野村資本市場研究所|株式譲渡益課税の申告分離一本化のインパクト (PDF)



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年 金 払 い 退 職 給 付 制 度 における 年 金 財 政 のイメージ 積 立 時 給 付 時 給 付 定 基 (1/2) で 年 金 を 基 準 利 率 で 付 利 給 付 定 基 ( 付 与 利 の ) 有 期 年 金 終 身 年 金 退 職 1 年 2 年 1 月 2 月 ( 終 了 )

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検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

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 三郷市市街化調整区域の整備及び保全の方針(案)

損 益 計 算 書 ( 自 平 成 23 年 4 月 1 日 至 平 成 24 年 3 月 31 日 ) 金 額 ( 単 位 : 百 万 円 ) 売 上 高 99,163 売 上 原 価 90,815 売 上 総 利 益 8,347 販 売 費 及 び 一 般 管 理 費 4,661 営 業 利 益

ような 厚 生 年 金 基 金 関 係 の 法 改 正 がなされており (2)については 平 成 16 年 10 月 1 日 から (1) 及 び(3)については 平 成 17 年 4 月 1 日 から 施 行 されている (1) 免 除 保 険 料 率 の 凍 結 解 除 ( 母 体 企 業 (

科 売 上 原 価 売 上 総 利 益 損 益 計 算 書 ( 自 平 成 26 年 4 月 1 日 至 平 成 27 年 3 月 31 日 ) 目 売 上 高 販 売 費 及 び 一 般 管 理 費 営 業 利 益 営 業 外 収 益 受 取 保 険 金 受 取 支 援 金 補 助 金 収 入 保


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就 業 規 則 ( 福 利 厚 生 ) 第 章 福 利 厚 生 ( 死 亡 弔 慰 金 等 ) 第 条 法 人 が 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 民 間 社 会 福 祉 施 設 等 職 員 共 済 規 程 に 基 づき 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 との 間 において 締 結 す

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1 ガス 供 給 業 を 行 う 法 人 の 事 業 税 の 課 税 について ガス 供 給 業 を 行 う 法 人 は 収 入 金 額 を 課 税 標 準 として 収 入 割 の 申 告 となります ( 法 72 条 の2 72 条 の 12 第 2 号 ) ガス 供 給 業 とその 他 の 事

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2. 前 項 の 規 定 にかかわらず 証 券 会 社 等 又 は 機 構 を 通 じた 届 出 の 対 象 となっていない 事 項 については 当 会 社 の 定 める 書 式 により 株 主 名 簿 管 理 人 宛 に 届 け 出 るものとす る ( 法 人 株 主 等 の 代 表 者 ) 第

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公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

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10 期 末 現 在 の 資 本 金 等 の 額 次 に 掲 げる 法 人 の 区 分 ごとに それぞれに 定 める 金 額 を 記 載 します 連 結 申 告 法 人 以 外 の 法 人 ( に 掲 げる 法 人 を 除 きます ) 法 第 292 条 第 1 項 第 4 号 の5イに 定 める

定 性 的 情 報 財 務 諸 表 等 1. 連 結 経 営 成 績 に 関 する 定 性 的 情 報 当 第 3 四 半 期 連 結 累 計 期 間 の 業 績 は 売 上 高 につきましては 前 年 同 四 半 期 累 計 期 間 比 15.1% 減 少 の 454 億 27 百 万 円 となり

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18 国立高等専門学校機構

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注 記 事 項 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 : 無 (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 有 ( 注 ) 詳 細 は 添 付 資 料 4ページ 2.サマリー 情 報 (

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加 算 税 制 度 の 見 直 し 等 1. 現 行 制 度 の 概 要 関 税 においては 国 税 ( 輸 入 貨 物 に 対 する 内 国 消 費 税 を 含 む 以 下 同 じ ) の 制 度 と 同 様 の 過 少 申 告 加 算 税 無 申 告 加 算 税 及 び 重 加 算 税 の 制

所 得 税 ~ 株 式 譲 渡 所 得 等 の 分 離 課 税 制 度 の 変 更 上 場 株 式 等 及 び 特 定 公 社 債 等 と 非 上 場 株 式 等 及 び 一 般 公 社 債 等 が 別 々の 分 離 課 税 制 度 となります 特 定 公 社 債 等 に 係 る 利 子 所 得 及

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Transcription:

個 人 マーケット 株 式 譲 渡 益 課 税 の 申 告 分 離 一 本 化 のインパクト 個 人 投 資 家 の 株 式 等 のキャピタル ゲインに 対 する 課 税 は 2001 年 4 月 1 日 以 降 申 告 分 離 課 税 に 一 本 化 されることが 決 まっている 実 際 にはほとんどの 個 人 投 資 家 が 源 泉 分 離 課 税 を 選 択 しており 申 告 分 離 課 税 に 一 本 化 されると 実 質 増 税 になるとして にわかに 源 泉 分 離 課 税 廃 止 について 延 期 論 が 高 まっているが 自 民 党 税 制 調 査 会 としては 予 定 通 りに 実 施 する 方 針 を 固 めたもようである 本 レポートでは こうした 状 況 に 鑑 み 申 告 分 離 課 税 の 一 本 化 によるインパクトについ て 若 干 の 試 算 と 検 討 を 行 った 1. 個 人 投 資 家 の 譲 渡 益 課 税 制 度 と 選 択 行 動 1) 対 照 的 な 課 税 方 式 - 申 告 分 離 課 税 と 源 泉 分 離 課 税 89 年 4 月 に 導 入 された 個 人 投 資 家 の 株 式 等 の 譲 渡 益 に 対 する 課 税 制 度 は 申 告 分 離 課 税 を 原 則 とし 一 定 の 場 合 に 源 泉 分 離 課 税 を 選 択 できる 仕 組 みが 採 用 されている( 旧 租 税 特 別 措 置 法 37 条 の 11 第 1 項 第 2 項 ) 1 申 告 分 離 課 税 を 選 択 した 場 合 には 譲 渡 益 (= 譲 渡 価 額 - 取 得 価 額 )に 26% 課 税 され 源 泉 分 離 課 税 を 選 択 した 場 合 は 譲 渡 価 額 の 5.25%を 利 益 とみなし その 利 益 額 の 20% つまり 譲 渡 価 額 の 1.05%が 所 得 税 として 源 泉 徴 収 される( 表 1) 個 人 投 資 家 のキャピタル ゲインが 原 則 課 税 となった 当 初 申 告 分 離 課 税 を 選 択 した 場 合 には 相 続 株 や かなり 以 前 に 取 得 し 取 得 価 額 が 分 からない 株 などの 取 得 価 額 の 特 定 に 当 たって 実 務 上 非 常 に 混 乱 した 券 面 の 裏 面 に 記 載 された 名 義 書 換 日 や 証 券 会 社 から 提 供 された 取 引 報 告 書 などをもとに 取 得 価 額 を 拾 い 上 げる 努 力 がなされた 取 得 価 額 を 特 定 することができない 場 合 は 土 地 の 譲 渡 所 得 計 算 に 関 する 規 定 にならい 譲 渡 価 額 の 5%を 取 得 価 額 とする 通 達 が 出 されている ただ この 規 定 に 基 づくと 譲 渡 益 は 譲 渡 価 額 の 95%となることから 多 額 の 税 負 担 となる そのほか 同 じ 銘 柄 の 株 式 を 何 回 も 分 けて 購 入 している 場 合 や 株 式 分 割 などがあった 場 合 には 譲 渡 のたびに 取 得 価 額 を 総 平 均 法 に 準 じた 方 法 で 計 算 し 直 さなければならないという 煩 雑 さがある これに 対 し 源 泉 分 離 課 税 を 選 択 すると 上 記 のような 取 得 価 額 の 計 算 や 記 録 保 持 など 1 原 則 課 税 となった 当 時 は 有 価 証 券 取 引 税 の 税 率 引 き 下 げ( 譲 渡 価 額 の 0.5%から 0.3%に)と 一 般 の 個 人 の 預 貯 金 の 利 子 に 対 する 非 課 税 制 度 の 廃 止 も 同 時 に 行 われ 金 融 税 制 の 大 きな 転 換 点 となった 1

