食 品 安 全 委 員 会 事 務 局 から 食 品 添 加 物 の 安 全 性 の 考 え 方 やリスク 評 価 の 進 め 方 に ついて 話 題 提 供 させていただきます 1
食 品 添 加 物 は 食 品 の 保 存 性 を 向 上 させたり 栄 養 を 保 持 したり 品 質 を 高 めたり おいしさに 彩 りを 添 えるため 食 品 に 添 加 されるものです 食 品 添 加 物 には 腐 敗 による 食 品 の 変 質 を 防 ぐためにソルビン 酸 などの 保 存 料 食 品 の 味 を 向 上 させるためにアスパルテームなどの 甘 味 料 食 品 の 魅 力 を 増 すための 着 色 料 や 香 料 があります では 食 品 添 加 物 はいつ 頃 から 使 っているのでしょう 2
食 品 添 加 物 の 使 用 に 関 する 歴 史 は 古 く 紀 元 前 のギリシャ ローマ 時 代 にはワインの 品 質 を 保 持 するため 二 酸 化 硫 黄 が 使 用 されていたそうです また ヨーロッパでは 昔 から 食 肉 に 岩 塩 を 使 って 保 存 食 のハムやソーセージを 作 っ ていました これは 岩 塩 を 使 うと ハムやソーセージがおいしそうな 色 になって 風 味 も 良 くなり 微 生 物 の 発 育 も 抑 えることができることから 食 中 毒 が 起 きにくくなることを 昔 の 人 は 経 験 から 知 っていたからです このように 私 たちは 昔 から 経 験 をもとに 食 品 添 加 物 を 使 用 してきました 3
食 品 添 加 物 に 限 らず 様 々な 化 学 物 質 を 摂 取 する 時 の 安 全 性 は 量 について 考 える ことが 大 切 です この 場 合 の 化 学 物 質 は 今 まで 聞 いたことのないようなカタカナの 名 前 の 物 質 だけで なく NaClという 化 学 式 で 表 される 塩 や H 2 Oという 化 学 式 で 表 される 水 も 含 みます 食 品 添 加 物 だけでなく 塩 や 砂 糖 といった 食 品 も 化 学 物 質 ととらえることができ 食 べ る 量 によっては 有 害 にも 無 害 にもなります この 図 は 右 側 に 行 くと 食 べる 量 が 多 くなり 上 側 に 行 くと 生 体 への 影 響 が 大 きくなる ことを 示 しています 化 学 物 質 を 食 べる 量 が 少 ない 場 合 は 図 の 水 色 の 線 が 平 らになっている 部 分 であり 人 間 の 体 への 影 響 は 現 れません 化 学 物 質 を 食 べる 量 が 増 えていくと 水 色 の 線 が 上 向 きになり 人 間 の 体 に 影 響 が 現 れて さらに 食 べる 量 が 多 くなると 中 毒 を 起 こしたりします お 酒 を 例 にすると 料 理 に 使 う 程 度 であれば 特 段 体 に 影 響 が 出 るようなことはありま せんが 適 量 飲 めば 食 欲 がわいたり 血 行 が 良 くなったり 体 に 反 応 が 現 れてきます さらに 大 量 のお 酒 を 飲 むと 二 日 酔 いになったり 中 毒 になります なお 食 品 添 加 物 は 生 体 反 応 が 現 れるよりずっと 少 ない 量 で 使 用 され この 図 では 水 色 の 線 が 平 らな 所 の 量 で 食 品 に 添 加 されます 一 方 医 薬 品 は 人 体 の 機 能 に 影 響 を 及 ぼすことが 目 的 として 用 いられますので 図 の 水 色 の 線 が 立 ち 上 がった 生 体 反 応 が 現 れる 所 より 多 い 量 で 使 用 されます 4
でも 人 の 体 に 影 響 が 出 ないような 少 ない 量 であっても 本 当 に 長 期 間 とり 続 けても 大 丈 夫 なのか?という 疑 問 を 持 たれる 方 は 多 いと 思 います 5
食 品 添 加 物 や 農 薬 は 食 品 を 介 して 体 の 中 に 蓄 積 されるといったイメージがある ようですが 人 の 体 には 化 学 物 質 を 排 泄 代 謝 分 解 する 能 力 が 備 わっています まず 化 学 物 質 が 食 品 とともに 体 内 に 入 っても 化 学 物 質 の 一 部 は 腸 管 を 素 通 り して 便 として 排 泄 されてしまいます 化 学 物 質 の 一 部 は 腸 管 から 吸 収 されて 血 液 を 介 して 肝 臓 心 臓 などの 臓 器 から 全 身 を 通 って 腎 臓 から 尿 として 排 泄 されます また 肝 臓 では 代 謝 解 毒 といった 体 の 仕 組 によって 胆 汁 と 一 緒 に 小 腸 に 排 出 されて 最 終 的 に 便 として 排 泄 されます 6
