「大阪都構想の動向と実現への課題」



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m07 北見工業大学 様式①

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

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(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

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は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

公表表紙

1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

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就 学 前 教 育 保 育 の 実 施 状 況 ( 平 成 23 年 度 ) 3 歳 以 上 児 の 多 く(4 歳 以 上 児 はほとんど)が 保 育 所 又 は 幼 稚 園 に 入 所 3 歳 未 満 児 (0~2 歳 児 )で 保 育 所 に 入 所 している 割 合 は 約 2 割 就 学

学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係省令の整備に関する省令等について(通知)

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質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

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預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 級 の 給 料 月 額 最 高 号 級 の 給 料 月 額 1 級 ( 単 位 : ) 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 9 級 1 級 135,6 185,8 222,9 261,

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公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

波佐見町の給与・定員管理等について

4 松 山 市 暴 力 団 排 除 条 の 一 部 風 俗 営 業 等 の 規 制 及 び 業 務 の 適 正 化 等 に 関 する 法 律 等 の 改 正 に 伴 い, 公 共 工 事 から 排 除 する 対 象 者 の 拡 大 等 を 図 るものです 第 30 号 H H28.1

入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

市 町 村 税 の 概 況 市 町 村 税 の 概 況 は 平 成 25 年 度 地 方 財 政 状 況 調 査 平 成 26 年 度 市 町 村 税 の 課 税 状 況 等 の 調 及 び 平 成 26 年 度 固 定 資 産 の 価 格 等 の 概 要 調 書 等 報 告 書 等 の 資 料 に

 

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(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 H H H5.4.1 ( 参 考 値 ) 97.1 H H H H5.4.1 H H5.4.1 ( 参 考

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 ( 各 年 4 月 1 日 現 在 ) (H25.4.1) (H25.4.1) (H25.7.1) (H25.7.1) (H25.4.1) (H25.7.1)


社会保険加入促進計画に盛込むべき内容

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 最 高 号 給 の 給 料 月 額 243,7 37,8 35

共 通 認 識 1 官 民 較 差 調 整 後 は 退 職 給 付 全 体 でみて 民 間 企 業 の 事 業 主 負 担 と 均 衡 する 水 準 で あれば 最 終 的 な 税 負 担 は 変 わらず 公 務 員 を 優 遇 するものとはならないものであ ること 2 民 間 の 実 態 を 考

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平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 161,7 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

( 補 助 金 等 交 付 決 定 通 知 に 加 える 条 件 ) 第 7 条 市 長 は 交 付 規 則 第 11 条 に 規 定 するところにより 補 助 金 の 交 付 決 定 に 際 し 次 に 掲 げる 条 件 を 付 するものとする (1) 事 業 完 了 後 に 消 費 税 及 び

( 注 )1 ラスパイレス 指 数 とは 全 地 方 公 共 団 体 の 一 般 行 政 職 の 給 料 月 額 を 一 の 基 準 で 比 較 するため の 職 員 数 ( 構 成 )を 用 いて 学 歴 や 経 験 年 数 の 差 による 影 響 を 補 正 し の 行 政 職 俸 給 表 (

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

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検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 福 岡 県 技 能 労 務 職 歳 1,19,98 9,9 歳 8,

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

個人住民税徴収対策会議

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 2 年 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制 措 置 を 行 う 前 のものです ( 単 位 : ) 3 職 員 の 平 均 給 与 月

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (5 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 区 類 団 府 分 似 体 平 均 年 齢

退職手当とは

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技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77

3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与 月 額

も く じ 1 税 源 移 譲 1 2 何 が 変 わったのか 改 正 の 3 つ の ポイント ポイント1 国 から 地 方 へ 3 兆 円 規 模 の 税 源 が 移 譲 される 2 ポイント2 個 人 住 民 税 の 税 率 構 造 が 一 律 10%に 変 わる 3 ポイント3 個 々の 納

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2. 建 築 基 準 法 に 基 づく 限 着 色 項 目 の 地 区 が 尾 張 旭 市 内 にはあります 関 係 課 で 確 認 してください 項 目 所 管 課 窓 口 市 役 所 内 電 話 備 考 がけに 関 する 限 (がけ 条 例 ) 都 市 計 画 課 建 築 住 宅 係 南 庁 舎

能勢町市街化調整区域における地区計画のガイドライン


2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制 措 置 を 行 う 前 のものです 3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給

定款

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03《G》資料1-2当初予算【H28】280207

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 135,600 円 185,800 円 222,900 円 261,900 円

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容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

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安 芸 太 田 町 学 校 適 正 配 置 基 本 方 針 の 一 部 修 正 について 1 議 会 学 校 適 正 配 置 調 査 特 別 委 員 会 調 査 報 告 書 について 安 芸 太 田 町 教 育 委 員 会 が 平 成 25 年 10 月 30 日 に 決 定 した 安 芸 太 田

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

〔自 衛 隊〕

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Transcription:

事 例 研 究 ( 現 代 行 政 Ⅰ) 最 終 レポート 大 阪 都 構 想 の 動 向 と 実 現 への 課 題 東 京 大 学 公 共 政 策 大 学 院 法 政 策 コース 1 年 田 村 真 善 目 次 1. はじめに 2. 大 阪 都 構 想 の 概 要 3. 大 阪 都 構 想 の 動 向 4. 大 阪 都 構 想 の 問 題 点 5. 今 後 の 課 題 財 政 調 整 事 務 配 分 6. おわりに 1. はじめに 我 が 国 では 現 在 地 方 分 権 の 推 進 に 向 けた 動 きが 活 発 化 している 近 年 では 愛 知 県 と 名 古 屋 市 による 中 京 都 構 想 新 潟 県 と 新 潟 市 による 新 潟 州 構 想 指 定 都 市 市 長 会 による 特 別 自 治 市 構 想 など 地 方 から 様 々な 大 都 市 制 度 の 改 革 案 が 提 起 されているが こうした 地 方 発 の 改 革 案 の 中 で 最 も 注 目 され ているのが 大 阪 都 構 想 である 大 阪 都 構 想 は 橋 下 徹 大 阪 府 知 事 ( 当 時 )に よって 提 唱 され 橋 下 氏 や 彼 が 率 いる 大 阪 維 新 の 会 のもと 実 現 が 模 索 されて きた その 動 きは 平 成 23 年 11 月 に 行 われた 大 阪 府 知 事 大 阪 市 長 のダブル 選 挙 で 維 新 の 会 から 松 井 一 郎 氏 と 橋 下 氏 がそれぞれ 当 選 し 大 阪 都 構 想 を 推 進 す る 体 制 が 整 ったことでさらに 加 速 しつつある しかし その 一 方 で 大 阪 都 構 想 は 現 行 の 制 度 を 大 きく 変 更 するものであるため 現 行 法 の 改 正 や 新 たな 制 度 の 構 築 が 不 可 欠 であり 実 現 に 向 けて 解 決 しなければならない 課 題 も 多 い 加 え て 大 阪 都 構 想 の 背 景 にある 現 在 の 大 阪 が 抱 える 様 々な 課 題 が 大 阪 都 構 想 の 実 現 によって 本 当 に 解 決 されるのかという 根 本 的 な 問 題 もある とはいえ 大 阪 都 構 想 の 実 現 に 向 けた 挑 戦 は 今 後 の 地 方 発 の 分 権 改 革 に 対 して 道 筋 と 可 1

