( 構 成 ) Ⅰ. 高 潮 対 策 の 現 状 Ⅱ. 東 日 本 大 震 災 を 踏 まえた 津 波 対 策 Ⅲ. 外 力 設 定 について Ⅳ. 警 戒 避 難 体 制 の 充 実 Ⅴ. 砂 浜 の 保 全 ( 海 岸 侵 食 対 策 )

今 後 さらに 取 り 組 むべき 適 応 策 ( 高 潮 海 面 水 位 の 上 昇 )について 資 料 4

( 構 成 ) Ⅰ. 高 潮 対 策 の 現 状 Ⅱ. 東 日 本 大 震 災 を 踏 まえた 津 波 対 策 Ⅲ. 外 力 設 定 について Ⅳ. 警 戒 避 難 体 制 の 充 実 Ⅴ. 砂 浜 の 保 全 ( 海 岸 侵 食 対 策 )

Ⅰ. 高 潮 対 策 の 現 状

高 潮 の 特 徴 高 潮 は 主 に 気 圧 低 下 による 海 面 の 吸 い 上 げや 風 による 吹 き 寄 せにより 発 生 する 地 震 による 津 波 と 異 なり 潮 位 の 高 い 状 態 が 数 時 間 にわたり 発 生 する また 事 前 の 準 備 時 間 が 長 い 高 潮 による 潮 位 記 録 ( 平 成 16 年 高 松 高 潮 災 害 ) 気 圧 低 下 による 吸 い 上 げ 効 果 のイメージ 風 による 吹 き 寄 せ 効 果 のイメージ 津 波 による 潮 位 記 録 ( 平 成 15 年 十 勝 沖 地 震 ) 3

高 潮 による 主 な 被 害 ( 昭 和 34 年 伊 勢 湾 台 風 ) 我 が 国 においては これまで 高 潮 により 多 くの 被 害 が 発 生 している 例 えば 昭 和 34 年 伊 勢 湾 台 風 では 伊 勢 湾 周 辺 地 域 とりわけ 湾 奥 部 の 名 古 屋 市 を 中 心 とする 臨 海 低 平 地 を 中 心 に 死 者 行 方 不 明 者 5,012 人 住 家 全 半 壊 177,574 戸 の 甚 大 な 被 害 が 発 生 伊 勢 湾 台 風 による 高 潮 は 伊 勢 湾 全 体 の 海 面 を1 時 間 近 くにわたって2m 程 度 上 昇 させ 破 堤 総 延 長 は 湾 奥 部 低 平 地 を 中 心 に220 箇 所 33km 近 くに 及 んでいる 背 後 地 がゼロメートル 地 帯 であったことから 排 水 完 了 までに3ヶ 月 後 の12 月 下 旬 まで 要 した 海 岸 堤 防 の 被 災 状 況 流 木 による 住 家 への 被 害 状 況 ( 出 典 : 中 央 防 災 会 議 災 害 教 訓 の 継 承 に 関 する 専 門 調 査 会 資 料 ) 4

高 潮 による 主 な 被 害 ( 平 成 17 年 ハリケーン カトリーナ) 死 者 1,800 人 以 上 避 難 者 約 130 万 人 全 壊 家 屋 約 30 万 戸 約 960 億 ドルの 膨 大 な 被 害 が 発 生 ニューオリンズ 市 では 約 8 割 が 水 没 し 市 民 の 約 8 割 ( 約 40 万 人 )が 避 難 避 難 時 の 混 乱 や 孤 立 者 の 救 助 避 難 所 環 境 やライフラインの 途 絶 による 生 活 環 境 の 悪 化 衛 生 環 境 や 治 安 の 悪 化 など 災 害 対 応 において 数 多 くの 課 題 が 発 生 TROPICAL DEPR TROPICAL STORY CATEGORY 1 CATEGORY 2 CATEGORY 3 CATEGORY 4 CATEGORY 5 ニューオリンズ ( 出 典 :NOAAのHPに 一 部 加 筆 ) ハリケーン カトリーナ 進 路 ニューオリンズ 市 の 浸 水 状 況 ( 出 典 :FEMAのHPより) 湿 地 用 ボートによる 救 助 5

