第 1 期 石 川 県 ニホンザル 管 理 計 画 平 成 27 年 5 月 石 川 県
目 次 1 計 画 策 定 の 目 的 と 背 景 -------------- 1 2 管 理 すべき 鳥 獣 の 種 類 ------------- 2 3 計 画 の 期 間 ------------------ 2 4 管 理 が 行 われるべき 区 域 ------------ 2 5 管 理 の 目 標 ------------------ 3 (1) 現 状 1 生 息 状 況 2 生 息 環 境 3 農 作 物 被 害 の 状 況 4 被 害 防 止 対 策 の 状 況 (2) 管 理 の 目 標 6 管 理 の 目 標 達 成 に 向 けた 基 本 指 針 -------- 14 (1) 目 標 を 達 成 するための 施 策 の 基 本 的 考 え 方 (2) 管 理 指 針 7 管 理 のための 具 体 的 取 り 組 み ---------- 17 (1) 群 れに 対 する 対 策 1 群 れの 状 況 と 評 価 2 群 れ 区 分 に 応 じた 保 護 管 理 対 策 3 具 体 的 な 保 護 管 理 の 方 法 (2) 生 息 環 境 の 保 護 及 び 整 備 の 対 策 8 その 他 管 理 のために 必 要 な 事 項 --------- 22 (1)モニタリング 等 の 調 査 研 究 (2) 計 画 の 実 施 体 制 (3) 普 及 啓 発 等
1 計 画 策 定 の 目 的 と 背 景 ニ ホ ン ザ ルは 我 が 国 の 固 有 種 であり 特 に 白 山 に 生 息 す る 個 体 群 は 豪 雪 地 に 生 息 す るニホンザルとして 注 目 され 継 続 的 な 調 査 研 究 と 保 護 が 図 られてきた しかし 昭 和 50 年 代 後 半 から 白 山 麓 でニホンザルによる 農 作 物 被 害 が 発 生 するようになり 有 害 鳥 獣 駆 除 制 度 により その 都 度 駆 除 申 請 を 行 う 形 で 追 い 払 い 等 が 行 われてきた また 当 時 は ニホンザルの 生 息 状 況 の 把 握 や 被 害 の 要 因 に ついて 十 分 検 討 さ れ ることがなかったことか ら 人 と 野 生 動 物 が 共 生 す る 方 策 を 具 体 化 し て いくための 科 学 的 計 画 的 な 保 護 管 理 を 進 める 必 要 性 が 指 摘 されていた 県 で は これらの 状 況 を 改 善 するため ニホンザルとツキノワグマを 対 象 に 分 布 個 体 数 生 息 環 境 被 害 状 況 等 を 把 握 し 科 学 的 な 根 拠 に 基 づ いた 保 護 管 理 を 目 指 して 任 意 計 画 と し て 石 川 県 野 生 動 物 保 護 管 理 計 画 を 策 定 し 平 成 12~13 年 度 の2カ 年 間 の 試 行 を 実 施 した 平 成 13 年 度 には 鳥 獣 の 保 護 及 び 狩 猟 の 適 正 化 に 関 する 法 律 ( 平 成 14 年 法 第 88 号 )に 基 づく 石 川 県 特 定 鳥 獣 保 護 管 理 計 画 ( 第 1 期 )を 策 定 し て 保 護 管 理 に 取 り 組 み さらに 平 成 18 年 度 には 第 2 期 石 川 県 ニホン ザ ル 保 護 管 理 計 画 を 策 定 し 関 係 市 町 等 と 連 携 協 力 し て 保 護 管 理 の ための 施 策 を 展 開 してきた 平 成 24 年 度 には 農 作 物 被 害 の 減 少 や 個 体 数 群 れ 数 の 増 加 の 抑 制 分 布 域 拡 大 の 抑 制 など 一 定 の 成 果 が 認 められたが 常 習 的 に 農 産 物 に 依 存 する 群 れが 見 られることや 農 作 物 被 害 が 継 続 して 発 生 していること 個 体 数 が 漸 増 していることなどから 第 3 期 石 川 県 ニホンザル 保 護 管 理 計 画 を 策 定 し サルと 人 との 共 生 のための 各 種 施 策 を 推 進 してきた 平 成 26 年 鳥 獣 保 護 法 が 改 正 され 鳥 獣 の 保 護 及 び 管 理 並 びに 狩 猟 の 適 正 化 に 関 する 法 律 ( 平 成 27 年 5 月 29 日 施 行 予 定 )に 名 称 変 更 すると ともに 従 来 の 特 定 鳥 獣 保 護 管 理 計 画 が 第 一 種 特 定 鳥 獣 保 護 計 画 と 第 二 種 特 定 鳥 獣 管 理 計 画 に 区 分 された 本 県 に おいては ニホン ザ ル に よる 農 作 物 被 害 の 発 生 分 布 域 の 拡 大 が みられることから ニホ ンザルを 管 理 すべき 鳥 獣 とし 第 1 期 石 川 県 ニホンザル 管 理 計 画 を 策 定 し サルと 人 との 適 切 な 関 係 の 構 築 を 推 進 する 1
2 保 護 管 理 すべき 鳥 獣 の 種 類 ニホンザル( Macaca fuscata fuscata) 3 計 画 の 期 間 平 成 27 年 5 月 29 日 から 平 成 29 年 3 月 31 日 上 位 計 画 である 第 11 次 鳥 獣 保 護 管 理 事 業 計 画 の 計 画 期 間 に 合 わせる が 期 間 内 で あ っ て も 特 定 鳥 獣 の 生 息 状 況 等 に 大 き な 変 動 が 生 じ た 場 合 は 必 要 に 応 じて 計 画 の 改 定 等 を 検 討 するものとする 4 保 護 管 理 が 行 われるべき 区 域 下 記 の 市 町 を 対 象 地 域 とする 小 松 市 白 山 市 金 沢 市 市 町 名 所 管 する 農 林 総 合 事 務 所 名 南 加 賀 農 林 総 合 事 務 所 石 川 農 林 総 合 事 務 所 県 央 農 林 総 合 事 務 所 2
