報 告 携 帯 電 話 による 食 事 写 真 を 用 いた 重 症 るい 痩 学 生 に 対 する 栄 養 相 談 庄 子 文 恵 1)2), 苅 部 明 彦 1)2), 伊 藤 めぐみ 1)2), 佐 藤 洋 美 1)2), 太 田 美 智 長 谷 川 洋 子 1)2), 三 井 栄 子 1)2), 飛 田 渉 1 )2 )* 1) 東 北 大 学 高 等 教 育 開 発 推 進 センター,2) 東 北 大 学 保 健 管 理 センター 1)2), 1.はじめに 近 年, 若 年 女 性 のるい 痩 が 増 えている. 国 民 健 康 栄 養 調 査 では 平 成 10 年 頃 から20 歳 代 女 性 のやせ 傾 向 が 問 題 になりはじめ, 平 成 16 年 には21.4%がBMI18.5 未 満 のやせであることが 報 告 されている 1). 若 年 女 性 の るい 痩 は, 不 定 愁 訴 症 候 群, 月 経 異 常 の 発 生, 骨 密 度 の 低 下, 死 亡 率 の 上 昇, 妊 娠 に 伴 う 低 体 重 児 の 発 生, さらに 低 体 重 児 が 成 人 になり 生 活 習 慣 病 になりやすい など, 多 くの 健 康 上 の 問 題 を 抱 えるとされる 2). 栄 養 相 談 により 健 康 的 な 食 生 活 を 継 続 することが できれば, 体 組 成 の 正 常 化 健 康 障 害 の 発 症 リス クを 軽 減 することも 期 待 できる. 本 学 保 健 管 理 セン ターでは, 毎 年 実 施 している 定 期 健 康 診 断 のデータ を 基 にBMI18.5 以 下 をるい 痩 者 として 抽 出 している. BMI15.0 以 下 の 者 は 二 次 検 診 にて 学 医 の 診 察 により, 経 過 観 察 となった 学 生 が 栄 養 相 談 の 対 象 者 となる 3). 栄 養 相 談 においては, 自 己 申 告 による 栄 養 評 価 のため, るい 痩 学 生 では, 実 際 の 栄 養 摂 取 の 把 握 がしばしば 困 難 である. 今 回, 重 度 のるい 痩 学 生 に 対 し, 携 帯 電 話 による 食 事 写 真 を 用 いた 栄 養 相 談 を 行 い, 有 効 である と 思 われた 事 例 を 経 験 したので 報 告 する. 2. 事 例 19 歳 女 性 身 長 159.1cm 体 重 35.3kg BMI=14 小 さい 頃 から 低 体 重 で, 両 親, 妹 ともにスリムな 体 型 である. 甘 いものが 好 きで, 間 食 習 慣 がある. 高 校 時 の 体 重 は 最 大 で42.0kgであった. 高 校 の 課 外 活 動 で は 運 動 部 に 所 属 しており, 体 重 を 増 やすことに 対 する 嫌 悪 感 を 持 っていなかった. 部 活 引 退 後 ( 平 成 19 年 8 月 ) 体 重 が 減 少 し, 月 経 が 不 規 則 になったため, 近 くの 内 科 を 受 診 したが, 経 過 観 察 となった. 大 学 進 学 の 4 月 から 一 人 暮 らしとなった. 朝 食 と 夕 食 は 自 炊 をしており, 昼 食 のみ 学 食 を 利 用 している. 入 学 時 健 診 では 尿 蛋 白 陽 性 であり, 専 門 医 療 機 関 に 紹 介 された. 専 門 医 による 診 断 では 低 蛋 白 の 生 化 学 所 見 はあったが, 腎 機 能 に 異 常 は 見 られないとのことで 経 過 観 察 となった. 栄 養 相 談 1 回 目 : 平 成 20 年 4 月 某 日 栄 養 相 談 の 実 施 日 は, 学 生 のスケジュールを 考 慮 し て 設 定 した. 栄 養 相 談 に 来 るたびに 体 組 成 を 測 定 し, 主 に 体 重 と 体 脂 肪 を 中 心 に 評 価 した. 