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法 曹 養 成 制 度 改 革 推 進 会 議 御 中 この 度 司 法 試 験 予 備 試 験 制 度 に 関 する 緊 急 の 提 言 をとりまとめましたので お 届 け 致 します ご 査 収 いただけますと 幸 いです なお この 提 言 は 法 務 大 臣 及 び 文 部 科 学 大 臣 にもお 届 け 致 します 2014 年 6 月 9 日 京 都 大 学 大 学 院 法 学 研 究 科 法 曹 養 成 専 攻 長 洲 崎 博 史 慶 應 義 塾 大 学 大 学 院 法 務 研 究 科 委 員 長 片 山 直 也 中 央 大 学 大 学 院 法 務 研 究 科 長 藤 原 靜 雄 東 京 大 学 大 学 院 法 学 政 治 学 研 究 科 法 曹 養 成 専 攻 長 白 石 忠 志 一 橋 大 学 大 学 院 法 学 研 究 科 法 務 専 攻 長 阪 口 正 二 郎 早 稲 田 大 学 大 学 院 法 務 研 究 科 長 石 田 眞 (50 音 順 ) 129

司 法 試 験 予 備 試 験 制 度 に 関 する 緊 急 の 提 言 ( 要 旨 ) 法 科 大 学 院 を 中 核 とするプロセスとしての 法 曹 養 成 制 度 は 旧 司 法 試 験 という 点 による 選 抜 を 重 視 した 制 度 の 弊 害 を 克 服 するために 導 入 され 制 度 発 足 以 来 高 い 志 と 問 題 発 見 解 決 型 の 思 考 力 等 を 身 に 付 けた 多 くの 優 れた 修 了 者 を 法 曹 として 社 会 の 様 々な 分 野 に 送 り 出 してきた しかし 他 方 で 司 法 試 験 予 備 試 験 は 本 来 経 済 的 事 情 や 既 に 実 社 会 で 十 分 な 経 験 を 積 んでいるなどの 理 由 により 法 科 大 学 院 を 経 由 しない 者 にも 法 曹 資 格 取 得 のための 適 切 な 途 を 確 保 する 例 外 的 な 制 度 であるにもかかわらず 受 験 者 数 および 合 格 者 数 を 増 加 させ 続 けており 予 備 試 験 の 合 格 者 数 に 占 める 法 科 大 学 院 生 や 学 部 学 生 の 割 合 も 年 を 追 うごと に 増 え 続 け 制 度 趣 旨 に 反 する 状 況 を 招 いている このような 状 況 を 放 置 した 場 合 プロセスとしての 法 曹 養 成 制 度 が 瓦 解 し 再 び 司 法 試 験 という 点 のみによる 選 抜 を 重 視 した 制 度 に 回 帰 する 危 険 がある こうした 事 態 を 避 ける ためには 次 のような 方 策 を 講 じることが 必 要 である 第 一 に 予 備 試 験 が 法 科 大 学 院 修 了 者 と 同 等 の 学 識 や 能 力 等 を 有 するか 否 かを 判 定 す るにふさわしいものとなるよう 試 験 科 目 および 出 題 内 容 方 法 等 について 見 直 しを 行 う こと 第 二 に 予 備 試 験 の 制 度 趣 旨 に 即 した 受 験 資 格 を 設 けること 第 三 に 法 科 大 学 院 教 育 の 改 善 が 成 果 を 示 し また 上 記 のような 方 策 が 検 討 実 施 され るまでの 間 予 備 試 験 の 合 格 者 数 がさらに 拡 大 することのないよう 運 用 されること 私 どもは 法 科 大 学 院 の 開 設 以 来 10 年 にわたって 法 曹 養 成 教 育 に 力 を 尽 くしてきたが 今 後 もその 教 育 の 質 の 向 上 と 制 度 の 安 定 のために 最 大 限 の 改 革 に 努 める 覚 悟 であり そ のためにも 予 備 試 験 制 度 およびその 運 用 に 関 する 改 善 策 の 検 討 が 行 われることを 切 に 願 う 2014 年 6 月 9 日 京 都 大 学 大 学 院 法 学 研 究 科 法 曹 養 成 専 攻 長 洲 崎 博 史 慶 應 義 塾 大 学 大 学 院 法 務 研 究 科 委 員 長 片 山 直 也 中 央 大 学 大 学 院 法 務 研 究 科 長 藤 原 靜 雄 東 京 大 学 大 学 院 法 学 政 治 学 研 究 科 法 曹 養 成 専 攻 長 白 石 忠 志 一 橋 大 学 大 学 院 法 学 研 究 科 法 務 専 攻 長 阪 口 正 二 郎 早 稲 田 大 学 大 学 院 法 務 研 究 科 長 石 田 眞 (50 音 順 ) 130

