Economic Indicators   定例経済指標レポート



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(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

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Transcription:

Economic Trends 経 済 関 連 レポート 孫 への 贈 与 非 課 税 の 潜 在 効 果 と 課 題 発 表 日 :2013 年 2 月 13 日 ( 水 ) ~ 利 用 されるために 必 要 な 制 度 見 直 し~ 第 一 生 命 経 済 研 究 所 経 済 調 査 部 担 当 熊 野 英 生 ( :03-5221-5223) 今 回 の 緊 急 経 済 対 策 では 祖 父 母 が 孫 に 対 する 贈 与 を 行 うとき 教 育 資 金 に 関 して 非 課 税 枠 を 設 けるとい うアイデアが 示 されている しかし このアイデアは 使 い 残 した 残 金 に 贈 与 税 がかかる 仕 組 みになってお り 利 用 者 を 躊 躇 させるだろう 資 産 の 世 代 間 移 転 のインセンティブを 高 めるためには 残 金 の 扱 いに 対 す る 課 税 や 信 託 口 座 の 使 い 勝 手 への 工 夫 などが 求 められる もしも 使 い 勝 手 が 良 くなれば 教 育 費 の 中 で 上 位 6%の 人 々(65 歳 以 上 )の 資 産 移 転 が 促 され 1.5 兆 円 の 購 買 力 の 世 代 間 移 転 が 行 われることになろう 節 税 インセンティブ 1 月 11 日 に 発 表 された 緊 急 経 済 対 策 では 孫 への 教 育 資 金 の 贈 与 を 非 課 税 にするアイデアが 盛 り 込 まれ 資 産 の 世 代 間 移 転 を 促 す 方 針 が 示 されていた 資 産 を 持 つ 高 齢 者 から 若 年 世 代 への 資 産 移 転 を 図 り 消 費 拡 大 を 通 じた 経 済 活 性 化 を 狙 う という 眼 目 である 具 体 的 には 贈 与 税 の 非 課 税 枠 を 通 常 の 年 間 110 万 円 から 引 き 上 げて 直 系 尊 属 ( 子 と 孫 )への 教 育 資 金 の 一 括 贈 与 に 対 して 1 人 当 たり 1,500 万 円 の 非 課 税 枠 を 設 けるという 概 要 は (1) 対 象 ( 受 贈 者 受 取 人 )とされる 子 孫 は 30 歳 未 満 の 者 (2) 教 育 資 金 とは 学 校 等 に 支 払 われる 入 学 金 その 他 金 銭 学 校 等 以 外 に 支 払 われる 金 銭 の 一 定 のもの (3) 教 育 資 金 は 信 託 口 座 に 入 金 され 払 い 出 した 金 銭 は 教 育 資 金 の 支 払 いに 充 当 したことを 証 明 する 書 類 を 金 融 機 関 に 提 出 する 必 要 がある (4) 非 課 税 枠 は 受 贈 者 1 人 につき 1,500 万 円 学 校 等 以 外 の 者 に 支 払 われる 金 銭 は 500 万 円 が 限 度 (5) 制 度 は 2013 年 4 月 1 日 から 2015 年 12 月 31 日 まで 時 限 的 に 適 用 される こうした 優 遇 措 置 は 高 齢 者 マネーとされる 60 歳 以 上 の 個 人 金 融 資 産 729 兆 円 (2012 年 9 月 末 個 人 金 融 資 産 の 60.7% 現 金 団 体 運 用 分 を 除 く)を 動 かして 経 済 活 性 化 に 活 かそうという 政 策 意 図 がある 例 えば 1 人 の 祖 父 母 に 3.6 人 の 孫 がいたと 前 提 を 置 けば 1 人 の 祖 父 母 が 活 用 できる 非 課 税 枠 は 孫 の 人 数 をかけて 5,400 万 円 まで 広 がる 資 産 移 転 が 進 むと 贈 与 を 受 けた 孫 の 両 親 の 経 済 