高 潮 による 主 な 被 害 ( 平 成 24 年 ハリケーン サンディ) 米 国 カナダで 死 者 132 名 (うちニューヨーク 市 内 で43 名 ) 大 規 模 な 停 電 事 業 所 停 止 等 により 大 都 市 の 中 枢 機 能 が 麻 痺 ニューヨークの 地 下 鉄 等 トンネル16 本 が 浸 水 する 等 の 甚 大 な 被 害 が 発 生 深 さ 約 40m のトンネル のほぼ 入 り 口 まで 浸 水 ハリケーン サンディでは 避 難 命 令 や 浸 水 防 止 対 策 など 各 機 関 がとるべき 行 動 をプログラム 化 し た タイムライン に 基 づく 対 応 で 被 害 を 軽 減 市 街 地 の 停 電 状 況 USACE 市 街 地 の 冠 水 状 況 USACE 地 下 鉄 86ストリート 駅 の 浸 水 状 況 MTA 6

高 潮 による 被 害 形 態 ( 平 成 16 年 台 風 16 号 高 松 市 ) 潮 位 が 堤 防 天 端 等 を 超 え 背 後 地 が 広 域 にわたり 浸 水 する 例 えば 平 成 16 年 9 月 香 川 県 高 松 市 では 台 風 16 号 による 高 潮 で 潮 位 が 護 岸 を 約 70cm 程 度 上 回 り 980ha 15,651 戸 の 浸 水 が 発 生 し 死 者 2 名 の 被 害 が 発 生 した : 台 風 16 号 による 浸 水 区 域 被 害 概 要 浸 水 面 積 980ha 浸 水 戸 数 15,561 戸 ( 床 上 3810 戸 床 下 11751 戸 ) 死 者 2 名 TP m 2.5 1.5 0.5 平 成 16 年 台 風 第 16 号 における 高 松 検 潮 所 の 潮 位 変 化 観 測 潮 位 フェリー 乗 場 付 近 護 岸 高 約 TP1.7m 22 時 42 分 最 高 潮 位 2.46m 天 文 潮 位 -0.5-1.5 台 風 16 号 による 高 松 市 内 の 浸 水 被 害 状 況 満 潮 23:59 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 8 月 30 日 8 月 31 日 7

高 潮 による 被 害 形 態 ( 平 成 16 年 台 風 23 号 室 戸 市 ) 潮 位 は 堤 防 天 端 等 を 超 えないものの 波 が 堤 防 を 越 え 堤 防 の 一 部 が 損 傷 するとともに 浸 水 被 害 を 生 じる 例 えば 平 成 16 年 10 月 高 知 県 室 戸 市 では 台 風 23 号 により 堤 防 を 越 波 し 堤 防 が 約 30mにわた って 倒 壊 するとともに 全 壊 半 壊 家 屋 8 棟 一 部 損 壊 4 棟 床 上 床 下 浸 水 9 戸 死 者 3 名 負 傷 者 4 名 の 被 害 が 発 生 した 堤 防 天 端 高 :5.7m 被 害 概 要 被 害 戸 数 21 戸 ( 全 半 壊 8 戸 一 部 損 壊 4 戸 浸 水 9 戸 ) 死 者 3 名 負 傷 者 4 名 台 風 23 号 による 菜 生 海 岸 の 被 災 状 況 被 災 時 刻 前 後 の 海 面 気 圧, 潮 位, 波 高 周 期 の 変 化 ( 室 戸 岬 ) 8

高 波 による 被 害 形 態 ( 平 成 20 年 黒 部 市 入 善 町 ) 潮 位 は 堤 防 天 端 等 を 超 えないものの 波 が 堤 防 を 越 え 浸 水 被 害 を 生 じる 例 えば 平 成 20 年 2 月 富 山 県 黒 部 市 入 善 町 では 低 気 圧 の 影 響 により 寄 り 回 り 波 と 呼 ばれる 周 期 の 長 いうねり 性 の 高 波 により 堤 防 を 越 波 し 約 4.7ha 黒 部 市 42 棟 入 善 町 119 棟 が 浸 水 し 死 者 1 名 重 傷 者 2 名 の 被 害 が 発 生 した 下 新 川 海 岸 高 波 による 越 波 状 況 ( 入 善 町 芦 崎 地 区 ) 下 新 川 海 岸 浸 水 状 況 ( 入 善 町 芦 崎 地 区 ) TP.(m) 6 4 2 0 富 山 潮 位 観 測 所 における 潮 位 データ -2 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 2 月 23 日 2 月 24 日 実 測 潮 位 天 文 潮 位 堤 防 天 端 高 下 新 川 川 海 海 岸 岸 海 住 岸 家 堤 の 防 破 の 壊 越 状 波 況 状 況 ( 入 善 町 芦 崎 地 区 ) ( 黒 部 市 生 地 地 区 ) 下 新 川 海 岸 住 家 の 破 壊 状 況 ( 黒 部 市 生 地 地 区 ) 被 害 概 要 浸 水 面 積 約 4.7ha 浸 水 戸 数 161 戸 死 者 1 名 重 傷 者 2 名 TP.(m) 7 田 中 観 測 所 における 海 象 データ (s) 16 6 14 波 5 12 高 10 ( 4 8 有 3 6 2 義 1/3 有 義 波 波 高 (m) 4 1 1/3 有 義 波 周 期 (s) 2 波 0 0 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 高 2 月 23 日 2 月 24 日 ) 9 有 義 波 周 期

