経 済 調 査 部 エコノミスト 齋 藤 周 3-3591-1283 当 レポートは 情 報 提 供 のみを 目 的 として 作 成 されたものであり 商 品 の 勧 誘 を 目 的 としたものではあり ません 本 資 料 は 当 社 が 信

みずほリポート 214 年 6 月 9 日 相 続 税 法 改 正 と 貸 家 着 工 税 制 改 正 が 貸 家 着 工 に 与 える 影 響 試 算 213 年 の 貸 家 着 工 は 前 年 比 +11.8%と 大 幅 に 増 加 低 金 利 や 住 宅 価 格 の 先 高 観 消 費 税 率 引 き 上 げに 伴 う 駆 け 込 みに 加 えて 213 年 度 税 制 改 正 で 決 定 した 相 続 税 増 税 も 貸 家 着 工 を 喚 起 税 制 改 正 で 相 続 税 の 基 礎 控 除 が 引 き 下 げられることで 課 税 対 象 になる 相 続 ケースが 増 加 するとともに 相 続 税 の 税 率 の 見 直 しなどが 行 われることから 納 付 する 相 続 税 額 が 増 加 金 融 資 産 に 比 べて 貸 家 は 相 続 財 産 として 課 税 時 の 評 価 額 が 低 い そのため 金 融 資 産 ではなく 貸 家 を 相 続 することで 納 付 する 相 続 税 額 を 抑 えることができる 節 税 インセンティブが 特 に 強 いのは1, 人 強 ( 年 間 )とみら れる これらの 人 々が 平 均 的 な 貸 家 (15 室 程 度 )を 建 設 した 場 合 の 貸 家 着 工 押 し 上 げ 効 果 は 年 間 1.5 万 戸 程 度 と 試 算 される

経 済 調 査 部 エコノミスト 齋 藤 周 3-3591-1283 amane.saito@mizuho-ri.co.jp 当 レポートは 情 報 提 供 のみを 目 的 として 作 成 されたものであり 商 品 の 勧 誘 を 目 的 としたものではあり ません 本 資 料 は 当 社 が 信 頼 できると 判 断 した 各 種 データに 基 づき 作 成 されておりますが その 正 確 性 確 実 性 を 保 証 するものではありません また 本 資 料 に 記 載 された 内 容 は 予 告 なしに 変 更 されることもあ ります

目 次 1. はじめに 1 2. 213 年 の 住 宅 着 工 動 向 1 3. 相 続 税 法 改 正 の 概 要 2 (1) 税 制 改 正 の 概 要 2 (2) 相 続 税 の 課 税 状 況 3 4. 相 続 税 法 改 正 が 貸 家 着 工 に 与 える 影 響 5 (1) 貸 家 を 用 いた 相 続 税 負 担 軽 減 の 例 5 (2) 貸 家 着 工 需 要 の 試 算 概 要 6 (3) 貸 家 着 工 需 要 の 試 算 結 果 8 5. おわりに 9 補 論 1 貸 家 を 用 いた 相 続 税 負 担 軽 減 の 例 1 補 論 2 相 続 税 増 税 に 伴 う 貸 家 着 工 への 需 要 試 算 1 補 論 3 カーネル 密 度 推 定 11 参 考 文 献 13

1.はじめに 日 本 の 住 宅 着 工 戸 数 は 平 成 バブル 崩 壊 以 降 緩 やかな 減 少 傾 向 にある 長 期 的 な 住 宅 着 工 戸 数 が 減 少 傾 向 にあるのは 人 口 動 態 世 帯 数 の 影 響 が 大 きい 一 方 短 期 的 には 景 気 循 環 や 政 策 要 因 などで 大 きく 変 動 している 2 年 代 以 降 住 宅 需 要 の 変 動 をもたらした 政 策 要 因 には 住 宅 ローン 減 税 拡 充 やフラット35Sの 金 利 優 遇 消 費 税 率 の 引 き 上 げなどがある 加 えて このところ 注 目 されているのは 215 年 1 月 か らの 相 続 税 増 税 の 影 響 である 具 体 的 には 相 続 税 の 増 税 を 受 けて 税 負 担 軽 減 を 目 的 とした 貸 家 需 要 の 増 加 が 指 摘 されている 1 これまで 消 費 税 率 引 き 上 げが 住 宅 着 工 に 与 える 影 響 については 多 くの 分 析 が 行 われている しかし 相 続 税 は1989 年 の 抜 本 改 正 以 降 一 貫 して 税 負 担 が 軽 減 されてきたこと などから 増 税 による 影 響 はあまり 分 析 されていない そこで 本 稿 では 相 続 税 増 税 による 貸 家 着 工 への 影 響 について 考 察 する 2.213 年 の 住 宅 着 工 動 向 213 年 の 住 宅 着 工 戸 数 は98. 万 戸 と 前 年 比 +11.%の 大 幅 増 となった 持 家 が 同 +13.9% 貸 家 が 同 +11.8%とそれぞれ1 割 強 増 加 したほか 分 譲 住 宅 も 同 +6.9% 増 加 した( 図 表 1) 増 加 の 背 景 には 金 融 緩 和 に 伴 う 金 利 低 下 や 住 宅 価 格 の 先 高 観 214 年 4 月 の 消 費 税 率 引 き 上 げを 見 越 した 駆 け 込 み 着 2 工 などがある 住 宅 ローン 金 利 は212 年 1 月 の2.14%から213 年 12 月 には1.8%まで 低 下 した 一 方 で 円 安 による 資 材 価 格 の 上 昇 や 人 件 費 高 騰 などから 建 築 コストの 上 昇 基 調 が 続 いており 住 宅 取 得 コストに 対 する 先 高 観 が 強 まっている さらに 消 費 税 率 5%の 適 用 期 限 となっていた9 月 末 にかけて ハウスメーカーへの 駆 け 込 み 発 注 が 生 じたことも213 年 の 住 宅 着 工 を 押 し 上 げた 図 表 1 住 宅 着 工 戸 数 の 推 移 ( 暦 年 ) 図 表 2 ハウスメーカーの 受 注 状 況 ( 万 戸 ) 14 13 12 11 1 9 8 7 合 計 ( 万 戸 ) 6 6 1 2 24 28 212 2 24 28 212 ( 年 ) ( 年 ) ( 資 料 ) 国 土 交 通 省 住 宅 着 工 統 計 よりみずほ 総 合 研 究 所 作 成 55 5 45 4 35 3 25 2 15 ( 内 訳 ) 持 家 貸 家 分 譲 ( 前 年 比 %) 9 7 5 3 1 1 持 家 系 住 宅 ( 主 要 5 社 ) 貸 家 系 住 宅 ( 主 要 4 社 ) 3 212 213 214 ( 年 / 月 ) ( 注 )1. 持 家 系 住 宅 ( 主 要 5 社 )は ミサワホーム パナホーム 積 水 ハウス ダイワハウス 旭 化 成 の 前 年 同 月 比 を 前 期 の 年 間 売 上 高 で 加 重 平 均 した 値 2. 貸 家 系 住 宅 ( 主 要 4 社 )は ミサワホーム パナホーム 積 水 ハウス ダイワハウスの 前 年 同 月 比 を 前 期 の 年 間 売 上 高 で 加 重 平 均 した 値 ( 資 料 ) 各 社 ホームページよりみずほ 総 合 研 究 所 作 成 1 2 森 口 大 輔 ほか(214) 返 済 期 間 が 21 年 以 上 35 年 以 下 融 資 率 が 9 割 以 下 の 場 合 におけるフラット 35 の 最 低 金 利 1