初 回 の 栄 養 相 談 では, 栄 養 士 の 自 己 紹 介 から 始 まり,やせ 願 望, 過 去 現 在 の 食 生 活 などを30 分 以 上 かけて 聞 き 取 りをして 情 報 収 集 をした.また24 時 間 思 い 出 し 法 により 前 日 の 摂 取 カロリーを 把 握 した.その 結 果, 必 要 摂 取 カロリー 1400kcalであったが, 油 脂 類, 野 菜 類 が 不 足 していた ( 図 1 ). 糖 尿 病 交 換 表 4) を 基 に 食 品 配 分 表 を 作 成 して 渡 し, 目 で 判 断 できるように 食 品 模 型 を 使 い 1 日 の 適 正 食 事 量 やバランスの 理 解 に 努 め, 1 日 の 油 類 の 適 量 と 1 日 の 野 菜 量 の 目 安 を 指 導 した. [ 食 事 指 導 内 容 ] 指 示 単 位 :17.5 単 位 (1400kcal) 目 標 体 重 :45.6 kg (BMI=18.0) 1 食 あたりのご 飯 量 の 目 安 : 150g( 浅 めのお 茶 椀 1 杯 程 度 ) *) 連 絡 先 :980-8576 宮 城 県 仙 台 市 青 葉 区 川 内 41 東 北 大 学 保 健 管 理 センター 229
その 他 野 菜 類 油 脂 類 炭 水 化 物 1.5 0.5 1 日 のたんぱく 質 のおかずの 目 安 : たんぱく 質 食 品 は 1 日 4 つ 程 度 を 目 安 に. たら 1 切 れ(100g), 薄 切 り 豚 肉 は 2 枚 程 (40g), 納 豆 1 パック(40g), 卵 1 個 等 1 日 の 油 の 適 正 量 大 さじ1 杯 (10g): 揚 げ 物 は 1 日 1 品 程 度, 炒 め 物 料 理 は 2 品 まで 1 食 あたりの 野 菜 の 目 安 : 加 熱 した 野 菜 は 片 手 一 つ 分 のる 程 度, 生 野 菜 なら 両 手 にのる 程 度 1 日 の 牛 乳, 乳 製 品 の 目 安 : 牛 乳 180ml(コップ 1 杯 程 度 )またはヨーグルト なら180g 1 日 の 果 物 目 安 : バナナは 1 個,みかんは 2 個, 大 きめの 柑 橘 系 果 物 は 1 個 程 度. 栄 養 相 談 2 回 目 : 平 成 20 年 5 月 某 日 1 0 適 正 量 果 物 たんぱく 質 牛 乳 乳 製 品 類 指 導 前 図 1. 適 正 食 事 量 と 栄 養 相 談 前 の 食 事 摂 取 量 の 比 較 2 回 目 からは,この 食 事 量 で 満 足 しているかどうか, 4 月 から 一 人 暮 らしで 自 炊 をしていることで 不 便 な 点 などを 聞 き, 簡 単 に 作 れるレシピを 渡 すなどをして, 本 人 の 状 況 に 合 わせた 相 談 を 心 がけた. 自 炊 において 多 めに 料 理 を 作 ることで, 同 じおかずが 続 いてしまう との 相 談 を 受 けたので, 学 食 にてメニューを 選 ぶとき やスーパーでの 惣 菜 を 選 ぶときに, 普 段 食 べない 食 材 や 料 理 を 選 ぶように 指 導 した. 学 校 生 活 は, 運 動 部 のサークルに 所 属 してマネー ジャーを 務 めており,すぐに 友 達 もでき 楽 しい 様 子 で あった. 高 校 の 部 活 引 退 後 から, 運 動 習 慣 はなかった が, 入 学 後 に 自 転 車 通 学 となったことで, 本 人 は 体 重 の 増 加 とともに 体 力 が 付 いてきていることを 自 覚 して きた.ゴールデンウィークや 夏 季 休 暇 で 実 家 に 帰 省 す る 機 会 もあり, 体 重 は37.5kgとなり2.2kg 増 量 した. 