まちづくりレポート|都心と郊外、ふたつの再生戦略 - 福岡市の都市再生と低層住宅地の容積率緩和



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Transcription:

ニッセイ 基 礎 研 究 所 基 礎 研 レポート 2013-02-28 まちづくりレポート 都 心 と 郊 外 ふたつの 再 生 戦 略 福 岡 市 福 岡 市 の 都 市 再 生 と 低 層 住 宅 地 の 容 積 率 緩 和 社 会 研 究 部 門 研 究 員 塩 澤 誠 一 郎 (03)3512-1814 shiozawa@nli-research.co.jp 1 はじめに 拙 著 超 高 齢 社 会 に 求 められる 都 市 空 間 構 造 とは 1 の 中 で 富 山 市 と 福 岡 市 の 超 高 齢 社 会 に 向 けた まちづくり 事 例 を 対 比 的 に 紹 介 するとともに 福 岡 市 が 都 市 計 画 マスタープランの 改 訂 作 業 と 並 行 し て 郊 外 低 層 住 宅 地 の 容 積 率 緩 和 について 検 討 している 状 況 を 伝 えた 福 岡 市 の 都 市 計 画 マスタープラン 改 訂 作 業 は 現 在 も 続 いているが 容 積 率 緩 和 については 2012 年 に 制 度 施 行 された 全 国 的 にも 例 が 少 ないこの 措 置 は 今 後 の 都 市 政 策 に 示 唆 を 与 える 点 が 多 いと 考 え られるので 今 回 新 たに 施 行 後 の 状 況 をレポートする また 同 時 期 に 福 岡 都 心 地 域 が 特 定 都 市 再 生 緊 急 整 備 地 域 に 指 定 されたことから 福 岡 都 心 部 のまちづくりについても 併 せてレポートする 2 福 岡 市 の 概 要 福 岡 を 訪 れるには 飛 行 機 が 便 利 であることは 図 表 2-1-1 市 域 地 形 遠 方 から 訪 れた 誰 もが 感 じるところであろう 福 岡 空 港 から 地 下 鉄 で 中 心 部 の 天 神 まで 十 数 分 しか 要 しない 2011 年 に 九 州 新 幹 線 が 全 線 開 通 したことから 博 多 駅 を 起 点 に 九 州 内 あるい は 西 日 本 との 行 き 来 も 容 易 になっている 中 国 韓 国 との 定 期 航 空 路 や 博 多 港 からの 航 路 により アジアとの 交 流 も 盛 んに 行 われ 年 間 70 万 人 を 超 える 外 国 人 観 光 客 を 迎 えている 福 岡 市 は 市 域 面 積 約 342km2に 人 口 約 149 ( 資 料 )ランドサット 衛 星 画 像 米 国 メリーランド 大 学 GLCF http://glcf.umiacs.umd.edu 1 ジェロントロジージャーナル 10-004 10 June 2010 ニッセイ 基 礎 研 究 所 1

万 5,000 人 世 帯 数 約 73 万 2,700 世 帯 が 居 住 する 九 州 地 方 最 大 の 都 市 である 2 南 西 部 の 山 並 みと 北 部 の 博 多 湾 に 囲 まれた 市 街 地 が 市 域 面 積 の 約 半 分 を 占 め 3 ここに 人 口 の9 割 以 上 が 暮 らしている 人 口 150 万 人 規 模 の 都 市 において 市 街 地 から 数 十 分 で 海 山 農 漁 業 地 の 自 然 に 触 れ 合 うことができる という 地 理 特 性 は 福 岡 の 大 きな 魅 力 と 言 っていいだろう 福 岡 市 がめざすまちづくりの 目 標 は コンパクトで 持 続 可 能 な 環 境 共 生 都 市 である 各 拠 点 にコ ンパクトに 都 市 