ハウスメーカーの 受 注 状 況 をみると 駆 け 込 み 需 要 により213 年 9 月 にかけて 大 きく 増 加 した 後 1 月 以 降 は 急 激 に 落 ち 込 んでいる(1 頁 図 表 2) 内 訳 をみると 持 家 系 住 宅 ( 戸 建 注 文 住 宅 )の 受 注 は1 月 から 前 年 割 れが 続 いている それに 対 し 貸 家 系 住 宅 ( 賃 貸 住 宅 )は1 月 を 除 いて 前 年 比 プラ スを 維 持 するなど 持 家 系 住 宅 に 比 べて 落 ち 込 みが 小 さい 貸 家 需 要 を 支 える 要 因 のひとつとなっているのが 213 年 度 税 制 改 正 に 盛 り 込 まれた 相 続 税 法 改 正 (215 年 1 月 以 降 に 適 用 )の 影 響 である 財 務 省 の 税 収 見 込 額 によれば この 税 制 改 正 によって2,62 億 円 の 相 続 税 増 収 が 見 込 まれている 211 年 分 の 相 続 税 収 を 基 準 にすると 改 正 前 比 +19.3%もの 増 税 となる 3 こうした 中 相 続 税 額 を 低 く 抑 えるため 金 融 資 産 に 比 べて 資 産 評 価 額 が 低 い 貸 家 を 取 得 す る 動 きが 強 まっていることが 指 摘 されている しかし 相 続 税 増 税 によってどの 程 度 貸 家 着 工 が 押 し 上 げられているかは 明 らかでない 本 稿 では 一 定 の 仮 定 の 下 に 試 算 を 行 い 相 続 税 法 改 正 による 貸 家 着 工 押 し 上 げ 効 果 について 定 量 的 把 握 を 試 みる 3. 相 続 税 法 改 正 の 概 要 (1) 税 制 改 正 の 概 要 まず 213 年 度 税 制 改 正 における 相 続 税 法 及 び 租 税 特 別 措 置 法 の 改 正 内 容 を 確 認 しよう 主 な 改 正 点 は 1 基 礎 控 除 引 き 下 げによる 課 税 ベース 拡 大 2ブラケット( 税 率 適 用 区 分 ) 追 加 や 最 高 税 率 など 税 率 構 造 の 見 直 し である 1については 相 続 財 産 に 対 する 基 礎 控 除 額 の 引 き 下 げによって 課 税 対 象 者 課 税 対 象 額 が 増 加 す 図 表 3 税 制 改 正 前 後 の 相 続 税 速 算 表 法 定 相 続 分 に 応 改 正 前 改 正 後 ずる 取 得 金 額 税 率 控 除 額 税 率 控 除 額 1, 万 円 以 下 1% 万 円 1% 万 円 3, 万 円 以 下 15% 5 万 円 15% 5 万 円 5, 万 円 以 下 2% 2 万 円 2% 2 万 円 1 億 円 以 下 3% 7 万 円 3% 7 万 円 2 億 円 以 下 4% 1,7 万 円 4% 1,7 万 円 3 億 円 以 下 45% 2,7 万 円 6 億 円 以 下 (3 億 円 超 ) 5% 4,2 万 円 4,7 万 円 6 億 円 超 5% 55% 7,2 万 円 ( 注 )1. 法 定 相 続 分 に 応 ずる 取 得 金 額 は 法 定 相 続 人 一 人 当 たり 金 額 ( 課 税 遺 産 額 ) 2. 相 続 税 額 は 法 定 相 続 分 に 応 ずる 取 得 金 額 税 率 - 控 除 額 で 算 出 される ( 資 料 ) 財 務 省 パンフレット 平 成 25 年 度 税 制 改 正 よりみずほ 総 合 研 究 所 作 成 3 211 年 の 相 続 税 の 納 付 税 額 は 1 兆 2,516 億 円 ( 国 税 庁 第 137 回 国 税 庁 統 計 年 報 書 参 照 )であり 税 制 改 正 による 相 続 税 贈 与 税 の 増 収 見 込 額 2,42 億 円 ( 財 務 省 パンフレット 平 成 25 年 度 税 制 改 正 参 照 )によって 改 正 前 比 +19.3% 押 し 上 げられる 2

