研 究 論 文 金 融 所 得 課 税 に 関 する 一 考 察 谷 川 喜 美 江 77 金 融 所 得 課 税 に 関 する 一 考 察 A Study of Taxation on Financial Income 谷 川 喜 美 江 Kimie TANIGAWA < 要 約 > 我 が 国 では 経 済 成 長 のために 金 融 資 産 活 用 の 期 待 が 高 まっている また かつては 異 なる 会 計 基 準 を 適 用 する 国 での 上 場 には 財 務 諸 表 作 成 コストが 問 題 とされていたが 国 際 的 に 統 一 された 財 務 報 告 基 準 (IFRS)の 適 用 が 拡 大 し 我 が 国 でも 強 制 適 用 が 検 討 されてい る これは 企 業 における 財 務 諸 表 作 成 コストの 問 題 を 緩 和 するものであると 同 時 に 投 資 家 にとっては 財 務 諸 表 の 国 際 比 較 を 容 易 にするものであり 国 際 的 な 投 資 活 動 が 一 層 進 むこ とが 予 想 されよう そこで 諸 外 国 の 金 融 所 得 課 税 を 概 観 すると 特 に 税 制 の 崩 壊 を 経 験 した 北 欧 諸 国 では 勤 労 性 所 得 よりも 資 産 性 所 得 への 課 税 を 簡 素 化 し かつ 軽 減 することで 税 制 の 崩 壊 を 修 復 し 公 平 性 を 担 保 する 努 力 がなされてきた しかしながら 歴 史 的 経 緯 からは 所 得 税 に 所 得 再 分 配 機 能 が 求 められており このためには 包 括 的 所 得 概 念 を 採 用 し かつ 勤 労 性 所 得 は 資 産 性 所 得 よりも 軽 課 することが 求 められるのである したがって 我 が 国 の 所 得 税 には 総 合 課 税 かつ 勤 労 性 所 得 軽 課 資 産 性 所 得 重 課 が 求 められるところであるが すべての 所 得 の 間 における 損 益 通 算 を 認 めること 及 び 資 産 性 所 得 を 重 課 することは 租 税 回 避 から 生 ずる 税 制 の 崩 壊 を 招 くことが 懸 念 される 一 方 勤 労 性 所 得 と 資 産 性 所 得 とそれぞれの 区 分 に 基 づく 課 税 は 個 人 の 合 計 所 得 による 真 の 担 税 力 を 考 慮 した 課 税 が 行 われ 難 い そこで 我 が 国 における 金 融 所 得 課 税 を 考 慮 する 際 には 課 税 ベースを 広 く 捉 え 損 益 通 算 の 範 囲 に 関 しては 租 税 回 避 から 生 ずる 税 制 崩 壊 を 抑 制 するため 勤 労 性 所 得 と 資 産 性 所 得 でそれぞれ 区 分 の 上 認 めるべきである そして 損 益 通 算 後 の 両 所 得 を 合 算 し 合 算 後 の 所 得 に 基 づく 累 進 税 率 を 適 用 した 課 税 を 行 うことで 簡 素 かつ 所 得 再 分 配 機 能 を 十 分 に 備 えた 所 得 税 制 を 構 築 しなければならないのである
78 嘉 悦 大 学 研 究 論 集 第 53 巻 第 2 号 通 巻 98 号 平 成 23 年 3 月 <キーワード> 金 融 所 得 課 税 勤 労 性 所 得 資 産 性 所 得 所 得 再 分 配 総 合 課 税 はじめに 近 年 我 が 国 企 業 は アメリカのサブプライムローン 問 題 を 発 端 としたリーマン ブラザ ーズの 破 綻 による 世 界 的 な 経 済 低 迷 を 背 景 に 国 際 市 場 における 競 争 力 確 保 のための 様 々な 方 策 を 講 じており 国 際 化 の 進 展 も 著 しい このような 経 済 環 境 の 下 我 が 国 では 個 人 の 金 融 資 産 を 現 金 預 金 から 株 式 等 への 投 資 に 推 進 することで 経 済 の 回 復 及 び 成 長 を 促 すことが 期 待 されており 金 融 所 得 課 税 一 体 化 をはじめ 金 融 所 得 に 関 する 課 税 の 在 り 方 を 見 直 す 検 討 がなされているところである また 企 業 の 国 際 化 は 世 界 的 規 模 で 急 速 に 拡 大 しており 世 界 的 に 比 較 可 能 となる 会 計 基 準 の 適 用 拡 大 が 進 行 している そこで 本 論 文 では 我 が 国 の 経 済 環 境 及 び 国 際 的 に 統 一 されつつある 会 計 制 度 の 動 向 を 概 観 し 所 得 税 に 要 求 される 機 能 をも 考 慮 した 金 融 所 得 課 税 の 在 り 方 を 検 討 したい 1. 我 が 国 経 済 及 び 金 融 資 産 の 状 況 (1) 経 済 の 状 況 世 界 経 済 アメリカ ユーロ 圏 ドイツ フランス イギリス 日 本 新 興 アジア 中 国 インドの 経 済 成 長 率 について 2008 年 2009 年 の 経 済 成 長 率 及 び 2010 年 2011 年 の 現 在 見 通 しを 示 したものが 図 1 である 世 界 経 済 は アメリカのサブプライムローン 問 題 リーマン ブラザーズの 破 綻 により 非 常 に 厳 しい 状 況 にある そして 世 界 経 済 が 最 も 低 迷 した 2009 年 我 が 国 の 経 済 成 長 率 はマイナス 5.3%と 中 国 インドをはじめとする 経 済 成 長 著 しい 新 興 アジア その 他 アメリ カ ヨーロッパ 諸 国 と 比 較 しても 非 常 に 悪 い 状 況 にあった しかし 図 1 のとおり 2010 年 2011 年 の 我 が 国 の 経 済 成 長 率 は プラスに 転 ずる 見 通 しも 指 摘 されており 新 興 アジア 諸 国 の 成 長 率 には 及 ばないものの 他 の 主 要 諸 外 国 と 同 等 の 成 長 率 となるであろうことが 見 込 まれている しかしながら 我 が 国 では 完 全 失 業 率 が 過 去 最 高 となった2009 年 7 月 の5.7%よりは 回 復 傾 向 にあるとはいえ 2010 年 7 月 でも5.2%と 依 然 として 高 い 状 況 にある 1) また 円 高 によ る 経 済 の 失 速 も 懸 念 されており 2) 完 全 な 経 済 の 回 復 のためにはさらなる 政 策 が 求 められる ところである
金 融 所 得 課 税 に 関 する 一 考 察 谷 川 喜 美 江 79 図 1 我 が 国 及 び 主 要 国 の 経 済 成 長 率 ( 注 ) 経 済 産 業 省 通 商 白 書 平 成 22 年 版 日 経 印 刷 2010 年 7 月 3 頁 の 第 1-1-1-1 表 世 界 経 済 の 見 通 し のデータより 筆 者 作 成 (2) 個 人 金 融 資 産 の 保 有 状 況 個 人 金 融 資 産 の 保 有 状 況 については 金 融 庁 から 税 制 改 正 要 望 が 示 されるにあたり アメ リカ イギリス ドイツ フランスの 主 要 諸 外 国 の 金 融 資 産 の 構 成 比 とともに 我 が 国 の 状 況 が 示 されてきた そして 本 要 望 では 諸 外 国 と 比 して 我 が 国 の 株 式 投 資 信 託 の 構 成 割 合 が 低 いことが 指 摘 され 3) 個 人 の 金 融 資 産 を 貯 蓄 から 投 資 へ 推 進 するための 税 制 改 正 要 望 が 提 出 されてきたのである 4) そして 金 融 庁 の 2011 年 度 ( 平 成 23 年 度 ) 税 制 改 正 要 望 でも 図 2 のように 我 が 国 の 個 人 金 融 資 産 の 構 成 比 は 現 金 預 金 が 54.9% 株 式 投 資 信 託 が 8.4%であり 諸 外 国 と 比 較 すると 現 金 預 金 の 構 成 比 が 高 く 株 式 投 資 信 託 の 構 成 比 はイギリスを 除 くアメリカ ドイツ フランスよりも 低 いことが 示 されているところである
