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中 国 人 学 習 者 の 日 本 語 の 長 音 表 記 における 誤 用 の 一 考 察 中 国 語 と 日 本 語 の 漢 字 音 の 対 応 からの 応 用 山 崎 誠 ( 京 都 大 学 院 生 ) 要 旨 本 発 表 は 日 本 在 住 の 中 国 人 日 本 語 学 習 者 ( 中 級 レベル)の 学 習 者 を 対 象 とし 日 本 漢 字 音 の 誤 用 のうち 長 音 を 中 心 とした 日 中 漢 字 音 の 対 応 に 焦 点 を 当 て 漢 字 音 活 用 の 可 能 性 について 考 察 するものである 日 本 語 のモーラと 中 国 語 の 音 節 構 造 に 基 づ き 日 本 語 の 長 音 と 中 国 語 の 音 韻 の 対 応 を 考 察 する キーワード: 日 本 語 教 育 ; 中 国 語 ; 漢 字 音 ; 音 韻 ; 言 語 学 1. はじめに 漢 字 を 母 語 とする 中 国 人 にとって 日 本 語 の 学 習 は 他 の 言 語 の 学 習 より 有 利 であ ると 感 じることが 多 い しかし 中 級 レベルになると 語 彙 数 や 難 易 度 も 増 し 母 語 の 干 渉 と 思 われる 誤 用 に 遭 うことも 多 くなる 日 本 語 の 長 音 に 関 する 先 行 研 究 では 音 声 に 関 する 研 究 が 比 較 的 多 い しかしその 一 方 で 日 本 語 のモーラと 中 国 語 の 音 節 の 違 いに 焦 点 を 当 て 誤 用 のメカニズムを 考 察 すると 同 時 に 中 国 人 学 習 者 には 耳 で 区 別 しにくい 日 本 語 の 長 音 を 日 中 漢 字 音 との 対 応 から 類 推 できれば 漢 字 音 を 日 本 語 の 学 習 に 活 用 する 余 地 があると 考 えた 本 発 表 ではまず 日 本 語 の 漢 字 音 を 考 察 するにあたり 文 部 科 学 省 告 示 の 常 用 漢 字 表 の 前 書 きを 参 照 したい 法 令, 公 用 文 書, 新 聞, 雑 誌, 放 送 など, 一 般 の 社 会 生 活 において, 現 代 の 国 語 を 書 き 表 す 場 合 の 漢 字 使 用 の 目 安 を 示 すものである これは 日 本 語 を 母 語 とする 者 を 対 象 としており これらの 常 用 漢 字 1945 字 を 実 際 の 教 育 現 場 で 留 学 生 の 教 材 とするには 大 変 難 しいものがある そこで 日 本 語 の 漢 字 音 と 中 国 語 の 漢 字 音 を 比 べるにあたり まず 実 際 に 使 われてい る 教 材 の 中 の 漢 字 を 範 囲 として 考 察 を 行 うこととする 本 考 察 では 日 本 語 能 力 試 験 対 策 日 本 語 総 まとめ N2 漢 字 を 使 用 し インデッ クスにある 漢 字 891 字 を 対 象 とした そのうち 本 発 表 で 扱 う 音 韻 が 約 25%を 占 める 2. 日 本 と 中 国 の 漢 字 音 について 日 本 語 の 漢 字 音 には 先 行 研 究 から 大 きく 呉 音 漢 音 唐 音 に 分 けられる 呉 音 は 漢 音 より 古 く 約 5 世 紀 から 6 世 紀 ごろに 朝 鮮 半 島 ( 当 時 は 百 済 を 経 由 )から 伝 わり 中 国 の 六 朝 時 代 の 南 方 音 を 反 映 していると 言 われている 1

