 めていくことが 当 面 の 日 本 にとっての 選 択 肢 となろう しかし 米 国 は 国 連 海 洋 法 条 約 を 批 准 していないという 弱 点 がある 南 シナ 海 での 航 行 の 自 由 問 題 に 関 連 して 米 国 内 でも 同 条 約 批 准 の 動 きが 強 まってきたことは 日 本 にとっても 好 ましいことであり 日 本 としては この 意 味 からも 米 国 に 同 条 約 の 速 やかな 批 准 を 促 した 上 で 当 面 は 北 極 評 議 会 の 有 力 メンバーである 米 国 を 直 接 間 接 に 強 力 に 支 援 する 形 をとることが 日 本 にとっ て 最 善 の 選 択 となるものと 考 える (8) 環 境 変 化 の 悪 影 響 に 拍 車 の 懸 念 長 期 的 課 題 として 北 極 海 の 変 容 が 環 境 に 及 ぼす 影 響 を 無 視 することはもはやできない 北 極 海 航 路 の 輻 輳 や 資 源 開 発 競 争 の 激 化 による 環 境 悪 化 への 懸 念 を 共 有 し 国 際 的 に 何 ら かの 持 続 可 能 で 有 効 な 対 策 を 採 らねばならない 北 極 海 の 利 用 は 如 何 なる 形 態 にせよ 温 暖 化 をますます 助 長 するものと 思 われ 生 態 系 への 悪 影 響 は 避 けて 通 れない このため 環 境 悪 化 に 備 えた 新 たなルール 作 りが 望 まれることになる 例 えば 航 行 の 資 格 として 北 極 海 仕 様 の 船 舶 や 航 空 機 に 限 定 し 運 用 者 には 氷 洋 運 行 資 格 等 の 取 得 を 義 務 付 けることが 求 められることとなろう この 点 に 関 しては 軍 艦 軍 用 機 公 船 や 公 用 機 も 含 むことも 検 討 材 料 となろう さらに 言 えば 艦 船 用 燃 料 の 使 用 制 限 までも 視 野 に 入 れる 必 要 が 生 じる 可 能 性 もある 2. 日 本 の 採 るべき 対 応 それでは 北 極 海 の 変 容 に 伴 う 国 際 情 勢 の 変 化 に 対 し 安 全 保 障 防 衛 面 の 視 点 から 今 後 わが 国 として 採 るべき 対 応 は 何 か 短 期 的 には 北 極 海 航 路 の 利 用 について 国 際 潮 流 を 見 定 めつつ 海 上 交 通 路 の 利 用 を 積 極 的 に 推 進 する 方 向 で 政 策 を 進 めていくべきであろう また 世 界 有 数 の 海 洋 国 家 として -71-

国 際 的 ルール 作 りへの 参 画 も 死 活 的 に 重 要 となる すなわち 北 極 海 の 利 用 と 国 益 に 沿 っ た 外 交 政 策 の 推 進 が 短 期 的 に 日 本 の 採 るべき 対 応 となる 一 方 海 洋 立 国 たる 日 本 が 安 全 保 障 防 衛 面 の 視 点 から 中 長 期 的 に 採 るべき 対 応 としては 北 極 海 を 視 野 に 捉 え た 安 全 保 障 防 衛 政 策 の 見 直 し すなわち 防 衛 体 制 の 見 直 し 自 律 防 衛 能 力 の 強 化 日 米 防 衛 協 力 体 制 の 見 直 し 日 米 同 盟 の 深 化 さらには 関 係 友 好 国 との 海 洋 安 全 保 障 協 力 の 推 進 海 洋 安 全 保 障 協 盟 の 構 築 拡 大 を 行 うべきである (1) 北 極 海 の 利 用 と 国 益 に 沿 った 外 交 政 策 の 推 進 わが 国 の 安 全 保 障 防 衛 面 の 視 点 からは 北 極 海 を 最 大 限 に 利 用 することが 得 策 である このためにはまず 生 存 と 繁 栄 を 海 洋 に 全 面 的 に 依 存 する 国 家 として 国 際 潮 流 を 見 定 め つつ わが 国 の 国 