5 管 理 の 目 標 (1) 現 状 1 生 息 状 況 ア 現 在 の 分 布 と 生 息 個 体 数 平 成 23 年 (2011 年 )2 月 現 在 ニホンザルの 群 れは 白 山 市 の 手 取 川 流 域 を 中 心 に 28 群 約 1,100 頭 が 金 沢 市 南 部 犀 川 源 流 部 に 2 群 約 100 頭 が 生 息 し 約 30 頭 のハナレザルを 含 めて 合 計 30 群 約 1,200 頭 が 生 息 しているもの と 見 られる ( 図 1) :H19~22 ( 分 布 の 拡 大 地 区 ) 図 1 石 川 県 のニホンザルの 群 れの 分 布 イ 生 息 個 体 数 の 変 遷 大 正 12 年 (1923 年 )に 東 北 帝 国 大 学 の 長 谷 部 言 人 博 士 により 全 国 のニホ ンザルの 生 息 分 布 のアンケート 調 査 が 実 施 され 石 川 県 内 のニホンザルの 分 布 は 現 在 の 白 山 市 の 白 山 麓 ( 旧 石 川 郡 )で 12 か 所 現 在 の 金 沢 市 で2か 所 の 合 計 14 か 所 であった ( 三 戸 1989) その 後 調 査 が 実 施 されることはなかったが 昭 和 41 年 (1966 年 )から 44 年 (1969 年 )までの4 年 間 白 山 スーパー 林 道 の 開 設 計 画 を 契 機 に 自 然 保 護 の ための 現 況 調 査 の 一 環 として 日 本 自 然 保 護 協 会 中 部 支 部 白 山 学 術 調 査 団 によ る 調 査 が 実 施 され 旧 尾 口 村 と 旧 吉 野 谷 村 の 尾 添 川 流 域 に8 群 と 瀬 波 川 流 域 に3 群 の 合 計 11 群 300~350 頭 の 生 息 が 確 認 された 大 正 12 年 に 生 息 が 確 3
認 されていた 金 沢 市 二 俣 や 旧 尾 口 村 東 二 口 アシガ 谷 旧 鳥 越 村 左 礫 鳶 巣 ノ 山 旧 白 峰 村 桑 島 地 内 小 嵐 谷 大 嵐 谷 百 合 谷 などの 地 域 では 昭 和 44 年 当 時 すでに 群 れが 消 滅 していた これは この 地 域 で 盛 んに 行 われてきた 焼 き 畑 出 作 り 耕 作 における 農 作 物 被 害 に 対 する 有 害 捕 獲 や 狩 猟 により 多 くの 個 体 が 捕 獲 されてきた 結 果 で( 水 野 1990) 白 山 のニホンザルの 分 布 が 最 も 狭 め られ 個 体 数 も 減 少 していた 時 期 である 昭 和 44 年 (1969 年 )からは 石 川 県 の 委 託 による 白 山 自 然 保 護 調 査 研 究 会 ニ ホンザル 班 の 調 査 や 白 山 自 然 保 護 センターにおいて 群 れ 数 個 体 数 につい ての 継 続 的 な 調 査 が 実 施 された 平 成 2 年 (1990 年 )までは 10~14 群 3 百 数 十 頭 と 大 きな 変 化 はなかったが 平 成 2 年 から 平 成 6 年 までの4 年 間 に 群 れ 数 が 1.7 倍 の 24 群 に 個 体 数 では 2.7 倍 の 1,000 頭 に 急 激 に 増 加 した その 後 平 成 19 年 頃 までは 大 きな 変 化 はなかったが 平 成 20 年 頃 から 漸 増 し 平 成 23 年 2 月 現 在 30 群 約 1,200 頭 となっている ( 図 2) 群 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 325 11 12 363 14 700 0 0 0 7 0 0 0 0 0 0 S44 (1969) S55 (1980) 群 数 個 体 数 捕 獲 数 17 1246 1142 1177 1079 1000 1018 981 1018 1031 1041974986 1015 24 28 28 94 図 2 ニホンザルの 群 れ 数 と 個 体 数 捕 獲 数 の 変 遷 21 25 30 30 30 30 31 30 30 30 30 30 22 14 33 31 31 105 53 71 21 54 55 63 20 104 51 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10H11H12H13H14H15H16H17H18H19H20H21H22H23H24H25 (1990) (2000) (2005) (2010) 第 1 期 計 画 第 2 期 計 画 第 3 期 計 画 頭 1,400 1,300 1,200 1,100 1,000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 4
ウ ニホンザルの 分 布 拡 大 昭 和 41 年 (1966 年 )から 現 在 までの 分 布 の 拡 大 の 様 子 を 見 ると 手 取 川 の 支 流 尾 添 川 流 域 と 瀬 波 川 流 域 か ら 下 流 に 向 か っ て 分 布 を 広 げ 平 成 元 年 (1989 年 )には 手 取 川 を 渡 り また 一 部 の 群 れはさ らに 大 日 川 流 域 に 分 布 を 拡 大 していった 分 布 を 拡 大 しはじめた 当 時 は 冬 期 間 だけに 見 られた 集 落 周 辺 での 分 布 も 数 年 のうちにそのう ちの 一 部 が 分 裂 して 集 落 周 辺 に 定 着 するようになり これに 伴 い 個 体 数 と 群 れ 数 が 一 気 に 増 加 した 特 に 尾 添 川 上 流 に 生 息 していたタイコ 群 は 昭 和 46 年 (1971 年 )に タイコA Bの2 群 に 分 裂 し そのうちのタイコA 群 は 昭 和 53 年 (1978 年 )12 月 には 一 里 野 温 泉 スキー 場 付 近 まで 移 動 し さらに 昭 和 60 年 (1985 年 )には 瀬 戸 集 落 にまで 移 動 した その 後 も 増 加 と 分 裂 を 繰 り 返 し 現 在 ではこの 群 れから 派 生 した 群 れは 13 群 合 計 約 500 頭 以 上 とこの 地 域 に 生 息 する 群 れの 40% 以 上 を 占 めている タイコB 群 については 現 在 4 群 に 分 かれているが すべて 保 全 群 となっている また 瀬 波 川 流 域 に 生 息 していたクロダニ 群 は 瀬 波 川 を 離 れ 手 取 川 本 流 の 農 耕 地 に 進 出 し 個 体 数 を 増 加 させ 平 成 13 年 (2001 年 ) には 150 頭 以 上 の 巨 大 な 群 れになった その 後 この 群 れも 分 裂 し 現 在 はクロダニA B Cの3 群 120 頭 前 後 となっている また これらの 下 流 の 集 落 周 辺 に 進 出 した 群 れは 農 作 物 を 選 択 的 に 食 べ 被 害 をもたらしているが 特 に 晩 秋 から 冬 の 集 落 内 外 に 残 さ れたカキなどの 果 実 類 が 群 れを 誘 因 し 定 着 化 を 促 進 しているものと 考 えら れる また 栄 養 的 にも 優 れた 農 作 物 を 摂 取 することにより 体 力 が 向 上 