栄 養 相 談 3 回 目 : 平 成 20 年 6 月 某 日 買 い 物 に 行 く 時 間 がなく, 冷 蔵 庫 に 食 品 が 少 ないと きがあり,たんぱく 質 のおかずが 足 りない 日 があると の 相 談 を 受 けたので, 保 存 食 品 である 冷 凍 食 品 を 利 用 して 補 うように 指 導 した.また, 前 回 の 栄 養 相 談 にお いて 体 脂 肪 が 下 がっていたので, 体 脂 肪 について, 摂 取 エネルギーと 消 費 エネルギーについて を 話 し た.また, 自 炊 をする 時 に 参 考 になると 思 い,レシピ の 配 布 も 行 った. 栄 養 相 談 4 回 目 : 平 成 20 年 8 月 某 日 食 事 写 真 により 一 週 間 の 食 事 内 容 をより 具 体 的 に 把 握 することとした. 具 体 的 には 相 談 者 の 携 帯 電 話 を 用 いて 日 常 の 食 事 写 真 ( 図 2 ) 1 週 間 分 ( 朝 食 1 日 分 : 平 成 20 年 6 月 某 日, 夕 食 7 日 分 : 平 成 20 年 6 月 某 日 ~ 7 月 某 日 )を 撮 影 し, 栄 養 士 に 電 子 メールにて 送 信 し てもらい 評 価 した. 本 人 の 希 望 から, 昼 食 は 学 食 で 摂 っているため 写 真 を 撮 る 事 が 出 来 ず, 把 握 することが 出 来 なかったが, 昼 食 以 外 については 適 正 食 事 量 を 意 識 して 摂 っている ことがわかった.また 実 家 から 送 られたメロンがあり 日 常 の 食 事 よりも 豪 華 であったようであるが, 主 食, 主 菜, 副 菜 の 3 品 が 揃 っておりバランスが 良 く, 食 事 量 も 適 正 であった. 初 回 の 栄 養 相 談 の 前 日 で 把 握 した 食 事 と 比 較 してみると, 油 脂 類 も 適 量 になっており, 図 2. 携 帯 電 話 による 食 事 写 真 例 ( 朝 食 ) 230
その 他 野 菜 類 炭 水 化 物 1.5 1 0.5 0 果 物 たんぱく 質 体 重 の45.6 kg(bmi=18.0)には 達 しておらず, 本 人 の 当 面 の 目 標 体 重 は42~43kgを 目 指 している 状 況 で ある. 体 脂 肪 は11.3%から17.2%となり 適 正 値 になっ た( 図 5 ). 油 脂 類 牛 乳 乳 製 品 類 図 5.るい 痩 学 生 体 脂 肪 率 の 推 移 適 正 量 指 導 後 15.80 17.20 図 3. 適 正 食 事 量 と 栄 養 相 談 後 の 食 事 摂 取 量 の 比 較 体 脂 肪 (%) 11.30 9.30 12.30 野 菜 不 足 も 解 消 されていた( 図 3 ).その 他 としては 間 食 について 指 導 した. 栄 養 相 談 5 回 目 : 平 成 20 年 12 月 某 日 12 月 某 日 の 昼 食 の 内 容 を 聞 き 取 り, 評 価 した.その 結 果, 主 食 主 菜 副 菜 と 3 品 揃 った 食 事 内 容 であり, バランスが 良 く 食 事 量 も 摂 れていた. 本 人 は 料 理 をす ることが 面 倒 な 日 は, 単 品 料 理 になることが 時 々あっ たと 話 していたが, 今 後 も 日 常 の 食 事 を 意 識 して 摂 っ ていきたいと 話 していた. まとめ 初 回 の 栄 養 相 談 から 3 ヶ 月 間 は, 1 ヶ 月 に 1 回 の 頻 度 で 来 てもらい,その 後 は 2 ヶ 月 に 1 回, 3 ヶ 月 に 1 回 と 期 間 を 広 げて, 合 計 5 回 の 継 続 的 な 相 談 を 試 みた. 月 経 不 順 は 軽 快 していないが, 初 回 の 栄 養 相 談 から 1 ヵ 月 後 で2.2kg 増, 2 ヵ 月 後 2.8kg 増, 4 ヶ 月 後 5.2kg 増, 8 ヵ 月 後 に5.3kg 増 と 栄 養 相 談 を 重 ねるとともに 順 調 に 体 重 も 増 えていった( 図 4 ). 