益 に 沿 った 形 で 北 極 海 を 通 じた 海 上 交 通 路 の 利 用 を 推 進 すべきである 北 極 海 を 利 用 する 海 上 交 通 が 盛 んになれば わが 国 が 失 った 北 東 アジア 地 域 における 海 上 交 通 のハブ 港 を 国 内 に 再 設 定 することも 可 能 となる 一 方 北 極 仕 様 の 商 船 の 建 造 や 北 極 航 路 に 適 した 教 育 を 受 けた 船 員 の 養 成 も 必 須 となる このためには 南 極 観 測 支 援 での 経 験 を 有 する 海 自 砕 氷 艦 の 乗 組 経 験 者 の 活 用 や 砕 氷 艦 建 造 技 術 の 活 用 が 可 能 となる しかし 砕 氷 貨 物 船 や タンカー 等 の 建 造 については 利 害 得 失 を 慎 重 に 検 討 する 必 要 がある より 直 截 に 安 全 保 障 防 衛 面 の 視 点 からは 米 海 軍 が グローバルに 進 めている 国 際 テロや 海 賊 対 策 のための 海 上 状 況 把 握 (MSA:Maritime Situational Awareness)に 関 し 北 極 海 においても 協 力 していくことが 必 要 となる 何 れにせよ 日 本 は 北 極 圏 諸 国 ではないが その 生 存 と 繁 栄 を 海 洋 に 依 存 する 海 洋 国 家 として 国 際 間 で 行 われる 北 極 海 のルール 作 りには 早 い 段 階 で 参 画 し 適 切 な 外 交 手 段 により 日 本 の 国 益 に 合 致 する 成 果 を 得 るように 努 めなければならない 北 極 評 議 会 の 将 来 的 意 義 について 現 時 点 では 容 易 に 見 通 すことはできない 中 で 同 評 議 会 が 現 状 にお いて 公 正 な 国 際 ルール 作 りの 中 心 となるとは 想 定 し 難 いが 日 本 の 関 心 が 高 いことを 示 す ために 2013 年 5 月 に 得 た 非 北 極 圏 諸 国 (Non-Arctic States)という 恒 久 的 オブザーバーの 資 格 を 活 用 して 定 常 的 に 存 在 表 明 を 続 けることは 重 要 である そして 北 極 海 を 巡 る 新 たな 国 際 法 制 定 に 関 する 協 議 の 機 運 が 北 極 評 議 会 自 身 や 同 評 議 会 を 発 展 する 形 で あ るいは 別 の 何 らかの 形 で 生 まれた 場 合 には 海 洋 立 国 として 積 極 的 に 参 加 する 必 要 がある それまでの 間 は 前 述 したとおり 北 極 評 議 会 の 加 盟 国 である 同 盟 国 米 国 と 協 調 しつつ わが 国 の 国 益 に 沿 った 形 でのルール 作 りへの 参 加 を 進 めていくことが 得 策 である -72-

(2) 防 衛 体 制 の 見 直 し 自 律 防 衛 能 力 の 強 化 安 倍 内 閣 が 2013 年 末 に 示 した 国 家 安 全 保 障 戦 略 では 国 際 公 共 財 (グローバル コモ ンズ)に 関 するリスクの 一 つとして 北 極 海 問 題 が 特 記 されている また 同 時 に 採 択 さ れた 新 防 衛 計 画 の 大 綱 においては 北 極 海 とは 特 記 されていないが グローバルな 安 全 保 障 環 境 の 改 善 への 取 り 組 みの 一 つとして 海 洋 安 全 保 障 の 確 保 があげられている このこ とは 日 本 政 府 が 北 極 海 問 題 を わが 国 の 海 洋 安 全 保 障 に 直 結 する 防 衛 体 制 見 直 しの 中 長 期 的 課 題 として 捉 えるようになったと 解 することができよう 中 長 期 的 な 北 極 海 を 視 野 に 捉 えた 防 衛 体 制 見 直 しの 方 向 