す るとともに 冬 季 の 餌 条 件 の 悪 い 季 節 でも 体 力 の 消 耗 が 少 なく その 分 翌 春 の 繁 殖 も 順 調 に 進 むなどの 要 因 が 加 わったことから 個 体 数 が 急 激 に 増 加 していったものと 考 えられる 金 沢 市 南 部 犀 川 源 流 部 に 生 息 するアゲハラ 群 については 近 年 同 市 寺 津 町 周 辺 で 徐 々に 目 撃 情 報 が 増 えており 行 動 域 が 拡 大 傾 向 にあ ると 考 えられる また 平 成 22 年 から 平 成 23 年 にかけては 同 市 湯 涌 町 や 市 瀬 町 で 農 作 物 被 害 と 目 撃 記 録 があり 対 策 が 必 要 となってい る 一 方 山 に 残 った 群 れは 夏 には 標 高 1,000m 以 上 のブナ 林 帯 で 過 ごし 秋 から 晩 秋 にかけて 次 第 に 低 標 高 地 に 移 動 し 冬 期 間 には 雪 崩 が 発 生 する 谷 間 の 急 傾 斜 地 (600m)に 降 りてくるという 従 来 からの 生 活 パ ターンを 守 っている このため 個 体 数 には 増 減 が 無 く 分 布 域 の 大 きな 変 動 も 見 られない ( 図 3) 5
図 3 石 川 県 のニホンザルの 分 布 拡 大 (1960~2014) 6
エ 群 れ 外 のオスグループ 及 びハナレザルの 状 況 メスは 基 本 的 に 一 生 群 れに 留 まっているのに 対 し オスは 5 6 歳 以 上 の 年 齢 に 達 すると 群 れを 離 れ 1 頭 あるいは2 3 頭 以 上 の グループを 作 って 群 れの 動 きとは 関 係 なく 気 ままに 生 活 するように なる 多 くは 群 れのいる 地 域 やその 周 辺 にいるが 中 には 金 沢 市 北 部 野 々 市 市 白 山 市 北 部 の 市 街 地 加 賀 の 平 野 部 遠 く 能 登 半 島 へ 出 掛 けていくものもいる このようなハナレザルは 白 山 麓 周 辺 では 30 頭 程 度 が 確 認 されている オ 季 節 移 動 の 状 況 白 山 のニホンザルの 群 れの 多 くが 季 節 移 動 をすることは 1960 年 代 からの 調 査 で 分 かっており 夏 にブナ 帯 から 亜 高 山 帯 に 上 がり 秋 に 麓 に 下 りてく ることを 確 認 している 発 信 器 を 付 けたタイコA4-2 群 の 例 をみると 2006 年 9 月 から 2009 年 12 月 の 行 動 域 が 図 4のようであったことが 明 らかになった 冬 期 には 標 高 200m~300m の 集 落 近 くで 過 ごしているが 夏 期 には 2,160m の 亜 高 山 帯 の 森 林 に 移 動 していた 標 高 差 1,960m を 直 線 距 離 で 最 大 約 23km 移 動 し 3 年 間 を 合 わせた 最 大 の 行 動 域 の 面 積 は 約 73 km2となった 春 から 夏 の 季 節 移 動 は 雪 解 けと 共 に 芽 吹 く 柔 らかい 木 の 芽 や 草 など 秋 から 冬 の 季 節 移 動 は ブナや 柿 などのニホンザルの 主 要 な 食 物 の 分 布 状 況 と 一 致 していると 考 えられる 手 取 川 ダム 0 6km 白 山 図 4 タイコA4-2 群 の 2006 年 9 月 ~2009 年 12 月 の 行 動 域 7
2 生 息 環 境 ニホンザルの 群 れの 生 息 は 白 山 市 南 部 一 部 白 山 市 に 接 する 小 松 市 東 部 及 び 白 山 市 の 直 海 谷 に 接 す る 金 沢 市 南 部 犀 川 上 流 地 域 に 限 ら れ ている 特 に ニ ホ ン ザ ル の 生 息 の 多 い 白 山 市 南 部 の 旧 1 町 5 村 の 人 口 は 約 30,000 人 である また ニホンザルによる 被 害 地 となっている 旧 吉 野 谷 旧 尾 口 旧 鳥 越 旧 河 内 の 4 村 の 人 口 は 約 6,000 人 で 高 齢 化 と 過 疎 化 が 進 行 してきた 地 域 である 旧 1 町 5 村 の 森 林 のほとんどは 天 然 林 で 多 くは 集 落 の 近 くでは コナラ ミズナラ 奥 山 はブナを 主 とする 広 葉 樹 天 然 林 となっている 3 農 作 物 被 害 の 状 況 昭 和 50 年 代 のニホンザルによる 被 害 の 多 くは ハナレザルによる ものがほとんどで 群 れによる 被 害 は 秋 の 一 時 期 だけに 限 られていた 地 域 も 旧 吉 野 谷 村 と 旧 尾 口 村 の 最 奥 の 集 落 地 の 畑 で 被 害 作 物 も 大 根 と 豆 類 に 限 られていたが 現 在 では 白 山 市 の 吉 野 谷 支 所 鳥 越 支 所 尾 口 支 所 河 内 支 所 の4 支 所 管 内 に 拡 大 している また 金 沢 市 の 南 部 でもニホンザルによる 被 害 の 発 生 が 拡 大 している ( 図 5) ( 千 円 ) 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 計 4,913 3,291 3,189 2,618 1,510 2,380 1,472 2,091 5,288 1,455 638 2,350 1,367 1,583 763 白 山 市 4,913 3,291 3,189 2,618 1,510 2,380 1,472 1,841 5,288 1,355 438 1,300 77 521 125 金 沢 市 0 0 0 0 0 0 0 250 0 100 200 1,050 1,290 1,062 638 図 5 ニホンザルによる 農 作 物 被 害 の 推 移 ( 市 町 別 ) 8
平 成 11 年 から 25 年 までの 被 害 を 受 けた 農 作 物 の 品 目 別 の 被 害 面 積 及 び 被 害 金 額 は 図 6のとおりである 被 害 が 報 告 されている 農 作 物 は 野 菜 稲 が 多 く その 他 果 樹 いも 類 豆 類 雑 穀 等 と 多 種 類 に 及 び 作 付 けされているほとんどの 農 作 物 に 対 し 年 間 を 通 して 被 害 が 発 生 している 被 害 面 積 は 平 成 17 年 に 大 幅 に 減 少 してからは 平 成 19 年 を 除 き 低 い 水 準 で 推 移 している 被 害 金 額 は 平 成 17 年 までは 減 少 傾 向 が 見 られたが 平 成 18 年 以 降 は 増 減 を 繰 り 返 している なお 数 字 で 表 れるもののほかに 再 三 に 渡 り 収 穫 間 際 に 被 害 を 受 けるこ とによる 心 理 的 な 打 撃 は 大 きく そのために 生 産 意 欲 を 喪 失 し 農 耕 放 棄 に つながるような 事 例 も 考 慮 する 必 要 がある 9