る 具 体 的 には これまで 被 相 続 人 ( 亡 くなった 人 )からの 相 続 財 産 額 ( 課 税 価 格 4 )の 合 計 から 控 除 される 金 額 は 5, 万 円 +1, 万 円 法 定 相 続 人 の 数 であったが 改 正 後 は 3, 万 円 +6 万 円 法 定 相 続 人 の 数 に 引 き 下 げられる 法 定 相 続 人 が1 人 のケースだと 非 課 税 限 度 額 が6, 万 円 か ら3,6 万 円 に 低 下 するため 215 年 1 月 以 降 は 改 正 前 に 比 べ 課 税 対 象 になるケースが 増 加 するとみら れる また 基 礎 控 除 引 き 下 げにより 課 税 遺 産 総 額 5 が 大 きくなるため 相 続 人 の 税 負 担 は 全 般 に 増 加 する 2の 税 率 構 造 の 見 直 しでは 相 続 人 一 人 当 たりの 取 得 相 続 財 産 額 6 が2 億 円 超 の 層 に2つのブラケット ( 3 億 円 以 下 6 億 円 超 )が 追 加 された その 上 で 3 億 円 以 下 6 億 円 以 下 6 億 円 超 のブラケットでは 税 率 引 き 上 げか 控 除 引 き 下 げによって 課 税 が 強 化 された 新 設 された 取 得 相 続 財 産 額 6 億 円 超 のブラケットに 適 用 される 最 高 税 率 は5%から55%に 引 き 上 げられている この ように 税 率 構 造 の 面 では 相 対 的 に 多 額 の 遺 産 を 相 続 する 場 合 の 税 負 担 が 従 来 に 比 べて 重 くなった (2 頁 図 表 3) (2) 相 続 税 の 課 税 状 況 次 に 相 続 税 の 課 税 状 況 を 確 認 しよう 被 相 続 人 については 198 年 の 3, 人 弱 の 水 準 から 87 年 には 約 6, 人 まで 増 加 した 88 年 は 大 きく 減 少 したが これは 同 年 に 行 われた 基 礎 控 除 引 き 上 げによる 相 続 税 の 課 税 対 象 者 の 一 時 的 な 減 少 によるものとみられる その 後 9 年 代 前 半 にかけて 図 表 4 相 続 税 の 課 税 状 況 の 推 移 ( 兆 円 ) 土 地 家 屋 構 築 物 ( 人 ) 25 有 価 証 券 現 預 金 等 その 他 財 産 7, 被 相 続 人 数 ( 右 目 盛 ) 6, 2 5, 15 1 5 4, 3, 2, 1, 198 1985 199 1995 2 25 21 ( 年 ) ( 注 )1. 各 年 の 値 は その 年 の1 月 1 日 から12 月 31 日 に 相 続 または 遺 贈 により 財 産 を 取 得 したものについて その 年 の1 月 1 日 から 翌 年 1 月 31 日 まで の 申 告 を 示 したもの ただし 1993 年 以 前 はその 年 の1 月 1 日 から 翌 年 6 月 3 日 1994 年 は1 月 1 日 から 翌 年 7 月 31 日 1995 年 は1 月 1 日 から 翌 年 8 月 31 日 1996 年 は1 月 1 日 から 翌 年 9 月 3 日 までに 申 告 されたものとなっている 2.28 年 の 値 は 株 式 等 納 税 猶 予 の 特 例 の 創 設 に 伴 い 申 告 期 限 が21 年 2 月 1 日 まで 延 長 されているものについては 同 日 までに 提 出 された 申 告 書 を 含 む 3.21 年 は 東 日 本 大 震 災 の 被 災 者 等 に 係 る 国 税 関 係 法 律 の 臨 時 特 例 に 関 する 法 律 により 申 告 期 限 が 延 長 され 212 年 1 月 11 日 までに 提 出 された 申 告 書 を 含 む 4.その 他 財 産 には 事 業 用 財 産 家 庭 用 財 産 を 含 む ( 資 料 ) 国 税 庁 第 137 回 国 税 庁 統 計 年 報 書 等 よりみずほ 総 合 研 究 所 作 成 4 5 6 相 続 される 財 産 の 価 額 課 税 価 格 から 基 礎 控 除 額 を 除 いた 相 続 財 産 の 総 額 この 金 額 に 相 続 税 が 課 税 される 本 稿 中 では 法 定 相 続 人 一 人 が 相 続 によって 取 得 する 財 産 の 評 価 額 を 指 す 3

再 び 増 加 した 後 95 年 以 降 は 5, 人 前 後 の 水 準 で 推 移 している この 間 2 年 から 25 年 頃 に かけてやや 減 少 したが その 後 は 高 齢 化 の 進 展 などを 背 景 に 緩 やかに 増 加 している 相 続 財 産 額 は 平 成 バブル 期 にかけて 急 激 に 増 加 し その 後 は 減 少 している 土 地 や 家 屋 有 価 証 券 の 評 価 額 が 株 価 や 地 価 の 下 落 を 受 けて 低 下 したことが 主 因 であろう 25 年 頃 に 相 続 財 産 額 の 減 少 に 歯 止 めがかかり その 後 は 概 ね 1 兆 円 前 後 の 水 準 で 推 移 している 内 訳 をみると 相 続 財 産 額 がもっとも 大 きかった 92 年 には 土 地 が 75.9% 有 価 証 券 現 預 金 等 が 14.6% 家 屋 構 築 物 が 4.3% その 他 財 産 が 5.2% となっており 土 地 と 家 屋 が 全 体 の 8 割 を 超 えていた その 後 は 地 価 の 下 落 などから 全 体 に 占 める 土 地 と 家 屋 の 割 合 は 徐 々に 低 下 し 211 年 には 土 地 (45.9%) 有 価 証 券 現 預 金 等 (37.4%) 家 屋 構 築 物 (5.7%) その 他 財 産 (1.9%)と 有 価 証 券 現 預 金 等 の 割 合 が 約 4 割 まで 上 昇 してい る(3 頁 図 表 4) 211 年 の 課 税 状 況 をみると 被 相 続 人 の 数 は 全 体 で 51,559 人 である これに 対 して 法 定 相 続 人 の 数 は 156,389 人 であり 被 相 続 人 一 人 当 たり 平 均 約 3 人 の 相 続 人 がいた 計 算 になる 相 続 財 産 額 は 全 体 で1 兆 7,397 億 円 であるため 被 相 続 人 一 人 当 たり 相 続 財 産 額 は 平 均 2 億 8 万 円 と 計 算 できる なお 被 相 続 人 数 法 定 相 続 人 数 相 続 財 産 額 はそれぞれ 相 続 財 産 額 ( 課 税 価 格 ) 階 級 別 に 分 類 され ている( 図 表 5) 例 えば 相 続 財 産 額 が 1 億 円 超 (2 億 円 以 下 )の 場 合 被 相 続 人 数 は 24,586 人 で 法 定 相 続 人 数 は 77,315 人 だったことが 分 かる また この 階 級 の 相 続 財 産 額 合 計 は 3 兆 4,12 億 円 であ り 被 相 続 人 一 人 当 たり 平 均 相 続 財 産 額 は 1 億 3,8 万 円 と 計 算 される 図 表 5 相 続 財 産 階 級 別 課 税 状 況 課 税 価 格 合 計 被 相 続 人 の 数 被 相 続 人 一 人 当 り 相 続 財 産 額 平 均 課 税 価 格 法 定 相 続 人 の 数 ( 課 税 価 格 ) 階 級 (A) (B) (A/B) ( 百 万 ) ( 人 ) ( 百 万 ) ( 人 ) 全 体 1,739,747 51,559 28 156,389 1 億 円 以 下 1,63,89 12,697 84 28,829 1 億 円 超 3,41,181 24,586 138 77,315 2 億 円 超 1,69,473 7,5 241 24,158 3 億 円 超 1,595,667 4,235 377 14,871 5 億 円 超 832,83 1,424 584 5,233 7 億 円 超 68,418 827 823 3,71 1 億 円 超 788,128 598 1,318 2,29 2 億 円 超 297,176 125 2,377 483 3 億 円 超 15,511 4 3,763 15 5 億 円 超 47,746 8 5,968 23 7 億 円 超 48,244 6 8,41 19 1 億 円 超 145,32 8 18,129 28 ( 注 ) 調 査 対 象 は 211 年 中 に 相 続 が 開 始 した 被 相 続 人 で 相 続 遺 贈 又 は 相 続 時 精 算 課 税 に 係 る 贈 与 により 財 産 を 取 得 した 者 について 212 年 1 月 31 日 までに 提 出 された 申 告 書 ( 修 正 申 告 書 を 除 く) ( 資 料 ) 国 税 庁 第 137 回 国 税 庁 統 計 年 報 書 よりみずほ 総 合 研 究 所 作 成 4

