JAIST Reposi https://dspace.j Title 国 家 技 術 戦 略 立 案 プロセスに 関 する 技 術 経 営 論 的 考 察 Author(s) 山 本, 尚 利 Citation 年 次 学 術 大 会 講 演 要 旨 集, 23: 34-37 Issue Date 2008-10-12 Type Conference Paper Text version publisher URL Rights http://hdl.handle.net/10119/7495 本 著 作 物 は 研 究 技 術 計 画 学 会 の 許 可 のもとに 掲 載 す るものです This material is posted here w permission of the Japan Society for Policy and Research Management. Description 一 般 講 演 要 旨 Japan Advanced Institute of Science and
1A14 国 家 技 術 戦 略 立 案 プロセスに 関 する 技 術 経 営 論 的 考 察 山 本 尚 利 ( 早 稲 田 大 学 ビジネススクール) 筆 者 は 1986 年 より 2003 年 まで 16 年 半 米 国 のシンクタンク SRI インターナショナル( 以 下 SRI と 略 す 元 スタンフォード 大 学 付 属 研 究 所 )の 技 術 経 営 (MOT)コンサルタントを 務 めたが その 経 験 を 通 じて 日 本 国 家 の 技 術 戦 略 立 案 プロセスが 米 国 連 邦 政 府 のそれと 大 きく 異 なることを 知 った そこで 国 家 技 術 戦 立 案 プロセスの 日 米 比 較 によって 日 本 国 家 の 技 術 戦 略 のあるべき 姿 を 提 言 したい 1. 国 家 技 術 戦 略 立 案 プロセスに 関 する 日 米 比 較 SRI での 筆 者 の 経 験 によれば 日 米 の 国 家 技 術 戦 略 立 案 プロセスは 大 きく 異 なる その 相 違 を 以 下 に まとめる (1) 国 家 技 術 戦 略 における 戦 略 的 覇 権 技 術 の 位 置 づけ 日 本 では 内 閣 府 が 国 家 技 術 戦 略 を 方 向 付 け 文 部 科 学 省 が 主 に 国 家 科 学 技 術 政 策 を 決 めているのに 対 し 米 国 では ときの 大 統 領 政 権 が 国 家 技 術 戦 略 を 科 学 技 術 の 国 家 研 究 開 発 イニシアティブとして 米 国 民 のみならず 世 界 に 向 けて 打 ち 出 している ただしその 前 提 として 米 国 の 科 学 技 術 体 系 は 国 家 安 全 保 障 に 直 結 する 戦 略 的 な 覇 権 技 術 体 系 ( 軍 事 応 用 技 術 中 心 )と 一 般 的 科 学 技 術 体 系 とに 峻 別 されているよ うに 見 える( 注 1) これに 比 べて 日 本 の 国 家 技 術 戦 略 では 戦 略 的 覇 権 技 術 の 位 置 づけが 明 確 でない ち なみに 米 国 連 邦 政 府 における 戦 略 的 覇 権 技 術 と 一 般 的 科 学 技 術 の 連 邦 研 究 開 発 予 算 ( 総 額 1435 億 ドル 2008 年 度 15 兆 円 規 模 )( 注 2)の 構 成 比 はおよそ7 対 3くらいである( 注 3) つまり 米 国 では 軍 事 技 術 に 直 結 する 戦 略 的 覇 権 技 術 の 連 邦 研 究 開 発 が 圧 倒 的 に 重 視 されている この 点 はときの 大 統 領 政 権 によらない そのため 戦 略 的 覇 権 技 術 の 国 家 技 術 戦 略 を 主 に 国 防 総 省 ( 注 4)が 立 案 している その 結 果 米 国 の 先 端 技 術 の 研 究 開 発 成 果 の 多 くは 軍 事 技 術 の 派 生 的 成 果 (ディフェンス コンバージョン) と 位 置 づけられる このように 米 国 ではハイリスク( 成 功 確 率 の 低 い)の 先 端 技 