ここから 食 品 の 安 全 を 守 る 仕 組 リスク 評 価 の 進 め 方 食 品 の 安 全 性 の 考 え 方 につ いてお 話 しします 食 品 安 全 を 担 当 する 組 織 は リスク 評 価 機 関 とリスク 管 理 機 関 に 分 かれています リスク 評 価 は 食 品 健 康 影 響 評 価 ともいい 食 べても 安 全 かどうか 調 べて 決 めることで リスク 管 理 は 食 べても 安 全 なようにルールを 決 めて 監 視 することです 食 品 安 全 委 員 会 は リスク 評 価 を 担 当 しています 一 方 リスク 管 理 機 関 には 厚 生 労 働 省 農 林 水 産 省 などがあり リスク 管 理 機 関 が ルールを 決 めたり 新 しくする 時 は 食 品 安 全 委 員 会 に 対 してルールの 根 拠 について 評 価 するよう 要 請 します 食 品 安 全 委 員 会 は 主 にリスク 管 理 機 関 からの 要 請 を 受 けて 中 立 公 正 な 立 場 で 食 べても 安 全 かどうか 科 学 的 な 根 拠 について 評 価 を 行 います 厚 生 労 働 省 などのリスク 管 理 機 関 は 食 品 安 全 委 員 会 の 評 価 結 果 に 基 づいて 政 策 的 技 術 的 可 能 性 なども 勘 案 して 食 べても 安 全 なようにルールを 決 めて 監 視 や 指 導 を 行 います 以 上 の 取 組 に 関 して 消 費 者 の 皆 様 事 業 者 の 皆 様 と 情 報 の 共 有 や 意 見 の 交 換 を 行 うリスクコミュニケーションにも 取 り 組 んでいます 7
リスク 評 価 の 進 め 方 についてお 話 しします リスク 評 価 は 一 般 の 方 の 御 意 見 をもとに 評 価 を 行 う 仕 組 もありますが 基 本 的 には リスク 管 理 機 関 の 要 請 により 評 価 を 行 います 食 品 添 加 物 であれば 厚 生 労 働 省 が 新 たな 食 品 添 加 物 の 使 用 を 認 めるにあたって リスク 評 価 を 食 品 安 全 委 員 会 に 要 請 します 食 品 安 全 委 員 会 は リスク 管 理 機 関 からの 要 請 を 受 けて 専 門 調 査 会 で 内 外 の 様 々 な 安 全 性 に 関 するデータを 集 めて 議 論 を 行 い 化 学 物 質 であれば その 物 質 を 一 生 涯 食 べ 続 けても 健 康 に 悪 影 響 が 生 じない 量 一 日 摂 取 許 容 量 を 定 めます 専 門 調 査 会 は 農 薬 食 品 添 加 物 遺 伝 子 組 み 換 え 食 品 微 生 物 ウイルスなどの 分 野 ごとに 分 かれており 評 価 対 象 に 応 じた 専 門 調 査 会 で 審 議 して 評 価 案 を 作 成 し ます その 議 論 の 過 程 や 資 料 等 は 原 則 公 開 で 行 い とりまとめの 段 階 で パブリックコメント や 意 見 交 換 会 などを 行 って いただいた 意 見 についても 審 議 した 上 で 最 終 的 に 評 価 書 として 食 品 安 全 委 員 会 で 決 定 し 厚 生 労 働 省 などのリスク 管 理 機 関 にお 返 しします リスク 管 理 機 関 では 評 価 結 果 に 基 づいて 使 用 基 準 の 設 定 などが 行 われます 8
食 品 のリスクについてお 話 しさせていただきます 食 品 には 人 の 健 康 に 危 害 を 与 える 可 能 性 のある 物 質 危 害 要 因 が 含 まれています また 食 品 が 人 の 健 康 に 危 害 を 与 えるような 状 態 を 持 っていることもあります これには 細 菌 やウイルスなどの 生 物 学 的 要 因 農 薬 や 食 品 添 加 物 などの 化 学 的 要 因 食 品 が 気 道 を 塞 いだりする 物 理 学 的 要 因 があります これらの 危 害 要 因 の 摂 取 により 危 害 が 発 生 する 確 率 と 健 康 への 悪 影 響 の 程 度 を 掛 け 合 わせたものをリスクと 言 います 危 害 要 因 による 発 生 確 率 と 影 響 の 程 度 は どちらもゼロになることはありませんので 食 品 のリスクはゼロではありません 食 品 安 全 行 政 は どんな 食 品 にもリスクがあるという 前 提 で リスクを 科 学 的 に 評 価 し て 適 切 な 管 理 をすべきという 考 えのもと 進 められています 9
