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(1) 率 等 一 覧 ( 平 成 26 年 度 ) 目 課 客 体 及 び 納 義 務 者 課 標 準 及 び 率 法 内 に 住 所 を 有 する ( 均 等 割 所 得 割 ) 内 に 事 務 所 事 業 所 又 は 家 屋 敷 を 有 する で 内 に 住 所 を 有 し ないもの( 均 等

は し が き

平成22年度

市 町 村 税 の 概 況 市 町 村 税 の 概 況 は 平 成 25 年 度 地 方 財 政 状 況 調 査 平 成 26 年 度 市 町 村 税 の 課 税 状 況 等 の 調 及 び 平 成 26 年 度 固 定 資 産 の 価 格 等 の 概 要 調 書 等 報 告 書 等 の 資 料 に



平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

課 税 ベ ー ス の 拡 大 等 : - 租 税 特 別 措 置 の 見 直 し ( 後 掲 ) - 減 価 償 却 の 見 直 し ( 建 物 附 属 設 備 構 築 物 の 償 却 方 法 を 定 額 法 に 一 本 化 ) - 欠 損 金 繰 越 控 除 の 更 な る 見 直 し ( 大

第5回法人課税ディスカッショングループ 法D5-4

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空 き 家 を 売 却 した 場 合 の,000 万 円 控 除 特 例 の 創 設 被 相 続 人 が 住 んでいた 家 屋 及 びその 敷 地 を 相 続 があった 日 から 年 を 経 過 する 年 の 月 日 までに 耐 震 工 事 をしてから あるいは 家 を 除 却 し てから 売 却

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

40 総 論 41 法 人 課 税 01 租 税 法 概 論 ( 4001 ) 02 税 制 の 動 向 ( 4002 ) 91 事 例 研 究 ( 4091 ) 99 その 他 ( 4099 ) 01 法 人 税 ( 4101 ) 3. 税 務 官 庁 の 組 織 4. 不 服 申 立 て 税 務

6-1 第 6 章 ストック オプション 会 計 設 例 1 基 本 的 処 理 Check! 1. 費 用 の 計 上 ( 1 年 度 ) 2. 費 用 の 計 上 ( 2 年 度 )- 権 利 不 確 定 による 失 効 見 積 数 の 変 動 - 3. 費 用 の 計 上 ( 3 年 度 )-

(Microsoft Word - \220\340\226\276\217\221.doc)

も く じ 1 税 源 移 譲 1 2 何 が 変 わったのか 改 正 の 3 つ の ポイント ポイント1 国 から 地 方 へ 3 兆 円 規 模 の 税 源 が 移 譲 される 2 ポイント2 個 人 住 民 税 の 税 率 構 造 が 一 律 10%に 変 わる 3 ポイント3 個 々の 納

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

情 報 通 信 機 器 等 に 係 る 繰 越 税 額 控 除 限 度 超 過 額 の 計 算 上 控 除 される 金 額 に 関 する 明 細 書 ( 付 表 ) 政 党 等 寄 附 金 特 別 控 除 額 の 計 算 明 細 書 国 庫 補 助 金 等 の 総 収 入 金 額 不 算 入 に 関

などは 別 の 事 業 所 とせず その 高 等 学 校 に 含 めて 調 査 した 5 調 査 事 項 単 独 事 業 所 調 査 票 全 産 業 共 通 事 項 ( 単 独 事 業 所 ) ア 名 称 及 び 電 話 番 号 イ 所 在 地 ウ 経 営 組 織 ( 協 同 組 合 においては 協

1 ガス 供 給 業 を 行 う 法 人 の 事 業 税 の 課 税 について ガス 供 給 業 を 行 う 法 人 は 収 入 金 額 を 課 税 標 準 として 収 入 割 の 申 告 となります ( 法 72 条 の2 72 条 の 12 第 2 号 ) ガス 供 給 業 とその 他 の 事

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Microsoft Word - 4 家計基準

Taro-契約条項(全部)


Microsoft Word - 公表資料(H22).doc

(Microsoft Word - \220\305\220\247\211\374\220\263.doc)

1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

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国税連携ファイル記録項目一覧


貸 借 対 照 表 内 訳 表 212 年 3 月 31 日 現 在 公 益 財 団 法 人 神 奈 川 県 公 園 協 会 科 目 公 益 目 的 事 業 会 計 収 益 事 業 等 会 計 法 人 会 計 内 部 取 引 消 去 合 計 Ⅰ 資 産 の 部 1. 流 動 資 産 現 金 預 金

基 準 地 価 格 3 年 に1 度 審 議 直 近 ではH23 年 12 月 に 審 議 土 地 評 価 替 えの 流 れと 固 定 資 産 評 価 審 議 会 基 準 地 とは 土 地 評 価 の 水 準 と 市 町 村 間 の 均 衡 を 確 保 するための 指 標 となるものであり 各 市

( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 H H H5.4.1 ( 参 考 値 ) 97.1 H H H H5.4.1 H H5.4.1 ( 参 考

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目 次 高 山 市 連 結 財 務 諸 表 について 1 連 結 貸 借 対 照 表 2 連 結 行 政 コスト 計 算 書 4 連 結 純 資 産 変 動 計 算 書 6 連 結 資 金 収 支 計 算 書 7

(5) 給 与 改 定 の 状 況 事 委 員 会 の 設 置 なし 1 月 例 給 事 委 員 会 の 勧 告 民 間 給 与 公 務 員 給 与 較 差 勧 告 A B A-B ( 改 定 率 ) 給 与 改 定 率 ( 参 考 ) 国 の 改 定 率 24 年 度 円 円 円 円 ( ) 改

入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

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16 日本学生支援機構

新ひだか町住宅新築リフォーム等緊急支援補助金交付要綱

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (5 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 区 類 団 府 分 似 体 平 均 年 齢

(2) 支 状 況 保 育 所 ( 定 員 60 人 以 上 ) 支 状 況 は 次 とおりです 1 総 入 構 成 比 は 割 合 が88.1% 活 動 外 入 が2.1% 特 別 入 が9.8%でした 2 構 成 比 は 運 営 費 入 が80.1% 経 常 経 費 補 助 金 入 が17.8%

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PowerPoint プレゼンテーション

公表表紙

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別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

定 性 的 情 報 財 務 諸 表 等 1. 連 結 経 営 成 績 に 関 する 定 性 的 情 報 当 第 3 四 半 期 連 結 累 計 期 間 の 業 績 は 売 上 高 につきましては 前 年 同 四 半 期 累 計 期 間 比 15.1% 減 少 の 454 億 27 百 万 円 となり

1. 売 上 高 と 利 益 の 状 況 (つづき) 売 上 高 営 業 利 益 率 は1.9%( 前 年 度 差.2%ポイント 上 昇 ) 売 上 高 経 常 利 益 率 は2.6%( 同.3% ポイント 上 昇 ) 売 上 高 当 期 純 利 益 率 は1.%( 同 1.%ポイント 上 昇 )

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

受 託 工 事 費 一 般 管 理 費 何 地 区 給 料 手 当 賞 与 引 当 金 繰 入 額 賃 金 報 酬 法 定 福 利 費 退 職 給 付 費 備 消 品 費 厚 生 福 利 費 報 償 費 旅 費 被 服 費 光 熱 水 費 燃 料 費 食 糧 費 印 刷 製 本 費 測 量 調 査

3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与 月 額

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

Microsoft Word )40期決算公開用.doc

18 国立高等専門学校機構


Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

Microsoft Word sozei-sample1.doc

10 期 末 現 在 の 資 本 金 等 の 額 次 に 掲 げる 法 人 の 区 分 ごとに それぞれに 定 める 金 額 を 記 載 します 連 結 申 告 法 人 以 外 の 法 人 ( に 掲 げる 法 人 を 除 きます ) 法 第 292 条 第 1 項 第 4 号 の5イに 定 める

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Microsoft Word 消費税HP(案)

03 平成28年度文部科学省税制改正要望事項

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

目 改 正 項 目 軽 自 動 車 率 の 引 上 げ 〇 国 及 び 地 方 を 通 じた 自 動 車 関 連 制 の 見 直 しに 伴 い 軽 自 動 車 の 標 準 率 が 次 のとおり 引 き 上 げられます 車 種 区 分 引 上 げ 幅 50cc 以 下 1,000 円 2,000 円

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別 表 1 土 地 建 物 提 案 型 の 供 給 計 画 に 関 する 評 価 項 目 と 評 価 点 数 表 項 目 区 分 評 価 内 容 と 点 数 一 般 評 価 項 目 立 地 条 件 (1) 交 通 利 便 性 ( 徒 歩 =80m/1 分 ) 25 (2) 生 活 利 便


公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

は 共 有 名 義 )で 所 有 権 保 存 登 記 又 は 所 有 権 移 転 登 記 を された も の で あ る こと (3) 居 室 便 所 台 所 及 び 風 呂 を 備 え 居 住 の ために 使 用 す る 部 分 の 延 べ 床 面 積 が 5 0 平 方 メ ー ト ル 以 上

所令要綱

Microsoft PowerPoint - 基金制度

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

Microsoft Word - ★HP版平成27年度検査の結果

4 調 査 の 対 話 内 容 (1) 調 査 対 象 財 産 の 土 地 建 物 等 を 活 用 して 展 開 できる 事 業 のアイディアをお 聞 かせく ださい 事 業 アイディアには, 次 の 可 能 性 も 含 めて 提 案 をお 願 いします ア 地 域 の 活 性 化 と 様 々な 世