術 の 研 究 開 発 に 国 家 安 全 保 障 護 持 という 国 家 ミッションを 与 えることによって 公 的 資 金 を 投 入 することの 正 当 化 が 行 われる (2) 国 家 技 術 戦 略 を 方 向 付 ける 確 固 たる 国 家 ミッション 日 本 では 国 家 の 科 学 技 術 予 算 (3.57 兆 円 平 成 20 年 度 )( 注 5)は 国 民 向 け 科 学 技 術 教 育 予 算 の 延 長 のようにみえる( 注 6) 一 方 米 国 では 国 防 ( 核 兵 器 エネルギー 技 術 含 む) 医 科 学 ( 生 物 化 学 系 軍 事 技 術 含 む) 航 空 宇 宙 ( 航 空 宇 宙 系 軍 事 技 術 含 む)を 三 本 柱 として 戦 略 的 覇 権 技 術 体 系 ( 連 邦 研 究 開 発 予 算 の 7 割 に 相 当 )が 構 成 されている( 注 3) ちなみに 環 境 保 全 技 術 は 米 国 では 地 球 環 境 保 全 とい うよりも 国 家 のエネルギー セキュリティーの 一 環 として 捉 えられている 以 上 の 背 景 には 軍 事 技 術 力 が 国 家 安 全 保 障 (あるいは 国 益 )に 直 結 するという 国 家 技 術 戦 略 思 想 ( 国 益 最 優 先 の 国 家 ミッション) が 厳 然 と 存 在 する 他 方 戦 後 日 本 の 科 学 技 術 政 策 には 米 国 ほど 明 確 で 確 固 たる 国 家 ミッションが 存 在 するようにはみえない( 注 7) なぜなら 戦 後 の 日 本 は 現 在 の 米 国 のような 軍 事 覇 権 国 家 ではないからで あろう (3) 国 家 研 究 開 発 予 算 はハイリスク チャレンジへの 国 益 投 資 であるという MOT 思 想 日 本 国 家 には 国 益 的 に 重 要 な 技 術 覇 権 獲 得 に 必 須 のハイリスク( 成 功 確 率 の 低 い)の 研 究 開 発 は 公 的 資 金 で 実 施 するのが 当 然 である( 注 8)という 確 固 たる 技 術 経 営 (MOT) 思 想 がない そのため 国 費 の 研 究 開 発 予 算 (ハイリスク 案 件 )を 一 般 の 国 家 プロジェクト 予 算 (ローリスク 案 件 )と 同 様 に 扱 っている 日 本 の -34-
国 費 研 究 開 発 プロジェクトは そのリスクの 高 低 にかかわらず その 原 資 が 公 的 資 金 であるがゆえに 他 の 国 家 プロジェクトと 同 様 に 予 算 の 出 納 明 細 を 明 示 することが 優 先 される 一 方 米 国 では 国 費 の ハイリスク 研 究 開 発 プロジェクト 責 任 者 ( 一 般 的 には 国 家 の 信 認 する 専 門 家 サイエンティスト)にい っさいの 研 究 開 発 遂 行 リスクを 委 ね 自 由 采 配 と 成 果 主 義 を 優 先 する この 方 式 は 戦 場 の 指 揮 官 に 全 権 委 任 する 戦 争 の 作 戦 プロジェクト( 極 めてハイリスク)の 展 開 方 式 と 似 ている (4) 国 家 研 究 開 発 予 算 はシードマネーであるという MOT 思 想 日 本 では 公 的 研 究 開 発 予 算 ( 国 立 大 学 運 営 費 を 含 む)を 公 務 員 資 格 の 研 究 者 や 大 学 教 員 が 自 前 の 人 件 費 として 使 うのが 常 識 化 している 一 方 米 国 では 公 的 資 金 の 研 究 開 発 投 資 には 国 民 の 税 金 が 使 われて いるという 理 由 で 公 的 研 究 開 発 予 算 はできるだけ 民 間 の 研 究 開 発 型 ベンチャーや 大 学 付 属 研 究 所 に 競 争 的 に 配 賦 される つまり 税 金 の 社 会 還 元 が 何 より 優 先 される その 意 味 で 米 国 の 連 邦 研 究 開 発 予 算 は 公 益 リスクマネーでありシードマネー( 民 間 ベンチャーへの 初 期 投 資 )であるとみなされている そして 米 国 の 公 的 研 