平 成 27 年 度 岡 山 市 国 際 交 流 推 進 事 業 インドネシア マリノ 村 における 有 機 農 業 技 術 指 導 事 業 報 告 特 定 非 営 利 活 動 法 人 アムダ AMDA フードプログラム 2015 年 10 月 5 日 プログラムマネージャー 田 中 俊 祐 1 背 景 インドネシアのスラウェシ 島 の 農 村 部 では 貧 困 層 が 集 中 しており 農 業 者 の 教 育 水 準 も 小 学 校 中 退 程 度 と 低 い 現 地 の 農 法 では 面 積 あたりの 収 量 が 少 なく ほとんどを 自 家 用 で 消 費 してしま い 収 入 につながらないため 貧 困 からの 脱 却 が 困 難 であるという 現 状 がある 2 これまでの 活 動 経 緯 そこで 2013 年 AMDA はマリノ 村 から 2 人 の 研 修 生 を 招 へいし 新 庄 村 の AMDA 野 土 路 農 場 にて 6 か 月 間 の 有 機 農 業 研 修 ( 稲 作 )を 行 った 帰 国 後 その 研 修 生 と 地 元 の 農 家 がマリノ 村 で 有 機 農 業 普 及 活 動 を 行 っている 今 年 はじめ マリノ 村 で 収 穫 された 有 機 栽 培 米 と 普 通 栽 培 米 の 分 析 検 査 を 行 ったところ 有 機 栽 培 米 がより 品 質 が 良 いという 結 果 が 得 られた 今 後 の 目 標 は この 有 機 栽 培 米 の 収 穫 量 を 上 げ 高 品 質 の 高 級 米 として 販 売 し 貧 困 脱 却 の 一 助 とすることである 3 今 回 の 派 遣 の 目 的 今 回 の 派 遣 の 目 的 は 青 年 海 外 協 力 隊 の 栽 培 指 導 員 として 2 年 間 スラウェシ 島 に 駐 在 していた 経 験 を 持 つ フを 派 遣 し 収 穫 量 を 上 げるための 技 術 指 導 と 販 路 開 拓 を 研 修 生 や 近 隣 農 民 に 行 い マリノ 村 全 体 の 生 活 水 準 を 向 上 させることにある 米 の 収 穫 期 を 含 む 2015 年 5 月 か ら 8 月 までの 4 か 月 間 で 4 つの 調 査 の 方 法 をマリノ 村 研 修 生 や 農 家 の 人 びとに 指 導 する (1) 生 育 調 査 方 法 (パソコンを 使 った 農 業 データ 管 理 の 方 法 を 指 導 ) (2) 収 量 調 査 ( 現 行 の 目 測 ではなく 秤 を 導 入 して 数 値 による 収 量 調 査 を 行 う) (3) 土 壌 調 査 (2014 年 に 計 測 したデータと 2015 年 のデータの 比 較 分 析 ) (4) 官 能 検 査 (お 米 の 味 はどのくらい 美 味 しいか 以 前 とどう 変 化 したかを 評 価 ) 更 に 収 穫 を 終 えた 後 地 元 農 家 と 共 に マーケットリサーチと 販 売 促 進 活 動 を 行 う
4 活 動 活 動 日 程 表 年 月 活 動 内 容 対 象 者 2015 年 5 月 活 動 資 材 備 品 の 調 達 パソコンを 使 用 した 生 育 調 査 方 法 データ 管 理 の 指 導 現 行 の 稲 作 システムの 聞 き 取 り 精 米 シ ステムの 聞 き 取 り 水 田 の 灌 漑 指 導 害 虫 対 策 (カメムシ 類 ) フ 2 人 と 農 家 指 導 2015 年 6 月 生 育 調 査 方 法 指 導 (フィールド) 収 量 構 成 要 素 のプレ 調 査 イノシシ 対 策 販 売 用 パンフレット 作 成 害 虫 対 策 (コナジ ラミ 類 ) 指 導 2015 年 7 月 収 量 調 査 収 量 構 成 要 素 の 分 析 作 業 農 家 へのアンケート 調 査 ( 有 機 栽 培 を 始 めてから 感 じる 変 化 に 対 する 意 識 調 査 ) 販 売 用 パッケージのデザイン 精 米 作 業 