5 回 目 の 栄 養 相 談 で,40.6kg(BMI=16.0)となったが,いまだ 目 標 体 重 (kg) 40.5 40.6 37.5 38.1 35.3 第 1 回 (4 月 ) 第 2 回 (5 月 ) 第 3 回 (6 月 ) 第 4 回 (8 月 ) 第 5 回 (12 月 ) 図 4.るい 痩 学 生 体 重 の 推 移 第 1 回 (4 月 ) 第 2 回 (5 月 ) 第 3 回 (6 月 ) 第 4 回 (8 月 ) 第 5 回 (12 月 ) 図 5.るい 痩 学 生 体 脂 肪 率 の 推 移 3. 考 察 学 校 健 診 でのるい 痩 学 生 のスクリーニング スリム 志 向 が 強 まる 現 代 において, 学 校 健 診 におけ るるい 痩 学 生 の 早 期 発 見 は,スクリーニング 対 象 者 が 多 い 学 校 保 健 現 場 での 実 施 には 限 界 がある. 学 校 健 康 診 断 における 予 防 早 期 発 見 のガイドライン では, 学 校 健 診 時 の 身 長 体 重 から 1 )やせ( 標 準 体 重 の- 15% 以 下 )と 判 定 され, 加 えて 2 ) 成 長 曲 線 異 常 があ り,さらに 3 ) 徐 脈 を 合 併 する 場 合 に 医 療 機 関 への 紹 介 する 2). 思 春 期 のるい 痩 は, 難 治 性 で 思 春 期 に 好 発 の 疾 患 で あるにも 関 わらず, 学 校 保 健 現 場 で 見 逃 されている 場 合 が 多 いと 言 われる.そして 学 校 において 思 春 期 のる い 痩 の 疑 いが 指 摘 された 場 合 でも, 患 者 とその 保 護 者 の 疾 病 否 認 が 強 いことや, 疾 患 についての 知 識 の 普 及 が 十 分 でないことから, 病 状 が 進 行 してから 医 療 機 関 を 受 診 し 治 療 が 開 始 されることが 多 い 2).このように るい 痩 学 生 は 本 人 の 病 的 認 識 が 薄 いために, 医 療 者 側 からのアプローチが 必 要 である. 本 件 の 学 生 も 本 人 は 自 覚 症 状 無 くるい 痩 の 認 識 が 欠 落 していたが, 定 期 健 康 診 断 において 抽 出 され, 二 次 検 診 事 後 指 導 を 行 い, るい 痩 を 改 善 することが 出 来 た. 本 学 の 定 期 健 康 診 断 において,るい 痩 学 生 を 早 期 発 見 し, 事 後 指 導 してい ることは 意 義 のあることだと 考 える. 231
本 事 例 のるい 痩 と 神 経 性 食 欲 不 振 症 との 関 係 本 事 例 では 強 いるい 痩 を 呈 していたが, 身 体 的 異 常 は 月 経 不 順 のみで, 自 覚 的 な 症 状 や 外 面 的 な 不 健 康 感 は 無 く, 客 観 的 な 低 体 重 の 所 見 との 乖 離 が 感 じられた. るい 痩 の 原 因 として 身 体 的 問 題 を 認 めないため, 何 ら かの 理 由 による 食 行 動 の 異 常 が 背 景 にあると 考 えられ た. 神 経 性 食 欲 不 振 症 とは 心 理 的 な 要 因 で 食 行 動 の 異 常 をきたす 疾 患 であるが,1 標 準 体 重 の-20%のやせが 3 ヶ 月 以 上 続 くこと2 小 食, 多 食, 隠 れ 食 いなどの 食 行 動 の 異 常,3 体 重 や 体 型 についての 歪 んだ 認 識,4 発 症 年 齢 は30 歳 以 下,5 女 性 ならば 無 月 経 があり,や せの 原 因 と 考 えられる 器 質 的 疾 患 や 精 神 疾 患 がない 場 合 に 神 経 性 食 欲 不 振 症 と 診 断 される 5). 