平 成 25 年 度 事 業 計 画 書 自 至 平 成 25 年 7 月 1 日 平 成 26 年 6 月 30 日 財 団 法 人 日 本 きのこセンター
平 成 25 年 度 事 業 計 画 事 業 方 針 昨 年 末 の 衆 議 院 総 選 挙 で 与 党 復 帰 を 果 たした 自 民 公 明 政 権 がデフレからの 脱 却 と 経 済 再 生 を 最 優 先 課 題 として 取 り 組 んでいる アベノミクス 政 策 を 受 けて 円 安 株 高 が 進 む 中 国 内 景 気 の 先 行 きは 回 復 に 向 かっていくと 期 待 されている また 政 府 は 重 要 成 長 戦 略 の 一 つとして 農 業 強 化 策 を 打 ち 出 しているが 先 に 参 加 表 明 した 環 太 平 洋 経 済 連 携 協 定 (TPP) 交 渉 次 第 では 農 林 水 産 業 分 野 においては 甚 大 な 経 済 的 損 失 を 被 るとの 危 機 感 が 強 まっている このような 社 会 経 済 情 勢 の 下 食 と 環 境 を 守 る 農 林 水 産 業 の 健 全 な 発 展 と 経 済 の 持 続 的 成 長 とが 調 和 する 社 会 の 実 現 に 向 けた 賢 明 な 政 策 の 実 行 が 望 ま れる シイタケをはじめとする 食 用 きのこの 原 木 栽 培 は 里 山 等 山 林 の 整 備 と 森 林 資 源 の 循 環 利 用 を 要 件 とする 環 境 保 全 型 農 林 業 の 一 つであり 農 山 漁 村 における 生 活 を 支 える 重 要 な 収 入 源 として 営 まれてきた しかし この 我 が 国 の 原 木 シイタケ 生 産 は 昭 和 60 年 のプラザ 合 意 以 降 の 円 高 誘 導 による 中 国 産 シイタケの 大 量 輸 入 と 原 産 国 偽 装 表 示 によ る 価 格 暴 落 等 の 危 機 に 遭 遇 し 生 産 規 模 を 大 きく 縮 減 している 中 今 般 の 原 発 事 故 に 伴 う 放 射 能 災 害 により 最 大 の 存 亡 の 危 機 に 直 面 している 山 林 を 活 用 した 露 地 栽 培 である がゆえに 放 射 能 汚 染 の 影 響 を 直 接 受 け 2 年 余 を 経 過 した 今 日 でさえ 東 北 関 東 地 方 の 多 くの 地 域 で 生 産 された 原 木 シイタケは 出 荷 制 限 措 置 による 生 産 停 止 西 日 本 産 原 木 シイタケにおいても 風 評 等 により 市 況 は 再 生 産 価 格 を 大 きく 下 回 って 推 移 している 我 が 国 が 誇 る 原 木 シイタケ 生 産 の 一 日 も 早 い 復 活 再 生 を 図 るため 林 野 庁 が 進 めて いる 栽 培 用 原 木 の 供 給 体 制 の 確 立 やほだ 場 の 基 盤 整 備 等 のシイタケ 生 産 振 興 対 策 および 放 射 性 物 質 等 による 被 害 防 止 対 策 に 積 極 的 に 対 応 するとともに 国 産 原 木 シイタケの 優 位 性 の 評 価 および 原 産 国 偽 装 表 示 の 排 除 による 再 生 産 価 格 の 維 持 消 費 や 輸 出 の 拡 大 を 喚 起 する 付 加 価 値 の 高 いシイタケ 優 良 品 種 の 開 発 安 定 生 産 技 術 の 普 及 指 導 さらには 担 い 手 の 育 成 などの 取 り 組 みを 一 層 強 化 する 必 要 がある また きのこ 類 が 有 する 健 康 機 能 性 成 分 をはじめ 各 種 の 有 用 物 質 の 利 活 用 を 図 るためにも それら 遺 伝 資 源 の 調 査 -1-
保 存 ならびに 新 たな 利 用 法 の 開 発 に 関 する 研 究 を 推 進 する 必 要 がある 本 財 団 は 本 事 業 年 度 から 一 般 財 団 日 本 きのこセンターとしてスタートすることとな るが 上 述 のような 情 勢 認 識 を 踏 まえつつ 原 木 シイタケ 等 きのこ 類 の 生 産 振 興 および 消 費 拡 大 を 図 るべく 本 年 度 も 国 地 方 自 治 体 大 学 生 産 者 団 体 消 費 者 団 体 等 関 係 機 関 との 連 携 の 下 1 従 来 実 施 してきた 事 業 を 継 続 するとともに 2きのこ 類 遺 伝 資 源 の 新 たな 利 用 法 の 開 発 研 究 等 の 事 業 を 鋭 意 推 進 する 方 針 である また 財 団 の 財 務 基 盤 の 強 化 により 持 続 的 に 社 会 貢 献 できる 組 織 体 制 の 構 築 を 図 るため これまでの 調 査 研 究 の 成 果 として 蓄 積 してきた 知 的 財 産 権 等 の 実 用 化 に 取 り 組 む 事 業 項 目 1. 