海 岸 堤 防 の 設 計 について 堤 防 高 については 設 計 潮 位 ( 朔 望 平 均 満 潮 位 + 吸 い 上 げ+ 吹 き 寄 せ)+うちあげ 高 + 余 裕 高 により 設 定 されている 設 計 潮 位 については 既 往 最 高 潮 位 等 により 設 定 されている 打 ち 上 げ 高 については 有 義 波 高 の 概 念 を 採 用 し うちあげ 時 のしぶきや 波 の 不 規 則 性 による 多 少 の 越 波 を 許 容 することとし 30~50 年 に 一 度 程 度 の 計 画 波 高 により 設 定 されている 多 少 の 越 波 を 許 容 することから 裏 法 をコンクリート 被 覆 する 三 面 張 り 構 造 を 基 本 としている 堤 防 高 さ 波 浪 のうちあげ 高 潮 による 越 波 状 況 ( 高 知 海 岸 ) 基 準 面 うちあげ 高 潮 位 偏 差 ( 吸 い 上 げ+ 吹 き 寄 せ 等 ) 朔 望 平 均 満 潮 位 高 潮 設 計 潮 位 ( 既 往 最 高 潮 位 等 ) 10

気 候 変 動 による 高 潮 災 害 リスクの 増 大 懸 念 気 候 変 動 に 伴 い 台 風 の 強 大 化 海 面 水 位 の 上 昇 が 懸 念 されている 高 潮 波 浪 の 外 力 が 増 大 するとともに 堤 防 高 が 相 対 的 に 低 くなる 仮 に 海 面 水 位 が80cm 上 昇 すると 三 大 湾 のゼロメートル 地 帯 が 拡 大 ( 面 積 が 約 6 割 人 口 が 約 4 割 増 加 )するなど 高 潮 災 害 のリスクが 増 大 する 東 京 都 千 葉 県 兵 庫 県 三 重 県 愛 知 県 大 阪 府 神 奈 川 県 大 阪 湾 伊 勢 湾 朔 望 平 均 満 潮 位 +0.8m 以 下 朔 望 平 均 満 潮 位 以 下 東 京 湾 面 積 ( km2) ) 人 口 ( 万 人 ) 現 状 海 海 面 面 上 上 昇 昇 後 後 約 577 500 約 879 780 約 404 310 約 593 440 倍 率 1.6 1.4 高 潮 による 水 害 リスクを 有 するエリアが 拡 大 する 国 土 数 値 情 報 をもとに 水 管 理 国 土 保 全 局 で 作 成 3 次 メッシュ(1km 1km)の 標 高 情 報 が 潮 位 を 下 回 るものを 図 示 面 積 人 口 の 集 計 は3 次 メッシュデー タにより 行 っている 河 川 湖 沼 等 の 水 面 の 面 積 については 含 まない 11

気 候 変 動 による 高 潮 災 害 リスクの 増 大 懸 念 強 大 化 した 台 風 により 被 害 が 生 じることも 考 えられる 例 えば 平 成 25 年 11 月 レイテ 島 を 中 心 としたフィリピン 中 部 では 過 去 最 大 クラスの 規 模 の 台 風 30 号 (HAIYAN)により 段 波 状 の 高 潮 が 発 生 し 死 者 6,166 名 行 方 不 明 者 1,785 名 被 災 者 1,608 万 名 に 及 ぶ 甚 大 な 被 害 が 発 生 した 気 象 庁 によると 同 台 風 の 中 心 気 圧 は895hPa 瞬 間 最 大 風 速 は90m/s サマル 島 タクロバン パナイ 島 ネグロス 島 レイテ 島 セブ 島 ボホル 島 パロ タナワン トルサ ドゥラグ フィリピン 東 部 レイテ 州 タナワンの 被 害 状 況 フィリピン 東 部 レイテ 州 タクロバンの 被 害 状 況 タクロバンの 高 潮 の 痕 跡 12

