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集 団 的 自 衛 権 の 行 使 容 認 と 安 全 保 障 法 制 整 備 の 基 本 方 針 閣 議 決 定 を 受 けての 国 会 論 戦 の 概 要 外 交 防 衛 委 員 会 調 査 室 中 内 康 夫 はじめに 安 全 保 障 法 制 の 見 直 しに 向 けて 検 討 を 進 めてきた 安 倍 内 閣 は 平 成 26 年 7 月 1 日 新 た な 安 全 保 障 法 制 の 整 備 のための 基 本 方 針 ( 国 の 存 立 を 全 うし 国 民 を 守 るための 切 れ 目 の ない 安 全 保 障 法 制 の 整 備 について 1 )の 閣 議 決 定 を 行 った この 閣 議 決 定 では これまで の 政 府 の 憲 法 解 釈 を 一 部 変 更 し 従 来 は 認 められないとしてきた 集 団 的 自 衛 権 2 の 行 使 を 限 定 的 に 容 認 したほか 他 国 軍 隊 への 後 方 支 援 や 国 連 平 和 維 持 活 動 (PKO)における 自 衛 隊 の 活 動 内 容 の 見 直 し 武 力 攻 撃 に 至 らない 侵 害 3 への 対 処 能 力 の 向 上 等 が 掲 げられ これ らを 実 現 するため 今 後 国 内 法 整 備 を 進 めていくとの 方 針 が 示 されている 閣 議 決 定 に 至 るまでの 間 国 会 においても 政 府 や 与 党 における 検 討 状 況 を 踏 まえつつ 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 を 認 めることの 是 非 やその 手 続 の 在 り 方 などについて 幅 広 い 議 論 が 行 われた そして 7 月 1 日 の 閣 議 決 定 により 政 府 の 新 たな 見 解 方 針 が 定 まった 後 初 の 国 会 論 戦 となった7 月 14 日 及 び 15 日 の 衆 参 予 算 委 員 会 の 集 中 審 議 では 各 会 派 の 委 員 か ら 閣 議 決 定 に 対 して 様 々な 観 点 からの 質 疑 があり これに 対 して 安 倍 総 理 を 始 めとした 政 府 側 からの 答 弁 が 行 われた 以 上 を 踏 まえ 本 稿 では 安 倍 内 閣 における 安 全 保 障 法 制 の 見 直 しに 向 けてのこれまで の 動 きを 振 り 返 り 7 月 1 日 の 閣 議 決 定 の 内 容 を 概 観 した 上 で 上 記 の 衆 参 予 算 委 員 会 の 集 中 審 議 における 主 な 論 議 を 紹 介 することとしたい 4 なお 本 稿 における 人 物 の 肩 書 はい ずれも 当 時 のものである 1 内 閣 官 房 ウェブサイト http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/anpohosei.pdf 2 集 団 的 自 衛 権 とは 自 国 と 密 接 な 関 係 にある 外 国 に 対 する 武 力 攻 撃 を 自 国 が 直 接 攻 撃 されていないにもか かわらず 実 力 をもって 阻 止 する 権 利 をいう( 防 衛 省 平 成 25 年 版 日 本 の 防 衛 - 防 衛 白 書 - ( 平 成 25 年 7 月 )101 頁 ) 3 政 府 は 武 力 攻 撃 とは 一 般 に 我 が 国 に 対 する 組 織 的 計 画 的 な 武 力 の 行 使 をいう としている( 武 力 攻 撃 事 態 に 関 する 質 問 に 対 する 答 弁 書 ( 内 閣 衆 質 154 第 66 号 平 14.5.24)) 武 力 攻 撃 に 至 らない 侵 害 がある 場 合 は 領 土 や 主 権 海 洋 における 経 済 権 益 等 をめぐり 純 然 たる 平 時 でも 有 事 でもない 事 態 いわば グ レーゾーンの 事 態 が 生 じていることが 想 定 される 4 本 号 の 特 集 テーマは 第 186 回 国 会 ( 常 会 平 成 26 年 1 月 24 日 ~6 月 22 日 )の 論 議 紹 介 であり 同 国 会 で は 集 団 的 自 衛 権 の 問 題 等 安 全 保 障 法 制 に 関 する 議 論 も 数 多 く 行 われ 安 倍 内 閣 としての 問 題 意 識 や 検 討 課 題 等 についての 説 明 がなされている しかし 見 直 しの 具 体 的 な 内 容 について 政 府 は 有 識 者 会 議 の 議 論 の 成 果 を 確 認 した 上 で 政 府 としての 対 応 を 検 討 してまいりたい 与 党 協 議 会 における 検 討 の 結 果 に 基 づき 政 府 としての 対 応 を 検 討 することとしている 等 の 答 弁 を 行 い 閣 議 決 定 の 前 は 集 団 的 自 衛 権 に 関 する 憲 法 解 釈 の 変 更 の 有 無 を 含 め 政 府 としてどのような 見 直 しを 行 うのか 最 終 的 な 見 解 はまだ 示 せないと していた そのため 本 稿 では 紙 幅 の 関 係 もあり 7 月 1 日 の 閣 議 決 定 により 政 府 の 新 たな 見 解 方 針 が 定 まった 後 に 閉 会 中 審 査 として 行 われた 衆 参 予 算 委 員 会 の 集 中 審 議 における 論 議 を 中 心 に 取 り 上 げ 3. 衆 参 予 算 委 員 会 における 集 中 審 議 の 概 要 で 紹 介 することとした なお 国 会 開 会 中 の 論 議 は 1. 安 倍 内 閣 における 安 全 保 障 法 制 見 直 しに 向 けての 動 き の 中 で 幾 つか 取 り 上 げている 立 法 と 調 査 2014.9 No. 356( 参 議 院 事 務 局 企 画 調 整 室 編 集 発 行 ) 23

1. 安 倍 内 閣 における 安 全 保 障 法 制 見 直 しに 向 けての 動 き (1) 第 1 次 安 倍 内 閣 における 安 保 法 制 懇 の 開 催 と 安 倍 総 理 辞 任 後 の 報 告 書 提 出 平 成 18 年 9 月 26 日 第 1 次 安 倍 内 閣 が 発 足 すると 集 団 的 自 衛 権 の 問 題 等 政 府 の 憲 法 解 釈 の 見 直 しに 積 極 的 な 姿 勢 を 示 していた 安 倍 総 理 は 翌 19 年 5 月 18 日 に 有 識 者 から 成 る 安 全 保 障 の 法 的 基 盤 の 再 構 築 に 関 する 懇 談 会 5 ( 安 保 法 制 懇 )を 開 催 し 4つの 類 型 (1 公 海 における 米 艦 防 護 2 米 国 に 向 かうかもしれない 弾 道 ミサイルの 迎 撃 3 国 際 的 な 平 和 活 動 における 武 器 使 用 4 同 じPKOなどに 参 加 している 他 国 の 活 動 に 対 する 後 方 支 援 )に 関 する 問 題 意 識 を 示 し 憲 法 との 関 係 の 整 理 について 検 討 を 指 示 した 同 懇 談 会 は 安 倍 総 理 の 辞 任 (19 年 9 月 26 日 ) 後 の 20 年 6 月 24 日 報 告 書 6 を 後 継 の 福 田 総 理 に 提 出 した 同 報 告 書 は 上 記 の4 類 型 について 検 討 した 上 で これまでの 政 府 の 解 釈 は 激 変 した 国 際 情 勢 及 び 我 が 国 の 国 際 的 地 位 に 照 らせばもはや 妥 当 しなくなって きており むしろ 憲 法 第 9 条 は 個 別 的 自 衛 権 はもとより 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 や 国 連 の 集 団 安 全 保 障 への 参 加 を 禁 ずるものではないと 解 釈 すべき 旨 などを 提 言 した しかし 従 来 より 憲 法 解 釈 の 変 更 に 慎 重 な 姿 勢 を 示 してきた 福 田 総 理 は 同 報 告 書 を 受 け 取 った 後 も 政 府 内 に 具 体 的 な 検 討 は 指 示 せず その 後 議 論 は 進 まなかった その 後 の 麻 生 内 閣 や 政 権 交 代 後 の 民 主 党 政 権 においても 集 団 的 自 衛 権 等 の 憲 法 解 釈 の 見 直 しについて 政 府 としての 具 体 的 な 検 討 の 動 きは 見 られなかった (2) 第 2 次 安 倍 内 閣 の 発 足 と 安 保 法 制 懇 の 再 開 平 成 24 年 の 衆 議 院 議 員 総 選 挙 の 結 果 同 年 12 月 26 日 に 自 民 党 と 公 明 党 の 連 立 政 権 であ る 第 2 次 安 倍 内 閣 が 発 足 すると 翌 25 年 2 月 8 日 には 安 保 法 制 懇 が 再 開 され 安 倍 総 理 は 我 が 国 の 平 和 と 安 全 を 維 持 するために 何 をなすべきか 我 が 国 をめぐる 安 全 保 障 環 境 の 変 化 を 念 頭 に 置 いて 改 めて 検 討 するよう 指 示 した その 後 同 年 10 月 3 日 の 日 米 安 全 保 障 協 議 委 員 会 (2+2)の 共 同 発 表 では 日 本 の 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 に 関 する 事 項 を 含 む 自 国 の 安 全 保 障 の 法 的 基 盤 の 再 検 討 などの 取 組 を 米 国 が 歓 迎 する 旨 が 記 述 され 翌 26 年 4 月 25 日 の 日 米 首 脳 会 談 後 の 共 同 声 明 においては 米 国 は 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 に 関 する 事 項 について 日 本 が 検 討 を 行 っていることを 歓 迎 し 支 持 する と 明 記 されるなど 安 倍 内 閣 の 取 組 に 対 する 米 国 の 支 持 が 明 らかになった また 26 年 1 月 に 第 186 回 国 会 が 召 集 されると 安 倍 総 理 は 施 政 方 針 演 説 の 中 で 集 団 的 自 衛 権 や 集 団 安 全 保 障 などについて 安 保 法 制 懇 の 報 告 を 踏 まえ 対 応 を 検 討 してい くと 表 明 し 7 その 後 この 問 題 での 国 会 論 戦 も 本 格 化 した 特 に 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 を 認 めるには 憲 法 改 正 が 必 要 であるとの 過 去 の 内 閣 法 制 局 長 官 の 答 弁 もあることから 8 安 倍 内 閣 が 憲 法 改 正 の 手 続 を 採 らず 政 府 の 憲 法 解 釈 の 変 更 5 座 長 は 柳 井 俊 二 国 際 海 洋 法 裁 判 所 判 事 ( 元 外 務 事 務 次 官 ) 平 成 25 年 2 月 の 再 開 後 は 北 岡 伸 一 国 際 大 学 学 長 が 座 長 代 理 に 就 任 6 安 全 保 障 の 法 的 基 盤 の 再 構 築 に 関 する 懇 談 会 報 告 書 ( 平 成 20 年 6 月 24 日 ) ( 首 相 官 邸 ウェブサイト http://www.kantei.go.jp/jp/singi/anzenhosyou/houkokusho.pdf ) 7 第 186 回 国 会 衆 議 院 本 会 議 録 第 1 号 5 頁 ( 平 26.1.24) 参 議 院 本 会 議 録 第 1 号 7 頁 ( 平 26.1.24) 8 第 98 回 国 会 衆 議 院 予 算 委 員 会 議 録 第 12 号 28 頁 ( 昭 58.2.22) 角 田 内 閣 法 制 局 長 官 の 答 弁 24