能 性 を 示 すものであるといえる このレポートでは 大 阪 都 構 想 についてその 動 向 を 踏 まえながら 概 観 するとともに 実 現 に 向 けた 課 題 について 検 証 し そ の 解 決 策 を 検 討 することを 通 して 大 阪 都 構 想 の 実 現 可 能 性 について 探 りたい 2. 大 阪 都 構 想 の 概 要 (1) 理 念 と 背 景 大 阪 都 構 想 は 府 民 のための 政 治 すなわち 府 民 が 安 心 して 生 活 できる 大 阪 を 理 念 とし 経 済 成 長 による 恩 恵 を 享 受 できる 新 しい 大 阪 の 建 設 を 目 標 として いる 大 阪 都 構 想 の 背 景 となっているのが 大 阪 の 経 済 状 況 の 悪 化 である 現 在 の 大 阪 の 経 済 状 況 は 府 内 総 生 産 が 平 成 11 年 度 の 39 兆 6000 億 円 から 平 成 21 年 度 の 35 兆 7000 億 円 へと 10 年 間 で 約 4 兆 円 減 少 し 一 人 あたりの 府 民 所 得 も 平 成 11 年 度 の 322 万 円 から 平 成 21 年 度 の 283 万 円 へと 約 40 万 円 減 少 するな ど 悪 化 している( 大 阪 府 民 経 済 計 算 平 成 21 年 度 早 期 推 計 より) また 中 心 部 である 大 阪 市 はさらに 落 ち 込 み 幅 が 大 きく 一 人 あたりの 市 民 所 得 は 平 成 11 年 度 の 384 万 円 から 平 成 21 年 度 の 300 万 円 へと 約 80 万 円 減 少 している( 平 成 21 年 度 大 阪 市 民 経 済 計 算 より) こうした 経 済 状 況 を 打 破 するためには 統 一 された 経 済 成 長 戦 略 のもとで 経 済 の 仕 組 みを 変 えていく 規 制 緩 和 などの 構 造 改 革 経 済 成 長 が 見 込 まれる 新 たな 分 野 への 投 資 誘 導 といった 戦 略 的 な 経 済 政 策 が 必 要 である それには 強 力 なリーダーのもと 統 一 的 で 一 体 性 のある 政 策 をスピーディーに 打 ち 出 し 世 界 の 都 市 間 競 争 に 打 ち 勝 てる 都 市 経 営 と 進 めていく 体 制 を 早 急 に 作 ることが 最 重 要 課 題 である 以 上 のような 考 え 方 が 大 阪 都 構 想 の 根 底 にある (2) 目 的 大 阪 都 構 想 の 目 的 としては 1 二 元 行 政 の 根 絶 と2 住 民 生 活 をきめ 細 やかに 守 る 組 織 体 制 の 整 備 の 2 点 が 挙 げられる それぞれについて 解 説 する 1 二 元 行 政 の 根 絶 大 阪 は 中 心 部 に 位 置 する 大 阪 市 域 に 人 口 や 産 業 が 集 中 している 一 方 で 全 国 で 2 番 目 に 狭 い 大 阪 府 の 全 域 が 都 市 としての 一 体 性 をもって 市 街 化 して おり 大 阪 都 市 圏 を 形 成 している 本 来 都 市 としての 一 体 的 な 経 営 が 求 めら れるにもかかわらず 特 別 市 運 動 をめぐる 大 阪 市 役 所 と 大 阪 府 庁 の 対 立 という 2

歴 史 経 緯 等 から 市 は 市 府 は 市 域 外 という 二 元 行 政 の 状 態 が 生 じた こう して 都 市 経 営 主 体 の 分 立 が 定 着 することで 大 阪 都 市 圏 の 都 市 経 営 の 責 任 の 所 在 が 不 明 確 になっている さらに 大 阪 市 は 市 域 で 府 県 並 みの 施 策 を 施 設 整 備 を 行 う 一 方 大 阪 府 は 市 町 村 の 補 完 行 政 や 施 設 整 備 を 府 民 の 利 便 性 を 考 慮 して 府 域 中 心 部 に 位 置 する 大 阪 市 域 で 行 う 結 果 二 重 行 政 の 問 題 生 じている 大 阪 の 新 たな 成 長 のためには 1 つの 経 済 成 長 戦 略 を 実 施 可 能 とすべく 二 元 行 政 の 根 本 からの 打 破 が 不 可 欠 である すなわち 大 阪 府 庁 と 大 阪 市 役 所 を 再 編 し 1 人 のリーダーが 成 長 戦 略 を 実 施 できる 体 制 を 整 備 しなくてはならない 2 住 民 生 活 をきめ 細 やかに 守 る 組 織 体 制 の 整 備 267 万 人 の 人 口 を 擁 する 大 阪 市 の 組 織 では 住 民 生 活 をきめ 細 やかに 守 るには 組 織 が 大 きすぎるが 各 行 政 区 の 区 役 所 組 織 は 窓 口 業 務 が 中 心 で 住 民 生 活 を 守 る 組 織 としては 不 十 分 である 災 害 時 の 危 機 管 理 生 活 道 路 施 設 の 整 備 福 祉 サービスの 提 供 などのあらゆる 行 政 サービスは 全 て 住 民 から 遠 い 大 阪 市 役 所 が 仕 切 っており 各 行 政 区 役 所 では 全 く 対 応 できない 大 阪 都 においては 地 方 分 権 の 原 理 に 基 づく 住 民 自 治 ニアイズベター の もと 現 在 の 大 阪 市 が 提 供 しているサービスを 住 民 により 近 い 特 別 自 治 区 が 全 て 担 えるような 組 織 体 制 と 仕 組 みを 整 備 する 大 阪 市 域 内 に 特 別 自 治 区 を 設 置 すれば 大 阪 市 域 内 に 存 する 地 域 コミュニティーは 特 別 自 治 区 役 所 を 核 と してより 強 固 で 緊 密 なコミュニティーとして 再 生 する 現 在 の 大 阪 市 域 内 の 地 域 コミュニティーは 高 齢 化 が 進 み その 活 動 や 次 世 代 への 継 承 に 大 きな 問 題 を 抱 えているが 特 別 自 治 区 が 設 置 されることで 特 別 自 治 区 役 所 を 核 としたよ り 地 域 色 の 強 いコミュニティーが 形 成 され こうした 問 題 の 解 決 につながる (3) 具 体 的 内 容 1 大 阪 府 域 に 大 阪 都 を 創 設 する 大 阪 都 は 広 域 自 治 体 である 大 阪 府 庁 と 政 令 指 定 都 市 である 大 阪 市 及 び 堺 市 の 分 立 が 障 害 となり 大 阪 都 市 圏 全 体 で 一 体 性 及 び 統 一 性 ある 行 政 を 展 開 できなかった 点 を 抜 本 的 に 改 めるための 十 分 な 財 源 に 裏 打 ちされた 強 い 広 域 自 治 体 である 大 阪 都 は 大 阪 都 市 圏 全 域 に おいて 戦 略 性 が 必 要 な 事 業 ( 成 長 戦 略 広 域 防 災 機 能 広 域 に 影 響 がある 都 市 計 画 インフラ 整 備 等 ) 及 び 統 一 性 が 必 要 な 事 業 ( 国 民 健 康 保 険 等 の 運 営 消 防 や 警 察 道 路 の 管 理 等 )に 重 点 を 置 く 3

2 現 在 24 行 政 区 をもつ 大 阪 市 と 7 行 政 区 をもつ 堺 市 を 廃 止 し 旧 市 域 におお むね 人 口 30 万 人 から 50 万 人 規 模 の 基 礎 自 治 体 として 特 別 自 治 区 10~12 区 を 設 置 する 3 特 別 自 治 区 には 公 選 制 の 区 長 と 区 議 会 を 置 くとともに 中 核 市 並 みの 権 限 を 与 える 4 特 別 自 治 区 間 の 税 収 格 差 問 題 を 解 決 するために 大 阪 都 区 財 政 調 整 制 度 を 創 設 する 5 特 別 自 治 区 以 外 の 市 町 村 も 原 則 として 中 核 市 に 再 編 するが 人 口 30 万 人 の 水 準 を 満 たさない 市 町 村 については 近 隣 の 市 町 村 との 広 域 連 携 を 推 進 するこ とで 中 核 市 並 みの 権 限 と 財 源 の 移 譲 を 目 標 とする 3. 大 阪 都 構 想 の 動 向 2010 年 3 月 : 橋 下 大 阪 府 知 事 ( 当 時 )を 代 表 とする 大 阪 維 新 の 会 が 大 阪 都 構 想 を 発 表 2011 年 9 月 : 大 阪 維 新 の 会 によって 大 阪 都 実 現 に 向 けた 基 本 的 構 想 である 大 阪 都 構 想 推 進 大 綱 が 発 表 される 11 月 : 大 阪 府 知 事 大 阪 市 長 のダブル 選 挙 で 大 阪 維 新 の 会 の 松 井 一 郎 氏 橋 下 徹 氏 がそれぞれ 当 選 12 月 : 大 阪 府 と 大 阪 市 の 間 での 二 重 行 政 の 解 消 を 目 指 し 府 市 が 共 同 で 運 営 す る 大 阪 府 市 統 合 本 部 が 発 足 統 合 本 部 では 府 立 大 市 立 大 や 公 立 病 院 の 経 営 統 合 市 営 地 下 鉄 の 民 営 化 大 阪 市 と 大 阪 市 以 外 の 府 内 市 町 村 で 分 かれている 水 道 の 統 合 など 広 域 にわたる 事 業 について 課 題 を 整 理 し 改 革 に 向 けて 議 論 する また 新 たに 設 ける 区 のあり 方 や 財 政 調 整 などの 都 市 制 度 の 具 体 像 も 議 論 し 2012 年 秋 をめどに 制 度 提 案 を まとめ 実 現 に 必 要 な 地 方 自 治 法 改 正 などを 国 に 働 きかけるとした 2012 年 3 月 : 大 阪 府 議 会 と 大 阪 市 議 会 にて 大 阪 都 構 想 を 念 頭 にした 府 市 再 編 に 関 する 基 本 計 画 をつくる 協 議 会 の 設 置 条 例 案 大 阪 にふさわしい 大 都 市 制 度 の 推 進 に 関 する 条 例 が 可 決 される 協 議 会 は 広 域 行 政 を 一 元 的 に 担 うため 新 たにつくる 都 と 住 民 に 身 近 なサービスを 担 う 特 別 自 治 区 の 権 限 や 財 源 配 分 など 重 要 事 項 の 基 本 計 画 を 策 定 する しかし 堺 市 の 竹 山 4