80 嘉 悦 大 学 研 究 論 集 第 53 巻 第 2 号 通 巻 98 号 平 成 23 年 3 月 図 2 個 人 金 融 資 産 の 構 成 比 率 ( 出 所 ) 金 融 庁 平 成 23 年 度 税 制 改 正 要 望 項 目 2010 年 8 月 13 頁 また 1990 年 ( 平 成 2 年 )から 2009 年 ( 平 成 21 年 )までの 個 人 金 融 資 産 に 占 める 現 金 預 金 の 構 成 比 の 推 移 を 示 したものが 図 3 である 図 3 のとおり 構 成 比 は 最 も 低 いものが 1990 年 ( 平 成 2 年 )の 47.4% あり 最 も 高 いものが 2002 年 ( 平 成 14 年 )の 56.4%と 50% 前 後 の 水 準 で 推 移 している 図 3 個 人 金 融 資 産 に 占 める 現 金 預 金 の 構 成 比 推 移 ( 注 ) 日 本 銀 行 資 金 循 環 統 計 のデータ( 日 本 銀 行 時 系 列 統 計 データサイト http://www.stat-search.boj.or.jp/index.html(2010 年 9 月 20 日 ))に 基 づき 筆 者 作 成
金 融 所 得 課 税 に 関 する 一 考 察 谷 川 喜 美 江 81 2. 我 が 国 における 金 融 所 得 課 税 我 が 国 では 1996 年 ( 平 成 8 年 )11 月 我 が 国 金 融 システムの 改 革 ~2001 年 東 京 市 場 の 再 生 に 向 けて が 発 表 され 金 融 市 場 活 性 化 のため 個 人 貯 蓄 の 活 用 と 税 制 の 検 討 が 示 唆 され た 5) しかし 直 ちに 経 済 成 長 を 促 すための 税 制 改 正 が 行 われたのではなく 税 負 担 の 公 平 の 重 要 性 が 考 慮 されていた 6) しかし 2003 年 度 ( 平 成 15 年 度 ) 改 正 に 係 る 2002 年 ( 平 成 14 年 )の 政 府 税 制 調 査 会 で は 簡 素 で 安 定 した 金 融 税 制 の 構 築 と 総 合 課 税 とともに 金 融 所 得 課 税 一 体 化 も 検 討 すべきと 示 され 7) 2003 年 度 ( 平 成 15 年 度 ) 改 正 では 低 迷 する 経 済 を 回 復 させるために 上 場 株 式 等 の 譲 渡 益 及 び 配 当 について 5 年 間 と 期 限 を 定 めた 軽 減 税 率 (10%( 所 得 税 7% 住 民 税 3%)) の 創 設 と 損 益 通 算 範 囲 の 拡 大 が 行 われたのである その 後 2004 年 ( 平 成 16 年 )6 月 15 日 の 政 府 税 制 調 査 会 金 融 小 委 員 会 から 金 融 所 得 課 税 の 一 体 化 についての 基 本 的 考 え 方 が 公 表 された ここでは 金 融 商 品 の 課 税 中 立 性 確 保 の 観 点 から より 広 い 範 囲 で 金 融 所 得 を 20%の 分 離 課 税 とすることが 適 当 であること 及 び 分 離 課 税 と 総 合 課 税 の 間 の 損 益 通 算 及 び 分 離 課 税 で 税 率 の 異 なる 所 得 の 間 の 損 益 通 算 は 適 当 でないとしながらも 損 益 通 算 範 囲 拡 大 による 税 収 の 減 尐 を 考 慮 しつつ 納 税 者 の 判 断 で 課 税 期 間 を 決 定 することが 可 能 となる 譲 渡 所 得 と 毎 期 経 常 的 に 発 生 する 利 子 配 当 等 所 得 の 間 の 損 益 通 算 を 認 めることを 視 野 に 入 れながら 範 囲 拡 大 が 適 当 であるとの 見 解 が 示 された 8) こ れを 受 け 2005 年 度 ( 平 成 17 年 度 ) 改 正 では 金 融 所 得 課 税 一 体 化 のための 改 正 が 検 討 さ れていたが 軽 減 税 率 が 適 用 されていたことから 創 設 は 見 送 られたのである 9) 2007 年 度 ( 平 成 19 年 度 ) 改 正 であるが 改 正 に 係 る 政 府 税 制 調 査 会 答 申 では 上 場 株 式 等 の 譲 渡 益 及 び 配 当 に 関 して 軽 減 税 率 導 入 時 に 比 較 して 我 が 国 の 経 済 が 回 復 していること 及 び 公 平 性 の 観 点 から 軽 減 税 率 を 廃 止 すべきとされていたが 10) 与 党 税 制 調 査 会 では 軽 減 税 率 の 適 用 を 1 年 延 長 し さらに 損 益 通 算 に 関 して 範 囲 拡 大 を 行 った 上 で 2009 年 度 ( 平 成 21 年 度 ) 導 入 を 目 指 すとされていた 11) その 翌 年 の 2008 年 度 ( 平 成 20 年 度 ) 改 正 では 上 場 株 式 等 の 譲 渡 益 及 び 配 当 に 適 用 され ていた 10%の 軽 減 税 率 を 廃 止 し また 上 場 株 式 等 の 譲 渡 損 失 と 譲 渡 株 式 等 の 配 当 所 得 との 間 の 損 益 通 算 を 2009 年 ( 平 成 21 年 )より 認 める 制 度 が 創 設 された 2009 年 度 ( 平 成 21 年 度 ) 改 正 では 2008 年 度 ( 平 成 20 年 度 ) 改 正 で 2008 年 ( 平 成 20 年 )12 月 31 日 をもって 廃 止 することとされていた 上 場 株 式 等 の 譲 渡 益 及 び 配 当 の 軽 減 税 率 を 2 年 延 長 することとし また 軽 減 税 率 が 廃 止 された 際 に 配 慮 して 尐 額 の 上 場 株 式 等 投 資 のための 非 課 税 制 度 を 廃 止 後 5 年 間 適 用 する 制 度 が 創 設 された そして 2010 年 度 ( 平 成 22 年 度 ) 税 制 改 正 大 綱 において 金 融 所 得 課 税 は 主 要 課 題 の 一 つとして 位 置 付 けられており 総 合 課 税 を 理 想 であるとしながらも 金 融 資 産 の 流 動 性 に 配 慮 し 株 式 譲 渡 益 配 当 課 税 の 税 率 の 見 直 し 損 益 通 算 の 範 囲 を 拡 大 し 金 融 所 得 一 体 課 税 を 推 進 することが 示 され 2011 年 度 ( 平 成 23 年 度 ) 改 正 で 公 社 債 の 利 子 及 び 譲 渡 所 得 の 課 税 を 申
82 嘉 悦 大 学 研 究 論 集 第 53 巻 第 2 号 通 巻 98 号 平 成 23 年 3 月 告 分 離 課 税 とするとの 方 向 で 検 討 することが 示 されたところである 12) このような 金 融 所 得 一 体 課 税 の 方 向 を 受 け 金 融 庁 では 2010 年 ( 平 成 22 年 )5 月 に 金 融 税 制 研 究 会 が 設 置 された 2010 年 ( 平 成 22 年 )7 月 29 日 本 研 究 会 から 金 融 税 制 研 究 会 論 点 整 理 が 公 表 され 経 済 成 長 のために 個 人 の 金 融 資 産 を 活 用 すること 及 び 金 融 所 得 一 体 課 税 についてさらなる 検 討 の 必 要 性 並 びに 配 当 の 二 重 課 税 調 整 等 金 融 所 得 課 税 に 関 する 意 見 が 取 りまとめられたのである 13) その 後 金 融 税 制 研 究 会 は 金 融 税 制 調 査 会 に 引 き 継 がれ 議 論 が 進 められているのである また 2011 年 度 ( 平 成 23 年 度 ) 税 制 改 正 要 望 においては 金 融 庁 をはじめ 複 数 の 省 庁 から 個 人 の 金 融 資 産 を 貯 蓄 から 投 資 に 推 進 させるための 税 制 改 正 が 要 求 され これを 受 け2011 年 度 ( 平 成 23 年 度 ) 改 正 では 上 場 株 式 等 の 譲 渡 益 及 び 配 当 の 軽 減 税 率 の 適 用 を2 年 延 長 し これに 伴 い 尐 額 の 上 場 株 式 等 投 資 のための 非 課 税 制 度 の 適 用 も2 年 延 長 することとされたのである 14) 3. 