本 事 例 は 標 準 体 重 (BMI=22.0)が55.7kgであるた め,80% 以 下 の 体 重 となると44.6kg 以 下 となる. 入 学 時 の 体 重 は,35.3kgであったため, 入 学 以 降 において も 3 ヶ 月 やせが 持 続 し, 無 月 経 であった. 本 件 の 学 生 は 神 経 性 食 欲 不 振 症 の 項 目 のうち 少 なくとも1345 が 該 当 し, 神 経 性 食 欲 不 振 症 に 相 当 する 重 症 度 の 高 い るい 痩 と 思 われた. るい 痩 の 要 因 神 経 性 食 欲 不 振 症 の 発 病 を 増 長 しやすい 要 因 として 患 者 の 性 格 傾 向 養 育 環 境 や 家 族 関 係, 教 育 や 文 化 の 影 響 も 指 摘 されており,ストレスが 摂 食 中 枢 に 影 響 を 及 ぼしやすい 遺 伝 素 因 があるとも 考 えられ, 同 一 家 族 内 に 複 数 例 の 発 症 もある. 発 病 時 のストレス 要 因 の 大 半 は 勉 学 の 過 重,スポーツや 習 い 事 の 負 担, 進 路 の 失 敗, 人 間 関 係 の 悩 み, 家 庭 内 葛 藤,いじめなどである. これらは 思 春 期 に 遭 遇 しやすく 周 囲 の 援 助 を 得 ながら 自 力 で 対 処 していくものであるが,ストレスを 適 切 に 処 理 する 能 力 であるコーピングスキルが 未 熟 であるこ とが 背 景 にあると 言 われている. 本 事 例 自 身 は 体 重 減 少 の 要 因 として,もともと 低 体 重 であったところに, 高 校 の 部 活 引 退 後 は 間 食 を 全 く 摂 らなくなったこと, 運 動 習 慣 がなくなったことで 筋 力 が 低 下 したということ, 大 学 入 試 の 準 備 期 間 中 のた め 食 事 を 二 の 次 にし, 食 事 時 間 の 確 保 が 少 なかったこ とを 挙 げた. 栄 養 相 談 からは, 家 族 全 員 がスリム 体 型 であり, 低 体 重 に 対 する 病 的 認 識 が 希 薄 であることや, 基 本 的 な 食 事 に 対 する 関 心 が 希 薄 であるなど, 家 庭 生 活 における 食 環 境 の 問 題 が 背 景 にあることが 疑 われた. 体 重 増 加 の 要 因 本 事 例 では 幸 い 持 続 的 な 体 重 増 加 が 認 められた. 体 重 増 加 の 要 因 としては, 大 学 入 試 というストレスから 解 放 されたこと, 大 学 へ 進 学 し 新 しい 環 境 になったこ とで, 今 までの 生 活 スタイルが 一 変 し, 食 事 の 是 正 が 比 較 的 容 易 に 実 践 出 来 たことが 背 景 にある.そして 一 人 暮 らしになり 食 事 を 自 己 管 理 しなければならないと いう 良 いタイミングに, 栄 養 相 談 が 行 われ, 持 続 的 な 支 援 により 食 事 や 体 重 を 意 識 して 生 活 するようになっ たことが 挙 げられる. 栄 養 相 談 では, 質 問 等 で 聞 き 出 しにくい 点 が 多 く 苦 労 したが, 回 数 を 重 ねることで, 信 頼 関 係 を 築 くこと が 出 来 た. 肥 満 症 学 生 に 対 する 栄 養 相 談 では 継 続 的 指 導 がより 有 効 であることが 示 されている 6) が,るい 痩 学 生 に 対 しても 継 続 的 な 支 援 で 栄 養 相 談 を 行 ったこと が 体 重 増 加 につながり 有 意 であると 考 えられた. 携 帯 電 話 による 食 事 写 真 の 有 用 性 今 回, 携 帯 電 話 の 電 子 メールを 用 いて 1 週 間 の 食 事 写 真 を 送 ってもらった. 