A.T. Kearney Agenda Vol.5 デジタル時代の サプライチェーン管理 デジタルは大きな可能性を持ち 今後のサプライチェーン 管理を考える際の重要な論点だが 魔法の杖ではない 本稿では デジタルの活用で成果を出すための 定石 と 経営が果たすべき役割についてご紹介したい Template: Paper Title Here 1
デジタルを 活 用 したSCMの 可 能 性 サプライチェーンの 管 理 (SCM)の 巧 拙 が 企 業 経 営 に 大 きなインパクトをもたらすことは 周 知 の 通 りである 原 材 料 費 や 製 造 原 価 は 多 くのメーカーにとって 最 大 のコスト 項 目 であるし 物 流 費 は 全 産 業 平 均 でも 売 上 の5% 弱 を 占 め 特 に 小 売 ( 通 販 ) 窯 業 土 石 ガラス セメント 食 品 などの 業 界 は8%を 超 える*(* 出 所 : 公 益 社 団 法 人 日 本 ロジスティクスシステム 協 会 ) また 商 品 サー ビスの 品 質 や 納 期 にも 大 きな 影 響 を 与 えるため 売 上 への 影 響 も 大 きい これまでは SCM 機 能 の 向 上 は 主 にERPを 代 表 とするITの 活 用 によって 牽 引 されてきた 販 売 調 達 生 産 在 庫 の 状 況 を 一 元 的 に 把 握 し コスト 最 適 なオペレーションを 実 現 するためにはデータ の 一 貫 性 が 必 要 であり その 点 でERP 等 の 従 来 型 のITは 多 大 な 貢 献 を 果 たしてきた ただし 従 来 型 のITではデータインプットの 部 分 でどうしても 個 々 人 の 勘 や 経 験 に 依 存 する 部 分 が 残 っていた 近 年 SCMの 分 野 でIoTを 代 表 とするデジタル 技 術 の 活 用 が 進 みつつあり SCMのさらなる 高 度 化 が 起 こり 始 めている 従 来 型 のITと 比 べると より 膨 大 な ハードファクト をリアルタイムで 取 得 分 析 できることが 大 きな 特 徴 である これにより サプライチェーンの 見 える 化 標 準 化 最 適 化 自 動 化 自 律 化 を 高 いレベルで 実 現 し 圧 倒 的 な 低 コスト 化 フレキシビリティ 向 上 スピードアップや それを 活 用 したビジネスモデル 革 新 も 可 能 となった ( 図 1および 図 2 参 照 ) 図 1 A.T. カーニーの Supply Chainフレームワーク デジタルを 活 用 したSCM 戦 略 関 連 性 の 高 い 項 目 planning ( 企 画 戦 略 ) supply ( 調 達 ) manufacturing ( 生 産 ) logistics ( 物 流 ) 高 度 なアナリティクス IoT(Internet of things) 拡 張 現 実 (AR) ウェアラブルコンピューター ロボティクス 3D プリンティング 高 度 な 協 働 プラットフォーム クラウドソーシング 2
図 2 A.T. カーニーの Supply Chainフレームワーク デジタルを 活 用 したSCM 戦 略 期 待 される 効 果 コスト 削 減 フレキシビリティの 向 上 スピードアップ planning ( 企 画 戦 略 ) supply ( 調 達 ) manufacturing ( 生 産 ) logistics ( 物 流 ) 高 度 なアナリティクス IoT(Internet of things) 拡 張 現 実 (AR) ウェアラブルコンピューター ロボティクス サプライチェーンの ネットワークへの 投 資 削 減 配 送 品 質 の 向 上 調 達 活 動 の スピードアップ 生 産 コストの 削 減 異 常 (あるいは その 予 兆 ) 発 生 時 の 即 時 対 応 材 料 費 の 削 減 物 流 ネットワークへの 投 資 削 減 輸 配 送 コストの 削 減 異 常 (あるいは その 予 兆 ) 発 生 時 の 即 時 対 応 3D プリンティング 生 産 及 びデザインのフレキシビリティ 向 上 高 度 な 協 働 プラットフォーム クラウドソーシング 調 達 のフレキシビリティとサプライチェーンの 復 元 力 の 向 上 生 産 設 備 の 稼 働 率 向 上 輸 配 送 コストの 削 減 例 えば 物 流 企 業 であるUPSは 全 