第 2 章 では ソーシャルワーク 実 践 を 方 向 づけるものとして ソーシャルワークの 価 値 を 学 習 しました ソーシャルワーク 専 門 職 は ソーシャルワークの 価 値 を 深 く 理 解 し ソーシャルワーク 実 践 のなかにしっ かりと 位 置 づけ 具 現 化 していかなければなりません 27
価 値 は 人 の 判 断 や 行 動 に 影 響 を 与 えます ソーシャルワーカーの 判 断 にも 価 値 が 大 きく 影 響 し ます ソーシャルワークとしてどのような 援 助 の 方 向 性 をとるのか さまざまな 制 約 の 中 で 援 助 や 社 会 資 源 の 配 分 をどのような 優 先 順 位 で 行 うか 個 々の 実 践 場 面 においてどのようなアプローチや 方 法 を 選 択 するのか 個 々の 実 践 場 面 においてどのような 言 動 をとるのかなど ソーシャルワーカーは 多 くの 判 断 を 求 められ その 判 断 には 価 値 が 影 響 を 与 えるのです ソーシャルワーカーの 実 践 は クライエントとの 面 接 場 面 を 想 像 するとわかりやすいかと 思 いますが 瞬 時 の 判 断 が 求 められ 瞬 時 の 判 断 に 基 づく 行 動 が 積 み 重 ねられるものです そうした 瞬 時 の 判 断 が 求 められる 時 判 断 材 料 としては (1) 法 律 通 知 等 のいわゆる 法 的 根 拠 (2) 倫 理 綱 領 行 動 規 範 ガイドラ インやマニュアル (3) 科 学 的 根 拠 のあるアプローチや 支 援 方 法 (4)これまでの 知 見 の 積 み 重 ねから 見 出 される 方 向 性 (5) 所 属 する 組 織 の 指 針 スーパーバイザーなどから 示 される 方 向 性 などがあります 実 際 のソーシャルワーク 実 践 の 場 面 では 判 断 材 料 が 明 確 とは 限 りません それらが 明 確 でない 場 合 ソーシャルワーカーとしての 判 断 には 価 値 が 影 響 を 与 えます 判 断 材 料 として どれを 選 択 すべきか もそうですし 優 先 順 位 をつける 判 断 も 影 響 を 受 けます そのため ソーシャルワークの 価 値 を 正 しく 理 解 し 身 につけておかないと 知 識 や 技 術 を 身 につけていても ソーシャルワーク 専 門 職 としての 適 切 な 判 断 ができないおそれがあります 28
ソーシャルワーカーは 絶 えず 変 化 する 社 会 において ソーシャルワーク 実 践 を 展 開 します その 実 践 は さまざまな 判 断 に 基 づく 行 動 の 積 み 重 ねであり その 判 断 の 根 底 には 何 のために 何 をめざすのかとい うソーシャルワークの 価 値 があることを 学 びました そして ソーシャルワーカーは 専 門 職 として 実 践 を するのですから 専 門 職 としての 知 識 と 技 術 が 求 められます 知 識 が 技 術 を 支 え 実 践 に 活 用 された 技 術 の 積 み 重 ねが 理 論 となり 新 たな 知 識 として 次 の 技 術 を 支 え ます ソーシャルワークの 価 値 を 根 底 に 置 き 豊 かな 知 識 と 技 術 がソーシャルワーク 実 践 の 質 を 支 え ソーシャルワークの 目 的 を 実 現 していきます 価 値 知 識 技 術 は このような 関 係 にあります 29
では まず ソーシャルワーカーに 求 められる 専 門 職 としての 固 有 の 知 識 とはどのようなものかを 考 えて みましょう 国 際 ソーシャルワーカー 連 盟 のソーシャルワークの 定 義 は 人 間 の 行 動 と 社 会 システムに 関 する 理 論 を 利 用 して と 言 っていますから この 知 識 は 必 須 のものでしょう ソーシャルワークの 構 成 要 素 から もう 少 し 紐 解 いてみましょう まずは クライエントあるいはクライエントシステムとクライエントのニーズの 理 解 が 求 められます だとす れば 求 められる 知 識 の 第 一 は 人 間 の 理 解 でしょう 人 間 を 理 解 し 人 間 の 行 動 の 理 論 に 関 する 知 識 が 不 可 欠 です それは 人 間 の 発 達 心 