会 計 制 度 の 国 際 的 統 一 現 在 我 が 国 及 び 世 界 企 業 の 国 際 化 は 著 しく 企 業 財 務 の 国 際 比 較 を 可 能 とする 国 際 財 務 報 告 基 準 (IFRS:International Financial Reporting Standards)が 世 界 100 カ 国 以 上 で 適 用 されている このように IFRS が 世 界 的 に 適 用 されるに 至 った 背 景 には 2005 年 におけ る EU での 強 制 適 用 がある EUでのIFRS 導 入 には かつてEU 域 内 市 場 統 一 のために 会 計 基 準 統 一 を 図 っていたが 難 航 し 国 際 会 計 基 準 (IAS:International Accounting Standards)の 導 入 の 検 討 を 開 始 した ことがある 15) そして 2002 年 7 月 に 採 択 したIAS 規 則 により EUの 域 内 上 場 企 業 に 対 して 2005 年 1 月 1 日 以 降 に 開 始 される 事 業 年 度 からIFRSを 適 用 した 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 を 義 務 付 けることとした 16) その 後 2009 年 1 月 からEU 域 外 企 業 が 域 内 の 市 場 で 資 金 調 達 する 場 合 には IFRS 又 はこれと 同 等 の 基 準 の 適 用 を 義 務 付 けることとしたのである 17) IFRSがEUで 強 制 適 用 されるにあたり 関 係 企 業 は 適 用 前 から 準 備 を 行 わざるを 得 ず 多 くのコストと 時 間 が 必 要 となったが 一 方 ではIFRS 導 入 に 対 する 評 価 も 得 られている 18) し かしながら EU 域 内 市 場 で 上 場 する 我 が 国 企 業 は 我 が 国 の 会 計 基 準 に 準 拠 した 財 務 諸 表 作 成 に 加 え IFRSに 準 拠 した 財 務 諸 表 作 成 が 義 務 付 けられることから 生 ずるコスト 増 大 のた め EU 域 内 市 場 での 上 場 廃 止 を 決 定 した 企 業 も 多 かった 19) 逆 に 外 国 市 場 の 上 場 企 業 でありながら 我 が 国 に 上 場 していた 企 業 は 世 界 的 経 済 の 低 迷 のため 業 績 や 業 態 を 見 直 す 必 要 性 に 迫 られ 財 務 諸 表 作 成 コスト 等 の 我 が 国 市 場 での 上 場 の コストに 足 る 業 績 を 上 げることは 困 難 であることを 理 由 に 上 場 を 廃 止 する 企 業 も 尐 なくなか ったのである 20) このように 会 計 基 準 は 企 業 の 資 金 調 達 に 大 きな 影 響 を 与 えるものである また アメリカでは EU 及 び 諸 外 国 のIFRS 適 用 の 動 向 を 受 け 自 国 基 準 とIFRSのコンバ ージェンスを 進 めており IFRSを 強 制 適 用 するか 否 かを2011 年 までに 決 定 する 案 を 提 示 し ているのである 21)
金 融 所 得 課 税 に 関 する 一 考 察 谷 川 喜 美 江 83 そして 我 が 国 でも 自 国 の 会 計 基 準 をIFRSに 近 づけるコンバージェンスにより 調 整 して きたが 会 計 基 準 そのものをIFRSとするアドプションが 検 討 されているところである 我 が 国 におけるIFRS 適 用 に 関 しては 2010 年 から 上 場 企 業 の 連 結 財 務 諸 表 へIFRSの 適 用 を 認 め ることとし 2015 年 又 は2016 年 からのIFRS 強 制 適 用 に 関 しては2012 年 に 判 断 することとし ている 22) 4. 諸 外 国 における 課 税 (1) アメリカ イギリス ドイツ フランスにおける 課 税 我 が 国 アメリカ イギリス ドイツ フランスの 株 式 譲 渡 益 課 税 配 当 所 得 課 税 利 子 に 関 する 所 得 に 係 る 課 税 を 示 したものが 表 1 証 券 税 制 等 に 係 る 損 益 通 算 の 範 囲 を 示 したも のが 表 2 である 表 1 主 要 国 の 株 式 譲 渡 益 課 税 配 当 所 得 課 税 利 子 に 関 する 所 得 に 対 する 課 税 株 式 譲 渡 益 課 税 配 当 課 税 課 税 方 式 非 課 税 限 度 額 等 課 税 方 式 法 人 税 と の 調 整 利 子 に 関 する 所 得 課 税 日 本 アメリカ イギリス ドイツ フランス 申 告 分 離 課 税 20%( 所 得 税 15%+ 個 人 住 民 税 5%) 平 成 23(2011) 年 12 月 まで 10%( 所 得 税 7%+ 個 人 住 民 税 3%) ( 注 ) 特 定 口 座 において 源 泉 徴 収 を 行 う 場 合 には 申 告 不 要 も 選 択 可 20%( 所 得 税 15%+ 住 民 税 5%) 平 成 23(2011) 年 12 月 まで 10%( 所 得 税 7%+ 個 人 住 民 税 3%) 申 告 不 要 と 総 合 課 税 との 選 択 申 告 不 要 20% ( 所 得 税 15%+ 個 人 住 民 税 5%) 平 成 23(2011) 年 12 月 まで 10%( 所 得 税 7%+ 個 人 住 民 税 3%) 又 は 総 合 課 税 10~50% ( 注 ) 平 成 21(2009) 年 以 後 は 株 式 譲 渡 損 との 損 益 通 算 のため 申 告 分 離 課 税 も 選 択 可 20%( 所 得 税 15%+ 住 民 税 5%) 平 成 23(2011) 年 12 月 まで 10%( 所 得 税 7%+ 個 人 住 民 税 3%) ( 注 7) 配 当 所 得 税 額 控 除 方 式 ( 総 合 課 税 選 択 の 場 合 ) 源 泉 分 離 課 税 20%( 所 得 税 :15%+ 地 方 税 :5%) 段 階 的 課 税 ( 連 邦 税 ) 2 段 階 0 15% ( 注 2) + 総 合 課 税 ( 州 地 方 政 府 税 ) ( 注 2) 12 ヶ 月 以 下 保 有 の 場 合 10~35%+ 州 地 方 政 府 税 ( 注 2) 段 階 的 課 税 ( 連 邦 税 ) 2 段 階 0 15% ( 注 8) + 総 合 課 税 ( 州 地 方 政 府 税 ) ( 注 8) 調 整 措 置 なし 総 合 課 税 10~35% + ( 州 地 方 政 府 税 ) 申 告 分 離 課 税 18%( 注 3) 土 地 等 の 譲 渡 益 と 合 わ せて 年 間 10,100 ポン ド( 約 150 万 円 )が 非 課 税 段 階 的 課 税 2 段 階 10 32.5% ( 注 9) 部 分 的 インピュテーシ ョン 方 式 ( 注 10) 段 階 的 課 税 3 段 階 10 20 40%( 注 12) 申 告 不 要 ( 分 離 課 税 ) 総 合 課 税 も 選 択 可 ( 注 4) 26.375% ( 所 得 税 :25%, 連 帯 付 加 税 : 税 額 の 5.5%) 貯 蓄 者 概 算 控 除 ( 注 5) 申 告 不 要 ( 分 離 課 税 ) 総 合 課 税 も 選 択 可 ( 注 11) 26.375% ( 所 得 税 :25%, 連 帯 付 加 税 : 税 額 の 5.5%) 調 整 措 置 なし 申 告 不 要 ( 分 離 課 税 ) 総 合 課 税 も 選 択 可 ( 注 13) 26.375% ( 所 得 税 :25%, 連 帯 付 加 税 : 税 額 の 5.5%) 申 告 分 離 課 税 30.1% ( 所 得 税 :18% ( 注 6), 社 会 保 障 関 連 諸 税 12.1%) 譲 渡 額 が 年 間 25,730 ユー ロ( 約 342 万 円 ) 以 下 の 場 合 は 非 課 税 源 泉 分 離 課 税 と 総 合 課 税 との 選 択 ( 源 泉 分 離 課 税 )30.1% ( 所 得 税 :18%, 社 会 保 障 関 連 諸 税 : 12.1%) 又 は ( 総 合 課 税 )17.6~52.1% ( 所 得 税 :5.5~40%, 社 会 保 障 関 連 諸 税 : 12.1%) 配 当 所 得 一 部 控 除 方 式 ( 総 合 課 税 選 択 の 場 合 ) ( 受 取 配 当 の 60%を 株 主 の 課 税 所 得 に 算 入 ) 源 泉 分 離 課 税 と 総 合 課 税 との 選 択 ( 源 泉 分 離 課 税 )30.1% ( 所 得 税 :18%, 社 会 保 障 関 連 諸 税 : 12.1%) 又 は ( 総 合 課 税 )17.6~52.1% ( 所 得 税 :5.5~40%, 社 会 保 障 関 連 諸 税 : 12.1%)