司 法 試 験 予 備 試 験 制 度 に 関 する 緊 急 の 提 言 1.はじめに 1949 年 以 来 60 年 余 りにわたって 実 施 された 旧 司 法 試 験 は 合 格 率 が 著 しく 低 く また 合 格 する 場 合 にも 長 期 間 を 要 したことから 現 代 の 科 挙 とさえ 呼 ばれた その 過 熱 した 受 験 競 争 の 中 で 多 くの 受 験 者 が 論 点 解 答 例 暗 記 型 の 学 習 方 法 に 陥 り その 結 果 各 受 験 者 の 理 解 力 論 理 的 思 考 力 あるいは 文 章 作 成 能 力 等 を 実 質 的 に 評 価 することが 困 難 になるほどであったといわれる プロセスとしての 法 曹 養 成 制 度 は 旧 司 法 試 験 制 度 の 下 において 生 じた このような 弊 害 を 克 服 し 法 の 支 配 の 実 現 を 図 り 国 民 の 多 様 な 法 的 ニーズに 応 えるべく 質 量 ともに 豊 かな 法 曹 を 安 定 的 に 輩 出 するために 導 入 されたものである そして その 中 核 をなす 法 科 大 学 院 は 通 過 点 たる 司 法 試 験 の 合 格 のみを 目 指 す 教 育 に 堕 することなく 21 世 紀 の 社 会 の 在 り 方 を 見 すえた 広 い 視 野 から 実 務 と 理 論 の 架 橋 を 図 る 教 育 課 程 を 整 備 し 双 方 向 多 方 向 型 授 業 など これまでにない 効 果 的 で 充 実 した 教 育 方 法 によって 高 い 志 と 問 題 発 見 解 決 型 の 思 考 力 等 を 身 に 付 けた 多 くの 優 れた 修 了 者 を 法 曹 として 社 会 の 様 々な 分 野 に 送 り 出 してきた 1 しかし 遺 憾 ながら 今 日 法 科 大 学 院 を 中 核 とするプロセスとしての 法 曹 養 成 制 度 は その 基 盤 を 揺 るがしかねない 重 大 な 局 面 を 迎 えていると 言 わざるを 得 ない 法 科 大 学 院 の 創 設 当 初 多 くの 者 が 法 曹 を 目 指 して 法 科 大 学 院 を 志 願 したが 近 年 志 願 者 数 の 減 少 が 続 き 2014 年 度 入 学 者 選 抜 における 志 願 者 数 はのべ 11450 人 2014 年 4 月 の 入 学 者 数 は 2272 人 (うち 未 修 者 811 人 )に 止 まっている 2 このような 事 態 の 背 景 には 法 科 大 学 院 修 了 者 の 司 法 試 験 合 格 率 が 低 迷 してきたことや 法 曹 の 活 動 領 域 の 拡 大 が 当 初 の 予 想 ほどではないことなど さまざまな 問 題 があり 法 科 大 学 院 としても 教 育 の 質 の 改 善 に 向 けて 真 摯 に 取 り 組 む 必 要 がある しかし 近 年 の 法 科 大 学 院 の 志 願 者 の 減 少 は これまで 一 定 の 教 育 成 果 を 挙 げてきた 法 科 大 学 院 にも 及 んで 1 これまで 法 科 大 学 院 を 修 了 して 新 司 法 試 験 に 合 格 した 者 の 総 数 は 15078 人 である 2010 年 度 修 了 者 の 累 積 合 格 率 は 全 法 科 大 学 院 の 平 均 で 43.9%であるが 一 橋 大 学 (82.6%) 神 戸 大 学 (81.3%) 京 都 大 学 (79.4%) 慶 應 義 塾 大 学 (75.9%) および 東 京 大 学 (73.1%) は 既 に 70%を 超 える 累 積 合 格 率 を 示 している また 地 方 公 共 団 体 