( 千 円 ) 被 害 金 額 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 計 4,913 3,291 3,189 2,618 1,510 2,380 1,472 2,091 5,288 1,455 638 2,350 1,367 1,586 763 稲 800 150 215 203 125 280 16 173 0 652 18 1,048 6 393 6 豆 類 264 300 333 261 231 202 126 236 820 52 12 3 1 208 1 雑 穀 0 0 0 0 1 4 0 0 0 0 0 10 0 0 46 果 樹 117 496 222 1,019 179 303 7 35 0 184 64 27 25 153 1 野 菜 3,052 2,025 2,176 1,048 877 1,560 926 1,135 2,947 433 215 1,248 1,328 826 663 いも 類 659 270 213 87 74 6 396 498 1,241 123 329 15 7 6 46 その 他 21 50 30 0 24 24 0 14 280 11 0 0 0 0 0 (a) 被 害 面 積 2,000 1,800 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 計 1,260 1,384 1,376 670 1,090 1,730 91 111 529 166 44 137 56 151 28 稲 800 600 608 17 600 721 2 20 0 51 1 81 1 35 1 豆 類 22 24 28 27 28 24 7 2 10 7 2 0 1 6 1 雑 穀 0 0 0 0 0 10 0 13 0 0 0 5 0 0 2 果 樹 7 16 35 207 128 58 3 1 15 64 6 7 8 34 1 野 菜 373 735 693 411 321 916 69 62 440 36 8 43 45 75 20 いも 類 58 9 12 8 13 1 10 13 44 7 27 1 1 1 3 その 他 0 0 1 0 0 0 0 1 20 2 0 0 0 0 0 図 6 ニホンザルによる 農 作 物 被 害 の 推 移 ( 品 目 別 ) 資 料 : 石 川 県 農 林 水 産 部 農 業 安 全 課 10
4 被 害 防 止 対 策 の 状 況 ア 市 地 域 による 被 害 対 策 ニ ホンザルの 生 息 地 で ある 白 山 市 南 部 の 旧 1 町 5 村 では 平 成 11 年 に 白 山 麓 鳥 獣 害 対 策 協 議 会 を 設 置 し 平 成 12 年 度 から 被 害 を 軽 減 するための 方 策 として 被 害 地 となっている 旧 4 村 で 約 6 名 の 動 向 調 査 員 を 配 置 し さらに 平 成 16 年 度 からは 協 議 会 に1 名 の 鳥 獣 害 防 止 対 策 専 門 員 を 配 置 し 住 民 に 対 する 防 護 ネットの 張 り 方 や 追 い 払 い の 方 法 の 指 導 等 を 行 ってきた 市 町 村 合 併 後 は 白 山 市 全 体 で また 平 成 23 年 度 には 野 々 市 市 も 加 わり 広 域 的 な 協 議 会 として 被 害 防 止 対 策 を 進 めている また 常 に 加 害 群 の 動 向 を 捉 えることができるよう 加 害 群 1 群 あ たり2 頭 のメス 成 獣 に 発 信 器 をつけ 接 近 通 報 システムを 導 入 してき た 調 査 員 はそれぞれ 1 台 ずつ 受 信 機 を 持 ち 加 害 群 の 追 跡 を 行 い 加 害 群 が 集 落 に 接 近 している 場 合 に 集 落 関 係 者 に 連 絡 し サルの 追 い 払 い 等 の 被 害 防 除 にあたっている また 一 部 の 集 落 では 受 信 機 を 設 置 している これまでに 41 頭 に 発 信 器 を 装 着 して 放 獣 してきてお り 現 在 加 害 群 のうち9 群 13 頭 を 追 跡 している なお 発 信 器 装 着 等 作 業 については 白 山 自 然 保 護 センターが 麻 酔 計 測 等 の 作 業 を 分 担 している そのほか 白 山 市 では 住 民 自 らが 追 い 払 いを 実 施 できるよう 威 嚇 用 に 動 物 駆 逐 用 煙 火 や 爆 竹 を 支 給 するとともに 普 及 用 広 報 紙 を 各 戸 に 配 布 し サルの 動 向 防 除 ネットなど 防 護 柵 の 張 り 方 被 害 に 遭 わ な い 作 物 の 配 置 方 法 な ど の サ ル 対 策 を 住 民 あ げ て 実 施 で き る よ う 支 援 を 行 っている イ 捕 獲 等 の 状 況 被 害 が 出 始 めた 昭 和 50 年 (1975 年 ) 当 時 は 防 除 方 法 に 確 立 された 手 法 が 無 く 超 音 波 や 捕 獲 隊 による 威 嚇 発 砲 などが 試 みられ 追 い 払 いが 実 施 されてきた 昭 和 58 年 (1983 年 )には 旧 吉 野 谷 村 で 初 めて 捕 獲 許 可 申 請 が 出 され 平 成 3 年 (1991 年 )に 初 めて7 頭 が 捕 獲 された その 後 平 成 9~10 年 (1997~1998 年 )ごろから 旧 鳥 越 村 と 旧 河 内 村 に 被 害 が 拡 大 した ニ ホ ンザルに 対 する 対 応 は 平 成 9 年 (1997 年 )ま では 有 害 鳥 獣 捕 獲 を 許 可 した 上 で 銃 による 追 い 払 いを 主 に 実 施 しており 捕 殺 は 少 なかった しかし 農 作 物 被 害 が 増 加 したため 翌 年 には 方 針 を 転 換 し 銃 による 殺 処 分 が 実 施 されるようになり 平 成 12 年 (2000 年 ) からは 任 意 計 画 の 範 囲 内 での 有 害 鳥 獣 捕 獲 が 実 施 された 特 定 鳥 獣 保 護 管 理 計 画 が 実 施 された 平 成 14 年 度 からは 個 体 数 調 整 捕 獲 は 白 山 麓 鳥 獣 害 対 策 協 議 会 が また 平 成 17 年 (2005 年 ) の 合 併 後 は 白 山 市 が 追 い 払 いや 捕 獲 対 策 を 実 施 している 平 成 14 年 から 18 年 の5 年 間 での 捕 獲 数 は 291 頭 平 成 19 年 から 23 年 の 5 年 間 の 捕 獲 数 は 213 頭 であった 11