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

Microsoft Word 第1章 定款.doc

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 135,6 2 級 185,8 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制 措 置 を 行 う 前 のものである 3 級

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(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

m07 北見工業大学 様式①

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就 業 規 則 ( 福 利 厚 生 ) 第 章 福 利 厚 生 ( 死 亡 弔 慰 金 等 ) 第 条 法 人 が 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 民 間 社 会 福 祉 施 設 等 職 員 共 済 規 程 に 基 づき 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 との 間 において 締 結 す

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

Microsoft Word - 奨学金相談Q&A.rtf

スライド 1

1 特 別 会 計 財 務 書 類 の 検 査 特 別 会 計 に 関 する 法 律 ( 平 成 19 年 法 律 第 23 号 以 下 法 という ) 第 19 条 第 1 項 の 規 定 に 基 づき 所 管 大 臣 は 毎 会 計 年 度 その 管 理 する 特 別 会 計 について 資 産

1 はじめに 財 政 の 役 割 資 源 配 分 ( 公 共 財 供 給 ) 所 得 再 分 配 経 済 安 定 化 ( 景 気 調 整 ) 地 方 自 治 体 の 役 割 は 資 源 配 分 ( 公 共 財 の 安 定 供 給 )とされる ( 所 得 再 分 配 や 経 済 安 定 化 は 国 の

[ 組 合 員 期 間 等 の 特 例 ] 組 合 員 期 間 等 については 年 齢 職 種 などにより 過 去 の 制 度 からの 経 過 措 置 が 設 けられ ており 被 用 者 年 制 度 の 加 入 期 間 ( 各 共 済 組 合 の 組 合 員 期 間 など)については 生 年 月 日

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国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

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法 人 等 に 対 する 課 税 際 課 税 原 則 の 帰 属 主 義 への 見 直 しのポイント 総 合 主 義 から 帰 属 主 義 への 移 行 法 人 及 び 非 居 住 者 ( 法 人 等 )に 対 する 課 税 原 則 について 従 来 のいわゆる 総 合 主 義 を 改 め OECD

第316回取締役会議案

Transcription:

1994 年 中 国 分 税 制 改 革 のなかでの 間 接 税 改 革 中 国 産 業 連 関 表 による 間 接 税 収 入 の 推 計 と 評 価 申 雪 梅 長 谷 部 勇 一 はじめに 中 国 では 1994 年 に, 税 法 の 統 一, 公 平 な 税 負 担, 税 制 の 簡 素 化, 中 央 政 府 と 地 方 政 府 間 の 合 理 的 分 権, 財 政 収 入 の 保 証 など 社 会 主 義 市 場 経 済 の 要 求 に 合 う 税 制 システム 創 りを 掲 げて 分 税 制 改 革 が 行 われた 1). 本 論 文 は,その 中 でも 主 要 内 容 である 間 接 税 ( 産 品 税, 増 値 税, 営 業 税, 消 費 税 ) 改 革 を 取 り 上 げて, 改 革 の 内 容 と その 及 ぼす 経 済 的 影 響 を 明 らかにした 上 で, 間 接 税 改 革 の 意 義 について 検 討 することを 目 的 と する. 分 税 制 改 革 前 後 の 税 収 の 変 化 を 見 てみると, 2) 図 1 から 見 られるように, 増 値 税 課 税 範 囲 が 1)1994 年 の 分 税 制 改 革 の 中 の 工 商 税 改 革 は 流 転 税 改 革 [ 分 税 制 後 の 流 転 税 は 国 内 企 業 だけでは なく 外 資 企 業 にも 適 用 できるようになり, 増 値 税 は 生 産, 卸 売 り, 輸 入 などサービス 以 外 はすべて の 産 業 に 課 税 するようになった], 企 業 所 得 税 改 革 ( 法 人 税 改 革 )[ 企 業 形 態 にかかわらず 内 資 企 業 を 統 一 して 33%の 比 例 税 率 を 課 税 する,そして 国 有 企 業 が 分 税 制 前 所 得 税 課 税 前 の 貸 付 金 の 返 済 など 認 めなくなった, 前 の 55%の 実 効 税 率 に 比 べてか なり 低 い 税 率 になった], 個 人 所 得 税 改 革 [ 個 人 所 得 税, 個 人 収 入 調 節 税,そして 都 市 部 と 田 舎 の 個 人 工 商 業 者 の 所 得 税 を 合 併 して 統 一 の 個 人 所 得 税 制 を 創 った], 他 の 税 種 改 革 [ 土 地 増 値 税, 資 源 税, 都 市 維 持 建 設 税 など 新 設 するようになった]など の 税 収 徴 収 制 度 改 革 を 主 要 内 容 とする.その 中 で も 流 転 税 ( 改 革 後 - 増 値 税, 消 費 税, 営 業 税 からなっ ている)が 中 国 税 制 構 造 の 中 で 主 要 な 構 成 部 分 で あると 明 記 している. 2) 増 値 税 は 中 国 の 付 加 価 値 税. 広 がって 税 収 増 をもたらし, 営 業 税 3) は 分 税 制 改 革 直 後 に 少 し 減 少 し,その 後 は 順 調 に 伸 び, 消 費 税 も 企 業 所 得 税 に 次 ぐ 大 きな 税 目 として 成 長 した. 直 接 税 4) の 中 では 企 業 所 得 税 ( 法 人 税 )が 企 業 形 態 に 関 わらず 差 別 を 無 くして 国 内 企 業 を 統 合 して 営 業 税 の 次 に 大 きな 税 目 となっ たが, 分 税 制 によって 完 全 な 間 接 税 中 心 の 税 制 システムになっていると 言 えよう 5) ( 図 1 を 参 照 ). Mun-Heng TOH, Qian Lin [2003]で は 1994 年 分 税 制 改 革 でされた 間 接 税 ( 産 品 税, 増 値 税, 営 業 税, 消 費 税 な ど), 直 接 税 ( 企 業 所 得 税, 個 人 所 得 税 など), 補 助 金 などの 制 度 変 更 を 広 く 取 り 入 れたモデルを 設 定 した 上 で,CGE モ デルを 利 用 して, 改 革 前 の 1992 年 をベースと し 改 革 後 の 厚 生 変 化 の 比 較 分 析 を 行 った 本 格 的 な 研 究 である.しかし,この 時 期 は 国 家 計 画 価 格 から 市 場 価 格 への 移 転 し 始 めた 時 期 で 価 格 が 見 えざる 手 の 役 割 を 完 全 に 果 たしているとは 言 いがたく,ベース 年 の 経 済 が 一 般 均 衡 であると いう 条 件 のもとですべての 計 算 を 行 なわざる を 得 ないという CGE モデル 固 有 の 問 題 点 のほ か, 間 接 税, 直 接 税, 補 助 金 などの 改 革 の 影 響 3) 営 業 税 はサービス 業 に 対 する 中 国 の 売 上 税. 4) 直 接 税 である 中 国 の 所 得 税 は 企 業 所 得 税 ( 法 人 税 )と 個 人 所 得 税 からなっている. 5) 分 税 制 前 までは 所 得 税 と 間 接 税 二 本 立 てで あったが 分 税 制 改 革 後 は 間 接 税 一 本 立 ての 方 向 に 進 んだ.

104 (286) 横 浜 国 際 社 会 科 学 研 究 第 15 巻 第 3 号 (2010 年 9 月 ) 出 所 ; 中 国 税 收 咨 询 网 より 作 者 作 成 図 1 中 国 各 税 収 の 推 移 を 全 て 取 り 入 れているものの, 個 々の 税 制 改 革 が 及 ぼす 直 接 的 な 経 済 的 影 響 は 逆 にわかりにく くなっている.そして 分 税 制 前 の 比 較 年 6) の 税 制 を 具 体 的 にどの 年 にして 税 率 をどのように 算 定 したのかの 具 体 的 説 明 が 欠 けている 等 の 問 題 点 も 有 している. そこで 本 論 文 では, 分 税 制 の 主 要 改 革 でもあ る 間 接 税 ( 流 転 税 ) 改 革 に 焦 点 をあて, 間 接 税 制 度 が 具 体 的 にどのように 変 化 し,どういう 特 徴 があるのか,そして 各 産 業 部 門 の 税 額 にどの ような 影 響 が 及 ぼされ,それが 産 業 別 価 格 にど 6) 分 税 制 前 の 税 制 は 毎 年 のように 産 品 税 の 課 税 品 目 を 減 らして 増 値 税 の 課 税 品 目 を 増 やす 方 向 に 改 革 が 行 われてどの 年 を 選 択 したかによって 推 計 結 果 が 大 きく 異 なることとなる. 又,この 論 分 では 分 税 制 前 の 産 品 税 と 増 値 税 は 内 税 方 式 で, 分 税 制 後 は 外 税 方 式 に 変 わり,さらに 分 税 制 前 の 増 値 税 はインボイス 方 式 と 帳 簿 方 式 を 併 用 していた ことに 留 意 していない. のように 変 化 を 与 えたのか,などについて 産 業 連 関 表 による 価 格 分 析 を 応 用 することにより 明 らかにしたい. 中 国 の 増 値 税 は, 後 に 詳 しく 見 るように 通 常 の 産 品 ( 物 品 )を 課 税 ベースとし, 非 物 的 (サービス) 部 門 は 売 上 税 タイプの 営 業 税 の 方 式 を 採 用 しており,ロシア 東 欧 で 導 入 された EU 型 付 加 価 値 税 とは 異 なった 特 徴 を 有 している. このような 特 徴 を 持 つ 中 国 型 付 加 価 値 税 シス テムが, 価 格 変 化 を 通 じてどのような 経 済 的 影 響 を 与 えているか,という 点 に 焦 点 を 当 てた 検 討 を 加 える. 1. 改 革 前 の 間 接 税 中 国 では 分 税 制 前 までは, 生 産 段 階 で 中 国 の 売 上 税 の 産 品 税 或 いは 中 国 の 付 加 価 値 税 の 増 値 税 を 徴 収 し, 卸 売 り 段 階 で 付 加 価 値 額 に 対 して 中 国 特 殊 の 営 業 税 を 徴 収 し, 小 売 段 階 では 売 上 高 に 営 業 税 を 徴 収 していた.