Ⅱ. 東 日 本 大 震 災 を 踏 まえた 津 波 対 策

東 日 本 大 震 災 を 踏 まえた 津 波 防 災 対 策 の 基 本 的 な 考 え 方 東 日 本 大 震 災 では これまでの 想 定 をはるかに 超 えた 巨 大 な 地 震 津 波 により 甚 大 な 被 害 を 受 け たことから 最 大 クラス(L2)の 津 波 に 対 してはハード 整 備 とソフト 対 策 を 組 み 合 わせた 多 重 防 御 に より 被 害 を 最 小 化 させるとした 減 災 の 考 え 方 が 新 たに 示 された 比 較 的 発 生 頻 度 の 高 い 津 波 (L1)に 対 しては 人 命 資 産 等 を 守 り 国 土 を 保 全 する 観 点 から 引 き 続 き 海 岸 堤 防 の 整 備 を 進 めていくこととされた 最 大 クラスの 津 波 (L2) 最 大 クラスの 津 波 に 対 して ハード 対 策 とま ちづくりや 警 戒 避 難 体 制 の 確 立 などを 組 み 合 わせた 多 重 防 御 により 人 命 への 被 害 を 極 力 生 じさせないことを 目 指 す 比 較 的 頻 度 の 高 い 津 波 (L1) 比 較 的 発 生 頻 度 の 高 い 津 波 ( 数 十 年 から 百 数 十 年 に 一 度 程 度 )に 対 して 海 岸 保 全 施 設 の 整 備 による 対 応 を 基 本 として 人 命 資 産 国 土 ( 海 岸 線 ) 等 を 確 実 に 守 ることを 目 指 す また 設 計 対 象 の 津 波 高 を 超 えた 場 合 でも 施 設 の 効 果 が 粘 り 強 く 発 揮 できるような 構 造 物 の 技 術 開 発 整 備 を 実 施 最 大 クラスの 津 波 (L2) 2011 年 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 の 津 波 高 さ 1896 年 明 治 三 陸 地 震 の 津 波 高 さ 比 較 的 頻 度 の 高 い 津 波 (L1) 14

津 波 防 災 地 域 づくりの 推 進 浸 水 が 防 止 される 区 域 浸 水 が 防 止 される 区 域 津 波 防 護 施 設 ( 閘 門 ) 指 定 津 波 防 護 施 設 ( 既 存 道 路 ) 避 難 路 避 難 場 所 ( 高 台 ) 津 波 防 護 施 設 ( 兼 用 工 作 物 ) 津 波 避 難 ビル 津 波 避 難 ビル 津 波 避 難 タワー 津 波 浸 水 想 定 宅 地 の 嵩 上 げ 津 波 避 難 タワー 砂 浜 地 域 の 選 択 により 都 道 府 県 知 事 が 津 波 災 害 特 別 警 戒 区 域 を 指 定 できる 津 波 災 害 警 戒 区 域 警 戒 避 難 体 制 の 整 備 ( 避 難 施 設 避 難 路 津 波 避 難 訓 練 情 報 伝 達 等 ) 市 町 村 による 津 波 ハザードマップの 作 成 等 海 岸 堤 防 海 岸 堤 防 砂 浜 津 波 災 害 特 別 警 戒 区 域 津 波 津 波 災 害 特 別 警 戒 区 域 のうち 市 町 村 長 が 条 例 で 定 めた 区 域 住 宅 等 の 居 室 等 の 全 部 が 津 波 の 水 深 以 下 1 病 室 等 の 居 室 の 床 面 の 高 さが 津 波 の 水 深 以 上 2 病 院 等 の 建 築 を 予 定 した 盛 土 等 の 開 発 行 為 の 規 制 住 宅 等 の 居 室 等 の 一 部 が 津 波 の 水 深 以 上 15