第 1 期 第 2 期 の 特 定 鳥 獣 保 護 管 理 計 画 では 捕 獲 にあたって 群 れの 加 害 レベルにより 捕 獲 数 に 強 弱 を 持 たせるとともに 群 れの 個 体 数 の 増 加 と 分 裂 による 群 れ 数 の 増 加 を 抑 える 目 的 で メスの 成 獣 に 対 して 捕 獲 圧 を 強 めてきた 第 1 期 計 画 での 捕 殺 数 は 250 頭 で それ 以 前 の5 年 間 の 163 頭 と 比 較 して 増 加 している これは 常 習 的 に 農 作 物 被 害 を 与 える 群 れの 繁 殖 抑 制 を 主 目 的 としたことや 被 害 を 与 える 個 体 を 集 中 的 に 捕 獲 した ことによるものである 第 2 期 計 画 の 平 成 23 年 度 までの5 年 間 の 捕 殺 数 は 191 頭 と 第 1 期 の 平 均 値 と 比 較 すると 若 干 減 少 している 第 3 期 計 画 の 平 成 25 年 度 までの2 年 間 の 捕 殺 数 は 144 頭 であり 第 1 期 第 2 期 の 平 均 と 比 較 して 増 加 しており 被 害 軽 減 のため 加 害 群 の 管 理 を 進 めてきたことによるものである また 単 独 で 集 落 周 辺 を 徘 徊 し 農 地 に 継 続 的 に 被 害 を 与 える 雄 の ハナレザルについても 捕 獲 を 実 施 している ( 図 7 表 1) 頭 120 100 94 105 12 発 信 器 放 獣 捕 獲 ( 駆 除 ) 104 5 80 60 40 20 0 0 H9 94 22 14 22 14 33 31 31 6 12 53 71 2 93 62 51 33 25 19 21 9 21 54 55 4 9 63 57 51 45 6 99 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 20 3 17 51 6 45 図 7 ニホンザルの 捕 獲 数 12
(2) 管 理 の 目 標 平 成 14 年 度 から 18 年 度 の 第 1 期 特 定 鳥 獣 保 護 管 理 計 画 により 農 作 物 被 害 の 減 少 や 分 布 拡 大 の 抑 制 など 一 定 の 成 果 があったと 認 められる 一 方 で 今 な お 常 習 的 に 農 産 物 に 依 存 する 群 れの 分 布 の 拡 大 が 認 められ 農 作 物 被 害 が 起 き ている 石 川 県 に 生 息 するニホンザルは 人 間 生 活 とは 全 く 関 係 なく 1 年 を 通 して 山 中 で 生 活 を 完 結 させ 人 間 に 被 害 を 与 えることなく 自 然 の 中 で 暮 らしている 健 全 な 群 れと 人 間 生 活 の 領 域 に 進 出 し 農 作 物 を 専 ら 食 することで 人 と の 軋 轢 を 増 やし 被 害 を 与 える 群 れに 分 けられる 一 方 これまでに 行 ったニホンザル 被 害 についての 住 民 アンケート 調 査 の 結 果 では 住 民 の 多 くは 被 害 がなければ サルがいてもかまわない と 回 答 し ており 白 山 の 自 然 遺 産 の 構 成 員 の 一 つであるニホンザルを 後 世 に 継 承 するこ とは 現 代 を 生 きる 我 々の 使 命 であるとの 認 識 のもと 被 害 を 無 くすることを 保 護 管 理 の 目 標 としてきた このため 第 2 期 の 保 護 管 理 目 標 を 被 害 を 軽 減 するため 加 害 群 を 適 切 に 管 理 する 並 びに 健 全 なニホンザルの 生 息 環 境 を 保 全 し 個 体 群 を 維 持 する こととしているが 金 沢 市 域 においても 被 害 拡 大 が あるなど 計 画 対 象 地 域 における 保 護 管 理 の 目 標 達 成 に 至 っていない そのた め 第 3 期 においても 引 き 続 き 第 2 期 の 保 護 管 理 目 標 を 掲 げ 目 標 の 達 成 を 目 指 してきた 表 1 ニホンザルの 捕 獲 数 の 内 訳 区 分 H9 H10 H11 H12 H13 H9~H13 捕 獲 ( 駆 除 ) 0 94 22 14 33 163 発 信 器 放 獣 0 0 0 0 0 0 計 0 94 22 14 33 163 区 分 H14 H15 H16 H17 H18 H14~H18 捕 獲 ( 駆 除 ) 19 25 93 51 62 250 発 信 器 放 獣 12 6 12 2 9 41 計 31 31 105 53 71 291 区 分 H19 H20 H21 H22 H23 H19~H23 捕 獲 ( 駆 除 ) 21 45 51 57 17 191 発 信 器 放 獣 0 9 4 6 3 22 計 21 54 55 63 20 213 区 分 H24 H25 H24~H25 H9~H25 捕 獲 ( 駆 除 ) 99 45 144 748 発 信 器 放 獣 5 6 11 74 計 104 51 155 822 第 1 期 石 川 県 ニホンザル 管 理 計 画 においては 長 期 的 な 観 点 から 地 域 個 体 群 を 安 定 的 に 維 持 しつつ 管 理 を 図 ることにより 人 とサルとの 適 切 な 関 係 を 構 築 するという 目 標 の 達 成 を 目 指 すこととする 13