漢 音 は 8 世 紀 から 9 世 紀 ごろの 長 安 音 を 反 映 していると 言 われ 中 国 語 の 分 類 とし ては 中 古 音 の 代 表 的 音 韻 とされている この 漢 音 は 日 本 の 遣 隋 使 や 遣 唐 使 が 日 本 に 伝 えたとされ 奈 良 時 代 以 降 に 奨 励 され 定 着 したが 日 本 語 の 呉 音 は 仏 教 系 の 漢 字 音 が 多 く 現 代 日 本 語 ではこれら 呉 音 と 漢 音 の 両 方 が 漢 字 音 の 音 韻 として 用 いられている 唐 音 は 中 世 の 音 韻 と 言 われ 行 脚 の 脚 (キ ャ)はキャクのク( 入 声 )の 消 失 や 喫 茶 の 茶 (サ) 呉 漢 音 でタ 行 サ 行 に 変 化 するなどの 特 徴 がある このように 日 本 の 漢 字 音 は 歴 史 的 に 見 ても 非 常 に 複 雑 な 経 緯 をたどっているため 日 本 人 でも 呉 音 漢 音 唐 音 を 区 別 するのは 非 常 に 難 しい また 現 代 中 国 語 においても 歴 史 的 にみるとその 音 韻 変 化 は 多 く 見 られる 中 古 音 に 基 づく 日 本 漢 字 音 との 違 いは 想 像 以 上 に 大 きい 中 国 語 は 中 世 に 入 声 の 消 失 また 近 代 で 子 音 の 口 蓋 化 を 経 験 し 現 代 の i に 関 しては 巻 舌 音 と 口 蓋 化 とその 他 の 子 音 とで 3 つの 異 音 が 存 在 するなど 中 古 音 からの 音 韻 の 変 化 における 対 応 は 大 変 複 雑 で ある 本 発 表 では 歴 史 的 ではなく 日 本 語 の 長 音 の 対 応 を 現 代 中 国 語 のピンイン 表 記 を 対 応 させ できる 限 り 簡 素 な 対 応 関 係 を 探 るべく 考 察 を 行 う 3. 日 本 語 学 習 における 中 国 人 学 習 者 の 誤 用 日 本 語 を 教 えていると 当 然 のことながら 漢 字 の 書 き 取 り 読 みがな 等 の 練 習 を 行 う 非 漢 字 圏 にとって 大 変 負 担 の 大 きい 部 分 ではあるが 中 国 人 学 習 者 にとっても 書 き 取 りに 関 しては 負 担 は 少 ないものの 中 級 レベルであっても 日 本 漢 字 音 を 正 確 に 把 握 しきれず 例 えば 度 (ド) を ドウ あるいは 同 (ドウ) を ド と 表 記 する 誤 用 が 多 々 見 られる これらは ピンイン 表 記 において 度 (ド) は du 同 (ドウ) は to ng である 丸 田 孝 志 (1996)によると 日 本 語 の 長 音 は 現 代 中 国 語 の-ng に 対 応 しているとあることから 度 (ド) に 関 しては 終 声 が-u であるために -u を 意 識 してしまい 母 語 干 渉 から ドウ としてしまうのが 誤 用 の 原 因 なのではないかと 考 えた 3.1 実 際 の 漢 字 音 の 混 同 と 誤 用 漢 字 音 の 誤 用 例 (-u) 組 織 (そしき) *そう しき ( 中 国 語 : 組 zu ) 今 度 (こんど) こん *どう など ( 中 国 語 : 度 du ) 漢 字 音 の 誤 用 例 (-ng) 同 時 (どうじ) *と じ または *とん じ など ( 中 国 語 : 同 to ng) これらを 現 代 中 国 語 のピンイン 表 記 と 照 らし 合 わせると 図 tu および 土 tu 書 shu 度 du など 終 声 が u になっているため 日 本 語 の 長 音 を 表 わす う を 類 推 から 選 んでしまうのであろうと 考 える この 誤 用 の 解 釈 を 求 めるべく 日 中 の 音 韻 を 中 心 に 考 察 を 進 める 2