84 嘉 悦 大 学 研 究 論 集 第 53 巻 第 2 号 通 巻 98 号 平 成 23 年 3 月 ( 注 1) 財 務 省 主 要 国 の 株 式 譲 渡 益 課 税 の 概 要 国 際 比 較 に 関 する 資 料 ( 平 成 22 年 4 月 現 在 ) http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/kinyu/kabu04.htm(2010 年 9 月 20 日 ) 財 務 省 主 要 国 の 配 当 課 税 の 概 要 国 際 比 較 に 関 する 資 料 ( 平 成 22 年 4 月 現 在 ) http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/kinyu/risi03.htm( 平 成 22 年 9 月 20 日 ) 財 務 省 主 要 国 の 利 子 所 得 に 対 する 課 税 制 度 の 概 要 国 際 比 較 に 関 する 資 料 (2010 年 4 月 現 在 ) http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/kinyu/risi02.htm(2010 年 9 月 20 日 )から 筆 者 作 成 注 2から 注 13に 関 しては 前 記 ホームページ 記 載 のものである なお 我 が 国 では 10%の 軽 減 税 率 適 用 廃 止 後 一 定 の 条 件 の 下 株 式 譲 渡 益 の 非 課 税 制 度 が 時 限 措 置 として 設 けられることとなっている ( 注 2) 給 与 所 得 等 配 当 所 得 及 び 長 期 キャピタル ゲインの 順 に 所 得 を 積 み 上 げて 配 当 所 得 及 び 長 期 キャピタ ル ゲインのうち 34,000ドル( 約 303 万 円 ) 以 下 のブラケットに 対 応 する 部 分 には0% 34,000ドル 超 の ブラケットに 対 応 する 部 分 には15%の 税 率 が 適 用 される( 単 身 者 の 場 合 ) なお この 措 置 は 2010 年 ま での 時 限 措 置 であり 2011 年 からは 5 年 超 保 有 は8% 18% 5 年 以 下 保 有 は10% 20% 州 地 方 政 府 税 は 税 率 等 が 各 々 異 なる ( 注 3) 一 定 の 起 業 家 等 に 対 しては 譲 渡 益 の 生 涯 累 計 額 が100 万 ポンド( 約 1.5 億 円 )に 達 するまで その 課 税 割 合 を5/9に 圧 縮 する 軽 減 措 置 が 適 用 される ( 注 4) 資 本 所 得 と 他 の 所 得 を 合 算 して 総 合 課 税 の 所 得 税 の 税 率 が25% 以 下 の 者 は 申 告 により 総 合 課 税 の 税 率 が 適 用 される 申 告 を 行 った 結 果 総 合 課 税 を 選 択 した 方 が 納 税 者 にとって 却 って 不 利 になる 場 合 は 税 務 当 局 において 資 本 所 得 は 申 告 されなかったものとして 取 り 扱 われ 26.375%の 源 泉 徴 収 税 のみが 課 税 さ れる ( 注 5) 当 該 措 置 の 適 用 により 利 子 配 当 を 含 む 資 本 所 得 については 貯 蓄 者 概 算 控 除 が 適 用 され 合 計 801ユー ロ( 約 10 万 円 )に 達 するまでは 課 税 されない ( 注 6) 個 人 が 株 式 を2006 年 から8 年 超 保 有 した 場 合 は 所 得 税 が 非 課 税 となり 税 率 は12.1%となる ( 注 7) 日 本 は 上 場 株 式 等 の 配 当 ( 大 口 以 外 )についてのものである ( 注 8) 給 与 所 得 等 配 当 所 得 及 び 長 期 キャピタル ゲインの 順 に 所 得 を 積 み 上 げて 配 当 所 得 及 び 長 期 キャピタ ル ゲインのうち 34,000ドル( 約 303 万 円 ) 以 下 のブラケットに 対 応 する 部 分 には0% 34,000ドル 超 の ブラケットに 対 応 する 部 分 には15%の 税 率 が 適 用 される( 単 身 者 の 場 合 ) なお この 措 置 は 2010 年 まで の 時 限 措 置 であり 2011 年 からは 通 常 の 総 合 課 税 (15~39.6%:2000 年 時 点 の 通 常 所 得 に 係 る 税 率 ブラ ケット) 州 地 方 政 府 税 は 税 率 等 が 各 々 異 なる ( 注 9) 給 与 所 得 等 利 子 所 得 配 当 所 得 の 順 に 所 得 を 積 み 上 げて 配 当 所 得 のうち 37,400ポンド( 約 554 万 円 ) 以 下 のブラケットに 対 応 する 部 分 には10% 37,400ポンド 超 のブラケットに 対 応 する 部 分 には32.5%の 税 率 が 適 用 される ( 注 10)イギリスの 部 分 的 インピュテーション 方 式 は 受 取 配 当 にその1/9を 加 えた 額 を 課 税 所 得 に 算 入 し 算 出 税 額 から 受 取 配 当 額 の1/9を 控 除 する ( 注 11) 資 本 所 得 と 他 の 所 得 を 合 算 して 総 合 課 税 の 所 得 税 の 税 率 が25% 以 下 の 者 は 申 告 により 総 合 課 税 の 税 率 が 適 用 される 申 告 を 行 った 結 果 総 合 課 税 を 選 択 した 方 が 納 税 者 にとって 却 って 不 利 になる 場 合 は 税 務 当 局 において 資 本 所 得 は 申 告 されなかったものとして 取 り 扱 われ 26.375%の 源 泉 徴 収 税 のみが 課 税 さ れる ( 注 12) 給 与 所 得 等 利 子 所 得 配 当 所 得 の 順 に 所 得 を 積 み 上 げて 利 子 所 得 のうち 2,440ポンド( 約 36 万 円 ) 以 下 のブラケットに 対 応 する 部 分 には10% 2,440ポンド 超 37,400ポンド( 約 554 万 円 ) 以 下 のブラケット に 対 応 する 部 分 には20% 37,400ポンド 超 のブラケットに 対 応 する 部 分 には40%の 税 率 が 適 用 される ( 注 13) 資 本 所 得 と 他 の 所 得 を 合 算 して 総 合 課 税 の 所 得 税 の 税 率 が25% 以 下 の 者 は 申 告 により 総 合 課 税 の 税 率 が 適 用 される 申 告 を 行 った 結 果 総 合 課 税 を 選 択 した 方 が 納 税 者 にとって 却 って 不 利 になる 場 合 は 税 務 当 局 において 資 本 所 得 は 申 告 されなかったものとして 取 り 扱 われ 26.375%の 源 泉 徴 収 税 のみが 課 税 さ れる ( 備 考 ) 邦 貨 換 算 レートは 1ドル=89 円 1ポンド=148 円 1ユーロ=133 円 ( 基 準 外 国 為 替 相 場 及 び 裁 定 外 国 為 替 相 場 : 平 成 21 年 (2009 年 )11 月 中 における 実 勢 相 場 の 平 均 値 )