世 界 に528あるUPS Supply Chain Solutionの 拠 点 と1,990の 店 舗 のネットワークに 加 えて 3Dプリンターや 部 品 のデジタルカタログを 整 備 している これに より 設 計 デザインコストを 圧 縮 しつつ 部 品 の 調 達 リードタイムを 従 来 の 週 月 単 位 から1 日 に 短 縮 しようとしている 従 来 型 の 部 品 メーカーのビジネスが 変 わる 可 能 性 があることは 言 うま でもない 小 売 の 領 域 においてもAmazonに 代 表 されるようにロングテールの 商 品 ラインナップを 維 持 しなが ら リードタイム30 ~ 60 分 を 実 現 する 取 組 が 本 格 化 している また デジタルを 活 用 したSCM の 世 界 では 今 まで 関 わりの 無 かったプレーヤーとの 協 業 の 可 能 性 が 生 まれる 例 えば ECビジ ネスでは 需 要 情 報 がリアルタイムに 共 有 可 能 となることで 物 流 企 業 だけではなく タクシーやハ イヤーも 配 送 機 能 の 一 躍 を 担 うことが 可 能 だ このように デジタルを 活 用 したSCMにより 既 存 のビジネスが 大 きく 変 化 しようとしている 3
安 易 なデジタル 化 の 罠 こうした 背 景 もあり A.T. カーニーでは ユーザサイドから 見 たデジタル 活 用 の 可 能 性 やメーカー サイドから 見 たデジタルの 事 業 機 会 を 検 討 するプロジェクトが 近 年 増 えている プロジェクトの 出 発 点 には ユーザとしてはデジタル 活 用 によるSCMのオペレーション 改 革 の 可 能 性 メーカーと しては 新 たな 収 益 機 会 という 期 待 が 存 在 するのだが プロジェクトの 中 で 詳 細 に 分 析 すると 経 営 目 線 で 十 分 な 投 資 対 効 果 を 得 られるケースは 必 ずしも 多 くない たとえば ある 大 企 業 で100 以 上 の 事 業 でSCMを 中 心 にデジタル 活 用 の 可 能 性 を 診 断 したプロジェ クトでは 現 時 点 でROIに 見 合 いそうな 案 件 は 数 事 業 に 留 まるという 結 論 に 至 った かつてより 個 々 のツールの 単 価 が 下 がったとはいえ 例 えばすべての 機 械 や 車 両 にセンサーを 付 けると 相 応 の 投 資 が 必 要 である 従 って 事 業 規 模 事 業 アセット バリューチェーンにおける 位 置 づけ 等 を 理 解 したうえで 特 定 のコスト 項 目 や 機 会 損 失 を 数 % 改 善 出 来 たら どの 程 度 のリターンが 得 られそう か? それはいくらの 投 資 であればROIが 見 合 うか?という 皮 算 用 を 見 極 める 必 要 がある デジタルは 魔 法 の 杖 ではない どのような 場 合 にデジタル 活 用 が 有 効 なのか(あるいは 有 効 で ないのか) そしてどうすればメリットを 最 大 限 享 受 できるのか を 考 える 必 要 がある デジタルを 効 果 的 に 使 うために では デジタルの 活 用 で 成 果 を 出 すためのポイントは 何 であろうか?ここでは 特 に 重 要 となる 事 業 特 性 の 見 極 め 業 務 分 析 / 価 値 分 析 を 通 じた 戦 略 構 築 オペレーションモデル の 三 点 について デジタルの 中 でも 近 年 注 目 度 の 高 いIoTを 念 頭 に 置 きながら 触 れたい 一 点 目 の 事 業 特 性 の 見 極 め については A.T. カーニーでは50 件 超 のデジタル 取 組 の 先 進 事 例 を ビジネス 視 点 で 研 究 し 次 の5つの 基 準 を 導 出 している ( 図 3 参 照 ) 図 3 デジタル 取 組 の 先 進 事 例 デ ジ タ ル( 特 に IoT) 活 用 による 効 果 の 大 きい 事 業 のパターン デジタル ( 特 にIoT)を 活 用 による 主 なメリット 見 える 化 ( 予 兆 ) 標 準 化 最 適 化 自 動 化 自 律 化 事 業 の 生 産 性 効 率 性 が 個 人 の 技 量 に 大 きく 依 存 物 流 費 / 燃 料 費 率 が 高 い 稼 働 率 がKPI 収 益 ボラティリティが 高 い メンテナンス アフターサービスが 