における 法 曹 有 資 格 者 の 常 勤 職 員 の 採 用 実 績 は 2004 年 の 2 名 から 2013 年 には 32 名 に 増 えている(2014 年 3 月 現 在 での 法 曹 有 資 格 者 の 常 勤 職 員 の 総 数 は 64 名 になっている) 企 業 内 弁 護 士 の 数 は 2001 年 の 66 名 から 2013 年 には 965 名 になっている 多 様 な 分 野 での 修 了 者 の 活 躍 につい ては 法 科 大 学 院 協 会 ホームページ http://lskyokai.jp/を 参 照 2 2015 年 度 に 法 科 大 学 院 入 学 を 目 指 す 者 が 受 験 する 適 性 試 験 の 志 願 者 数 は 適 性 試 験 管 理 委 員 会 が 公 表 した 速 報 値 によれば 第 1 回 適 性 試 験 (2014 年 5 月 25 日 実 施 )が 3599 人 第 2 回 適 性 試 験 (2014 年 6 月 8 日 実 施 )が 4070 人 であり いずれも 対 前 年 比 18.0% 減 に なっている 1 131

おり その 大 きな 原 因 として 司 法 試 験 予 備 試 験 ( 以 下 予 備 試 験 という )の 問 題 があ ると 考 えられる 予 備 試 験 は その 受 験 資 格 に 制 限 がないこともあり 2011 年 に 開 始 されて 以 降 拡 大 の 一 途 を 辿 っており 本 年 の 志 願 者 数 は 12622 人 となり 既 に 法 科 大 学 院 の 志 願 者 数 を 超 え ている 私 どもは このような 事 態 を 放 置 した 場 合 プロセスとしての 法 曹 養 成 制 度 が 瓦 解 し 再 び 司 法 試 験 という 点 のみによる 選 抜 を 重 視 した 制 度 に 回 帰 するのではないかとい う 強 い 危 機 感 を 共 有 している そこで 今 回 法 曹 養 成 教 育 に 責 任 を 有 する 法 科 大 学 院 の 立 場 から 現 行 の 予 備 試 験 制 度 の 問 題 点 を 指 摘 し その 改 善 策 について 緊 急 に 提 言 する こととした 2. 予 備 試 験 制 度 の 本 来 の 趣 旨 と 運 用 の 現 状 法 科 大 学 院 を 中 核 とする 現 行 の 法 曹 養 成 制 度 の 下 で 予 備 試 験 制 度 は 本 来 経 済 的 事 情 や 既 に 実 社 会 で 十 分 な 経 験 を 積 んでいるなどの 理 由 により 法 科 大 学 院 を 経 由 しない 者 にも 法 曹 資 格 取 得 のための 適 切 な 途 を 確 保 ( 司 法 制 度 改 革 審 議 会 司 法 制 度 改 革 審 議 会 意 見 書 -21 世 紀 の 日 本 を 支 える 司 法 制 度 - 2001 年 6 月 12 日 以 下 意 見 書 という )すると いう 例 外 的 な 役 割 を 果 たすに 止 まるものである したがって このような 途 の 確 保 に 当 た っては 当 然 法 科 大 学 院 を 中 核 とする 新 たな 法 曹 養 成 制 度 の 趣 旨 を 損 ねることのないよ う 配 慮 ( 意 見 書 )することが 必 要 である しかし 実 際 には 予 備 試 験 の 受 験 資 格 に 制 限 が 付 されなかったことから その 受 験 者 数 および 合 格 者 数 は 年 を 追 うごとに 増 え 続 け 2011 年 の 予 備 試 験 受 験 者 は 6477 人 合 格 者 が 116 人 であったが 2013 年 には 受 験 者 が 9224 人 (1.4 倍 ) 合 格 者 が 351 人 (3.0 倍 )と なっている また 法 学 部 などに 在 籍 する 学 部 学 生 や 法 科 大 学 院 に 現 に 在 籍 している 学 生 が 多 く 予 備 試 験 を 受 験 し 合 格 するという 当 初 予 定 されていなかった 事 態 を 招 いている 3 2011 年 に 予 備 試 験 を 受 験 した 法 