機 能 を 誘 導 し 環 境 負 荷 を 少 なくするとともに 九 州 アジアとの 交 流 人 口 の 増 加 を 図 り 将 来 にわたって 持 続 可 能 な 都 市 を 目 指 すとしている 4 3 都 心 部 のまちづくり 1 市 街 地 の 状 況 福 岡 市 の 人 口 は 現 在 も 増 加 傾 向 にある 市 街 地 の 広 がりを 示 す 人 口 集 中 地 区 の 面 積 は 1990 年 以 降 漸 増 しており 人 口 集 中 地 区 の 人 口 も 同 様 に 増 加 している ただし 1985 年 以 降 常 に 人 口 増 加 率 が 面 積 の 増 加 率 を 上 回 って 推 移 しており 平 均 すると 年 間 1% 程 度 の 伸 びで 推 移 している( 図 表 3-1-1) このことから 人 口 増 加 は 市 街 地 の 外 延 に 広 がるよりも 市 街 地 内 部 において 密 度 を 高 めていることが わかる 人 口 集 中 地 区 の 人 口 密 度 は 人 口 が 同 規 模 の 川 崎 市 よりは 下 回 るものの やはり 同 規 模 の 神 戸 市 や 京 都 市 より 高 く 人 口 が 福 岡 を 上 回 る 札 幌 市 よりも 高 くなっている( 図 表 3-1-2) 図 表 3-1-1 人 口 集 中 地 区 の 面 積 人 口 増 加 率 推 移 図 表 3-1-2 政 令 市 人 口 集 中 地 区 人 口 密 度 60.0% 50.0% 40.0% 30.0% 20.0% 10.0% 0.0% 65 70 75 80 85 90 95 2000 05 10 人 口 集 中 地 区 人 口 増 加 率 ( 資 料 ) 国 勢 調 査 人 口 集 中 地 区 面 積 増 加 率 ( 人 /km2) 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 大 川 横 名 さ 堺 福 千 神 相 北 京 札 仙 広 新 岡 浜 静 阪 崎 浜 古 い 市 岡 葉 戸 模 九 都 幌 台 島 潟 山 松 岡 市 市 市 屋 た 市 市 市 原 州 市 市 市 市 市 市 市 市 市 ま 市 市 市 人 口 密 度 (1km2 当 たり) 人 口 平 成 22 年 ( 万 人 ) 400 300 200 100 0 2 都 心 部 商 業 地 の 状 況 空 路 鉄 路 で 福 岡 に 訪 れると 多 くの 人 が 最 初 に 都 心 部 である 天 神 博 多 エリアを 訪 れるだろう 地 下 鉄 天 神 駅 と 西 鉄 福 岡 駅 の 駅 ビルが 面 する 渡 辺 通 を 軸 に 西 側 街 区 には 大 型 の 商 業 業 務 施 設 が 集 積 し その 間 を 幾 筋 ものモール 状 商 店 街 が 連 なり 活 気 を 見 せている 東 側 の 街 区 にはガレリア 5 状 の 通 路 を 持 つ 商 業 業 務 施 設 エルガーラ 市 庁 舎 を 挟 んで 広 々とした 公 園 の 前 に 建 つ 文 化 施 設 アクロス 福 岡 さらに 東 へ 歓 楽 の 中 心 地 である 中 洲 を 超 えると 福 岡 ア 2 福 岡 市 推 計 人 口 2012 年 12 月 1 日 現 在 3 市 域 の 約 48%が 市 街 化 区 域 4 福 岡 市 都 市 計 画 マスタープラン 改 定 について(2012 年 3 月 福 岡 市 )の 中 で 改 定 の 基 本 的 な 考 え 方 ( 案 )として 示 している 5 ガラスの 天 蓋 を 持 つ 通 路 状 の 商 店 街 2