オーガニックライス 市 場 調 査 2015 年 8 月 オーガニックライス 食 味 官 能 検 査 米 のパッケージングテス ト 収 量 調 査 のまとめレポートの 書 き 方 指 導 精 米 作 業 ア ンケート 集 計 作 業 米 の 販 売 に 必 要 な 計 算 法 の 指 導 オーガ ニックライスの 試 食 販 売 会 開 催 (1) 生 育 調 査 方 法 (パソコンを 使 った 農 業 データ 管 理 の 方 法 を 指 導 ) フ 2 人 と 農 家 フ 2 人 と 農 家 フ 2 人 と 農 家 2015 年 1 月 から 有 機 農 法 試 験 農 場 である 棚 田 15 枚 を 5 つの 区 画 に 分 け 種 類 と 量 の 違 う 肥 料 を 施 しどの 区 が 一 番 現 地 に 適 した 肥 料 であるかを 調 査 した 2 月 からは 毎 週 イネの 生 育 データをス タッフにとってもらった さらに 収 穫 後 収 量 構 成 要 素 ( 穂 数 /m2 1 穂 あたり 籾 数 登 熟 歩 合 1000 粒 重 )の 分 析 を 行 い 方 法 を 指 導 すると 共 に 収 穫 量 の 制 限 要 因 を 特 定 し 次 年 度 の 作 付 けの 参 考 にしてもらう さらにパ ソコンを 使 ったデータ 収 集 と 分 析 方 法 を 習 得 してもらった (2) 収 量 調 査 ( 現 行 の 目 測 ではなく 秤 を 導 入 して 数 値 による 収 量 調 査 を 行 う) マリノの 慣 行 法 では 1 枚 の 水 田 から 何 束 取 れたかを 参 考 としていたが 秤 の 導 入 によりより 正 確 な 収 穫 量 が 把 握 でき 前 年 度 の 収 穫 量 との 比 較 が 出 来 るようになるほか 次 年 度 の 作 付 け 計 画 の 参 考 とすることが 出 来 るようになる (3) 土 壌 調 査 (2014 年 に 計 測 したデータと 2015 年 のデータの 比 較 分 析 ) 2014 年 に 2 度 ハサヌディン 大 学 の 協 力 のもと 土 壌 分 析 調 査 を 試 験 圃 場 で 行 った 2015 年 8 月 にも 土 壌 分 析 を 行 った (4) 官 能 検 査 (お 米 の 味 はどのくらい 美 味 しいか 以 前 とどう 変 化 したかを 評 価 ) 日 本 で 慣 行 使 用 されている 官 能 検 査 表 をインドネシア 語 に 翻 訳 したものを 準 備 さらに 現 地 での 炊 飯 米 の 嗜 好 に 対 し 聞 き 取 りを 行 い 必 要 と 思 われる 項 目 を 官 能 検 査 表 に 追 加 した 官 能 検 査 を 実 施 することで 有 機 栽 培 米 と 普 通 栽 培 米 を 人 が 食 べた 場 合 どちらがおいしく 感 じることが 出 来 る かを 客 観 的 に 数 値 化 することが 出 来 る 官 能 検 査 は 住 民 14 名 を 対 象 に 1 度 マリノの 近 郊 都 市 マカッサル 在 住 の 日 本 人 9 名 を 対 象 に 1 度 合 計 2 度 行 った
マーケットリサーチ マリノの 農 家 2 名 を 連 れマカッサルのパナクカンモールにて 米 の 市 場 調 査 を 行 った 調 査 の 結 果 をまとめ 地 元 農 家 に 配 布 したほか 地 元 農 家 を 集 め 有 機 栽 培 米 の 食 べ 比 べを 行 った 販 売 促 進 活 動 販 売 促 進 活 動 として 有 機 栽 培 米 のパンフレットの 作 成 パッケージの 試 作 マカッサル 在 住 の 日 本 人 の 方 を 対 象 に 有 機 栽 培 米 の 試 食 販 売 会 を 行 った 5 成 果 (1) 生 育 調 査 方 法 (パソコンを 使 った 農 業 データ 管 理 の 方 法 を 指 導 ) 分 析 の 結 果 肥 料 の 種 類 の 違 いによる 収 量 の 差 はほとんどなく 