1994 年 中 国 分 税 制 改 革 のなかでの 間 接 税 改 革 ( 申 長 谷 部 ) (287) 105 表 1 主 要 間 接 税 の 税 額 単 位 : 億 元 産 品 税 増 値 税 営 業 税 主 要 間 接 税 の 中 の 産 品 税 比 率 増 値 税 比 率 営 業 税 比 率 1985 年 594.6 147.7 211.07 62.4% 15.5% 22.1% 1986 年 546.59 232.19 261.07 52.6% 22.3% 25.1% 1987 年 533.26 254.2 302 48.9% 23.3% 27.7% 1988 年 480.93 384.37 397.92 38.1% 30.4% 31.5% 1989 年 530.28 430.83 487.3 36.6% 29.7% 33.6% 1990 年 580.93 400 515.75 38.8% 26.7% 34.5% 1991 年 629.41 406.36 564 39.3% 25.4% 35.3% 1992 年 693.25 705.93 658.67 33.7% 34.3% 32.0% 1993 年 821.42 1081.48 966.09 28.6% 37.7% 33.7% 1994 年 2308.34 670.02 出 所 : 中 国 財 政 年 鑑 1995 年 A. 増 値 税 ( 中 国 の 付 加 価 値 税 ) 増 値 税 は 第 二 の 利 改 税 7) と 同 時 に 1984 年 か ら 導 入 された. 当 時 の 増 値 税 は 二 つの 方 式 を 採 用 していた. 一 つは 税 額 控 除 方 式 8) で,もう 一 つは 仕 入 控 除 方 式 9) である.この 時 期 の 増 値 税 は 機 械, 部 品, 自 動 車, 農 業 器 具, 自 転 車, ミ シン, 扇 風 機, 薬 品 ( 漢 方 を 除 く)な ど 12 品 目 に 課 税 し, 税 率 も 多 様 で 6 16% の 税 率 を 適 用 して 内 税 方 式 10) を 適 用 していた.80 年 代 は, 増 値 税 と 産 品 税 では 課 税 品 目 が 違 い, 互 い に 補 う 形 になっていた. 増 値 税 も 生 産 段 階 に 課 税 を 行 い, 産 品 税 を 補 う 個 別 消 費 税 的 性 格 が 強 かった. 7) 中 国 は 国 営 企 業 に 対 し て 1983 年 の 第 一 次 利 改 税 前 までは 主 に 利 潤 の 徴 収 を 行 っていたが, 1983 年 の 第 一 次 利 改 税 からは 税 と 利 潤 両 方 を 徴 収 するようになり,1984 年 の 第 二 次 利 改 税 からは 税 だけを 徴 収 するように 段 々 改 革 が 行 われた. 8) 納 付 す べ き 税 額 = 産 品 売 上 額 * 税 率 - 仕 入 税 額. 9) 納 付 すべき 税 額 =( 産 品 売 上 額 - 仕 入 れ 税 額 ) * 税 率 10) 付 加 価 値 税 の 税 率 を 外 税 ( 純 税 率 )と 内 税 ( 粗 税 率 )という 分 け 方 をするが, 内 税 とは 課 税 後 の 商 品 価 格 に 税 を 含 んだ 総 合 価 格 に 対 する 税 の 割 合 で, 外 税 とは 税 を 含 まない 商 品 価 格 に 対 する 税 の 割 合 を 指 す. B. 産 品 税 ( 中 国 の 売 上 税 ) 中 国 には 増 値 税 と 同 時 に 1984 年 に 間 接 税 の 中 でも 割 合 が 一 番 大 きい, 増 値 税 よりも 課 税 範 囲 が 遥 かに 広 い 産 品 税 を 導 入 した. 産 品 税 の 課 税 対 象 は 工 業 産 品, 農, 林, 牧, 水 産 品 を 含 ん だ 270 品 目 で 食 品 から 贅 沢 品 まで 税 率 ( 内 税 方 式 )も 多 様 ですべての 産 業 をカバーしていた. 産 品 税 は 導 入 当 時 増 値 税 より 間 接 税 に 占 める 割 合 がもっと 大 きかった.しかし,1986 年 から 産 品 税 の 中 の 工 業 産 品 を 徐 々に 増 値 税 の 課 税 対 象 に 変 更 し,1991 年 4 月 産 品 税 の 中 で 174 種 類 を 増 値 税 の 範 囲 に 入 れて, 酒,タバコなど 86 税 目 を 産 品 税 の 課 税 対 象 に 残 したが 税 率 は 3% から 60% まで 幅 広 かった( 表 1 からも 1992 年 から 増 値 税 額 が 産 品 税 額 と 逆 転 しているのが 分 かる). 産 品 税 は 仕 入 れに 関 する 税 額 を 控 除 で きず, 内 税 方 式 になっていた.この 税 が 1994 年 の 分 税 制 改 革 前 までは 一 番 主 要 な 税 目 であっ た. C. 営 業 税 営 業 税 も 利 改 税 改 革 と 同 時 に 1984 年 の 工 商 税 改 革 によって 導 入 された.1984 年 の 営 業 税 は 小 売 の 売 上 高 と 卸 売 り 段 階 の 付 加 価 値 に 対 し て 課 税 を 行 い,そしてサービス 業 にも 5 15% の 税 率 で 売 上 に 課 税 を 行 った. 営 業 税 は 分 税 制

106 (288) 横 浜 国 際 社 会 科 学 研 究 第 15 巻 第 3 号 (2010 年 9 月 ) 表 2 分 税 制 前 の 主 要 な 間 接 税 84 年 間 接 税 産 品 税 増 値 税 営 業 税 課 税 段 階 生 産 段 階 生 産 段 階 小 売, 卸 売 り 段 階 課 税 ベース 税 率 農, 林, 水, 牧, 工 業 等 すべて の 産 業 をカバー 3 60% までかなりばらつきが 激 しい サービス 業 と 小 売, 卸 売 り 段 階 に 主 に 工 業 製 品 に( 帳 簿 方 式 には 機 械, 車, 船, 農 業 器 具 など,インボイス 方 式 には 鉄, ( 交 通 運 輸, 建 築, 郵 政, 出 版, 自 転 車, 扇 風 機,ミシン, 捺 染 したシルク, 薬 ( 漢 方 を 除 くなど) 6 16% まで 5 15% まで 仕 入 れ 控 除 認 めない 税 額 控 除 方 式 と 仕 入 れ 額 控 除 方 式 二 つ 併 用 認 めない 課 税 方 式 内 税 内 税 出 所 : 作 者 作 成 公 共 事 業,サービス, 金 融 保 険 等 ) 産 品 税 23.85% 屠 殺 税 0.08% 増 値 税 24.99% 家 畜 取 引 税 0.01% 営 業 税 29.32% 定 期 市 取 引 税 0.04% 工 商 統 一 税 5.12% 資 源 税 0.78% 専 項 調 節 税 0.02% 国 営 企 業 ボーナス 税 0.03% 集 団 企 业 所 得 税 2.90% 国 営 企 業 給 料 調 節 税 0.06% 城 郷 個 人 工 商 業 者 所 得 税 0.65% 事 業 会 社 ボーナス 税 0.01% 個 人 所 得 税 0.26% 集 団 企 業 ボーナス 税 0.02% 個 人 收 入 調 節 税 0.51% 印 紙 税 1.06% 私 営 企 業 所 得 税 0.04% 筵 席 税 0.00% 外 商 投 資 企 業 と 外 国 企 業 所 得 税 0.80% 特 別 消 費 税 0.40% 城 市 維 持 建 設 税 4.49% 固 定 資 産 投 資 調 節 税 1.17% 車 両 船 舶 使 用 税 0.30% ガス 特 別 税 0.05% 房 産 税 ( 家 屋 税 ) 1.49% 塩 税 0.24% 城 鎮 土 地 使 用 税 0.92% 税 金 滞 纳 罰 金 収 入 0.40% 出 所 : 中 国 税 務 年 鑑 1994 年 により 作 成 表 3 1993 年 各 税 が 工 商 税 11) に 占 める 割 合 改 革 前 までは 税 収 入 の 中 で 増 値 税 よりも 大 きな 割 合 を 占 めていた. なお,この 時 期 (1984 年 )の 増 値 税 と 産 品 税 は 暫 定 措 置 で 国 内 企 業 だけに 適 用 していた. 外 資 企 業 には 1958 年 からの 工 商 統 一 税 12) を 適 用 していた. 上 記 の 増 値 税, 産 品 税, 営 業 税 をまとめたの が 表 2 である. 表 3 は 各 税 が 工 商 税 にしめる 割 合 を 示 している. 11) 工 商 統 一 税 は 外 資 企 業 に 対 して 徴 収 する 税 であるのに 対 して, 工 商 税 は 国 内 企 業 の 国 営 企 業, 集 団 企 業, 個 人 企 業 に 対 し て 徴 収 す る 税 で 1973 年 から 全 国 的 に 普 及 し 始 めた. 工 商 税 は 工 商 業 に 従 事 す る 会 社 と 個 人 に 対 し て 売 上 高 に 課 税 を 行 う.1994 年 統 計 年 鑑 によると 1993 年 全 部 の 税 額 が 4255.3 億 元 の 中 で 工 商 税 収 が 78.01%, 他 にガス 特 別 税 0.04%, 塩 税 0.18%, 関 税 が 6.03%, 農 業 税 2.27%, 建 築 税 が 0.9%を 占 めている.しかし, 税 務 年 鑑 ではガス 特 別 税 と 塩 税 を 工 商 税 の 中 に 含 め ている.これにより 工 商 税 の 割 合 は 78.23%になる. 12) 工 商 統 一 税 は 税 収 の 中 で 占 める 割 合 はかな り 少 なかった. 工 商 統 一 税 も 産 品 税 のように 課 税 範 囲 が 広 くかなりばらつきが 大 きい 税 種 である.