によって 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 を 認 めようとしていることの 問 題 が 繰 り 返 し 指 摘 された これに 対 して 安 倍 総 理 は そもそも 憲 法 には 個 別 的 自 衛 権 や 集 団 的 自 衛 権 についての 明 文 の 規 定 はなく 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 が 認 められるという 判 断 も 政 府 が 適 切 な 形 で 新 しい 解 釈 を 明 らかにすることによって 可 能 であり 憲 法 改 正 が 必 要 だという 指 摘 は 必 ずしも 当 たらない との 認 識 を 示 した 9 この 点 について 従 来 の 政 府 見 解 と 異 なっているとの 指 摘 を 受 けた 安 倍 総 理 は 先 程 から 法 制 局 に 答 弁 を 求 めているが 最 高 の 責 任 者 は 私 です 選 挙 で 国 民 の 審 判 を 受 けるのは 法 制 局 長 官 ではなく 私 なんです 10 と 発 言 したが 野 党 やマスコミから 立 憲 主 義 に 反 するといった 批 判 を 受 けることとなった 11 (3) 安 保 法 制 懇 の2 度 目 の 報 告 書 提 出 と 安 倍 総 理 の 記 者 会 見 安 保 法 制 懇 は 合 計 7 回 の 公 式 会 合 を 経 て 平 成 26 年 5 月 15 日 2 度 目 の 報 告 書 12 を 安 倍 総 理 に 提 出 した 同 報 告 書 は 憲 法 解 釈 の 現 状 と 問 題 点 を 指 摘 した 後 あるべき 憲 法 解 釈 として 集 団 的 自 衛 権 集 団 安 全 保 障 措 置 武 力 攻 撃 に 至 らない 侵 害 への 対 応 等 につ いての 提 言 を 行 っている( 表 1 参 照 ) 集 団 的 自 衛 権 表 1 安 保 法 制 懇 報 告 書 ( 平 成 26 年 5 月 )における 主 な 提 言 憲 法 第 9 条 の 規 定 は 我 が 国 が 当 事 国 である 国 際 紛 争 の 解 決 のために 武 力 による 威 嚇 又 は 武 力 の 行 使 を 行 うことを 禁 止 したものと 解 すべきであり 自 衛 のための 武 力 の 行 使 は 禁 じられ ていないと 解 すべき 自 衛 のための 措 置 は 必 要 最 小 限 度 の 範 囲 にとどまるべき とのこれまでの 政 府 解 釈 に 立 っ たとしても 必 要 最 小 限 度 の 中 に 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 も 含 まれると 解 釈 すべき 軍 事 的 措 置 を 伴 う 国 連 の 集 団 安 全 保 障 措 置 我 が 国 が 当 事 国 である 国 際 紛 争 を 解 決 する 手 段 としての 武 力 の 行 使 には 当 たらず 憲 法 上 の 制 約 はないと 解 釈 すべき 他 国 軍 隊 への 後 方 支 援 武 力 の 行 使 との 一 体 化 論 の 考 えはもはや 採 らず 政 策 的 妥 当 性 の 問 題 と 位 置 付 けるべき PKO 在 外 自 国 民 保 護 救 出 国 際 治 安 協 力 憲 法 第 9 条 の 禁 じる 武 力 の 行 使 には 当 たらないと 解 釈 すべき このような 活 動 における 武 器 の 使 用 (PKOにおける 駆 け 付 け 警 護 や 妨 害 排 除 を 含 む )に 憲 法 上 の 制 約 はないと 解 釈 す べき 武 力 攻 撃 に 至 らない 侵 害 への 対 応 武 力 攻 撃 ( 組 織 的 計 画 的 な 武 力 の 行 使 ) かどうか 判 別 がつかない 侵 害 であっても そのよ うな 侵 害 を 排 除 する 自 衛 隊 の 必 要 最 小 限 度 の 国 際 法 上 合 法 な 行 動 は 憲 法 上 容 認 されるべき ( 出 所 ) 安 全 保 障 の 法 的 基 盤 の 再 構 築 に 関 する 懇 談 会 報 告 書 のポイント より 抜 粋 9 第 186 回 国 会 参 議 院 予 算 委 員 会 会 議 録 第 2 号 5 頁 ( 平 26.2.5) 10 第 186 回 国 会 衆 議 院 予 算 委 員 会 議 録 第 6 号 4 頁 ( 平 26.2.12) 11 首 相 発 言 強 まる 批 判 朝 日 新 聞 ( 平 26.2.15) 首 相 発 言 広 がる 懸 念 毎 日 新 聞 ( 平 26.2.15) 等 12 安 全 保 障 の 法 的 基 盤 の 再 構 築 に 関 する 懇 談 会 報 告 書 ( 平 成 26 年 5 月 15 日 ) ( 首 相 官 邸 ウェブサイト http://www.kantei.go.jp/jp/singi/anzenhosyou2/dai7/houkoku.pdf ) 25

同 報 告 書 の 提 出 を 受 けて 同 日 安 倍 総 理 は 記 者 会 見 を 開 き 今 後 の 検 討 の 進 め 方 につ いての 基 本 的 方 向 性 を 示 した 13 その 中 で 安 倍 総 理 は 同 報 告 書 が 示 した2つの 考 え 方 のうち 自 衛 のための 武 力 の 行 使 や 軍 事 的 措 置 を 伴 う 国 連 の 集 団 安 全 保 障 措 置 への 参 加 に 憲 法 上 の 制 約 はないとする 考 え 方 いわゆる 芦 田 修 正 論 を 政 府 は 採 用 しないとし 我 が 国 の 安 全 に 重 大 な 影 響 を 及 ぼす 可 能 性 があるとき 限 定 的 に 集 団 的 自 衛 権 を 行 使 することは 許 されるとする 考 え 方 について 政 府 として 今 後 更 に 研 究 を 進 めていくと 表 明 した 国 会 において 芦 田 修 正 論 を 採 用 しない 理 由 を 質 された 安 倍 総 理 は この 考 え 方 は 武 力 の 行 使 や 実 力 の 保 持 が 認 められるのは 自 衛 のための 必 要 最 小 限 度 に 限 られるとするこれ までの 政 府 解 釈 と 論 理 的 に 整 合 しないため 採 用 できないと 判 断 した と 説 明 している 14 (4) 与 党 協 議 会 の 開 催 と 新 たな 安 全 保 障 法 制 整 備 のための 基 本 方 針 の 閣 議 決 定 安 倍 総 理 が 記 者 会 見 で 示 した 基 本 的 方 向 性 に 基 づき 平 成 26 年 5 月 20 日 には 自 民 党 と 公 明 党 による 安 全 保 障 法 制 整 備 に 関 する 与 党 協 議 会 の 初 会 合 が 開 催 された 同 月 27 日 には 政 府 から 現 在 の 憲 法 解 釈 法 制 度 では 対 処 に 支 障 があるとする 15 事 例 に1 参 考 事 例 を 加 えた 事 例 集 が 与 党 協 議 会 に 提 示 された( 表 2 参 照 ) 表 2 政 府 が 与 党 協 議 会 に 提 示 した 事 例 武 力 攻 撃 に 至 らない 侵 害 への 対 処 事 例 1: 離 島 等 における 不 法 行 為 への 対 処 事 例 2: 公 海 上 で 訓 練 などを 実 施 中 の 自 衛 隊 が 遭 遇 した 不 法 行 為 への 対 処 事 例 3: 弾 道 ミサイル 発 射 警 戒 時 の 米 艦 防 護 ( 参 考 ) 領 海 内 で 潜 没 航 行 する 外 国 の 軍 用 潜 水 艦 への 対 処 国 連 PKOを 含 む 国 際 協 力 等 事 例 4: 侵 略 行 為 に 対 抗 するための 国 際 協 力 としての 支 援 事 例 5: 駆 け 付 け 警 護 事 例 6: 任 務 遂 行 のための 武 器 使 用 事 例 7: 領 域 国 の 同 意 に 基 づく 邦 人 救 出 武 力 の 行 使 に 当 たり 得 る 活 動 事 例 8: 邦 人 輸 送 中 の 米 輸 送 艦 の 防 護 事 例 9: 武 力 攻 撃 を 受 けている 米 艦 の 防 護 事 例 10: 強 制 的 な 停 船 検 査 事 例 11: 米 国 に 向 け 我 が 国 上 空 を 横 切 る 弾 道 ミサイル 迎 撃 事 例 12: 弾 道 ミサイル 発 射 警 戒 時 の 米 艦 防 護 事 例 13: 米 本 土 が 武 力 攻 撃 を 受 け 我 が 国 近 隣 で 作 戦 を 行 う 時 の 米 艦 防 護 事 例 14: 国 際 的 な 機 雷 掃 海 活 動 への 参 加 事 例 15: 民 間 船 舶 の 国 際 共 同 護 衛 ( 出 所 ) 平 成 26 年 5 月 27 日 に 政 府 が 与 党 協 議 会 に 提 示 した 事 例 集 の 目 次 部 分 その 後 政 府 としての 検 討 も 同 時 に 進 められる 中 与 党 協 議 会 は 事 例 集 に 示 され た 各 事 例 も 踏 まえつつ 武 力 攻 撃 に 至 らない 侵 害 への 対 処 国 連 PKOを 含 む 国 際 協 力 等 及 び 武 力 の 行 使 に 当 たり 得 る 活 動 ( 集 団 的 自 衛 権 の 問 題 等 )に 関 する 協 議 を 進 め 同 13 首 相 官 邸 ウェブサイト <http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/0515kaiken.html> 14 第 186 回 国 会 参 議 院 外 交 防 衛 委 員 会 会 議 録 第 19 号 9~10 頁 ( 平 26.5.29) 26