6 管 理 の 目 標 達 成 に 向 けた 基 本 指 針 (1) 目 標 を 達 成 するための 施 策 の 基 本 的 考 え 方 本 来 白 山 麓 に 生 息 するニホンザルの 行 動 様 式 は 夏 季 には 標 高 の 高 いブナ 林 を 中 心 とした 地 域 で 暮 らし 冬 には 多 雪 と 食 糧 不 足 に 耐 えるため 少 しでも 暖 かく 餌 となる 食 物 の 多 い 低 標 高 地 に 季 節 移 動 して 冬 を 過 ごし 春 になると 木 や 草 の 芽 生 を 追 って 山 の 斜 面 を 登 るのを 繰 り 返 す 季 節 移 動 が 基 本 であった しかし 現 在 では 人 間 生 活 とは 全 く 関 係 なく 1 年 を 通 して 山 中 で 生 活 を 完 結 させ 人 間 に 被 害 を 与 えることなく 暮 らしている 健 全 な 群 れと 人 間 生 活 の 領 域 まで 進 出 し 農 作 物 を 食 することで 被 害 を 与 える 群 れに 分 けら れる また 被 害 を 与 える 群 れを 分 類 すると 季 節 移 動 し 限 られた 季 節 に 被 害 を 与 えている 群 れと 通 年 的 に 集 落 の 農 地 周 辺 を 主 な 行 動 域 として 農 地 に 強 く 依 存 している 群 れが 見 られる さらに その 中 間 段 階 の 群 れも 見 られることから これらの 行 動 様 式 を 十 分 観 察 した 上 で 群 れの 状 況 に 応 じた 保 護 管 理 を 行 う 必 要 がある すなわち 季 節 移 動 し 限 られた 季 節 に 被 害 を 与 えている 群 れに 対 しては 被 害 発 生 時 期 に 追 い 払 いをかけることにより 本 来 の 田 畑 の 食 物 に 依 存 しない 群 れに 戻 すことが 求 められる 一 方 より 依 存 性 の 強 い 群 れに 対 しては 群 れ の 中 の 田 畑 や 集 落 周 辺 の 果 樹 等 への 執 着 の 強 い 個 体 を 除 去 するなど 群 れ 全 体 が 集 落 や 田 畑 への 執 着 をなくす 方 策 が 必 要 である さらに 田 畑 や 集 落 周 辺 の 果 樹 等 が 一 年 を 通 じて 群 れの 遊 動 域 と 重 なるような 集 落 依 存 型 の 群 れに 対 し ては 学 習 困 難 な 場 合 が 多 く 強 度 の 捕 獲 圧 をかけ 最 終 的 には 群 れを 除 去 す る 方 向 での 対 応 も 考 慮 に 入 れる 必 要 がある このため 本 計 画 では 被 害 発 生 状 況 を 調 査 解 析 することにより 群 れ 毎 に 加 害 レベルを 判 定 し (2) 管 理 指 針 に 基 づいて 適 切 な 管 理 対 策 を 実 施 するこ とにする 14
(2) 管 理 指 針 目 標 健 全 なニホンザルの 生 息 環 境 を 保 全 し 個 体 群 を 維 持 する 被 害 を 軽 減 するため 加 害 群 を 適 切 に 管 理 する 方 策 地 域 個 体 群 における 群 れを 保 全 群 調 整 群 A 調 整 群 B 排 除 群 に 区 分 して 保 護 管 理 を 行 う 良 好 な 生 息 地 の 環 境 の 保 全 と 適 正 な 捕 獲 数 管 理 による 個 体 群 維 持 に 努 める 具 体 的 1 季 節 移 動 を 行 ない 一 時 期 に 被 害 を 発 生 させている 群 れについ な 方 策 ては 接 近 通 報 システム 等 による 追 い 払 いを 徹 底 する 2 捕 獲 個 体 数 調 整 作 物 生 育 期 の6~11 月 の 間 加 害 する 群 れについては 表 2の 加 害 レベル 判 定 基 準 及 び 表 3の 群 れの 加 害 レベルと 被 害 対 策 の 選 定 基 準 にしたがって 対 応 するものとする 個 体 数 調 整 にあたっては 繁 殖 数 を 抑 制 するため 主 に 成 獣 雌 及 び 亜 成 獣 雌 を 捕 獲 するものとする 単 独 で 被 害 を 与 える 雄 (いわ ゆるハナレザル)については 積 極 的 に 捕 獲 する 個 体 数 調 整 を 実 施 しようとする 市 町 は 事 前 に 農 林 総 合 事 務 所 と 協 議 する (*) 報 告 捕 獲 調 書 及 び 標 本 を 提 出 する * 農 林 総 合 事 務 所 は 白 山 自 然 保 護 センターと 事 前 調 整 をする 15
表 2 加 害 レベル 判 定 基 準 レベル 出 没 場 所 人 に 対 する 反 応 農 林 作 物 等 の 被 害 状 況 1 人 家 や 農 地 に 近 い 山 林 内 で 頻 繁 に 見 か ける 人 の 姿 を 見 ると 逃 げ る 林 縁 部 に 自 生 するカキやクリを 食 べる 林 縁 部 にあるホダ 場 のシイタケ を 食 べる 2 数 頭 が まれに 収 穫 後 の 農 地 に 一 時 的 に 出 没 する 人 の 姿 を 見 ると 逃 げ る 林 縁 部 に 自 生 するカキやクリを 食 べる 林 縁 部 にあるホダ 場 のシイタケ を 食 べる 造 林 木 の 食 害 をおこす 3 群 れ 全 体 が 農 地 に 季 節 的 に 出 没 する 数 頭 が まれに 人 家 の 庭 先 にも 出 没 する 人 の 姿 を 見 ても 逃 げ ない 場 合 がある 人 や 車 を 見 ても 追 い 払 わない 限 り 逃 げな い 主 に 畔 の 草 本 類 や 落 ち 穂 を 食 べ る 庭 先 のカキなどの 果 実 を 食 べ る 果 樹 野 菜 稲 などの 農 作 物 を 食 べる 4 群 れ 全 体 が 農 地 に ほとんど 通 年 出 没 す る 人 家 に 侵 入 する 人 を 威 嚇 する 行 動 を 見 せる 果 樹 野 菜 稲 などの 農 作 物 を 食 べる 人 の 肩 などに 乗 り 持 ち 物 を 奪 う かみついたりひっかくなど 人 身 被 害 をおこす 表 3 群 れの 加 害 レベルと 被 害 対 策 の 選 定 基 準 区 分 加 害 被 害 防 除 個 体 の 捕 獲 環 境 整 備 レベル 保 全 群 0 人 慣 れを 起 こさないよ う 餌 付 けしない 生 息 地 の 保 全 調 整 群 A 1 追 い 払 い 林 縁 部 に 自 生 するカキ しいたけのホダ 場 は やクリの 除 去 または 早 期 囲 うか 人 家 周 辺 に 移 動 収 穫 農 地 周 辺 のヤブの 除 去 2 追 い 払 い 加 害 個 体 の 捕 獲 放 棄 した 農 作 物 の 除 去 簡 易 柵 の 設 置 造 林 地 での 被 害 取 り 残 しの 農 作 物 の 除 は 群 れの 捕 獲 も 検 去 討 庭 の 果 樹 の 除 去 または 早 期 収 穫 調 整 群 B 3 組 織 的 な 追 い 払 い 加 害 個 体 の 捕 獲 重 要 な 農 作 物 または 大 規 模 な 農 地 は 恒 久 柵 の 設 置 排 除 群 4 群 れの 捕 獲 特 定 鳥 獣 保 護 管 理 技 術 マニュアルを 参 考 に 作 成 16