金 融 所 得 課 税 に 関 する 一 考 察 谷 川 喜 美 江 85 表 2 主 要 国 の 損 益 通 算 の 範 囲 及 び 繰 越 控 除 ( 注 1) 通 常 所 得 は 給 与 事 業 利 子 配 当 雑 所 得 ( 注 2) 金 融 所 得 は 利 子 所 得 配 当 所 得 株 式 譲 渡 所 得 デリバティブ 等 に 係 る 譲 渡 所 得 等 を 含 む ( 注 3) 株 式 の 譲 渡 損 は ( 税 収 確 保 のため) 株 式 の 譲 渡 所 得 とのみ 損 益 通 算 が 可 能 ( 注 4)デリバティブの 損 失 預 金 のペイオフ 損 失 為 替 差 損 の 取 扱 いについては 明 確 に 定 める 規 定 がないため 事 象 ごと 個 別 に 判 断 する 必 要 がある ( 出 所 ) 金 融 庁 証 券 税 制 について 金 融 税 制 研 究 会 第 1 回 2010 年 5 月 31 日 資 料 16 頁 我 が 国 の 株 式 譲 渡 益 課 税 及 び 配 当 は 本 則 は 20%( 所 得 税 15% 住 民 税 5%)であるが 2011 年 ( 平 成 23 年 )12 月 まで 10%( 所 得 税 7% 住 民 税 3%)の 軽 減 税 率 が 適 用 されてい る これを 諸 外 国 と 比 較 すると 我 が 国 の 20%という 税 率 はやや 低 く さらに 10%の 軽 減 税 率 は 非 常 に 低 い 状 況 である 同 様 に 利 子 に 関 する 所 得 課 税 も 我 が 国 の 20%( 所 得 税 15% 住 民 税 5%)の 税 率 は 諸 外 国 と 比 較 してやや 低 いのである また 損 益 通 算 の 範 囲 だが 我 が 国 では 上 場 株 式 の 配 当 譲 渡 所 得 と 上 場 株 式 の 損 失 及 び 公 募 株 式 投 信 の 損 失 の 間 における 損 益 通 算 と 取 引 所 先 物 取 引 の 雑 所 得 と 有 価 証 券 先 物 取 引 の 損 失 FX 取 引 の 損 失 及 び 商 品 先 物 の 損 失 の 間 における 損 益 通 算 が 認 められている これ に 対 し アメリカ イギリス ドイツ フランスとも 譲 渡 所 得 や 金 融 所 得 と 損 益 通 算 が 認 め られる 損 失 は 株 式 の 損 失 投 資 信 託 の 損 失 等 であり 我 が 国 よりも 広 い 範 囲 で 認 められて いるのである そして 諸 外 国 の 株 式 譲 渡 益 課 税 配 当 所 得 課 税 利 子 に 関 する 所 得 に 係 る 課 税 は 勤 労 性 所 得 よりも 簡 素 な 課 税 が 行 われているである 23) (2) 北 欧 諸 国 における 課 税 1990 年 代 北 欧 諸 国 では 資 産 性 所 得 に 対 する 過 大 な 優 遇 措 置 が 存 在 し 納 税 者 の 負 債 利
86 嘉 悦 大 学 研 究 論 集 第 53 巻 第 2 号 通 巻 98 号 平 成 23 年 3 月 子 控 除 を 活 用 した 租 税 回 避 行 為 が 横 行 し 資 産 性 所 得 を 中 心 に 税 制 が 崩 壊 していた 24) そこ で 1987 年 デンマークで 採 用 された 二 元 的 所 得 税 が 25) スウェーデン ノルウェー フィ ンランドで 次 々と 導 入 されたのである 二 元 的 所 得 税 は 所 得 を 資 産 性 所 得 と 勤 労 性 所 得 に 区 分 し 資 産 性 所 得 は 優 遇 措 置 を 可 能 な 限 り 整 理 して 比 例 税 率 を 適 用 し 勤 労 性 所 得 は 所 得 再 分 配 機 能 を 持 たせるために 累 進 税 率 を 適 用 する 制 度 である この 二 元 的 所 得 税 の 適 用 により 北 欧 諸 国 は 資 産 性 所 得 におけ る 租 税 回 避 行 為 を 抑 制 し 租 税 回 避 行 為 から 生 じる 公 平 性 の 崩 壊 を 修 復 することに 成 功 した のである (3) オランダにおける 課 税 オランダでは 1990 年 代 に 納 税 者 の 負 債 利 子 控 除 の 活 用 による 課 税 ベースの 侵 食 税 負 担 の 軽 い 北 欧 諸 国 への 所 得 移 転 が 行 われ 税 制 が 崩 壊 していた 26) そこで 2001 年 から 新 たな 課 税 制 度 としてボックス 課 税 を 採 用 したのである ボックス 課 税 は ボックス1の 所 得 を 雇 用 と 居 住 から 生 ずる 所 得 として33.45% 41.95% 42% 52%の 累 進 税 率 で 課 税 ボックス2の 所 得 は 実 質 持 株 から 生 ずる 所 得 で25%の 定 率 で 課 税 ボックス3の 所 得 は 貯 蓄 と 投 資 から 生 ずる 所 得 で 資 産 のみなし 収 益 の4%に30%の 定 率 ( 結 果 として 資 産 の1.2%の 定 率 )で 課 税 と 所 得 を3つに 区 分 したうえで 所 得 税 を 課 す 制 度 である 27) オランダの 所 得 税 をボックス 課 税 とした 結 果 損 益 通 算 が 認 められる 範 囲 が 制 限 され か つ 北 欧 諸 国 とほぼ 同 率 で 資 産 性 所 得 に 課 税 が 行 われたことにより 租 税 回 避 行 為 から 生 じ ていた 公 平 性 の 問 題 を 解 消 することに 成 功 したのである 5. 所 得 税 に 求 められる 機 能 と 課 税 ベース (1) 所 得 税 創 設 と 課 税 ベース イギリスでは 戦 費 調 達 のため 富 裕 者 層 に 対 する 課 税 として 所 得 税 が 創 設 された 28) イギ リスで 所 得 税 が 創 設 された 初 期 の 資 本 主 義 経 済 では 社 会 生 産 物 の 生 産 や 販 売 により 継 続 的 に 生 ずる 賃 金 利 潤 等 が 所 得 とみなされ 資 産 の 譲 渡 は 単 なる 資 産 と 貨 幣 の 交 換 にすぎず 所 得 とはみなされなかった 29) したがって イギリスの 所 得 税 では 長 く 継 続 的 に 生 ずる 所 得 のみに 課 税 が 行 われ 資 産 譲 渡 から 生 ずる 所 得 へ 課 税 が 行 われるまでには 時 間 を 要 し キャ ピタル ゲインに 課 税 されることとなったのは1962 年 のことである 30) また ドイツでは イギリスと 比 べ 資 本 主 義 の 発 達 が 緩 やかであったことから 所 得 税 創 設 までに 長 い 時 間 を 要 し それまでの 税 では 支 払 能 力 を 考 慮 した 課 税 が 困 難 であったことを 背 景 に 所 得 税 が 創 設 されたのである 31) イギリスの 所 得 税 とドイツ(プロイセン)の 一 部 に 設 けられた 所 得 税 は 両 国 とも 継 続 的 に 生 ずる 所 得 に 対 し 課 税 を 行 うという 所 得 を 狭 く 捉 える 手 法 により 創 設 されたが ドイツでは 所 得 概 念 について 激 しい 論 争 が 生 じ 1920 年 のドイツ