年 7 月 1 日 の 第 11 回 会 合 において 自 公 両 党 は 憲 法 解 釈 の 一 部 変 更 を 含 む 新 たな 安 全 保 障 法 制 の 整 備 のための 基 本 方 針 を 了 承 するに 至 った 15 これを 受 け 安 倍 内 閣 は 同 日 同 基 本 方 針 を 国 家 安 全 保 障 会 議 に 諮 った 後 閣 議 決 定 した 安 倍 総 理 は 閣 議 決 定 後 の 記 者 会 見 16 で 万 全 の 備 えをすること 自 体 が 日 本 に 戦 争 を 仕 掛 けようとする 企 みをくじく 大 きな 力 を 持 っている と 抑 止 力 の 重 要 性 を 訴 えた 上 で 今 回 の 閣 議 決 定 によって 日 本 が 戦 争 に 巻 き 込 まれるおそれは 一 層 なくなっていく と 述 べて 国 民 に 理 解 を 求 めた( 以 上 の 経 緯 について 表 3 参 照 ) 表 3 安 倍 内 閣 における 安 全 保 障 法 制 の 見 直 しに 向 けての 動 き 平 成 18 年 9 月 26 日 19 年 5 月 18 日 9 月 26 日 20 年 6 月 24 日 24 年 12 月 26 日 25 年 2 月 8 日 10 月 3 日 26 年 1 月 24 日 4 月 25 日 5 月 15 日 5 月 20 日 5 月 27 日 7 月 1 日 第 1 次 安 倍 内 閣 が 発 足 安 全 保 障 の 法 的 基 盤 の 再 構 築 に 関 する 懇 談 会 ( 安 保 法 制 懇 )の 初 会 合 安 倍 内 閣 総 辞 職 安 保 法 制 懇 が 報 告 書 を 福 田 総 理 に 提 出 (その 後 検 討 は 進 まず) 第 2 次 安 倍 内 閣 が 発 足 安 保 法 制 懇 再 開 日 米 安 全 保 障 協 議 委 員 会 (2+2)の 共 同 発 表 において 日 本 の 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 に 関 する 事 項 等 の 検 討 の 取 組 を 米 国 が 歓 迎 する 旨 を 記 述 安 倍 総 理 施 政 方 針 演 説 で 集 団 的 自 衛 権 への 対 応 等 について 言 及 日 米 首 脳 会 談 後 の 共 同 声 明 において 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 に 関 する 事 項 に ついて 日 本 が 検 討 を 行 っていることを 米 国 が 歓 迎 支 持 する 旨 を 記 述 安 保 法 制 懇 が2 度 目 の 報 告 書 を 安 倍 総 理 に 提 出 自 民 党 と 公 明 党 による 安 全 保 障 法 制 整 備 に 関 する 与 党 協 議 会 の 初 会 合 政 府 が 与 党 協 議 会 に 事 例 集 を 提 示 与 党 協 議 会 において 自 公 両 党 が 閣 議 決 定 案 を 了 承 安 倍 内 閣 が 新 たな 安 全 保 障 法 制 整 備 のための 基 本 方 針 を 閣 議 決 定 ( 出 所 ) 筆 者 作 成 2. 閣 議 決 定 の 概 要 平 成 26 年 7 月 1 日 に 閣 議 決 定 された 新 たな 安 全 保 障 法 制 の 整 備 のための 基 本 方 針 ( 国 の 存 立 を 全 うし 国 民 を 守 るための 切 れ 目 のない 安 全 保 障 法 制 の 整 備 について )は 前 文 部 分 で 我 が 国 を 取 り 巻 く 安 全 保 障 環 境 が 厳 しさを 増 していることなどを 記 述 しているほか 1 武 力 攻 撃 に 至 らない 侵 害 への 対 処 2 国 際 社 会 の 平 和 と 安 定 への 一 層 の 貢 献 3 憲 法 第 9 条 の 下 で 許 容 される 自 衛 の 措 置 4 今 後 の 国 内 法 整 備 の 進 め 方 という4つの 柱 に 沿 っ て 安 全 保 障 法 制 の 整 備 に 向 けての 政 府 の 基 本 方 針 を 示 している 報 道 等 で 大 きく 取 り 上 げられているのは3の 部 分 で これまでの 政 府 の 憲 法 解 釈 を 一 部 変 更 し 従 来 は 認 められないとしてきた 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 を 限 定 的 に 容 認 しているが 15 内 閣 法 制 局 は 与 党 協 議 会 の 議 論 が 開 始 された 後 内 閣 官 房 から 配 付 資 料 等 の 送 付 を 受 け 必 要 に 応 じて 説 明 を 受 けるとともに 担 当 者 間 で 意 見 交 換 し 部 内 においても 資 料 等 によって 検 討 を 行 っていた 6 月 30 日 内 閣 官 房 から 閣 議 決 定 の 案 文 が 正 式 に 送 付 され 意 見 を 求 められたことから 最 終 的 な 検 討 を 行 い 翌 7 月 1 日 意 見 はない 旨 を 回 答 した( 第 186 回 国 会 閉 会 後 参 議 院 予 算 委 員 会 会 議 録 第 1 号 23 頁 ( 平 26.7.15)) 16 首 相 官 邸 ウェブサイト <http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/0701kaiken.html> 27

それ 以 外 にも 1で 武 力 攻 撃 に 至 らない 侵 害 への 対 処 能 力 の 向 上 2で 他 国 軍 隊 への 後 方 支 援 や 国 連 PKOにおける 自 衛 隊 の 活 動 内 容 の 見 直 し 等 を 掲 げ 4では これらを 実 現 す るため 今 後 国 内 法 整 備 を 進 めていくとの 方 針 が 示 されている( 表 4 参 照 ) なお 国 内 法 整 備 について 政 府 は 閣 議 決 定 を 受 け 内 閣 官 房 国 家 安 全 保 障 局 の 下 に 法 案 作 成 チームを 立 ち 上 げている 報 道 によれば 関 連 法 案 は 10 数 本 に 及 ぶ 見 通 しだが 17 政 府 は それらを 一 括 して 平 成 27 年 の 通 常 国 会 に 提 出 する 方 針 であるとされる 18 表 4 平 成 26 年 7 月 1 日 の 閣 議 決 定 のポイント 1. 武 力 攻 撃 に 至 らない 侵 害 への 対 処 離 島 周 辺 などでの 不 法 行 為 に 対 応 するため 自 衛 隊 による 治 安 出 動 や 海 上 警 備 行 動 の 発 令 手 続 の 迅 速 化 を 図 るための 方 策 を 具 体 的 に 検 討 する 自 衛 隊 法 第 95 条 ( 武 器 等 防 護 )の 武 器 使 用 の 考 え 方 を 参 考 としつつ 自 衛 隊 と 連 携 して 我 が 国 の 防 衛 に 資 する 活 動 を 行 っている 米 軍 部 隊 の 武 器 等 を 防 護 するために 自 衛 隊 が 武 器 使 用 することが 可 能 となるように 法 整 備 を 行 う 2. 国 際 社 会 の 平 和 と 安 定 への 一 層 の 貢 献 他 国 軍 隊 への 後 方 支 援 では 武 力 の 行 使 との 一 体 化 論 は 前 提 とした 上 で 従 来 の 後 方 地 域 や 非 戦 闘 地 域 といった 枠 組 みは 止 め 他 国 軍 隊 が 現 に 戦 闘 行 為 を 行 ってい る 現 場 以 外 での 補 給 輸 送 等 の 支 援 活 動 は 可 能 であるとし 必 要 な 法 整 備 を 行 う 国 連 PKO 等 に 携 わる 自 衛 隊 が 駆 け 付 け 警 護 や 任 務 遂 行 のための 武 器 使 用 を 行 う ことができるように 法 整 備 を 行 う 自 衛 隊 の 部 隊 が 領 域 国 政 府 の 同 意 に 基 づき 邦 人 救 出 などの 警 察 的 な 活 動 を 行 う 場 合 には 当 該 領 域 国 政 府 の 権 力 の 及 ぶ 範 囲 で 活 動 することは 当 然 である 3. 憲 法 第 9 条 の 下 で 許 容 される 自 衛 の 措 置 我 が 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が 発 生 した 場 合 のみならず 我 が 国 と 密 接 な 関 係 にある 他 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が 発 生 し これにより 我 が 国 の 存 立 が 脅 かされ 国 民 の 生 命 自 由 及 び 幸 福 追 求 の 権 利 が 根 底 から 覆 される 明 白 な 危 険 がある 場 合 において これを 排 除 し 我 が 国 の 存 立 を 全 うし 国 民 を 守 るために 他 に 適 当 な 手 段 がないときに 必 要 最 小 限 度 の 実 力 を 行 使 することは 従 来 の 政 府 見 解 の 基 本 的 な 論 理 に 基 づく 自 衛 のための 措 置 として 憲 法 上 許 容 される 憲 法 上 許 容 される 上 記 の 武 力 の 行 使 は 国 際 法 上 は 集 団 的 自 衛 権 が 根 拠 となる 場 合 がある 他 国 に 武 力 攻 撃 が 発 生 した 場 合 に 自 衛 隊 に 出 動 を 命 ずるに 際 しては 現 在 の 防 衛 出 動 の 場 合 と 同 様 原 則 として 事 前 に 国 会 の 承 認 を 求 めることを 法 案 に 明 記 する 4. 今 後 の 国 内 法 整 備 の 進 め 方 実 際 に 自 衛 隊 が 活 動 を 実 施 できるようにするためには 根 拠 となる 国 内 法 が 必 要 であり 政 府 として 法 案 の 作 成 作 業 を 開 始 することとし 準 備 ができ 次 第 国 会 に 提 出 する ( 出 所 ) 筆 者 作 成 17 関 連 法 案 十 数 本 を 想 定 毎 日 新 聞 ( 平 26.7.2) 等 18 安 保 法 案 通 常 国 会 提 出 へ 政 府 一 括 で 日 本 経 済 新 聞 夕 刊 ( 平 26.7.7) 等 28