資 本 市 場 クォータリー 2000 年 夏 を 行 う 必 要 がなく 譲 渡 の 都 度 源 泉 徴 収 が 行 われることによって 課 税 関 係 が 終 了 する 多 くの 個 人 投 資 家 にとって 源 泉 分 離 課 税 の 選 択 は 税 負 担 の 程 度 以 上 に 実 際 の 手 続 き の 簡 便 さから 選 好 されたといってよい 実 際 に 個 人 投 資 家 の 売 却 の 8 割 は 源 泉 分 離 課 税 が 選 択 されているようである 2 申 告 分 離 課 税 か 源 泉 分 離 課 税 のいずれを 選 択 するかは 譲 渡 のときまでに 決 めればよく 支 払 う 税 額 の 多 寡 (または 有 無 )に 関 係 なく 個 人 投 資 家 の 自 由 に 委 ねられている いずれ の 課 税 方 法 を 選 択 した 方 が 税 負 担 が 有 利 なるかについては 利 益 率 4.208%という 基 準 を もとに 4.208% 超 の 場 合 は 源 泉 分 離 課 税 4.208% 以 下 の 場 合 は 申 告 分 離 課 税 というよう に 判 断 することができる 3 だが 実 際 には 申 告 分 離 課 税 を 選 択 した 場 合 には その 譲 渡 における 譲 渡 損 益 を 計 算 するために 取 得 価 額 を 証 明 する 書 類 を 探 したり 譲 渡 までに 数 回 に 分 けて 購 入 している 場 合 などには 取 得 価 額 を 再 計 算 したりする 必 要 があり さらに 当 該 株 式 以 外 の 銘 柄 や 転 換 社 債 などを 譲 渡 している 場 合 には それぞれの 譲 渡 損 益 を 年 間 で 通 算 し 譲 渡 益 が 出 る 場 合 には 翌 年 3 月 15 日 までに 確 定 申 告 納 税 しなければならない このような 煩 雑 さ から 損 失 が 生 じていても 源 泉 分 離 課 税 を 選 択 する 個 人 投 資 家 は 多 い 特 に バブル 崩 壊 以 降 の 株 式 市 場 において 株 式 等 の 譲 渡 をしている 場 合 には 譲 渡 価 額 の 方 が 取 得 価 格 より 低 く 譲 渡 損 を 生 じている 場 合 が 少 なくないとみられるが 実 際 には 源 泉 分 離 課 税 を 選 択 し 納 税 ( 源 泉 徴 収 )しているケースが 多 いようである こうした 個 人 投 資 家 の 課 税 方 式 の 選 択 行 動 から 煩 雑 かつ 税 率 が 高 い 申 告 分 離 課 税 を 避 け 簡 便 かつ 税 率 が 低 い 源 泉 分 離 課 税 を 好 むのは 至 極 当 然 と 考 えられる 表 1 申 告 分 離 課 税 制 度 と 源 泉 分 離 課 税 制 度 の 比 較 適 用 対 象 譲 渡 所 得 の 計 算 申 告 および 納 税 税 務 署 への 支 払 調 書 ( 出 所 ) 野 村 総 合 研 究 所 申 告 分 離 課 税 株 式 ( 新 株 引 受 権 を 含 む) 転 換 社 債 ワラント 債 特 定 株 式 投 信 税 額 =( 譲 渡 価 額 - 取 得 価 額 ) 26% ( 所 得 税 20%と 住 民 税 6%) 他 の 株 式 等 譲 渡 損 益 と 年 間 通 算 でき る 他 の 所 得 と 分 離 して 申 告 し 毎 年 3 月 15 日 までに 納 税 1 回 の 支 払 金 額 が 30 万 円 超 の 場 合 に 提 出 ( 特 例 方 式 原 則 100 万 円 超 ) 源 泉 分 離 課 税 上 場 株 式 上 場 転 換 社 債 上 場 ワラン ト 債 の 証 券 会 社 を 通 じた 市 場 での 譲 渡 税 額 = 譲 渡 価 額 1.05% ( 転 換 社 債 ワラント 債 は 0.5%) 所 得 税 のみ 住 民 税 は 非 課 税 申 告 は 不 要 売 却 の 都 度 証 券 会 社 に よって 税 額 が 計 算 され 源 泉 徴 収 され る 提 出 されない 2 2000 年 3 月 12 日 付 け 毎 日 新 聞 朝 刊 ( クロス 取 引 は 合 法 源 泉 分 離 課 税 廃 止 大 蔵 省 が 日 証 協 に 見 解 ) 3 申 告 分 離 課 税 の 税 額 = 源 泉 分 離 課 税 の 税 額 の 恒 等 式 : ( 取 得 価 額 利 益 率 26%= 取 得 価 額 (1+ 利 益 率 ) 1.05%)から 利 益 率 (= 利 益 / 取 得 価 額 ) 4.208%が 算 出 される 2