性 としては 自 律 防 衛 能 力 の 強 化 を 図 ることが 適 当 である 具 体 論 としてはまず 北 極 海 方 面 をもカバーする 戦 略 情 報 収 集 能 力 強 化 のための 監 視 衛 星 UAV C4ISR 等 の 整 備 が 求 められることになろう 将 来 的 に 艦 船 や 航 空 機 などの 北 極 海 での 行 動 海 域 が 拡 大 することに 伴 い 戦 略 戦 域 対 潜 能 力 の 拡 大 強 化 が 必 要 となり その 能 力 を 有 する 艦 艇 や 航 空 機 の 増 勢 に 加 え UAV や 無 人 水 中 ビークル(UUV)の 効 果 的 利 用 が 求 められよう さらに 弾 道 ミサイル 防 衛 能 力 の 拡 大 強 化 も 必 要 となり イージス 艦 の 増 勢 なども 検 討 の 必 要 性 が 生 じよう 一 方 北 極 海 での 艦 船 や 航 空 機 の 行 動 を 念 頭 に 置 けば 砕 氷 救 難 機 能 確 保 のため 砕 氷 救 難 艦 や 氷 洋 救 難 機 の 整 備 北 極 海 や 北 方 海 域 仕 様 の 艦 船 航 空 機 の 整 備 同 方 面 での 海 象 気 象 情 報 の 収 集 分 析 機 能 の 保 有 も 必 要 となろう また 既 述 のとおり 日 本 海 や 3 海 峡 防 衛 体 制 の 強 化 はもとより 北 海 道 周 辺 海 域 北 方 海 域 北 極 海 での 行 動 能 力 強 化 が 必 要 となるため 同 方 面 での 自 衛 隊 の 情 報 収 集 体 制 の 強 化 C4ISR の 整 備 北 方 行 動 に 適 した 艦 船 や 航 空 機 の 装 備 後 方 支 援 や 運 用 面 での 改 善 強 化 といった 対 策 の 検 討 も 必 要 となろう (3) 日 米 防 衛 協 力 体 制 の 見 直 し 日 米 同 盟 の 深 化 安 倍 政 権 は 2014 年 末 を 目 処 として 日 米 防 衛 協 力 指 針 の 改 定 作 業 を 進 めている 2013 年 10 月 に 東 京 で 開 かれた 日 米 外 務 防 衛 閣 僚 による 安 全 保 障 協 議 委 員 会 (いわゆる 2+2 ) において 1997 年 の 日 米 防 衛 協 力 指 針 について 2014 年 末 までに 見 直 し 作 業 を 完 了 するこ とが 決 定 された 見 直 しの 方 向 性 としては 日 米 防 衛 協 力 の 中 核 的 要 素 である 日 本 に 対 す る 武 力 攻 撃 への 対 処 能 力 の 確 保 地 域 のパートナーとのより 緊 密 な 安 全 保 障 協 力 の 促 進 効 果 的 効 率 的 シームレスな 対 応 を 確 保 するための 緊 急 事 態 における 防 衛 協 力 の 指 針 と なる 概 念 の 評 価 といった 短 中 期 的 課 題 に 加 え 同 盟 のグローバルな 性 質 を 反 映 する 協 力 範 囲 の 拡 大 や 同 盟 強 化 を 可 能 とする 追 加 的 な 方 策 の 探 求 といった 中 長 期 的 課 題 が 含 まれている 2+2 では それ 以 外 にも 二 国 間 の 安 全 保 障 および 防 衛 協 力 の 分 野 として -73-