収 益 源 / 差 別 化 要 因 機 械 加 工 土 木 建 設 農 業 食 品 加 工 他 熟 練 工 ブルーワーカーが 多 い 機 物 流 業 ( 陸 / 海 / 空 ) サ プ ラ イチェ ー ン が 複 雑 等 オ ペ レ ー タ( 資 源 /インフラ 開 発 ) 故 障 時 の 事 業 リスクが 高 い 初 期 投 資 が 大 きい 等 トレーディング( 資 源 穀 物 他 ) 相 場 もの 商 材 を 扱 っている 外 乱 要 因 が 大 きい 重 工 機 械 他 機 器 売 り 切 りタイプ O&M 業 者 や LTSA 契 約 が 存 在 する 等 4
1. 事 業 の 生 産 性 効 率 性 が 個 人 の 技 量 に 大 きく 依 存 する 機 械 加 工 土 木 建 設 農 業 食 品 加 工 他 熟 練 工 ブルーワーカーが 多 い 事 業 が 該 当 する 熟 練 工 と 非 熟 練 工 の 機 器 を 使 いこなすノウハウ 生 産 性 の 差 に 着 目 し ノウハウをソフトウェアに 落 とし 込 むことで 非 熟 練 工 の 生 産 性 改 善 を 狙 う 例 えば KOMATSUは 熟 練 運 転 者 のノウハウを 鉱 山 機 械 に 取 り 込 むことで 生 産 性 を 向 上 させている 熟 練 のダンプトラック 運 転 者 は 雨 の 日 に 滑 りやすくなる 路 面 で スリップを 防 ぎながら 運 転 する KOMATSUはこのノウハウをデジタル 活 用 により 標 準 化 し 雨 天 時 でも 高 い 稼 働 率 を 実 現 した 2. 物 流 費 燃 料 比 率 が 高 い 物 流 業 ( 陸 / 海 / 空 )など サプライチェーンが 複 雑 な 事 業 が 該 当 する 省 エネ 航 路 シミュレーショ ンなどにより 燃 料 費 を 削 減 する 例 えば 日 本 郵 船 は 年 間 200 億 円 規 模 の 利 益 改 善 に 成 功 している もともと 海 運 は 安 全 のために 気 象 と 戦 ってきた 天 気 の 悪 い 海 域 ではスピードが 出 ず いくら 燃 料 をたいても 進 まない( 燃 費 が 悪 い) 従 って ( 安 全 な 範 囲 で) 天 気 が 多 少 悪 いが 最 短 ルートを 通 るべきか? 遠 くても おだや かでスピードが 出 るルートを 通 るべきか?を 試 行 錯 誤 してきた 日 本 郵 船 は コンテナ 船 にセンサー を 搭 載 し エンジン 計 器 類 等 の 航 行 データや 天 候 海 流 の 状 況 を 収 集 分 析 するともに 燃 費 を 最 小 限 に 抑 える 輸 送 ルートを 作 成 して 燃 料 費 を 平 均 10% 削 減 している 3. 稼 働 率 の 重 要 性 が 高 い 資 源 メジャーや 社 会 インフラオペレータなど 初 期 投 資 故 障 時 の 事 業 リスクが 高 い 事 業 が 該 当 す る 例 えば オフショア 石 油 ガスプラットフォームではダウンタイム 一 日 で100 万 ドル 単 位 の 損 害 が 発 生 するが メンテナンスに 必 要 な 移 動 距 離 が 非 常 に 長 い 故 障 の 予 兆 を 監 視 できれば 計 画 外 ダ ウンタイムを 削 減 し 大 幅 な 利 益 改 善 を 期 待 できる オフショアプラットフォームでのデジタル 活 用 例 として BPがあげられる BPでは 各 油 井 の 機 械 の 稼 働 状 況 周 辺 の 気 温 圧 力 のデータをモニタリングし 予 兆 監 視 による 計 画 外 ダウンタイム 削 減 を 狙 っている 現 状 650の 油 井 を 監 視 しており 効 果 が 検 証 されれば4,000の 油 井 に 展 開 予 定 という 4. 