粘 り 強 い 構 造 の 海 岸 堤 防 海 岸 堤 防 等 については 設 計 対 象 の 津 波 高 を 超 えた 場 合 でも 施 設 の 効 果 が 粘 り 強 く 発 揮 され 津 波 による 浸 水 被 害 を 軽 減 あるいは 避 難 のためのリードタイムを 長 くできるよう 技 術 開 発 や 整 備 を 進 めることとなった 被 災 前 陸 側 岩 沼 海 岸 海 側 従 来 の 堤 防 陸 側 海 側 被 災 後 陸 側 元 の 堤 防 岩 沼 海 岸 海 側 津 波 津 波 の 越 流 を 想 定 していなかった ため 強 度 が 不 足 していた < 粘 り 強 い 海 岸 堤 防 のポイント> ポイント1 法 尻 部 の 強 化 ポイント3 天 端 被 覆 工 の 補 強 越 流 水 の 方 向 を 変 え 裏 法 尻 の 洗 掘 を 堤 体 本 体 から 遠 ざける また 基 礎 処 理 により 洗 掘 への 抵 抗 性 を 向 上 天 端 被 覆 工 の 部 材 厚 を 確 保 また 空 気 抜 き 孔 を 設 け 越 流 時 に 堤 防 内 の 有 害 な 空 気 圧 を 抜 く 計 画 堤 防 高 現 在 陸 側 岩 沼 海 岸 海 側 陸 側 ポイント2 陸 側 法 面 の 補 強 海 側 地 盤 高 撮 影 日 : 平 成 25 年 7 月 19 日 被 覆 工 の 部 材 厚 を 確 保 し 被 覆 ブロックの 連 結 をかみ 合 わせ 構 造 とすることで 越 流 時 に 下 流 側 となるブロックの 突 出 を 防 止 16

Ⅲ. 外 力 設 定 について

論 点 外 力 設 定 について ( 危 機 管 理 の 目 標 とする 高 潮 ( 最 大 クラス)について) 危 機 管 理 の 目 標 とする 高 潮 を 設 定 し ハード 対 策 とまちづくりや 警 戒 避 難 体 制 の 確 立 などを 組 み 合 わせた 多 重 防 御 により 人 命 への 被 害 を 極 力 生 じさせないことを 目 指 す 危 機 管 理 の 目 標 となる 最 大 クラスの 高 潮 については 統 計 的 力 学 的 手 法 の 研 究 が 進 められてい るが 現 段 階 での 導 入 には 課 題 がある 状 況 手 法 1 極 値 統 計 解 析 手 法 2 確 率 台 風 モデル 手 法 3 力 学 的 手 法 (イメージ) 高 潮 偏 差 の 極 値 統 計 解 析 (イメージ) 確 率 台 風 モデルで 作 成 した 台 風 ( 経 路 図 ) 初 期 気 象 場 気 象 モデル 海 洋 モデル 波 浪 モデル C 概 要 既 往 の 潮 位 観 測 データから 極 値 統 計 解 析 により 再 現 期 間 ( 年 ) 毎 の 高 潮 偏 差 の 分 布 を 推 定 するもの 特 徴 課 題 我 が 国 においては 既 往 の 潮 位 観 測 データが 限 られている( 約 60 年 )ため 再 現 期 間 ( 年 )の 長 い 潮 位 偏 差 を 推 定 するほど 推 定 誤 差 は 大 きくなる ( 例 えば 1934 年 の 室 戸 台 風 は 統 計 が 始 まる 1951 年 よりも 前 の 台 風 ) 概 要 既 往 の 台 風 の 位 置 気 圧 等 の 統 計 に 基 づき 任 意 の 年 間 に 発 生 する 台 風 を 乱 数 に よるシミュレーションで 推 定 するもの 特 徴 課 題 100 年 1000 年 単 位 で 発 生 する 台 風 を 計 算 できるが 乱 数 計 算 のため800hpa p 台 の 台 風 も 算 出 される 既 往 の 限 られた 観 測 データ( 約 60 年 )でモ デル 作 成 乱 数 計 算 しており 実 際 の 気 象 現 象 をどの 程 度 再 現 しているか 不 明 潮 位 偏 差 波 浪 概 要 統 計 的 手 法 ではなく 大 気 海 洋 力 学 的 手 法 により 気 象 海 洋 波 浪 の 推 定 を 行 うもの 特 徴 課 題 複 数 のモデル( 気 象 海 洋 波 浪 )を 用 い て 計 算 する 必 要 計 算 上 必 要 となる 台 風 内 部 データの 設 定 が 必 要 可 能 最 大 値 の 再 現 期 間 不 明 18

論 点 外 力 設 定 について ( 危 機 管 理 の 目 標 とする 高 潮 ( 最 大 クラス)について) 例 えば 我 が 国 既 往 最 大 規 模 の 台 風 ( 室 戸 台 風 911.6hPa) 等 を 想 定 し 潮 位 偏 差 が 最 大 となるコ ースを 複 数 選 定 して 危 機 管 理 の 目 標 とする 外 力 とする 統 計 的 力 学 的 手 法 など 危 機 管 理 の 目 標 とする 外 力 については 引 き 続 き 技 術 開 発 を 進 める 大 阪 湾 における 大 規 模 高 潮 浸 水 想 定 実 施 例 出 典 : 大 阪 湾 高 潮 対 策 危 機 管 理 行 動 計 画 ガイドライン( 大 阪 湾 高 潮 対 策 協 議 会 ) 19