4. 日 本 語 と 中 国 語 の 音 韻 構 造 日 本 語 は 中 国 語 に 比 べて 音 の 数 もさることながら 音 節 構 造 も 極 めて 少 なく 単 純 で ある (V: 動 詞 C: 子 音 N: 鼻 音 S:わたり 音 ) 1 V:あ[a] CV:か[ka] CSV:きゃ[kʲa] ( 拗 音 ) 中 国 語 の 音 節 は 一 般 的 に IMVE/T であらわされ 音 節 の 頭 子 音 (Initial) 介 音 (Medial) 主 母 音 (primary Vowel) 尾 音 (Ending) と 分 析 することができる 後 述 するが 音 韻 の 組 み 合 わせは 以 下 の 七 つの 組 み 合 わせがある 2 V VV VV/N VVV CV CVV/N CVVV/N 4.1 日 本 語 の 音 韻 構 造 日 本 語 は 音 節 のほかにモーラ( 拍 )の 概 念 があり 窪 薗 晴 夫 (2010 p.19 注 1)では 日 本 語 のモーラと 音 節 について 以 下 のように 述 べている 軽 音 節 とは か や と のように1モーラから 成 る 音 節, 重 音 節 とは かん や かい とっ とー のように2モーラから 成 る 音 節 を 指 す 伝 統 的 な 言 い 方 をす ると, 軽 音 節 は 自 立 拍 1 個 から 成 る 音 節, 重 音 節 は[ 自 立 拍 + 特 殊 拍 ]という 構 造 の 音 節 である つまり 日 本 語 では1モーラで 軽 音 節 2モーラで 重 音 節 を 形 成 しているので ある これに 基 づき 中 国 語 の 音 韻 との 比 較 においてどのように 日 本 語 の 音 韻 と 対 応 させているのかを 考 察 する 4.2 中 国 語 の 音 韻 伝 統 的 な 中 国 語 音 韻 学 では 構 成 要 素 の 特 徴 にもとづき 頭 子 音 の 声 母 とその 他 の 部 分 韻 母 にわけており さらに 韻 を 韻 頭 韻 腹 韻 尾 の 三 つに 分 けている 現 代 中 国 語 総 説 (2004)によると 中 国 の 詩 作 の 押 韻 に 関 しては 韻 腹 + 韻 尾 の 調 和 のみを 重 視 し 韻 頭 は 関 与 しない 要 素 として 考 慮 に 入 れない また 馮 薀 澤 (2007)の 指 摘 では 音 節 構 造 上 は1つ 上 の 階 層 に 属 する そして 以 上 の 観 点 から 現 代 中 国 語 の 音 節 構 造 は 4 層 構 造 が 妥 当 であると 考 察 している ( 図 1 参 照 ) 3

音 節 ( 図 1) 声 母 韻 母 韻 頭 韻 ( 押 韻 する 部 分 ) 韻 腹 韻 尾 開 音 節 は 母 音 の 組 み 合 わせでは V VV VVV の3 種 類 あり また 子 音 + 母 音 の 組 み 合 わせでは CV CV CVV CVVV の4 種 類 ある また 閉 音 節 では VC(/N) VVC(/N) CVC(/N) CVVC(/N)の4 種 類 がある (V: 母 音 C: 子 音 N: 鼻 音 ) つまり 以 下 の 表 からも 現 代 中 国 標 準 語 の 音 節 は 最 大 で CVVV または CVVC(/N) の 4 つの 成 分 が 存 在 することが 導 かれる 中 国 語 の 音 節 構 造 ( 表 1) (C) (V) V (V/N) 例 V a 阿 /a/ VV u a 瓦 /wa/ VV/N a i or N 爱 /ai/ 安 /an/ 昂 /ang/ VVV u a i or N 歪 /wai/ 碗 /wan/ 王 /wang/ CV g a 伽 /ga/ CVV/N g a i or N 该 /gai/ 干 /gan/ 港 /gang/ CVVV/N g u a i or N 怪 /guai/ 馆 /guan/ 光 /guang 韻 韻 頭 声 母 韻 腹 韻 尾 韻 母 中 国 語 の 音 韻 では 音 節 の 核 となっている 部 分 は 韻 腹 に 該 当 し その 他 の 要 素 とあわせてまとめると/g/: 声 母 /u/: 韻 頭 /a/: 韻 腹 /i/: 韻 尾 となる そして 中 国 語 音 韻 学 では 前 述 したように 声 母 と 韻 母 の 二 つが 音 節 の 中 心 要 素 であ る 4.3 中 国 語 と 日 本 語 の 音 韻 の 転 写 前 述 した 日 本 語 と 中 国 語 の 音 韻 をもとに 中 国 語 音 を 日 本 語 の 音 韻 に 写 す 場 合 モ ーラと 音 節 構 造 の 関 係 から 音 韻 の 対 応 がどのようになるかを 考 えたい 4