継 続 事 業 ( 公 益 目 的 支 出 計 画 事 業 ) 1) 菌 類 特 にきのこ 類 に 関 する 基 礎 的 研 究 (ア)きのこ 類 の 分 類 と 遺 伝 資 源 の 収 集 保 存 我 が 国 をはじめ 世 界 には 数 多 くの 未 知 のきのこ 類 が 存 在 する 本 調 査 研 究 では 野 生 きのこ 類 の 収 集 同 定 と 系 統 分 類 学 的 研 究 を 行 うとともに 学 術 標 本 として 乾 燥 保 存 する また 培 養 可 能 なきのこ 類 については 新 規 あるいは 既 知 種 を 含 め 遺 伝 資 源 として 液 体 窒 素 凍 結 法 により 保 存 蓄 積 する (イ) 里 山 林 における 菌 根 性 きのこの 生 態 里 山 は 我 が 国 の 人 々の 暮 らしを 支 え 多 様 な 生 物 を 育 んできたが 社 会 環 境 の 変 化 により 荒 廃 が 進 み その 再 生 が 国 民 的 課 題 となっている 本 研 究 では 里 山 再 生 の 国 民 的 活 動 を 喚 起 する 情 報 提 供 を 目 的 に 里 山 に 再 生 施 業 を 施 すことにより 樹 木 と 共 生 する 菌 根 性 きのこの 生 態 がどのように 変 化 するかを 究 明 し 併 せてそれらきのこ 類 の 地 域 資 源 としての 有 用 性 を 評 価 する (ウ)きのこ 類 有 用 成 分 の 探 索 と 解 析 本 研 究 は 上 記 の(イ)の 調 査 研 究 で 収 集 分 類 した 様 々な 野 生 きのこ 類 および 栽 培 きのこ 類 が 合 成 する 有 用 な 既 知 あるいは 新 規 生 理 活 性 物 質 の 産 業 利 用 への 道 を 拓 く 基 礎 知 見 を 得 ることを 目 的 として 健 康 増 進 機 能 および 薬 理 効 果 を 持 つ 有 用 生 理 活 性 -2-
物 質 を 探 究 する (エ)きのこ 類 の 品 種 識 別 技 術 の 開 発 本 調 査 研 究 では 栽 培 きのこ 類 の 育 成 者 権 保 護 適 正 な 国 内 生 産 の 振 興 による 自 給 率 の 向 上 と 良 質 な 食 料 の 確 保 を 目 的 に DNA 情 報 に 基 づく 確 実 かつ 迅 速 なきのこ 類 の 品 種 識 別 技 術 を 開 発 する また DNA 解 析 手 法 によるシイタケ 品 種 識 別 サービス 機 関 として 広 く 一 般 からの 識 別 検 査 業 務 を 受 託 する 2)きのこ 類 優 良 菌 株 の 育 種 に 関 する 研 究 (ア)DNA 情 報 を 利 用 したきのこ 類 の 分 子 育 種 技 術 の 開 発 食 用 きのこ 類 の 育 種 年 限 は 概 ね 10 年 程 度 を 要 し 育 種 年 限 の 短 縮 は 育 種 事 業 にお ける 重 要 課 題 である 本 調 査 研 究 は きのこ 類 の DNA 情 報 に 関 する 基 礎 的 応 用 的 研 究 を 実 施 することにより DNA 情 報 を 利 用 した 選 抜 システムを 構 築 し 我 が 国 のきのこ 育 種 分 野 における 国 際 競 争 力 の 強 化 を 図 るとともに 育 種 効 率 の 向 上 と 育 種 年 限 の 大 幅 な 短 縮 を 目 指 すものである (イ)きのこ 類 優 良 菌 株 の 育 種 に 関 する 研 究 原 木 栽 培 用 食 用 きのこの 交 雑 育 種 において 調 査 研 究 2)の(ア)で 構 築 した DNA 情 報 を 利 用 した 選 抜 システムを 採 用 し 短 期 間 で 効 率 よく 生 産 振 興 に 繋 がり 消 費 者 に 歓 迎 される 優 良 品 種 を 開 発 する 3)きのこ 類 の 栽 培 技 術 及 び 栽 培 経 営 の 向 上 に 関 する 研 究 (ア) 原 木 シイタケの 高 度 安 定 生 産 技 術 