株 式 譲 渡 益 課 税 の 申 告 分 離 一 本 化 のインパクト 2) 申 告 分 離 課 税 一 本 化 への 事 前 対 応 (1) 急 増 する 株 式 のクロス 取 引 99 年 来 申 告 分 離 課 税 への 一 本 化 が 現 実 に 認 識 されはじめ 株 価 の 上 昇 も 相 まって 取 得 価 額 を 確 定 することを 目 的 に 取 得 価 額 が 不 明 な 株 式 や 相 続 株 などかなり 以 前 から 保 有 している 株 式 で 取 得 価 額 が 時 価 に 比 して 相 当 低 い 株 式 を 中 心 に 源 泉 分 離 課 税 を 選 択 し た 売 却 が 急 増 している なかでも 上 場 会 社 の 同 族 関 係 者 が 自 社 株 の 保 有 を 継 続 しつつ 上 記 のニーズを 満 たすために 取 引 所 において 株 式 のクロス 取 引 が 行 われている 株 式 のクロス 取 引 については 譲 渡 益 課 税 導 入 当 初 から 問 題 視 する 向 きがあった つま り 保 有 する 株 式 を 市 場 で 売 却 すると 同 時 に それと 同 じ 銘 柄 の 株 式 を 同 数 買 い 戻 すこと は 経 済 合 理 性 のある 取 引 であるかどうか 売 却 損 が 出 る 場 合 は 当 該 取 引 が 租 税 回 避 行 為 ではないかといった 懸 念 から 税 務 上 否 認 されるおそれがあるとされてきた 納 税 者 の 側 が 実 際 に 否 認 された 税 務 署 の 処 分 につき 不 服 として 国 税 不 服 審 判 所 に 持 ち 込 んだケー スも 多 い しかしながら 申 告 分 離 課 税 への 一 本 化 への 事 前 対 応 として 急 増 したクロス 取 引 につい て 2000 年 3 月 17 日 国 税 庁 から 一 定 の 要 件 を 満 たすクロス 取 引 を 認 める 判 断 が 示 され た この 法 令 解 釈 通 達 ( 個 人 が 上 場 店 頭 売 買 株 式 を 売 却 するとともに 直 ちに 再 取 得 す る 場 合 の 当 該 売 却 に 係 る 源 泉 分 離 課 税 の 適 用 について 課 資 3-2 課 法 8-4 課 所 4-5)は 日 本 証 券 業 協 会 の 照 会 に 対 してその 見 解 を 認 める 回 答 がなされたものである 4 国 税 当 局 としても 申 告 分 離 課 税 一 本 化 への 事 前 対 応 の 動 きにブレーキをかけず ス ムーズな 移 行 ができるよう 配 慮 したものと 考 えられる 株 式 のクロス 取 引 が 税 務 上 問 題 ないとされる 要 件 上 場 株 式 店 頭 売 買 有 価 証 券 1 立 会 時 間 内 での 取 引 によるもの 2 立 会 時 間 外 での 取 引 であっても 東 証 の ToSTNeT 1 2 大 証 の J-NET 名 証 の N-NET によるもので 再 取 得 が 同 日 中 に 行 われないもの 1JASDAQ 売 買 システムによる 取 引 によるもの 2マーケットメイクを 行 う 証 券 会 社 を 通 じて 行 われたマーケットメイク 銘 柄 にか かる 取 引 によるもの 4 この 照 会 において こうしたクロス 取 引 が 証 券 取 引 上 直 ちに 問 題 となることはないとの 確 認 が 金 融 監 督 庁 から 得 られているが 証 券 取 引 法 を 遵 守 した 取 引 でなければならないことはいうまでもない また クロス 取 引 の 結 果 損 失 が 生 ずる 場 合 については 今 回 の 法 令 解 釈 通 達 の 対 象 とはなっていない 3

資 本 市 場 クォータリー 2000 年 夏 (2)にわかに 浮 上 した 源 泉 分 離 課 税 廃 止 の 延 期 論 株 券 等 の 譲 渡 には キャピタル ゲイン 税 だけでなく 有 価 証 券 取 引 税 が 課 税 されてい たが 96 年 に 金 融 ビッグ バン 構 想 が 打 ち 出 され 金 融 税 制 についてもグローバル スタ ンダードにあわせ 資 本 市 場 の 国 際 競 争 力 を 高 める 観 点 から 見 直 されることとなった ま ず 平 成 8 年 度 税 制 改 正 により 96 年 4 月 1 日 から 98 年 3 月 31 日 までの 間 証 券 会 社 以 外 の 者 が 株 券 等 を 譲 渡 する 場 合 には 原 則 である 0.3%の 税 率 を 0.21%に 引 き 下 げ 98 年 4 月 から 99 年 3 月 末 までは 0.1%とされた 他 方 譲 渡 益 課 税 については 増 税 とし 株 券 等 の 譲 渡 にかかる 源 泉 分 離 課 税 については 税 率 を 1%から 1.05%に 引 き 上 げている 5 さら に 平 成 10 年 度 税 制 改 正 および 平 成 11 年 度 税 制 改 正 により 99 年 4 月 から 有 価 証 券 取 引 税 が 廃 止 され 2001 年 4 月 以 降 の 個 人 投 資 家 の 譲 渡 益 に 対 する 源 泉 分 離 課 税 の 廃 止 申 告 分 離 課 税 への 一 本 化 が 決 定 された 有 価 証 券 取 引 税 と 源 泉 分 離 課 税 のセット 廃 止 が 決 まる 過 程 において 源 泉 分 離 課 税 の 廃 止 によりどのような 事 態 が 生 じるのか それに 対 する 対 応 策 等 について 実 のところ 十 分 な 議 論 がなされていないもようである この 背 景 には 大 蔵 省 サイドに みなし 利 益 への 課 税 という 制 度 を 廃 止 するという 点 で 共 通 した 源 泉 分 離 課 税 も 廃 止 すべきであるという 要 望 が 受 け 入 れられたこと 有 価 証 券 取 引 税 廃 止 に 向 けた 長 年 の 証 券 業 界 の 働 きかけがいよ いよ 実 現 するという 達 成 感 と 一 本 化 までに 時 間 があったことから 実 施 時 期 が 近 づいてか ら 再 度 議 論 すればよいといったムードがあったと 推 察 される 申 告 分 離 課 税 への 一 本 化 まで 1 年 をきった 今 株 式 のクロス 取 引 だけでなく 将 来 の 申 告 納 税 に 伴 う 諸 負 担 を 考 えて 源 泉 分 離 課 税 が 適 用 されるうちに 売 却 しておこうという 動 き も 活 発 化 するとみられる こうした 状 況 に 対 し 4 月 13 日 自 民 党 の 金 融 問 題 調 査 会 財 政 部 会 は 合 同 で 会 議 を 開 き 源 泉 分 離 課 税 を 当 分 の 間 存 続 させるという 方 向 が 示 された 申 告 分 離 課 税 への 一 本 化 の 延 期 が 確 定 するには 2000 年 末 に 決 定 される 2001 年 度 税 制 改 正 大 綱 に 盛 り 込 まれる 必 要 がある 当 初 は 合 同 会 議 の 存 続 提 案 を 自 民 党 の 税 制 調 査 会 ( 林 義 郎 会 長 )でも 取 り 上 げられる 見 通 しであったが 5 月 10 日 には 源 泉 分 離 課 税 の 予 定 通 りの 廃 止 を 進 める 方 針 が 示 された 3) 源 泉 分 離 課 税 とのセットで 廃 止 された 有 価 証 券 取 引 税 源 泉 分 離 課 税 制 度 の 廃 止 に 先 立 ち 行 われた 有 価 証 券 取 引 税 の 廃 止 により 99 年 は 96 及 び 97 年 に 比 べ 約 4000 億 円 98 年 に 比 べ 約 2000 億 円 の 減 税 となった( 表 2) 証 券 会 社 以 外 の 投 資 家 が 証 券 会 社 への 委 託 により 有 価 証 券 の 譲 渡 をした 場 合 又 は 証 券 会 社 へ 有 価 証 券 の 譲 渡 をした 場 合 には 証 券 会 社 が その 譲 渡 の 際 に 有 価 証 券 取 引 税 を 特 別 徴 収 する 5 源 泉 分 離 課 税 についてのみなし 譲 渡 益 税 率 (5% 5.25%)の 引 き 上 げは 96 年 4 月 1 日 から 98 年 3 月 31 日 までの 特 例 措 置 とされたが その 後 2000 年 3 月 31 日 まで さらに 源 泉 分 離 課 税 廃 止 までの 2001 年 3 月 31 日 までに 再 延 長 されている 4