3. 衆 参 予 算 委 員 会 における 集 中 審 議 の 概 要 平 成 26 年 7 月 1 日 の 閣 議 決 定 を 受 け 国 会 は 閉 会 中 であったが 同 月 14 日 に 衆 議 院 予 算 委 員 会 15 日 に 参 議 院 予 算 委 員 会 で 外 交 安 全 保 障 問 題 に 関 する 集 中 審 議 が 行 われた 以 下 その 概 要 を 紹 介 する 19 (1) 我 が 国 を 取 り 巻 く 安 全 保 障 環 境 と 抑 止 力 に 関 する 認 識 閣 議 決 定 の 中 では 我 が 国 を 取 り 巻 く 安 全 保 障 環 境 が 変 容 していることが 記 述 されてい るが 改 めて 政 府 の 認 識 が 質 された これに 対 して 岸 田 外 務 大 臣 は 憲 法 施 行 から 67 年 が 経 ち その 間 我 が 国 を 取 り 巻 く 安 全 保 障 環 境 は 根 本 的 に 変 容 し 近 年 一 層 厳 しさを 増 している との 認 識 を 示 し その 具 体 例 として 1 大 量 破 壊 兵 器 弾 道 ミサイル 等 の 軍 事 技 術 の 高 度 化 拡 散 の 下 アジアでは 北 朝 鮮 が 我 が 国 の 大 部 分 をノドン ミサイルの 射 程 内 に 入 れ 弾 道 ミサイルの 発 射 を 繰 り 返 すとともに 核 開 発 も 続 けていること 2 中 国 インド 等 の 新 興 国 の 台 頭 により グローバルなパワーバランスが 変 化 していること 3 国 際 テロの 脅 威 が 高 まっていること 4 海 洋 宇 宙 サイバー 等 へのアクセスを 妨 げる リスクが 深 刻 化 していること などを 挙 げた また 安 倍 総 理 は 米 軍 と 自 衛 隊 の 関 係 も 終 戦 直 後 や 自 衛 隊 が 創 設 された 当 時 と 現 在 では 全 く 異 なっており それを 踏 まえて 自 衛 隊 がしっかりとその 役 割 を 果 たすことにより 米 軍 との 間 で 一 足 す 一 を 二 とする こと ができるようになり 抑 止 力 は 強 化 されるとの 認 識 を 示 した その 上 で もはや どの 国 も 一 国 のみで 自 国 を 守 ることができない 状 況 において 抑 止 力 の 向 上 と 地 域 及 び 国 際 社 会 の 平 和 と 安 定 にこれまで 以 上 に 積 極 的 に 貢 献 をしていくことを 通 じて 我 が 国 の 平 和 と 安 全 を 一 層 確 かなものにするとの 観 点 から 閣 議 決 定 を 行 った と 説 明 した 20 安 倍 総 理 が 抑 止 力 を 強 調 することに 対 しては 抑 止 力 万 能 主 義 では 安 全 保 障 のジレン マ に 陥 ってしまい 軍 拡 競 争 になるのではないかとの 懸 念 が 示 された これに 対 して 安 倍 総 理 は 日 米 同 盟 の 抑 止 力 の 重 要 性 を 強 調 した 上 で 平 成 25 年 12 月 に 決 定 した 中 期 防 衛 力 整 備 計 画 で 5 年 間 防 衛 費 を 増 やしていくことを 既 に 決 めているが それは 平 成 14 年 の 水 準 に 戻 るだけであり 今 回 の 閣 議 決 定 でそれを 変 更 することはないとの 考 えを 示 し 現 在 のアジア 情 勢 の 変 化 を 勘 案 すれば 決 して 軍 拡 ではない と 反 論 した 21 また 今 回 の 閣 議 決 定 により 海 外 で 自 衛 隊 が 軍 事 活 動 をすることになれば 自 衛 隊 員 の 危 険 が 高 まるのではないか 総 理 はそのことを 正 直 に 説 明 すべきであるとの 指 摘 がなさ れた これに 対 して 安 倍 総 理 は 自 衛 隊 の 最 高 指 揮 官 である 自 分 が 自 衛 隊 員 の 安 全 につ いて 最 終 的 な 責 任 を 負 っていると 述 べた 上 で 自 衛 隊 員 は 事 に 臨 んでは 危 険 を 顧 みず 身 をもって 責 務 の 完 遂 に 努 め もって 国 民 の 負 託 にこたえる との 宣 誓 を 行 う 公 務 員 であ り その 中 での 判 断 になるとの 考 えを 示 した 加 えて それは 個 別 的 自 衛 権 においても 同 様 であり 昭 和 29 年 に 自 衛 隊 が 創 設 されたときも 自 衛 隊 員 の 命 が 危 険 にさらされるとの 批 19 7 月 14 日 の 衆 議 院 予 算 委 員 会 の 議 論 については 本 稿 執 筆 時 において 正 式 な 会 議 録 がまだ 発 行 されていない ため 審 議 中 継 新 聞 報 道 及 びその 他 の 情 報 に 基 づいている なお 集 中 審 議 の 中 では 慰 安 婦 問 題 等 安 全 保 障 法 制 の 見 直 し 以 外 の 内 容 の 質 疑 も 行 われたが それらの 議 論 はここでは 省 略 する 20 21 及 び 第 186 回 国 会 閉 会 後 参 議 院 予 算 委 員 会 会 議 録 第 1 号 46~47 頁 ( 平 26.7.15) 29

判 がなされたが 自 衛 隊 創 設 により 日 本 の 国 民 の 命 や 領 土 領 海 が 守 られてきたことを 認 識 すべき と 答 弁 した 22 (2) 集 団 的 自 衛 権 に 関 する 従 来 の 政 府 見 解 と 閣 議 決 定 で 示 された 新 見 解 との 関 係 今 回 の 閣 議 決 定 では 従 来 は 認 められないとしてきた 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 を 限 定 容 認 し たが 閣 議 決 定 の 中 でも 言 及 されている 自 衛 権 に 関 する 昭 和 47 年 の 政 府 見 解 ( 以 下 47 年 見 解 という) 23 と 新 見 解 との 整 合 性 が 質 された 横 畠 内 閣 法 制 局 長 官 は 47 年 見 解 は 憲 法 第 9 条 の 下 において 例 外 的 に 許 容 される 武 力 の 行 使 についての 考 え 方 を 詳 細 に 述 べた ものであり その 後 の 政 府 の 説 明 も ここで 示 された 考 え 方 に 基 づくものであるとした 上 で 今 回 の 閣 議 決 定 は 47 年 見 解 の 基 本 論 理 を 維 持 し その 考 え 方 を 前 提 として これに 当 てはまる 極 限 的 な 場 合 は 我 が 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が 発 生 した 場 合 に 限 られるとしてきた これまでの 認 識 を 改 め 我 が 国 と 密 接 な 関 係 にある 他 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が 発 生 し これ により 我 が 国 の 存 立 が 脅 かされ 国 民 の 生 命 自 由 及 び 幸 福 追 求 の 権 利 が 根 底 から 覆 され る 明 白 な 危 険 がある 場 合 もこれに 当 たるとしたものであり その 限 りにおいて 結 論 の 一 部 が 変 わるものであるが 47 年 見 解 の 基 本 論 理 と 整 合 するものであるとの 見 解 を 示 した 24 また 横 畠 長 官 は 47 年 見 解 において 憲 法 上 行 使 が 許 されないと 記 述 されている いわ ゆる 集 団 的 自 衛 権 について 集 団 的 自 衛 権 全 般 を 指 しているもの とし 今 回 の 閣 議 決 定 は 国 際 法 上 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 が 認 められる 場 合 の 全 てについてその 行 使 を 認 める ものではなく 新 三 要 件 の 下 我 が 国 を 防 衛 するためのやむを 得 ない 自 衛 の 措 置 として 一 部 限 定 された 場 合 において 他 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が 発 生 した 場 合 を 契 機 とする 武 力 の 行 使 を 認 めるにとどまるもの であり それ 以 外 の 自 国 防 衛 と 重 ならない 他 国 防 衛 の ために 武 力 を 行 使 することができる 権 利 として 観 念 される いわゆる 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 を 認 めるものではない と 説 明 した 25 こうした 政 府 の 説 明 に 対 しては 従 来 の 政 府 見 解 は 集 団 的 自 衛 権 を 行 使 できない 理 由 を 説 明 しているものであり それを 持 ち 出 して 限 定 的 とはいえ 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 容 認 の 根 拠 とすることは 理 解 できないとの 指 摘 もなされた これに 対 して 安 倍 総 理 は 47 年 見 解 は3つの 論 理 からなっているが 最 初 の2つの 基 本 的 な 論 理 は 変 えていないとし 我 が 国 を 取 り 巻 く 安 全 保 障 環 境 が 根 本 的 に 変 容 していることを 踏 まえ あくまでも 最 後 の 結 論 部 分 の 当 てはめを 変 更 したものであると 説 明 した 26 ( 次 頁 の 表 5 参 照 ) また 政 府 が 与 党 協 議 会 に 示 した 事 例 など 我 が 国 が 安 全 保 障 上 対 応 が 求 められている とされる 事 例 は 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 を 容 認 しなくても 個 別 的 自 衛 権 の 解 釈 を 適 正 化 す ることで 説 明 できるとの 考 え 方 に 対 する 政 府 の 認 識 が 問 われた 岸 田 外 務 大 臣 は 一 般 論 として 我 が 国 に 対 する 武 力 攻 撃 がないにもかかわらず これを 我 が 国 に 対 する 武 力 攻 撃 22 23 内 閣 法 制 局 集 団 的 自 衛 権 と 憲 法 との 関 係 ( 昭 和 47 年 10 月 14 日 参 議 院 決 算 委 員 会 提 出 資 料 ) 24 25 26 30

であると 拡 大 解 釈 して 個 別 的 自 衛 権 の 行 使 として 武 力 の 行 使 を 正 当 化 することは 国 際 法 上 できない との 見 解 を 示 し 27 また 安 倍 総 理 も 憲 法 との 関 係 では 個 別 的 自 衛 権 で 整 理 した 方 が 容 易 であると 認 めた 上 で それは 国 際 法 上 は 違 法 になる 公 海 も 領 海 だと 言 うようなもので 非 常 識 なことになる として 全 てを 個 別 的 自 衛 権 で 説 明 することは 困 難 であるとの 認 識 を 示 した 28 表 5 昭 和 47 年 の 政 府 見 解 と 平 成 26 年 7 月 の 閣 議 決 定 との 関 係 ( 政 府 の 説 明 ) 昭 和 47 年 の 参 決 算 委 提 出 資 料 で 示 された 見 解 平 成 26 年 7 月 の 閣 議 決 定 で 示 された 見 解 憲 法 は 第 九 条 において 同 条 にいわゆる 戦 争 を 放 棄 し い わゆる 戦 力 の 保 持 を 禁 止 しているが 前 文 において 全 世 界 の 国 民 が 平 和 のうちに 生 存 する 権 利 を 有 する ことを 確 認 し また 第 一 三 条 において 生 命 自 由 及 び 幸 福 追 求 に 対 す る 国 民 の 権 利 については 国 政 の 上 で 最 大 の 尊 重 を 必 基 本 的 な 論 理 を 変 更 せず 要 とする 旨 を 定 めていることからも わが 国 がみずからの 存 立 を 全 うし 国 民 が 平 和 のうちに 生 存 することまでも 放 棄 してい ないことは 明 らかであって 自 国 の 平 和 と 安 全 を 維 持 しその 存 立 を 全 うするために 必 要 な 自 衛 の 措 置 をとることを 禁 じてい るとはとうてい 解 されない しかしながら だからといって 平 和 主 義 をその 基 本 原 則 と する 憲 法 が 右 にいう 自 衛 のための 措 置 を 無 制 限 に 認 めてい るとは 解 されないのであって それは あくまで 外 国 の 武 力 攻 撃 によって 国 民 の 生 命 自 由 及 び 幸 福 追 求 の 権 利 が 根 底 か らくつがえされるという 急 迫 不 正 の 事 態 に 対 処 し 国 民 のこ 基 本 的 な 論 理 を 変 更 せず れらの 権 利 を 守 るための 止 むを 得 ない 措 置 としてはじめて 容 認 されるものであるから その 措 置 は 右 の 事 態 を 排 除 する ためとられるべき 必 要 最 小 限 度 の 範 囲 にとどまるべきもので ある パワーバランスの 変 化 や 技 術 革 新 の 急 速 な 進 展 大 量 破 壊 兵 器 などの 脅 威 等 により 我 が 国 を 取 り 巻 く 安 全 保 障 環 境 が 根 本 的 に 変 容 し 変 化 し 続 けている 状 況 を 踏 まえれば 今 後 他 国 に 対 して 発 生 する 武 力 攻 撃 であったとしても その 目 的 規 模 態 様 等 によっては 我 が 国 の 存 立 を 脅 かすことも 現 実 に 起 こり 得 る ( 略 ) 現 在 の 安 全 保 障 環 境 に 照 らして 慎 重 に 検 討 した 結 果 我 そうだとすれば わが 憲 法 の 下 で 武 力 行 使 を 行 うことが 許 さ が 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が 発 生 した 場 合 のみならず 我 が 国 と れるのは わが 国 に 対 する 急 迫 不 正 の 侵 害 に 対 処 する 場 密 接 な 関 係 にある 他 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が 発 生 し これによ 合 に 限 られるのであって したがって 他 国 に 加 えられた 武 力 り 我 が 国 の 存 立 が 脅 かされ 国 民 の 生 命 自 由 及 び 幸 福 追 攻 撃 を 阻 止 することをその 内 容 とするいわゆる 集 団 的 自 衛 権 求 の 権 利 が 根 底 から 覆 される 明 白 な 危 険 がある 場 合 におい の 行 使 は 憲 法 上 許 されないといわざるを 得 ない て これを 排 除 し 我 が 国 の 存 立 を 全 うし 国 民 を 守 るために 他 に 適 当 な 手 段 がないときに 必 要 最 小 限 度 の 実 力 を 行 使 することは 従 来 の 政 府 見 解 の 基 本 的 な 論 理 に 基 づく 自 衛 の ための 措 置 として 憲 法 上 許 容 されると 考 えるべきであると 判 断 するに 至 った ( 略 ) 憲 法 上 許 容 される 上 記 の 武 力 の 行 使 は 国 際 法 上 は 集 団 的 自 衛 権 が 根 拠 となる 場 合 がある 下 線 は 筆 者 によるもの ( 出 所 ) 筆 者 作 成 27 第 186 回 国 会 閉 会 後 参 議 院 予 算 委 員 会 会 議 録 第 1 号 3 頁 ( 平 26.7.15) 28 35 頁 31