収 穫 量 に 1 番 大 きな 影 響 を 与 えた 要 因 は 出 穂 期 の 水 不 足 であることが 分 かった パソコンの 導 入 と 操 作 方 法 の 指 導 により AMDA の 現 地 職 員 がワード エクセル パワーポイントを 使 用 して 基 本 的 なデータの 収 集 と 分 析 ができるようになった ( 別 添 1 農 家 がパソコンで 作 成 した 成 育 調 査 レポート 参 照 ) (2) 収 量 調 査 ( 現 行 の 目 測 ではなく 秤 を 導 入 して 数 値 による 収 量 調 査 を 行 う) 調 査 の 結 果 マリノバトゥラピシ 地 区 の 米 の 収 量 はヘクタール 辺 り 3~3.5 トンであることが 分 か った また 出 穂 前 後 期 に 灌 漑 水 をコントロールし 水 田 を 水 で 満 たすことでヘクタールあたりの 収 量 を 5 トン 程 度 まで 収 穫 量 を 増 やすことができる 可 能 性 が 示 唆 された さらに 以 前 より 慣 習 的 にマリノで 行 われていた 稲 束 を 数 える 方 法 も 行 ったが 昨 年 の 95 束 ( 精 米 した 米 に 換 算 すると 1 束 は 1,5 kg)に 対 し 今 年 は 125 束 とおよそ 45 kg 30%の 増 収 であったことがわかった AMDA の 現 地 職 員 に 収 量 調 査 の 方 法 を 指 導 したことにより 今 後 AMDA 職 員 が 現 地 農 業 者 に 収 量 調 査 の 方 法 を 指 導 していくことができる ( 別 添 2 農 家 が 作 成 した 収 量 調 査 レポート 参 照 ) (3) 土 壌 調 査 (2014 年 に 計 測 したデータと 2015 年 のデータの 比 較 分 析 ) 土 壌 分 析 を 行 った 結 果 土 壌 中 のミネラル 集 積 量 の 改 善 が 見 られた 土 壌 成 分 の 経 時 変 化 をデー タ 化 したことによって 有 機 栽 培 水 田 の 土 壌 の 肥 沃 度 が 向 上 したことが 結 論 付 けられた AMDA マリノ 農 場 の 水 田 における 土 壌 酸 度 有 機 物 ミネラルの 経 時 変 化 ( が 改 善 した 項 目 ) Feb 26 2014 Nov 25 2015 Aug 20 2015 ph 6.2 5.8 6.01 C 1.76% 2.36% 2.62% N 0.12% 0.16% 0.14% C/N 14.2 14.5 19 P2O5 14.2 11.5 12.6 Ca 4.2 5.5 6.52 Mg 2.1 3.0 4.22 K 0.06 0.17 0.35 Na 0.28 0.27 0.56 総 イオン 6.65 9.00 11.35 CEC 26.9 24.9 27.33 水 分 23.8 36.5 43 ミネラルの 単 位 はppm 考 察 :phはほぼ 横 ばい 炭 素 が 増 加 窒 素 量 は 横 ばい C/N 比 は 理 想 値 20 に 近 づいた リン 酸 は 横 ばい カルシウム 増 加 マグネシウムも 増 加 カリウムも 増 加 ナトリウムは 増 加 イオンの 総 量 は 増 えた CEC( 陽 イオン 交 換 容 量 保 肥 力 )は 増 大 塩 基 飽 和 度 は 大
幅 に 増 加 した 土 壌 中 のミネラル 類 が 増 え C/N 比 が 高 くなってきていることから 有 機 物 が 増 えていることがわかる 塩 基 飽 和 度 が 上 昇 していることから 土 壌 中 にミネラルが 蓄 積 してきていることが 伺 える 有 機 栽 培 を 始 めてから 水 田 土 壌 は 改 良 されてきている (4) 官 能 検 査 (お 米 の 味 はどのくらい 美 味 しいか 以 前 とどう 変 化 したかを 評 価 ) 官 能 検 査 の 結 果 市 場 で 売 られている 普 通 栽 培 米 と 比 較 してマリノバトゥラピシ 