1994 年 中 国 分 税 制 改 革 のなかでの 間 接 税 改 革 ( 申 長 谷 部 ) (289) 107 2. 分 税 制 改 革 の 主 な 内 容 1) 分 税 制 改 革 前 の 税 制 の 問 題 国 家 税 務 総 局 局 長 金 鑫 [1994 年 ]によれば 改 革 前 の 税 の 問 題 としては,1 税 種 構 造 が 不 合 理. 第 一 に, 工 業 生 産 段 階 で 一 部 分 の 産 品 には 産 品 税, 一 部 分 の 産 品 には 増 値 税 を 徴 収 して 二 つが 並 存 しており, 増 値 税 がその 作 用 を 発 揮 するの に 有 利 ではなく, 又 産 品 税 が 特 殊 な 調 節 機 能 を 発 揮 するにも 有 利 ではなかった. 第 二 に, 商 品 流 通 の 全 過 程 からみて, 生 産 段 階 で 産 品 税 或 い は 増 値 税 を 徴 収 し, 卸 売 り 段 階 で 付 加 価 値 額 に 営 業 税 を 徴 収 し, 小 売 段 階 では 売 上 高 に 営 業 税 を 徴 収 する.このように, 一 つの 商 品 に 対 して 流 通 過 程 で 様 々な 根 拠 で 税 を 徴 収 する 税 制 は, 一 貫 性 がなく,また 税 収 流 失 も 多 く, 税 の 作 用 を 発 揮 するのが 難 しい. 第 三 に, 国 内 企 業, 外 資 企 業 に 対 して 異 なる 税 を 徴 収 している. 税 収 政 策 が 不 統 一 なので 様 々な 矛 盾 を 招 く.2 税 率 が 多 すぎて 税 の 負 担 がアンバランスとなる.3 名 義 税 率 が 高 すぎることもあり, 免 税 や 税 の 優 遇 措 置 が 多 く 設 けられており, 課 税 範 囲 が 侵 食 されて 実 質 的 な 税 負 担 が 年 々 減 少 していた.4 工 商 統 一 条 例 ( 草 案 )は 発 表 してから 今 まで 30 年 間 を 経 由 しており, 現 在 の 経 済 発 展 の 需 要 に 合 わなくなっている. 経 済 の 発 展 につれ 数 回 の 調 整 を 行 ったが, 工 商 統 一 税 の 範 囲 は 依 然 とし て 狭 く, 相 当 一 部 の 課 税 すべき 産 品 と 営 業 項 目 は 未 だ 相 応 する 税 目 と 税 率 がないこと, 全 額 多 段 階 で 重 複 して 課 税 している 等 の 矛 盾 が 明 らか になっていると 指 摘 した. 2) 分 税 制 改 革 の 内 容 以 上 のようなゆがみを 正 しくするために 間 接 税 を 主 とする 税 制 改 革 が 行 われた. A. 増 値 税 1994 年 分 税 制 改 革 により 今 まで 12 種 類 の 産 品 に 多 様 な 税 率 が 課 せられていたのを, 一 般 的 な 産 品 を 生 産 する 個 人 と 会 社 を 納 税 者 とする 他, 貨 物 販 売, 加 工, 修 理 労 務 サービスを 提 供 する 個 人 と 会 社 も 増 値 税 の 納 税 者 とするという ように 課 税 範 囲 が 広 範 囲 になった. 税 率 も 三 種 類 となり, 販 売 品, 輸 入 品 或 いは 加 工, 修 理 労 務 サービスの 提 供 には 17% の 税 率 を 適 用 し, 水 道 水, 暖 房,エアコン,ガス, 石 油,メタン, 住 民 用 石 炭 製 品 ; 図 書, 新 聞, 雑 誌 ; 飼 料, 肥 料, 農 薬, 農 機 等 住 民 の 日 常 生 活 に 関 連 する 部 門 には 13% の 税 率 を 適 用 して, 二 種 類 とも 外 税 方 式 で 課 税 されるようになった.また, 輸 出 貨 物 にはゼロ 税 率 が 適 用 された. 分 税 制 前 の 産 品 税 と 営 業 税 は 仕 入 れを 控 除 で きない 仕 組 みになっており, 各 取 引 段 階 と 産 業 別 に 課 税 する 分 税 制 前 の 間 接 税 では 税 の 累 積 が 起 きていたが, 分 税 制 改 革 後 増 値 税 と 置 き 換 え てから 仕 入 れ 控 除 が 認 められ 税 の 累 積 を 防 ぐこ とができた. 分 税 制 改 革 の 時 に 輸 出 還 付 13) の 問 題 もかなり 重 視 されて 段 々 輸 出 還 付 品 目 と 還 付 率 も 増 やす 方 向 に 発 展 していった.また, 当 時 中 国 は 高 度 成 長 期 でインフレ 等 をかなり 恐 れて 抑 制 的 財 政 政 策 を 取 った 時 期 でもあることから, 投 資 を 抑 制 する 意 図 で 総 生 産 型 付 加 価 価 値 税 方 式 14) つま り 資 本 財 の 仕 入 れ 税 額 控 除 は 認 めない 課 税 方 式 を 取 っていた. 増 値 税 は 中 央 と 地 方 で(75%: 25%)の 配 分 割 合 で 共 通 税 になった. 13) 付 加 価 値 税 を 適 用 するほとんどの 国 では, 輸 出 する 商 品 に 対 してゼロ 税 率 を 実 施 する 他, 輸 出 する 際 に 仕 入 れにかかった 税 額 を 全 額 還 付 して 輸 出 促 進 策 として 取 っている.しかし, 中 国 では 輸 出 商 品 に 対 してゼロ 税 率 は 実 施 しているものの, 輸 出 品 の 仕 入 れにかかった 税 額 を 全 額 還 付 するの ではなく, 個 別 商 品 だけに 決 まった 税 率 で 仕 入 れ の 還 付 を 行 う.1994 年 の 分 税 制 改 革 では 仕 入 れ 還 付 を 行 う 対 象 商 品 をもっと 増 やし, 仕 入 れにかかっ た 税 の 還 付 率 もアップするように 力 を 入 れた. 14) 付 加 価 値 税 は 資 本 材 の 仕 入 れをどう 扱 うか によって 三 つに 分 けられる. 一 つ 目 は 日 本 やEU のような 資 本 の 仕 入 れを 全 額 控 除 できる 消 費 型 付 加 価 値 税, 二 つ 目 は 所 得 型 付 加 価 値 税 で 今 期 の 資 本 の 仕 入 計 算 時 において 資 本 財 の 控 除 は 減 価 償 却 分 しか 認 められない 方 式 で, 三 番 目 は 中 国 で 2008 年 まで 採 用 していた 生 産 型 付 加 価 値 税 で 資 本 財 の 仕 入 控 除 を 認 めない 方 式 を 指 す.