(3) 憲 法 解 釈 変 更 の 評 価 手 続 の 妥 当 性 今 回 の 閣 議 決 定 により 憲 法 解 釈 を 変 更 したのか 解 釈 改 憲 ではないのかとの 質 疑 がな された これに 対 して 安 倍 総 理 は 閣 議 決 定 は 従 来 の 憲 法 解 釈 の 再 整 理 という 意 味 で 憲 法 解 釈 の 一 部 変 更 29 であるとし 横 畠 長 官 も 文 民 条 項 30 に 続 く2 例 目 の 憲 法 解 釈 の 変 更 に 当 たることを 認 めたが 31 他 方 これまでの 憲 法 第 9 条 をめぐる 議 論 と 整 合 する 合 理 的 な 解 釈 の 範 囲 内 のものであり 憲 法 改 正 によらなければできないことを 解 釈 の 変 更 で 行 う という 意 味 での いわゆる 解 釈 改 憲 には 当 たらない との 見 解 も 示 した 32 また 憲 法 解 釈 の 限 界 についても 質 され 安 倍 総 理 は 世 界 各 国 と 同 様 の 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 を 認 めるなど 憲 法 第 9 条 の 解 釈 に 関 する 従 来 の 政 府 見 解 の 基 本 的 な 論 理 を 超 えて 武 力 の 行 使 が 認 められるとするような 解 釈 を 現 憲 法 の 下 で 採 用 することは 困 難 であり そ の 場 合 には 憲 法 改 正 が 必 要 になる と 答 弁 した 横 畠 長 官 からも 新 三 要 件 を 超 える そ れに 該 当 しないような 武 力 の 行 使 は 現 行 の 憲 法 第 9 条 の 解 釈 では 困 難 であり そこに 及 ぶ 場 合 には 憲 法 改 正 が 必 要 であろう との 見 解 が 示 された 33 立 憲 主 義 との 関 係 も 質 され 安 倍 総 理 は 立 憲 主 義 とは 主 権 者 たる 国 民 が その 意 思 に 基 づいて 憲 法 において 国 家 権 力 の 行 使 の 在 り 方 について 定 め これにより 国 民 の 基 本 的 人 権 を 保 障 するという 近 代 憲 法 の 基 本 的 な 考 え 方 と 説 明 した 上 で 今 回 の 閣 議 決 定 は 憲 法 の 規 範 性 を 何 ら 変 更 するものではない これまでの 政 府 見 解 の 基 本 的 な 論 理 の 枠 内 における 合 理 的 な 当 てはめの 結 果 であり 立 憲 主 義 に 何 ら 反 しない との 認 識 を 示 した 34 また 閣 議 決 定 は 拙 速 で 国 民 の 理 解 は 得 られておらず 国 会 で 十 分 に 議 論 を 行 うべき との 批 判 があることへの 見 解 が 求 められた これに 対 し 安 倍 総 理 は 安 保 法 制 懇 におい て 足 掛 け7 年 実 質 2 年 半 の 議 論 を 行 い 報 告 書 を 出 してもらい 与 党 において 十 分 な 議 論 を 行 い 政 府 の 意 思 決 定 として 最 も 重 い 決 め 方 である 閣 議 決 定 を 行 った 47 年 見 解 の ときは 与 党 協 議 も 閣 議 決 定 も 行 っていない と 述 べ 手 続 が 拙 速 との 批 判 は 当 たらないと した また 国 会 との 関 係 でも これまで 求 めに 応 じて 委 員 会 等 に 出 席 し 考 え 方 を 説 明 してきたとした 上 で 今 回 の 閣 議 決 定 に 基 づいて 関 連 法 案 を 作 成 し 国 会 で 更 に 議 論 して いただく と 説 明 した 35 (4) 武 力 の 行 使 の 新 三 要 件 の 具 体 的 な 判 断 基 準 今 回 の 閣 議 決 定 により 武 力 行 使 の 要 件 が 変 更 され 個 別 的 自 衛 権 の 行 使 のみを 認 めて いた 従 来 の 自 衛 権 発 動 の 三 要 件 36 ( 以 下 旧 三 要 件 という )に 代 わり 集 団 的 29 30 憲 法 第 66 条 第 2 項 は 内 閣 総 理 大 臣 その 他 の 国 務 大 臣 は 文 民 でなければならない と 規 定 しており 政 府 は 当 初 自 衛 官 は 文 民 であるとしていたが 昭 和 40 年 に 国 会 答 弁 で 自 衛 官 は 文 民 ではないとの 見 解 を 示 し 憲 法 解 釈 を 変 更 した( 第 48 回 国 会 衆 議 院 予 算 委 員 会 議 録 第 21 号 26~27 頁 ( 昭 40.5.31)) 31 第 186 回 国 会 閉 会 後 参 議 院 予 算 委 員 会 会 議 録 第 1 号 23 頁 ( 平 26.7.15) 32 25 頁 33 34 35 36 防 衛 省 平 成 25 年 版 日 本 の 防 衛 - 防 衛 白 書 - ( 平 成 25 年 7 月 )101 頁 32

自 衛 権 の 限 定 行 使 も 可 能 な 自 衛 の 措 置 としての 武 力 の 行 使 の 新 三 要 件 37 ( 以 下 新 三 要 件 という )が 新 たに 示 されたが 各 要 件 の 用 語 の 定 義 や 具 体 的 な 判 断 基 準 が 問 われ た( 新 旧 の 三 要 件 については 表 6 参 照 ) 表 6 武 力 の 行 使 が 認 められる 要 件 に 関 する 新 旧 の 政 府 見 解 の 比 較 自 衛 権 発 動 の 三 要 件 ( 従 来 の 政 府 見 解 ) 1 我 が 国 に 対 する 急 迫 不 正 の 侵 害 があること 1 自 衛 の 措 置 としての 武 力 の 行 使 の 新 三 要 件 ( 平 成 26 年 7 月 1 日 の 閣 議 決 定 によるもの) 我 が 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が 発 生 したこと 又 は 我 が 国 と 密 接 な 関 係 にある 他 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が 発 生 し これにより 我 が 国 の 存 立 が 脅 かされ 国 民 の 生 命 自 由 及 び 幸 福 追 求 の 権 利 が 根 底 から 覆 される 明 白 な 危 険 があること 2 これを 排 除 するために 他 の 適 当 な 手 段 がないこと 2 これを 排 除 し 我 が 国 の 存 立 を 全 うし 国 民 を 守 るために 他 に 適 当 な 手 段 がないこと 3 必 要 最 小 限 度 の 実 力 行 使 にとどまるべきこと 3 必 要 最 小 限 度 の 実 力 行 使 にとどまるべきこと ( 筆 者 作 成 ) ア 第 一 要 件 の 判 断 基 準 新 三 要 件 の 第 一 要 件 にある 我 が 国 と 密 接 な 関 係 にある 他 国 の 定 義 を 問 われた 安 倍 総 理 は 一 般 に 外 部 からの 武 力 攻 撃 に 対 し 共 通 の 危 険 として 対 処 しようという 共 通 の 関 心 を 持 ち そして 我 が 国 と 共 同 して 対 処 しようとする 意 思 を 表 明 する 国 を 指 す と 述 べ 具 体 的 にどのような 国 がこれに 当 たるかについては あらかじめ 特 定 されてい るものではなく 武 力 攻 撃 が 発 生 した 段 階 において 個 別 具 体 的 な 状 況 に 即 して 判 断 さ れるべきものであるとの 認 識 を 示 した その 上 で 我 が 国 の 平 和 と 安 全 を 維 持 する 上 で 日 米 同 盟 の 存 在 及 びこれに 基 づく 米 軍 の 活 動 は 死 活 的 に 重 要 であり 同 盟 国 である 米 国 は 基 本 的 にこれに 当 たるであろうと 考 えている とする 一 方 米 国 以 外 の 外 国 が これに 該 当 する 可 能 性 は 現 実 には 相 当 限 定 される との 認 識 を 示 した 38 密 接 な 関 係 にある 他 国 を 事 前 に 指 定 する 可 能 性 はないのか 重 ねて 問 われたが 安 倍 総 理 は 三 要 件 を 当 てはめる 条 件 として 武 力 攻 撃 が 発 生 した 段 階 においてそれは 考 える 39 と 答 弁 し 事 前 に 定 めておくことはないとの 考 えを 示 した また 第 一 要 件 にある 我 が 国 の 存 立 が 脅 かされ 国 民 の 生 命 自 由 及 び 幸 福 追 求 の 権 利 が 根 底 から 覆 される 明 白 な 危 険 がある とはどのような 状 況 かが 問 われた 横 畠 長 官 は 他 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が 発 生 した 場 合 において そのままでは 国 家 としての まさに 究 極 の 手 段 である 武 力 を 用 いた 対 処 をしなければ 国 民 に 我 が 国 が 武 力 攻 撃 を 受 けた 場 合 と 同 様 な 深 刻 重 大 な 被 害 が 及 ぶことが 明 らかな 状 況 である と 述 べるとと もに 明 白 な 危 険 とは 単 なる 主 観 的 な 判 断 や 推 測 等 ではなく 客 観 的 かつ 合 理 的 に 疑 いなく 認 められるものであるとの 見 解 を 示 した その 上 で 上 記 の 要 件 に 該 当 する 37 防 衛 省 平 成 26 年 版 日 本 の 防 衛 - 防 衛 白 書 - ( 平 成 26 年 8 月 )120 頁 38 39 第 186 回 国 会 閉 会 後 参 議 院 予 算 委 員 会 会 議 録 第 1 号 33 頁 ( 平 26.7.15) 33