究 所 の 研 究 員 は 少 数 精 鋭 で 民 間 への 予 算 配 賦 と 技 術 評 価 に 傾 注 する ところで 米 国 では SRI( 大 学 発 の 非 営 利 法 人 )のような 独 立 研 究 機 関 (コントラクト リサーチ 研 究 開 発 受 託 をビジネスと する 法 人 )の 経 営 がなぜ 成 立 するのか その 秘 密 は 税 金 の 社 会 還 元 優 先 主 義 にある 日 本 に 比 べて 米 国 のハイテク ベンチャーの 活 性 度 が 極 めて 高 いのは 当 然 であるといえる (5) 国 家 研 究 開 発 投 資 を 上 回 るインテリジェンス 活 動 投 資 日 本 の 科 学 技 術 政 策 は 科 学 技 術 系 官 僚 ( 個 人 がリスクをとるのをできるだけ 避 けようとするサラリ ーマンの 国 家 公 務 員 )が 科 学 技 術 専 門 家 ( 主 に 大 学 教 授 )を 諮 問 委 員 ( 薄 謝 で 調 達 )にしてその 答 申 をベースにとりまとめ 国 会 で 政 治 家 の 承 認 を 受 けるという 意 思 決 定 プロセスがとられる つまり 国 家 研 究 開 発 投 資 にはリスクがあることを 前 提 に 意 思 決 定 者 のリスク 分 散 ( 責 任 分 散 )が 図 られている 一 方 米 国 では 国 家 技 術 戦 略 立 案 に 関 して 米 国 連 邦 政 府 の 諜 報 機 関 や 国 家 戦 略 立 案 シンクタンクに 多 額 の 出 資 をする 民 間 財 団 が 存 在 し 国 家 技 術 戦 略 に 必 要 な 情 報 収 集 と 調 査 分 析 に 多 額 の 費 用 をかける 体 制 がで きあがっている ただし 米 国 の 国 家 技 術 戦 略 はその 財 団 出 資 者 の 意 向 に 沿 う 傾 向 となる このように 米 国 では 国 家 技 術 戦 略 の 諜 報 活 動 (インテリジェンス 活 動 )にかける 投 資 が 膨 大 ( 注 9)であるが 国 家 研 究 開 発 投 資 の 意 思 決 定 プロセスに 関 して この 部 分 が 戦 後 の 日 本 では 見 劣 りすると 言 ってよい 以 上 のように 国 防 に 直 結 する 国 家 技 術 戦 略 のインテリジェンス 活 動 ( 表 に 出 ない 予 算 で 行 われる 知 的 活 動 )にかける 予 算 が 日 米 で 大 きく 異 なる 先 端 技 術 の 研 究 開 発 の 国 際 競 争 力 において 日 米 間 で 絶 望 的 な 差 がつく( 注 3)のは 当 然 であろう 2. 日 本 の 国 家 技 術 戦 略 立 案 プロセスの 構 造 問 題 さて 戦 後 の 日 本 は 元 々 ハイリスクの 先 端 技 術 の 研 究 開 発 は 決 して 強 くなかった なぜなら 日 本 は 米 国 に 比 べて ハイリスク( 成 果 の 保 証 のない)の 基 礎 研 究 や 原 理 の 探 求 研 究 にかける 公 的 資 金 が 絶 望 的 に 少 ないからである 筆 者 の 試 算 では 日 米 の 国 家 経 済 規 模 (GDP)の 差 を 考 慮 して 米 国 に 比 べて 年 2 兆 円 から 3 兆 円 くらい 不 足 している( 注 3) 戦 後 の 日 本 を 技 術 経 営 論 (MOT)の 見 地 から 眺 めれば 先 端 技 術 分 野 の 技 術 シーズに 関 してほとんどが 米 国 からの 技 術 導 入 である 戦 後 日 本 の 技 術 的 強 みは 米 国 から 移 転 した 基 幹 技 術 ( 基 礎 的 原 理 的 技 術 )を 改 良 する 部 分 ( 商 品 化 量 産 化 )に 限 られる この 部 分 は ほとんど 民 間 企 業 の 研 究 開 発 あるいは 技 術 開 発 の 領 域 である つまり 技 術 立 国 と 呼 ばれる 日 本 では 民 間 企 業 の 研 究 開 発 の 国 際 競 争 力 は 比 較 的 高 いものの 国 家 の 研 究 開 発 の 国 際 競 争 力 は 決 して 高 くない つ まり 