4. 相 続 税 法 改 正 が 貸 家 着 工 に 与 える 影 響 (1) 貸 家 を 用 いた 相 続 税 負 担 軽 減 の 例 相 続 税 は 相 続 する 財 産 が 金 融 資 産 か 不 動 産 かによってその 評 価 方 法 が 異 なり 税 額 に 大 きな 差 が 生 じる 例 えば 2 億 円 分 の 財 産 をもつ 被 相 続 人 が 法 定 相 続 人 1 人 に 全 て 相 続 する 際 に 相 続 財 産 が 金 融 資 産 である 場 合 と 貸 家 の 場 合 のそれぞれについて 相 続 税 の 納 付 税 額 を 概 算 してみよう 金 融 資 産 で 相 続 する 場 合 課 税 対 象 となる 相 続 財 産 の 評 価 額 は2 億 円 となる 現 行 税 率 下 では 相 続 財 産 の 評 価 額 から 基 礎 控 除 分 (5, 万 円 +1, 万 円 1 人 )を 除 いた1 億 4, 万 円 に 相 続 税 が 課 せられ(1 億 4, 万 円 4%-1,7 万 円 ) 納 付 税 額 は3,9 万 円 となる 改 正 後 は 基 礎 控 除 額 が 引 き 下 げられ(3, 万 円 +6 万 円 1 人 ) 課 税 ベースが 拡 大 する そのため 基 礎 控 除 後 の1 億 6,4 万 円 に 相 続 税 が 課 せられることで(1 億 6,4 万 円 4%-1,7 万 円 ) 納 付 税 額 は4,86 万 円 になる (2 頁 図 表 3) 次 に 1 億 円 の 土 地 (2m2 以 下 )を 購 入 し その 土 地 に1 億 円 の 貸 家 を 建 設 して 相 続 する 場 合 を 考 える 土 地 の 課 税 評 価 額 は 実 勢 価 格 より 低 くなる 傾 向 がある 路 線 価 で 評 価 される( 購 入 価 格 :1 億 円 評 価 額 :8, 万 円 ) その 土 地 に 貸 家 を 建 設 すると 借 地 権 と 借 家 権 分 が 土 地 の 評 価 額 から 減 じ られる( 貸 家 建 付 地 の 評 価 減 評 価 額 :8, 万 円 6,32 万 円 ) さらに 土 地 面 積 が2m2 以 下 の 場 合 小 規 模 宅 地 等 の 特 例 により 土 地 の 評 価 額 が5% 減 額 される( 評 価 額 :6,32 万 円 3,16 万 円 ) 貸 家 部 分 についても 借 家 権 分 の 評 価 減 が 認 められているため 土 地 と 貸 家 の 課 税 評 価 額 の 合 計 は 約 1 億 円 と 金 融 資 産 に 比 べて 半 分 程 度 になる( 図 表 6 1 頁 補 論 1 参 照 ) 相 続 税 額 については 税 制 改 正 前 は 約 1 億 円 から 基 礎 控 除 を 除 いた 約 4, 万 円 に 課 せられ( 約 4, 万 円 2%-2 万 円 ) 約 6 万 円 となる 改 正 後 は 基 礎 控 除 が 引 き 下 げられることで 課 税 資 産 約 6,4 万 円 に 課 税 され( 約 6,4 万 円 3%-7 万 円 ) 納 付 税 額 は 約 1,22 万 円 となる(2 頁 図 表 3) このように 金 融 資 産 に 代 えて 図 表 6 貸 家 を 用 いた 相 続 税 負 担 軽 減 例 ( 億 円 ) 課 税 対 象 の 評 価 額 は 約 5%に 減 少 2. 評 建 価 物 減 1.5 1..98 評 分 価 1. 額 1. 1..5. 1. 現 金 土 地 評 価 額.8 土 地 建 物 購 入 後.63 貸 家 建 付 地 の 評 価 減 後 1..7.32.32 小 規 模 宅 地 の 評 価 減 後 ( 注 ) 借 地 権 割 合 は7% 借 家 権 割 合 は3% ( 資 料 ) 国 土 交 通 省 国 税 庁 等 資 料 よりみずほ 総 合 研 究 所 作 成 借 家 分 の 評 価 減 後 5