市 長 は 同 市 の 分 割 につながるとして 協 議 会 への 参 加 見 送 りを 表 明 し 同 市 議 会 でも 同 様 の 条 例 案 が 否 決 されるなど 足 並 みが 揃 っていないのが 課 題 である 5 月 : 第 2 回 協 議 会 にて 都 構 想 の 府 市 首 長 案 が 提 出 される 首 長 案 では 府 市 を 解 体 し 大 阪 都 と 特 別 自 治 区 に 再 編 すること 特 別 区 は 30 万 人 規 模 とし 中 核 市 並 みの 権 限 を 付 与 すること 都 と 区 にはそれぞれ 議 会 を 設 置 することなどが 提 案 され 本 格 的 な 議 論 が 始 まる 6 月 :1 大 阪 府 市 統 合 本 部 で 12 事 業 の 見 直 し 方 針 がまとめられる 地 下 鉄 や バス 港 湾 など 6 事 業 で 民 営 化 や 事 業 の 一 元 化 が 固 まる 一 方 水 道 や 公 立 大 などは 関 係 団 体 との 調 整 が 進 まないなどの 理 由 から 結 論 が 持 ち 越 され た 地 下 鉄 と 市 バス 一 般 廃 棄 物 の 3 事 業 は 民 営 化 方 針 が 決 定 し これに よって 市 の 財 政 支 出 を 約 200 億 円 削 減 できるとした 2 大 阪 市 内 24 区 の 公 募 区 長 の 顔 ぶれが 公 表 される 住 民 サービスの 充 実 を 図 ることが 目 的 区 長 は 従 来 の 部 長 級 から 市 長 副 市 長 に 次 ぐ シティーマネージャー 職 に 格 上 げされ 本 庁 の 局 長 らを 指 揮 監 督 でき る 立 場 となる 予 算 編 成 の 権 限 も 拡 充 され 住 民 目 線 の 独 自 施 策 を 競 うこ とが 期 待 されている ただ 行 政 経 験 のない 区 長 が 多 いことや 生 活 保 護 など 法 令 に 基 づくサービスは 各 区 で 水 準 に 差 がつけられないなどの 課 題 も ある 8 月 : 大 都 市 地 域 における 特 別 区 の 設 置 に 関 する 法 律 ( 大 都 市 地 域 特 別 区 設 置 法 ) が 参 議 院 本 会 議 で 賛 成 多 数 で 可 決 され 成 立 この 法 律 は 政 令 指 定 都 市 と 隣 接 する 市 町 村 の 総 人 口 が 200 万 人 以 上 の 大 都 市 圏 で 市 町 村 を 廃 止 して 東 京 23 区 のような 特 別 区 を 設 置 することができる 札 幌 さいたま 千 葉 横 浜 川 崎 名 古 屋 京 都 大 阪 堺 神 戸 の 8 地 域 10 政 令 指 定 都 市 が 対 象 となる 特 別 区 の 住 民 は 区 長 や 区 議 を 直 接 選 挙 で 選 ぶことができ 区 ごとに 予 算 を 編 成 し 地 域 の 実 情 に 合 わせた 施 策 を 行 う ことができるという 内 容 が 規 定 されている 9 月 : 第 6 回 協 議 会 にて 大 阪 市 の 24 区 を 8~9 の 特 別 区 に 再 編 した 際 の 財 政 調 整 について 議 論 がなされる 大 阪 府 と 大 阪 市 の 試 算 に 基 づいて 地 方 交 付 税 のほか 都 市 計 画 税 や 事 業 所 税 などの 5 つの 地 方 税 を 再 配 分 すれば 各 特 別 区 間 の 収 入 格 差 がほぼ 解 消 されることが 報 告 された 収 入 格 差 を 大 阪 府 内 の 市 町 村 並 みに(1.3 倍 )に 収 めるには 東 京 都 が 23 区 の 財 政 調 整 5

に 用 いている 普 通 3 税 ( 法 人 住 民 税 固 定 資 産 税 特 別 土 地 保 有 税 )に 加 え 地 方 交 付 税 と 目 的 2 税 ( 都 市 計 画 税 事 業 所 税 )が 必 要 になる ただ 地 方 交 付 税 や 目 的 2 税 を 再 配 分 の 税 源 とすることは 地 方 自 治 法 や 地 方 税 法 において 認 められておらず 実 現 には 国 会 での 法 改 正 が 必 要 となる 11 月 : 大 阪 市 で 市 内 24 区 を 再 編 する 区 割 りについて 議 論 する 新 たな 区 移 行 プロジェクト 会 議 が 開 かれ 区 長 らが 4 通 りの 区 割 り 案 を 橋 下 市 長 に 提 案 した 区 割 り 案 は 現 在 の 24 区 を 5 区 か 7 区 に 再 編 するもので 税 収 が 1 2 位 の 中 央 区 と 北 区 を 統 合 する 案 と 分 離 する 案 を 2 案 ずつ 計 4 案 を 作 成 した しかし 会 議 の 委 員 からは 中 央 区 と 北 区 を 統 合 する 2 案 について 税 収 格 差 が 大 きくなりすぎるとの 批 判 が 相 次 いだ 4. 大 阪 都 構 想 の 問 題 点 大 阪 都 構 想 については 以 下 の 3 点 から 問 題 があるとの 指 摘 がなされている それぞれの 問 題 点 について 簡 単 に 解 説 する (1) 地 方 制 度 改 革 の 基 本 原 則 に 反 する 地 方 制 度 改 革 の 基 本 的 理 念 は 地 方 分 権 であり 具 体 的 方 針 は 現 地 総 合 性 補 完 の 原 則 であって 権 限 財 源 事 務 を 住 民 に 近 い 基 礎 自 治 体 へ 置 くことにあると される 大 阪 都 構 想 は これらのものを 住 民 からより 遠 い 団 体 へ 吸 い 上 げるも のであり 地 方 分 権 に 逆 行 する 改 革 であるとの 指 摘 がある 権 限 財 源 事 務 を 都 と 特 別 自 治 区 の 間 でどのように 配 分 するかが 重 要 な 課 題 となる (2) 二 重 行 政 二 元 行 政 について 批 判 される 二 重 行 政 とは 2 つ 以 上 の 自 治 体 が 行 うサービス 等 が 合 計 で 過 剰 に なっている 場 合 であり これについては 各 自 治 体 の 政 策 評 価 相 互 調 整 等 に よって 対 応 が 可 能 との 指 摘 がある 大 阪 における 二 元 行 政 の 克 服 には ま ず 大 阪 における 府 市 協 議 を 進 めることが 重 要 であり 協 議 を 尽 くしてもなお 強 調 できない 場 合 に 新 たな 大 都 市 制 度 の 実 現 が 必 要 との 意 見 もある その 他 広 域 自 治 体 と 基 礎 自 治 体 という 区 分 と 現 状 の 住 民 との 近 接 性 に 基 づく 行 政 サー ビスの 区 分 との 対 応 関 係 をリセットし これらの 議 論 を 整 理 した 上 でなければ 二 重 行 政 問 題 解 決 へのアプローチになり 得 ないとの 指 摘 もある 6