食 品 添 加 物 のリスク 評 価 は 具 体 的 にどのように 行 われているかお 話 しします まず 危 害 の 要 因 を 決 定 します 食 品 添 加 物 の 代 謝 物 についても 危 害 要 因 となり 得 るか 調 べて 審 議 します 次 に 動 物 実 験 のデータから 危 害 要 因 の 有 害 作 用 を 確 認 します 人 体 実 験 をするわけにはいかないので 動 物 実 験 の 結 果 から 取 りすぎるとどんな 悪 い 影 響 が 生 じるのかを 見 ていきます 動 物 実 験 の 結 果 からは 何 段 階 かの 異 なる 投 与 量 を 長 期 間 繰 り 返 し 与 えた 時 の 生 体 への 影 響 複 数 世 代 にわたる 生 殖 能 や 胎 児 への 影 響 発 がん 性 などを 確 認 します そして 動 物 実 験 で 有 害 影 響 が 認 められなかった 最 も 多 い 投 与 量 と 定 義 される 無 毒 性 量 を 求 めます 次 に 動 物 実 験 のデータを 人 へ 当 てはめることと 子 供 と 大 人 の 差 などの 個 体 差 を 考 慮 することから 安 全 係 数 を 設 定 します 無 毒 性 量 に 安 全 係 数 を 反 映 して 安 全 側 に 立 った 量 を 一 日 摂 取 許 容 量 ADIとして 食 品 添 加 物 の 使 用 基 準 を 決 める 際 の 科 学 的 な 根 拠 にします また 私 たちの 食 事 の 状 況 を 調 べるとともに 様 々な 食 品 中 の 食 品 添 加 物 量 を 測 定 し て 食 品 添 加 物 をどのくらい 摂 取 しているか 調 べています これを 暴 露 評 価 と 言 います 10
一 日 摂 取 許 容 量 ADIについてお 話 しします ADIは 人 がある 物 質 を 毎 日 一 生 涯 取 り 続 けても 現 在 の 科 学 的 知 見 からみて 健 康 への 悪 影 響 がないと 推 定 される 一 日 当 たりの 摂 取 量 のことです ADIは ネズミやイヌなど 複 数 の 動 物 で 様 々な 毒 性 試 験 をして 得 られた 無 毒 性 量 から 導 き 出 されます 無 毒 性 量 は 動 物 の 健 康 に 悪 影 響 を 与 えない 最 も 多 い 量 で これを 人 にあてはめる 際 は 動 物 と 人 の 差 を 考 慮 します さらに 子 供 と 大 人 の 差 などの 個 体 差 も 考 慮 した 安 全 係 数 として 通 常 は100をとって 無 毒 性 量 の1/100を 人 が 一 生 の 間 毎 日 取 り 続 けても 健 康 に 悪 影 響 が 出 ない 量 で あるADIとしています 11
リスク 評 価 について ソルビン 酸 カルシウムを 例 にとってお 話 しします ソルビン 酸 は 以 前 から 保 存 料 としてソルビン 酸 カリウムとともに 使 用 されてきました ソルビン 酸 カルシウムは ソルビン 酸 にカルシウムが 付 いたものです ソルビン 酸 は 水 に 溶 けにくい 食 品 添 加 物 ですが カリウムやカルシウムが 付 いたソ ルビン 酸 は 水 に 溶 けやすくなる 特 徴 があります 食 品 添 加 物 を 食 品 に 加 える 場 合 水 に 溶 けやすい 方 が 利 用 しやすいこともあります ソルビン 酸 カルシウムの 安 全 性 を 調 べるために ソルビン 酸 カルシウムを 繰 り 返 し 与 えて 毒 性 を 観 察 する 反 復 投 与 毒 性 試 験 生 殖 能 や 胎 児 への 影 響 を 調 べる 生 殖 毒 性 試 験 体 内 に 悪 性 腫 瘍 を 発 生 させるかどうか 調 べる 発 がん 性 試 験 遺 伝 子 に 変 化 を 与 え て 細 胞 または 個 体 に 悪 影 響 をもたらすかを 調 べる 遺 伝 毒 性 試 験 などのデータを 見 てい きました これらの 試 験 データから 得 られた 