力 は 高 まり 教 育 資 金 に 充 てていた 資 金 を 他 の 消 費 費 目 に 振 り 向 けられる 大 垣 共 立 銀 行 の 調 査 アンケートによれば 1 人 の 祖 父 母 は 平 均 3.6 人 がいる 調 査 時 期 2011 年 10~11 月 この 贈 与 を 考 えるとき 高 齢 者 を 巡 る 税 制 の 見 直 しとして 税 制 改 正 大 綱 で 相 続 税 増 税 が 検 討 されてい ることには 留 意 が 必 要 だ 贈 与 は 拡 充 されるが 相 続 は 増 税 される 贈 与 の 優 遇 措 置 は 相 続 税 増 税 を 見 合 いにして 課 税 対 象 になる 高 齢 者 には 強 い 節 税 インセンティブを 与 える 格 好 になっている 相 続 税 は 強 化 される 流 れ まず 前 提 となる 相 続 税 の 課 税 対 象 者 数 について 確 認 しておきたい 現 状 相 続 税 を 支 払 っている 被 相 続 人 の 人 数 は 約 5.0 万 人 である(2010 年 度 ) 死 亡 者 数 の 中 に 占 める 割 合 は 4.2%と 多 くはない その 割 - 1 -

合 は 90 年 代 から 漸 減 してきていた( 図 表 1) 政 府 は これまで 課 税 対 象 者 の 割 合 が 減 って きた 経 緯 もあり 資 産 課 税 を 強 化 して 相 続 税 の 課 税 対 象 者 の 割 合 を 4%から 6%へと 引 き 上 げたいという 意 向 を 持 っているようだ 相 続 税 の 増 税 プランは 一 旦 2011 12 年 度 税 制 改 正 大 綱 に 登 場 したが 実 際 の 改 正 には 至 らずに 社 会 保 障 と 税 の 一 体 改 革 の 中 に 記 述 されるかた ちで 先 送 りされて 再 び 2013 年 度 の 税 制 改 正 大 綱 に 盛 り 込 まれている 具 体 的 には 基 礎 控 除 の 金 額 を 5,000 万 円 + 相 続 人 1,000 万 人 か ら 3,000 万 円 + 相 続 人 600 万 人 へと 見 直 す 案 が これまでは 明 らかにされている 2010 年 度 の 実 績 では 被 相 続 人 1 人 に 対 して 2.4 人 の 相 続 人 がいたことを 考 えると 計 算 上 非 課 税 枠 は 7,459 万 円 から 4,476 万 円 へと 約 4 割 の 基 礎 控 除 の 縮 減 がイメージされる また 金 額 面 で 仮 に 相 続 税 の 課 税 対 象 者 が 6%まで 増 えるとすると どのくらいの 人 が 将 来 の 相 続 税 対 策 を 講 じたいと 考 えるのかを 計 算 してみた 実 際 の 被 相 続 人 の 人 数 は 5 万 人 であるが 相 続 税 を 実 際 に 支 払 う 人 数 は+2.3 万 人 増 (2011 年 のデータを 利 用 )になるとみられる ただし この 見 直 しに 反 応 する 人 数 はずっと 多 いと 考 えられる なぜならば 将 来 自 分 が 相 続 税 を 課 税 されるかもしれないと 考 える 人 はもっと 広 範 囲 に 及 ぶからだ すなわち 全 世 帯 5,417 万 世 帯 のうち 全 資 産 保 有 者 の 6%が 将 来 の 相 続 税 支 払 いに 備 えようとすると 考 えられる その 実 数 を 計 算 してみると 総 世 帯 5,417 万 世 帯 (2012 年 3 月 末 )の 中 で 高 額 資 産 の 保 有 者 ( 核 家 族 単 身 世 帯 合 計 )の 上 位 6% 程 度 の 人 たち つまり 325 万 世 帯 になる 特 に 年 金 受 給 年 齢 に 達 した 65 歳 以 上 は 自 分 の 課 税 範 囲 を 減 らしたいという 強 い 動 機 を 持 つ と 考 えられる( 高 額 資 産 の 保 有 世 帯 のうち 65 歳 以 上 世 帯 は 165 万 世 帯 <60 歳 以 上 世 帯 は 223 万 世 帯 と 推 定 >) 日 本 の 家 計 が 保 有 する 総 