ジア 美 術 館 と 博 多 座 が 入 る 博 多 リバレイン そして 天 神 駅 と 博 多 駅 のちょうど 中 間 に 位 置 する 複 合 施 設 キャナルシティ 博 多 がある( 図 表 3-5-2) これらショッピング レジャー 観 光 のスポットとなる 施 設 が 直 線 で 数 100m の 距 離 にあり そ の 周 囲 にも 魅 力 的 な 商 店 街 や 個 性 的 な 店 舗 があることから 徒 歩 でも 無 理 なく 飽 きることなく 見 て 回 ることができる 回 遊 性 が 都 心 部 の 魅 力 と 言 えよう 九 州 新 幹 線 全 線 開 通 に 伴 う 博 多 駅 の 再 整 備 に より 駅 前 広 場 と 駅 に 直 結 する 商 業 施 設 JR 博 多 シティ がオープンしたことから 回 遊 先 は 博 多 駅 まで 広 がっている このようにみると 都 心 部 のまちづくりは 順 調 に 歩 んできたように 思 えるが 果 たして 課 題 はないの だろうか 3 建 物 の 更 新 が 課 題 図 表 3-3-1 福 岡 市 中 央 区 博 多 区 における 建 築 着 福 岡 市 住 宅 都 市 局 都 市 づくり 推 進 部 都 心 再 生 工 工 事 費 予 定 額 の 推 移 ( 百 万 円 ) 課 の 担 当 者 ( 以 下 市 担 当 者 )は 大 型 の 再 開 発 40,000 35,000 や 新 規 開 発 は 概 ね 完 了 しており 今 後 都 心 部 の 30,000 25,000 既 存 建 物 は 更 新 時 期 を 迎 えるものが 多 い 更 20,000 新 の 機 会 を 捉 えて 更 なる 都 市 の 魅 力 づくりや 活 15,000 10,000 力 を 維 持 していくことが 課 題 になっている と 5,000 0 語 り 民 間 の 古 くなったビルの 建 て 替 えを 促 進 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 博 多 区 工 事 費 予 定 額 中 央 区 工 事 費 予 定 額 する 必 要 があるということを 説 明 してくれた ( 注 ) 住 宅 用 途 公 務 用 建 築 物 他 に 分 類 されない 建 築 物 は 除 外 している 2005 年 に 福 岡 県 西 方 沖 地 震 を 経 験 し 警 固 断 ( 資 料 ) 福 岡 市 住 宅 都 市 局 建 築 指 導 部 建 築 指 導 課 を 基 に 筆 者 作 成 層 帯 南 東 部 を 震 源 とする 地 震 6の 発 生 が 想 定 さ れていることから 耐 震 化 も 急 務 となっているが 現 行 の 都 市 計 画 における 容 積 率 指 定 以 前 に 建 てら れたビルも 多 く 建 て 替 えによって 容 積 率 が 現 在 より 低 下 するケースもあるため 建 て 替 えが 進 んで いない 面 があるという これに 対 し 市 では 2008 年 に 都 心 部 機 能 更 新 型 容 積 率 特 例 制 度 ( 以 下 容 積 率 特 例 制 度 )を 導 入 した この 制 度 は 既 存 制 度 による 公 開 空 地 の 面 積 に 応 じた 容 積 率 緩 和 に 加 えて まちづくりに 貢 献 する 取 り 組 みに 応 じて 容 積 率 を 上 乗 せするものである まちづくりの 取 り 組 みとして 九 州 アジア 環 境 魅 力 安 全 安 心 共 働 というテー マが 示 されており 例 えば テナントとしてアジア 企 業 を 誘 致 したり アジアとの 交 流 拠 点 となるコ ンベンションホールを 導 入 したりといった 場 合 に 指 定 容 積 率 に 加 えて 最 大 50%まで 上 乗 せすること ができる 5つのテーマに 即 していれば 複 数 の 取 り 組 