金 融 所 得 課 税 に 関 する 一 考 察 谷 川 喜 美 江 87 全 土 に 創 設 された 帝 国 所 得 税 ではGeorg Schanzの 純 資 産 増 加 説 による 包 括 的 所 得 概 念 が 採 用 されたのである 32) アメリカでは 資 本 主 義 経 済 の 発 達 とともに 所 得 格 差 が 生 じ 所 得 再 分 配 機 能 を 備 えた 税 制 が 国 民 から 求 められ 33) 包 括 的 所 得 概 念 を 採 用 した 所 得 税 が1913 年 に 創 設 された 34) つま り アメリカでは 現 行 制 度 の 基 礎 となる 所 得 税 創 設 とともに 支 払 能 力 に 応 じた 課 税 や 所 得 再 分 配 機 能 を 十 分 に 発 揮 する 所 得 税 の 構 築 が 求 められ これらを 可 能 にする 包 括 的 所 得 概 念 が 採 用 されたのである (2) 勤 労 性 所 得 と 資 産 性 所 得 勤 労 性 所 得 資 産 性 所 得 の 課 税 のあり 方 に 関 して John S. Millは 勤 労 性 所 得 は 地 代 の ような 永 続 的 に 得 られる 資 産 性 所 得 よりも 非 永 続 的 で 不 確 実 な 所 得 であることから 免 税 点 を 高 く 設 定 すべきとして 35) 資 産 性 所 得 よりも 勤 労 性 所 得 を 軽 課 すべきであると 説 明 してい る また Adolph Wagnerは 所 得 再 分 配 が 社 会 政 策 上 要 請 される 経 済 状 況 下 では 公 平 の 観 点 から 給 付 能 力 は 勤 労 性 所 得 より 資 産 性 所 得 のほうが 大 きく 課 税 もまた 給 付 能 力 の 大 きい 資 産 性 所 得 に 重 課 し 勤 労 性 所 得 は 軽 課 すべきであるとの 説 明 をしているのである 36) むすびにかえて 我 が 国 経 済 は 最 も 低 迷 した 2009 年 ( 平 成 21 年 )に 比 較 すると 回 復 が 見 込 まれているが 依 然 として 高 い 完 全 失 業 率 と 円 高 による 失 速 が 懸 念 されている また 我 が 国 の 個 人 の 金 融 資 産 の 保 有 状 況 は 先 進 諸 外 国 と 比 較 すると 現 金 預 金 の 構 成 比 が 高 く 株 式 投 資 信 託 の 構 成 比 が 低 い 状 況 である このような 経 済 環 境 下 我 が 国 では 1996 年 ( 平 成 8 年 )11 月 に 我 が 国 金 融 システム の 改 革 ~2001 年 東 京 市 場 の 再 生 に 向 けて が 発 表 され 経 済 成 長 を 促 すため 現 金 預 金 の 保 有 割 合 が 大 きい 個 人 資 産 を 投 資 に 活 用 することが 求 められたのである しかし 発 表 後 我 が 国 の 税 制 は 直 ちに 金 融 資 産 を 活 用 した 経 済 成 長 を 促 すためばかり ではなく 公 平 性 も 考 慮 された 改 正 が 行 われていた しかし 2002 年 ( 平 成 14 年 )から 公 平 性 の 側 面 よりも 経 済 成 長 を 優 先 した 税 制 の 検 討 が 開 始 し 2003 年 ( 平 成 15 年 )に 上 場 株 式 等 の 譲 渡 益 及 び 配 当 について 10%の 軽 減 税 率 が 創 設 されたのである その 後 2004 年 ( 平 成 16 年 )6 月 15 日 政 府 税 制 調 査 会 金 融 小 委 員 会 の 金 融 所 得 課 税 の 一 体 化 についての 基 本 的 考 え 方 で 金 融 所 得 の 間 における 税 率 の 統 一 と 損 益 通 算 範 囲 の 拡 大 が 示 され 金 融 所 得 課 税 一 体 化 への 検 討 がなされることになった そして 現 在 の 我 が 国 税 制 では 上 場 株 式 等 の 譲 渡 益 や 配 当 等 の 資 産 性 所 得 の 一 部 は 給 与 所 得 や 事 業 所 得 等 の 勤 労 性 所 得 に 適 用 される 総 合 課 税 よりも 低 い 税 率 で 所 得 税 が 課 され
88 嘉 悦 大 学 研 究 論 集 第 53 巻 第 2 号 通 巻 98 号 平 成 23 年 3 月 損 益 通 算 範 囲 の 拡 大 も 行 われている しかしながら 個 人 金 融 資 産 に 占 める 現 金 預 金 の 構 成 比 率 に 大 きな 変 化 はなく 十 分 に 活 用 されているとは 言 い 難 い 状 況 である また 企 業 の 国 際 活 動 の 進 展 とともに 企 業 財 務 の 国 際 比 較 を 可 能 とする 財 務 諸 表 が 求 め られ IFRS を 適 用 する 国 が 拡 大 している この 拡 大 に 大 きな 影 響 を 与 えた EU での IFRS 適 用 時 我 が 国 企 業 は 我 が 国 の 会 計 基 準 に 準 拠 した 財 務 諸 表 と IFRS に 準 拠 した 財 務 諸 表 の 作 成 が 要 求 され 財 務 諸 表 作 成 コストの 側 面 から EU 域 内 市 場 での 上 場 廃 止 を 決 断 する 企 業 が 多 かった 逆 に 外 国 企 業 が 財 務 諸 表 作 成 コストを 理 由 に 我 が 国 市 場 での 上 場 廃 止 を 決 断 することも 尐 なくなかった しかし 現 在 アメリカでも IFRS の 適 用 が 検 討 されおり 我 が 国 でも 我 が 国 市 場 での 上 場 に 際 して 任 意 適 用 ではあるが IFRS に 準 拠 した 財 務 諸 表 が 認 められ 強 制 適 用 も 検 討 されている そして 我 が 国 で IFRS が 強 制 適 用 された 場 合 には 財 務 諸 表 作 成 コストに 伴 う 上 場 の 弊 害 が 緩 和 され さらに 投 資 する 者 にとって 財 務 諸 表 の 国 際 比 較 も 容 易 になるこ とから 国 際 的 な 投 資 活 動 の 進 展 が 考 えられるのである したがって 企 業 の 国 際 化 の 進 展 資 金 調 達 多 様 化 の 側 面 から 我 が 国 の 金 融 所 得 課 税 を 検 討 する 際 には 諸 外 国 における 制 度 を 考 慮 することが 必 要 である そこで 主 な 金 融 所 得 課 税 を 比 較 すると 我 が 国 では アメリカ イギリス ドイツ フランスよりも 株 式 譲 渡 益 課 税 配 当 課 税 利 子 から 生 ずる 所 得 課 税 の 税 率 はやや 低 い 税 率 で 課 税 が 行 われているが 損 益 通 算 の 範 囲 は 限 られた 所 得 の 間 でのみ 認 められている また かつて 総 合 課 税 で 課 税 が 行 われていた 北 欧 諸 国 オランダでは 資 産 性 所 得 から 生 じる 租 税 回 避 が 税 制 の 崩 壊 を 招 き これを 是 正 するために 北 欧 諸 国 では 二 元 的 所 得 税 オランダではボックス 課 税 へと 改 正 が 行 われたのである つまり 諸 外 国 では 勤 労 性 所 得 よりも 資 産 性 所 得 への 課 税 を 簡 素 かつ 軽 減 することにより 租 税 回 避 から 生 ずる 不 公 平 を 抑 制 し 公 平 性 を 担 保 する 努 力 がなされて きたのである そこで 歴 史 的 経 緯 を 概 観 すると 所 得 税 には 資 本 主 義 発 達 に 伴 い 生 ずる 所 得 格 差 の 是 正 が 求 められており そのためには 課 税 ベースをひろく 捉 える 包 括 的 所 得 概 念 が 求 められる さらに 所 得 再 分 配 を 考 慮 すると John S. Mill や Adolph Wagner が 説 明 するように 勤 労 性 所 得 は 資 産 性 所 得 よりも 担 税 力 が 弱 い 所 得 であるから 所 得 税 を 軽 く 課 すことが 求 められ るのである しかしながら 企 業 活 動 の 国 際 化 会 計 基 準 の 国 際 的 統 一 化 の 進 展 は 企 業 の 資 金 調 達 の 多 様 化 投 資 家 の 国 際 投 資 活 動 を 容 易 にするものであり かつ 諸 外 国 でも 資 産 性 所 得 に 関 しては 税 制 を 簡 素 かつ 軽 課 する 方 向 で 改 正 が 行 われている したがって 我 が 国 で 勤 労 性 所 得 軽 課 資 産 性 所 得 重 課 を 採 り 総 合 課 税 を 課 すことは かつて 北 欧 やオランダが 経 験 した 租 税 回 避 から 生 ずる 税 制 の 崩 壊 が 懸 念 される 一 方 で 現 行 の 北 欧 やオランダの 如 く 勤 労 性 所 得 と 資 産 性 所 得 とそれぞれの 区 分 に 基 づく 課 税 は 個 人 の 合 計 所 得 による 真 の 担 税 力 を 考 慮 した 課 税 が 行 われ 難 い