株 式 譲 渡 益 課 税 の 申 告 分 離 一 本 化 のインパクト ことになっていた すなわち 特 別 徴 収 分 は 市 場 における 取 引 に 対 する 税 額 分 であり 個 人 投 資 家 の 市 場 売 買 シェアが 全 体 の 3 割 程 度 であることを 考 えると 個 人 投 資 家 が 96 年 の 税 率 引 き 下 げ 以 降 の 3 年 間 に 前 倒 しで 受 けた 減 税 分 としては 95 年 の 税 額 を 基 準 とすれ ば おおむね 600 億 円 (601 億 円 =116 億 円 +131 億 円 +354 億 円 )と 推 計 される なお 有 価 証 券 取 引 税 の 引 き 下 げと 同 時 に 源 泉 分 離 課 税 の 税 率 が 1.05%に 引 き 上 げられ ているが 96 年 には 前 年 比 35 億 円 増 となっているものの ビッグバン 直 後 に 相 次 いだ 金 融 機 関 の 経 営 破 たんの 影 響 をうけて 株 式 市 場 が 低 迷 したことからも 97 年 98 年 は 増 税 前 を 大 きく 下 回 っている 表 2 有 価 証 券 取 引 税 と 個 人 投 資 家 の 譲 渡 益 税 の 税 額 有 価 証 券 取 引 税 ( 税 額 億 円 ) 個 人 投 資 家 の 譲 渡 所 得 税 ( 税 額 億 円 ) 年 税 率 (%) 特 別 徴 収 分 うち 個 人 分 税 額 合 計 源 泉 税 率 (%) 源 泉 税 額 合 計 申 告 税 額 合 計 税 額 合 計 1989 0.3 7605 2282 13381 1.00 6044 774 6819 90 0.3 4042 1213 7829 1.00 4662 1836 6499 91 0.3 2180 654 4683 1.00 2585 1330 3915 92 0.3 1180 354 3136 1.00 1122 739 1861 93 0.3 1964 589 4455 1.00 1935 856 2791 94 0.3 1706 512 3791 1.00 1742 855 2596 95 0.3 1828 548 4786 1.00 1678 738 2415 96 0.3/0.21 1441 432 4208 1.00/1.05 2020 827 2847 97 0.21 1389 417 4026 1.05 1270 663 1933 98 0.21/0.1 648 194 2060 1.05 1013 579 1592 ( 注 1) 有 価 証 券 取 引 税 のうち 個 人 分 とは 特 別 徴 収 分 の 税 額 に0.3を 乗 じたものである ( 注 2)98 年 は 国 税 庁 ホームページに 公 表 された 速 報 値 である ( 出 所 ) 国 税 庁 統 計 年 報 書 ( 平 成 元 年 版 ~ 平 成 9 年 版 )より 野 村 総 合 研 究 所 作 成 5