みの 適 用 が 可 能 であり 合 計 で 最 大 400%まで 上 乗 せすることができる 7 自 治 体 独 自 の 制 度 としては 踏 み 込 んだ 内 容 であり 特 に 九 州 アジア という 都 市 政 策 への 貢 献 を 設 けている 点 は 先 進 的 で 戦 略 的 な 都 市 整 備 手 法 として 興 味 深 い しかし 現 在 のところ1 地 区 のみ 6 福 岡 県 西 方 沖 地 震 を 引 き 起 こした 北 西 部 と 博 多 湾 から 内 陸 部 に 向 かって 直 線 状 に 延 びる 南 東 部 を 合 わせて 警 固 断 層 帯 としている 7 この 他 地 下 歩 道 や 道 路 付 加 車 線 の 確 保 など 敷 地 外 関 連 公 共 施 設 を 整 備 した 場 合 や 文 化 ホール 太 陽 光 発 電 施 設 地 域 冷 暖 房 施 設 など 特 定 の 施 設 を 導 入 した 場 合 の 緩 和 措 置 もある 3

の 適 用 にとどまっている 8 市 担 当 者 はその 理 由 として リーマンショック 以 降 民 間 の 開 発 意 欲 が 減 退 していることを 指 摘 した 実 際 に 中 央 区 博 多 区 の 建 築 着 工 は 2007 年 以 降 低 下 基 調 で 推 移 している ( 図 表 3-3-1) 4 都 市 再 生 こうした 状 況 の 中 2012 年 1 月 に 都 市 再 生 特 別 措 置 法 に 基 づく 閣 議 決 定 により 福 岡 都 心 地 域 9が 特 定 都 市 再 生 緊 急 整 備 地 域 ( 以 下 特 定 地 域 )に 指 定 された( 図 表 3-5-2) これは 従 来 から 指 定 されていた 都 市 再 生 緊 急 整 備 地 域 10を 拡 大 し その 中 で 緊 急 かつ 重 点 的 に 市 街 地 整 備 を 推 進 すること が 国 際 競 争 力 の 強 化 を 図 る 上 で 特 に 有 効 な 地 域 として 定 められたものである これにより 税 制 金 融 財 政 等 の 面 で 国 からの 重 点 的 な 支 援 を 受 けることができるようになった 市 担 当 者 は 行 政 が 先 導 して 進 められるまちづくりは 限 られている 都 心 部 の 機 能 強 化 のためには 民 間 が 主 体 となって 進 める 必 要 がある 特 定 地 域 の 指 定 は 民 間 の 投 資 意 欲 を 引 き 出 すために 有 効 だ そこから 容 積 率 特 例 制 度 も 活 用 した 開 発 が 進 められることを 期 待 している と 話 してくれた 5 官 民 協 働 によるエリアマネジメント 特 定 地 域 と 重 なるエリアでは 特 定 地 域 の 指 定 以 前 から 民 間 が 主 体 となったエリアマネジメント 組 織 が 設 置 され 地 域 の 魅 力 を 高 める 活 動 が 積 極 的 に 行 われている( 図 表 3-5-1 3-5-2) 対 象 エリアや 活 動 内 容 はそれぞれ 異 なるが 共 通 しているのは まちづくりの 考 え 方 を 明 確 に 示 し ている 点 である この 考 え 方 は 関 係 者 同 士 共 有 して 一 体 的 かつ 戦 略 的 に 事 業 を 展 開 するためのベー スであり 機 能 強 化 のための 様 々なソフト 戦 略 と 同 時 に 街 並 み 形 成 のあり 方 など 都 市 整 備 の 方 向 性 をも 示 したものである 民 間 が 主 体 であるが 福 岡 市 などの 行 政 も 何 らかの 形 で 参 画 している つまり まちづくりの 考 え 方 はすでに 官 民 で 共 有 されているのである 