108 (290) 横 浜 国 際 社 会 科 学 研 究 第 15 巻 第 3 号 (2010 年 9 月 ) 表 4 分 税 制 後 の 主 要 な 間 接 税 94 年 間 接 税 増 値 税 消 費 税 営 業 税 課 税 ベース 税 率 農, 林, 水, 牧, 工 業 等 すべての 業 種 をカバー 13% or 17%( 生 産 型 付 加 価 値 税 ), 輸 出 品 にはゼロ 税 率,( 輸 出 還 付 も 全 額 行 われる のではない) 簡 易 課 税 制 度 の 適 用 6% 15) ( 生 産 と 労 務 の 提 供 者 は 年 間 売 上 100 万 元 以 下, 小 売 と 卸 売 りは 年 間 売 上 180 万 元 以 下 の 者 に 対 して) 役 務 の 提 供, 無 形 資 産 取 引 が 課 税 対 主 に 贅 沢 品 に(タバコ, 酒, 象 に 化 粧 品,ボディケア 用 品, ( 交 通 運 輸, 建 築 業, 金 融 保 険, 郵 宝 石 やアクセサリ, 爆 竹, 便 通 信, 文 化 体 育, 娯 楽 業,サービス, ガソリン 等 ) 無 形 資 産 の 譲 渡, 不 動 産 業 等 ) 3% 45% まで 5 20% まで 仕 入 れ 控 除 仕 入 れ 税 額 控 除 のインボイス 方 式 認 めない 認 めない 課 税 方 式 外 税 内 税 出 所 : 税 務 年 鑑 など 参 照 にして 作 者 作 成. B. 消 費 税 消 費 税 は 増 値 税 を 普 遍 的 に 徴 収 する 上 で 産 品 税 の 取 消 により 大 きな 負 担 減 少 となった 少 数 の 贅 沢 品 に 対 して, 産 業 構 造 を 調 節 するために 徴 収 する 税 である. 消 費 税 はタバコ, 酒, 化 粧 品 など 11 種 類 を 課 税 対 象 とし, 個 別 消 費 税 の 性 格 を 持 っている.そして, 消 費 税 は 生 産 段 階 に 課 税 し, 中 央 税 とした. C. 営 業 税 分 税 制 改 革 によって 営 業 税 の 小 売, 卸 売 り 段 階 に 対 する 課 税 は 増 値 税 に 吸 い 込 まれ 課 税 範 囲 が 縮 小 された. 改 革 後 営 業 税 の 徴 収 範 囲 は 労 務 の 提 供, 無 形 資 産 の 譲 渡 と 不 動 産 の 販 売 となり, 交 通 運 輸 業, 建 築 業, 郵 便 通 信 業, 文 化 体 育 業 などに 対 しては 売 上 収 入 の 3% で, 金 融 保 険 業, 無 形 資 産 の 譲 渡, 不 動 産 の 販 売 には 5% の 税 率, 娯 楽 業 の 税 率 は 5%~20% の 税 率 を 適 用 した. 以 上 のように,1994 年 の 改 革 によって 増 値 税 と 営 業 税 を 中 心 とする 間 接 税 システムが 整 った. 3. 分 税 制 前 後 の 間 接 税 額 の 推 計 1995 年 産 業 連 関 表 による 試 算 1) 分 析 手 法 と 使 用 データ 産 業 連 関 分 析 を 利 用 したシミュレーションの 方 法 としては, 通 常, 現 実 の 産 業 連 関 表 の 粗 付 加 価 値 ブロックにある 間 接 税 の 行 に 注 目 し,あ る 年 の 部 門 別 間 接 税 額 をベースとして,たとえ ば 新 たに 付 加 価 値 税 が 導 入 された 場 合 の 潜 在 的 税 収 額 や 価 格 変 化 への 影 響 を 推 計 する 方 法 が 用 いられる 16).しかし, 中 国 産 業 連 関 表 では, 純 間 接 税 (= 間 接 税 - 補 助 金 ) という 項 目 しか なく, 部 門 別 間 接 税 を 推 計 するためには 補 助 金 を 別 に 推 定 して 分 離 するという 作 業 をする 必 要 があるが,このこと 自 体 が 困 難 であるという 問 題 がある.そこで, 本 論 文 では, 間 接 税 改 革 の 政 策 意 図 を 把 握 する 目 的 のため, 以 下 のような 方 法 をとることとした. 15)2009 年 1 月 1 日 から 簡 易 課 税 制 度 の 適 用 範 囲 が 生 産, 労 務 提 供 部 門 は 年 間 売 上 50 万 元 に,そ れ 以 外 は 80 万 元 に 減 少 され, 税 率 は 3%に 下 げら れた. 16) 日 本 における 消 費 税 を 中 心 に 産 業 連 関 分 析 を 応 用 した 代 表 的 研 究 として, 藤 川 清 史 [1991], [1997], 中 井 英 雄 [1981], 橋 本 恭 之 [1989]な ど がある.

1994 年 中 国 分 税 制 改 革 のなかでの 間 接 税 改 革 ( 申 長 谷 部 ) (291) 109 表 5 産 業 連 関 表 によるモデル 作 成 1 2 m F x 1 Z 11 Z 12 Z 1m F 1 X 1 2 Z 21 Z 22 Z 2m F 2 X 2 m Z m1 Z m2 Z mm F m X m v V 1 V 2 V m x X 1 X 2 Xm まず, 分 税 制 改 革 が 行 われた 1994 年 に 比 較 的 近 い 1995 年 産 業 連 関 表 を 対 象 として, 改 革 前 の 税 制 の 基 準 年 として 1984 17) 年 を 選 び,1995 年 の 中 国 経 済 に 1984 年 の 間 接 税 体 系 が 導 入 され たと 仮 定 して 得 られる 部 門 別 間 接 税 収 入 を 計 算 する(T i 84 ). 次 に, 同 じ 1995 年 産 業 連 関 表 に 1994 年 改 革 で 導 入 された 間 接 税 体 系 を 適 用 し て 部 門 別 間 接 税 収 入 を 計 算 し(T i 95 ),84 年 と の 差 を 計 算 する(ΔT i = T i 95 -T i 84 ).ΔT i /X i 95 で 税 額 変 化 による 付 加 価 値 率 変 化 が 推 計 できる ので,これを 行 ベクトル 化 したものをΔt とお き, 価 格 ベクトルを P, 投 入 係 数 行 列 を A, 単 位 行 列 を I とおけば, に 変 換 して 間 接 税 額 の 変 化 を 推 計 すべきである が, 本 論 文 では 時 間 と 資 料 の 制 約 から 生 産 者 価 格 ベースの 推 計 であること,また, 分 税 制 改 革 の 全 体 が 及 ぼした 税 負 担 率 の 変 化 を 見 るもので はなく,あくまで 増 値 税 を 中 心 とする 間 接 税 改 革 のもつ 直 接 的 な 経 済 的 影 響 を 見 ることによ り,その 政 策 意 図 を 見 ようとするためのシミュ レーションであることに 留 意 されたい. 使 用 した 産 業 連 関 データは,アジア 経 済 研 究 所 で 作 成 された 1995 年 アジア 国 際 産 業 連 関 表 (24 部 門 )をベースとした.アジア 経 済 研 究 所 の 国 際 産 業 連 関 表 から, 中 国 を 取 り 出 し 競 争 輸 入 型 産 業 連 関 表 に 変 換 したものを 使 用 した. Δp =Δt(I-A) -1 で 価 格 の 変 化 を 求 めることができる 18).つまり 分 税 制 による 間 接 税 変 化 の 及 ぼす 各 産 業 部 門 価 格 の 変 化 を 推 計 することができる. さらに,Δp を 1993 年 の 都 市 部 の 階 層 別 家 計 消 費 データに 適 用 して, 価 格 変 化 に 伴 う 家 計 の 主 要 消 費 支 出 の 負 担 額 の 変 化 を 求 め,それを 各 階 層 別 家 計 収 入 額 で 除 することによって 間 接 税 負 担 率 の 変 化 を 推 計 する.これにより, 階 層 別 の 主 要 消 費 支 出 の 負 担 率 の 累 進 性 を 検 討 した い.これは, 通 常, 消 費 財 を 購 入 者 価 格 ベース 17)1984 年 は 中 国 の 間 接 税 の 主 要 税 目 である 産 品 税, 増 値 税 が 本 格 的 に 実 施 し 始 めた 年 である. 18) 輸 入 品 に 関 しても 国 内 の 間 接 税 の 税 率 で 課 税 されるので 輸 入 品, 国 内 品 を 区 別 しない(I-A) の 逆 行 列 を 使 う. 2) 分 析 モデル 1984 年 の 産 品 税 と 営 業 税 は 基 本 的 に 仕 入 控 除 を 認 めない 税 として 扱 い 増 値 税 は 仕 入 部 分 の 税 額 を 控 除 できる 税 であるが,この 時 期 の 増 値 税 は 仕 入 れ 控 除 を 仕 入 れ 税 額 控 除 のインボイス 方 式 と 仕 入 れ 額 控 除 の 帳 簿 方 式 を 併 用 していた 点 に 留 意 してモデル 式 を 作 る 19). まず 簡 単 化 のため 表 5 のような 3 部 門 表 に 即 して 考 えてみる( 第 1 部 門 :インボイス 方 式 の 増 値 税 課 税 産 業, 第 2 部 門 : 帳 簿 方 式 の 増 値 税 19)95 年 産 業 連 関 表 の 24 部 門 表 と 部 門 が 少 な いために 実 際 には 増 値 税 の 中 でも 仕 入 控 除 方 式 の 部 門 しか 反 映 されない.この 部 門 は 第 17( 機 械 ) と 18( 輸 送 用 機 械 ) 部 門 で あ る. 仕 入 控 除 方 式 は 仕 入 の 実 際 の 税 額 を 控 除 するのではなく 仕 入 を 自 分 の 税 額 で 控 除 することになるので, 通 常 の 仕 入 税 額 を 控 除 するインボイス 方 式 の 付 加 価 値 税 と 差 額 が 生 じることとなる.