論 点 外 力 設 定 について ( 危 機 管 理 の 目 標 とする 高 潮 ( 規 模 別 設 定 )について) 危 機 管 理 の 目 標 とする 高 潮 については 最 大 クラスだけでなく 例 えば 台 風 の 強 度 あるいは 潮 位 が 計 画 高 潮 位 を 超 えるおそれがあるなど 規 模 別 に 提 示 することも 検 討 する 高 潮 の 打 ち 上 げ 高 が 数 m 程 度 で 設 計 されている 海 岸 では 危 機 管 理 の 目 標 とする 高 潮 ( 最 大 クラ ス)でも 天 端 を 潮 位 が 上 回 ることはないものと 考 えられるが 既 存 堤 防 の 設 計 外 力 を 超 えているこ とから 最 もリスクの 大 きい 箇 所 で 破 堤 すると 仮 定 するなど 一 定 条 件 下 での 破 堤 を 想 定 してはど うか ニューヨーク 市 の 浸 水 想 定 では カテゴリ 別 に 浸 水 域 を 予 測 ハリケーンのカテゴリーの 分 類 ニューヨーク 市 における 高 潮 の 浸 水 想 定 例 出 典 :New York City Natural Hazard Mitigation Plan March 2009 20

論 点 外 力 設 定 について ( 施 設 整 備 の 目 標 とする 高 潮 ) 施 設 整 備 の 目 標 とする 高 潮 を 設 定 し 人 命 資 産 国 土 ( 海 岸 線 ) 等 を 確 実 に 守 ることを 目 指 す 一 連 区 間 での 防 御 ラインを 再 確 認 するとともに 海 岸 堤 防 等 の 老 朽 化 が 進 行 していることを 踏 ま え 点 検 等 により 維 持 管 理 を 着 実 に 実 施 する 将 来 の 更 新 改 良 などの 際 に 温 暖 化 等 の 最 新 の 知 見 に 基 づき 適 応 していく 凡 例 津 波 が 設 定 根 拠 の90% 以 上 の 市 町 村 津 波 が 設 定 根 拠 の60% 以 上 の 市 町 村 高 潮 津 波 外 力 別 の 堤 防 高 設 定 状 況 ( 農 林 水 産 省 国 土 交 通 省 調 べ)(H26.9) 津 波 が 設 定 根 拠 の40~60%の 市 町 村 高 潮 が 設 定 根 拠 の60% 以 上 の 市 町 村 高 潮 が 設 定 根 拠 の90% 以 上 の 市 町 村 その 他 ( 原 形 不 明 等 )が50% 以 上 の 市 町 村 ( 集 計 の 考 え 方 ) 堤 防 高 の 設 定 根 拠 が 高 潮 津 波 その 他 ( 原 形 不 明 等 ) に 市 町 村 毎 に 集 計 高 潮 により 海 岸 堤 防 が 設 定 されている 海 岸 が75% 21