特 定 地 域 に 指 定 された 今 は 支 援 措 置 を 活 用 して 建 物 更 新 を 具 体 的 に 進 めていく 段 階 に 来 ていることが 分 かる 官 民 協 働 による 都 心 部 再 生 戦 略 が 整 ったと 言 えるのではないか 図 表 3-5-1 エリアマネジメント 団 体 We Love 天 神 協 議 会 名 称 設 立 参 加 者 まちづくりの 考 え 方 策 定 年 目 的 2006 年 4 月 13 日 民 間 企 業 NPO 等 109 者 天 神 まちづくりガイドライン 2007 エリアマネジメントを 一 体 的 効 果 的 に 推 進 していくた めの 戦 略 的 なまちづくりの 指 針 博 多 まちづくり 推 進 協 議 会 2008 年 4 月 23 日 民 間 企 業 NPO 等 155 者 博 多 まちづくりガイドライン 2009 博 多 のまちのエリアマネジメントを 総 合 的 かつ 一 体 的 に 進 めるための 指 針 天 神 明 治 通 り 街 づくり 協 議 会 2008 年 6 月 13 日 土 地 所 有 者 等 33 者 天 神 明 治 通 りグランドデザイ ン2009 2009 アジアの 中 で 傑 出 した 創 造 的 なビジネス 街 をつくるた めの 持 続 可 能 な 都 心 づくりのビジョン 福 岡 地 域 戦 略 推 進 協 議 会 2011 年 4 月 13 日 民 間 企 業 団 体 等 7 8 者 地 域 戦 略 2 0 12 地 域 の 国 際 競 争 力 を 強 化 するための 成 長 戦 略 ( 資 料 ) 各 団 体 のウェブサイトおよび 国 際 競 争 力 強 化 に 向 けた 都 心 部 まちづくりの 方 向 性 / 福 岡 市 を 基 に 筆 者 作 成 8 博 多 駅 中 央 街 地 区 の 地 区 計 画 が 2013 年 2 月 の 都 市 計 画 審 議 会 で 承 認 され 初 めての 適 用 となった 3 月 に 都 市 計 画 決 定 の 予 定 9 特 定 地 域 は 天 神 渡 辺 通 地 区 と 博 多 駅 周 辺 地 区 に 博 多 ふ 頭 中 央 ふ 頭 の ウォーターフロント 地 区 を 加 えた 約 231ha 図 3-5-2 参 照 10 都 市 再 生 特 別 措 置 法 に 基 づいて 官 民 連 携 を 通 じて 大 都 市 の 国 際 競 争 力 の 強 化 と 魅 力 の 向 上 を 図 り 都 市 の 再 生 を 推 進 することを 目 的 と した 制 度 4

図 表 3-5-2 特 定 都 市 再 生 緊 急 整 備 地 域 とエリアマネジメント 団 体 の 活 動 エリア ( 資 料 ) 福 岡 都 心 地 域 区 域 図 ( 福 岡 市 )を 基 に 筆 者 加 筆 以 上 のような 福 岡 都 心 部 の 状 況 について 天 神 に 拠 点 を 構 える 日 本 生 命 福 岡 支 社 支 社 長 の 魚 躬 弘 氏 に 伺 うと 市 内 に 複 数 の 大 学 があり 若 者 が 常 に 出 入 りしている 都 心 部 には 企 業 の 支 社 が 集 積 して いることから 若 い 夫 婦 が 転 勤 してくるケースも 多 い 彼 らが 楽 しめる 要 素 は 整 っているが 更 なる 魅 力 づくりによって そうした 若 い 人 の 一 定 程 度 が 市 内 に 定 着 していくようになるとよいと 思 う と 今 後 のまちづくりへの 期 待 を 話 してくれた 4 郊 外 住 宅 地 の 容 積 率 緩 和 1 郊 外 住 宅 地 の 高 齢 化 魚 躬 氏 が 指 摘 するように 若 いファミリー 世 帯 の 定 住 につながる 制 度 として 市 は 郊 外 低 層 住 宅 地 の 容 積 率 緩 和 を 打 ち 出 した 福 岡 市 の 高 齢 化 率 は 全 国 平 均 より 低 く 緩 やかに 進 行 すると 推 計 されて いる ただし 郊 外 の 住 宅 地 においては 比 較 的 高 齢 化 の 進 行 が 速 いことから 今 からその 進 行 を 食 い 止 めて 共 助 を 促 すコミュニティの 基 盤 づくりを 進 める 必 要 がある そのため 市 は 郊 外 低 層 住 宅 5