日 本 は 米 国 に 比 べて 極 めてアンバランスな 技 術 立 国 なのである その 主 な 原 因 は 日 本 の 国 家 研 究 開 発 予 算 が 米 国 に 比 べて 相 対 的 に 大 幅 不 足 しているからである 日 本 人 の 能 力 や 才 能 の 問 題 では 決 してな い そこで なぜ 日 本 の 公 的 研 究 開 発 予 算 は 米 国 に 比 べて 絶 望 的 に 少 ないか ( 注 3)という 疑 問 に 焦 点 を 当 て 日 本 の 国 家 技 術 戦 略 立 案 プロセスの 構 造 問 題 を 以 下 に 抽 出 する (1) 戦 後 日 本 の 基 礎 研 究 は 民 間 依 存 の 傾 向 が 強 い -35-
戦 後 の 日 本 では 先 端 技 術 の 基 礎 的 原 理 的 研 究 開 発 投 資 はこれまで 日 本 企 業 の 中 央 研 究 所 で 主 に 行 わ れてきた さもなければ 米 国 からの 技 術 移 転 であった この 傾 向 は 現 在 も 続 いている そのため 日 本 の 国 家 研 究 開 発 予 算 ( 公 的 予 算 )を 米 国 並 みに 増 やす 必 要 性 の 乏 しい 状 態 が 続 いている (2) 日 本 の 公 的 研 究 所 や 大 学 付 属 研 究 所 は 民 間 から 期 待 されていない 研 究 自 前 主 義 だった 日 本 企 業 が 日 本 の 公 的 研 究 機 関 や 大 学 付 属 研 究 所 にあまり 期 待 しなかったため か 前 年 度 比 を 基 準 に 国 家 予 算 を 決 める 日 本 では 公 的 研 究 開 発 予 算 が 絶 望 的 に 少 ない 状 態 が 長 期 に 放 置 された (3) 日 本 の 国 家 予 算 官 僚 は 国 家 的 科 学 技 術 の 重 要 性 認 識 が 乏 しい 日 本 の 国 家 予 算 権 限 を 大 蔵 省 ( 現 財 務 省 )が 伝 統 的 に 支 配 しており 文 系 の 東 大 法 学 部 出 身 者 で 固 められてきた 国 家 予 算 官 僚 ( 主 計 官 僚 )にはハイリスクの 研 究 開 発 投 資 の 国 家 的 重 要 性 認 識 が 希 薄 と 思 われる (4) 日 本 では 公 的 研 究 開 発 は 投 資 ではなく 出 費 とみなされている 日 本 の 国 家 研 究 開 発 予 算 は 省 単 位 で 縦 割 り 化 分 散 化 されており 日 本 国 家 として 総 合 的 な 費 用 対 効 果 が 出 しにくい 国 家 研 究 開 発 体 制 となっている そのため 公 的 研 究 開 発 は 投 資 ではなく 出 費 ( 投 資 効 果 を 期 待 しない 費 用 )とみなされ 国 家 研 究 開 発 予 算 を 増 やす 根 拠 が 乏 しかった 国 家 研 究 開 発 が 出 費 とみ なされるならばできるだけ 節 約 すべしとなるのはやむを 得 ない その 結 果 日 本 国 家 の 科 学 技 術 予 算 は 増 えるどころか 近 年 横 ばいか 微 減 傾 向 にある( 注 5) (5) 日 本 が 覇 権 技 術 に 国 家 研 究 開 発 予 算 を 増 やすことを 米 国 から 警 戒 されている 日 本 が 基 礎 的 原 理 的 研 究 に 公 的 研 究 開 発 予 算 を 増 やすことが 米 国 覇 権 主 義 者 から 警 戒 され 陰 に 陽 に 抑 制 させられてきた 形 跡 がある( 注 1) なぜなら 敗 戦 国 日 本 の 軍 事 技 術 力 が 再 び 彼 らの 脅 威 にな らないように 仕 向 けられているからであろう ちなみに 近 年 の 日 本 政 府 は 自 国 の 国 家 研 究 開 発 投 資 より 米 ドル 覇 権 維 持 への 対 米 協 力 を 優 先 し 米 国 債 を 積 極 的 に 購 入 している その 結 果 慢 性 的 財 政 赤 字 の 米 国 連 邦 政 府 は 日 本 政 府 の 購 入 した 米 国 債 ( 日 本 国 民 の 預 貯 金 を 原 資 として 購 入 