BMD 協 力 サイバー 空 間 や 宇 宙 における 協 力 共 同 ISR 防 衛 装 備 技 術 協 力 などに 加 え 拡 大 抑 止 の 協 議 の 進 展 についても 特 記 された これらを 敷 衍 すれば 北 極 海 を 視 野 に 捉 えた 中 長 期 的 な 安 全 保 障 防 衛 面 の 課 題 に 対 する 日 米 同 盟 体 制 の 見 直 しや 日 米 防 衛 協 力 のあり 方 についても 今 般 の 日 米 防 衛 協 力 指 針 の 改 定 作 業 の 中 で 検 討 されるものと 解 すべきである このことは 当 然 のことながら 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 についての 議 論 の 行 く 末 とも 深 く 関 連 する 既 に 米 海 軍 は 2009 年 には 北 極 海 問 題 に 対 応 するためのロードマップを 作 成 する 方 針 を 打 ち 出 し 2014 年 を 目 処 に 対 応 計 画 を 作 成 する 予 定 である この 計 画 には 戦 略 政 策 任 務 計 画 が 含 まれ 作 戦 教 育 訓 練 武 器 母 体 センサー C4ISR 等 の 兵 力 整 備 戦 略 通 信 および 展 開 環 境 評 価 およびその 予 想 が 含 まれる 対 応 計 画 で 想 定 される 任 務 とし ては 海 洋 安 全 保 障 捜 索 救 難 人 道 支 援 災 害 救 援 他 官 庁 協 力 戦 略 機 動 戦 略 抑 止 BMD などが 含 まれている 現 行 の 日 米 同 盟 体 制 では 北 極 海 問 題 は 想 定 外 となっているが 北 極 評 議 会 の 加 盟 国 米 国 との 密 接 な 関 係 構 築 は 安 全 保 障 防 衛 面 においても 日 本 の 北 極 海 利 用 にとって 大 きな 意 義 を 持 つことになる 米 国 の 核 抑 止 力 を 含 む 北 極 海 安 全 保 障 体 制 強 化 への 多 角 的 な 支 援 を 日 本 が 行 うことが 可 能 となれば 日 米 安 全 保 障 体 制 の 双 務 性 向 上 に 大 きく 寄 与 すると いう 側 面 もある また これに 関 連 していえば 中 露 の 関 係 強 化 を 阻 むためにも 核 抑 止 を 中 心 とした 日 米 露 の3 国 安 保 防 衛 協 力 の 強 化 も 以 前 に 比 べ 現 実 味 を 増 し 格 段 とその 意 義 を 深 めて いくこととなろう 日 米 防 衛 協 力 指 針 の 改 定 は それ 自 身 で 大 きな 抑 止 効 果 を 発 揮 するものと 考 えられ 取 り 分 けこの 中 で 戦 略 情 報 共 有 C4ISR BMD 対 潜 水 艦 戦 捜 索 救 難 人 道 支 援 災 害 救 援 といった 側 面 で 北 極 海 の 安 全 保 障 に 関 連 する 防 衛 協 力 の 強 化 を 含 めていくことは 重 要 な 意 味 を 持 つことになり これらの 関 係 強 化 を 通 じ 日 米 同 盟 のさらなる 深 化 を 図 っ ていくことは 大 いに 意 義 を 持 つこととなる この 際 北 極 海 を 巡 る 安 全 保 障 防 衛 面 で の 情 勢 の 変 化 に 適 応 する 形 で 日 米 防 衛 協 力 指 針 を 都 度 改 定 または 一 部 修 正 していく ことが 求 められる 一 方 指 針 の 改 定 または 一 部 修 正 に 伴 い 新 指 針 の 実 効 性 を 確 保 するための 日 米 防 衛 協 力 指 針 に 直 接 関 連 する 法 体 系 である 周 辺 事 態 安 全 確 保 法 や 船 舶 検 査 法 の 改 定 など 国 内 関 係 法 の 改 定 が 必 要 となる 可 能 性 がある またいうまでも 無 く 安 倍 政 権 により 新 設 され た 国 家 の 安 全 保 障 司 令 塔 として 期 待 される 国 家 安 全 保 障 会 議 (JNSC)の 指 導 監 督 の 下 関 係 省 庁 間 の 情 報 共 有 や 運 用 面 での 協 力 の 強 化 が 必 要 となる -74-