科 大 学 院 生 は 198 人 であったが 2013 年 には 1497 人 となり 1299 人 の 増 加 (7.6 倍 )を 示 し 学 部 学 生 については 2011 年 の 受 験 者 が 1236 人 であったが 2013 年 には 2476 人 となり 1240 人 の 伸 び(2.0 倍 )である つまり 予 備 試 験 受 験 者 の 増 加 数 2747 人 のうち 実 に 92.4%を 法 科 大 学 院 生 と 学 部 学 生 の 受 験 者 が 占 めていることにな る さらに 予 備 試 験 の 合 格 者 数 に 占 める 法 科 大 学 院 生 および 学 部 学 生 の 割 合 も 増 えてきて いる 2011 年 においては 合 格 者 のうち 法 科 大 学 院 生 の 占 める 割 合 が 5.2%(6 人 ) 学 部 学 生 の 占 める 割 合 が 33.6%(39 人 )であったものが 2013 年 には 法 科 大 学 院 生 が 46.7% (164 人 ) 学 部 学 生 が 30.5%(107 人 )を 占 めるに 至 っている しかも これら 予 備 試 験 に 合 格 した 法 科 大 学 院 生 および 学 部 学 生 が 在 籍 する 大 学 には 偏 りがあり 2013 年 の 予 備 試 3 以 下 の 数 値 は 予 備 試 験 出 願 時 に 出 願 者 が 自 己 申 告 したデータに 基 づいている 2 132

験 に 合 格 した 学 部 学 生 のうち 93 人 (86.9%)が また 法 科 大 学 院 生 のうち 115 人 (70.1%) が 私 ども6 大 学 に 在 籍 する 者 である そして 予 備 試 験 合 格 や 予 備 試 験 合 格 資 格 によ り 司 法 試 験 を 受 験 し 合 格 したことを 理 由 として 法 科 大 学 院 を 中 途 退 学 した 者 の 法 科 大 学 院 全 体 における 数 は 2013 年 度 で 33 人 ( 未 確 定 値 )に 及 んでいる こうした 状 況 を 背 景 として 法 学 部 や 法 科 大 学 院 において これからは 予 備 試 験 が 法 曹 になるための 途 として 主 流 になるのではないかという 憶 測 が 広 まったり 法 科 大 学 院 生 の 関 心 が 予 備 試 験 の 受 験 対 策 に 傾 斜 し 基 礎 法 学 隣 接 科 目 や 展 開 先 端 科 目 あるいは 臨 床 系 の 法 律 実 務 基 礎 科 目 といった 法 曹 にとって 必 要 な 科 目 を 幅 広 く 学 ぶ 意 欲 を 低 下 させ たりするなど プロセスとしての 法 曹 養 成 教 育 を 軽 視 する 傾 向 を 生 んでいることが 指 摘 さ れている 4 このように 本 来 法 科 大 学 院 に 進 学 し 充 実 した 教 育 を 受 けてしかるべき 者 の 多 くが 法 科 大 学 院 に 進 学 する 前 に あるいは 法 科 大 学 院 に 在 籍 しながら 予 備 試 験 を 受 験 してい る 状 況 は 予 備 試 験 制 度 の 本 来 の 趣 旨 に 反 しており しかも それによって 法 科 大 学 院 教 育 に 重 大 な 支 障 を 生 じさせる 危 険 を 招 いているとすれば 本 末 転 倒 であると 断 じざるを 得 ない 予 備 試 験 をめぐるこのような 状 況 は きわめて 深 刻 であり 私 どもは このままで は 法 学 研 究 者 と 法 律 実 務 家 が 互 いに 協 力 し 責 任 をもって これからの 法 曹 に 期 待 される 学 識 や 能 力 等 の 育 成 に 当 たる 教 育 の 場 それ 自 体 が 失 われてしまうのではないかという 重 大 な 危 機 感 を 有 している 3. 