110 (292) 横 浜 国 際 社 会 科 学 研 究 第 15 巻 第 3 号 (2010 年 9 月 ) 課 税 産 業, 第 m 部 門 : 営 業 税 や 産 品 税 等 仕 入 れ 控 除 を 認 めない 産 業 ). ここで 対 象 となる 間 接 税 の 課 税 ベースは, 国 内 生 産 額 に 輸 入 を 加 えたもの(Xi + Mi)となる. そこで, 税 総 額 を T, 産 業 部 門 別 の 租 税 額 を Ti とおくと, T =T 1 + T 2 +T m =r 1 (X 1 +M 1 )-r 1 Z 11 -r 2 Z 21 -r m Z m1 + r 2 (X 2 +M 2 )-r 2 Z 12 -r 2 Z 22 -r 2 Z m2 + r m (X m +M m ) 1 F i 最 終 消 費 20) r j 各 部 門 の 税 率 r m 営 業 税 や 産 品 税 課 税 産 業 の 税 率 m 営 業 税, 産 品 税 課 税 産 業 z ij 中 間 財 仕 入 れ ここで, 増 値 税 は 輸 出 財 に 関 してはゼロ 税 率 が 適 用 されるので, 課 税 ベースから 控 除 する. ただし, 輸 出 財 生 産 に 関 わる 中 間 財 仕 入 れ 部 分 の 増 値 税 還 付 については 政 策 上 の 関 係 で 複 雑 な 問 題 もあるので, 本 論 文 では 捨 象 した.また, 中 小 企 業 などに 適 用 される 簡 易 課 税 制 度 による 課 税 も 扱 っていない. 各 産 業 の 生 産 バランス 式 より, X 1 +M 1 =Z 11 +Z 12 +Z 1m +F 1, X 2 +M 2 =Z 21 +Z 22 +Z 2m +F 2, Xm +Mm =Zm1 +Zm2 +Zmm +Fm となるので,これらを1 式 に 代 入 すると T = r 1 (Z 11 +Z 12 +Z 1m +F 1 )-r 1 Z 11 -r 2 Z 21 -r m Z m1 +r 2 (Z 21 +Z 22 +Z 2m +F 2 )-r 2 Z 21 -r 2 Z 22 - r 2 Z m2 +r m (Z m1 +Z m2 +Z mm +F m ) 2 =(r 1 F 1 +r 2 F 2 +r m F m ) ア + (r 1 Z 1m +r 2 Z 2m +r m Z mm ) イ + (r 1 -r 2 )Z 12 +(r 2 -r 2 )Z 22 +(r m -r 2 )Z m2 ウ ここで,2 式 は, 第 1 項 アは 最 終 需 要 にかかる 税, 第 2 項 イは 仕 入 控 除 できない 産 品 税 と 営 業 税 の 仕 入 にかかった 税 額, 第 3 項 ウは 帳 簿 方 式 の 増 値 税 の 仕 入 控 除 方 式 を 仕 入 税 額 控 除 方 式 に よる 差 額 の 計 算,を 表 すことになる.これを 24 部 門 モデルに 対 応 させて 表 記 し 直 せば, 以 下 のようになる. ア,r 1 F 1 + r 2 F 2 + r m F m r1 0 0 0 0 r2,,, 0 0 (F 1,F 2, F 23,F 24 ),,,,,,,,,,,,,,, 3 0 0,,, r23 0 0 0,,, 0 r24 3 式 では 最 終 需 要 に 各 部 門 の 税 率 をかけて 最 終 需 要 の 税 額 を 部 門 別 に 計 算 する. イ,r 1 Z 1m +r 2 Z 2m +r m Z mm z j17 z j18 z1 1 z2 1 0 0 z1 24 z2 1 z2 2 0 0 z2 24 0 0 z 3 24 0 0 z4 24 (r 1,r 2, r 23,r 24 ) 4 0 0 0 0 0 0 z 23 1 z23 2 0 0 z23 24 z24 1 z24 2 0 0 z24 24 z1 17 z2 17 24 17 4 式 では 増 値 税 以 外, 営 業 税 や, 産 品 税 の 仕 入 れ 控 除 できない 部 門 の 仕 入 れにかかった 税 額 を 計 算 する.そして 営 業 税, 産 品 税 課 税 部 門 の 仕 入 れはそのままにして, 増 値 税 課 税 部 門 の 仕 入 z1 18 z2 18 24 18 れは 控 除 できるのでゼロにして 仕 入 れの 行 列 を 作 る.1984 年 時 点 での 計 算 を 例 にとれば,17, 18 産 業 は 増 値 税 課 税 産 業 なのでこの 部 門 の 仕 入 れゼロとおき, 他 の 産 業 部 門 の 仕 入 れにかか る 税 を 計 算 する. ウ,(r 1 -r 2 )Z 12 +(r 2 -r 2 )Z 22 +(r m -r 2 )Z m2 20)この 時 のrは 内 税 方 式 なので 直 接 rを 適 用 する.

1994 年 中 国 分 税 制 改 革 のなかでの 間 接 税 改 革 ( 申 長 谷 部 ) (293) 111 表 6 適 用 する 税 率 表 ( 粗 税 率 表 示 ) 1984 年 間 接 税 税 率 1994 年 間 接 税 税 率 産 品 税 増 値 税 営 業 税 部 門 番 号 増 値 税 消 費 税 営 業 税 3.0% 1 米 11.5% 3.0% 2 その 他 農 産 品 11.5% 3.0% 3 畜 産 11.5% 7.5% 4 林 業 11.5% 5.0% 5 漁 業 11.5% 8.4% 6 原 油 天 然 ガス 11.5% 4.5% 7 その 他 鉱 業 14.5% 8.2% 8 食 品 飲 料 11.5% 10.5% 9 繊 維 皮 革 製 品 11.5% 4.0% 10 木 材 木 製 品 11.5% 10.5% 11 パルプ 製 紙, 印 刷 14.5% 13.2% 12 化 学 製 品 14.5% 5.0% 13 石 油 製 品 14.5% 14.8% 14 ゴム 製 品 11.5% 9.7% 15 窯 業 土 石 製 品 14.5% 8.2% 16 金 属 製 品 14.5% j17 j18 14.0% z j17 z 17 機 械 14.5% j18 12.0% 18 輸 送 用 機 器 14.5% 5.8% 5.0% z1 1 2 1 1 24 z1 1 z2 1 0 0 19 その z他 製 造 業 14.5% 1 24 2 1 2 2 7.2% 2 24 z2 1 z2 2 0 0 20 電 気 zガス 水 道 11.5% 2 24 3.0% 0 0 21 建 設 z 3 24 3.0% 3 24 7.8% 0 0 22 商 業 z運 4 輸 4 24 3.0% 5.0% 0 0 23 サービス 業 5.0% 3.0% 0 0 24 公 共 サービス 3.0% 0 0 1 24 z23 1 z23 2 0 0 z23 24 1 24 17 部 門 : z24 1 z24 2 0 0 z24 245 式 では 増 値 税 課 税 産 業 で 帳 簿 方 式 課 税 対 象 の (r j -r 17 ) Z j17 17 部 門 の 仕 入 れに 関 して 実 際 の 仕 入 額 と 控 除 17 z1 17 認 め 仕 入 額 との 差 額 を 計 算 する.6 式 では 増 値 =(r 1 -r 17,r 2 -r 17,,r 23 -r 17,r 24 -r 17 ) z2 17 5 税 課 税 産 業 で 帳 簿 方 式 課 税 対 象 の 18 部 門 の 仕 入 れに 関 して 実 際 の 仕 入 額 と 控 除 認 め 仕 入 額 と 24 17 の 差 額 を 計 算 する. 18 部 門 : r(r j -r 18 ) Z j18 3と4の 計 算 結 果 はそれぞれ 一 つの 行 にな る.この 二 つの 行 をプラスして 各 産 業 部 門 の 税 z 1 18 額 が 求 められる.5,6 式 で 求 められた 税 額 を =(r 1 -r 18,r 2 -r 18,,r 28 -r 18,r 24 -r 18 ) z2 18 6 帳 簿 方 式 の 17 部 門 と 18 部 門 に 加 算 する.これ により 1995 年 産 業 連 関 表 に 1984 年 税 率 を 適 用 24 18 した 場 合 の 部 門 別 の 税 額 T 84 が 求 められる. 適 用 した 税 率 は 表 6 のとおりである.