地 の 容 積 率 を 緩 和 して 子 育 て 世 帯 のニーズに 合 わせたゆとりある 居 住 空 間 の 確 保 や 二 世 帯 住 宅 を 建 築 しやすくすることで 若 い 世 帯 の 定 住 化 を 促 そうとしたのである また 郊 外 には 1960~70 年 代 に 開 発 された 住 宅 地 が 多 く 築 40 年 以 上 経 過 する 住 宅 も 多 いことから 今 後 改 修 や 建 て 替 えの 需 要 が 高 まってくることが 想 定 されている そうしたタイミングを 捉 えて 居 住 者 の 高 齢 化 に 伴 うバリアフリー 化 への 対 応 や 耐 震 化 の 促 進 を 図 るねらいもある 容 積 率 の 緩 和 によって 居 室 面 積 を 減 らさずに 車 いす 利 用 できる 玄 関 や 廊 下 を 確 保 することが 可 能 となる この ようにみると 容 積 率 緩 和 はまさに 高 齢 化 した 郊 外 住 宅 地 の 再 生 戦 略 と 言 えよう 2 制 度 の 概 要 2009 年 11 月 に 容 積 率 見 直 しの 一 次 素 案 を 公 表 してから 約 2 年 の 検 討 を 経 て 2012 年 1 月 5 日 に 制 度 が 施 行 された 11 内 容 は 次 のとおりである 従 前 の 第 一 種 低 層 住 居 専 用 地 域 で 建 ぺい 率 40% 容 積 率 60% 敷 地 境 界 からの 建 物 外 壁 面 の 後 退 距 離 ( 以 下 外 壁 後 退 )1m 以 上 と 指 定 されていた 約 2,131ha の 全 域 について 建 ぺい 率 を 50% 容 積 率 を 80%に 緩 和 する その 上 で 同 じく 全 域 を 戸 建 住 環 境 形 成 地 区 という 特 別 用 途 地 区 12に 指 定 している( 図 表 4-2-1) 図 表 4-2-1 対 象 エリア ( 資 料 ) 多 様 な 世 代 が 住 み 続 けられる 快 適 で 住 みやすい 住 環 境 づくり ( 福 岡 市 住 宅 都 市 局 都 市 計 画 部 都 市 計 画 課 )より 転 載 11 施 行 までに 一 次 素 案 に 対 する 市 民 からの 意 見 募 集 とアンケート 調 査 を 実 施 2010 年 12 月 には その 結 果 を 踏 まえた 二 次 素 案 の 公 表 と 意 見 募 集 を 行 い 2011 年 7 月 に 制 度 実 施 に 必 要 な 条 例 の 素 案 に 対 する 市 民 意 見 募 集 を 行 っている その 後 都 市 計 画 の 手 続 きを 経 て 施 行 され た 12 地 区 の 特 性 や 課 題 に 応 じて 建 築 物 の 用 途 規 制 を 強 化 したり 緩 和 したりする 都 市 計 画 制 度 6