収 益 ボラティリティが 高 い 農 業 資 源 穀 物 のコモディティ 取 引 など 天 候 等 の 外 乱 要 因 が 大 きい 事 業 が 該 当 する 例 えば 穀 物 取 引 では 需 要 に 対 し 生 産 は 天 候 に 影 響 を 受 けるため 価 格 ボラティリティが 高 い 穀 物 生 産 予 測 精 度 を 向 上 することができれば 相 場 予 測 /トレーディングを 高 度 化 できる また 精 密 農 業 では 日 照 条 件 窒 素 量 育 成 状 態 と 半 年 後 の 生 産 高 の 相 関 の 過 去 データを 保 有 し 穀 物 育 成 条 件 から 生 育 予 測 を 行 う 取 り 組 みが 存 在 する 天 候 データ 農 業 機 械 による 窒 素 計 測 を 用 いた リアルタイムの 育 成 状 態 把 握 により 生 産 高 を 予 測 している この 予 測 データを 農 業 保 険 に 適 用 することで 新 しいビジネスも 生 まれている 5. メンテナンスやアフターサービスが 収 益 源 / 差 別 化 要 因 重 工 機 械 O&M 業 者 や LTSA( 長 期 保 守 契 約 )が 存 在 する 事 業 が 該 当 する 既 存 のハードインストー ルベースに 対 し 予 兆 監 視 でメンテナンス 需 要 を 囲 い 込 むことで 収 益 を 最 大 化 する 例 えばGEはプロダクトサービスを 独 自 に 定 義 し LTSA 契 約 によるサービスバックログをKPIとし て 管 理 している バックログ 倍 率 (ライフタイムのService/Equipment 売 上 )が3 ~ 5 倍 の 事 業 は 目 標 営 業 利 益 率 20%を 達 成 している 5
また GEは 飛 行 中 にエンジン 交 換 の 必 要 性 を 判 断 するアルゴリズムを 開 発 し 着 陸 後 すぐにス ペアエンジンと 交 換 するメンテナンスサービスも 実 施 している 飛 行 中 の 予 兆 から 到 着 に 間 に 合 わ せたタイミングでスペアエンジンを 手 配 することで 顧 客 である 航 空 会 社 の 運 行 ダウンタイムを 最 小 化 予 兆 監 視 でメンテナンス 需 要 を 囲 い 込 むことに 成 功 している 上 記 条 件 のいずれかを 満 たす 事 業 であれば サプライチェーンの 領 域 でデジタル 技 術 の 投 資 をする ことで 高 いROIを 期 待 できる 可 能 性 が 高 い ただし 実 際 にサプライチェーンにデジタルソリューションを 導 入 するためには 図 4のようなプ ロセスを 経 る 必 要 がある このなかで 最 も 重 要 なのが 二 つ 目 のポイントである 業 務 分 析 / 価 値 分 析 である 業 務 分 析 / 価 値 分 析 においては プロセスや 顧 客 の 深 い 洞 察 ( 現 場 のインサイト) を 持 ちつつ プロセス 業 界 を 俯 瞰 して 大 きな 絵 を 描 く そして ROIを 中 長 期 視 点 で 見 極 める ことが 求 められる 図 4 デジタル 導 入 検 討 のステップ 業 務 分 析 / 価 値 分 析 IT/ IoT 領 域 での 解 決 策 立 案 IT/ IoTのシステム 導 入 運 用 効 果 検 証 自 社 顧 客 / 顧 客 の 顧 客 の 業 務 棚 卸 業 務 革 新 仮 説 の 構 築 改 善 余 地 の 特 定 改 善 策 の 方 針 検 討 改 善 策 の 費 用 対 効 果 分 析 改 善 策 の 決 定 具 体 化 システム 要 件 定 義 化 非 IT/ IoT 領 域 での 解 決 策 立 案 業 務 プロセス 改 革 運 用 プロセスや 顧 客 については 一 般 的 には 営 業 や 生 産 物 流 の 現 場 に 聞 けば 分 かると 思 われがちだが 差 別 化 につながる 切 り 口 を 得 るためには 顧 客 の 業 務 実 態 に 根 差 したニーズにより 深 く 踏 み 込 むこ とが 必 要 だ( 図 5 参 照 ) こうして 得 たインサイトを 戦 略 仮 説 にまとめるのだが 精 密 農 業 の 知 見 を 農 業 保 険 に 適 用 した 事 例 のように デジタルはSCMを 大 幅 に 高 度 化 効 率 化 するのみならず ビジ ネスモデル 自 体 を 大 きく 変 え 得 る 従 って 高 い 視 座 から まさに 大 きな 絵 を 描 く ことが 求 め られる そのうえで 中 長 期 視 点 でROIを 検 討 することが 必 要 である 6