112 (294) 横 浜 国 際 社 会 科 学 研 究 第 15 巻 第 3 号 (2010 年 9 月 ) 1994 年 には 産 品 税 が 廃 止 され, 増 値 税 は 仕 入 税 額 控 除 のインボイス 方 式 に 統 一 された.そ して 贅 沢 品 にはさらに 増 値 税 課 税 前 の 価 格 に 消 費 税 21) も 課 税 するシステムとなった.モデル 式 は 1984 年 のものとほぼ 同 じ 式 になるが, 増 値 税 はインボイス 方 式 という 一 つの 種 類 に 統 合 さ れたのでモデル 式 も 分 税 制 前 の3 式 と4 式 だけ を 使 い, 帳 簿 方 式 の 部 門 の5,6 式 は 必 要 なく なる. 適 用 する 税 率 は 表 6 に 示 された 1994 年 の 税 率 で 計 算 する 22). 上 の3 式 を 適 用 する 時 に 仕 入 れをそのままに する 産 業 は, 産 品 税 がなくなったので 営 業 税 を 課 税 する 産 業 だけで 21 24 部 門 だけをそのまま の 仕 入 れにする. 他 の 増 値 税 課 税 産 業 の 仕 入 れ は 控 除 できるので, 仕 入 の 行 列 ではゼロで 表 示 する. 消 費 税 は 増 値 税 を 含 まない 課 税 前 の 価 格 に 消 費 税 を 課 税 するので 増 値 税 に 上 乗 せして 最 終 消 費 部 分 の 消 費 税 を 計 算 し, 仕 入 の 消 費 税 は 仕 入 に 各 税 率 をかけて 仕 入 部 分 の 消 費 税 とする 23). これにより,1995 年 産 業 連 関 表 で 1994 年 の 税 率 で 計 算 したのが 95 年 度 の 税 額 T 95 になり, T 95 -T 84 =ΔT が 求 められ,ΔT i /X i 95 で 税 額 変 化 による 付 加 価 値 率 変 化 が 推 計 できる. これを 行 ベクトル 化 したものをΔ t とおき, Δp =Δt(I-A) -1 で 価 格 の 変 化 Δp を 求 める 24).つまり 分 税 制 に 21) 消 費 税 を 計 算 する 際 に 仕 入 れ 税 額 控 除 を 認 めないことと 内 税 方 式 であることに 注 意 すべきで, しかも, 営 業 税 とは 違 ってある 部 門 には 増 値 税 と 消 費 税 同 時 に 課 税 する 重 複 課 税 システムだが 増 値 税 は 仕 入 の 税 額 が 控 除 できるのでこれはやはり 別 々 に 税 計 算 行 った 方 がいいと 思 われる. 本 試 算 では 24 部 門 のかなり 少 ない 部 門 表 を 使 っているため 消 費 税 を 適 用 しにくく 消 費 税 は 無 視 することにする. 22)この 時 のrは 外 税 方 式 なので r/(1+ r)で 粗 税 率 を 計 算 して 適 用 する. 23)1995 年 産 業 連 関 表 では 消 費 税 としてみなせ る 産 業 が 18 部 門 ( 輸 送 用 機 械 )である. 24) 輸 入 品 に 関 しても 国 内 の 間 接 税 の 税 率 で 課 税 されるので 輸 入 品, 国 内 品 を 区 別 しない(I-A) の 逆 行 列 を 使 う. よる 間 接 税 変 化 の 及 ぼす 各 産 業 部 門 価 格 の 変 化 を 推 計 する. 3) 推 計 結 果 計 算 結 果 は 表 7 のとおりである. 税 額 の 計 算 によってまず 95 年 の 産 業 連 関 表 という 同 じ 課 税 ベースにした 場 合 1994 年 分 税 制 による 税 制 改 革 が 実 際 は 1984 年 の 税 制 より, 全 体 として 税 額 を 減 らす 効 果 があるのが 分 か る.ただ, 部 門 別 に 見 ると, 自 動 車 など 輸 送 用 機 械, 一 般 機 械,その 他 農 産, 畜 産, 漁 業,な どは 税 収 増 となっているのに 対 して, 原 油 天 然 ガス, 石 油 製 品,ゴム 製 品, 窯 業 土 石 製 品, 金 属 製 品 など 資 源 や 素 材 部 門 で 大 幅 な 税 収 減 と なっている 事 が 分 かる. 価 格 面 への 影 響 を 見 る と, 経 済 全 体 で 間 接 税 収 が 減 収 したため, 付 加 価 値 率 を 下 げることにより 全 体 としてマイ ナスの 効 果 となっており,パルプ 製 紙 印 刷 の -13.93%, 金 属 製 品 の-13.79%, 繊 維 皮 革 製 品 -13.04%, 化 学 製 品 -12.47%, 窯 業 土 石 製 品 の-12.55% となっており, 価 格 上 昇 は 漁 業 の +0.40% だけとなっている. この 価 格 変 化 が 各 階 層 別 にどのような 影 響 を もたらしたかを 調 べるために,1993 年 の 所 得 階 層 別 主 要 消 費 支 出 統 計 をみると 以 下 のような ことが 分 かる. 価 格 は 全 般 的 に 下 落 するので, 各 階 層 別 の 間 接 税 負 担 も 減 少 するが, 高 収 入 者 層 ほど 負 担 の 減 少 幅 が 少 ない.つまり 中 国 においては,1994 年 分 税 制 改 革 に よって 導 入 さ れ た 間 接 税 は 1984 年 の 税 制 に 比 べ 逆 進 性 を 示 すのではなく, 反 対 の 効 果 が 現 れたと 見 ることが 出 来 る 25). おわりに 1994 年 の 分 税 制 改 革 によって 国 は 税 収 の 安 25)しかし,これは 中 国 分 税 制 の 中 での 間 接 税 の 逆 進 性 を 否 定 するのではない. 中 国 の 間 接 税 は やはり 逆 進 性 を 見 せている.これは 筆 者 の 推 計 に よって 明 らかになっている.

1994 年 中 国 分 税 制 改 革 のなかでの 間 接 税 改 革 ( 申 長 谷 部 ) (295) 113 表 7 分 税 制 前 後 のΔt,Δp の 推 算 位 : 千 元 1. 米 2.その 他 農 産 品 3. 畜 産 4. 林 業 5. 漁 業 6. 原 油 天 然 ガス 7.その 他 鉱 業 T(95) 5,623,160 50,076,952 33,139,111 3,596,825 14,994,842 736,608 5,502,974 T(84) 5,624,749 43,096,737 25,919,239 4,085,592 10,801,373 6,327,277 19,957,391 Δt 0.00% 0.68% 1.20% -0.69% 2.47% -3.73% -4.42% Δp -2.75% -2.04% -0.88% -2.85% 0.40% -6.61% -9.89% 単 位 : 千 元 8. 食 品 飲 料 9. 繊 維 皮 革 製 品 10. 木 材 木 製 品 11.パルプ 製 紙, 印 刷 12. 化 学 製 品 13. 石 油 製 品 14.ゴム 製 品 T(95) 74,020,313 42,721,125 2,213,843 4,373,352 12,638,180 1,807,692 3,678,007 T(84) 93,495,330 125,349,996 10,974,451 19,331,710 62,318,184 16,112,346 12,664,484 Δt -1.82% -6.07% -4.33% -6.03% -5.96% -5.43% -7.10% Δp -4.93% -13.04% -10.42% -13.93% -12.47% -10.80% -13.69% 単 位 : 千 元 15. 窯 業 土 石 製 品 16. 金 属 製 品 17. 機 械 18. 輸 送 用 機 器 19.その 他 製 造 業 20. 電 気 ガス 水 道 21. 建 設 T(95) 1,320,022 8,581,347 83,419,563 31,878,362 9,401,317 2,831,853 67,236,950 T(84) 35,794,207 72,653,059 43,260,978 26,382,093 38,868,319 13,061,829 130,340,412 Δt -5.64% -5.59% 2.60% 1.24% -5.50% -3.26% -4.25% Δp -12.55% -13.79% -3.03% -4.11% -13.17% -8.18% -11.70% 単 位 : 千 元 22. 商 業 運 輸 23.サービス 業 24. 公 共 サービス T(95) 17,357,680 59,155,636 12,417,641 548,723,354 466,718,889 95 年 実 際 間 接 税 徴 収 額 T(84) 59,281,435 90,057,511 22,088,822 987,847,520 Δt -3.28% -2.36% -2.85% Δp -7.21% -6.32% -6.88% 表 8 1993 年 階 層 別 消 費 支 出 & 収 入 & 消 費 支 出 が 支 出 に 占 める 割 合 24 部 門 表 の 対 応 部 門 1.2.8 9 17 24 22 23 21 Δp の 平 均 値 -3.24% -13.04% -3.03% -6.88% -7.21% -6.32% -11.70% 単 位 : 元 食 品 洋 服 家 庭 設 備 用 品, サービス 医 療 保 険 交 通 通 信 娯 楽 教 育, 文 化 サービス 住 居 合 計 年 収 支 出 が 年 収 に 占 める 割 合 貧 困 家 庭 700.33 127.01 60.00 36.02 24.18 101.43 92.88 1141.85 1239.35 92.1% 最 低 所 得 者 層 744.58 142.50 66.51 36.05 28.34 113.29 93.28 1224.55 1359.87 90.0% 低 所 得 者 層 869.23 195.79 94.42 41.92 35.69 136.40 103.74 1477.19 1718.63 86.0% 中 低 所 得 者 層 957.57 246.43 120.06 50.09 51.04 158.43 119.33 1702.95 2041.67 83.4% 中 所 得 者 層 1064.65 303.32 163.10 53.59 68.72 182.91 132.98 1969.27 2453.88 80.3% 中 高 所 得 者 層 1169.40 367.20 220.27 61.52 99.60 221.37 150.50 2289.86 2985.88 76.7% 高 所 得 者 層 1284.57 418.16 314.16 74.58 127.27 256.21 187.61 2662.56 3626.66 73.4% 最 高 所 得 者 層 1464.65 492.62 446.75 100.34 212.16 356.23 240.87 3313.62 4905.77 67.5% 出 所 : 中 国 統 計 年 鑑,1994 年.