予 備 試 験 の 在 り 方 に 関 する 提 言 以 上 のような 現 状 に 鑑 みるならば プロセスとしての 法 曹 養 成 制 度 を 堅 持 するために 予 備 試 験 の 在 り 方 について 次 のような 方 策 を 講 じることが 必 要 である 第 一 に 予 備 試 験 の 試 験 科 目 および 出 題 内 容 方 法 等 について 法 科 大 学 院 を 修 了 した 者 と 同 等 の 学 識 や 能 力 等 を 有 するか 否 かを 判 定 するために よりふさわしいものに 見 直 す べきである そもそも 法 科 大 学 院 の 教 育 課 程 は その 全 体 が 法 曹 に 必 要 な 学 識 や 能 力 等 の 修 得 を 図 るためのものであり 法 科 大 学 院 の 修 了 者 と 同 等 の 学 識 及 びその 応 用 能 力 並 びに 法 律 に 関 する 実 務 の 基 礎 的 素 養 を 有 するかどうかを 判 定 する ( 司 法 試 験 法 第 5 条 第 1 項 )ことを 目 的 とする 予 備 試 験 もまた 法 科 大 学 院 の 教 育 課 程 全 体 を 通 じて 学 修 される 学 識 および 能 力 等 を 幅 広 く 確 認 する 試 験 でなければならないはずである しかし 実 際 には 法 科 大 学 院 を 修 了 するために 標 準 として 93 単 位 分 の 幅 広 い 学 修 を 行 うことが 求 められている 一 方 で 予 備 試 験 の 試 験 科 目 は 法 律 基 本 科 目 7 科 目 と 法 律 実 務 基 礎 科 目 が 中 心 となっている これは 法 科 大 学 院 の 修 了 者 と 同 等 の 学 識 および 能 力 等 を 有 するか 否 かを 判 定 する 試 験 として 適 当 とはいえず 展 開 先 端 科 目 などを 含 め 法 科 大 4 中 央 教 育 審 議 会 大 学 分 科 会 法 科 大 学 院 特 別 委 員 会 ( 第 61 回 )(2014 年 5 月 8 日 開 催 )の 資 料 4-1 および 資 料 4-2 を 参 照 3 133

学 院 の 教 育 課 程 全 体 を 通 じて 修 得 される 学 識 および 能 力 等 を 幅 広 く 判 定 することができる ように 試 験 科 目 の 拡 大 や 出 題 内 容 方 法 等 について 見 直 しを 行 うべきである 第 二 に 予 備 試 験 の 受 験 資 格 についても 見 直 しを 行 うべきである 予 備 試 験 を 本 来 の 趣 旨 に 即 したものにするためには 実 社 会 での 経 験 等 により 法 科 大 学 院 における 教 育 に 対 置 しうる 資 質 能 力 が 備 わっているかを 適 切 に 審 査 するような 機 会 を 設 ける ( 意 見 書 ) などして 経 済 的 事 情 や 既 に 実 社 会 で 十 分 な 経 験 を 積 んでいるなどの 理 由 により 法 科 大 学 院 を 経 由 しない 者 ( 意 見 書 )に 受 験 資 格 を 限 定 する 措 置 を 検 討 することが 必 要 である なお こうした 措 置 を 講 じる 場 合 には 法 科 大 学 院 に 進 学 する 者 の 負 担 をできる 限 り 軽 減 するために 経 済 的 支 援 を 充 実 させるとともに 特 に 優 れた 者 については 飛 び 入 学 早 期 卒 業 等 を 活 用 して 法 曹 養 成 のための 教 育 期 間 の 短 縮 を 図 るなど 法 科 大 学 院 に 進 学 し 充 実 したプロセス 教 育 を 受 けるためのハードルをできるだけ 低 くするように 法 科 大 学 院 側 の 改 善 も 必 要 である 以 上 のような 方 策 は プロセスとしての 法 曹 養 成 制 度 を 堅 持 し その 枠 組 みの 中 に 予 備 試 験 制 度 を 適 切 に 位 置 づけるために 必 要 なものであるが しかし これらの 方 策 の 導 入 に 当 たっては 十 分 な 検 討 期 間 を 要 し また 場 合 によっては 法 改 正 も 必 要 となる そしてそ れと 同 時 に プロセスとしての 法 曹 養 成 制 度 を 確 立 し 多 くの 有 為 の 人 材 を 法 曹 として 安 定 的 に 輩 出 することができるようにするためには 