(3) 財 政 問 題 都 と 特 別 自 治 区 の 間 や 各 特 別 自 治 区 の 間 の 財 政 調 整 は 大 きな 課 題 とされ ている 大 阪 都 構 想 では 現 在 大 阪 と 堺 がもつ 固 定 資 産 税 や 法 人 市 民 税 地 方 自 治 税 などのうち 約 4 割 が 大 阪 都 によって 府 域 全 体 の 施 策 に 回 され 残 る 約 6 割 を 各 区 で 配 分 するとしている しかし 大 阪 市 を 24 区 同 士 で 比 べると 人 口 1 人 あたりの 税 収 額 は 約 29 倍 の 開 きがある 住 民 に 占 める 生 活 保 護 受 給 者 の 割 合 は 最 も 高 い 区 と 最 も 低 い 区 で 約 17 倍 もの 差 が 生 じている このため 特 別 自 治 区 の 間 で 財 政 調 整 が 不 十 分 だと 財 政 力 によって 行 政 サービスの 水 準 に 差 が 出 る 一 方 完 全 に 財 政 格 差 を 解 消 すれば 取 り 分 が 減 る 裕 福 な 区 の 反 発 が 考 えられる また 大 阪 都 の 財 政 調 整 制 度 の 参 考 とされる 東 京 都 の 都 区 財 政 調 整 制 度 については 同 制 度 が 求 心 力 を 発 揮 するためには 十 分 な 税 収 額 の 存 在 が 不 可 欠 であり この 条 件 に 欠 ける 場 合 には 遠 心 力 として 作 用 する 可 能 性 が 高 く なるとした 上 で 大 企 業 が 集 中 する 東 京 における 制 度 の 運 用 状 況 が 他 の 地 域 の 参 考 となり 得 るか 疑 問 を 呈 する 見 解 もある その 他 各 特 別 自 治 区 が 議 会 を 設 け 中 核 市 並 みの 大 型 庁 舎 や 各 種 施 設 を 新 設 することとなれば そのコストは 相 当 なものになるだろうとの 指 摘 もある 区 議 会 の 新 設 に 伴 うコスト 増 との 批 判 に 対 して 維 新 の 会 は 都 構 想 がもたらす 行 政 コストの 削 減 効 果 そして 協 力 な 広 域 行 政 の 推 進 による 経 済 再 生 大 阪 都 民 の 所 得 向 上 に 照 らした 場 合 特 別 自 治 区 の 運 営 のために 新 たに 要 するコストなど 無 に 等 しい と 述 べ 大 阪 市 の 解 体 により 公 務 員 の 少 なくとも 2 割 は 削 減 でき 区 の 職 員 が 今 まで 行 っていた 仕 事 を 議 員 が 担 うと 考 えれば 人 数 的 にも 置 き 換 えにすぎないと 考 えるのが 順 当 である などと 反 論 している 5. 今 後 の 課 題 大 阪 都 構 想 においては 大 阪 市 を 廃 止 し 現 在 大 阪 市 を 構 成 している 24 の 行 政 区 を 統 合 して 特 別 自 治 区 へと 再 編 することが 目 玉 施 策 となっている しかし 24 の 行 政 区 には 財 政 格 差 が 存 在 するのが 現 状 であり 再 編 後 の 特 別 自 治 区 にお いて 一 定 水 準 の 行 政 サービスを 提 供 するためには 財 政 格 差 を 是 正 または 縮 小 する 財 政 調 整 制 度 の 構 築 が 不 可 欠 といえる また そうした 財 政 調 整 は 現 在 大 阪 が 抱 える 諸 課 題 を 考 慮 して 適 切 かつ 効 果 的 に 行 われなければならず その 点 で 都 と 特 別 自 治 区 の 間 での 事 務 配 分 との 関 係 も 重 要 になる ここでは どの ような 財 政 調 整 と 事 務 配 分 を 行 えば 大 阪 が 抱 える 問 題 を 解 決 できるのかとい 7

う 観 点 から 大 阪 都 構 想 の 実 現 可 能 性 について 検 討 する 財 政 調 整 大 阪 都 構 想 においてどのような 財 政 調 整 制 度 を 構 築 すべきなのか 東 京 都 の 都 区 財 政 調 整 制 度 との 比 較 や 大 都 市 制 度 推 進 協 議 会 の 財 政 シミュレーション の 検 証 を 通 して 考 察 する (1) 東 京 都 における 財 政 調 整 の 現 状 1 都 区 財 政 調 整 制 度 の 概 要 東 京 都 では 都 と 特 別 区 及 び 特 別 区 相 互 間 の 財 源 の 均 衡 化 特 別 区 の 行 政 の 自 主 的 かつ 計 画 的 な 運 営 の 確 保 を 目 的 として 都 区 財 政 調 整 制 度 が 設 けられて いる その 一 環 として 都 と 特 別 区 及 び 特 別 区 相 互 間 の 財 政 調 整 に 関 する 条 例 に 基 づいて 都 から 特 別 区 に 対 して 特 別 区 財 政 調 整 交 付 金 が 交 付 されている 交 付 金 の 総 額 は 調 整 税 ( 固 定 資 産 税 市 町 村 民 税 法 人 分 特 別 土 地 保 有 税 )に 条 例 で 定 める 割 合 (55%)をかけた 額 となっている また 交 付 金 は 普 通 交 付 金 と 特 別 交 付 金 の 2 種 類 に 分 けられる 普 通 交 付 金 は 基 準 財 政 需 要 額 が 基 準 財 政 収 入 額 を 超 える 特 別 区 に 対 して その 超 える 額 ( 財 源 不 足 分 )を 交 付 する ものである 特 別 交 付 金 は 普 通 交 付 金 の 額 の 算 定 期 日 後 に 生 じた 災 害 等 のた め 特 別 の 財 政 需 要 があり 又 は 財 政 収 入 の 減 少 があることその 他 特 別 の 事 情 が あると 認 められる 特 別 区 に 対 し 当 該 事 情 に 考 慮 して 交 付 するものである 東 京 都 では 普 通 交 付 金 と 特 別 交 付 金 の 額 は 交 付 金 総 額 の 95%と 5%となってい る 2 実 際 の 運 用 都 が 調 整 税 3 税 を 徴 収 し これを 調 整 財 源 として 総 額 の 45%が 都 の 財 源 と され 残 りの 55%が 特 別 区 財 政 調 整 交 付 金 として 特 別 区 に 交 付 される( 都 と 特 別 区 の 調 整 ) 特 別 区 に 配 分 される 財 源 のうち 95%が 普 通 交 付 金 として 5% が 特 別 交 付 金 として 交 付 される( 特 別 区 相 互 間 の 調 整 ) 都 と 特 別 区 の 調 整 が 行 われる 背 景 として 都 と 特 別 区 における 事 務 配 分 税 の 特 例 がある 事 務 配 分 の 特 例 に 関 しては 地 方 自 治 法 第 281 条 の 2 に 規 定 され ており 都 は 市 町 村 が 処 理 する 事 務 のうち 人 口 が 高 度 に 集 中 する 大 都 市 地 域 における 行 政 の 一 体 性 及 び 統 一 性 の 観 点 から 特 別 区 の 存 する 区 域 を 通 じて 8

都 が 一 体 的 に 処 理 することが 必 要 であると 認 められる 事 務 を 処 理 するとされて いる 特 例 となる 主 な 事 務 は 上 水 道 の 整 備 管 理 運 営 公 共 下 水 道 の 整 備 管 理 運 営 消 防 に 関 する 事 務 都 市 計 画 決 定 ( 上 下 水 道 電 気 ガス 供 給 施 設 産 業 廃 棄 物 処 理 施 設 市 場 畜 場 等 関 係 )がある 地 方 税 の 特 例 としては 地 方 税 法 第 734 条 第 735 条 に 規 定 されており 都 は 特 別 区 の 存 する 区 域 におい て 固 定 資 産 税 市 町 村 民 税 法 人 分 特 別 土 地 保 有 税 を 課 するものとし 法 定 外 普 通 税 事 業 所 税 都 市 計 画 税 法 定 外 目 的 税 を 課 することができるとされ ている 固 定 資 産 税 市 町 村 民 税 法 人 分 特 別 土 地 保 有 税 に 関 しては (ア) 特 別 区 相 互 間 において 特 に 税 源 の 偏 在 が 見 られ (イ) 都 と 特 別 区 の 財 源 調 整 を 賄 うに 足 りる 規 模 を 有 し (ウ) 税 の 使 途 が 制 限 されていない 税 を 都 区 財 政 調 整 の 財 源 とするという 理 由 から 特 例 が 置 かれている 事 業 所 税 都 市 計 画 税 に 関 し ては (ア) 事 業 所 税 の 目 的 である 都 市 環 境 の 整 備 事 業 は 広 域 的 な 地 域 を 視 野 に 入 れて 事 業 展 開 することが 必 要 であり (イ) 都 市 計 画 税 の 目 的 である 都 市 計 画 事 業 のかなりの 部 分 を 都 が 実 施 し また 固 定 資 産 税 を 都 が 課 税 しているという 理 由 から 特 例 が 置 かれている (2) 大 都 市 制 度 推 進 協 議 会 の 財 政 シミュレーションの 検 証 財 政 調 整 について 大 阪 府 と 大 阪 市 による 財 政 シミュレーションの 結 果 が 2012 年 9 月 の 第 6 回 大 都 市 制 度 推 進 協 議 会 において 報 告 された ここでは 東 京 都 の 財 政 調 整 制 度 との 比 較 から 財 政 シミュレーションの 妥 当 性 や 問 題 点 に ついて 検 討 する 1 財 政 調 整 交 付 金 の 配 分 基 準 について 財 政 シミュレーションの 前 提 として 提 示 された 交 付 金 の 配 分 基 準 案 について 東 京 都 の 配 分 基 準 と 比 較 し 分 析 する 東 京 都 では 普 通 交 付 金 については 各 特 別 区 の 財 源 不 足 分 に 関 して 交 付 さ れる このため 財 源 超 過 の 特 別 区 には 普 通 交 付 金 は 交 付 されていない また 算 定 の 際 には 財 源 不 足 の 有 無 が 基 準 とされ 具 体 的 な 行 政 サービスの 内 容 につ いてはおよそ 考 慮 されない 特 別 交 付 金 については 臨 時 的 な 財 政 需 要 に 対 し て 交 付 されるため 財 源 の 不 足 超 過 に 関 係 なくすべて 特 別 区 に 交 付 される 大 阪 都 ( 仮 )では 普 通 交 付 金 については 標 準 的 なサービスの 保 障 を 念 頭 に 生 活 保 護 など 具 体 的 な 行 政 サービスの 内 容 を 考 慮 して 交 付 される したが 9