114 (296) 横 浜 国 際 社 会 科 学 研 究 第 15 巻 第 3 号 (2010 年 9 月 ) 単 位 : 元 食 品 洋 服 表 9 価 格 変 化 による 消 費 支 出 の 年 収 に 占 める 負 担 率 の 減 少 率 家 庭 設 備 用 品, サービス 医 療 保 険 交 通 通 信 娯 楽 教 育, 文 化 サー ビス 住 居 合 計 年 収 支 出 が 年 収 に 占 め る 割 合 負 担 減 少 率 貧 困 家 庭 677.6292 110.4461 58.18149 33.54089 22.43568 95.02358 82.01468 1079.272 1239.35 0.870837-5.02% 最 低 所 得 者 層 720.4449 123.916 64.49418 33.56883 26.29558 106.1345 82.36789 1157.222 1359.87 0.85098-4.90% 低 所 得 者 層 841.0545 170.26 91.56 39.03 33.12 127.78 91.60 1,394.41 1,718.63 0.81-4.87% 中 低 所 得 者 層 926.531 214.292 116.4212 46.64251 47.35803 148.4234 105.3705 1605.039 2041.67 0.78614-4.79% 中 所 得 者 層 1030.14 263.7628 158.1567 49.90162 63.76261 171.3572 117.4237 1854.505 2453.88 0.755744-4.73% 中 高 所 得 者 層 1131.495 319.3119 213.594 57.28583 92.41496 207.388 132.8942 2154.384 2985.88 0.721524-4.55% 高 所 得 者 層 1242.931 363.626 304.6383 69.44696 118.0889 240.0275 165.6629 2504.422 3626.66 0.690559-4.34% 最 高 所 得 者 層 1417.174 428.3754 433.2097 93.43401 196.855 333.7302 212.6925 3115.471 4905.77 0.635063-3.99% 0.00% -1.00% -2.00% -3.00% -4.00% -5.00% -6.00% 図 2 各 階 層 別 分 税 制 後 の 負 担 上 下 率 と 補 助 金 入 れての 負 担 上 下 率 定 的 成 長 によって 財 政 収 入 を 確 保 できるように なったといえ,その 財 政 収 入 の 上 昇 は 必 ずしも 分 税 制 改 革 による 成 果 だけではなく, 経 済 成 長 による 経 済 規 定 の 拡 大 ということも 大 きな 要 因 である. 税 収 のなかでも 間 接 税 ( 増 値 税, 消 費 税, 営 業 税 )がメインでその 間 接 税 の 中 でもさ らに 増 値 税 が 主 要 税 目 となってきた.しかし, このような 間 接 税 中 心 な 税 制 改 革 でありながら 中 国 における 分 税 制 改 革 の 一 つの 特 徴 として, 本 論 文 の 推 計 では, 生 産 者 価 格 ベースという 限 定 条 件 付 きながら, 階 層 別 負 担 が 低 所 得 者 層 ほ ど 負 担 が 減 少 する 結 果 が 示 されており, 間 接 税 の 逆 進 性 が 弱 められた 可 能 性 が 示 された. 通 常 は, 付 加 価 値 税 導 入 は 低 所 得 者 層 ほど 重 負 担 に なり, 逆 進 性 が 大 きく 強 調 されるのに 対 して, 中 国 の 分 税 制 改 革 では 逆 進 性 を 弱 める 効 果 を 示 す 結 果 となっている 26). 同 じく 社 会 主 義 国 家 の 旧 ソ 連 東 欧 諸 国 は 市 場 経 済 化 の 中 で 広 範 な 付 加 価 値 税 改 革 が 行 われ,EU 型 に 近 いタイプが 26)もちろん 産 品 税 では 仕 入 れ 控 除 できない のでその 分 税 額 を 増 やす 税 であったので 増 値 税 で 税 率 が 上 昇 し, 課 税 ベースが 増 えたとは 言 え 産 品 税 の 減 少 と 営 業 税 の 減 少 が 増 値 税 の 増 額 より 大 き かったのも 原 因 にはなる.

1994 年 中 国 分 税 制 改 革 のなかでの 間 接 税 改 革 ( 申 長 谷 部 ) (297) 115 導 入 され, 生 産 物 だけでなくサービスも 含 めて 広 範 囲 な 課 税 対 象 が 設 定 され, 逆 進 性 の 強 い 税 制 に 移 行 した. 中 国 でも 租 税 国 家 化 を 目 指 して 安 定 した 税 収 確 保 のために 本 格 的 に 付 加 価 値 税 ( 増 値 税 )を 導 入 したが, 物 的 生 産 部 門 だけに 増 値 税 を 課 税 し,サービス 部 門 など 非 物 的 部 門 には 従 来 型 の 営 業 税 を 残 したことがこのような 逆 進 性 を 弱 める 効 果 をもつ 間 接 税 体 系 として 現 れているとすれば, 中 国 政 府 の 税 改 革 の 政 策 意 図 などを 確 認 しながら,さらに 今 後 検 討 を 加 え たい 27). 参 考 文 献 日 本 語 文 献 : 中 井 英 雄, 一 般 消 費 税 の 産 業 部 門 別 価 格 効 果 1 次 効 果 と 2 次 効 果 の 計 測 と 比 較 商 経 学 叢 近 畿 大 学 経 営 学 部 28 ⑴,1981 年. 橋 本 恭 之, 税 制 改 革 の 計 量 分 析 大 阪 大 学 経 済 学 論 集 大 阪 大 学 大 学 院 経 済 学 研 究 科 38 (3 27) 今 回 のシミュレーションでは, 非 課 税 や 免 税, 簡 易 課 税 制 度, 輸 出 還 付 等 を 捨 象 し た こ と, 1995 年 の 24 部 門 表 を 使 っていたので 税 率 の 適 用 に も 各 部 門 の 平 均 値 をとって 粗 い 推 計 になっている. そして 分 税 制 導 入 当 時 の 推 計 しか 行 ってない. 今 後 は, 部 門 数 を 増 やして 多 部 門 の 税 率 の 平 均 では なくもっと 実 際 の 税 率 に 近 い 税 率 を 適 用 して, 輸 出 還 付 政 策 も 還 付 率 を 実 際 値 に 近 い 値 を 考 慮 し, そして 分 税 制 後 現 在 に 至 るまでのいくつかの 税 制 政 策 の 変 化 も 全 部 捉 えた 場 合 の 生 産 者 価 格 と 購 入 価 格 の 区 別 も 含 めて, 現 在 の 税 制 が 部 門 別 にどの ような 価 格 変 化 を 起 こし,そして 消 費 者 にはどの ように 影 響 を 及 ぼしたかについても 研 究 課 題 とし ていきたい. 4),1989 年. 藤 川 清 史, 消 費 税 導 入 の 経 済 効 果 伝 票 方 式 と 帳 簿 方 式 の 相 違 を 考 慮 した 産 業 連 関 分 析 大 阪 経 大 論 集, 大 阪 経 大 学 会 42 ⑶ 9,1991 年. 藤 川 清 史, 消 費 税 導 入 の 経 済 効 果 1990 年 産 業 連 関 表 を 用 いた 予 測 とその 評 価 甲 南 経 済 学 論 集 甲 南 大 学 経 済 学 38 ⑴,1997 年. 曹 瑞 林, 現 代 中 国 税 制 の 研 究 : 中 国 の 市 場 経 済 化 と 税 制 改 革, 御 茶 の 水 書 房,2004 年. 呉 敬 琏, 現 代 中 国 の 経 済 改 革,NTT 出 版 株 式 会 社,2007 年. 中 国 語 文 献 &ホームページ: 中 国 财 政 年 鉴, 中 国 财 政 杂 志 社, 各 年 度 版. 中 国 统 计 年 鉴, 中 国 统 计 出 版 社, 各 年 度 版. 中 国 税 務 年 鑑, 中 国 税 務 出 版 社, 各 年 度 版. 陳 共, 財 政 学, 中 国 人 民 大 学 出 版 社,2009 年. 金 鑫, 社 会 主 义 市 场 经 济 的 税 收 新 体 制, 中 国 税 務,1994 年 03 期. 贾 康 赵 全 厚, 中 国 経 済 改 革 30 年 財 政 税 収 巻, 重 慶 大 学 出 版 社,2008 年. 赵 云 旗, 中 国 分 税 制 財 政 体 制 研 究, 经 济 科 学 出 版 社,2005. 国 家 税 务 总 局 网,http://www.chinatax.gov.cn/ n480462/index.html. 新 华 网,http://news.xinhuanet.com. 中 国 税 收 咨 询 网,http://www.tax.com.cn. 中 华 人 民 共 和 国 财 政 部 网,http://www.china.com. cn/policy/txt/2006-06/03/content_6228540. htm. 英 語 文 献 : Mun-Heng TOH & Qian Lin, An Evaluation of the 1994 Tax Reform in China Using a General Equilibrium Model,Chaina Economic Review 16,North Holland,2005 年. [シ ン セ ツ バ イ 横 浜 国 立 大 学 大 学 院 国 際 社 会 科 学 研 究 科 博 士 課 程 後 期 ] [はせべ ゆういち 横 浜 国 立 大 学 経 済 学 部 教 授 ]