首都圏と近畿圏における高額所得者の居住地分布に関する研究 住環境計画研究室 1 はじめに 1.1 研究の背景 目的 高収入層は低収入層に比較して その居住地 ならびに住宅の選択において高い自由度を持っ ている とりわけ大都市においては その地価 構造を反映して高い都心から郊外部まで 様々 な住宅地が展開しており ライフスタイルに合 わせた居住地選択をすることができる わが国 における高収入層は 大都市圏において どの ような居住地を選択しているのであろうか 本 研究では高額所得者の現在の住宅地像を捉える ことを目的とする 1.2 研究方法 高額所得者の定義 高額所得者を把握する方法として 毎年の納 税額が 1000 万円以上の高額納税者の公示リス ト( 1 がある その内容は高額納税者の住所 マ ンション等まで把握可 氏名 納税額等が記載 されている その 2005 年版の高額納税者の公示 リストを入手し その住所データをもとに高額 所得者の居住地を把握する ( 2 本研究では 2005 年における首都圏(1 都 3 県(東京 神奈川 千葉 埼玉))と近畿圏(2 府 2 県(大阪 京都 兵 庫 奈良))の 47,402 人を対象 対象範囲とする 分析は以下の手順で進めた ①高額所得者の居住地分布を明らかにするため 高額納税者の公示リストの住所を基に GIS 情報ソフト( 3 を利用し 高額納税者の居住地 図 2-1 首都圏の納税額 1000 万円以上の 納税者の居住地分布 06-3-335-0501 牧田卓也 を地図上にプロット 分布図を作成する そ の分布図を用いて分析を行う ( 第 2 章) ②高額所得者層の居住地として捉えるためには 密度によって把握する必要がある まず 高 額納税者の公示リストの住所を基に町丁目 別に人数を集計する 2000 年度国勢調査より 町丁目別の世帯数を求め 集計した高額納税 者数を世帯数で除したものを高額所得世帯 密度と定義 順位付けを行った( 4 そしてそ の順位付けを基に分析を行う ( 第 3 章) ③高額所得者層の住宅地を現地観察し 特徴等 を把握 タイプわけを行う ( 第 4 章) 2 高額納税者の居住地分布 2.1 首都圏の分布状況 首都圏の高額納税者の居住地は都心から東 京 23 区南西部にかけて多く分布している(図 2-1) 都心を除き 23 区内では鉄道を中心に沿 線に広がる 東京都と神奈川県の境である多摩 川を隔てて分布の状況が大きく変わる この分 布が示すように首都圏の高額納税者全体に占め る各地域の分布の割合をみると 東京都 63.1 東京 23 区 53.5 都心 5 区(中央 千代田 港 渋谷 新宿区)19.2 都心 3 区 11.5 と都心部 の割合が非常に高い 市区町村別では港区 7.8 世田谷区 7.6 渋谷区 5 と分布する さらに分布の特徴を捉えるため 納税額 3000 図 2-2 首都圏の納税額 3000 万円以上の 納税者の居住地分布
万円以上の納税者の分布を調べた(図 2-2) 都 心 5 区内と世田谷区成城 大田区田園調布周辺 に分布が集中していることがわかった 次に納税額 1000 万円以上の高額納税者を住 宅の建て方別に分類して分布を見た(図 2-3 図 2-4) 戸建居住(図 2-3)は図 2-1 と比べると 分布が都心部から減り 23 区南西部 特に渋谷 区 目黒区 世田谷区に分布が集中している 共同建居住(図 2-4)では戸建居住とは違い 分 布が都心部に集中し 都心 5 区との境ではっき りと分かれている 立地条件 特に地価が大き く影響していると思われる 首都圏では住居の 建て方によって分布が異なるが どちらも都心 に近いエリアに多く分布している 2.2 近畿圏の分布状況 近畿圏は首都圏とは違い 都心部に分布が集 中することはなく 阪神間や北摂地域にも分布 が集まっている(図 2-5) 近畿圏における高額 納税者の分布割合は 大阪府 49.8 兵庫県 31 と両府県でほとんどを占める 市区町村別 では 図 2-5 の特徴を示すように 西宮市 5.8 豊中市 4.2 芦屋市 3.7 吹田市 3.6 と続 く 近畿圏の中心である大阪市は全区あわせて 17.9 で 図 2-5 が示すように大阪市で目立っ て分布がまとまっているのは市南部の帝塚山周 辺のみである 阪神間 北摂地域とも大阪市と 周辺市との境界付近の地域には分布が少なく 分布の多くは都心から少し距離をおいた西宮市 から神戸市にかけての阪神間の山手側 特に芦 屋市と西宮市の山手側に多い 北摂地域では 吹田市や豊中市 箕面市等に分布がまとまって 図 2-5 図 2-3 図 2-4 戸建居住 首都圏 共同建居住 首都圏 近畿圏の納税額 1000 万円以上の納税者の居住地分布
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密度上位の町丁目は図 2-5 同様 都心部に集中 せず 周辺部に分布している(表 3-2,図 3-4) ただ プロットとして現れていた範囲が狭まり より鮮明となった 高密度でまとまって分布し ているのは西宮市と芦屋市の山手側である 高 所得層の住宅地の中心はこの両市にまたがる地 域といえる その他では北摂地域 豊中市緑丘 ~東豊中町周辺に比較的高密度な地域がある 近畿圏では山手側に分布する傾向がみてとれる 具体的な町名を見てゆくと 大阪市北区西天 満 梅田 1 については詳細に調べた結果 丸の 内と同様の理由と思われる これらを除くと以 下には芦屋市六麓荘町に代表される著名な住宅 地 特に山麓に開発された住宅地が並ぶ 4 高密度で高額所得世帯が分布する居住地 高額所得世帯密度の上位町丁目から現地観 察する町丁目を選定し 各町丁目のタイプ分け を行った(表 4-1) 選定基準は 密度が 5 以上 で世帯数と高額納税者数がある程度いる住宅地 とした タイプ分けはまず階層の混在度で分け た上で 各町丁目の構成する主な建物の種類 都心からの位置( 6)で行った 階層の混在度については ほとんどの町丁目 で高額所得世帯密度が数 であることが示すよ うに 高所得層のみの町丁目は少なかった 図 3-3 首都圏の高額所得世帯密度の分布状況 図 3-4 近畿圏の高額所得世帯密度の分布状況
D3,D4 B1,C2 A1~A3 A1~A3 B2,B3,C3 D3,D4