理 認 知 行 動 病 気 や 障 害 家 族 システムなどの 知 識 です 医 学 や 心 理 学 などの 知 見 から 得 られた 支 援 理 論 を 学 ぶことにつながります 次 に クライエントを 取 り 巻 く 環 境 でもある 社 会 を 理 解 するための 知 識 です ソーシャルワーカーは 社 会 の 変 革 も 促 しますので 社 会 を 理 解 するための 知 識 が 求 められます 歴 史 文 化 社 会 構 造 社 会 現 象 社 会 問 題 や 社 会 システムなどの 幅 広 い 知 識 です ソーシャルワーカーは クライエントのニーズに 対 して 社 会 資 源 を 活 用 してニーズの 充 足 や 課 題 の 解 決 を 図 ります したがって 社 会 資 源 に 関 する 知 識 が 求 められ その 多 くが 公 的 な 仕 組 みによって 規 定 され ていることを 考 えると 福 祉 に 関 する 政 策 や 法 律 制 度 サービスの 運 用 基 準 などの 具 体 的 な 知 識 を 欠 かすことはできないのです 30
ソーシャルワーカーがクライエントの 支 援 として 積 み 重 ねていく 行 動 は ソーシャルワークの 目 的 に 向 かって 一 定 の 手 順 や 方 法 で 行 われるもので ソーシャルワークの 方 法 援 助 技 術 と 呼 ばれます 個 人 へ の 直 接 援 助 グループへの 援 助 地 域 への 援 助 や 社 会 福 祉 調 査 組 織 の 運 営 管 理 などの 方 法 や 技 術 です また 人 間 の 行 動 に 関 する 理 論 を 基 盤 にした 支 援 の 方 法 療 法 やアプローチは 科 学 的 根 拠 に 基 づくものですから 前 提 となる 理 論 や 考 え 方 を 理 解 したうえで 目 的 やポイントをふまえ 手 順 に 沿 って 行 動 することが 求 められます ソーシャルワーク 実 践 は 専 門 職 としての 実 践 ですから 常 にその 根 拠 を 説 明 する 責 任 があります 科 学 的 な 根 拠 に 基 づく 方 法 などは その 知 識 を 実 践 に 生 かしていきますし 法 律 や 倫 理 綱 領 などで 明 示 的 なものもあります 必 ずしも 科 学 的 根 拠 が 示 されていないものでも 実 践 の 蓄 積 から 導 かれた 知 見 が 教 育 や 実 践 の 場 で 伝 えられ 体 系 化 されていくものもあります それらをきちんと 実 践 の 根 拠 として 据 え 置 き 必 要 に 応 じて 説 明 します さらに これらを 明 確 に 示 すことが 難 しい 場 合 でも 少 なくとも どのような 価 値 判 断 のもとにその 実 践 をしたのかという 軸 足 がぶれないために ソーシャルワークの 価 値 について も 正 しく 理 解 しておくことが 必 要 です 31
第 1 章 で 学 んだ 求 められる 社 会 福 祉 像 からも 求 められる 知 識 が 読 み 取 れます 該 当 部 分 を 抜 粋 し ました (2) 地 域 において 利 用 者 の 自 立 と 尊 厳 を 重 視 した 相 談 援 助 をするために 必 要 な 専 門 的 知 識 (3) 人 と 環 境 との 交 互 作 用 に 関 する 専 門 的 知 識 (6) 一 連 のケアマネジメントのプロセス(アセスメント プランニング モニタリング 等 )を 理 解 (9) 権 利 擁 護 と 個 人 情 報 の 保 護 のための 知 識 (10) 就 労 支 援 に 関 する 知 識 (12) 組 織 の 管 理 やリスクマネジメント 等 組 織 や 経 営 に 関 する 知 識 32