貸 家 を 相 続 する 場 合 の 納 付 税 額 は 税 制 改 正 前 で 約 3,3 万 円 税 制 改 正 後 は 約 3,64 万 円 低 くなると 計 算 される こうしたことが 相 続 税 の 節 税 を 目 的 とした 貸 家 需 要 を 喚 起 している (2) 貸 家 着 工 需 要 の 試 算 概 要 213 年 度 税 制 改 正 では 基 礎 控 除 引 き 下 げによって 取 得 相 続 財 産 額 に 関 わらず 全 ての 相 続 ケース で 相 続 税 負 担 が 重 くなる 特 に 相 続 人 一 人 当 たりの 取 得 相 続 財 産 額 が2 億 円 を 超 えると 新 たなブ ラケットが 適 用 されるため 税 負 担 の 増 加 がより 大 きい なかでも 基 礎 控 除 引 き 下 げによって 取 得 する 相 続 財 産 額 が2 億 円 以 下 から2 億 円 超 3 億 円 以 下 から3 億 円 超 6 億 円 以 下 から6 億 円 超 に 変 わるケ ースでは 基 礎 控 除 引 き 下 げに 加 えて 税 率 構 造 見 直 しの 影 響 を 受 ける(2 頁 図 表 3) これらに 該 当 す る 人 々の 間 では 特 に 節 税 のインセンティブが 強 いと 推 測 される そこで 試 算 では 相 続 人 一 人 当 た りの 取 得 相 続 財 産 額 が 税 制 改 正 後 に 新 たに 2 億 円 超 3 億 円 超 6 億 円 超 となる 年 間 相 続 人 数 を 算 出 する また 取 得 する 相 続 財 産 額 6 億 円 超 の 層 は 最 高 税 率 が 引 き 上 げられることによ る 節 税 インセンティブが 強 いと 解 釈 し 税 制 改 正 前 に 6 億 円 超 だった 年 間 人 数 も 貸 家 着 工 予 備 軍 にカウントする 両 者 を 合 わせた 数 値 を 相 続 税 制 改 正 に 伴 う 潜 在 的 な 年 間 貸 家 着 工 需 要 とみなした 国 税 庁 統 計 年 報 には 被 相 続 人 の 相 続 財 産 額 階 級 別 かつ 法 定 相 続 人 員 別 7 に 相 続 財 産 額 の 合 計 被 相 続 人 数 法 定 相 続 人 数 などのデータが 掲 載 されている これより 法 定 相 続 人 一 人 当 たりの 平 均 相 続 財 産 額 別 に 法 定 相 続 人 数 の 分 布 が 算 出 できる(7 頁 図 表 7 1 頁 補 論 2 参 照 ) 図 表 7 上 側 の 法 定 相 続 人 員 別 法 定 相 続 人 一 人 当 たり 取 得 相 続 財 産 額 ( 基 礎 控 除 後 ) 表 より 例 えば 被 相 続 人 の 平 均 相 続 財 産 額 ( 基 礎 控 除 前 )が5 億 8,43 万 円 で 法 定 相 続 人 が1 人 の 場 合 法 定 相 続 人 が 受 け 取 る 取 得 相 続 財 産 額 ( 基 礎 控 除 後 )は5 億 2,43 万 円 であることがわかる また 下 側 の 法 定 相 続 人 員 別 法 定 相 続 人 数 表 より そのカテゴリーに 含 まれる 法 定 相 続 人 の 数 は58 人 であることがわかる これらの データをもとに 税 制 改 正 に 伴 う 基 礎 控 除 引 き 下 げを 反 映 することで 取 得 相 続 財 産 額 が 新 たに 2 億 円 超 3 億 円 超 6 億 円 超 となる 法 定 相 続 人 の 数 を 求 めることができる しかし データから 明 らかなのは 取 得 相 続 財 産 額 5 億 円 超 7 億 円 未 満 のカテゴリーに58 人 が 含 まれ その 平 均 額 が5 億 2,43 万 円 ということだけである 一 方 基 礎 控 除 引 き 下 げは 百 万 円 単 位 で 変 化 する ( 法 定 相 続 人 1 人 の 場 合 には2,4 万 円 の 変 化 ) したがって 58 人 の 集 団 ( 平 均 取 得 相 続 財 産 額 5 億 2,43 万 円 )が 取 得 相 続 財 産 額 5~7 億 円 の 間 にどう 分 布 しているかを 仮 定 しなければ 2,4 万 円 の 基 礎 控 除 引 き 下 げによってブラケットが 移 動 (5 億 7,6 万 円 以 上 の 財 産 相 続 を 予 定 )する 人 数 ( 税 制 改 正 によって 取 得 相 続 財 産 額 が6 億 円 を 越 え 新 たに 6 億 円 超 のブラケット 適 用 を 受 ける 可 能 性 が ある 人 数 )を 推 定 することができない 同 様 の 問 題 は 税 制 改 正 で 取 得 相 続 財 産 額 が 新 たに 2 億 円 超 3 億 円 超 になる 相 続 人 数 の 把 握 に 際 しても 生 じる そこで 本 試 算 では 図 表 7のデータをもとにカーネル 密 度 推 定 により 全 体 の 分 布 を 推 定 した 上 で 税 制 改 正 に 伴 って 相 続 財 産 額 が 増 加 し ブラケットが 移 動 する 相 続 人 数 を 試 算 した 7 被 相 続 人 一 人 当 たりの 法 定 相 続 人 数 別 の 階 級 6