中 国 語 と 日 本 語 の 音 韻 転 写 ( 表 2) 阿 古 該 館 光 中 国 語 a g u g ai g uan g uang (モーラ 変 換 ) a gu ga + i gu + an gu + ang 日 本 語 ア コ ガイ カン コウ ( 旧 かな 遣 い) (クワン) (クワウ) このようにモーラ( 拍 ) 言 語 である 日 本 語 は 中 国 語 の 音 韻 を 捉 える 場 合 子 音 単 独 では 軽 音 節 を 形 成 することができないため 音 を 写 すことができない そのため 中 国 語 の 作 詩 などで 押 韻 する 韻 の 部 分 を 分 解 し 子 音 + 母 音 で1モーラと 捉 えることで 日 本 語 として 音 を 表 記 することが 可 能 になる 3 中 国 語 : 声 母 + 韻 母 :1 音 節 日 本 語 : 声 母 がある 場 合 声 母 を 軽 音 節 にすることを 優 先 後 半 部 分 を 軽 音 節 または 重 音 節 で 対 応 しモーラ 化 しかし 上 記 ( 表 2)に 見 られるように-ang の 部 分 が 長 母 音 に 対 応 させたのは 当 時 の 音 に 由 来 すると 思 うが -n と-ng の 弁 別 的 に 働 いたのではないかと 考 える このように 日 本 語 のモーラと 合 わせることにより 独 自 に 音 韻 を 変 化 させ 長 母 音 と して 写 すことで 日 本 漢 字 音 の 音 韻 体 系 に 合 わせたと 考 える 5. 中 国 語 の 日 本 語 の 長 音 との 対 応 日 本 漢 字 音 における 長 音 ウ イ 対 応 する 中 国 語 漢 字 音 の 対 応 を 表 わしたも のである (-ng / -u 及 び-o で 終 わる 二 重 母 音 / 三 重 母 音 を 含 む) 日 本 語 の 長 音 と 中 国 語 音 の 対 応 ( 表 3) 漢 字 日 本 語 中 国 語 漢 字 日 本 語 中 国 語 -ng の 例 東 トウ dōng 朋 ホウ péng 江 コウ jiāng 性 セイ xìng 二 重 母 音 の 例 豪 ゴウ háo 久 キュウ jǐu 三 重 母 音 の 例 了 リョウ liǎo 要 ヨウ yào -ng は 上 述 した 考 察 から さらに-ing -eng -ong -ang に 分 類 され 多 少 の 例 外 は あるもののほぼ 日 本 語 の 長 音 ウ と 対 応 する まず 前 章 でみた-ng および-u ([u, y])に 該 当 する 漢 字 を 取 り 出 し その 対 応 を 調 べたと ころ 以 下 のようになった また-ang に 関 しては さらに 子 音 が 加 わった -iang -uang の 二 つの 音 韻 も 対 象 とした 5

5.1 ピンイン 記 号 -ng に 対 応 する 日 本 漢 字 -ing: 庁 令 行 名 応 迎 兵 形 姓 性 明 命 映 病 経 清 頂 停 営 傾 零 境 精 静 鳴 領 請 敬 景 硬 評 齢 鏡 警 競 -eng: 正 生 成 争 灯 政 更 冷 省 乗 城 政 承 昇 耕 能 蒸 豊 夢 増 憎 勝 証 程 登 等 整 騰 -ong: 工 公 冗 攻 永 用 共 仲 虫 同 泳 供 紅 重 送 勇 空 栄 宮 凍 容 終 動 農 種 総 銅 痛 筒 統 童 濃 -ang: 上 王 亡 央 当 忙 羊 坊 忘 防 長 放 房 航 党 康 商 章 常 張 訪 望 傷 腸 障 様 賞 港 粧 