されている)を 自 国 の 国 家 研 究 開 発 投 資 の 財 源 にしている ところで 上 記 で 指 摘 した 日 本 の 国 家 技 術 戦 略 立 案 プロセスの 構 造 問 題 は 最 近 ライフサイエンスの 国 家 研 究 開 発 の 領 域 で 表 面 化 した 2008 年 8 月 13 日 の 朝 日 新 聞 に ips 細 胞 ( 人 工 多 能 性 幹 細 胞 )の 研 究 に 関 して 日 本 の 国 家 技 術 戦 略 が 見 えないという 批 判 記 事 が 載 った 同 研 究 分 野 での 日 本 の 権 威 山 中 伸 弥 京 都 大 学 教 授 ( 京 大 再 生 医 学 研 究 所 )は 1993 年 より 3 年 間 グラッドストーン 研 究 所 (GSI サンフランシスコ)のポスドク 研 究 員 であった この 研 究 所 はカリフォルニア 大 学 サンフランシスコ 校 (UCSF) 発 の 非 営 利 法 人 である 筆 者 の 所 属 した SRI とよく 似 た 大 学 発 の 独 立 研 究 所 (スピンオフ 研 究 開 発 型 非 営 利 法 人 )である 山 中 教 授 の GSI での 研 究 経 験 が 同 氏 の 研 究 観 を 形 成 していることは さまざまな 関 連 記 事 における 同 氏 の 発 言 から 明 らかである 日 米 の 研 究 文 化 特 に ハイリスクの 先 端 技 術 分 野 (ライフサイエンスを 含 む) の 研 究 文 化 は 日 米 で 大 きく 異 なることを 同 氏 は 実 地 体 験 していると 思 われる さて 上 記 新 聞 報 道 によれば ips 細 胞 の 研 究 開 発 戦 略 に 関 して 日 本 政 府 の 総 合 科 学 技 術 会 議 の 作 業 部 会 が 半 年 がかりでまとめた 研 究 推 進 策 の 評 判 がよくないようである その 理 由 はおそらく 日 本 の 国 家 技 術 戦 略 立 案 プロセスに 上 記 のような 構 造 問 題 が 潜 むからではないかと 推 察 される 3. 日 本 の 国 家 技 術 戦 略 立 案 プロセスのあるべき 姿 上 記 1 項 2 項 に 列 挙 した 日 本 の 国 家 技 術 戦 略 立 案 プロセスの 日 米 比 較 と 構 造 問 題 を 踏 まえて 以 下 に 日 本 の 国 家 技 術 戦 略 立 案 プロセスのあるべき 姿 を 提 言 する -36-
提 言 1: 国 家 研 究 開 発 投 資 に 対 する 確 固 たる 国 家 ミッションの 設 定 国 家 安 全 保 障 の 護 持 を 国 家 研 究 開 発 投 資 の 国 家 ミッションとして 設 定 し 全 国 民 のみならず 企 業 関 係 者 にも 周 知 徹 底 させるべきである 国 家 安 全 保 障 として 具 体 的 に まず 防 衛 力 の 確 保 エネルギー 資 源 の 確 保 食 糧 の 確 保 そして 国 民 の 生 命 健 康 安 全 の 確 保 を 挙 げたい 提 言 2: 国 家 研 究 開 発 投 資 の 重 要 性 認 識 の 周 知 徹 底 と 予 算 増 額 米 国 に 比 べて 日 本 の 国 家 研 究 開 発 投 資 ( 民 間 企 業 にとってリスクの 高 すぎる 先 端 的 研 究 開 発 投 資 )が いかに 不 足 しているかを 国 民 にデータで 説 明 し 21 世 紀 の 公 共 投 資 は 土 建 的 投 資 ではなく 公 的 研 究 開 発 投 資 ( 日 本 企 業 の 国 際 技 術 競 争 力 を 補 完 する 公 的 研 究 開 発 投 資 )であることを 国 民 ( 納 税 者 )に 正 しく 認 識 させる その 上 で 不 要 不 急 の 土 建 業 界 向 け 公 共 投 資 予 算 をできるだけ 減 らし 公 的 研 究 開 発 予 算 の 大 幅 増 額 ( 目 標 年 3 兆 円 の 増 額 )を 実 現 する 提 言 3: 国 家 ミッションに 重 要 な 戦 略 技 術 の 選 択 と 集 中 投 資 設 定 した 国 家 ミッションを 