戸 建 住 環 境 形 成 地 区 では 条 例 で 敷 地 面 積 の 最 低 限 度 と 外 壁 後 退 距 離 に 応 じて 建 ぺい 率 容 積 率 の 緩 和 が 適 用 されるようになっている 敷 地 面 積 を 165 m2 以 上 外 壁 後 退 を 1.5m 以 上 とすれば 建 ぺ い 率 容 積 率 ともに 緩 和 が 適 用 され 敷 地 面 積 が 165 m2 以 上 で 外 壁 後 退 は 従 来 どおり 1.0m 以 上 1.5m 未 満 であれば 容 積 率 のみ 緩 和 する 敷 地 面 積 が 165 m2 未 満 で 外 壁 後 退 が 従 来 どおり 1.0m 以 上 であ れば 緩 和 は 適 用 されないことになる 13 ( 図 表 4-2-2) つまり 敷 地 面 積 と 外 壁 後 退 によって 住 環 境 に 一 定 の 配 慮 を 行 った 場 合 に 建 ぺい 率 容 積 率 の 緩 和 によって 利 用 できる 居 住 空 間 の 拡 大 を 認 めるという 制 度 となっている 図 表 4-2-2 制 度 適 用 の 考 え 方 敷 地 面 積 外 壁 後 退 建 ぺい 率 容 積 率 165 m2 以 上 1.5m 以 上 50% 80% ( 建 ぺい 率 容 積 率 とも 緩 和 ) 165 m2 以 上 1.0m 以 上 40% 80% ( 容 積 率 のみ 緩 和 ) 165 m2 未 満 1.0m 以 上 40% 60% ( 変 更 前 と 同 じ) ( 資 料 ) 多 様 な 世 代 が 住 み 続 けられる 快 適 で 住 みやすい 住 環 境 づくり ( 福 岡 市 住 宅 都 市 局 都 市 計 画 部 都 市 計 画 課 )を 基 に 作 成 3 制 度 導 入 の 効 果 施 行 から 1 年 が 経 過 し 導 入 の 効 果 は 出 ているのであろうか 福 岡 市 住 宅 都 市 局 都 市 計 画 部 都 市 計 画 課 の 担 当 者 ( 以 下 市 担 当 者 )は 住 宅 着 工 に 関 して 建 築 確 認 でみると 緩 和 措 置 を 適 用 した 住 宅 も 多 い として 適 用 実 績 を 教 えてくれた 対 象 エリアにおける 2012 年 1 月 から 9 月 までの 住 宅 着 工 がおおよそ 400 件 そのうち 約 360 件 が 戸 建 住 宅 で その 1/3 の 120 件 が 容 積 率 の 緩 和 を 適 用 している さらにそのうち 10 件 が 建 ぺい 率 容 積 率 共 に 緩 和 を 適 用 している さらに 7 月 に 福 岡 都 市 高 速 道 路 の 環 状 線 が 全 線 開 通 したことから 郊 外 住 宅 地 から 都 心 部 への 行 き 来 が 容 易 になったこともあり ファミリー 世 帯 の 需 要 も 高 まっていると 考 えられる と 市 担 当 者 は 話 してくれた 高 速 道 路 を 通 る 路 線 バスルートもあり 通 勤 の 利 便 性 も 高 まっているということであ る 今 後 実 際 にファミリー 世 帯 や 二 世 帯 住 宅 バリアフリー 改 修 が 増 えたかどうかについて 統 計 的 に 把 握 することが 必 要 であると 思 われるが 今 回 筆 者 は 戸 建 住 環 境 適 用 地 区 が 指 定 された 住 宅 地 の 現 地 踏 査 により どの 程 度 制 度 を 適 用 した 新 築 物 件 があるのか 確 認 することにした 現 地 を 訪 れたの は 2012 年 11 月 場 所 は 天 神 から 路 線 バスで 20~30 分 ほどの 距 離 にある 福 岡 都 市 高 速 道 路 よりさら に 南 に 位 置 する 住 宅 地 である バスルートがある 幹 線 道 路 からさほど 離 れていない 場 所 では 明 らかに 制 度 施 行 以 降 に 新 築 された 住 宅 や 建 築 中 の 物 件 が 予 想 していたより 多 く 見 られた それらは 敷 地 内 にある 自 動 車 のタイプか らファミリー 世 帯 だと 判 断 できた しかし そこからしばらく 歩 き 