7 管 理 のための 具 体 的 取 り 組 み (1) 群 れに 対 する 対 策 1 群 れの 状 況 と 評 価 県 内 に 生 息 する 30 群 について 前 掲 表 2の 加 害 レベル 判 定 基 準 に 基 づ き 農 地 等 へ の 出 没 状 況 人 に 対 す る 反 応 農 作 物 被 害 等 の 発 生 状 況 や 群 れ の 個 体 数 の 増 加 率 季 節 移 動 の 状 況 な ど を 総 合 的 に 評 価 し 一 つ 一 つ の 群 れ に つ い て レ ベ ル を 判 定 し た 結 果 現 状 は 次 の と お り で ある ( 図 8 表 4) 加 害 レベル0の 群 れは 14 群 約 470 頭 で 県 内 に 生 息 するニホンザ ル の 約 半 数 は 今 も 人 との 関 わ りがほとんどない 良 好 な 状 態 で 健 全 に 生 息 している 加 害 レベル1~2の 群 れは 9 群 約 470 頭 で ある 程 度 季 節 移 動 が 見 られ 一 時 的 に 被 害 を 与 える 群 れである 加 害 レベル3 程 度 の 群 れは 7 群 約 280 頭 で 集 落 周 辺 に 定 着 しあ まり 季 節 移 動 をせず 農 作 物 への 依 存 度 が 高 い 状 態 が 見 られる 加 害 レベル4と 明 確 に 判 断 できる 群 れは 現 状 では 認 められない この 他 に ハナレザルとして 群 れに 属 さず 群 れの 周 辺 や 県 下 各 地 に 出 没 するものが 30 頭 程 度 存 在 するとみられる 2 群 れ 区 分 に 応 じた 管 理 対 策 保 全 群 調 整 群 A 調 整 群 B 排 除 群 の 区 分 毎 の 管 理 の あり 方 は 次 のとおりとする ( 表 3) ア 保 全 群 良 好 な 状 態 にある 群 れであり 今 後 とも 良 好 な 生 息 環 境 の 維 持 に 努 めるとともに 観 光 客 等 のエサやりなどで 人 慣 れが 進 まないように 留 意 する イ 調 整 群 A 一 定 の 対 応 策 を 講 じれば 良 好 な 関 係 に 戻 せる 可 能 性 のある 状 態 で ある 季 節 移 動 し 限 られた 季 節 に 被 害 を 与 えている 群 れに 対 しては 被 害 発 生 時 期 に 追 い 払 いをかけることにより 本 来 の 田 畑 の 食 物 に 依 存 しない 群 れに 戻 すことを 原 則 とする ウ 調 整 群 B 加 害 レベル1~2の 状 態 へ 誘 導 できるか レベル4の 状 態 へ 移 行 し ていくか 現 状 では 判 断 できない 状 態 のものもあり レベル4への 移 行 が 懸 念 される 群 れに 対 しては 組 織 的 な 追 い 払 いを 強 化 するととも に 群 れの 中 の 田 畑 や 集 落 周 辺 の 果 樹 等 への 執 着 の 強 い 個 体 を 除 去 す るなど 群 れ 全 体 が 集 落 や 田 畑 への 執 着 をなくす 方 策 など 的 確 な 捕 獲 管 理 もあわせて 実 施 していくことにより レベル4へ 移 行 していく ことなく レベル 2 へ 段 階 的 に 移 行 するよう 努 める また 被 害 防 止 柵 の 設 置 など 効 果 的 な 対 策 を 継 続 していくものとする 17
エ 排 除 群 いかなる 対 策 を 講 じようと 人 と 良 好 な 関 係 に 戻 すことはほとんど 不 可 能 と 考 えられる 状 態 の 群 れであるが 現 状 では 明 確 にこの 区 分 と 判 定 される 群 れはないと 考 えられる 田 畑 や 集 落 周 辺 が1 年 を 通 じ て 遊 動 域 と 重 なるような 集 落 依 存 型 の 群 れに 対 しては 学 習 困 難 な 場 合 もあり 強 度 の 捕 獲 圧 をかけ 最 終 的 には 群 れを 除 去 する 方 向 での 対 応 も 考 慮 するものとする オ ハナレザル 新 たに 群 れを 離 れ 放 浪 する 個 体 については 被 害 が 一 過 性 で 繰 り 返 し 被 害 が 発 生 す ることはないと 考 え られるが 一 か 所 に 定 着 して 継 続 的 に 被 害 を 与 える 個 体 については 積 極 的 に 捕 獲 するものとする なお 第 2 期 計 画 策 定 時 より 個 体 数 が 約 200 頭 増 加 していること や 金 沢 市 でも 被 害 が 新 たな 地 域 に 拡 大 したことに 鑑 み 群 れの 加 害 レベル 等 に 応 じて 個 体 数 調 整 の 強 化 を 図 るものとする 3 具 体 的 な 管 理 の 方 法 ア 捕 獲 繁 殖 数 を 抑 制 するために 主 に 成 獣 メスおよび 亜 成 獣 メスを 捕 獲 する 単 独 で 被 害 を 与 えるハナレザルについては 積 極 的 に 捕 獲 する 個 体 数 調 整 を 実 施 しようとする 市 町 は 事 前 に 農 林 総 合 事 務 所 と 協 議 する イ 追 い 払 い 接 近 通 報 システムによる 効 率 的 な 追 い 払 いを 推 進 する 18
表 4 石 川 県 のニホンザルの 群 れの 状 況 と 評 価 区 分 保 全 群 14 群 約 470 頭 調 整 群 A 9 群 約 470 頭 調 整 群 B 7 群 約 280 頭 生 息 地 域 ( 旧 市 町 村 ) 群 れの 名 称 加 害 レヘ ル 個 体 数 レヘ ル (H23. 2 月 ) (H19-23) 吉 野 谷 クニミA 0 中 不 明 季 節 移 動 吉 野 谷 ガラダニ 0 中 不 明 季 節 移 動 金 沢 タカサブロウ 0 中 不 明 季 節 移 動 吉 野 谷 カムリ A1 0 大 季 節 移 動 吉 野 谷 カムリ A2 0 中 季 節 移 動 吉 野 谷 カムリA3 0 小 不 明 季 節 移 動 吉 野 谷 カムリA4 0 不 明 季 節 移 動 消 滅 吉 野 谷 カムリ C 0 中 不 明 季 節 移 動 吉 野 谷 カムリ E 0 中 季 節 移 動 吉 野 谷 カムリ F 0 小 季 節 移 動 吉 野 谷 カムリ? G 季 節 移 動 消 滅 吉 野 谷 尾 口 タイコ B1 0 中 季 節 移 動 吉 野 谷 尾 口 タイコB2-1 0 中 季 節 移 動 吉 野 谷 尾 口 タイコB2-2 0 中 季 節 移 動 吉 野 谷 尾 口 タイコB2-2SG 0 小 尾 口 タイコA3 0 小 季 節 移 動 吉 野 谷 尾 口 タイコA2-1 2 大 季 節 移 動 吉 野 谷 尾 口 タイコA2ー3 1 大 季 節 移 動 尾 口 鳥 越 タイコA4-2 1-2 中 季 節 移 動 河 内 吉 野 谷 クロダニC 1 小 不 明 季 節 移 動 金 沢 アゲハラ 1 中 不 明 季 節 移 動 吉 野 谷 尾 口 カムリ D 2 大 季 節 移 動 吉 野 谷 オダニA 1 大 季 節 移 動 吉 野 谷 オダニB? 