って 必 ずしも 各 特 別 区 の 財 源 不 足 が 解 消 されるわけではない 特 別 交 付 金 に ついては 収 支 差 を 考 慮 して 交 付 され 財 源 不 足 を 補 う 役 割 を 果 たす このた め 財 源 超 過 の 特 別 区 には 交 付 されないこととなる 2 財 政 シミュレーションの 分 析 大 都 市 制 度 推 進 協 議 会 で 提 示 された 4 パターン(A,B,C,D)の 財 政 シミュレーシ ョンについて それぞれ 分 析 する A パターン 調 整 財 源 が 交 付 税 と 普 通 税 3 税 とされている( 東 京 都 は 普 通 税 のみ) また 都 と 特 別 区 の 配 分 比 率 は 33:67( 東 京 都 は 45:55)とされ 普 通 交 付 金 と 特 別 交 付 金 の 配 分 比 率 は 95:5( 東 京 都 と 同 じ)とされている 調 整 財 源 が 普 通 税 3 税 のみであり 事 業 所 税 や 都 市 計 画 税 といった 偏 在 性 の 高 い 税 がそのまま 特 別 区 の 歳 入 となっているため 収 支 差 における 格 差 が 非 常 に 大 きくなっている ま た 収 支 差 を 考 慮 して 交 付 される 特 別 交 付 金 の 割 合 が 5%であるため 十 分 な 調 整 が 行 えないことも 格 差 の 要 因 となっている B パターン 調 整 財 源 都 と 特 別 区 の 配 分 比 率 に 関 しては A パターンと 同 様 である 普 通 交 付 金 と 特 別 交 付 金 の 比 率 が 90:10 とされている 点 で A パターンと 異 なる 偏 在 性 の 高 い 税 によって 収 支 差 における 格 差 が 生 じている 点 は A パターンと 同 様 であるが 一 方 で 特 別 交 付 金 の 比 率 を 10%まで 高 め 収 支 差 の 調 整 をより 充 実 させているため A パターンと 比 べて 格 差 は 小 さくなっているが 依 然 と して 大 きな 格 差 が 残 る C パターン 交 付 金 と 普 通 税 3 税 に 加 えて 目 的 税 2 税 を 調 整 財 源 とし 都 と 特 別 区 の 配 分 比 率 を 29:71 としている 点 で 東 京 都 と 異 なる 普 通 交 付 金 と 特 別 交 付 金 の 比 率 は 東 京 都 と 同 じく 95:5 とされている 偏 在 性 の 高 い 目 的 税 2 税 を 調 整 財 源 に 組 み 入 れることにより 歳 入 格 差 が 大 幅 に 縮 小 している また 都 と 特 別 区 の 配 分 比 率 において 特 別 区 の 比 率 を 高 めたことにより 財 政 調 整 の 効 果 が 大 き くなっており おおむね 収 支 均 衡 を 達 成 している D パターン 調 整 財 源 都 と 特 別 区 の 配 分 比 率 については C パターンと 同 様 である 普 通 10

交 付 金 と 特 別 交 付 金 の 比 率 が 90:10 とされている 点 で C パターンと 異 なる 目 的 税 を 調 整 財 源 にすること 特 別 区 の 配 分 比 率 を 高 めることによって 財 政 調 整 の 効 果 が 大 きくなり 格 差 が 大 幅 に 縮 小 していることは C パターンと 同 様 で ある 加 えて 特 別 交 付 金 の 比 率 を 10%まで 高 めることにより C パターンで はわずかに 残 った 収 支 差 が 解 消 され すべての 特 別 区 で 収 支 均 衡 が 達 成 されて いる 3 問 題 点 D パターンのような 制 度 設 計 をすることで 一 応 すべての 特 別 区 で 収 支 均 衡 を 達 成 し 財 政 格 差 を 解 消 することは 可 能 である しかし このような 制 度 設 計 をすることは 法 律 的 にも 実 質 的 にも 問 題 点 があるといえる 以 下 でそうし た 問 題 点 について 示 す (ア) 法 律 的 な 問 題 点 まず 交 付 税 を 調 整 財 源 にすることは 地 方 自 治 法 上 規 定 されていない 第 282 条 には 固 定 資 産 税 市 町 村 民 税 法 人 分 特 別 土 地 保 有 税 の 収 入 額 の 一 定 割 合 を 特 別 区 財 政 調 整 交 付 金 として 特 別 区 に 対 して 交 付 する と 規 定 され ているおり 交 付 税 は 含 まれていない また 目 的 税 2 税 は 地 方 税 法 でその 課 税 目 的 が 規 定 されており 調 整 財 源 と して 用 いることは 想 定 されていない 地 方 税 法 第 701 条 の 31 では 指 定 都 市 は 都 市 環 境 の 整 備 及 び 改 善 に 関 する 事 業 に 要 する 費 用 に 充 てるため 事 業 所 税 を 課 するものとする と 規 定 され 同 法 第 702 条 では 市 町 村 は 都 市 計 画 法 に 基 づいて 行 う 都 市 計 画 事 業 又 は 土 地 区 画 整 理 法 に 基 づいて 行 う 土 地 区 画 整 理 事 業 に 要 する 費 用 に 充 てるため 都 市 計 画 税 を 課 することができる と 規 定 されており 課 税 目 的 が 法 定 されている (イ) 実 質 的 な 問 題 点 まず 特 別 交 付 金 は 本 来 特 別 の 財 政 需 要 に 対 して 交 付 されるものであり そ れを 収 支 差 の 解 消 に 使 うと 災 害 等 の 特 別 の 財 政 需 要 に 備 えられない 交 付 税 を 調 整 財 源 にした 場 合 形 式 的 とはいえ 特 別 区 の 施 策 が 国 の 財 源 に 依 存 することとなり 地 方 分 権 の 推 進 という 方 向 性 と 相 容 れないといえる 直 接 関 係 のないところではあるが 橋 下 氏 は 地 方 交 付 税 の 廃 止 を 主 張 しており そ 11