資 産 残 高 ( 金 融 資 産 + 実 物 資 産 等 )は 2,556 兆 円 (2011 年 末 内 閣 府 国 民 経 済 計 算 )である ここから 負 債 を 差 し 引 いた 純 資 産 残 高 でも 2,195 兆 円 にも 達 する 家 計 の 上 位 6%(325 万 世 帯 )の 保 有 する 総 資 産 の 金 額 が どのくらいかをイメージしてみよう 家 計 の 総 資 産 分 布 か ら 割 り 出 すと 高 額 資 産 保 有 世 帯 の 上 位 5.3%( 世 帯 数 ベ ース)は 総 資 産 の 25.1% ( 金 額 ウエイト)を 保 有 して いた( 図 表 2) 相 続 税 の 課 税 強 化 を 警 戒 する 世 帯 の 上 位 6%の 総 資 産 は 25% 近 いと 考 えられる また この 割 合 に 家 計 資 産 残 高 に 乗 じると 640 兆 円 とい う 数 字 になる(うち 60 歳 以 上 476 兆 円 65 歳 以 上 359 兆 - 2 -

円 ) 相 続 税 増 税 は それに 反 応 して 640 兆 円 の 保 有 者 に 対 して 巨 大 な 節 税 インセンティブが 生 じること を 意 味 するのだろう わが 国 は 上 位 5.3%が 総 資 産 の 25.1%を 占 める 上 位 1%の 富 裕 層 が 富 の 約 4 割 を 有 するとされる 米 国 中 国 と 比 べ ると 日 本 は 分 布 が 大 きく 異 なるようだ 将 来 相 続 税 の 基 礎 控 除 が 4 割 も 縮 減 されるとなると 自 分 が 課 税 対 象 になるかもしれないと 考 える 人 は 結 構 多 くなるはずである 総 務 省 全 国 消 費 実 態 調 査 (2009 年 )に 基 づいて 年 代 別 の 1 世 帯 当 たりの 保 有 資 産 ( 金 融 資 産 住 宅 宅 地 資 産 耐 久 消 費 財 ゴルフ 会 員 権 等 )の 推 移 をみると 60 歳 以 降 になる と 平 均 的 な 世 帯 でさえ 総 資 産 残 高 が 5,000 万 円 に 近 づくくらいに 増 えている( 図 表 3) 世 帯 主 年 齢 が 65 歳 以 上 の 世 帯 では 実 に 53%の 世 帯 割 合 が 総 資 産 残 高 5,000 万 円 以 上 を 保 有 している( 図 表 4) 相 続 税 増 税 は 高 齢 者 を 中 心 に 広 範 囲 の 人 に 心 理 的 影 響 を 与 えそうなことがわかる 教 育 費 の 範 囲 内 での 贈 与 自 分 が 相 続 税 支 払 いの 対 象 になると 心 配 する 人 々が 将 来 の 課 税 をできるだけ 免 れたいと 考 えて 孫 の 教 育 資 金 の 非 課 税 贈 与 枠 を 積 極 的 に 使 おうと 考 えるだろう そうすれば どれだけの 金 額 が 具 体 的 に 動 きそう なのだろうか 高 齢 者 ( 世 帯 主 65 歳 以 上 )のうち 相 続 税 の 課 税 対 象 にいずれ 自 分 がなるだろうと 予 想 する 世 帯 数 は 前 述 の 通 り 165 万 世 帯 に 及 ぶ 彼 らの 中 から 孫 1 人 当 たり 1,500 万 円 の 贈 与 の 非 課 税 枠 を 使 用 したいとい う 者 が 現 れる 165 万 世 帯 のうち この 制 度 改 正 にどのくらい 反 応 するのかは 正 直 に 言 ってわからない そこで 参 考 にしたのが 2003 年 に 行 われた 相 続 時 精 算 課 税 制 度 の 利 用 である ( 注 ) 相 続 時 精 算 課 税 方 式 は 贈 与 税 の 非 課 税 では なく 繰 り 延 べにメリットがあり 同 列 には 扱 えない しかし 税 制 優 遇 への 反 応 という 点 で 参 照 できると 考 えた この 相 続 時 精 算 課 税 制 度 では 当 時 の 世 帯 の 資 産 保 有 者 上 位 4%に 相 当 する 人 々(65 歳 以 上 )の 中 で 8.4%に 相 当 する 7.8 万 人 が 制 度 利 用 を 踏 み 切 った( 図 表 5) おそらく 祖 父 母 の 孫 に 対 する 贈 与 非 課 税 制 度 についても 8.4%と 同 じくらいの 割 合 - 3 -

