第 1 回 東 京 国 際 金 融 センターの 推 進 に 関 する 懇 談 会 議 事 要 旨 日 時 場 所 出 席 者 平 成 26 年 10 月 10 日 ( 金 ) 午 前 10 時 30 分 ~ 正 午 日 本 証 券 業 協 会 第 1 会 議 室 伊 藤 座 長 ほか 各 委 員 議 事 概 要 1. 伊 藤 座 長 挨 拶 2. 国 際 金 融 センターとしての 東 京 市 場 の 現 状 について ゲストスピーカー 野 村 證 券 執 行 役 員 寺 口 智 之 氏 3. 意 見 交 換 4. 懇 談 会 の 運 営 及 び 今 後 の 進 め 方 について( 案 ) 1. 伊 藤 座 長 挨 拶 我 が 国 経 済 は 大 胆 な 金 融 政 策 と 機 動 的 な 財 政 政 策 により 力 強 さを 取 り 戻 しつつある この 経 済 の 好 循 環 をより 一 層 確 かなものとし 持 続 的 な 成 長 をもたらすためには 金 融 資 本 市 場 がその 役 割 を 十 分 に 果 たし しっかりと 貢 献 していくことが 必 要 であると 考 える こうした 中 政 府 を 始 めとする 各 方 面 から 東 京 市 場 について 国 際 金 融 センターとして の 地 位 確 立 を 求 める 提 言 が 出 されており 具 体 的 には アジアナンバーワン アジアで トップクラス の 金 融 資 本 市 場 といった 目 標 が 掲 げられている 我 が 国 経 済 がアジア 諸 国 と 深 い 関 係 にあることを 踏 まえると まずは アジアでナンバー ワンの 国 際 金 融 センターの 地 位 を 目 指 すことは 合 理 的 であると 考 える アジアでナンバーワン とは 多 義 的 な 言 葉 であるが 国 際 金 融 センターという 視 点 か らは 海 外 の 市 場 関 係 者 から アジアで 最 も 選 ばれる 市 場 と 捉 えることができる すなわち 海 外 投 資 家 からは 資 金 運 用 の 場 として 海 外 発 行 体 からは 資 金 調 達 の 場 として 海 外 金 融 機 関 運 用 会 社 からは ビジネスの 場 として アジアにおいて 最 も 選 ばれる 市 場 と 捉 えることができる 1
一 方 で 東 京 市 場 は 外 - 外 (そと-そと) 取 引 を 中 心 とするシンガポールや 香 港 な どの 他 の 国 際 金 融 センターとは 異 なり アジア 随 一 の 経 済 規 模 を 支 える 国 内 企 業 群 や1,600 兆 円 強 の 個 人 金 融 資 産 を 背 景 とした 国 内 取 引 に 厚 みを 持 つという 強 みを 持 っており こう した 強 みを 最 大 限 に 活 かすことが 期 待 される 具 体 的 には 多 くの 魅 力 ある 国 内 企 業 への 投 資 や 豊 富 な 金 融 資 産 の 運 用 の 場 として これまで 以 上 に 機 能 を 発 揮 し 市 場 としての 魅 力 を 高 める 必 要 がある 東 京 市 場 が 国 際 金 融 センターとしての 地 位 を 確 立 するための 提 言 は これまでも 各 方 面 からなされており 今 や 構 想 の 段 階 から 具 体 的 施 策 の 実 現 に 向 けた 検 討 のステージになっ ている 従 って 本 懇 談 会 では 証 券 界 運 用 業 界 における 金 融 証 券 の 専 門 的 知 見 を 活 かし マーケットを 中 心 に 個 々の 施 策 の 優 先 順 位 を 付 け 各 施 策 の 実 現 のための 手 立 てやプロセ スについてスピード 感 を 持 って 検 討 を 行 って 参 りたい 各 施 策 のうち 各 関 係 機 関 及 び 業 界 が 自 ら 取 り 組 むべきものについては 速 やかな 取 組 みを 目 指 すとともに 行 政 機 関 や 関 係 機 関 にお 願 いすべき 事 項 については 積 極 的 に 働 き かけを 行 って 参 りたい また これらの 取 組 み 働 きかけについては グローバルな 発 信 にも 努 めて 参 りたい 本 懇 談 会 における 取 組 みにつきましては 委 員 及 びオブザーバーの 方 からの 活 発 なご 議 論 はもとより 証 券 運 用 業 界 関 係 者 からの 積 極 的 なご 提 案 をお 願 いしたい 2. 