念 頭 に 防 衛 技 術 ( 先 端 的 情 報 通 信 技 術 を 含 む) エネルギー 環 境 技 術 バイオテクノロジー ライフサイエンスなどの 先 端 科 学 技 術 分 野 における 国 家 的 優 先 順 位 を 決 定 する そして 国 家 的 戦 略 技 術 への 優 先 集 中 投 資 を 行 う なお 米 国 におけるナノテクノロジーの 広 義 の 概 念 は 上 記 を 包 含 する 異 分 野 融 合 型 先 端 科 学 技 術 体 系 の 総 称 である 提 言 4: 国 家 技 術 戦 略 のインテリジェンス 活 動 の 強 化 日 本 では 外 務 省 に 国 家 機 密 費 の 予 算 枠 があると 聞 くが 国 家 安 全 保 障 のためのインテリジェンス 活 動 予 算 は 米 国 と 比 べて 格 段 に 少 ないであろう 国 家 技 術 戦 略 を 成 功 させるためには 国 家 技 術 戦 略 立 案 に 向 けたインテリジェンス 活 動 ( 注 10)が 極 めて 重 要 となる この 部 分 の 挙 国 体 制 を 至 急 に 構 築 するべき である( 注 11) 注 記 ) 注 1: 山 本 尚 利 日 米 技 術 覇 権 戦 争 光 文 社 2003 年 注 2: 全 米 科 学 振 興 協 会 The American Association for the Advancement of Science (AAAS) 注 3: 山 本 尚 利 寺 本 義 也 日 本 企 業 に 求 められる 先 端 技 術 の R&D 戦 略 早 稲 田 大 学 ビジネススクー ル レビュー 第 3 号 2006 年 1 月 p78 83 日 経 BP 注 4: 米 国 の 国 防 総 省 は 国 家 安 全 保 障 と 国 益 護 持 をミッションとする 国 家 組 織 であり その 下 部 機 構 で ある 軍 隊 は 国 防 ミッション 遂 行 の 手 段 として 位 置 づけられている この 思 想 から 国 益 に 直 結 する 国 家 技 術 戦 略 は 国 防 総 省 の 重 要 ミッションとなる 注 5: 総 合 科 学 技 術 会 議 ( 内 閣 府 ) 注 6: 日 本 政 府 の 科 学 技 術 予 算 の 中 味 は 米 国 連 邦 政 府 の 一 般 的 科 学 技 術 予 算 の 中 味 に 対 応 する 米 国 に とってそれは 連 邦 研 究 開 発 予 算 の 3 割 分 (4.5 兆 円 規 模 )でしかない 注 7: 科 学 技 術 の 国 家 研 究 開 発 投 資 とはあくまで 国 家 ミッション 遂 行 の 手 段 であるにもかかわらず 戦 後 の 日 本 国 家 はそれを 目 的 化 してしまっている 戦 後 日 本 の 科 学 技 術 の 国 家 研 究 開 発 投 資 のミッ ションを 敢 えて 挙 げるなら それは 日 本 国 民 の 科 学 技 術 系 人 材 教 育 であろう また 日 本 ではエネ ルギー 分 野 を 中 心 に 経 済 産 業 省 も 別 途 科 学 技 術 研 究 機 関 を 有 しているが そのミッションは 日 本 の 民 間 産 業 支 援 にとどまっている 注 8:なぜ 国 家 的 に 重 要 なハイリスク 研 究 開 発 には 公 的 資 金 投 資 が 必 須 になるかというと 収 益 志 向 の 民 間 研 究 開 発 投 資 になじまないからである 注 9:ネット 情 報 によれば 国 防 総 省 の 使 途 不 明 金 ( 国 家 機 密 費 や 闇 資 金 )は 1999 年 に 2 兆 3000 億 ド ル 2000 年 に 1. 兆 1000 億 ドル 発 生 しているとのこと これらの 闇 資 金 が 諜 報 活 動 に 使 用 される 注 10: 特 集 戦 略 的 意 志 決 定 とインテリジェンス 研 究 技 術 計 画 Vol.23 No.1 2008 年 研 究 技 術 計 画 学 会 注 11: 山 本 尚 利 情 報 と 技 術 を 管 理 され 続 ける 日 本 ビジネス 社 2008 年 9 月 -37-