開 発 里 山 活 用 型 原 木 シイタケ 栽 培 の 作 柄 や 品 柄 は 原 木 の 形 質 栽 培 管 理 手 法 の 違 いお よび 気 象 条 件 により 大 きく 変 動 する 本 調 査 研 究 では 安 定 的 に 高 品 質 高 収 量 を 確 保 する 栽 培 技 術 の 確 立 を 目 指 すとともに 近 年 拡 大 しているナラ 枯 れ 被 害 木 の 原 木 シイ タケ 栽 培 への 利 用 技 術 を 確 立 する (イ)きのこ 類 遺 伝 資 源 の 活 用 と 栽 培 技 術 開 発 本 事 業 では 菌 蕈 研 究 所 が 収 集 保 存 しているきのこ 類 遺 伝 資 源 の 活 用 を 図 ること を 目 的 に 既 栽 培 種 の 野 生 株 を 対 象 に 子 実 体 発 生 温 度 や 形 態 などの 特 性 調 査 を 実 施 するとともに 未 栽 培 種 については 適 合 する 培 養 基 材 や 栄 養 材 の 探 索 を 行 い 栽 培 -3-
手 法 の 確 立 を 目 指 す また 主 にスギ ヒノキの 間 伐 材 や 雑 木 ならびにオカラなどの 食 物 残 渣 の 培 地 資 材 としての 適 合 性 を 調 査 評 価 するとともに 廃 菌 床 のリサイクル 技 術 を 確 立 することにより 農 林 業 廃 棄 資 源 の 有 効 利 用 を 図 る (ウ) 原 木 シイタケ 栽 培 の 経 営 分 析 と 経 営 向 上 に 関 する 研 究 原 木 シイタケ 栽 培 者 の 経 営 向 上 と 経 営 体 質 の 強 化 は 生 産 物 の 安 定 供 給 を 確 保 する 要 件 である 中 核 生 産 者 の 経 営 記 帳 結 果 を 経 営 分 析 することにより 経 済 的 側 面 から 経 営 向 上 への 課 題 問 題 点 を 明 らかにし 経 営 改 善 に 役 立 てる また 長 年 蓄 積 してき た 経 営 データの 経 済 的 分 析 を 実 施 し その 分 析 結 果 の 中 から 有 用 なものを 我 が 国 の 原 木 シイタケ 栽 培 者 の 経 営 安 定 のために 活 用 する 4) 原 木 シイタケ 等 きのこ 類 の 生 産 振 興 及 び 安 定 需 給 の 推 進 (ア) 乾 シイタケの 原 産 地 判 別 法 の 高 度 化 と 調 査 平 成 5 年 以 降 安 価 な 中 国 産 乾 シイタケを 国 産 として 偽 装 表 示 する 違 法 行 為 が 横 行 し 国 産 乾 シイタケの 信 頼 と 市 況 が 大 幅 に 低 下 する 事 態 を 招 来 した このため 当 財 団 は 平 成 11 年 から 偽 装 表 示 の 抑 止 力 の 強 化 を 図 る 目 的 で 無 機 元 素 の 量 比 やストロ ンチウム 同 位 体 比 に 基 づく 高 精 度 判 別 法 を 開 発 し それによる 判 別 検 査 を 受 託 するこ とで 行 政 の 原 産 地 偽 装 表 示 の 監 視 取 締 りに 協 力 してきている しかし 昨 今 では 既 往 の 判 別 法 では 対 応 出 来 ない 新 たな 手 口 の 偽 装 表 示 事 案 が 懸 念 されている 本 調 査 研 究 では 新 たな 偽 装 表 示 事 案 に 対 応 するため 炭 素 窒 素 酸 素 等 の 軽 元 素 同 位 体 比 に 基 づく 判 別 法 の 高 度 化 研 究 に( 独 ) 食 品 総 合 研 究 所 の 協 力 を 得 て 取 り 組 むとともに 行 政 から 受 託 した 判 別 検 査 業 務 を 行 う (イ) 原 木 シイタケ 等 きのこ 類 栽 培 の 普 及 指 導 我 が 国 の 里 山 を 活 用 しながら 広 葉 樹 原 木 を 用 いて 営 まれるシイタケ 等 きのこ 類 の 原 木 栽 培 は 短 期 収 入 源 として 農 山 村 の 人 々の 暮 らしの 維 持 安 全 安 心 で 天 産 物 に 近 い 風 味 と 食 感 を 有 する 良 質 の 健 康 食 品 としてのきのこの 供 給 を 通 して 国 民 の 健 康 増 進 に 大 きく 寄 与 してきた しかし 近 年 の 社 会 情 勢 の 変 化 により 衰 退 が 急 速 に 進 む 農 山 村 に 活 力 を 取 り 戻 し その 健 全 な 発 展 を 期 するためにも 原 木 シイタケ 等 きのこ 類 栽 培 の 復 活 再 生 に 力 を 注 ぐ 必 要 がある このため 本 事 業 では 原 木 シイタケを 中 心 -4-