図 5 価 値 分 析 では 顧 客 業 務 の 深 い 理 解 が 重 要 方 法 論 1 ユーザーになる GE Capitalは GE 製 品 のユーザー 領 域 (Aviation Energy Healthcare)に 投 資 を 集 中 ノンユーザー 領 域 は 売 却 先 行 企 業 の 業 務 / 価 値 分 析 機 能 強 化 の 取 組 み 方 法 論 2 方 法 論 3 ユーザーに 張 り 付 いて 観 察 する ユーザー 業 務 に 詳 しい 専 門 家 を 活 用 獲 得 する KOMATSUは ユーザーと 経 営 ~ 現 場 の 課 題 の 情 報 交 換 をするプログラムを 運 営 (JoiFUL) ユーザー 現 場 に 数 十 名 単 位 の 要 員 を 派 遣 し 業 務 改 善 提 案 に 繋 げている KOMATSUは モ ジュラ ー マ イ ニ ン グ シ ス テ ム ズ ( 鉱 山 フリート 管 理 の 大 手 )を 買 収 することで ユーザー( 鉱 山 オペレータ) 業 務 の 専 門 性 を 獲 得 方 法 論 4 ユーザー 業 務 を 支 える ツールを 獲 得 する SiemensはPLM( 製 品 ライフサイクル 管 理 ) MES( 製 造 オペレーション 管 理 )のソフト ウェア 会 社 を 次 々 買 収 ユーザーの 設 計 製 造 業 務 に 入 り 込 むツールとして 活 用 こうして 戦 略 を 作 り デジタルソリューションを 導 入 したら あとは 現 場 での 運 用 となる ここで 重 要 となるのが 三 点 目 のポイントである オペレーションモデル である オペレーションモデルを 考 える 際 には フォーキャスト 型 動 的 統 合 といった 視 点 が 重 要 となる 前 月 の 実 績 のみに 基 づいて 次 月 の 計 画 を 立 てるようなオペレーションではデジタルのポテンシャルを 活 用 することは 難 しい 属 人 的 な 勘 や 直 近 の 実 績 のみに 基 づいて 意 思 決 定 を 行 うアドホック 型 から 定 量 的 な 予 測 に 基 づいて 意 思 決 定 を 行 うフォーキャスト 型 への 転 換 が 必 要 である また デジタルの 世 界 では リアルタイム 準 リアルタイムの 意 思 決 定 が 必 要 であり ITによる 自 動 化 もさることながら 時 には 責 任 者 が 分 単 位 で 判 断 することも 必 要 である 静 的 なオペレーション 思 想 から 動 的 な(dynamic) オペレーション 思 想 への 転 換 が 求 められる そして 何 よりも 重 要 となるのが 各 部 門 が 分 断 されたタ コツボ 型 のオペレーションから 部 門 組 織 を 横 断 した 統 合 されたオペレーションへの 転 換 である 従 来 のSCMにおいても 販 売 調 達 生 産 物 流 の 利 害 調 整 は 必 要 ではあるが より 迅 速 に 意 思 決 定 が 行 えるようS&OP(Sales and Operation Planning) 機 能 を 強 化 洗 練 しなくてはならない しかしながら 我 々の 経 験 では 多 くのサプライチェーン 部 門 は 縦 割 り 閉 鎖 的 現 状 維 持 志 向 受 け 身 といった 課 題 を 抱 えることが 多 い デジタル 活 用 においては こうした 課 題 への 取 組 も 不 可 欠 であると 言 えよう デジタル 時 代 の 経 営 に 求 められること ここまでSCMにおいてデジタルを 活 用 するための 三 つのポイントを 述 べてきた デジタルをSCM 領 域 にうまく 適 用 できれば 大 きな 競 争 優 位 になり 得 るが 経 営 は デジタルは 魔 法 の 杖 ではな いこと 何 より 目 的 でなく 手 段 であることを 常 に 意 識 しておく 必 要 がある 7
また デジタルをSCM 戦 略 と 実 際 のオペレーションに 落 とし 込 むためには 前 述 のように 現 場 目 線 でのインサイトと 高 い 視 座 からの 構 想 の 双 方 が 求 められる さらに SCMは 本 質 的 にプロセス 横 断 事 業 横 断 の 最 適 化 という 側 面 を 持 っている そのため SCM 関 連 ( 生 産 物 流 調 達 など) 部 門 企 画 部 門 営 業 部 門 IT 部 門 各 種 ベンダなどの 知 見 を 融 合 し 一 定 のトライ&エラーを 許 容 する ことが 必 要 だが これは 経 営 のコミットメント 下 でのプロジェクトを 組 成 しないと 難 しい 同 様 にオペレーションモデルの 変 革 についても 縦 割 り 閉 鎖 的 現 状 維 持 志 向 受 け 身 といっ た 組 織 風 土 の 解 決 は 現 場 任 せでは 難 しい 経 