(4) 関 係 友 好 国 との 海 洋 安 全 保 障 協 力 の 推 進 海 洋 安 全 保 障 協 盟 の 構 築 拡 大 2013 年 10 月 の 日 米 2+2 では 日 米 同 盟 の 地 域 への 関 与 として 能 力 構 築 海 洋 安 全 保 障 協 力 人 道 支 援 災 害 救 援 3 カ 国 協 力 や 多 国 間 協 力 についても 論 及 された その 意 味 で 日 本 が 自 身 の 国 益 に 沿 う 形 で 戦 略 的 な 観 点 から 国 際 協 調 主 義 に 基 づく 積 極 的 平 和 主 義 を 具 現 化 するため 欧 亜 の 関 係 友 好 国 との 海 洋 安 全 保 障 協 盟 ( 有 志 連 合 :コ アリション)を 構 築 し 拡 大 を 図 っていくことが 重 要 である その 中 で 北 極 海 問 題 に 関 しても 安 全 保 障 防 衛 面 での 協 調 路 線 をとっていくことが 求 められる 取 り 分 け 遠 隔 の 地 にある 関 係 友 好 国 に 対 し 北 極 海 での 捜 索 救 難 などでの 可 能 な 範 囲 での 積 極 的 な 協 力 を 約 束 し その 見 返 りに 日 本 にとっての 遠 隔 海 域 での 海 洋 安 全 保 障 協 盟 の 参 加 国 との 連 携 による 広 域 かつシームレスな 海 洋 安 全 保 障 協 力 により 長 大 な 海 上 交 通 路 の 安 全 保 障 を 確 保 することが 可 能 となるよう これら 関 係 友 好 国 との 協 調 関 係 を 維 持 していくことが 得 策 である おわりに 北 極 海 に 関 しては 日 本 自 身 は 北 極 圏 諸 国 という 立 場 ではなく 2013 年 の 5 月 ようや く 他 のアジア 諸 国 とともに 北 極 評 議 会 の 非 北 極 圏 諸 国 という 形 の 恒 久 的 オブザーバー という 資 格 を 手 に 入 れた 北 極 海 航 路 の 利 用 は 日 本 にとってのメリットは 大 いにあるも のの 北 極 評 議 会 の 加 盟 国 による 寡 占 的 性 格 中 国 などによるあからさまな 自 己 中 心 的 な 覇 権 外 交 活 動 日 本 の 出 遅 れなど 国 際 政 治 的 に 必 ずしも 日 本 に 有 利 な 状 況 が 作 られては いない 中 で 航 路 としての 利 用 や 資 源 開 発 関 心 の 激 化 に 伴 う 環 境 保 護 安 全 保 障 防 衛 といった 面 での 国 際 的 ルール 作 りが 求 められており 日 本 としては わが 国 の 国 益 に 沿 っ た 形 で この 動 きに 能 動 的 に 参 画 していく 必 要 がある その 一 方 で 中 長 期 的 に 北 極 海 を 視 野 に 入 れた 自 律 防 衛 能 力 の 強 化 日 米 同 盟 の 深 化 さらには 関 係 友 好 国 との 海 洋 安 全 保 障 協 盟 の 構 築 拡 大 が 求 められている 現 安 倍 政 権 に なって 国 家 安 全 保 障 戦 略 の 初 の 採 択 をはじめ 新 たに 防 衛 計 画 の 大 綱 や 中 期 防 が 策 定 さ れ さらに 集 団 的 自 衛 権 行 使 などの 憲 法 解 釈 見 直 し 作 業 が 進 み 日 米 防 衛 協 力 指 針 も 日 米 当 局 間 での 検 討 作 業 が 開 始 されるなど わが 国 の 安 全 保 障 防 衛 政 策 の 見 直 しが 国 際 協 調 主 義 に 基 づく 積 極 的 平 和 主 義 の 具 現 化 という 明 確 な 方 針 の 下 推 進 されていることは 大 いに 頼 もしいことである ついては 北 極 海 問 題 が 短 期 的 な 海 運 や 資 源 開 発 という 経 済 的 側 面 だけではなく 中 長 期 的 には 安 全 保 障 防 衛 面 に 重 要 な 意 味 を 持 つことに 留 意 した 形 で これら 政 策 見 直 しが 強 力 に 進 められていくことを 期 待 する -75-