資 本 市 場 クォータリー 2000 年 夏 2. 申 告 分 離 一 本 化 による 税 額 変 動 に 関 する 機 械 的 試 算 1) 試 算 の 前 提 条 件 及 び 計 算 手 法 ここでは 申 告 分 離 課 税 制 度 に 一 本 化 されることによって 個 人 投 資 家 が 支 払 う 税 額 の 変 化 がどの 程 度 になるのかを 試 算 する 基 本 的 には 1990 年 から 99 年 までの 間 に 購 入 し た 株 式 の 一 部 を 2000 年 末 に 売 却 すると 仮 定 したときの 申 告 分 離 による 税 額 と 源 泉 分 離 による 税 額 との 差 額 を 見 ようとするものである 売 却 時 の 株 価 水 準 によって 3 つのケー スを 想 定 した 試 算 を 行 った まず 申 告 分 離 源 泉 分 離 のそれぞれの 方 式 を 使 った 1 株 当 たりの 納 税 額 を 算 出 したう えで 個 人 投 資 家 の 売 買 高 を 利 用 して キャピタルゲイン 税 額 の 変 化 分 を 計 算 する 以 下 では 試 算 をするうえでの 前 提 条 件 及 びその 計 算 手 法 を 説 明 する 11 株 当 たり 納 税 額 各 課 税 方 式 に 基 づく 税 額 計 算 は 以 下 のように 行 う 申 告 分 離 による 税 額 = 取 得 価 額 利 益 率 26%( 所 得 税 20%+ 住 民 税 6%) 源 泉 分 離 による 税 額 = 取 得 価 額 (1+ 利 益 率 ) 1.05%( 但 し 1995 年 以 前 は 1.00%) 96 年 1~3 月 までの 税 率 は 1.00%であるが 96 年 の 源 泉 分 離 による 税 額 の 計 算 には 1.05%のみ 適 用 する 取 得 価 額 は 東 証 一 部 の 単 純 株 価 平 均 を 採 用 する 譲 渡 益 を 取 得 価 額 で 除 した 利 益 率 の 計 算 は 東 証 株 価 指 数 (TOPIX)を 利 用 して 行 う つまり 個 人 投 資 家 は 各 年 末 の TOPIX で 株 式 購 入 を 行 ったものと 仮 定 する 利 益 率 の 計 算 に TOPIX を 採 用 したのは 日 経 225 平 均 や 単 純 株 価 平 均 と 異 なって 銘 柄 別 の 上 場 株 数 のウェイトが 考 慮 されており 増 資 や 株 式 分 割 による 株 価 の 変 動 が 発 生 しに くいからである(TOPIX は 全 上 場 銘 柄 の 市 場 価 値 合 計 を 示 す 重 要 な 指 標 であり 有 償 増 資 の 権 利 落 ちや 公 募 新 株 の 追 加 発 行 などにより 上 場 株 式 数 に 増 減 が 生 じた 場 合 にも 基 準 時 価 総 額 がそれに 応 じて 修 正 されるため 指 数 の 連 続 性 が 維 持 されているという 点 で 優 れている) 以 上 の 前 提 に 基 づいて 算 出 された 申 告 分 離 源 泉 分 離 方 式 による 1 株 当 たりの 納 税 額 を 用 い 両 者 の 差 額 ( 申 告 分 離 課 税 額 - 源 泉 分 離 課 税 額 )を 導 いた 2 売 却 株 数 を 乗 じた 納 税 額 2000 年 末 に 売 却 する 株 数 は 1990 年 から 99 年 までに 個 人 投 資 家 が 東 証 大 証 名 証 の 三 市 場 で 買 付 を 行 ったものの 一 部 を 対 象 とする 個 人 投 資 家 による 課 税 方 式 の 選 択 率 は 源 泉 分 離 : 申 告 分 離 =8:2 と 仮 定 する すなわ ち 各 年 に 個 人 投 資 家 が 買 付 を 行 った 株 式 のうち 8 割 に 相 当 する 部 分 は 源 泉 分 離 方 式 によって 売 却 するものとする 6

株 式 譲 渡 益 課 税 の 申 告 分 離 一 本 化 のインパクト 但 し 利 益 率 がマイナスの 場 合 (=キャピタル ロスが 発 生 した 場 合 )には 源 泉 分 離 では 必 ず 課 税 されるが 申 告 分 離 方 式 では その 売 却 については 税 額 がゼロになるため すべての 個 人 投 資 家 が 申 告 分 離 を 選 択 する と 仮 定 する 同 一 の 個 人 投 資 家 が 通 年 の 取 引 を 合 算 してキャピタル ロスとなる 可 能 性 が 高 い 場 合 或 いは 利 益 率 がプラスでも 4.208% 以 下 となる 場 合 申 告 分 離 を 選 択 するほうが 有 利 であるが このような 状 況 は 無 視 する 個 人 投 資 家 の 株 式 保 有 期 間 は 証 券 広 報 センターが 実 施 した 証 券 貯 蓄 の 調 査 レポー ト ( 平 成 9 年 度 版 )における 上 場 株 の 平 均 保 有 期 間 を 利 用 する( 表 3) 保 有 期 間 は 1 年 以 上 3 年 未 満 3 年 以 上 5 年 未 満 というように 幅 があるため 基 本 的 にミディアム 値 ( 例 えば 3 年 以 上 5 年 未 満 の 場 合 は 4 年 )を 採 用 する ただし 10 年 以 上 は 10 年 1 年 未 満 は 1 年 5 年 以 上 10 年 未 満 は 7 年 と 設 定 した ( 表 3 の 保 有 期 間 2を 参 照 ) 表 3 個 人 投 資 家 による 上 場 株 の 平 均 保 有 期 間 保 有 期 間 1 分 布 割 合 1 分 布 割 合 2 保 有 期 間 2 1 年 未 満 8.7 8.9 1 3 年 未 満 14.1 14.5 2 5 年 未 満 19.6 20.1 4 10 年 未 満 26.8 27.5 7 10 年 以 上 28.2 29.0 10 全 体 97.4 100.0 不 明 2.7 ( 注 ) 割 合 はパーセント 表 示 保 有 期 間 2は 年 ( 出 所 ) 証 券 広 報 センター 資 料 より 野 村 総 合 研 究 所 作 成 上 の 平 均 保 有 期 間 2 及 びその 分 布 割 合 2を 利 用 して 2000 年 末 の 個 人 投 資 家 の 株 式 売 買 高 ( 売 付 )を 計 算 する 99 年 に 買 付 を 行 った 株 (= 保 有 期 間 1 年 )の 8.9% 98 年 (= 保 有 期 間 2 年 )の 14.5% 96 年 (= 保 有 期 間 4 年 )の 20.1% 93 年 (= 保 有 期 間 7 年 )の 27.5% 90 年 (= 保 有 期 間 10 年 )の 29.0% を 合 算 したものが 2000 年 末 に 売 却 される として 計 算 する 本 来 ならば 申 告 分 離 課 税 に 一 本 化 される 2001 年 末 時 点 の 売 却 で 試 算 すべきところであるが 上 に 述 べたような 過 去 の 買 付 を 計 算 に 用 いているため データの 制 約 上 2000 年 末 における 売 却 を 想 定 した 7