営 の 強 いリーダーシップが 不 可 欠 であろう デジタルと 言 うと 技 術 的 なハードルの 高 さゆえ 現 場 やベンダ 企 画 部 門 に 丸 投 げしがちだが そ れでは 間 違 いなく 失 敗 する 経 営 は 本 稿 で 述 べたような 定 石 を 理 解 したうえで 取 組 に 深 くコミッ トすることが 重 要 である Author Profiles Hiroshi Nakamura A.T. hiroshi.nakamura@atkearney.com 東 京 大 学 経 済 学 部 卒 富 士 銀 行 ( 現 みずほ 銀 行 )を 経 てA.T. カーニー 入 社 消 費 財 不 動 産 金 融 サービスを 中 心 に 全 社 / 事 業 戦 略 営 業 マーケティン グ 戦 略 業 務 改 革 調 達 戦 略 を 支 援 最 強 の 業 務 改 革 最 強 のコスト 削 減 (いずれも 東 洋 経 済 新 報 社 ) 執 筆 担 当 Kakuya Nishikawa A.T. kakuya.nishikawa@atkearney.com 東 京 大 学 工 学 部 卒 特 許 事 務 所 を 経 て A.T. カーニー 入 社 現 在 の 技 術 軸 に 新 しい 技 術 軸 を 足 して 需 要 を 創 造 するM&A 戦 略 IoTを 梃 にし た 新 しい 価 値 の 創 造 (ビジネスモデル オペレーションモデル)を 支 援 Hirotoshi Nakahara A.T. hirotoshi.nakahara@atkearney.com 早 稲 田 大 学 大 学 院 基 幹 理 工 学 研 究 科 修 了 アクセンチュア 京 都 大 学 医 学 研 究 科 研 究 員 を 経 てA.T. カーニー 入 社 ヘルスケア 消 費 財 小 売 を 中 心 に 成 長 戦 略 業 務 改 革 等 を 支 援 8
A.T.カーニーは 40ヶ 国 以 上 に 拠 点 を 有 する 世 界 有 数 のグローバルな 経 営 コンサルティ ングファームです 1926 年 の 創 業 以 来 世 界 の 有 力 企 業 組 織 の 信 頼 されるアドバイ ザーであり 続 けています A.T.カーニーはパートナーシップ 制 度 を 採 っており 顧 客 の 最 重 要 課 題 に 対 して 短 期 的 な 成 果 をもたらすと 共 に 持 続 的 な 成 長 を 支 援 することをお 約 束 します 詳 しくはWebサイトをご 覧 下 さい www.atkearney.com アメリカ アトランタ ボゴタ ボストン カルガリー シカゴ ダラス デトロイト ヒューストン メキシコシティ ニューヨーク パロアルト サンフランシスコ サンパウロ トロント ワシントン DC アジア パシフィック バンコク 北 京 香 港 ジャカルタ クアラルンプール メルボルン ムンバイ ニューデリー ソウル 上 海 シンガポール シドニー 台 北 東 京 ヨーロッパ アムステルダム ベルリン ブリュッセル ブカレスト ブダペスト コペンハーゲン デュッセルドルフ フランクフルト ヘルシンキ イスタンブール キエフ リスボン リブリヤナ ロンドン マドリード ミラノ モスクワ ミュンヘン オスロ パリ プラハ ローマ ストックホルム シュトゥットガルト ウィーン ワルシャワ チューリッヒ 中 東 アフリカ アブダビ ドーハ ドバイ ヨハネスブルグ マナマ リヤド 本 稿 の 表 紙 に 記 されているのは 当 社 の 社 名 にもなっている 創 業 者 Andrew Thomas Kearney (アンドリュー トーマス カーニー)の 署 名 で カーニーが 培 い 我 々が 継 承 している すべての 行 いにおいて 本 質 的 な 正 しさ を 保 証 することを 意 味 しています A.T. Kearney Korea LLC は 大 韓 民 国 において A.T. Kearney の 名 のもと 業 務 を 行 っている 別 法 人 です A.T. Kearney はインド 共 和 国 においては 英 国 法 に 基 づいて 設 立 された 法 人 組 織 A.T. Kearney Limited の 支 店 として 業 務 を 行 っています 本 稿 の 無 断 複 製 転 載 引 用 は 固 くお 断 りいたします 2016, A.T. Kearney, Inc. All rights reserved