斜 面 地 に 形 成 された 住 宅 地 に 入 ると 制 度 を 適 用 した 新 築 物 件 を 容 易 に 見 つけることができなかった そこはおそらく 1960 年 代 に 斜 面 地 を 造 成 して 開 発 された 住 宅 地 であり 外 観 から 多 くの 住 宅 が 建 築 当 時 から 更 新 されていないものであろうと 判 断 された しかし 13 なお この 制 度 は 戸 建 住 宅 等 のみに 適 用 され マンション アパートなど3 戸 以 上 の 共 同 住 宅 には 適 用 されない 7

おおよそ 30ha の 面 積 に 700 棟 ほどの 住 宅 がある 区 域 をくまなく 歩 いた 結 果 制 度 施 行 以 降 に 新 築 され たと 思 われる 住 宅 が3 棟 新 築 中 が2 棟 確 認 できた 新 築 物 件 の 中 には 緩 和 措 置 を 適 用 して 今 のラ イフスタイルに 合 わせたデザインの 住 宅 もあったことから 今 後 こうした 最 郊 外 といえる 住 宅 地 に も 制 度 施 行 の 効 果 が 波 及 していくであろうという 期 待 が 持 てた 現 地 踏 査 の 結 果 二 世 帯 住 宅 こそ 見 つからなかったが 全 体 的 には 制 度 適 用 の 効 果 が 既 に 表 れてい ると 感 じることができた ただし 斜 面 地 に 形 成 された 住 宅 地 では 坂 道 だけでなく 道 路 から 敷 地 への 階 段 も 多 いため 高 齢 者 にとっては 暮 らしにくい 環 境 であることに 変 わりはない 人 口 が 増 加 基 調 にある 中 さらにファミリー 世 帯 が 増 えていくものと 期 待 できるだけに コミュニティを 持 続 させ 共 助 の 関 係 を 育 んでいく 仕 組 みを 同 時 に 考 えていく 必 要 があるのではないだろうか 図 表 4-3-1 郊 外 住 宅 地 の 状 況 1 2 3 4 5 6 ( 注 )いずれも 筆 者 撮 影 1 新 規 開 発 住 宅 地 2,3 斜 面 地 の 住 宅 地 4 法 面 を 改 良 した 斜 面 地 の 新 築 5,6 斜 面 地 を 歩 く 高 齢 者 5 都 心 と 郊 外 ふたつの 再 生 戦 略 以 上 福 岡 市 における 都 心 部 の 都 市 再 生 戦 略 と 郊 外 住 宅 地 の 再 生 戦 略 を 見 てきたが このようなま ちづくりの 推 進 状 況 について 魚 躬 氏 は 都 心 部 についてはそれほど 心 配 していない むしろ 郊 外 に 暮 らす 高 齢 層 をどうケアしていくのかが 重 要 だと 思 う 若 い 世 帯 と 一 緒 に 暮 らせることができるよう になる 制 度 の 導 入 は 望 ましい と 話 してくれた 魚 躬 氏 が 指 摘 してくれたように ふたつの 戦 略 を 推 進 することで 毎 年 市 内 に 住 み 替 えてくる 若 い 世 帯 の 一 定 程 度 が 定 住 し 郊 外 で 暮 らす 高 齢 層 と 一 緒 に 地 域 を 支 える 担 い 手 となっていくことが 可 能 になる 改 訂 中 の 都 市 計 画 マスタープランにそのようなビジョンが 描 かれ 官 民 協 働 による 都 心 と 郊 外 ふたつの 再 生 戦 略 が 更 に 推 進 されることを 期 待 したい ( 謝 辞 ) 取 材 に 対 応 いただき 文 中 にコメントを 掲 載 させていただいた 福 岡 市 住 宅 都 市 局 都 市 づくり 推 進 部 都 心 再 生 課 同 じく 都 市 計 画 部 都 市 計 画 課 及 び 日 本 生 命 福 岡 支 社 支 社 長 魚 躬 弘 氏 に 深 謝 申 し 上 げたい 8