資 本 市 場 クォータリー 2000 年 夏 2) 試 算 結 果 以 上 の 前 提 に 基 づいて 1TOPIX が 1,800 となるケース 2TOPIX が 1,700 となるケー ス 3TOPIX が 1,600 となるケースの 3 通 りについて 次 表 のとおり 試 算 した 1TOPIX が 1,800 となるケース ( 参 考 ) TOPIX 日 経 225 平 ( 末 値 ) 均 株 価 2TOPIX が 1,700 となるケース 単 純 株 価 平 均 ( 東 証 一 部 ) 個 人 の 買 付 ( 三 市 場 ) 全 体 申 告 (1 株 当 た り) 源 泉 (1 株 当 た り) 差 税 額 差 額 分 1 利 益 率 1 1,800 1990 1733.8 23,849 1577.5 31,043 0.04 16 16.4 0 91 1714.7 22,984 1268.4 22,294 0.05 16 13.3 3 92 1307.7 16,925 899.4 14,733 0.38 89 12.4 77 93 1439.3 17,417 963.3 19,307 0.25 63 12.0 51 94 1559.1 19,723 987.4 15,904 0.15 39 11.4 28 95 1577.7 19,868 789.7 20,219 0.14 29 9.0 20 96 1470.9 19,361 912.6 21,300 0.22 52 11.7 40 97 1175.0 15,259 726.7 20,705 0.53 100 11.7 88 98 1087.0 13,842 579.6 23,929 0.66 99 10.1 89 99 1722.2 18,934 639.3 36,656 0.05 8 7.0 1 2000 603,322 TOPIX ( 末 値 ) ( 参 考 ) 日 経 225 平 均 株 価 単 純 株 価 平 均 ( 東 証 一 部 ) 個 人 の 買 付 ( 三 市 場 ) 全 体 利 益 率 2 申 告 源 泉 差 税 額 差 額 分 2 1,700 1990 1733.8 23,849 1577.5 31,043-0.02 0 15.5-16 91 1714.7 22,984 1268.4 22,294-0.01 0 12.6-13 92 1307.7 16,925 899.4 14,733 0.30 70 11.7 58 93 1439.3 17,417 963.3 19,307 0.18 45 11.4 34 94 1559.1 19,723 987.4 15,904 0.09 23 10.8 12 95 1577.7 19,868 789.7 20,219 0.08 16 8.5 8 96 1470.9 19,361 912.6 21,300 0.16 38 11.1 27 97 1175.0 15,259 726.7 20,705 0.45 85 11.1 74 98 1087.0 13,842 579.6 23,929 0.56 84 9.5 75 99 1722.2 18,934 639.3 36,656-0.01 0 6.6-7 2000 445,107 3TOPIX が 1,600 となるケース ( 参 考 ) TOPIX 日 経 225 平 ( 末 値 ) 均 株 価 単 純 株 価 平 均 ( 東 証 一 部 ) 個 人 の 買 付 ( 三 市 場 ) 全 体 利 益 率 3 申 告 源 泉 差 1,600 1990 1733.8 23,849 1577.5 31,043-0.08 0 14.5-14.5 91 1714.7 22,984 1268.4 22,294-0.07 0 11.8-11.8 92 1307.7 16,925 899.4 14,733 0.22 51 11.0 40.0 93 1439.3 17,417 963.3 19,307 0.11 28 10.7 17.3 94 1559.1 19,723 987.4 15,904 0.03 8 10.2-2.2 95 1577.7 19,868 789.7 20,219 0.01 2 8.0-6.0 96 1470.9 19,361 912.6 21,300 0.09 21 10.4 10.6 97 1175.0 15,259 726.7 20,705 0.36 68 10.4 57.6 98 1087.0 13,842 579.6 23,929 0.47 71 8.9 62.1 99 1722.2 18,934 639.3 36,656-0.07 0 6.2-6.2 税 額 差 額 分 3 2000 387,965 282,185 ( 注 ) 個 人 投 資 家 の 買 付 ( 売 買 高 )の 単 位 は 百 万 株 税 額 差 額 分 の 単 位 は 百 万 円 利 益 率 は 小 数 点 表 示 ( 出 所 ) 野 村 総 合 研 究 所 8

株 式 譲 渡 益 課 税 の 申 告 分 離 一 本 化 のインパクト ケース1からケース3における 機 械 的 な 試 算 によれば 1 TOPIX が 1,800 となるケース:6,033 億 円 の 増 税 2 TOPIX が 1,700 となるケース:4,451 億 円 の 増 税 3 TOPIX が 1,600 となるケース:2,822 億 円 の 増 税 という 結 果 が 出 た 2000 年 4 月 27 日 時 点 における TOPIX が 1644.22 であることからすると ケース3が 3 つのケースの 中 で 最 も 現 状 に 近 い 水 準 であり この 場 合 には 2,822 億 円 の 増 税 となる つづいて 申 告 分 離 課 税 への 一 本 化 が 有 価 証 券 取 引 税 の 廃 止 とセットで 決 まったことか ら 個 人 投 資 家 の 有 価 証 券 取 引 税 の 減 税 効 果 と 比 較 するために 有 価 証 券 取 引 税 が 存 続 し ていると 仮 定 した 場 合 の 2000 年 における 税 額 を 上 記 試 算 と 同 じ 前 提 に 基 づいて 計 算 し た すなわち 有 価 証 券 取 引 税 = 単 純 株 価 平 均 三 市 場 における 個 人 の 売 付 高 税 率 (0.21%を 適 用 ) の 計 算 式 を 用 いた ここでも 1TOPIX が 1,800 となるケース 2TOPIX が 1,700 となる ケース 3TOPIX が 1,600 となるケースの 3 つのシナリオを 想 定 するため TOPIX と 単 純 株 価 平 均 の 過 去 のトレンドから それぞれの 時 点 の 単 純 株 価 平 均 を 推 定 し これを 用 いた その 結 果 有 価 証 券 取 引 税 が 存 続 していた 場 合 課 税 されたであろう 金 額 が 減 税 分 と 考 える と 次 のような 試 算 結 果 となった 1 TOPIX が 1,800 となるケース( 単 純 株 価 平 均 が 1,122) :477 億 3,900 万 円 の 減 税 2 TOPIX が 1,700 となるケース( 単 純 株 価 平 均 が 1,061.4):451 億 6,100 万 円 の 減 税 3 TOPIX が 1,600 となるケース( 単 純 株 価 平 均 が 1,000.8):425 億 8,200 万 円 の 減 税 現 状 に 最 も 近 い 水 準 であるケース3についてみると 約 426 億 円 という 減 税 の 規 模 は 3のケースで 試 算 した 譲 渡 益 税 の 増 税 分 2,822 億 円 の 15%にすぎない 実 績 値 から 96 年 ~98 年 までの 3 年 分 の 減 税 額 600 億 円 と 対 比 してみても 21%にしかならない 有 取 税 の 減 税 分 に 比 べ 申 告 分 離 一 本 化 の 増 税 分 ははるかに 大 きいことが 分 かる さらに TOPIX が 高 いほど つまり 株 価 が 上 昇 するほど 増 税 幅 が 大 きくなるのは ケース1および2のように 明 らかである 9