の 主 張 との 整 合 性 も 問 題 である 最 も 重 要 かつ 根 本 的 な 問 題 点 が 財 政 調 整 制 度 の 構 築 が 大 阪 が 抱 える 諸 問 題 の 解 決 に 実 際 に 結 びつくのかという 点 である 今 回 のシミュレーションは 財 政 格 差 の 是 正 に 傾 斜 するあまり 実 際 の 施 策 との 関 係 性 という 視 点 を 欠 いて いる 印 象 を 受 ける どのような 財 政 調 整 制 度 が 妥 当 なのか そもそも 財 政 格 差 の 是 正 がどこまで 必 要 なのか 諸 問 題 に 対 する 具 体 的 施 策 を 踏 まえた 上 で 検 討 する 必 要 がある その 意 味 で 事 務 配 分 との 関 係 も 一 つ 重 要 な 論 点 となってく るので 次 項 で 検 討 する 事 務 配 分 大 阪 都 構 想 では 大 阪 を 広 域 自 治 体 としての 都 と 基 礎 自 治 体 である 特 別 区 に 再 編 するため どのような 事 務 配 分 を 行 うかが 重 要 である 事 務 配 分 を 行 うに あたっては 都 構 想 の 目 的 である 二 元 行 政 の 根 絶 との 関 係 財 政 調 整 制 度 との 関 係 そして 何 より 大 阪 が 抱 える 諸 問 題 に 対 する 具 体 的 施 策 との 関 係 を 考 慮 す る 必 要 があるといえる ここでは 具 体 的 な 事 務 分 野 の 分 析 を 踏 まえながら 適 切 な 事 務 配 分 について 考 察 する (1) 大 阪 都 構 想 の 都 市 経 営 ビジョンと 事 務 配 分 の 基 本 原 則 大 阪 都 構 想 推 進 大 綱 において 都 構 想 における 都 市 経 営 ビジョンが 述 べられ ている また 大 阪 都 実 現 のための 推 進 体 制 に 関 して 協 議 の 基 本 原 則 が 定 めら れ その 中 で 事 務 配 分 の 基 本 原 則 が 挙 げられている それらについて 解 説 する 1 都 構 想 における 都 市 経 営 ビジョン 都 市 経 営 ビジョンにおいては 強 い 広 域 自 治 体 と やさしい 基 礎 自 治 体 というテーマが 掲 げられている 強 い 広 域 自 治 体 とは 大 阪 の 安 全 を 保 障 し 経 済 成 長 に 必 要 な 限 りの 強 さであって 広 域 自 治 体 は 大 阪 都 市 圏 全 域 において 戦 略 性 が 必 要 な 事 業 及 び 統 一 性 が 必 要 な 事 業 に 重 点 を 置 くとされている 戦 略 性 が 必 要 な 事 業 としては 大 阪 の 成 長 戦 略 に 関 わる 事 業 の 他 広 域 防 災 機 能 広 域 に 影 響 がある 都 市 計 画 や 拠 点 開 発 鉄 道 及 びニュートラム バス 及 びモノレール 等 交 通 インフラの 整 備 戦 略 的 な 街 づくり 等 である 統 一 性 が 必 要 な 事 業 としては 府 民 生 活 の 安 心 安 全 を 保 障 する 国 民 健 康 保 険 介 護 保 険 及 び 生 活 保 護 の 運 営 消 防 や 警 察 12

道 路 や 河 川 の 管 理 などがある これらの 事 業 を 実 施 する 主 体 は 広 域 自 治 体 に 限 るものではなく 可 能 な 限 り 民 間 で 行 うべきとされている 競 争 原 理 がはたら く 民 間 で 運 営 すれば 合 理 的 な 運 営 投 資 を 期 待 することが 可 能 であり 民 業 を 活 性 化 するとともに 税 金 支 出 を 大 幅 に 削 減 することが 可 能 である 経 営 形 態 を 変 更 すべき 事 業 として 地 下 鉄 及 びニュートラム モノレール バス 水 道 及 び 下 水 等 がある やさしい 基 礎 自 治 体 については 住 民 に 最 も 身 近 な 行 政 課 題 を 扱 うこと から 地 域 住 民 自 らが 積 極 的 に 参 画 決 定 に 関 与 することが 重 要 であり 組 織 としても 住 民 ニーズに 機 動 的 に 対 応 できる 機 動 性 が 必 要 であるとされている 同 時 に 十 分 な 住 民 サービスの 提 供 基 礎 自 治 体 での 意 思 決 定 及 び 権 限 行 使 に は 安 定 した 行 財 政 基 盤 や 人 的 体 制 を 基 礎 とする 組 織 体 制 が 必 要 である 現 在 の 行 政 区 役 所 では 窓 口 業 務 が 中 心 であり 児 童 虐 待 対 応 災 害 時 の 危 機 管 理 生 活 道 路 施 設 の 整 備 福 祉 施 設 の 整 備 福 祉 サービスの 提 供 小 中 学 校 教 育 など の 行 政 サービスは 一 切 提 供 できない あるべき 基 礎 自 治 体 の 規 模 として 一 定 の 水 準 となるのが 中 核 市 の 指 定 要 件 である 人 口 30 万 人 である 中 核 市 が 担 う 事 務 は 住 民 に 密 接 なものばかりで 政 令 指 定 都 市 とは 異 なり 広 域 で 判 断 すべき 事 務 が 存 在 しないことから 基 礎 自 治 体 の 理 想 的 なモデルであるとし 大 阪 にお ける 基 礎 自 治 体 は 規 模 及 び 権 限 の 両 面 において 中 核 市 であるべきとしている 2 事 務 配 分 の 基 本 原 則 大 阪 都 の 所 掌 事 務 は (ア) 大 阪 都 市 圏 広 域 にわたる 事 務 (イ) 成 長 戦 略 産 業 経 済 政 策 (ウ) 警 察 (エ) 消 防 = 大 阪 消 防 庁 (オ) 環 境 エネルギー 政 策 (カ) 災 害 復 旧 広 域 の 危 機 管 理 (キ) 雇 用 対 策 (ク)その 他 の 広 域 で 行 うべき 行 政 事 務 と され 特 別 区 の 所 掌 事 務 は (ア) 住 民 生 活 に 密 着 した 事 務 (イ) 初 等 中 等 教 育 (ウ) 保 健 衛 生 (エ) 福 祉 関 連 (オ) 住 民 安 全 の 危 機 管 理 (カ)その 他 広 域 で 行 わ れないすべての 事 務 とされている また 地 下 鉄 水 道 国 民 健 康 保 険 介 護 保 険 生 活 保 護 は 経 営 形 態 を 変 更 して 行 うとされている さらに 病 院 大 学 港 湾 文 化 図 書 館 学 術 振 興 に 関 しては 都 庁 の 外 部 機 構 としてそれぞれ 地 方 独 立 行 政 法 人 大 阪 病 院 機 構 大 阪 都 公 立 大 学 法 人 大 阪 広 域 水 道 企 業 団 国 民 健 康 保 険 組 合 介 護 保 険 組 合 大 阪 港 湾 局 地 方 独 立 行 政 法 人 大 阪 学 術 振 興 機 構 を 設 置 するとしている 13

(2) 分 析 大 阪 において 都 区 制 度 を 導 入 することが 効 率 的 なのか どのような 事 務 配 分 にすれば 効 率 的 かつ 有 効 なのか 数 値 や 具 体 例 を 用 いた 分 析 を 踏 まえて 考 察 す る 1 東 京 都 区 制 度 との 財 政 効 率 の 比 較 比 較 にあたっては 人 口 1 人 あたりの 歳 出 額 を 用 いる これは ( 歳 出 額 ) ( 人 口 )で 求 めることができる 歳 出 額 としては 単 純 比 較 をするため 公 営 事 業 を 除 いた 普 通 会 計 をベースにし 両 者 の 間 で 差 が 顕 著 な 生 活 保 護 費 を 除 い た 数 値 を 用 いることとする また 両 者 には 交 付 税 の 交 付 団 体 と 不 交 付 団 体 と いう 違 いがあることから サービスの 充 実 度 に 差 があると 考 えられるため 東 京 都 の 財 政 力 指 数 1.16を 大 阪 府 の 財 政 力 指 数 0.76 で 割 った 値 によって 補 正 する まず 大 阪 府 と 東 京 都 での 財 政 効 率 を 比 較 する 大 阪 府 においては 22 年 度 の 人 口 が 886 万 2896 人 普 通 会 計 における 歳 出 が 2 兆 9789 億 円 生 活 保 護 費 が 5248 億 円 となっている これより 人 口 1 人 あたりの 歳 出 ( 補 正 あり)は 42 万 2630 円 となる 一 方 東 京 都 においては 22 年 度 の 人 口 が 1304 万 8873 人 普 通 会 計 における 歳 出 が 6 兆 123 億 円 生 活 保 護 費 が 4969 億 円 となって いる これより 人 口 1 人 あたりの 歳 出 は 42 万 2673 円 となる この 結 果 大 阪 府 と 東 京 都 で 効 率 性 はさほど 変 わらないことがわかる 次 に 都 区 制 度 の 効 率 性 という 観 点 から 大 阪 府 大 阪 市 と 東 京 都 23 区 の 人 口 1 人 あたりの 歳 出 を 比 較 する 大 阪 市 と 23 区 では 事 務 配 分 が 異 なるため こ のような 計 算 を 行 う 大 阪 府 + 大 阪 市 においては 22 年 度 の 人 口 が 886 万 2896 人 +266 万 5314 人 =1152 万 8210 人 普 通 会 計 における 歳 出 が 2 兆 9789 億 円 +1 兆 6412 億 円 =5 兆 2830 億 円 生 活 保 護 費 が 5248 億 円 +2863 億 円 =8111 億 円 となっている これより 人 口 1 人 あたりの 歳 出 ( 補 正 あり)は 44 万 2448 円 となる 一 方 東 京 都 +23 区 においては 22 年 度 の 人 口 が 1304 万 8873 人 +894 万 9000 人 =2199 万 7873 人 歳 出 が 6 兆 123 億 円 +3 兆 740 億 円 =9 兆 863 億 円 生 活 保 護 費 が 4969 億 円 +3386 億 円 =8355 億 円 となっている こ れより 人 口 1 人 あたりの 歳 出 は 37 万 5073 円 となる 以 上 より 都 区 制 度 の 方 が 財 政 効 率 に 優 れていることがわかる 2 大 阪 市 と 他 の 自 治 体 との 効 率 の 比 較 14