の 人 が 制 度 を 利 用 することを 検 討 すると 予 想 される 具 体 的 に 世 帯 主 65 歳 以 上 世 帯 のうち 上 位 6% の 世 帯 の 8.4%が 反 応 したと 考 えると 今 回 の 制 度 には 13.8 万 世 帯 が 潜 在 的 に 行 動 する 人 数 と 予 想 される そこで 1 人 当 たりの 教 育 費 ( 累 計 )を 619 万 円 として 孫 の 人 数 を 推 定 して 金 額 を 計 算 すると 1.5 兆 円 と 推 計 される( 世 帯 主 60 歳 以 上 で 計 算 すると 2.1 兆 円 ) 小 中 高 校 は 公 立 大 学 は 私 立 公 立 の 平 均 値 なお 相 続 時 精 算 課 税 方 式 が 導 入 された 2003 年 度 にこの 制 度 を 使 って 贈 与 された 金 額 は 1.16 兆 円 だった 一 括 贈 与 の 仕 組 みの 問 題 点 は 何 か ここまでは 祖 父 母 が 教 育 資 金 として 将 来 予 想 される 金 額 を 孫 の 数 だけ 一 括 贈 与 することを 前 提 にして 1.5 兆 円 の 贈 与 が 行 われてもおかしくないという 流 れで 考 えてきた しかし 税 制 改 正 大 綱 の 制 度 概 要 をみ る 限 り そう 単 純 ではないと 思 わせる 仕 組 みになっている 重 要 なのは 受 贈 者 が 30 歳 に 達 した 場 合 の 非 課 税 枠 の 残 金 の 扱 いである その 時 点 での 信 託 勘 定 の 金 額 ( 非 課 税 拠 出 額 )と それまでに 教 育 資 金 として 払 い 出 した 金 額 ( 教 育 資 金 支 出 額 )を 調 べて 非 課 税 拠 出 額 から 教 育 資 金 支 出 額 を 差 し 引 いた 残 額 については 贈 与 があったものとして 贈 与 税 が 課 される 扱 いにする という 例 えば 当 初 この 制 度 の 利 用 者 が 1 人 1,500 万 円 と 非 課 税 枠 を 目 一 杯 使 って 信 託 勘 定 に 預 けたとしよう そこで 結 局 孫 が 30 歳 になったとき 600 万 円 しか 教 育 資 金 支 出 を 行 わなかったとすれば 残 金 は 900 万 円 になる この 900 万 円 には 贈 与 税 がかかることになる すると 多 くの 祖 父 母 は 残 額 に 課 税 されるこ とを 心 配 して 一 括 で 信 託 勘 定 に 大 きな 金 額 を 預 けることに 警 戒 感 を 抱 くだろう すると 1.5 兆 円 という ような 大 きな 贈 与 資 金 が この 制 度 によって 動 くとは 言 い 難 くなる この 点 は 大 きな 課 題 を 残 していると 言 わざるを 得 ない 本 当 に この 制 度 が 利 用 者 に 対 して 大 きな 影 響 力 を 与 えるためには 残 額 に 贈 与 税 がかかる 点 についての 見 直 しが 必 要 になるだろう 別 の 方 法 を 模 索 するのならば 受 け 皿 になる 教 育 資 金 贈 与 信 託 のような 金 融 商 品 の 商 品 設 計 を 工 夫 するのも 一 案 である 信 託 勘 定 について 手 数 料 がかからずに 中 途 解 約 できるようにして 孫 の 年 齢 が 30 歳 になる 手 前 で 信 託 勘 定 を 解 約 返 金 できる 商 品 性 になっていた 方 がよい 案 外 知 られていないが これまでも 孫 に 対 して 祖 父 母 が 資 金 を 出 してあげることは 課 税 されることは なかった 扶 養 する 者 が 社 会 通 念 上 必 要 と 認 められるものは その 都 度 お 金 を 出 してあげても 差 支 えがな いのである ならば 特 別 に 教 育 資 金 の 信 託 勘 定 をつくり 一 括 贈 与 をする 意 味 があるかと 思 