法 科 大 学 院 の 側 も 一 層 強 い 覚 悟 をも って 教 育 の 質 の 改 善 に 向 けた 取 組 を 行 わなければならない しかし そうした 間 にも 予 備 試 験 が 上 述 のような 問 題 を 抱 えたまま 実 施 され その 合 格 者 数 がこのまま 増 えていくとすれば 法 曹 養 成 制 度 の 改 善 に 向 けた 各 方 面 の 真 摯 な 努 力 を 無 にし プロセスとしての 法 曹 養 成 制 度 を 瓦 解 させる 危 険 すらある したがって 私 ど もは プロセスとしての 法 曹 養 成 制 度 を 安 定 させるために 各 方 面 において 検 討 や 取 組 が 行 われ その 成 果 が 示 されるようになるまでの 間 予 備 試 験 の 実 施 においても そのよう な 取 組 に 支 障 を 生 じさせないよう 最 大 限 の 配 慮 がなされ 予 備 試 験 の 合 格 者 数 がさらに 拡 大 することのないよう 運 用 されることが 肝 要 だと 考 える 4.むすび 法 科 大 学 院 の 開 設 以 来 10 年 私 どもは 法 曹 養 成 のための 教 育 に 力 を 尽 くし 多 くの 優 秀 な 修 了 者 を 法 曹 として 世 に 送 り 出 してきた その 間 各 方 面 から 法 科 大 学 院 教 育 に 対 す る 改 善 の 要 望 がなされ 私 どもは 教 育 の 質 の 向 上 と 制 度 の 安 定 のために 教 育 内 容 方 法 等 の 改 善 に 取 り 組 むとともに 入 学 定 員 の 削 減 をも 実 施 してきた 5 今 後 も それぞれの 立 場 で それぞれができる 最 大 限 の 改 革 に 努 めることが 不 可 欠 であると 認 識 している しか 5 法 科 大 学 院 全 体 では 2005 年 度 の 入 学 定 員 5825 人 から 2014 年 度 には 3809 人 に 減 少 している 4 134

し 現 在 法 科 大 学 院 が 直 面 している 問 題 は 大 学 の 自 主 的 な 教 育 改 善 の 努 力 だけで 対 処 し 得 るものではない 各 法 学 部 や 各 法 科 大 学 院 が 教 育 改 善 に 努 め よりよい 教 育 を 行 えば 行 うほど 法 学 部 生 や 法 科 大 学 院 生 が 予 備 試 験 を 受 験 し 合 格 していくという 事 実 は 法 曹 養 成 制 度 全 体 を 整 合 的 に 検 討 する 必 要 性 を 如 実 に 物 語 っているといってよい わが 国 の 将 来 を 見 すえるとき 法 の 支 配 を 実 現 し 国 民 の 多 様 な 法 的 ニーズに 応 えるた めに 優 れた 法 曹 を 安 定 的 に 輩 出 することが 不 可 欠 である そして そのためにプロセス としての 法 曹 養 成 制 度 を 堅 持 する 必 要 がある 以 上 私 どもは 教 育 に 対 する 自 らの 責 任 を 強 く 自 覚 するとともに 法 曹 養 成 制 度 全 体 が 健 全 に 機 能 するように 関 係 者 が 一 致 して 予 備 試 験 制 度 およびその 運 用 の 在 り 方 について 改 善 策 の 検 討 および 取 組 を 行 うよう 切 に 願 うものである 2014 年 6 月 9 日 京 都 大 学 大 学 院 法 学 研 究 科 法 曹 養 成 専 攻 長 洲 崎 博 史 慶 應 義 塾 大 学 大 学 院 法 務 研 究 科 委 員 長 片 山 直 也 中 央 大 学 大 学 院 法 務 研 究 科 長 藤 原 靜 雄 東 京 大 学 大 学 院 法 学 政 治 学 研 究 科 法 曹 養 成 専 攻 長 白 石 忠 志 一 橋 大 学 大 学 院 法 学 研 究 科 法 務 専 攻 長 阪 口 正 二 郎 早 稲 田 大 学 大 学 院 法 務 研 究 科 長 石 田 眞 (50 音 順 ) 5 135

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