金 融 所 得 課 税 に 関 する 一 考 察 谷 川 喜 美 江 89 そこで 我 が 国 における 金 融 所 得 課 税 を 考 慮 する 際 には 課 税 ベースを 広 く 捉 え 租 税 回 避 から 生 ずる 税 制 崩 壊 を 抑 制 するため 勤 労 性 所 得 と 資 産 性 所 得 とそれぞれ 区 分 した 上 そ の 範 囲 内 において 損 益 通 算 を 認 めるべきである そして 損 益 通 算 後 の 両 所 得 を 合 算 し 合 算 後 の 所 得 に 基 づく 累 進 税 率 を 適 用 した 課 税 を 行 うことで 簡 素 かつ 所 得 再 分 配 機 能 を 十 分 に 備 えた 所 得 税 制 が 構 築 されるのである 注 1) 総 務 省 労 働 力 調 査 による 結 果 である( 総 務 省 労 働 力 調 査 過 去 の 結 果 概 要 http://www.stat.go.jp/data/roudou/rireki/gaiyou.htm 2010 年 9 月 14 日 ) 2) 中 小 企 業 庁 では 我 が 国 の 景 気 を 下 押 しするリスクとして 円 高 によるリスクを 挙 げており 今 後 の 動 向 に 注 視 が 必 要 である 旨 を 指 摘 している( 中 小 企 業 庁 編 2010 年 版 中 小 企 業 白 書 日 経 印 刷 2010 年 7 月 9 頁 ~10 頁 ) また 一 時 1 ドル=82 円 代 となったことを 受 け 政 府 日 銀 は 2010 年 9 月 15 日 に 6 年 半 ぶりの 円 売 り 介 入 を 行 った( 日 本 経 済 新 聞 2010 年 9 月 16 日 朝 刊 1 面 ) 3) 金 融 庁 からの 税 制 改 正 要 望 において 諸 外 国 と 比 して 我 が 国 の 株 式 投 資 信 託 の 構 成 割 合 が 低 い ことが 指 摘 されたものとして 例 えば 金 融 庁 平 成 22 年 度 税 制 改 正 要 望 項 目 2009 年 8 月 3 頁 がある 4) 例 えば 金 融 庁 の 平 成 20 年 度 税 制 改 正 要 望 では 軽 減 税 率 の 恒 久 化 や 損 益 通 算 の 範 囲 拡 大 が 要 望 されていた( 金 融 庁 平 成 20 年 度 税 制 改 正 要 望 項 目 2006 年 8 月 3 頁 5) 我 が 国 金 融 システムの 改 革 ~2001 年 東 京 市 場 の 再 生 に 向 けて 1996 年 11 月 (http://www.fsa.go.jp/p_mof/big-bang/bb7.htm(2010 年 11 月 30 日 ) 6) 1997 年 12 月 3 日 の 政 府 税 制 調 査 会 金 融 小 委 員 会 中 間 報 告 では 国 際 化 に 対 応 可 能 となる 租 税 構 築 の 必 要 性 が 示 されるとともに 税 負 担 の 公 平 の 重 要 性 が 示 されており( 政 府 税 制 調 査 会 金 融 課 税 小 委 員 会 中 間 報 告 1997 年 12 月 ) 2000 年 7 月 政 府 税 制 調 査 会 でも 足 の 速 い 所 得 である 金 融 所 得 に 対 し 租 税 回 避 行 為 の 抑 制 と 公 平 性 の 確 保 が 重 要 視 されていたのである( 政 府 税 制 調 査 会 我 が 国 税 制 の 現 状 と 課 題 21 世 紀 に 向 けた 国 民 の 参 加 と 選 択 2000 年 7 月 ) 7) 政 府 税 制 調 査 会 平 成 15 年 度 における 税 制 改 革 についての 答 申 -あるべき 税 制 の 構 築 に 向 けて- 2002 年 1 月 8) 政 府 税 制 調 査 会 金 融 小 委 員 会 金 融 所 得 課 税 の 一 体 化 についての 基 本 的 考 え 方 2004 年 6 月 15 日 9) 山 本 守 之 税 制 改 正 の 動 き 焦 点 税 務 経 理 協 会 2005 年 3 月 118 頁 ~119 頁 10) 政 府 税 制 調 査 会 抜 本 的 な 税 制 改 革 に 向 けた 基 本 的 な 考 え 方 2006 年 11 月 11) 自 由 民 主 党 平 成 19 年 度 税 制 改 正 大 綱 2006 年 12 月 24 日 12) 民 主 党 平 成 22 年 度 税 制 改 正 大 綱 ~ 納 税 者 主 権 の 確 立 へ 向 けて~ 2009 年 12 月 22 日 13) 金 融 税 制 研 究 会 金 融 税 制 研 究 会 論 点 整 理 2010 年 7 月 29 日 14) 平 成 23 年 度 税 制 改 正 要 望 にあたり 金 融 庁 及 び 経 済 産 業 省 から 損 益 通 算 の 範 囲 拡 大 等 所 要 の 改 正 要 求 がなされていた( 金 融 庁 平 成 23 年 度 税 制 改 正 要 望 項 目 2010 年 8 月 及 び 経 済 産 業 省 平 成 23 年 度 税 制 改 正 に 関 する 経 済 産 業 省 要 望 2010 年 8 月 ) また 平 成 23 年 度 税 制 改 正 に 関 し
90 嘉 悦 大 学 研 究 論 集 第 53 巻 第 2 号 通 巻 98 号 平 成 23 年 3 月 ては 民 主 党 平 成 23 年 度 税 制 改 正 大 綱 2010 年 12 月 16 日 を 参 照 されたい 15) 島 田 眞 一 会 計 基 準 の 国 際 的 統 一 化 の 軌 跡 とその 視 点 View&Vision 29 号 千 葉 商 科 大 学 2010 年 3 月 5 頁 16) 同 上 5 頁 17) 企 業 会 計 審 議 会 我 が 国 における 国 際 会 計 基 準 の 取 扱 いに 関 する 意 見 書 ( 中 間 報 告 ) 2009 年 6 月 30 日 18) 日 本 経 済 団 体 連 合 会 国 際 会 計 基 準 (IFRS)に 関 する 欧 州 調 査 報 告 概 要 2008 年 3 月 18 日 http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2008/012.html(2010 年 9 月 20 日 ) 19) EU 域 内 市 場 でのIFRSに 準 拠 した 財 務 諸 表 作 成 が 義 務 付 けられたことにより 我 が 国 では ソニーや 日 立 などEU 域 内 市 場 での 上 場 を 廃 止 する 企 業 が 相 次 ぎ EU 域 内 で 上 場 する 我 が 国 企 業 は 1999 年 ( 平 成 11 年 )には 90 社 を 超 えていたが 2005 年 ( 平 成 17 年 ) 前 半 には 50 社 程 度 まで 減 尐 した( 日 経 金 融 新 聞 2006 年 4 月 12 日 20 頁 ) 20) 例 えば フランスのBNPパリバが 東 京 証 券 取 引 所 からの 上 場 廃 止 を 決 断 した 理 由 の1つに 財 務 諸 表 作 成 コストの 問 題 があった( 日 本 経 済 新 聞 2009 年 3 月 10 日 朝 刊 4 頁 ) そして 多 く の 外 国 企 業 が 東 京 証 券 取 引 所 での 上 場 を 廃 止 し 1991 年 ( 平 成 3 年 )12 月 には 127 社 あった 外 国 企 業 が 十 数 社 にまで 減 尐 した( 日 本 経 済 新 聞 2008 年 11 月 14 日 朝 刊 14 頁 及 び 日 本 経 済 新 聞 2010 年 3 月 10 日 朝 刊 1 頁 ) 21) 企 業 会 計 審 議 会 前 掲 ( 注 17) 22) 同 上 23) アメリカ イギリス ドイツ フランスの 課 税 に 関 しては 財 務 省 個 人 所 得 課 税 の 国 際 比 較 国 際 比 較 に 関 する 資 料 ( 平 成 22 年 4 月 現 在 ) http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/027.htm (2010 