かどうかについては 実 際 に 他 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が 発 生 した 場 合 に 事 態 の 個 別 具 体 的 な 状 況 に 即 して 主 に 攻 撃 国 の 意 思 能 力 事 態 の 発 生 場 所 その 規 模 態 様 推 移 などの 要 素 を 総 合 的 に 考 慮 し 我 が 国 に 戦 禍 が 及 ぶ 蓋 然 性 国 民 が 被 ることとなる 犠 牲 の 深 刻 性 重 大 性 などから 客 観 的 合 理 的 に 判 断 することになる と 説 明 した 40 さらに 我 が 国 の 存 立 が 脅 かされ と 国 民 の 生 命 自 由 及 び 幸 福 追 求 の 権 利 が 根 底 から 覆 される 明 白 な 危 険 がある との 関 係 も 質 されたが 横 畠 長 官 は 両 者 は 表 裏 一 体 の 関 係 で 加 重 要 件 ではないとし 我 が 国 の 存 立 が 脅 かされということの 実 質 が 国 民 の 生 命 自 由 及 び 幸 福 追 求 の 権 利 が 根 底 から 覆 される 明 白 な 危 険 があるということを 言 い 表 しているもの であって 例 えば 我 が 国 の 威 信 や 名 誉 が 傷 つけられるとか そういうことは 当 たり 得 ない と 説 明 した 41 また 他 国 に 対 する 武 力 攻 撃 の 意 味 について 現 実 の 武 力 攻 撃 の 発 生 が 必 要 とされて いるのか あるいは 武 力 攻 撃 事 態 対 処 法 における 武 力 攻 撃 が 発 生 する 明 白 な 危 険 が 切 迫 していると 認 められるに 至 った 事 態 や 武 力 攻 撃 予 測 事 態 のように まだ 現 実 の 武 力 攻 撃 が 発 生 していない 場 合 も 含 まれ 得 るのかが 質 され 安 倍 総 理 から これは 武 力 攻 撃 がまずなければ 駄 目 なので 事 態 とか 予 測 事 態 は 入 らない 42 との 答 弁 がなされている イ 第 二 要 件 第 三 要 件 の 判 断 基 準 第 二 要 件 について 旧 三 要 件 から 表 現 が 改 められた 理 由 を 問 われた 横 畠 長 官 は 第 一 要 件 で 他 国 に 対 する 武 力 攻 撃 の 発 生 を 契 機 とするものが 加 わったことから その 場 合 の 武 力 の 行 使 についても あくまでも 我 が 国 を 防 衛 するためのやむを 得 ない 自 衛 の 措 置 に 限 られ 当 該 他 国 に 対 する 武 力 攻 撃 の 排 除 それ 自 体 を 目 的 とするものではないというこ とを 明 らかにするためのものであると 説 明 した 43 第 三 要 件 については 旧 三 要 件 と 表 現 は 変 わっていないが 第 一 要 件 で 他 国 に 対 する 武 力 攻 撃 の 発 生 を 契 機 とするものが 加 わったことから その 場 合 の 必 要 最 小 限 度 の 意 味 する 内 容 が 質 された これに 対 して 安 倍 総 理 は 新 三 要 件 にいう 必 要 最 小 限 度 とは 我 が 国 の 存 立 が 脅 かされ 国 民 の 生 命 自 由 及 び 幸 福 追 求 の 権 利 が 根 底 から 覆 される 原 因 を 作 り 出 している 我 が 国 と 密 接 な 関 係 にある 他 国 に 対 する 武 力 攻 撃 を 排 除 し 我 が 国 の 存 立 を 全 うし 国 民 を 守 るための 必 要 最 小 限 度 を 意 味 する 国 際 法 の 用 語 で 言 えば 武 力 の 行 使 の 態 様 が 相 手 の 武 力 攻 撃 の 態 様 と 均 衡 が 取 れたものでなければな らないという 均 衡 性 を 意 味 する と 説 明 した その 上 で 我 が 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が 発 生 していなくとも 我 が 国 と 密 接 な 関 係 にある 他 国 に 対 する 武 力 攻 撃 が 客 観 的 に 存 在 し ている 以 上 具 体 的 な 限 度 は 武 力 攻 撃 の 規 模 態 様 に 応 じて 判 断 することができるとの 見 解 を 示 した 44 40 41 第 186 回 国 会 閉 会 後 参 議 院 予 算 委 員 会 会 議 録 第 1 号 27~28 頁 ( 平 26.7.15) 42 16 頁 43 44 第 186 回 国 会 閉 会 後 参 議 院 予 算 委 員 会 会 議 録 第 1 号 24 頁 ( 平 26.7.15) 34

ウ 国 際 法 上 の 要 件 との 関 係 基 準 の 妥 当 性 国 際 法 上 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 には 武 力 攻 撃 を 受 けた 国 の 要 請 又 は 同 意 が 必 要 とさ れているが 新 三 要 件 の 中 でこの 点 が 示 されていないことが 指 摘 された これに 対 し 岸 田 外 務 大 臣 は 閣 議 決 定 の 中 に 我 が 国 による 武 力 の 行 使 が 国 際 法 を 遵 守 して 行 われ ることは 当 然 である と 記 述 されていることから 国 際 法 において 要 件 とされている 要 請 又 は 同 意 は 当 然 の 前 提 になっていると 説 明 した 45 こうした 政 府 の 説 明 に 対 して 新 三 要 件 は 基 準 が 曖 昧 であるとの 指 摘 がなされたが 安 倍 総 理 は 新 三 要 件 は 集 団 的 自 衛 権 を 縛 るものとして 世 界 で 最 も 厳 しい 条 件 だ 46 と 述 べ 厳 格 な 基 準 であるとの 認 識 を 示 した また 実 際 の 行 使 に 当 たっては これまで 同 様 国 会 承 認 を 求 める 考 えであるとし 民 主 主 義 国 家 である 我 が 国 としては 慎 重 の 上 にも 慎 重 に 判 断 していくことは 当 然 である と 答 弁 した 47 (5) 新 三 要 件 と 専 守 防 衛 海 外 派 兵 の 禁 止 との 関 係 今 回 の 閣 議 決 定 により 1 専 守 防 衛 2 軍 事 大 国 にならないこと 3 非 核 三 原 則 といっ た 防 衛 政 策 の 基 本 は 維 持 されるのかが 質 された 安 倍 総 理 は 今 回 の 閣 議 決 定 の 目 的 はた だ 一 つ 国 民 の 命 と 平 和 な 暮 らしを 守 り 抜 いていくということであり 我 が 国 の 平 和 国 家 としての 歩 みは 今 後 も 変 わることはない 引 き 続 き 専 守 防 衛 に 徹 し 軍 事 大 国 とはなら ず そして 非 核 三 原 則 を 堅 持 していく との 方 針 を 示 した 小 野 寺 防 衛 大 臣 も 憲 法 の 精 神 にのっとった 受 動 的 な 防 衛 戦 略 の 姿 勢 である 専 守 防 衛 を 維 持 していく と 述 べた 上 で 性 能 上 専 ら 相 手 国 の 国 土 の 壊 滅 的 な 破 壊 のためのみに 用 いられるいわゆる 攻 撃 的 兵 器 例 えば 大 陸 間 弾 道 ミサイル 長 距 離 戦 略 爆 撃 機 攻 撃 型 空 母 などの 保 有 は 必 要 最 小 限 度 の 範 囲 を 超 え 許 されないとしてきており その 考 えに 一 切 変 更 はない と 明 言 した 48 また 政 府 は 従 来 から 武 力 行 使 の 目 的 をもって 武 装 した 部 隊 を 他 国 の 領 土 領 海 領 空 に 派 遣 するいわゆる 海 外 派 兵 は 一 般 に 自 衛 のための 必 要 最 小 限 度 を 超 えるものであ り 憲 法 上 許 されないとの 見 解 を 示 していたが 49 新 三 要 件 との 関 係 が 質 された 安 倍 総 理 は 自 衛 隊 が 武 力 の 行 使 を 目 的 としてかつての 湾 岸 戦 争 やイラク 戦 争 での 戦 闘 に 参 加 す るようなことは 新 三 要 件 にある 必 要 最 小 限 の 範 囲 を 超 えるものであり これからも 決 し てないとの 認 識 を 示 し また 新 三 要 件 は 他 国 の 防 衛 それ 自 体 を 目 的 とする 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 を 認 めるものではなく 外 国 を 守 るために 日 本 が 戦 争 に 巻 き 込 まれるというのは 誤 解 である とも 述 べて 50 海 外 派 兵 は 一 般 に 許 されないという 従 来 からの 原 則 は 全 く 変 わらない 51 と 強 調 した 他 方 海 外 での 武 力 行 使 でも 機 雷 の 掃 海 等 の 受 動 的 かつ 限 定 的 な 行 為 は 新 三 要 件 に 該 当 すれば 許 容 されるとの 見 解 も 示 している( 詳 細 は 後 述 ) 45 46 第 186 回 国 会 閉 会 後 参 議 院 予 算 委 員 会 会 議 録 第 1 号 33 頁 ( 平 26.7.15) 47 9 頁 48 25 頁 49 防 衛 省 平 成 25 年 版 日 本 の 防 衛 - 防 衛 白 書 - ( 平 成 25 年 7 月 )101 頁 50 第 186 回 国 会 閉 会 後 参 議 院 予 算 委 員 会 会 議 録 第 1 号 19 頁 ( 平 26.7.15) 51 35