課 税 価 格 階 級 図 表 7 上 表 : 法 定 相 続 人 員 別 法 定 相 続 人 一 人 当 たり 取 得 相 続 財 産 額 ( 基 礎 控 除 後 ) 被 相 続 人 一 人 当 り 下 表 : 法 定 相 続 人 員 別 法 定 相 続 人 数 平 均 相 続 財 産 額 ( 単 位 : 百 万 円 ) 1 億 円 以 下 83.7 23.7 6.9 1.2 - - 1 億 円 超 138.3 78.3 34.2 19.4 12.1 4. 2 億 円 超 241.3 181.3 85.7 53.8 37.8 15.6 3 億 円 超 376.8 316.8 153.4 98.9 71.7 33.7 5 億 円 超 584.3 524.3 257.2 168.1 123.6 61.5 7 億 円 超 822.8 762.8 376.4 247.6 183.2 93.4 1 億 円 超 1,317.9 1257.9 624. 412.6 37. 159.6 2 億 円 超 2,377.4 2317.4 1153.7 765.8 571.9 31.4 3 億 円 超 3,762.8 372.8 1846.4 1227.6 918.2 486.7 5 億 円 超 5,968.3 598.3 2949.1 1962.8 1469.6 781.8 7 億 円 超 8,4.7 798.7 3985.3 2653.6 1987.7 159.1 1 億 円 超 18,129. 1869. 929.5 616.3 459.8 248.8 被 相 続 人 一 人 当 り 課 税 価 格 階 級 平 均 相 続 財 産 額 法 定 相 続 人 員 別 法 定 相 続 人 一 人 当 たり 取 得 相 続 財 産 額 ( 基 礎 控 除 後 ) 1 人 の 場 合 1 人 の 場 合 2 人 の 場 合 3 人 の 場 合 4 人 の 場 合 法 定 相 続 人 員 別 法 定 相 続 人 数 2 人 の 場 合 3 人 の 場 合 4 人 の 場 合 5 人 以 上 の 場 合 ( 単 位 : 人 ) 5 人 以 上 の 場 合 1 億 円 以 下 83.7 2,577 9,118 12,78 5,56 1 億 円 超 138.3 1,928 1,886 25,992 22,352 16,143 2 億 円 超 241.3 369 2,714 6,9 7,1 6,993 3 億 円 超 376.8 27 1,486 4,128 4,572 4,47 5 億 円 超 584.3 58 452 1,245 1,576 1,896 7 億 円 超 822.8 29 28 789 996 1,37 1 億 円 超 1,317.9 2 168 522 716 781 2 億 円 超 2,377.4 3 32 99 172 174 3 億 円 超 3,762.8 1 6 48 44 51 5 億 円 超 5,968.3 1 4 6 12 7 億 円 超 8,4.7 2 12 5 1 億 円 超 18,129. 4 6 12 6 ( 注 )1. - の 場 合 は 基 礎 控 除 によって 課 税 ベースとなる 取 得 相 続 財 産 額 がになる 2. 5 人 以 上 の 場 合 の 法 定 相 続 人 一 人 当 たり 取 得 相 続 財 産 額 ( 基 礎 控 除 後 ) については 5 人 の 場 合 から 1 人 超 の 場 合 の 平 均 値 法 定 相 続 人 数 については 5 人 の 場 合 から 1 人 超 の 場 合 の 合 計 値 を 表 示 ( 資 料 ) 国 税 庁 第 137 回 国 税 庁 統 計 年 報 書 よりみずほ 総 合 研 究 所 作 成 7

(3) 貸 家 着 工 需 要 の 試 算 結 果 カーネル 密 度 推 定 の 推 定 結 果 を 確 認 しよう 国 税 庁 統 計 年 報 に 基 づく 分 布 は 集 計 されたデータで あるためヒストグラムとなる 一 方 カーネル 密 度 推 定 による 分 布 はなめらかな 曲 線 を 描 く( 図 表 8 11 頁 補 論 3 参 照 ) こうして 推 定 された 分 布 に 相 続 税 増 税 による 基 礎 控 除 引 き 下 げを 反 映 すると 相 続 税 増 税 後 の 法 定 相 続 人 数 の 分 布 となる 増 税 後 の 分 布 は 全 体 として 右 にシフトし 法 定 相 続 人 そ れぞれが 受 け 取 る 相 続 財 産 額 はより 高 くなる 2つの 分 布 を 比 較 することにより 基 礎 控 除 引 き 下 げによって 取 得 相 続 財 産 額 が 新 たに2 億 円 超 とな る 相 続 人 数 は19 人 3 億 円 超 となるのは33 人 6 億 円 超 となるのは1 人 の 合 計 53 人 と 計 算 される また 税 制 改 正 前 の 時 点 で6 億 円 以 上 の 財 産 相 続 が 見 込 まれるのは515 人 で これらの 合 計 は1,45 人 である 仮 に 各 人 が 相 続 税 対 策 のため 貸 家 を1 棟 建 設 したとすると 平 均 的 な 貸 家 の1 棟 あたり 部 屋 数 は14.6 室 8 であることから 相 続 税 増 税 による 貸 家 の 着 工 戸 数 押 し 上 げは 年 間 15,257 戸 (1,45 人 14.6 室 ) 程 度 になると 試 算 される( 図 表 9) 213 年 の 貸 家 着 工 戸 数 は35.6 万 戸 だったので 相 続 税 増 税 により4.5%Pt 押 し 上 げられていた 計 算 になる 図 表 8 税 制 改 正 による 法 定 相 続 人 分 布 の 変 化 ( 法 定 相 続 人 の 数 人 ) 6, 5, 4, 実 際 の 分 布 推 定 分 布 相 続 増 税 後 3, 2, 1, 1 2 3 4 5 6 ( 法 定 相 続 人 一 人 当 たり 取 得 相 続 財 産 額 億 円 ) ( 注 ) 推 定 分 布 相 続 増 税 後 はみずほ 総 合 研 究 所 による 推 定 値 ( 資 料 ) 国 税 庁 第 137 回 国 税 庁 統 計 年 報 書 よりみずほ 総 合 研 究 所 作 成 図 表 9 貸 家 着 工 押 し 上 げ 効 果 の 考 え 方 相 続 人 一 人 当 たり 相 続 財 産 額 人 数 税 制 改 正 後 に2 億 円 超 19 3 億 円 超 33 6 億 円 超 1 税 制 改 正 前 から6 億 円 超 515 合 計 1,45 ( 資 料 )みずほ 総 合 研 究 所 作 成 貸 家 着 工 押 し 上 げ 戸 数 貸 家 着 工 インセンティ ブが 大 きい 相 続 人 数 1,45 人 貸 家 一 棟 当 たり 居 室 数 14.6 室 = 貸 家 着 工 押 し 上 げ 戸 数 15,257 戸 8 東 京 都 都 市 整 備 局 213 年 3 月 マンション 実 態 調 査 8