国 際 金 融 センターとしての 東 京 市 場 の 現 状 について 野 村 證 券 執 行 役 員 寺 口 智 之 氏 から 資 料 3に 基 づき 国 際 金 融 センターとしての 香 港 市 場 及 びシンガポール 市 場 の 取 組 み 及 び 東 京 市 場 の 現 状 について 説 明 が 行 われた 後 次 のとおり 東 京 市 場 の 課 題 等 について 意 見 交 換 が 行 われた 主 な 説 明 のポイント 1 国 際 金 融 センターとしての 評 価 2 国 際 的 に 競 争 力 のある 香 港 シンガポールの 税 制 3 香 港 シンガポールのビジネス 環 境 の 優 位 性 4 金 融 人 材 の 教 育 に 力 を 入 れるシンガポー ル 5 アジアにおける 女 性 の 社 会 進 出 6 機 関 投 資 家 の 香 港 シンガポールへの 集 積 7 日 本 株 の 投 資 家 の 変 化 8 運 用 拠 点 としての 東 京 のプレゼンスの 低 下 9 存 在 感 が 増 すアジア 株 2
3. 意 見 交 換 (1) 本 懇 談 会 における 今 後 の 議 論 について( 総 論 ) 国 際 金 融 センターとして 日 本 が 海 外 の 市 場 参 加 者 から 選 ばれるために 対 応 するべきこと は 既 に 各 方 面 から 公 表 された 提 言 によりほぼコンセンサスが 得 られている したがって 本 懇 談 会 では 一 から 何 をやるべきかの 議 論 ではなく 具 体 的 な 行 動 を 推 進 していくため の 議 論 をすべきである 東 京 市 場 の 国 際 金 融 センター 化 に 関 する 様 々な 施 策 には NISAやGPIFに 係 るものなど 政 府 が 中 心 になって 努 力 しているものがある 一 方 政 府 も 協 力 しているが コーポレートガ バナンスの 整 備 決 済 システムの 改 革 やリスクマネーの 供 給 等 のように 民 間 が 主 体 的 に 対 応 するべきこともある 日 本 株 の 運 用 拠 点 が 東 京 から 香 港 やシンガポールに 移 転 しており そこでは アジア 株 を 一 体 として 運 用 している 東 京 を 国 際 金 融 センターにするためには 東 京 市 場 を 日 本 株 だけでなくアジア 株 のセンターにしなければならない 国 際 的 に 見 て 日 本 の 株 式 市 場 のみが 中 長 期 的 に 右 肩 下 がりの 傾 向 にある 投 資 家 が 報 われない 市 場 が 発 展 するわけがなく まずは 中 長 期 的 に 投 資 家 が 報 われる 市 場 という 基 本 的 な 条 件 を 整 える 必 要 がある 住 みやすさなどのような 日 本 の 強 みも 再 認 識 したうえで 検 討 を 行 うべきである (2) シンガポール 香 港 等 との 比 較 について シンガポール 等 における 取 組 みについては 日 本 にも 真 似 できること 真 似 できないこ と 学 ぶべきこと 学 ぶべきでないことがある 空 港 アクセスの 向 上 ナニ 等 の 受 入 れ に 伴 うビザの 緩 和 英 語 教 育 の 強 化 などは 日 本 でも 対 応 できることの 一 例 ではないか シンガポールで 実 施 されているから 日 本 でも 導 入 するべきと 主 張 したとしても 国 民 か ら 納 得 は 得 られないのではないか 例 えば シンガポールは 金 融 業 を 格 別 に 優 遇 している が それは 日 本 では 現 実 的 でないかもしれない 日 本 を 国 際 金 融 センター 化 するにあたり 香 港 とシンガポールが 比 較 対 象 とされるが 両 国 との 歴 史 文 化 的 政 治 的 な 背 景 の 違 いも 3
踏 まえつつ 税 制 や 労 働 環 境 等 の 実 態 を 深 く 分 析 したうえで どこの 部 分 で 競 争 していく か 議 論 する 必 要 がある グローバルな 投 資 家 は 情 報 があるところに 集 まる 裏 を 返 すと グローバルな 投 資 家 が 集 まるところに 情 報 が 寄 せられる これをよく 利 用 できているのがシンガポールである シンガポールではグローバルな 会 社 のCEOが 集 まり IRやビジネスネットワーキングが 盛 ん に 行 われている (3) 金 融 機 関 運 用 会 社 の 課 題 について 日 本 の 資 産 運 用 会 社 の 運 用 力 販 売 会 社 の 回 転 売 買 や 手 数 料 ビジネスへの 過 度 の 依 存 営 業 と 運 用 の 不 健 全 な 関 係 といった 課 題 にも 取 り 組 むことが 重 要 である 日 本 はブローカーの 数 に 比 べて 機 関 投 資 家 の 数 が 少 ない シンガポールでは まずファ ンドマネージャーとプライベートバンクを 集 めることで 機 関 投 資 家 を 呼 び 込 むことに 成 功 している 1600 兆 円 強 の 個 人 金 融 資 産 の 話 がよく 出 るが 個 人 金 融 資 産 の 運 用 や 販 売 のビジネスの みではなく 個 人 投 資 家 と 証 券 市 場 の 間 に 入 る 機 関 投 資 家 の 多 様 化 育 成 も 重 要 な 課 題 で ある 日 本 の 投 資 運 用 会 社 について 運 用 のスキル 自 体 が 中 々 進 歩 しない 状 況 に 危 機 感 をもっ ている 結 果 的 に 人 材 の 調 達 システムインフラや 英 語 の 問 題 等 が 総 合 的 に 重 なり 運 用 拠 点 が 日 本 の 外 に 出 て 行 ってしまっている 投 資 信 託 協 会 の 正 会 員 ( 投 資 信 託 及 びJ-REITの 運 用 会 社 )は その 約 40%が 外 資 系 の 投 資 運 用 会 社 であり こうした 背 景 もあって 日 本 の 投 資 家 には 実 に 様 々な 金 融 商 品 が 提 供 さ れている 他 方 彼 らの 運 用 のオペレーションは 日 本 ではなく 海 外 で 行 われているという 実 態 もあり 日 本 は 運 用 の 拠 点 というより 販 売 の 拠 点 となっている 日 本 の 投 資 信 託 については その 運 用 が 外 部 委 託 となっているものが 多 く 運 用 会 社 は 実 際 には 販 売 補 助 部 隊 となっていて 日 本 の 顧 客 は 最 終 的 には 海 外 のサブアドバイザーの 4
商 品 を 買 っていることが 多 い 日 本 の 投 資 運 用 会 社 のパフォーマンスが 全 体 的 に 悪 いと 言 われるが その 理 由 を 具 体 的 に 詰 めていくことが これまであまりなかったように 思 うので この 点 について 検 証 が 必 要 である 日 本 の 外 資 系 金 融 機 関 は これまで 日 本 のローカルな 環 境 に 合 わせてビジネスを 行 って きたが アベノミクス 以 降 は 状 況 が 変 わってきていて 国 際 的 な 視 点 に 立 って 実 務 に 取 り 組 むようになってきた 例 えば トレーディングのオペレーションはアジアパシフィック 全 体 で 見 るようになっている (4) 日 本 の 金 融 規 制 市 場 制 度 について 日 本 の 規 制 や 制 度 が 高 度 に 確 立 し 根 付 いていることが グローバル 市 場 の 中 での 東 京 市 場 の 役 割 を 制 約 している 日 本 の 場 合 は ファイアウォール 規 制 によって 業 態 の 異 なるグループ 会 社 間 での 情 報 交 換 が 円 滑 に 行 えないため 外 資 系 金 融 機 関 が 証 券 と 銀 行 の 総 合 責 任 者 を 日 本 ではなく 香 港 やシンガポールに 設 置 するといった 状 況 がある その 他 にも 海 外 の 金 融 サービスを 導 入 するときに 特 別 な 登 録 許 可 が 求 められるといった 状 況 は 国 際 金 融 センター 化 の 妨 げと なる 一 例 といえる 開 示 制 度 についても 日 本 は 独 自 の 目 論 見 書 制 度 を 有 している 一 方 世 界 では 目 論 見 書 の 共 通 化 を 行 おうという 流 れにある 日 本 の 弱 みとして 日 本 がナショナルマーケットとして 出 来 上 がってしまっており グ ローバルマーケットとして 東 京 を 作 り 変 えていくために 様 々なものを 見 直 していく 必 要 が ある 点 が 挙 げられる 例 えば 決 済 インフラも 日 本 独 自 ではなく アジアを 視 野 に 入 れて どのように 構 築 していくのかを 考 えていかなければならない また グローバルな 視 点 に 立 った 規 制 の 在 り 方 を 考 える 必 要 もある 日 本 では 国 際 的 な 情 勢 に 対 応 するために 規 制 を 考 えようとしても 個 人 投 資 家 をどの 5