1 週 間 の 食 事 写 真 を 撮 り 続 け ることは 相 談 者 にとって 自 己 の 食 生 活 を 意 識 すること につながり, 食 事 記 録 を 書 くよりも 負 担 が 少 なく, 相 談 者 にとっても 利 点 であったと 思 われる. また24 時 間 思 い 出 し 法 よりも 信 憑 性 があり, 食 事 写 真 は 対 象 者 と 栄 養 士 の 認 識 のずれを 確 認 できる 手 段 と なるが,その 内 容 を 具 体 的 に 栄 養 士 と 共 有 したことで, 内 容 がより 正 確 な, 相 談 者 へ 寄 り 添 った 栄 養 相 談 につ なげられ, 栄 養 相 談 の 効 果 が 高 まったと 感 じた. 限 界 としては, 食 事 写 真 を 撮 っていない 期 間 の 食 事 量 が 把 握 できないことや, 虚 偽 の 申 告 の 可 能 性 などはあるが, 継 続 的 な 食 事 是 正 が 出 来 ているかどうかは, 実 際 の 体 重 の 増 加 の 有 無 で 修 正 することが 可 能 である. 今 後 の 課 題 るい 痩 はときに 身 体 的 危 機 を 生 じうる 重 大 な 問 題 で あるが, 当 事 者 の 病 的 認 識 が 希 薄 である 場 合 が 多 く, 232
健 診 者 側 からのアプローチが 必 要 である. 対 象 者 を 早 期 に 治 療 への 誘 導 することが 重 要 である. 対 象 者 のる い 痩 に 対 する 認 識 を 変 容 させながら, 治 療 的 介 入 に 誘 導 する 教 育 的 アプローチの 開 発 が 必 要 と 思 われる ま た 栄 養 相 談 の 導 入 を 円 滑 かつ 的 確 に 行 うためには, 相 談 者 の 背 景 を 把 握 するための 問 診 表 等 の 準 備 が 必 要 と 思 われた. 謝 辞 本 研 究 は 東 北 大 学 高 等 教 育 開 発 推 進 センター 長 裁 量 経 費 平 成 20 年 度 高 等 教 育 の 開 発 推 進 に 関 する 調 査 研 究 費 による 成 果 の 一 部 である. 学 生 支 援 のための 研 究 への 助 成 に 感 謝 する. 文 献 1 ) 厚 生 労 働 省 健 康 局 総 務 課 生 活 習 慣 病 対 策 室 平 成 16 年 国 民 健 康 栄 養 調 査 報 告 2006 (http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou06/01. html) 2 ) 厚 生 労 働 科 学 研 究 ( 子 ども 家 庭 総 合 研 究 事 業 ) 思 春 期 やせ 症 と 思 春 期 の 不 健 康 やせの 実 態 把 握 および 対 策 に 関 する 研 究 班 思 春 期 やせ 症 小 児 診 療 に 関 わ る 人 のためのガイドライン 文 光 堂 2008. 3 ) 学 生 定 期 健 康 診 断 の 流 れと 管 理 基 準 東 北 大 学 保 健 管 理 センター 年 報 平 成 19 年 度 p19.2007. 4 ) 糖 尿 病 食 事 療 法 のための 食 品 交 換 表 第 6 版 日 本 糖 尿 病 学 会 編 文 光 堂 2002. 5 ) 財 団 法 人 難 病 医 学 研 究 財 団 難 病 情 報 センター 中 枢 性 摂 食 異 常 症 (http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/072. htm) 6 ) 丹 野 久 美 子 三 井 栄 子 長 谷 川 洋 子 太 田 美 智 伊 藤 め ぐみ 洞 口 博 子 豊 巻 澄 江 北 浩 樹 飛 田 渉 肥 満 学 生 に 対 す る 栄 養 指 導 の 介 入 効 果 CAMPUS HEALTH42:63-68.2005. 233