う 人 は 少 なくないだろう 一 括 贈 与 を 促 進 するには それなりのメリットを 利 用 者 に 感 じさせることが 寛 容 だ 世 代 間 移 転 の 考 え 方 孫 への 教 育 資 金 の 一 括 贈 与 の 仕 組 みが 利 用 者 にとって 使 い 勝 手 のよいものになるかどうか 今 後 の 成 り 行 きが 注 目 される もしも 最 終 的 に 使 い 勝 手 のよいものに 見 直 されなかったとしても 資 産 課 税 強 化 に 対 して 節 税 インセンティブを 設 けてそれを 経 済 活 性 化 に 利 用 するという 点 では 重 要 な 一 石 を 投 じたことに はなる 経 済 活 性 化 を 目 指 すのならば 高 齢 者 に 偏 っている 個 人 資 産 を 若 年 世 代 に 早 期 に 移 転 することには 大 きな メリットがある これまで 親 が 子 供 の 面 倒 をみることは 通 念 上 普 通 だとみられても 孫 の 場 合 はそうはみ られにくかった しかし 少 子 化 が 進 む 中 で 両 親 の 経 済 力 が 低 下 して 十 分 な 教 育 が 行 えないという 状 況 があるときには 税 制 優 遇 措 置 が 行 われて 親 族 内 での 助 け 合 いが 促 進 されることは 好 ましいと 考 えられる - 4 -

これまでは 子 ども 手 当 のようなかたちで 財 政 資 金 に 依 存 した 給 付 はあったが 本 来 はもっと 手 前 に 親 族 内 での 自 助 が 検 討 される 方 がよかったと 考 えることもできる 今 後 贈 与 の 優 遇 措 置 を 柔 軟 に 拡 充 することは 広 範 囲 に 親 族 内 の 自 助 を 促 す 目 的 で 応 用 ができるはずだ これまでは 経 済 力 がつくほどに 核 家 族 化 が 進 んで 家 計 が 独 立 する 流 れが 一 般 的 であったが 反 面 親 族 内 の 経 済 的 結 び 付 きが 疎 遠 になるという 傾 向 もあった 親 族 内 での 自 助 ができない 場 合 は 高 齢 者 介 護 や 子 育 ては 政 府 が 巨 額 の 公 的 資 金 を 負 担 して 援 助 しなくてはいけない 面 が 出 てくる 親 族 内 の 絆 をサポートす ることは 将 来 の 社 会 保 障 のあり 方 を 考 える 上 で 重 要 である このことは 自 分 が 将 来 子 供 を 増 やしたいと 考 えるインセンティブにも 影 響 を 与 えるだろう 例 えば 子 供 が 親 の 老 後 の 経 済 力 を 助 けるという 場 面 がもっと 一 般 的 に 増 えていけば 親 は 自 分 を 助 ける 子 供 を 増 や したいという 動 機 づけになる 貯 蓄 理 論 には 戦 略 的 遺 産 動 機 という 考 え 方 がある 親 が 自 分 の 面 倒 をみて くれることを 条 件 に 遺 産 を 準 備 するという 動 機 である また 親 にとっては 子 供 の 教 育 水 準 を 引 き 上 げ ることが 将 来 の 自 分 の 生 活 の 備 えとして 意 識 されることにもなる もしも 贈 与 の 税 制 優 遇 が 広 がってい けば そうした 効 果 を 中 長 期 的 に 期 待 できるかもしれない 一 方 今 回 の 祖 父 母 から 孫 への 贈 与 に 関 しては 格 差 拡 大 の 立 場 から 反 対 する 人 もいると 思 われる しか し 親 族 内 での 自 助 を 促 進 して 経 済 的 自 由 を 拡 張 することは 格 差 是 正 のために 政 府 が 巨 額 の 給 付 金 援 助 金 を 出 すよりも 前 に 行 われてよいと 考 えられる 今 回 の 経 済 対 策 で 孫 への 贈 与 優 遇 のアイデアが 盛 り 込 まれたことは 単 に 景 気 対 策 のアイデアという 視 点 だけではなく 少 子 高 齢 化 に 対 応 するための 制 度 設 計 として 新 しい 展 開 の 可 能 性 を 含 んでいる 点 で 高 く 評 価 できる - 5 -