象 場 棒 陽 蔵 糖 臓 (-iang) 向 両 良 香 相 洋 降 将 娘 強 郷 涼 想 像 量 箱 講 (-uang) 双 広 光 床 状 況 荒 黄 窓 鉱 横 装 5.2 ピンイン 表 記 と 日 本 漢 字 音 との 対 応 -ing ウ:(チョウ) 庁 頂 / (コウ) 行 硬 / (キョウ) 境 鏡 / (オウ) 応 / (ヒ ョウ) 病 / (ヒョウ) 評 / (リョウ) 領 イ: (レイ) 令 零 齢 / (メイ) 名 命 / (ヘイ) 兵 / (ケ イ) 迎 / (エイ) 映 営 / (セイ) 姓 性 静 精 請 清 / (ケイ) 型 経 敬 景 傾 警 / (テイ) 停 ウ/イ:(ケイ キ ョウ) / 形 (メイ ミョウ) / 明 (ケイ キョウ) 競 例 外 :(ナク) 鳴 く/ (ケシキ) 景 色 -eng ウ:(ソウ) 争 / (トウ) 灯 登 等 騰 / (コウ) 更 耕 / (シ ョウ) 乗 城 / (ショウ) 承 昇 蒸 勝 証 / (ノウ) 能 / (ホウ) 豊 / (ソ ウ) 増 憎 イ:(レイ) 冷 / (セイ) 成 政 整 / (テイ) 程 ウ/イ:(セイ/ショウ) 正 生 省 例 外 :(ム) 夢 (トサ ン) 登 山 -ong ウ:(コウ) 工 公 攻 紅 / (シ ョウ) 冗 / (ヨウ) 用 容 / (キョウ) 共 供 / (チュウ) 虫 / (トウ) 凍 筒 統 / (ト ウ) 動 銅 童 / (シ ュウ) 重 / (ソウ) 送 総 / (ユウ) 勇 / (クウ) 空 / (キュウ) 宮 / (シュウ) 終 / (ノウ) 農 濃 / (ツウ) 痛 イ:(エイ) 永 泳 栄 例 外 : (シュ) 種 / (ナカ) 仲 -ang ウ:(ショウ) 商 章 傷 障 賞 粧 象 / (シ ョウ) 上 常 場 / (オウ) 王 央 / (ホウ) 放 訪 / (ホ ウ) 亡 忙 坊 忘 防 房 望 棒 / (トウ) 当 党 糖 / (ヨウ) 羊 様 陽 / (チョウ) 長 張 腸 / (コウ) 航 康 港 / (ソ ウ) * 象 蔵 臓 (-iang) ウ:(コウ) 向 香 降 講 / (リョウ) 両 良 涼 量 / (ソウ) 相 想 / (ソ ウ) 像 / (ヨウ) 洋 / (ショウ) 将 / (キョウ) 強 郷 例 外 (ハコ) 箱 (ムスメ) 娘 6

(-uang) ウ:(ソウ) 双 窓 装 / (コウ) 広 光 荒 鉱 / (ショウ) 床 / (シ ョウ) 状 / (キョウ) 況 / (コウ オウ) 黄 横 このように-ng が 対 応 する 日 本 漢 字 音 は 当 該 テキストにおいては ほぼ 長 音 であり 詳 しく 見 ると -ang が ウ に 対 応 していた また-ing -eng などは ウ イの 両 方 に 分 布 があり 呉 音 漢 音 の 差 が 双 方 に 現 れている 長 音 イ との 対 応 は -ing の i の 影 響 があるせいか 比 較 的 多 くみられた 5.3 単 母 音 -u との 対 応 戸 (ト) 五 互 (コ ) 予 (ヨ) 去 (キョ) 主 (シュ)などは 中 国 語 の-u と 対 応 し 日 本 語 の 長 音 には ならない しかしながら2 章 でふれたように 現 代 中 国 語 は 中 世 に 語 末 の 子 音 入 声 を 消 失 したため 日 本 語 との 対 応 で 例 外 として 扱 わなければならない 音 韻 がある 入 塔 などに 見 られる 入 声 -p である この 語 末 子 音 を 有 していた 音 韻 が 日 本 語 の 長 音 と 対 応 するのである これは 広 東 語 を 話 す 学 習 者 には 比 較 的 類 推 しやす いと 思 われる 中 国 語 広 東 語 日 本 語 入 ru [jap]6 ニュウ 塔 tā [tʰaap]3 トウ 以 上 の 考 察 から 今 回 のテキストでは 26 文 字 が 広 東 語 で 入 声 -p を 持 つ 音 韻 であ ったが これらを 例 外 とし 単 母 音 -u が 終 声 の 漢 字 音 は 長 音 にならないという 規 則 を 導 くことができる 6. まとめ 日 本 語 の 漢 字 音 を 習 得 するにあたり 漢 字 を 使 わない 他 の 言 語 より 中 国 人 学 習 者 は 優 位 であると 思 われることが 多 いが 初 級 から 中 級 上 級 になるほど 語 彙 も 増 え 中 国 語 である 母 語 の 影 響 を 受 けることも 少 なからず 見 られる そこで 漢 字 音 を 理 解 することで この 母 語 干 渉 を 軽 減 できるのではないかと 考 え その 対 応 から 日 本 語 の 長 音 の 関 係 を 考 察 したことで 可 能 性 を 考 察 した その 結 果 中 国 語 で-ng を 持 つ 漢 字 音 は ほぼ 長 音 と 対 応 し 歴 史 的 な 理 由 から 例 外 はあるものの-u を 持 つ 漢 字 音 は 長 音 と 対 応 しないという 規 則 性 を 示 唆 できたと 考 える 7. 今 後 の 展 望 7

学 習 者 は 日 本 語 の 長 音 を 発 音 するときに 意 識 的 には 長 音 のつもりであるが 日 本 人 の 発 音 より 往 々にして 短 いのは 先 行 研 究 からも 指 摘 されるところであり 現 代 中 国 語 の 母 音 の 長 短 が 弁 別 的 に 働 かないことを 考 えると 学 習 者 が 習 得 に 困 難 を 感 じるのも 理 解 できる 言 いかえると 中 国 語 では 長 短 を 意 識 しないが 日 本 人 は 母 語 である 日 本 語 を 習 得 する 過 程 で モーラを 感 覚 的 にとらえ 長 短 を 区 別 できるのとは 対 照 的 である しかし 日 中 の 漢 字 音 の 対 応 は 複 雑 であり 中 国 語 の 中 古 音 や 中 世 の 音 まで 遡 るこ とも 多 く また 中 国 語 や 言 語 学 に 関 しても 基 本 的 な 知 識 がある 程 度 必 要 である 今 後 は 漢 字 音 の 対 応 において ある 程 度 基 本 的 な 言 語 学 の 知 識 で 理 解 できるよう にし できるだけ 教 師 側 の 負 担 を 減 らすべくさらに 対 応 関 係 の 考 察 を 進 めたい そして 引 き 続 き 漢 字 音 を 活 用 しながら 日 本 語 教 育 の 実 践 に 貢 献 していきたいと 考 える 参 考 文 献 丸 田 孝 志 (1996) 日 本 語 漢 字 音 の 清 濁 音 長 短 音 促 音 の 指 導 について 北 京 語 朝 鮮 語 話 者 の 母 語 をてがかりに 中 国 四 国 教 育 学 会 教 育 学 研 究 紀 要 42( 第 2 部 ), 中 澤 信 幸 (2007) 中 国 語 発 音 学 習 における 日 本 漢 字 音 活 用 の 可 能 性 について 独 立 行 政 法 人 国 立 高 等 専 門 学 校 機 構 大 島 商 船 高 等 専 門 学 校 紀 要 小 熊 利 江 (2002) 日 本 語 の 長 音 と 短 音 に 関 する 中 間 言 語 研 究 の 概 観 ( 第 3 章 日 本 語 音 声 の 習 得 ) 言 語 文 化 と 日 本 語 教 育. 増 刊 特 集 号, 第 二 言 語 習 得 教 育 の 研 究 最 前 線 : あすの 日 本 語 教 育 への 道 しるべ 窪 薗 晴 夫 (2010) 形 成 と 音 韻 構 造 短 縮 語 形 成 のメカニズム 国 立 国 語 研 究 所 高 見 澤 孟,ハント 蔭 山 悠 子 (2004) 新 はじめての 日 本 語 教 育 1 日 本 語 教 育 の 基 礎 知 識 アスク 語 学 事 業 部 馮 薀 澤 (2007) 中 国 語 の 音 声 白 帝 社 8