年 9 月 20 日 ) 及 び 財 務 省 個 人 所 得 課 税 の 税 率 構 造 の 国 際 比 較 (イメージ) 国 際 比 較 に 関 する 資 料 ( 平 成 22 年 4 月 現 在 ) http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/036.htm(2010 年 9 月 20 日 )を 参 照 されたい 24) 森 信 茂 樹 二 元 的 所 得 税 議 論 の 示 唆 するもの 経 済 セミナー No.572 日 本 評 論 社 2002 年 17 頁 25) Sorensen, P.B. ed Tax Policy in the Nordic Countries Macmillan Press Ltd, 1998, pp4( 馬 場 義 久 監 訳 北 欧 諸 国 の 租 税 政 策 日 本 証 券 経 済 研 究 所 2001 年 4 頁 ) 26) 阿 部 喜 和 村 上 康 二 渡 辺 智 道 オランダ 財 務 省 山 本 守 之 欧 州 税 制 視 察 団 2005 年 度 欧 州 視 察 レポート 集 2005 年 7 月 24 頁 ~25 頁 27) オランダ 財 務 省 ホームページ http://www.minfin.nl/english/subjects/taxation/income_tax/tax_base_and_tax_rates(2010 年 9 月 20 日 ) 28) 佐 藤 進 近 代 税 制 の 成 立 過 程 東 京 大 学 出 版 会 1979 年 103 頁 ~104 頁 29) 泉 美 之 松 税 についての 基 礎 知 識 十 訂 版 税 務 経 理 協 会 1986 年 89 頁 ~90 頁 30) 森 信 茂 樹 日 本 が 生 まれ 変 わる 税 制 改 革 中 央 公 論 新 社 2003 年 107 頁 31) 宮 本 憲 一 鶴 田 廣 巳 編 著 所 得 税 の 理 論 と 思 想 税 務 経 理 協 会 2001 年 211 頁 ~213 頁 32) 同 上 222 頁 ~223 頁 33) Brownlee, W.E. Federal taxation in America : A short history Woodrow Wilson Center Press and Cambridge University Press,1996,pp36
金 融 所 得 課 税 に 関 する 一 考 察 谷 川 喜 美 江 91 34) Klein, J.J. Federal income taxation John Wiley & Sons, 1929, pp26 35) Mill, J.S. Principles of Political Economy J.W.Parker, 1848, pp359( 末 永 茂 喜 訳 経 済 学 原 理 ( 五 ) 岩 波 書 店 1963 年 49 頁 ~50 頁 ) 36) Wagner, A. Finanzwissenschaft ( 瀧 本 美 夫 解 説 財 政 学 同 文 館 1904 年 466 頁 ) 参 考 文 献 [1] Brownlee, W.E. Federal taxation in America : A short history Woodrow Wilson Center Press and Cambridge University Press,1996 [2] Klein, J.J. Federal income taxation John Wiley & Sons,1929 [3] Mill, J.S. Principles of Political Economy J.W.Parker,1848( 末 永 茂 喜 訳 経 済 学 原 理 ( 五 ) 岩 波 書 店 1963 年 ) [4] Sorensen,P.B. ed Tax Policy in the Nordic Countries Macmillan Press Ltd,1998( 馬 場 義 久 監 訳 北 欧 諸 国 の 租 税 政 策 日 本 証 券 経 済 研 究 所 1938 年 ) [5] Wagner,A. Finanzwissenschaft ( 瀧 本 美 夫 解 説 財 政 学 同 文 館 1904 年 ) [6] 我 が 国 金 融 システムの 改 革 ~2001 年 東 京 市 場 の 再 生 に 向 けて 1996 年 11 月 [7] 阿 部 喜 和 村 上 康 二 渡 辺 智 道 オランダ 財 務 省 山 本 守 之 欧 州 税 制 視 察 団 2005 年 度 欧 州 視 察 レポート 集 2005 年 7 月 [8] 泉 美 之 松 税 についての 基 礎 知 識 十 訂 版 税 務 経 理 協 会 1986 年 [9] 企 業 会 計 審 議 会 我 が 国 における 国 際 会 計 基 準 の 取 扱 いに 関 する 意 見 書 ( 中 間 報 告 ) 2009 年 6 月 [10] 金 融 税 制 研 究 会 金 融 税 制 研 究 会 論 点 整 理 2010 年 7 月 29 日 [11] 金 融 庁 平 成 20 年 度 税 制 改 正 要 望 項 目 2006 年 8 月 [12] 金 融 庁 平 成 22 年 度 税 制 改 正 要 望 項 目 2009 年 8 月 [13] 金 融 庁 平 成 23 年 度 税 制 改 正 要 望 項 目 2010 年 8 月 [14] 経 済 産 業 省 通 商 白 書 平 成 22 年 版 日 経 印 刷 2010 年 7 月 [15] 経 済 産 業 省 平 成 23 年 度 税 制 改 正 に 関 する 経 済 産 業 省 要 望 2010 年 8 月 [16] 佐 藤 進 近 代 税 制 の 成 立 過 程 東 京 大 学 出 版 会 1979 年 [17] 島 田 眞 一 会 計 基 準 の 国 際 的 統 一 化 の 軌 跡 とその 視 点 View & Vision 29 号 千 葉 商 科 大 学 2010 年 3 月 4 頁 ~11 頁 [18] 自 由 民 主 党 平 成 19 年 度 税 制 改 正 大 綱 2006 年 12 月 [19] 政 府 税 制 調 査 会 金 融 課 税 小 委 員 会 中 間 報 告 1997 年 12 月 [20] 政 府 税 制 調 査 会 我 が 国 税 制 の 現 状 と 課 題 21 世 紀 に 向 けた 国 民 の 参 加 と 選 択 2000 年 7 月 [21] 政 府 税 制 調 査 会 平 成 15 年 度 における 税 制 改 革 についての 答 申 -あるべき 税 制 の 構 築 に 向 けて- 2002 年 1 月 [22] 政 府 税 制 調 査 会 金 融 小 委 員 会 金 融 所 得 課 税 の 一 体 化 についての 基 本 的 考 え 方 2004 年 6 月 [23] 政 府 税 制 調 査 会 抜 本 的 な 税 制 改 革 に 向 けた 基 本 的 な 考 え 方 2006 年 11 月 [24] 中 小 企 業 庁 編 2010 年 版 中 小 企 業 白 書 日 経 印 刷 2010 年 [25] 宮 本 憲 一 鶴 田 廣 巳 編 著 所 得 税 の 理 論 と 思 想 税 務 経 理 協 会 2001 年 [26] 民 主 党 平 成 22 年 度 税 制 改 正 大 綱 ~ 納 税 者 主 権 の 確 立 へ 向 けて~ 2009 年 12 月 [27] 森 信 茂 樹 二 元 的 所 得 税 議 論 の 示 唆 するもの 経 済 セミナー No.572 日 本 評 論 社 2002
92 嘉 悦 大 学 研 究 論 集 第 53 巻 第 2 号 通 巻 98 号 平 成 23 年 3 月 年 8 月 16 頁 ~20 頁 [28] 森 信 茂 樹 日 本 が 生 まれ 変 わる 税 制 改 革 中 央 公 論 新 社 2003 年 [29] 山 本 守 之 税 制 改 正 の 動 き 焦 点 税 務 経 理 協 会 2005 年 ( 平 成 22 年 10 月 8 日 受 付 平 成 22 年 11 月 29 日 再 受 付 )