論 点 外 力 設 定 について ( 粘 り 強 い 構 造 について) 設 計 対 象 の 外 力 を 超 えた 場 合 でも 避 難 時 間 を 稼 ぎ 浸 水 域 浸 水 深 を 減 少 させるため 施 設 の 効 果 が 粘 り 強 く 発 揮 できるような 構 造 の 技 術 開 発 整 備 を 実 施 する 越 波 については 従 前 より 裏 法 を 被 覆 することにより 対 応 してきているが 越 流 の 可 能 性 の 有 無 波 の 大 きさなど 想 定 される 外 力 堤 防 前 面 の 砂 浜 や 背 後 地 の 状 況 等 を 考 慮 して 当 該 地 域 に 応 じた 粘 り 強 い 構 造 等 を 検 討 する 海 岸 堤 防 等 の 被 災 形 態 の 整 理 被 災 に 至 るまでに 確 認 された 被 災 形 態 自 立 構 造 型 ( 直 立 タイプ) 被 覆 構 造 型 ( 傾 斜 タイプ) 滑 動 8 件 下 部 滑 り 出 し 破 壊 ( 滑 動 ) 上 部 被 災 53 件 コンクリートブロック 被 覆 型 ( 緩 傾 斜 タイプ) 50 件 転 倒 上 部 倒 壊 中 部 被 災 5 件 6 件 35 件 パラペット 倒 壊 天 端 の 陥 没 下 部 被 災 5 件 15 件 68 件 天 端 クラック 沈 下 陥 没 堤 体 の 曲 げ 破 壊 全 体 被 災 2 件 - - 10 件 17 件 天 端 の 陥 没 6 件 堤 体 の 崩 壊 天 端 法 枠 の 破 壊 陥 没 堤 体 の 空 洞 化 端 部 欠 壊 等 の 被 害 表 法 堤 体 の 亀 裂 損 傷 根 入 れの 露 出 根 固 め 工 の 沈 下 散 乱 消 波 工 の 沈 下 散 乱 海 底 地 盤 の 低 下 回 答 なし 53 90 91 129 169 162 185 201 254 ( 複 数 回 答 可 ) 0 50 100 150 200 250 300 被 災 に 至 る 初 期 の 被 災 形 態 堤 体 の 崩 壊 0 天 端 法 枠 の 破 壊 陥 没 1 堤 体 の 空 洞 化 3 端 部 欠 壊 等 の 被 害 4 表 法 堤 体 の 亀 裂 損 傷 2 根 入 れの 露 出 4 根 固 め 工 の 沈 下 散 乱 1 消 波 工 の 沈 下 散 乱 1 海 底 地 盤 の 低 下 17 288 ( 母 数 :321 被 災 数 ) 0 50 100 150 200 250 300 出 典 : 海 岸 堤 防 護 岸 の 被 災 に 関 する 実 態 調 査 ( 加 藤 史 訓 野 口 賢 二 諏 訪 義 雄 (2011): 土 木 学 会 論 文 集 ) 海 底 地 盤 の 低 下 か ら 被 災 が 始 ま っ て い る と こ が 多 い 22

Ⅳ. 警 戒 避 難 体 制 の 充 実

論 点 警 戒 避 難 体 制 の 充 実 (タイムライン) 高 潮 ( 潮 位 が 堤 防 天 端 を 超 える)については 気 象 庁 が 高 潮 ( 特 別 ) 警 報 を 発 令 し これを 目 安 と し 市 町 村 が 避 難 勧 告 の 発 令 を 判 断 している 例 が 多 い 一 方 避 難 勧 告 が 発 令 されても 避 難 率 が 低 い 状 態 である 避 難 勧 告 が 発 令 された 時 点 で 暴 風 により 避 難 自 体 が 困 難 となることが 想 定 される また 避 難 率 が100%となった 場 合 の 受 け 入 れ 体 制 も 十 分 確 保 されていない 状 態 である 高 潮 について タイムラインを 導 入 できないか 水 のうによる 止 水 対 策 出 典 : 国 土 交 通 省 防 災 関 連 学 会 合 同 調 査 団 米 国 ハリケーン サンディに 関 する 現 地 調 査 報 告 書 タイムラインのイメージ 陸 閘 の 閉 鎖 作 業 24

論 点 警 戒 避 難 体 制 の 充 実 高 波 ( 越 波 や 冬 期 風 浪 によるうねり)については 気 象 庁 が 波 浪 警 報 を 発 令 しているが 施 設 の 整 備 状 況 を 踏 まえた 被 害 の 程 度 が 不 明 確 なため 避 難 勧 告 等 には 十 分 に 活 用 されていない 下 新 川 海 岸 などでは 有 義 波 高 の 予 測 によって 住 民 の 避 難 勧 告 等 が 行 われている 一 方 国 総 研 においては 気 象 庁 の 沿 岸 波 浪 モデル 等 を 活 用 して うちあげ 高 予 測 システムを 開 発 している 高 波 について 市 町 村 が 被 害 の 恐 れのある 区 域 を 特 定 して 避 難 勧 告 を 発 令 できるよう 予 報 を 導 入 すべきではないか 〇 国 総 研 による 波 浪 うちあげ 高 予 測 システムの 概 要 波 浪 うちあげ 高 予 測 システムは 気 象 庁 による 各 海 岸 の 潮 位 予 測 値 と 波 浪 予 測 値 を 外 力 の 入 力 データとして うちあげ 高 予 測 を 行 うものである 本 予 測 では 予 測 されたうちあげ 高 は 天 端 高 と 比 較 できるよう に 表 示 され 越 波 がいつ 頃 激 しくなるのか 判 断 できるように なっている うちあげ 高 予 測 の 表 示 例 入 善 町 の 避 難 勧 告 基 準 一 部 抜 粋 : 田 中 観 測 所 の 波 高 に 関 連 する 部 分 避 難 準 備 情 報 避 難 勧 告 避 難 指 示 当 町 にうねり( 寄 り 回 り 波 )の 情 報 を 含 む 波 浪 警 報 が 発 表 されたとき 暫 定 予 測 式 により 田 中 観 測 所 で 有 義 波 高 が4.5mを 超 えると 予 測 され 水 防 警 報 出 動 が 発 令 されたとき 他 田 中 観 測 所 において1 時 間 後 に4.5mを 超 えると 予 測 され 又 は 有 義 波 高 が4.0mを 超 え 水 防 警 報 距 離 確 保 準 備 が 発 令 されたとき 他 田 中 観 測 所 において 有 義 波 高 が4.5mを 超 え 水 防 警 報 距 離 確 保 が 発 令 されたとき 他 25