無 毒 性 量 は 1 日 当 たり 体 重 1kg 当 たり2500mg でした ソルビン 酸 カルシウムは ソルビン 酸 カリウムと 同 様 にソルビン 酸 として 体 内 に 取 り 込 まれるため ADIは ソルビン 酸 ソルビン 酸 カリウムを 含 むグループとして 評 価 されま した ソルビン 酸 ソルビン 酸 カリウム ソルビン 酸 カルシウムのグループとしてのADIは 1 日 当 たり 体 重 1kg 当 たり2500mgの 無 毒 性 量 を 安 全 係 数 の100で 割 って 1 日 当 た り 体 重 1kg 当 たり25mgと 決 定 されました 12
ADIに 基 づいて 食 品 添 加 物 の 使 用 基 準 はどのように 決 められるのでしょうか 食 品 添 加 物 の 使 用 基 準 は 厚 生 労 働 省 が 決 めます 厚 生 労 働 省 が 実 施 する 国 民 健 康 栄 養 調 査 などのデータから 得 られた 各 食 品 の 摂 取 量 をもとに 食 品 添 加 物 の 摂 取 量 を 推 定 します そして 食 品 添 加 物 の 推 定 摂 取 量 がADIを 大 幅 に 下 回 るように 食 品 添 加 物 ごとに 使 用 基 準 を 定 めていきます 例 えば ソルビン 酸 のADIは 毎 日 体 重 1kg 当 たり25mgなので 体 重 50kgの 人 の 場 合 1 日 当 たりの 摂 取 許 容 量 は 1250mgとなります ソルビン 酸 における 日 本 人 の 平 均 1 日 摂 取 量 は 6.35mgで これはADIの0.5 1%に 当 たり 人 が 毎 日 一 生 涯 食 べ 続 けても 健 康 への 悪 影 響 が 出 ない 量 であるADIを 大 幅 に 下 回 っています 13
食 べる 量 からADIを 考 えてみます ソルビン 酸 のADIは 1 日 当 たり 体 重 1kg 当 たり25mgです 体 重 50kgの 人 の 場 合 ソルビン 酸 を1 日 に1250mg 摂 るとADIに 達 します ハムを 例 にすると ソルビン 酸 の 使 用 基 準 は ハム1kg 当 たり2000mg 以 下 です 使 用 基 準 の 上 限 のソルビン 酸 量 が 添 加 された つまりハム1kgあたり2000mgのソ ルビン 酸 を 含 むハムを1 日 に625g 食 べた 場 合 ADIに 達 しますが ADIは 毎 日 一 生 涯 にわたって 摂 取 し 続 けるという 条 件 での 摂 取 量 です なお 無 毒 性 量 では ADIの100 倍 になりますのでハム62.5kgに 相 当 します 14
食 品 添 加 物 は 多 く 摂 りすぎると 健 康 に 害 を 及 ぼすことがあります 食 品 安 全 委 員 会 では 科 学 的 なデータをもとに 食 品 健 康 影 響 評 価 の 結 果 として 一 生 食 べ 続 けても 安 全 だと 考 えられる 量 一 日 摂 取 許 容 量 を 決 定 します 食 品 安 全 委 員 会 が 決 めた 一 日 摂 取 許 容 量 をもとに 厚 生 労 働 省 が 食 品 添 加 物 の 使 い 方 のルールを 決 めて 食 品 添 加 物 を 使 う 食 品 メーカーがルールを 守 ることで 安 全 が 確 保 されています 食 品 メーカーがルールを 守 っているかどうかは 輸 入 食 品 は 主 に 厚 生 労 働 者 が 国 産 の 食 品 は 豊 田 市 や 愛 知 県 などの 地 方 自 治 体 が 検 査 や 監 視 により 確 認 しています 15
食 品 安 全 委 員 会 では 委 員 会 専 門 調 査 会 の 資 料 や 議 事 録 をホームページで 公 開 し たり 評 価 の 結 果 を 分 かりやすく 解 説 した 季 刊 誌 食 品 安 全 を 発 行 しています 季 刊 誌 食 品 安 全 はホームページからご 覧 になれます また 毎 週 金 曜 日 にメールマガジンを 発 行 しています トップページの 左 側 にある 食 品 安 全 e-マガジンのコーナーを 見 ていただきますとメー ルマガジンの 登 録 ができるようになっています メールマガジンではタイムリーな 情 報 を 提 供 していますので ぜひ 登 録 をお 願 いしま す 16
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