ように 保 護 するのかという 観 点 がどうしても 離 れない このことが 機 関 投 資 家 とその 仲 介 者 だけの 市 場 を 作 ることの 妨 げとなっている プロとアマを 分 断 するような 規 制 の 仕 組 みをつくることも 考 える 必 要 があるのではないか シンガポールでは 規 制 緩 和 等 により 金 融 機 関 の 参 入 を 促 進 しているが その 一 方 で 参 入 してくる 金 融 機 関 の 質 を 担 保 するための 規 制 を 様 々な 形 で 実 施 しているようである 日 本 においても 金 融 機 関 の 参 入 を 促 進 するためのインセンティブ 及 び 質 を 担 保 するための 規 制 のバランスについては よく 考 える 必 要 がある ルクセンブルクでは ファンドパスポート 制 度 やプラクティカルな 規 制 を 導 入 し 信 頼 性 を 向 上 させながら 規 制 コストを 下 げるという 取 組 みにより 国 際 金 融 センターとしての 地 位 を 確 立 維 持 している (5) 英 語 について 日 本 のマーケットにおいて 英 語 は 大 きな 課 題 である 例 えば 香 港 やシンガポールでは 行 政 当 局 に 英 語 の 資 料 を 提 出 すれば 受 理 してくれるが 日 本 では 日 本 語 で 資 料 を 提 出 しな ければならない 英 語 については システムという 面 でも 世 界 的 に 英 語 で 管 理 されている 状 況 があること を 認 識 しておく 必 要 がある 例 えば 弊 社 グループでは 日 本 以 外 は 社 内 のレポートや 運 用 マニュアル 等 は すべて1つの 英 語 のプラットフォームで 動 いている これにより 人 及 び 組 織 が 国 を 超 えて 対 応 できるようになっている 国 内 人 材 を 育 成 するだけでなく 国 外 人 材 も 取 り 組 んでいく 必 要 があるので 英 語 は 必 須 になる (6) 人 材 育 成 金 融 教 育 について 海 外 の 人 材 の 呼 び 込 みも 重 要 であるが 既 に 日 本 から 日 本 株 やアジア 株 の 運 用 をして いる 優 秀 な 人 材 が 海 外 に 流 出 しており その 対 策 も 考 える 必 要 がある 日 本 の 大 学 等 の 学 校 の 保 守 性 について 危 機 感 がある 引 き 合 いとして 中 国 の 事 例 を 紹 介 6
するが 長 江 商 学 院 では スイスのIMDビジネススクールと 共 に 新 たにプログラムを 創 設 し ており 授 業 は 主 に 英 語 で 行 われ 多 くのCEOを 輩 出 している 教 授 陣 にはハーバード 大 学 やペンシルバニア 大 学 ウォートン スクールの 出 身 が 多 いと 聞 いている シンガポールの 大 学 で 提 供 されている 金 融 関 係 のプログラムの 中 には アジアの 金 融 人 材 をシンガポールに 集 積 させ 将 来 的 な 金 融 人 材 同 士 のネットワークを 形 成 させることで シンガポールにとってメリットがある 環 境 を 創 り 出 すという 中 長 期 的 な 意 図 が 込 められた ものもある 国 際 金 融 センターの 構 想 については 短 期 的 な 施 策 長 期 的 な 施 策 の 両 方 があ るが 時 間 軸 の 長 い 取 組 みについても 着 々と 行 っていく 必 要 がある 日 本 における 投 資 運 用 力 を 向 上 させるという 観 点 からは 大 学 や 大 学 院 において ファ ンドマネージャーとなるための 教 育 や 研 修 を 早 くから 始 める 必 要 がある 日 本 の 大 学 や 大 学 院 にはファイナンスに 関 する 講 座 はあるが その 内 容 は 財 務 経 済 関 連 等 を 扱 うものが 多 く アセットマネジメントに 関 するものは 少 ない そのため 日 本 でファンドマネー ジャーになろうとすると 会 社 に 勤 務 してからのトレーニングが 必 要 であり 運 用 者 として のキャリアの 開 始 が30 歳 前 後 になってしまうが これでは 遅 すぎるし 良 い 運 用 者 は 生 ま れにくい 4. 懇 談 会 の 運 営 及 び 今 後 の 進 め 方 について( 案 ) 事 務 局 から 資 料 1 及 び2に 基 づき 本 懇 談 会 の 運 営 及 び 今 後 の 進 め 方 について 説 明 が 行 われ 本 懇 談 会 の 運 営 等 を 資 料 1 及 び2のとおり 行 うことが 了 承 された ( 配 布 資 料 ) 東 京 国 際 金 融 センターの 推 進 に 関 する 懇 談 会 の 運 営 について( 案 ) 本 懇 談 会 の 今 後 の 進 め 方 について( 案 ) 香 港 市 場 シンガポール 市 場 の 国 際 金 融 センターとしての 取 組 みと 東 京 市 場 の 現 状 東 京 国 際 金 融 センター の 実 現 に 向 けた 各 種 提 言 国 際 金 融 センターの 比 較 以 上 7