資 本 市 場 クォータリー 2000 年 夏 3. 申 告 分 離 課 税 一 本 化 に 至 る 障 害 と 今 後 の 検 討 課 題 申 告 分 離 課 税 一 本 化 は 有 価 証 券 取 引 税 の 廃 止 とセットで 議 論 され 既 に 一 部 実 施 され ている だが 源 泉 分 離 課 税 の 廃 止 については それに 代 わる 申 告 分 離 課 税 について 個 人 投 資 家 の 申 告 納 税 に 伴 う 実 際 の 負 担 ( 感 )がどの 程 度 考 慮 されたのかは 疑 問 が 残 るとこ ろである 前 述 の 試 算 から 個 人 投 資 家 にとって 申 告 分 離 課 税 の 一 本 化 によって 株 式 投 資 に 対 する 課 税 は 有 価 証 券 取 引 税 の 廃 止 による 減 税 分 を 数 倍 上 回 る 増 税 となると 考 えら れる 有 価 証 券 取 引 税 の 減 税 により 恩 恵 を 受 けたのはむしろ 法 人 投 資 家 6 であり かつ 法 人 税 率 の 引 き 下 げによる 譲 渡 益 課 税 の 減 税 効 果 も 得 られている 個 人 投 資 家 については 増 税 というインパクトに 加 え 申 告 納 税 に 伴 う 手 続 き 上 の 負 担 という 問 題 がある 多 くの 個 人 投 資 家 が 申 告 納 税 に 不 慣 れであり かつ 株 式 譲 渡 所 得 の 計 算 は 雑 所 得 など 他 の 所 得 に 比 べ 各 種 の 計 算 や 証 明 書 類 が 必 要 となるという 煩 雑 さがある また 配 偶 者 控 除 や 扶 養 控 除 等 の 所 得 控 除 の 適 用 を 受 けている 世 帯 では 例 えば 無 職 の 配 偶 者 が 株 式 投 資 を 行 い 38 万 円 以 上 の 譲 渡 益 が 生 じれば 控 除 対 象 配 偶 者 ではなくなって しまうため 株 式 投 資 を 手 控 えることが 予 想 される 7 手 続 き 上 及 び 経 済 的 な 負 担 の 大 き さを 実 際 に 想 定 すると 個 人 投 資 家 にとって 申 告 分 離 課 税 の 一 本 化 がどの 程 度 のインパク トになるかは 単 純 に 試 算 できるものではないが 増 税 感 よりもこの 申 告 納 税 という 負 担 感 の 方 が 心 理 的 にも 株 式 投 資 から 遠 ざかろうという 方 向 に 働 くように 思 われる 以 上 のように 増 税 と 申 告 納 税 に 伴 う 手 続 き 上 の 負 担 により 個 人 投 資 家 の 株 式 取 引 の トータル コストが 上 昇 することは 間 違 いない こうした 源 泉 分 離 課 税 の 廃 止 のインパク トをまだ 多 くの 個 人 投 資 家 が 認 識 していないように 思 われる 今 後 申 告 分 離 課 税 の 一 本 化 に 伴 う 納 税 上 の 負 担 を 避 け 他 の 金 融 商 品 への 乗 り 替 えが 活 発 化 する 可 能 性 も 否 めない また 株 式 や 転 換 社 債 以 外 にも 預 貯 金 や 保 険 商 品 といった 金 融 商 品 があるが 個 人 投 資 家 がいずれの 金 融 商 品 を 選 ぶかは 一 義 的 にはその 商 品 の 特 性 やリスク リターンなど によって 判 断 されるべきであり 税 制 は 中 立 でなければならない にもかかわらず 預 貯 金 の 利 子 は 申 告 が 要 らず 税 率 も 低 いが 株 式 等 の 譲 渡 益 は 煩 雑 な 計 算 を 行 った 上 で 申 告 を 行 い 税 率 も 高 いという アンバランスが 顕 在 化 することになる 投 資 先 企 業 としては 個 人 投 資 家 を 法 人 間 の 株 式 持 合 の 解 消 の 受 け 皿 として 期 待 してい るだけに 個 人 投 資 家 が 株 式 市 場 から 退 出 してしまえば 株 式 持 合 解 消 の 流 れを 止 め 企 6 法 人 投 資 家 の 株 式 等 の 譲 渡 益 に 対 する 法 人 税 率 は 30%( 基 本 税 率 )と 個 人 投 資 家 より 高 いが 他 の 所 得 と 損 益 通 算 ができるというメリットがある また 法 人 税 率 は 平 成 11 年 度 税 制 改 正 により 34.5%から 30%に 軽 減 されている( 経 済 社 会 の 変 化 等 に 対 応 して 早 急 に 構 ずべき 所 得 税 及 び 法 人 税 の 負 担 軽 減 措 置 に 関 する 法 律 16 条 により 99 年 4 月 1 日 開 始 事 業 年 度 より 適 用 されている) 7 パートタイム 労 働 をしている 人 には 配 偶 者 控 除 や 配 偶 者 特 別 控 除 の 適 用 を 受 けるために 給 与 控 除 65 万 円 と 基 礎 控 除 38 万 円 の 合 計 103 万 円 ぎりぎりに 給 与 を 抑 える 傾 向 がある 配 偶 者 控 除 の 対 象 であるこ とは その 人 の 配 偶 者 の 働 く 企 業 の 福 利 厚 生 の 恩 恵 をうけられるかどうかの 基 準 にもなるためである 株 式 等 の 譲 渡 益 が 少 しでもあれば 配 偶 者 控 除 の 対 象 からはずれてしまうため こうした 恩 恵 がすべて 受 けられなくなってしまうデメリットは 大 きい 10