Ⅴ. 砂 浜 の 保 全 ( 海 岸 侵 食 対 策 )

砂 浜 の 保 全 海 岸 の 侵 食 は 砂 浜 の 減 少 等 により 良 好 な 景 観 環 境 の 形 成 や 海 岸 利 用 を 阻 害 するだけでなく 我 が 国 の 貴 重 な 国 土 の 消 失 であり また 越 波 の 増 大 や 海 岸 保 全 施 設 の 耐 力 を 低 下 させるという 防 災 面 でも 問 題 がある また 砂 浜 が 消 失 することで 海 岸 環 境 の 悪 化 や 海 岸 利 用 への 影 響 が 懸 念 される 砂 浜 は 沖 で 波 を 砕 き 岸 での 波 を 弱 める 1 砂 浜 があると 岸 での 波 を 弱 める 2 海 岸 侵 食 により 砂 浜 が 少 なくなると 越 波 が 増 大 3さらに 侵 食 が 進 み 砂 浜 がなくなると 海 水 が 浸 入 海 岸 における 良 好 な 環 境 の 例 4 浸 入 した 海 水 により 破 堤 につながる 砂 浜 の 消 失 は 越 波 の 増 大 海 水 の 浸 入 を 招 き 背 後 地 の 安 全 性 を 低 下 させる 海 岸 利 用 の 例 27

砂 浜 の 保 全 台 風 や 冬 季 風 浪 による 高 波 で 短 期 間 に 砂 浜 ( 国 土 )が 消 失 している [ 西 湘 海 岸 ] 平 成 19 年 9 月 撮 影 台 風 9 号 時 侵 食 状 況 ( 被 災 前 9/4) 平 成 19 年 9 月 撮 影 台 風 9 号 時 波 浪 状 況 ( 上 陸 前 9/6) 平 成 19 年 9 月 撮 影 台 風 9 号 時 侵 食 状 況 ( 被 災 後 9/10) [ 富 士 海 岸 ] [ 皆 生 海 岸 ] 約 30m 小 屋 まで 一 気 に 侵 食 防 風 林 まで 一 気 に 侵 食 平 成 24 年 9 月 撮 影 台 風 等 による 大 幅 な 侵 食 状 況 平 成 23 年 9 月 撮 影 台 風 12 号 時 浜 崖 状 況 平 成 23 年 9 月 撮 影 台 風 12 号 時 浜 崖 状 況 24 28

論 点 砂 浜 の 保 全 ( 新 技 術 導 入 の 推 進 ) 侵 食 対 策 を 推 進 するにあたって 総 合 土 砂 管 理 を 更 に 推 進 するとともに 新 技 術 を 導 入 した 侵 食 対 策 を 進 めるべきではないか 岩 盤 型 施 設 埋 設 型 護 岸 (サンドパック) 粒 径 を 考 慮 した 養 浜 の 実 施 状 況 海 岸 保 全 対 策 実 施 ( 常 時 ) 常 時 は 砂 に 埋 もれ ている 岩 盤 型 施 設 ( 仮 称 )のイメージ 海 岸 保 全 対 策 実 施 ( 高 波 浪 時 ) C 急 激 に 後 退 しない 岩 盤 型 施 設 ( 仮 称 ) 材 料 砕 石 (10mm~40mm) 0 5 10cm 漂 砂 安 定 岩 盤 型 施 設 の 整 備 イメージ 埋 設 型 護 岸 (サンドパック)による 侵 食 対 策 ( 施 工 時 写 真 ) 粒 径 を 考 慮 した 養 浜 の 実 施 状 況 29