地 区 の AMDA 農 場 の 米 の 味 はよりおいしいと 結 論 づけられた また マカッサルの 市 場 で 販 売 されている 有 機 栽 培 米 と 比 較 しても 品 質 は 格 段 に 劣 るわけではないと 判 断 された 前 年 度 の 有 機 栽 培 米 は 株 式 会 社 サタケによる 機 械 分 析 を 日 本 で 済 ませてあるため 本 年 も 分 析 を 実 施 して 分 析 値 を 比 較 する 予 定 である ( 別 添 4 官 能 検 査 結 果 表 を 参 照 ) マーケットリサーチ リサーチの 結 果 マカッサルにおける 有 機 栽 培 米 の 販 売 価 格 は 平 均 30,000 ルピアであること また 様 々なパッケージデザインで 販 売 されていることがわかった リサーチの 結 果 をまとめ 地 元 農 家 に 配 布 し 情 報 共 有 したほか 販 売 されていた 有 機 栽 培 米 を 数 点 購 入 し 農 家 と 共 に 試 食 を 行 っ た ( 別 添 3 市 場 調 査 結 果 表 を 参 照 ) 販 売 促 進 活 動 販 売 促 進 活 動 として 有 機 栽 培 米 のパンフレットの 作 成 パッケージの 試 作 有 機 栽 培 米 の 試 食 販 売 会 を 行 った その 結 果 有 機 栽 培 米 のおいしさが 評 価 され 最 終 的 に 1Kg 30,000 ルピアの 値 段 で 販 売 することができた これは 普 通 栽 培 の 米 を 地 元 で 販 売 したときに 比 べ 3 倍 以 上 の 価 格 であ る また 各 方 面 から 注 文 が 入 ったため 今 年 有 機 栽 培 米 として 生 産 した 100kg の 米 を 全 て 完 売 す ることができた 販 売 促 進 活 動 を 行 ったことでマリノの 有 機 栽 培 米 は 味 がおいしく 高 い 商 品 価 値 があることが 確 かめられた ( 別 添 5 有 機 栽 培 米 販 売 用 パンフレット 別 添 6 農 家 がデザイ ンした 米 販 売 用 パッケージ 参 照 ) 6 今 後 の 課 題 高 い 商 品 価 値 が 確 かめられたマリノの 有 機 栽 培 米 であるが 今 回 の 販 売 では 生 産 量 の 不 足 のた め 顧 客 の 注 文 に 全 て 対 応 しきれなかった 今 後 はいかに 有 機 栽 培 米 の 生 産 量 を 増 やし 市 場 への 安 定 供 給 をはかれるかが 課 題 となる 具 体 的 には 米 の 生 産 組 織 を 立 ち 上 げ 販 売 計 画 をもとにした 作 付 け 計 画 生 産 資 材 の 共 同 購 入 マカッサルへの 輸 送 を 共 同 で 行 う 等 である また 以 下 に 米 の 品 質 向 上 (コクゾウムシ 胴 割 れ 米 やくろずみ 米 の 混 入 を 防 ぐ)を 図 っていくかも 今 後 の 課 題 の 1 つである
7 活 動 写 真 生 育 調 査 方 法 (パソコンを 使 った 農 業 データ 管 理 の 方 法 を 指 導 ) 収 量 構 成 要 素 の 分 析 1 m2 当 たりの 穂 数 調 査 脱 穀 の 様 子 1 穂 あたり 籾 数 調 査 登 熟 歩 合 1000 粒 重 調 査 指 導 前 慣 行 方 の 束 を 使 った 計 量 法 (10 束 )と 指 導 後 に 精 米 した 米 を 秤 で 計 量 する 様 子
パソコンを 使 ったパッケージデザインとパッケージングの 様 子 完 成 したパッケージ パソコンを 使 い レポートを 作 成 した 地 元 農 家 官 能 検 査 (お 米 の 味 はどのくらい 美 味 しいか 以 前 とどう 変 化 したかを 評 価 )
マーケットリサーチ 販 売 促 進 活 動 (パワーポイントを 使 った 米 作 りの 様 子 の 説 明 パンフレットによる 商 品 説 明 ) 農 家 への 広 報 活 動