中 季 節 移 動 吉 野 谷 オダニCorカムリD-SG? 小 不 明 季 節 移 動 鳥 越 アテ? 消 滅 吉 野 谷 鳥 越 タイコA1-2 3-4 中 定 着 吉 野 谷 タイコA1ー1a 2-3 中 定 着 H19 年 度 調 整 群 Aより 吉 野 谷 鳥 越 タイコA1ー1b 3 中 不 明 定 着 尾 口 鳥 越 タイコA4ー1 3 小 定 着 吉 野 谷 尾 口 タイコA2ー2 3 中 定 着 H22 年 度 調 整 群 Aより 河 内 吉 野 谷 クロダニA 3 大 定 着 河 内 吉 野 谷 クロダニB 3 中 定 着 ハナレオス 30 合 計 1,246 個 体 数 の 増 減 移 動 備 考 本 評 価 は 平 成 23 年 3 月 現 在 のものである 個 体 数 レベルは 次 の 通 り 小 :10-25 頭, 中 :26-50 頭 大 :51-100 頭 特 大 :101 頭 個 体 数 群 れ 数 は 平 成 23 年 2 月 滝 澤 らの 調 査 による 個 体 数 の 増 減 は 次 の 通 り : 増 加, : 変 化 なし : 減 少 群 れの 名 称 の 由 来 :カムリ( 冬 瓜 山 (カムリ 山 ) タイコ( 太 鼓 壁 という 岩 壁 の 名 前 ) オダニ( 雄 谷 ) クニミ( 国 見 山 ) クロダニ( 黒 谷 ) ガラダニ(ガラ 谷 ) アテ( 阿 手 ) タカサブロウ( 高 三 郎 山 ) アゲハラ( 揚 原 山 ) 19
図 8 各 群 れの 分 布 ( 冬 期 )と 評 価 (カタカナは 群 れの 名 称 を 示 す) (2011.2 滝 澤 らの 調 査 を 参 考 に 作 成 ) 20
(2) 生 息 環 境 の 保 護 及 び 整 備 の 対 策 次 の 地 域 区 分 により 適 切 な 生 息 環 境 の 保 全 を 図 るものとする ア 保 護 地 域 : 白 山 鳥 獣 保 護 区 を 準 用 保 護 地 域 は 本 来 の 野 生 動 物 の 生 息 地 として 厳 正 に 保 護 する 地 域 である 人 間 活 動 を 一 定 の 範 囲 で 規 制 する 自 然 環 境 の 原 始 性 を 維 持 更 新 できるように 配 慮 し 野 生 動 物 の 良 好 な 生 息 環 境 の 維 持 に 努 める イ 緩 衝 地 域 : 保 護 地 域 と 排 除 地 域 を 除 く 地 域 緩 衝 地 域 は 野 生 動 物 と 人 間 の 活 動 が 混 在 する 地 域 である 野 生 動 物 の 生 息 地 の 保 全 を 目 的 とする 地 域 では 現 状 の 維 持 に 努 める 被 害 地 農 地 集 落 地 に 近 い 部 分 では これらの 地 域 にニホ ンザルが 容 易 に 侵 入 することを 抑 制 するために 市 町 等 と 連 携 協 力 しながら 間 伐 や 除 伐 などの 里 山 林 整 備 に 取 り 組 むもの とする ウ 排 除 地 域 : 集 落 及 びその 周 辺 の 農 地 排 除 地 域 は 野 生 動 物 を 排 除 し 円 滑 な 人 間 活 動 を 確 保 する 地 域 である 農 林 業 被 害 等 を 抑 制 できる 地 域 づくりのため 県 市 町 関 係 団 体 地 域 住 民 等 が 連 携 協 力 して 下 記 の 事 項 等 の 推 進 に 努 める 隠 れ 場 となる 休 耕 田 や 耕 作 放 棄 地 等 の 荒 廃 地 の 整 備 に 努 め る ニホンザルを 農 地 や 集 落 に 誘 引 するカキ 等 の 果 樹 の 早 期 の 摘 果 や 収 穫 放 棄 野 菜 農 業 廃 棄 物 などの 誘 因 食 物 の 管 理 を 徹 底 する 農 地 等 への 侵 入 防 止 のための 電 気 柵 等 の 設 置 などの 方 策 を 講 じる 21
8 その 他 管 理 のために 必 要 な 事 項 (1)モニタリング 等 の 調 査 研 究 県 は 市 町 等 と 連 携 協 力 して 効 果 測 定 や 経 過 追 跡 のためモニタリン グを 行 い その 結 果 をフィードバックして 検 討 を 行 い 随 時 計 画 の 見 直 しを 行 うものとする 調 査 内 容 : 個 体 群 動 態 調 査 ( 個 体 数 分 布 繁 殖 状 況 栄 養 状 況 など) 被 害 調 査 ( 被 害 の 種 類 量 季 節 など) (2) 計 画 の 実 施 体 制 県 は 保 護 管 理 対 策 の 結 果 を 正 確 に 評 価 し 次 年 度 あるいは 次 期 計 画 にフィード バックしていくために 図 9の 保 護 管 理 体 制 を 持 続 させるものとする 管 理 計 画 案 の 作 成 ( 県 ) 案 の 公 表 関 係 機 関 協 議 検 討 会 公 聴 会 等 の 開 催 環 境 審 議 会 への 諮 問 答 申 フ ィ ー ド バ ッ ク 管 理 計 画 の 策 定 ( 確 定 ) 管 理 対 策 の 実 施 モニタリングの 実 施 公 表 県 関 係 市 町 ワーキング 会 議 の 開 催 被 害 対 策 協 議 会 開 催 普 及 啓 発 と 研 修 会 の 実 施 白 山 自 然 保 護 センター 林 業 試 験 場 等 ( 調 査 の 経 過 結 果 の 発 表 ) 評 価 検 討 会 の 実 施 石 川 県 特 定 鳥 獣 管 理 計 画 検 討 会 の 開 催 図 9 計 画 の 実 施 体 制 (3) 普 及 啓 発 等 県 は 市 町 等 と 連 携 協 力 して 本 計 画 を 推 進 するために ニホンザル の 生 息 状 況 被 害 状 況 本 計 画 の 趣 旨 内 容 などの 普 及 啓 発 に 努 める 白 山 国 立 公 園 や 白 山 一 里 野 県 立 自 然 公 園 手 取 獅 子 吼 県 立 自 然 公 園 また 白 山 スーパー 林 道 等 での 餌 づけ 防 止 キャンペーンや いしかわ 自 然 学 校 等 と 連 携 した 普 及 啓 発 ボランティア 等 によるカキもぎやヤブ 刈 り 等 の 保 全 活 動 等 の 充 実 強 化 を 図 る また 保 護 管 理 に 関 する 技 術 知 識 の 習 得 を 目 的 に 関 係 機 関 に 対 する 研 修 を 実 施 するものとする 22