(6) 新 三 要 件 と 集 団 安 全 保 障 との 関 係 新 三 要 件 の 下 で 我 が 国 が 集 団 的 自 衛 権 を 行 使 しているときに 新 たに 国 連 の 安 保 理 決 議 が 採 択 されて 集 団 安 全 保 障 措 置 に 切 り 替 わった 場 合 我 が 国 は 武 力 行 使 を 継 続 できるのか が 質 された 横 畠 長 官 は 新 三 要 件 の 下 で 憲 法 上 一 定 の 武 力 の 行 使 を 認 められることに なるが その 根 拠 は 国 際 法 上 のものではなく 憲 法 自 身 の 考 え 方 によるものである そ の 意 味 で 我 が 国 が 新 三 要 件 を 満 たす 武 力 の 行 使 であって 国 際 法 上 個 別 的 自 衛 権 ある いは 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 として 違 法 性 が 阻 却 されるものを 行 っている 場 合 に 国 際 法 上 の 根 拠 が 国 連 安 保 理 決 議 となったとしても 法 理 上 は 我 が 国 が 新 三 要 件 を 満 たす 武 力 の 行 使 を 止 めなければならないということにはならない との 見 解 を 示 した 安 倍 総 理 も 新 三 要 件 に 合 う 状 況 であれば 集 団 的 自 衛 権 が 集 団 安 全 保 障 措 置 に 変 わったとしてもそれは 続 いていく と 述 べ 我 が 国 が 攻 撃 をされて 個 別 的 自 衛 権 を 発 動 している 状 況 において 安 保 理 決 議 が 採 択 されて 集 団 安 全 保 障 措 置 に 切 り 替 わったら 自 衛 隊 はもう 戦 闘 を 止 めな ければならないというのは 馬 鹿 げた 議 論 であり それと 同 じことであると 説 明 した 52 (7) 新 三 要 件 とホルムズ 海 峡 における 機 雷 掃 海 我 が 国 のシーレーン 特 にホルムズ 海 峡 に 機 雷 が 敷 設 された 状 況 において それを 戦 時 に 除 去 することは 新 三 要 件 の 下 で 認 められるのか 繰 り 返 し 議 論 が 行 われた 安 倍 総 理 は 一 般 論 として 海 洋 国 家 である 我 が 国 にとって 国 民 生 活 に 不 可 欠 な 資 源 や 食 料 等 を 移 送 する 船 舶 の 安 全 確 保 は 極 めて 重 要 であり 例 えば ホルムズ 海 峡 は 我 が 国 のエネルギー 安 全 保 障 の 観 点 から 極 めて 重 要 な 輸 送 経 路 となっていると 述 べた 上 で 同 海 峡 の 地 域 で 紛 争 が 発 生 し 機 雷 が 敷 設 された 場 合 同 海 峡 を 経 由 した 石 油 供 給 が 回 復 し なければ 世 界 的 な 石 油 の 供 給 不 足 が 生 じて 我 が 国 の 国 民 生 活 に 死 活 的 な 影 響 が 生 じ 我 が 国 の 存 立 が 脅 かされ 国 民 の 生 命 自 由 及 び 幸 福 追 求 の 権 利 が 根 底 から 覆 されること となる 事 態 は 生 じ 得 る との 見 解 を 示 した 53 石 油 が 日 本 に 入 ってこないというだけで 新 三 要 件 に 合 致 するのか その 判 断 基 準 である 我 が 国 が 直 接 攻 撃 を 受 けたときと 同 等 な 被 害 がある 状 況 と 言 えるのかなどの 指 摘 がなされ たが 安 倍 総 理 は 国 の 存 立 の 基 盤 は 経 済 であり この 基 盤 自 体 が 脅 かされるかどうかと いう 判 断 をする 対 象 にはなるだろう 国 際 的 な 原 油 ガスの 供 給 状 況 その 時 の 経 済 状 況 と 日 本 経 済 に 与 える 打 撃 結 果 として 多 くの 中 小 企 業 等 も 相 当 の 被 害 を 受 ける 多 くの 倒 産 も 起 こっていき 多 くの 人 たちが 職 を 失 うという 状 況 にもつながるかもしれない と 述 べ それらを 勘 案 しながら 総 合 的 に 判 断 をしていくと 答 弁 した 54 また 機 雷 の 掃 海 は 海 外 における 武 力 行 使 であり 海 外 派 兵 であるとの 指 摘 に 対 して 岸 田 外 務 大 臣 は 機 雷 掃 海 の 活 動 の 実 態 は 戦 闘 の 当 事 者 にならない 我 が 国 あるいは 他 の 国 の 民 間 の 船 舶 を 機 雷 や 外 部 からの 攻 撃 の 脅 威 から 防 護 し 安 全 な 航 行 を 確 保 する 目 的 で 行 う 受 動 的 かつ 限 定 的 な 行 為 であるとし 新 三 要 件 を 満 たす 場 合 には 他 国 の 領 海 内 にお 52 53 54 36

ける 武 力 行 使 に 当 たる 機 雷 掃 海 であっても 許 容 される との 見 解 を 示 した 安 倍 総 理 も 機 雷 掃 海 は 限 定 的 受 動 的 な 対 応 であって イラク 戦 争 や 湾 岸 戦 争 のような 戦 闘 を 武 力 行 使 を 目 的 として 行 うこと 例 えば 地 上 に 上 がって 都 市 を 攻 撃 占 領 したり 他 国 の 軍 隊 と 交 戦 をしたり 空 爆 を 行 ったりすることとは 性 格 が 異 なるとの 認 識 を 示 し さらに 掃 海 艇 は 脆 弱 であり 事 実 上 戦 闘 行 為 がまさに 行 われている 状 況 のところに 派 遣 して 掃 海 を 行 うことは 我 々も 考 えていない と 説 明 した 55 なお 武 力 行 使 の 中 でも 限 定 的 かつ 受 動 的 なものというのは 機 雷 掃 海 の 他 にどのよう なものを 想 定 しているのか 質 された 安 倍 総 理 は 今 私 が 思 いつくものは 機 雷 の 除 去 と 船 舶 を 守 るということなんだろう 56 と 答 弁 している 57 (8) 新 三 要 件 に 関 するその 他 の 議 論 政 府 が 与 党 協 議 会 に 提 示 した 事 例 集 の 中 で 武 力 の 行 使 に 当 たり 得 る 活 動 と して 示 された8 事 例 ( 表 2 参 照 )は 新 三 要 件 に 基 づけば 全 て 対 応 できるのかが 質 され 安 倍 総 理 は 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 については あくまでも 新 三 要 件 に 当 てはまるかどうか であり それに 当 てはまれば 武 力 行 使 ができる との 認 識 を 示 した 58 また 日 米 同 盟 が 深 刻 な 影 響 を 受 ける 状 況 というのは 新 三 要 件 に 該 当 するのか 問 われ た 岸 田 外 務 大 臣 は 日 米 同 盟 に 基 づく 米 国 の 存 在 及 び 活 動 は 我 が 国 の 平 和 と 安 全 を 維 持 する 上 で 死 活 的 に 重 要 であることを 前 提 にすれば このような 米 軍 に 対 する 武 力 攻 撃 は それ 以 外 の 国 に 対 する 武 力 攻 撃 の 場 合 に 比 較 して 我 が 国 の 存 立 が 脅 かされ 国 民 の 生 命 自 由 及 び 幸 福 追 求 の 権 利 が 根 底 から 覆 される 明 白 な 危 険 がある 場 合 につながる 可 能 性 が 高 いと 考 えられる との 認 識 を 示 した 59 さらに 安 倍 総 理 は 平 成 13 年 の 米 国 同 時 多 発 テロのような 出 来 事 は 新 三 要 件 には 当 てはまらず 60 南 シナ 海 で 紛 争 が 発 生 した 場 合 も 現 在 直 ちに 新 三 要 件 の 対 象 になると は 考 えていないとの 見 解 を 示 している 61 また 米 国 等 の 諸 外 国 に 対 しては 我 が 国 が 行 使 できる 集 団 的 自 衛 権 の 限 界 をしっかりと 説 明 してきていると 述 べている 62 (9) 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 容 認 と 徴 兵 制 の 関 係 政 府 は 閣 議 決 定 で 憲 法 解 釈 を 変 更 し これまで 認 められないとしてきた 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 を 容 認 したが それであれば 将 来 同 様 に 政 府 が 閣 議 決 定 で 憲 法 解 釈 を 変 更 し 徴 兵 制 を 認 める 可 能 性 があるのではないかとの 質 疑 がなされた また 実 態 面 でも 集 団 的 55 56 船 舶 を 守 る とは 政 府 が 与 党 協 議 会 に 提 示 した 事 例 集 の 中 の 事 例 15: 民 間 船 舶 の 国 際 共 同 護 衛 のような 場 合 を 指 していると 思 われる 57 58 59 60 61 第 186 回 国 会 閉 会 後 参 議 院 予 算 委 員 会 会 議 録 第 1 号 38 頁 ( 平 26.7.15) 62 32 頁 37

自 衛 権 の 行 使 容 認 により 危 険 が 増 すことになる 自 衛 官 への 志 願 者 が 少 なくなり 防 衛 力 を 維 持 するために 徴 兵 制 を 導 入 する 動 きにつながるのではないかとの 懸 念 も 示 された これに 対 して 横 畠 長 官 は 徴 兵 制 は 我 が 憲 法 の 秩 序 の 下 では 社 会 の 構 成 員 が 社 会 生 活 を 営 むについて 公 共 の 福 祉 に 照 らし 当 然 に 負 担 すべきものとして 社 会 的 に 認 めら れるようなものではないのに 兵 役 と 言 われる 役 務 の 提 供 を 義 務 として 課 されるという 点 にその 本 質 があり 平 時 であると 有 事 であるとを 問 わず 憲 法 第 13 条 第 18 条 などの 規 定 の 趣 旨 から 見 て 許 容 されるものでないことは 明 らかであって 解 釈 変 更 の 余 地 はない 環 境 の 変 化 によって 意 に 反 する 苦 役 であるかどうかということが 変 化 することはあり 得 ない と 述 べ 将 来 においても 徴 兵 制 が 憲 法 上 認 められることはないとの 見 解 を 示 した また 安 倍 総 理 は 世 界 の 潮 流 として 徴 兵 制 に 進 んでいる 国 はなく 集 団 的 自 衛 権 を 行 使 してきた 米 国 は 志 願 制 であり 永 世 中 立 国 として 集 団 的 自 衛 権 を 行 使 できないスイスは 国 民 皆 兵 になっていることからも 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 と 徴 兵 制 は 全 く 関 係 がないとの 認 識 を 示 した 上 で 徴 兵 制 を 導 入 することは 憲 法 上 あり 得 ない と 強 調 した 63 (10) 後 方 支 援 と 武 力 の 行 使 との 一 体 化 これまで 述 べてきた 集 団 的 自 衛 権 をめぐる 問 題 以 外 で 集 中 審 議 において 多 くの 質 疑 が なされたのは この 後 方 支 援 と 武 力 の 行 使 との 一 体 化 をめぐる 問 題 である ア 従 来 の 政 府 見 解 との 関 係 今 回 の 閣 議 決 定 による 新 たな 考 え 方 を 問 われた 横 畠 長 官 は 武 力 の 行 使 との 一 体 化 の 考 え 方 について 我 が 国 が 行 う 他 国 の 軍 隊 に 対 する 補 給 輸 送 等 それ 自 体 は 直 接 武 力 の 行 使 を 行 う 活 動 ではないが 他 のものが 行 う 武 力 の 行 使 への 関 与 の 密 接 性 などか ら 我 が 国 も 武 力 の 行 使 をしたとの 法 的 評 価 を 受 ける 場 合 があり 得 るというものであり そのような 武 力 の 行 使 と 評 価 される 活 動 を 我 が 国 が 行 うことは 憲 法 第 9 条 により 許 さ れないという 考 え 方 である と 説 明 した その 上 で 今 回 の 閣 議 決 定 は そのような 考 え 方 を 変 えるものではなく その 前 提 を 維 持 した 上 で これまでは 自 衛 隊 が 活 動 する 範 囲 を 非 戦 闘 地 域 等 およそ 一 体 化 の 問 題 が 生 じない 地 域 に 一 律 に 区 切 るという 枠 組 みを 採 用 していたが この 点 を 見 直 し 我 が 国 の 支 援 活 動 の 対 象 となる 他 国 軍 隊 が 現 に 戦 闘 行 為 を 行 っている 現 場 すなわち 戦 場 では 支 援 活 動 は 実 施 しないとすることにより 一 体 化 の 問 題 を 回 避 することにしたと 答 弁 した 64 また 安 倍 総 理 は 後 方 支 援 の 在 り 方 を 見 直 した 理 由 について 国 際 的 に 一 体 化 論 をとっている 国 はないが 憲 法 との 関 係 において この 論 理 は 残 すべきと 判 断 した と 述 べた 上 で 従 来 の 非 戦 闘 地 域 という 概 念 は 現 に 戦 闘 が 行 われていないというだ けでなく そこで 実 施 される 活 動 の 期 間 を 通 じて 戦 闘 行 為 が 行 われることがないと 認 め られる 地 域 ということであり 今 までの 海 外 での 自 衛 隊 の 様 々な 活 動 経 験 からして こ こまで 広 くとらなくても 一 体 化 はしない と 考 えられるようになったと 説 明 した 65 63 第 186 回 国 会 閉 会 後 参 議 院 予 算 委 員 会 会 議 録 第 1 号 ( 平 26.7.15)43~44 頁 64 65 38