大 阪 府 議 会 大 阪 府 域 における 新 たな 大 都 市 制 度 検 討 協 議 会 の 資 料 をもとに 大 阪 市 (および 行 政 区 )と 他 の 自 治 体 の 効 率 を 比 較 する 比 較 にあたっては 人 口 1 人 あたりの 歳 出 に 加 えて 人 口 1 万 人 あたりの 職 員 数 を 用 いる まず 職 員 数 について 比 較 する このとき 公 営 事 業 等 自 治 体 によって 運 営 が 異 なる 分 野 を 除 いて 比 較 する 政 令 指 定 都 市 等 と 人 口 1 万 人 あたりの 職 員 数 を 比 較 すると 23 区 が 71 人 名 古 屋 市 が 76 人 なのに 対 し 大 阪 市 は 106 人 と 突 出 している(ちなみに 大 阪 府 は 94 人 となっており 東 京 都 の 113 人 愛 知 県 の 94 人 と 遜 色 のない 水 準 となっている) 大 阪 市 行 政 区 と 府 内 の 一 般 市 中 核 市 とを 比 較 すると(このとき 政 令 市 中 核 市 一 般 市 における 権 能 の 違 い を 考 慮 して 共 通 する 事 務 のみを 比 較 対 象 とする) 大 阪 市 の 人 口 1 万 人 あたり の 職 員 数 が 59.1 人 と 一 般 市 である 守 口 市 の 46.7 人 中 核 市 である 高 槻 市 の 37.5 人 を 大 きく 上 回 っている また 行 政 区 である 都 島 区 と 一 般 市 である 守 口 市 を 比 較 すると 人 口 1 万 人 あたりの 職 員 数 は 前 者 が 19.8 人 後 者 が 16.5 人 と 行 政 区 の 方 が 職 員 数 が 多 くなっている 場 合 もある この 場 合 大 阪 市 の 本 庁 における 行 政 区 関 連 事 務 の 職 員 数 がそのまま 差 になっている さらに 行 政 コストに 関 して 人 口 1 人 あたりの 歳 出 ( 生 活 保 護 を 除 く)が 23 区 の 30 万 5665 円 名 古 屋 市 の 42 万 854 円 に 対 して 大 阪 市 は 50 万 8345 円 と 突 出 している なかでも 人 件 費 は 23 区 の 7 万 880 円 名 古 屋 市 の 7 万 7213 円 に 対 して 大 阪 市 は 10 万 5708 円 と 多 くなっている 府 内 都 市 と 比 較 す ると 大 阪 市 と 同 じく 政 令 市 である 堺 市 の 人 口 1 人 あたり 歳 出 が 33 万 8292 円 人 件 費 が 6 万 4444 円 となっており 大 阪 市 の 1 人 あたり 歳 出 や 人 件 費 の 大 きさ がわかる 以 上 を 踏 まえると 他 の 自 治 体 に 比 べて 大 阪 市 が 非 効 率 になっているという ことができる 中 でも 職 員 数 や 人 件 費 が 他 の 自 治 体 に 比 べて 多 くなっている 点 は 注 目 すべきである これは 政 令 市 の 権 能 や 事 務 を 担 うことを 通 して 大 阪 市 の 組 織 が 肥 大 化 してしまったためと 考 えられる 特 別 区 への 再 編 は 事 務 や それに 関 わる 人 員 の 整 理 を 通 して 組 織 をスリム 化 するという 意 味 で 有 効 であ ると 思 われる 3 具 体 例 ここからは 具 体 例 を 用 いて 大 阪 都 構 想 の 事 務 配 分 について 分 析 考 察 する 具 体 例 として 大 阪 市 営 地 下 鉄 と 生 活 保 護 を 取 り 上 げる 15

(ア) 大 阪 市 営 地 下 鉄 大 阪 都 構 想 における 一 つの 目 玉 となっているのが 市 営 地 下 鉄 の 民 営 化 であ る 大 阪 市 営 地 下 鉄 は 東 京 メトロに 次 いで 全 国 第 2の 営 業 距 離 を 誇 っており 最 近 では 年 間 約 100 億 円 の 利 益 を 出 している しかし 近 年 は 乗 客 数 が 減 る 一 方 で 6500 億 円 の 建 設 債 務 を 抱 えている そのため 抜 本 的 な 合 理 化 が 必 要 であ り 特 に 職 員 数 と 給 与 の 見 直 しが 課 題 であるといわれている こうした 理 由 か ら 府 市 統 合 本 部 会 議 において 民 営 化 が 議 論 され その 後 地 下 鉄 事 業 民 営 化 基 本 方 針 が 策 定 された ここでは 大 阪 市 営 地 下 鉄 の 現 状 を 民 営 化 が 達 成 さ れた 東 京 地 下 鉄 ( 東 京 メトロ)および 公 営 の 都 営 地 下 鉄 と 比 較 することによっ て 民 営 化 の 必 要 性 を 考 える 施 設 の 整 備 に 関 しては 民 営 化 の 影 響 が 小 さいと 考 えられるため より 影 響 が 出 やすい 運 営 に 焦 点 を 当 てる まず 比 較 に 用 いる 数 値 を 列 挙 する 比 較 には 平 成 22 年 度 の 営 業 収 益 総 路 線 距 離 職 員 数 人 件 費 を 用 いる 大 阪 市 営 地 下 鉄 は 営 業 収 益 が 15140600 万 円 総 路 線 距 離 が 129.9 キロ 職 員 数 が 6901 人 人 件 費 が 5058200 万 円 と なっている 東 京 メトロは 営 業 収 益 が 37760000 万 円 総 路 線 距 離 が 195.1 キロ 職 員 数 が 8519 人 人 件 費 が 1394500 万 円 となっている 都 営 地 下 鉄 は 営 業 収 益 が 13023700 万 円 総 路 線 距 離 が 109 キロ 職 員 数 が 3558 人 人 件 費 が 3366900 万 円 となっている これらの 数 値 をもとに 職 員 1 人 あたりの 営 業 収 益 路 線 距 離 1 キロあたり の 職 員 数 人 件 費 をそれぞれ 算 出 し 運 営 の 効 率 性 と 収 益 性 を 比 較 する 大 阪 市 営 地 下 鉄 の 場 合 職 員 1 人 あたりの 営 業 収 益 が 2194 万 円 路 線 距 離 1 キロあ たりの 職 員 数 が 53.1 人 人 件 費 が 38939 万 円 となっている 東 京 メトロの 場 合 職 員 1 人 あたりの 営 業 収 益 が 4432 万 円 路 線 距 離 1 キロあたりの 職 員 数 が 43.7 人 人 件 費 が 7148 万 円 となっている 都 営 地 下 鉄 の 場 合 職 員 1 人 あたりの 営 業 収 益 が 3660 万 円 路 線 距 離 1 キロあたりの 職 員 数 が 32.6 人 人 件 費 が 30889 万 円 となっている 以 上 の 結 果 より 大 阪 市 営 地 下 鉄 は 職 員 1 人 あたりの 営 業 収 益 の 低 さが 顕 著 であり また 路 線 距 離 1 キロあたりの 職 員 数 人 件 費 が 最 も 多 くなってい ることがわかる 1 日 あたりの 利 用 者 数 が 大 阪 市 営 地 下 鉄 のおよそ 228 万 人 に 対 し 東 京 メトロがおよそ 622 万 人 となっていることを 踏 まえると 大 阪 市 営 地 下 鉄 の 非 効 率 性 は 明 らかである 逆 に 路 線 距 離 1 キロあたりの 人 件 費 に 関 して 東 京 メトロが 傑 出 して 低 く 効 率 性 の 高 さがうかがえる このように 16