5.おわりに 以 上 のように 本 稿 では212 年 の 相 続 税 課 税 状 況 をもとに 213 年 度 税 制 改 正 による 節 税 インセン ティブが 大 きい 年 間 の 相 続 人 数 を 推 計 し 貸 家 着 工 の 押 し 上 げ 効 果 を 試 算 した 試 算 結 果 は 幅 をもっ てみる 必 要 があるが 今 回 の 相 続 税 増 税 がある 程 度 足 元 の 貸 家 建 設 を 押 し 上 げているのは 確 かであろ う 本 稿 では1 年 間 の 相 続 税 対 象 者 数 から 試 算 したが 実 際 には 建 設 工 事 費 の 先 高 観 などを 背 景 に 数 年 先 の 相 続 を 見 越 した 貸 家 需 要 が 喚 起 され より 大 きい 押 し 上 げ 効 果 が 生 じている 可 能 性 もある 日 本 の 貸 家 ストックは 老 朽 化 が 進 み 質 の 悪 化 が 問 題 視 されてきたが 今 回 の 相 続 税 制 改 正 に 伴 う 貸 家 着 工 ブームは 貸 家 ストックのクオリティ 改 善 の 一 助 となるかもしれない 9

補 論 1 貸 家 を 用 いた 相 続 税 負 担 軽 減 の 例 相 続 における 金 融 資 産 と 貸 家 との 課 税 価 格 比 較 では (A) 公 示 価 格 と 路 線 価 の 比 率 (B) 貸 家 建 付 地 の 評 価 減 (C) 小 規 模 宅 地 等 の 特 例 (D) 貸 家 からの 借 家 権 割 合 の 評 価 減 の4つの 計 算 を 行 った なお 貸 家 部 分 は 貸 家 購 入 価 格 よりも 低 く 評 価 される 傾 向 がある 固 定 資 産 税 評 価 額 によっ て 課 税 価 格 が 決 まる しかし 購 入 価 格 に 対 する 固 定 資 産 税 評 価 額 の 比 率 のデータは 得 ることができ ないため 本 試 算 では 固 定 資 産 税 評 価 額 = 購 入 価 格 と 仮 定 した (A) 路 線 価 は 公 示 価 格 に 対 して8% 程 度 の 水 準 で 評 価 するとされており 9 試 算 ではこの 値 を 用 い た (B) 借 地 権 割 合 7% 借 家 権 割 合 3% 賃 貸 割 合 1%とし 以 下 の 計 算 式 から 算 出 した 貸 家 建 付 地 の 価 額 = 自 用 地 とした 場 合 の 価 額 - 自 用 地 とした 場 合 の 価 額 借 地 権 割 合 借 家 権 割 合 賃 貸 割 合 (C) 被 相 続 人 等 の 事 業 の 用 に 供 されていた 宅 地 等 で 貸 付 事 業 用 の 宅 地 等 の 場 合 限 度 面 積 を2 m2として 課 税 価 額 が5% 減 額 される (D) 貸 家 の 評 価 額 は 借 家 権 割 合 3% 賃 貸 割 合 1%とし 以 下 の 計 算 式 から 算 出 貸 家 の 価 額 = 貸 家 の 固 定 資 産 税 評 価 額 - 貸 家 の 固 定 資 産 税 評 価 額 借 家 権 割 合 賃 貸 割 合 補 論 2 相 続 税 増 税 に 伴 う 貸 家 着 工 への 需 要 試 算 相 続 税 法 改 正 による 貸 家 着 工 の 押 し 上 げ 効 果 試 算 では 国 税 庁 統 計 年 報 ( 平 成 23 年 度 )に 掲 載 され ている 暦 年 データ 1 を 使 用 し 以 下 の 手 順 で 法 定 相 続 人 一 人 当 たりの 平 均 相 続 財 産 額 別 に 法 定 相 続 人 の 人 数 分 布 を 算 出 した なお 相 続 財 産 額 のデータには 貸 家 の 形 態 で 相 続 が 行 われたものも 含 まれ ている そのため 相 続 財 産 額 から 貸 家 の 着 工 需 要 を 試 算 する 際 に 一 部 の 貸 家 着 工 需 要 を 二 重 に 推 計 する 可 能 性 がある しかし 二 重 推 計 回 避 に 使 用 可 能 なデータは 公 表 されていないため 本 試 算 で は 二 重 推 計 の 問 題 は 考 慮 していない また 法 定 相 続 人 の 属 性 ( 配 偶 者 子 供 など)についても 明 ら かではないため 被 相 続 人 の 財 産 が 法 定 相 続 人 全 員 に 等 分 に 相 続 されると 仮 定 し 以 下 の 計 算 を 行 っ た 9 税 制 調 査 会 編 (1991) 1 211 年 の 1 月 1 日 から 12 月 31 日 に 相 続 又 は 遺 贈 により 財 産 を 取 得 したものについて 211 年 1 月 1 日 から 212 年 1 月 31 日 までに 提 出 された 申 告 書 をもとに 作 成 されたデータ 1