また 現 に 戦 闘 行 為 を 行 っている 現 場 を 政 府 として 厳 格 に 判 断 していく 必 要 があ るとの 指 摘 に 対 して 安 倍 総 理 は 当 該 現 場 とは 戦 闘 行 為 すなわち 国 際 的 な 武 力 紛 争 の 一 環 として 行 われる 人 を 殺 傷 し 又 は 物 を 破 壊 する 行 為 が 現 に 行 われてい る 場 所 のこと であるとし そのような 現 場 であるか 否 かの 判 断 の 前 提 となる 事 実 関 係 については 自 衛 隊 の 部 隊 が 活 動 する 現 場 でそのような 人 を 殺 傷 し 又 は 物 を 破 壊 する 行 為 が 現 に 行 われているか 否 かという 明 らかな 事 実 関 係 により 客 観 的 に 認 識 できると の 見 解 を 示 した 66 イ 自 衛 隊 が 戦 闘 に 巻 き 込 まれる 危 険 性 の 指 摘 今 回 の 閣 議 決 定 により 従 来 の 整 理 では 戦 闘 地 域 に 当 たるような 場 所 にまで 自 衛 隊 の 活 動 が 拡 大 するが 兵 たんの 補 給 活 動 は 敵 に 狙 われやすく 実 態 として 自 衛 隊 が 攻 撃 を 受 け それに 応 戦 する 中 で 戦 闘 に 巻 き 込 まれるのではないかとの 指 摘 がなされた これに 対 して 安 倍 総 理 は 一 体 化 するかしないかは 憲 法 との 関 係 で 自 衛 隊 の 活 動 を 縛 る 議 論 であるとし いかなる 場 所 で 活 動 する 場 合 でも これまで 同 様 自 衛 隊 部 隊 の 安 全 を 確 保 しつつ 行 うことは 当 然 であり これは 憲 法 論 議 とは 別 の 議 論 である との 認 識 を 示 した その 上 で 今 回 の 閣 議 決 定 は 一 体 化 するという 範 囲 が 広 過 ぎたの を 見 直 したものであり これからも 実 際 に 戦 闘 が 行 われている 場 所 に 行 くわけではなく もし 戦 闘 が 行 われ 戦 闘 の 現 場 となれば 活 動 を 直 ちに 中 止 すると 説 明 した 67 その 後 も 重 ねて 自 衛 隊 員 の 危 険 が 高 まるとの 指 摘 を 受 けた 安 倍 総 理 は 完 全 に 安 全 な 場 所 ではないが 自 衛 隊 員 の 安 全 を 確 保 することは 当 然 なので 情 報 収 集 等 も 含 めてで きる 限 りのことを 行 っていく と 応 じた また 自 衛 隊 が 武 器 を 使 用 する 可 能 性 を 問 わ れ 戦 闘 の 現 場 ではなく 物 資 を 補 給 する 後 方 において 武 力 行 使 に 当 たらないとした 上 で 身 を 守 るために また 任 務 遂 行 のための 武 器 の 使 用 はあり 得 る と 答 弁 した 68 (11) 駆 け 付 け 警 護 に 伴 う 武 器 使 用 領 域 国 の 同 意 に 基 づく 邦 人 救 出 等 今 回 の 閣 議 決 定 では 我 が 国 として 国 家 又 は 国 家 に 準 ずる 組 織 が 敵 対 するものとして 登 場 しないことを 確 保 した 上 で 国 連 PKO 等 における 駆 け 付 け 警 護 に 伴 う 武 器 使 用 や 任 務 遂 行 のための 武 器 使 用 のほか 領 域 国 の 同 意 に 基 づく 邦 人 救 出 などの 武 力 の 行 使 を 伴 わない 警 察 的 な 活 動 ができるよう 法 整 備 を 進 めるとしている 69 政 府 として 国 家 又 は 国 家 に 準 ずる 組 織 が 敵 対 するものとして 登 場 しない ことをどの ように 確 保 していくのか 問 われた 安 倍 総 理 は 国 連 PKO 活 動 等 における 受 入 れ 同 意 が 安 定 的 に 維 持 されているか 領 域 国 政 府 の 同 意 がどこまで 及 んでいるかなどについて 国 家 安 全 保 障 会 議 における 審 議 等 に 基 づき 内 閣 として 判 断 すると 答 弁 した その 上 で 判 断 66 第 186 回 国 会 閉 会 後 参 議 院 予 算 委 員 会 会 議 録 第 1 号 29 頁 ( 平 26.7.15) 67 68 第 186 回 国 会 閉 会 後 参 議 院 予 算 委 員 会 会 議 録 第 1 号 40~41 頁 ( 平 26.7.15) 69 政 府 は 従 来 より 駆 け 付 け 警 護 に 伴 う 武 器 使 用 や 任 務 遂 行 のための 武 器 使 用 については これを 国 家 又 は 国 家 に 準 ずる 組 織 に 対 して 行 った 場 合 には 憲 法 第 9 条 の 禁 ずる 武 力 の 行 使 に 該 当 するおそれ があるとしている( 第 179 回 国 会 参 議 院 外 交 防 衛 委 員 会 会 議 録 第 2 号 26 頁 ( 平 23.10.27) 等 ) 39

に 当 たっては 例 えば 領 域 国 政 府 の 支 配 に 服 することを 実 力 をもって 拒 否 し 領 域 国 政 府 と 別 個 に 国 際 的 な 武 力 紛 争 の 主 体 たり 得 るような 勢 力 の 有 無 や 紛 争 当 事 者 によるPK O 活 動 に 対 する 妨 害 の 有 無 及 び 対 応 を 総 合 的 に 考 慮 するとの 見 解 を 示 した 70 (12) 武 力 攻 撃 に 至 らない 侵 害 への 対 処 今 回 の 閣 議 決 定 では 離 島 の 周 辺 地 域 等 において 外 部 から 武 力 攻 撃 に 至 らない 侵 害 が 発 生 し 警 察 機 関 が 直 ちに 対 応 できない 場 合 等 の 対 応 において 自 衛 隊 の 治 安 出 動 や 海 上 警 備 行 動 を 発 令 するための 手 続 の 迅 速 化 といった 運 用 改 善 策 を 具 体 的 に 検 討 する 旨 が 示 され ている この 点 について 運 用 改 善 だけではなく 領 海 警 備 に 関 する 法 整 備 が 必 要 ではな いかとの 指 摘 がなされ 安 倍 総 理 は 閣 議 決 定 された 政 府 方 針 を 踏 まえ 検 討 を 行 った 結 果 政 府 として 法 整 備 が 必 要 であるという 認 識 に 至 れば 与 党 において 改 めて 議 論 していただ くことになる との 認 識 を 示 した 71 また 今 回 の 閣 議 決 定 では 自 衛 隊 法 第 95 条 ( 武 器 等 防 護 )の 武 器 使 用 の 考 え 方 を 参 考 としつつ 米 軍 部 隊 を 防 護 するための 武 器 使 用 を 自 衛 隊 が 行 うことが 可 能 となるように 法 整 備 を 行 うことが 示 されている その 意 義 を 問 われた 小 野 寺 防 衛 大 臣 は ミサイル 防 衛 等 において 日 米 は 緊 密 に 関 係 しており 自 衛 隊 と 連 携 して 我 が 国 の 防 衛 に 資 するために 活 動 している 米 軍 部 隊 に 対 して 武 力 攻 撃 に 至 らない 侵 害 が 発 生 した 場 合 に その 米 軍 部 隊 を 守 ることは 我 が 国 の 防 衛 にとっても 大 変 に 資 することであるとの 認 識 を 示 した 72 (13) 今 回 の 閣 議 決 定 と 日 米 ガイドラインの 改 定 作 業 との 関 係 今 回 の 閣 議 決 定 は 平 成 26 年 12 月 末 が 期 限 とされる 日 米 防 衛 協 力 のための 指 針 (ガイ ドライン)の 改 定 作 業 にどのように 反 映 されるのかが 質 された 小 野 寺 防 衛 大 臣 は 閣 議 決 定 を 受 けての 様 々な 安 全 保 障 法 制 の 検 討 の 中 で 集 団 的 自 衛 権 の 部 分 も 含 め 今 後 そ れらをガイドラインの 中 にしっかりと 反 映 させていきたいとの 意 向 を 示 した 73 また 年 末 にガイドラインが 改 定 された 後 翌 年 になってから 国 内 法 整 備 を 行 うことで 問 題 が 生 じないのかとの 指 摘 があったが 小 野 寺 防 衛 大 臣 は 政 府 としての 一 定 の 方 針 が 出 て 今 日 米 でガイドラインの 大 枠 の 協 議 をする 中 で 様 々な 作 業 が 進 めていける と 述 べ 現 在 のガイドラインも 同 様 の 手 順 で 行 われており ガイドライン 改 定 と 国 内 法 整 備 の 順 番 の 前 後 で 何 か 問 題 が 生 じるとは 考 えていないとの 認 識 を 示 した 74 (なかうち やすお) 70 第 186 回 国 会 閉 会 後 参 議 院 予 算 委 員 会 会 議 録 第 1 号 30 頁 ( 平 26.7.15) 71 10~11 頁 72 8 頁 73 11 頁 32 頁 74 32 頁 40