ソーシャルワークは 知 っている 理 解 しているという 知 識 だけでは 実 践 できません 知 識 を 行 動 化 し 実 践 する 技 術 =スキル が 必 要 です スキルとは 特 定 の 知 識 と 訓 練 を 要 する 行 動 や 活 動 のことを 言 います ソーシャルワークのスキルは ソーシャルワークの 価 値 に 基 づいて ソーシャルワーク 専 門 職 の 固 有 の 知 識 を 得 たうえで 実 践 的 なトレーニングを 積 んで 修 得 するものです そのために ソーシャル ワーク 専 門 職 として 社 会 福 祉 士 をめざすみなさんには 指 定 科 目 の 学 習 のほか ソーシャルワーク 実 践 の 場 面 を 想 定 した 演 習 と 実 際 の 実 践 現 場 における 実 習 が 準 備 されているのです 社 会 福 祉 士 の 資 格 を 得 たら それでソーシャルワーカーとして 適 切 な 行 動 や 活 動 ができる 総 合 的 な 力 量 コンピテンシーが 獲 得 でき 完 成 するというものではありません ソーシャルワーカーとして 実 践 を 積 みな がら スーパービジョンを 受 けるなどして 自 分 自 身 がソーシャルワーカーとして 適 切 な 行 動 や 活 動 を 行 うことができているのかどうかを 確 認 し 続 ける 必 要 があります 具 体 的 な 技 術 として 求 められる 社 会 福 祉 士 像 に 技 術 や できる と 表 現 された 項 目 を 見 てみましょ う (2) 地 域 において 利 用 者 の 自 立 と 尊 厳 を 重 視 した 相 談 援 助 をするために 必 要 な 技 術 (3) 人 と 環 境 との 交 互 作 用 をアセスメントするための 技 術 (4) 利 用 者 からの 相 談 を 傾 聴 し 適 切 な 説 明 と 助 言 を 行 なうことが できる (5) 利 用 者 をエンパワメントすることができる (6) 自 立 支 援 のためのマネジメントを 適 切 に 実 践 そ の 効 果 について 助 言 することができる (7) 他 職 種 とのチームアプローチをすることができる (8) 社 会 資 源 の 調 整 や 開 発 ネットワーク 化 をすることができる (9) 権 利 擁 護 と 個 人 情 報 の 保 護 のための 技 術 を 有 し 実 践 その 効 果 について 評 価 することができる (10) 就 労 支 援 に 関 する 技 術 を 有 し 実 践 その 効 果 について 評 価 することができる (11) 福 祉 に 関 する 計 画 を 策 定 実 施 し その 効 果 について 評 価 すること ができる 具 体 的 な 実 践 を 行 うための 面 接 等 のクライエントを 理 解 し 援 助 関 係 を 形 成 する 技 術 であったり アセス メントや 評 価 説 明 の 技 術 といった ソーシャルワーカー 自 身 が 表 出 できるスキルと 関 係 機 関 や 組 織 な どと 適 切 な 関 係 を 取 り 結 ぶ 技 術 など 非 常 に 幅 広 い 技 術 が 求 められていることがわかります 33
ソーシャルワークを 継 承 可 能 なものとして 伝 えていくことは 専 門 職 としての 自 己 再 生 産 という 非 常 に 大 切 な 働 きにつながります 専 門 職 がその 専 門 性 でもってクライエントを 支 えるということは 支 え 続 ける 責 任 と それを 受 け 継 ぐ 後 継 者 を 育 成 する 責 任 を 持 つということです 継 ぐ ためには 技 術 を 個 々 人 に 帰 属 する 職 人 的 な 熟 練 技 として 置 くのではなく 伝 達 可 能 なものとしていく 必 要 があります ソーシャルワー ク 実 践 において 技 術 が 活 用 され それが 実 績 を 作 っていきます 積 み 重 ねられた 実 践 実 績 によって 技 術 が 体 系 化 され 理 論 化 されることによって 技 術 は 多 くの 人 に 受 け 継 がれて 共 有 され さらなる 技 術 の 向 上 にもつながっていきます 社 会 福 祉 士 の 倫 理 綱 領 は その 前 文 で われわれはソーシャルワークの 知 識 技 術 の 専 門 性 と 倫 理 性 の 維 持 向 上 が 専 門 職 の 職 責 であるだけでなく サービスの 利 用 者 は 勿 論 社 会 全 体 の 利 益 に 密 接 に 関 連 していることを 認 識 していることを 言 明 しています 私 たち ソーシャルワーカー ソーシャルワー カーの 育 成 に 携 わる 教 員 ソーシャルワーカーをめざすみなさんすべてが この 認 識 を 共 有 しながら ソーシャルワークの 学 びを 深 め ソーシャルワーク 実 践 が 豊 かな 内 容 をもって 展 開 されることを 期 待 しま す 34