(a) 課 税 価 格 階 級 別 に 被 相 続 人 一 人 当 たり 平 均 課 税 価 格 を 算 出 し 基 礎 控 除 を 行 う 被 相 続 人 一 人 当 たり 平 均 課 税 価 格 = 課 税 価 格 合 計 / 被 相 続 人 の 数 - 基 礎 控 除 額 (b) 全 ての 相 続 ケースにおいて 相 続 割 合 は 等 分 であると 仮 定 し 法 定 相 続 人 一 人 当 たり 相 続 財 産 額 を 計 算 法 定 相 続 人 一 人 当 たり 相 続 財 産 額 = 被 相 続 人 一 人 当 たり 平 均 課 税 価 格 / 法 定 相 続 人 の 数 補 論 3 カーネル 密 度 推 定 本 稿 では カーネル 関 数 として 以 下 のガウシアン カーネルを 用 いた カーネル 密 度 推 定 の 結 果 は 全 体 の 分 布 については8 頁 図 表 8 法 定 相 続 人 員 別 の 分 布 については12 頁 図 表 1の 通 り 11 カーネル 密 度 推 定 では 各 観 測 値 を 中 心 に 分 布 を 想 定 し それを 積 み 上 げることで 全 体 の 分 布 を 推 定 する 今 回 用 いた 国 税 庁 統 計 年 報 のデータは 相 続 財 産 額 階 級 別 に 集 計 されており 各 相 続 人 の 相 続 財 産 額 は 公 表 されていない そのため 相 続 人 数 それぞれに 平 均 相 続 財 産 額 を 割 り 振 ったデータを 作 成 し これを 用 いて 密 度 推 定 を 行 った x X f ˆ n 1 i K ( x) K nh i 1 h : カーネル 密 度 推 定 量 K( z) 1 e 2 2 z 2 ただし h:バンド 幅 K( ):カーネル 関 数 : カーネル 関 数 なお 密 度 推 定 においてはバンド 幅 (h)が 推 計 結 果 に 大 きな 影 響 を 与 える バンド 幅 の 設 定 方 法 についての 研 究 は 多 く 標 準 偏 差 などを 用 いる 方 法 が 提 案 されている しかし ここでは 集 計 された データを 基 に 推 定 を 行 っていることなどから データ 本 来 の 標 準 偏 差 を 得 ることが 難 しい そのため 本 推 定 ではグラフ 上 でヒストグラムとフィッティングがよくなるようにバンド 幅 を 設 定 した すべて の 推 定 で 用 いたバンド 幅 (h)は.1である 11 カーネル 密 度 推 定 の 実 施 に 際 しては 愛 知 学 院 大 学 の 野 村 友 和 准 教 授 による 資 料 カーネル 密 度 推 定 -アイデアと 計 算 方 法 - (http://www.agu.ac.jp/~nomura/lecture/archive/kd.pdf アクセス 日 214 年 4 月 18 日 )を 参 照 した 11

図 表 1 法 定 相 続 人 員 別 税 制 改 正 による 法 定 相 続 人 分 布 の 変 化 ( 法 定 相 続 人 1~6 人 の 場 合 ) 被 相 続 人 一 人 当 たり 法 定 相 続 人 が1 人 のケース 被 相 続 人 一 人 当 たり 法 定 相 続 人 が2 人 のケース ( 法 定 相 続 人 の 数 人 ) 1, 9 8 7 6 5 4 3 2 1 1 2 3 4 5 実 際 の 分 布 推 定 分 布 相 続 増 税 後 ( 法 定 相 続 人 一 人 当 たり 取 得 相 続 財 産 額 億 円 ) 被 相 続 人 一 人 当 たり 法 定 相 続 人 が3 人 のケース ( 法 定 相 続 人 の 数 人 ) 1, 9, 8, 7, 6, 5, 4, 3, 2, 1, 1 2 3 4 5 実 際 の 分 布 推 定 分 布 相 続 増 税 後 ( 法 定 相 続 人 一 人 当 たり 取 得 相 続 財 産 額 億 円 ) 被 相 続 人 一 人 当 たり 法 定 相 続 人 が4 人 のケース ( 法 定 相 続 人 の 数 人 ) 3, ( 法 定 相 続 人 の 数 人 ) 25, 25, 2, 実 際 の 分 布 推 定 分 布 相 続 増 税 後 2, 15, 実 際 の 分 布 推 定 分 布 相 続 増 税 後 15, 1, 1, 5, 5, 1 2 3 4 5 ( 法 定 相 続 人 一 人 当 たり 取 得 相 続 財 産 額 億 円 ) 1 2 3 4 5 ( 法 定 相 続 人 一 人 当 たり 取 得 相 続 財 産 額 億 円 ) 被 相 続 人 一 人 当 たり 法 定 相 続 人 が5 人 のケース ( 法 定 相 続 人 の 数 人 ) 1, 9, 8, 7, 6, 5, 4, 3, 2, 1, 1 2 3 4 5 実 際 の 分 布 推 定 分 布 相 続 増 税 後 ( 法 定 相 続 人 一 人 当 たり 取 得 相 続 財 産 額 億 円 ) 被 相 続 人 一 人 当 たり 法 定 相 続 人 が6 人 のケース ( 法 定 相 続 人 の 数 人 ) 4, 3,5 3, 2,5 2, 1,5 1, 5 1 2 3 4 5 実 際 の 分 布 推 定 分 布 相 続 増 税 後 ( 法 定 相 続 人 一 人 当 たり 取 得 相 続 財 産 額 億 円 ) ( 資 料 ) 国 税 庁 第 137 回 国 税 庁 統 計 年 報 書 等 よりみずほ 総 合 研 究 所 作 成 12

参 考 文 献 国 税 庁 編 (213) 第 137 回 国 税 庁 統 計 年 報 書 ( 平 成 23 年 度 版 ) 大 蔵 財 務 協 会 宿 利 敬 史 浜 田 和 也 草 場 洋 方 (213) 賃 貸 住 宅 市 場 の 現 状 と 展 望 ~23 年 の 市 場 規 模 予 測 と 事 業 の 方 向 性 ~ (みずほコーポレート 銀 行 Mizuho Industry Focus Vol.121) 税 制 調 査 会 編 (1991) 平 成 4 年 度 の 税 制 改 正 に 関 する 答 申 大 蔵 省 印 刷 局 野 村 友 和 カーネル 密 度 推 定 -アイデアと 計 算 方 法 - http://www.agu.ac.jp/~nomura/lecture/archive/kd.pdf 森 口 大 輔 川 上 武 志 八 木 智 美 (214) 住 宅 建 設 における 消 費 税 率 引 上 げの 影 響 ( 内 閣 府 マンス リー トピックス NO.28) 大 和 香 織 (21) 住 宅 着 工 はどこまで 回 復 するか ~ 住 宅 購 入 促 進 策 の 効 果 検 証 と 潜 在 需 要 の 試 算 を 基 に~ (みずほ 総 合 研 究 所 みずほ 日 本 経 済 インサイト 21 年 12 月 22 日 発 行 ) (213) 消 費 増 税 時 の 住 宅 購 入 補 助 の 効 果 年 収 別 にみた 負 担 変 化 の 試 算 (みずほ 総 合 研 究 所 みずほ 日 本 経 済 インサイト 213 年 8 月 27 日 発 行 ) 渡 部 喜 智 古 江 晋 也 木 村 俊 文 (28) 賃 貸 住 宅 市 場 の 現 状 と 将 来 ( 農 林 中 金 総 合 研 究 所 農 林 金 融 第 61 巻 第 1 号 ) 13