大 阪 市 営 地 下 鉄 は 民 営 化 された 東 京 メトロのみならず 同 じ 公 営 の 都 営 地 下 鉄 と 比 べても 効 率 性 収 益 性 で 劣 っており 運 営 に 問 題 があるといえる なかで も 職 員 数 が 突 出 して 多 いことが 効 率 性 収 益 性 の 向 上 の 原 因 になっている と 考 えられる その 意 味 で 東 京 メトロの 例 からも 明 らかなように 民 営 化 に よる 運 営 の 合 理 化 は 一 つの 有 効 な 方 法 であるといえる もっとも 施 設 の 整 備 等 は 政 府 や 自 治 体 からの 出 資 も 必 要 であるため 民 営 化 は 運 営 面 に 限 って 行 う のが 得 策 であるように 思 われる (イ) 生 活 保 護 大 阪 は 生 活 保 護 の 受 給 者 数 が 全 国 でもトップクラスであり 早 急 な 対 応 が 求 められている ここでは 生 活 保 護 問 題 への 対 応 という 観 点 から 大 阪 都 構 想 における 事 務 配 分 のあり 方 を 考 える まず 大 阪 の 生 活 保 護 の 現 状 について 分 析 する 大 阪 府 の 生 活 保 護 率 は 平 成 24 年 時 点 で 3.39%となっており 全 国 平 均 の 1.64%を 大 きく 上 回 っている 都 道 府 県 政 令 市 中 核 市 別 で 見 ても 大 阪 府 と 大 阪 市 が 全 国 ワースト 堺 市 と 東 大 阪 市 も 全 国 的 に 高 い 水 準 となっている 大 阪 府 内 市 町 村 について 見 ると 全 国 平 均 の 1.64%に 対 して 大 阪 市 が 5.72% 門 真 市 が 5.07% 東 大 阪 市 が 4.13% 守 口 市 が 3.74%と 政 令 市 中 核 市 一 般 市 の 区 別 に 関 係 なく 保 護 率 が 高 くな っている 大 阪 における 生 活 保 護 問 題 については 大 阪 市 の 現 状 が 注 目 される 傾 向 にあるが 大 阪 府 全 体 としても 生 活 保 護 問 題 が 深 刻 化 しているといえる 次 に 大 阪 市 の 行 政 区 別 に 生 活 保 護 の 状 況 を 分 析 する 行 政 区 別 に 見 ると 西 成 区 が 235% 浪 速 区 が 100.4% 生 野 区 が 73.9%と 高 い 水 準 にあるのに 対 し 福 島 区 が 14.4% 西 区 が 17.9% 天 王 寺 区 が 22.8%と 低 い 水 準 となっており( 単 位 %は 千 分 率 ) 行 政 区 によって 状 況 が 異 なっていることがわかる 高 齢 化 率 を 見 ると 西 成 区 が 34.8% 生 野 区 が 27.4%でワースト 1,2 位 となっている 一 方 福 島 区 が 19.0% 天 王 寺 区 が 18.5% 西 区 が 16.1%と 低 くなっている 完 全 失 業 率 は 西 成 区 が 22.4% 浪 速 区 が 13.0%と 高 く 福 島 区 が 8.4% 西 区 が 7.9% と 相 対 的 に 低 くなっている これらを 踏 まえると 生 活 保 護 受 給 者 の 多 い 行 政 区 では 高 齢 化 や 雇 用 の 悪 化 という 問 題 が 顕 著 になっていると 言 える 以 上 の 分 析 より 生 活 保 護 問 題 は 生 活 保 護 の 支 給 そのものだけでなく 背 景 にある 高 齢 化 や 雇 用 の 悪 化 といった 問 題 への 一 体 的 な 取 り 組 みが 必 要 である 生 活 保 護 の 本 来 のあり 方 は 最 後 のセーフティーネット であるが そうした 17

あり 方 とはほど 遠 いのが 現 状 である そのため 生 活 保 護 の 支 給 にいたるプロ セスを 見 直 す 必 要 がある 具 体 的 には 特 別 区 市 町 村 から 都 という 二 段 階 のプ ロセスを 設 ける まず 生 活 保 護 の 支 給 は 都 が 一 括 して 行 う これは 生 活 保 護 が 大 阪 全 体 の 問 題 であり 広 域 的 な 観 点 から 判 断 を 一 本 化 するためである 一 方 特 別 区 市 町 村 は 支 給 自 体 を 行 わず それぞれで 事 前 の 救 済 措 置 を 行 う 自 治 体 がそれぞれの 状 況 に 応 じて 独 自 の 措 置 がとれるよう 福 祉 事 務 所 の 裁 量 権 限 を 拡 大 する そして 事 前 の 救 済 措 置 を 受 けることを 生 活 保 護 受 給 の 要 件 とし できる 限 り 事 前 措 置 の 段 階 で 解 決 を 図 る 生 活 保 護 に 係 る 組 織 を 分 ける ことは 効 率 性 の 観 点 からは 問 題 があるが 生 活 保 護 問 題 の 根 本 的 な 解 決 には 有 効 ではあると 考 える 6. おわりに 大 阪 都 構 想 の 概 要 や 問 題 点 課 題 について 研 究 してきたが まだ 構 想 の 域 を 出 ておらず 実 現 には 財 政 調 整 や 事 務 配 分 をはじめとする 具 体 的 な 制 度 設 計 が 必 要 であるという 印 象 を 受 けた 東 京 都 の 都 区 制 度 は 先 例 として 参 考 になる 部 分 も 多 いが 大 阪 と 東 京 では 税 収 など 異 なる 要 素 も 多 い したがって 大 阪 の 実 情 を 踏 まえた 独 自 の 制 度 設 計 を 行 わなければならない また 大 阪 市 を 特 別 区 に 再 編 する 際 には 現 在 の 24 行 政 区 の 実 情 がそれぞれことなっていることを 考 慮 し それらを 反 映 した 区 割 り 財 政 調 整 事 務 配 分 をする 必 要 がある こ のとき 再 編 後 の 特 別 区 が 基 礎 自 治 体 として 機 能 するように 財 源 と 権 限 を 保 障 することも 必 要 といえる こうした 実 質 的 な 課 題 に 加 えて 地 方 自 治 法 や 地 方 税 法 をはじめとする 現 行 法 を 多 数 改 正 するという 課 題 も 生 じる 現 行 法 は 都 道 府 県 や 市 町 村 の 事 務 配 分 を 細 かく 規 定 してあり 自 治 体 の 実 情 に 応 じた 柔 軟 な 制 度 設 計 を 妨 げているという 見 方 ができる このため 大 阪 都 構 想 実 現 の 過 程 で 現 行 法 の 改 正 等 が 行 われば 今 後 他 の 自 治 体 が 改 革 を 行 う 端 緒 にもなりう る 大 阪 都 構 想 は 地 方 分 権 という 時 代 の 潮 流 を 示 す 画 期 的 な 試 みであるため 今 後 も 動 向 に 注 目 していく 必 要 がある 参 考 文 献 橋 下 徹 堺 屋 太 一 体 制 維 新 大 阪 都 文 春 新 書 2011 年 上 山 信 一 公 共 経 営 の 再 構 築 大 阪 から 日 本 を 変 える 日 経 BP 社 2012 年 大 阪 維 新 の 会 大 阪 都 構 想 推 進 大 綱 18

地 方 自 治 法 地 方 税 法 大 都 市 地 域 における 特 別 区 の 設 置 に 関 する 法 律 大 阪 にふさわしい 大 都 市 制 度 推 進 協 議 会 ホームページ http://www.city.osaka.lg.jp/toshiseidokaikakushitsu/page/0000167139.html 国 立 国 会 図 書 館 デジタル 化 資 料 大 阪 都 構 想 について http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3485923_po_0740.pdf?contentno =1 特 別 区 長 会 事 務 局 都 区 制 度 に 関 する 参 考 資 料 http://www.soumu.go.jp/main_content/000151655.pdf 大 阪 府 統 計 年 鑑 http://www.pref.osaka.jp/toukei/nenkan/index.html 東 京 都 の 統 計 http://www.toukei.metro.tokyo.jp/tnenkan/tn-index.htm 大 阪 府 / 普 通 会 計 決 算 の 推 移 http://www.pref.osaka.jp/zaisei/joukyou/04hutsuu.html 平 成 22 年 度 東 京 都 特 別 区 普 通 会 計 決 算 の 概 要 http://www.metro.tokyo.jp/inet/keikaku/2011/09/data/70l92100.pdf 平 成 22 年 度 大 阪 市 普 通 会 計 決 算 http://www.city.osaka.lg.jp/zaisei/page/0000140238.html 平 成 22 年 度 堺 市 普 通 会 計 決 算 http://www.city.sakai.lg.jp/shisei/zaisei/yosan_kessan_shushj/kessan/kessan gaiyo_h22.html 愛 知 県 統 計 年 鑑 http://www.pref.aichi.jp/0000038729.html 名 古 屋 市 決 算 カード( 普 通 会 計 ) http://www.city.nagoya.jp/zaisei/page/0000012211.html 平 成 22 年 度 地 方 財 政 統 計 年 報 http://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/toukei22.html 地 方 公 共 団 体 別 職 員 数 の 状 況 http://www.soumu.go.jp/iken/pdf/kazu_04.pdf 大 阪 市 / 生 活 保 護 の 適 正 化 http://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000086801.html 19