にきのこ 類 の 栽 培 技 術 と 経 営 の 向 上 ならびに 安 定 需 給 を 図 ることを 目 的 に 長 年 の 調 査 研 究 に 基 づき 生 産 者 ならびに 消 費 者 の 視 座 に 立 ってきめ 細 かい 普 及 指 導 を 行 う 併 せて 乾 シイタケの 生 産 流 通 における 付 加 価 値 の 向 上 を 図 るため 全 国 10 県 の 生 産 者 が 参 加 する 格 付 共 販 事 業 に 協 力 する (ウ)きのこ 栽 培 担 い 手 の 養 成 研 修 持 続 可 能 なシイタケ 等 食 用 きのこ 類 の 環 境 保 全 型 循 環 型 原 木 栽 培 に 意 欲 的 に 取 り 組 む 技 能 と 知 識 を 有 する 後 継 者 ならびに 地 域 におけるリーダー 的 な 技 術 指 導 者 等 の 人 材 の 育 成 を 図 ることを 目 的 に 受 講 を 希 望 する 研 修 生 ( 年 齢 学 歴 性 別 は 不 問 )に 対 して 1 年 あるいは 半 年 の 期 間 栽 培 経 営 に 必 要 な 実 習 や 教 科 学 習 指 導 を 行 う ま た 地 方 公 共 団 体 等 が 実 施 する 当 該 人 材 育 成 事 業 に 参 画 協 力 する (エ) 品 評 会 及 びきのこ 祭 り 等 の 開 催 本 事 業 では 国 産 原 木 シイタケの 生 産 振 興 と 安 定 需 給 の 推 進 を 目 的 に 生 産 意 欲 の 高 揚 と 高 品 質 高 収 量 生 産 技 術 の 研 鑚 および 生 消 交 流 を 図 るための 場 として 品 評 会 また きのこ 類 が 持 つ 多 様 な 機 能 や 役 割 について 啓 発 することで 消 費 を 喚 起 し 優 良 な 食 材 としての 利 用 促 進 による 国 民 の 健 康 増 進 を 図 る 場 としてきのこ 祭 り 等 を 開 催 ( 共 催 及 び 協 賛 を 含 む)する 2.その 他 の 調 査 研 究 事 業 1)ヒノキ 木 粉 の 飼 料 化 に 用 いる 食 用 担 子 菌 (きのこ)の 選 抜 及 び 家 畜 飼 料 評 価 に 必 要 な 食 用 担 子 菌 処 理 木 粉 の 調 整 ( 岡 山 大 学 委 託 事 業 ) 本 調 査 研 究 では 従 来 不 向 きとされているヒノキ 木 粉 栽 培 に 適 するきのこ 種 を 選 抜 するとともに 生 産 後 の 廃 菌 床 を 高 機 能 家 畜 飼 料 やペットサプリメントとしての 活 用 を 図 るための 研 究 開 発 を 行 う 3. 福 島 原 発 事 故 による 放 射 能 汚 染 問 題 への 対 応 と 原 木 シイタケ 栽 培 の 推 進 原 木 シイタケ 栽 培 のほだ 場 の 除 染 および 安 全 な 原 木 の 供 給 体 制 等 の 整 備 を 国 地 方 自 治 体 関 係 団 体 および 生 産 者 団 体 と 連 携 しながら 進 め 一 日 も 早 い 産 地 の 復 興 に 努 -5-
める また 原 木 シイタケに 対 する 消 費 者 の 不 安 を 解 消 するために 生 産 物 の 放 射 能 濃 度 の 徹 底 調 査 を 要 請 するとともに 被 災 生 産 者 に 対 して 迅 速 に 損 害 賠 償 が 行 われる よう 関 連 機 関 に 働 きかける 4. 菌 蕈 誌 の 編 集 発 行 シイタケ 等 きのこ 類 の 原 木 栽 培 の 振 興 と 消 費 の 拡 大 に 資 するため それらの 栽 培 技 術 産 地 情 勢 内 外 情 勢 市 況 食 味 特 性 効 用 および 料 理 レシピ 等 に 関 する 諸 情 報 を 発 信 するための 媒 体 として 月 刊 きのこ 専 門 誌 菌 蕈 を 編 集 発 行 する 5. 知 的 財 産 権 等 の 実 用 化 と 財 務 基 盤 の 強 化 本 財 団 の 財 務 基 盤 を 強 化 するため 従 来 の 研 究 成 果 として 取 得 している 知 的 財 産 権 等 の 実 施 許 諾 による 増 収 を 図 るとともに 寄 附 金 や 研 究 補 助 金 等 の 確 保 に 努 める -6-