株 式 譲 渡 益 課 税 の 申 告 分 離 一 本 化 のインパクト 業 の 資 産 効 率 の 向 上 にも 釘 をさすことになりかねない そのほか ストック オプション 制 度 にも 増 税 の 影 響 が 予 想 される 2001 年 4 月 以 降 では ストック オプションにより 取 得 した 株 式 の 譲 渡 に 際 して 総 じて 株 価 上 昇 分 が 増 税 としてはねかえることになるうえ 源 泉 分 離 課 税 が 選 択 できなくなる 税 制 非 適 格 ストック オプションに 基 づき 取 得 した 株 式 はさらに 税 負 担 が 高 まることになるからである 8 政 府 税 制 調 査 会 の 加 藤 寛 会 長 は 高 まる 源 泉 分 離 課 税 の 存 続 論 を 牽 制 しつつ 原 則 課 税 となった 89 年 以 降 取 得 した 株 式 についてのみ 申 告 分 離 課 税 とし それ 以 前 に 取 得 した 株 式 に 関 しては 源 泉 分 離 課 税 の 選 択 を 認 めるといった 考 え 方 を 披 露 している 9 このような 考 え 方 のように 納 税 額 が 増 えることだけでなく 申 告 に 伴 う 手 続 き 上 の 負 担 など 申 告 分 離 課 税 一 本 化 に 伴 う 様 々なインパクトを 検 証 し 個 人 投 資 家 にとって 過 大 とならないよ う 事 前 の 配 慮 が 必 要 である 例 えば 1 数 回 にわたって 取 得 した 株 式 の 取 得 価 額 について 総 平 均 法 に 代 えて 1 回 当 たりの 取 得 価 額 が 判 明 している 場 合 にはその 価 額 を 取 得 価 額 と することを 認 め 再 計 算 を 不 要 とすること 2ある 証 券 会 社 を 通 じて 取 得 し 保 護 預 かり にしている 株 券 や 保 管 振 替 機 構 に 預 託 している 株 券 を 同 じ 証 券 会 社 を 通 じて 売 却 した 場 合 には 源 泉 徴 収 により 課 税 関 係 を 終 了 できるようにすること 10 3 預 貯 金 の 利 子 や 投 信 の 収 益 分 配 金 と 同 様 税 率 を 20%( 所 得 税 15% 地 方 税 5%)とすることなどが 検 討 されて しかるべきと 考 える 同 じ 観 点 から 証 券 業 界 が 99 年 10 月 に 要 望 した 申 告 分 離 一 本 化 のインパクトを 軽 減 す るための 措 置 ( 表 4)について 政 府 及 び 与 党 税 制 調 査 会 において 検 討 され 年 末 の 平 成 13 年 度 税 制 改 正 大 綱 に 盛 り 込 まれることを 期 待 したい なお 政 府 税 制 調 査 会 は 預 貯 金 の 利 子 など 金 融 商 品 に 係 る 所 得 が 総 合 課 税 となる 納 税 者 番 号 制 度 の 導 入 について 2000 年 7 月 14 日 に 中 期 答 申 をまとめる 予 定 であり その 議 論 においても 株 式 譲 渡 益 課 税 の 総 合 課 税 化 が 検 討 されることとなろう 8 ストック オプション 制 度 には 権 利 行 使 時 の 課 税 ( 時 価 と 権 利 行 使 価 格 との 差 額 に 対 する 課 税 )が 繰 り 延 べられる 税 制 適 格 オプションと 税 制 非 適 格 オプションがある 税 制 適 格 オプションについて 課 税 繰 り 延 べの 特 例 を 受 けた 場 合 には 現 行 制 度 上 も 申 告 分 離 課 税 しか 選 択 できないが 課 税 繰 り 延 べの 特 例 を 受 けていない 場 合 や 税 制 非 適 格 オプションについては 源 泉 分 離 課 税 を 選 択 することができる( 租 税 特 別 措 置 法 29 条 の 2) 税 制 適 格 ストック オプションで 取 得 した 株 式 を 申 告 分 離 で 譲 渡 する 場 合 には 取 得 価 額 は 権 利 行 使 価 格 つまり 払 い 込 み 価 額 となるが 税 制 非 適 格 ストック オプションの 場 合 の 取 得 価 額 は 総 平 均 法 によって 計 算 される( 所 得 税 施 行 令 105 条 108 条 租 税 特 別 措 置 法 施 行 令 25 条 の 8 第 1 項 ) つまり 税 制 非 適 格 ストック オプションで 株 式 を 取 得 する 前 に 従 業 員 持 株 会 などでそれより も 安 い 価 格 で 取 得 している 株 式 がある 場 合 には 申 告 分 離 の 課 税 計 算 上 の 取 得 価 額 はさらに 低 くなり 税 負 担 が 高 くなる 9 2000 年 4 月 22 日 付 け 日 本 経 済 新 聞 ( 株 式 売 却 益 の 源 泉 分 離 課 税 廃 止 加 藤 税 調 会 長 1 年 先 送 り も ) 10 2000 年 4 月 より 追 加 型 の 株 式 投 資 信 託 については 平 均 信 託 金 制 度 が 廃 止 され 個 別 元 本 方 式 と なったが 証 券 会 社 が 各 個 人 投 資 家 の 個 別 元 本 を 把 握 し 解 約 請 求 に 対 して 収 益 分 配 金 をそれぞれ 計 算 し それに 対 して 20%の 源 泉 徴 収 を 行 っている 11

資 本 市 場 クォータリー 2000 年 夏 表 4 証 券 業 界 からの 申 告 分 離 課 税 一 本 化 に 対 する 税 制 措 置 要 望 1 利 子 等 他 の 金 融 資 産 所 得 との 中 立 性 確 保 の 観 点 から 税 率 を 26%から 20%に 引 き 下 げるこ と 2 少 額 投 資 に 係 る 非 課 税 制 度 を 創 設 すること 3 損 失 の 繰 越 控 除 制 度 を 創 設 すること 4 長 期 保 有 の 株 式 等 に 係 る 譲 渡 益 については 優 遇 措 置 を 創 設 すること 5 投 資 者 が 買 付 け 時 から 証 券 会 社 に 保 護 預 かり 等 しており 当 該 証 券 会 社 が 源 泉 徴 収 すること により 申 告 を 不 要 とする 制 度 ( 平 成 13 年 4 月 から)を 創 設 すること 6 取 得 価 額 等 が 不 明 なことにより 株 式 等 譲 渡 益 の 把 握 が 困 難 な 場 合 においては 取 得 価 額 等 の 算 出 につき 簡 便 な 措 置 ( 一 定 日 における 市 場 価 格 等 をもって 取 得 価 額 とみなすこと 等 )を 講 ずること ( 出 所 ) 日 本 証 券 業 協 会 証 券 投 資 信 託 協 会 全 国 証 券 取 引 所 協 議 会 東 証 正 会 員 協 会 平 成 12 年 度 税 制 改 正 に 関 する 要 望 (1999 年 10 月 ) ( 橋 本 基 美 林 宏 美 ) 12