RCSSディスカッションペーパーシリーズ



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国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

Microsoft Word - 【溶け込み】【修正】第2章~第4章

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申 請 免 除 申 請 免 除 ( 学 生 以 外 ) 学 生 納 付 特 例 制 度 若 年 者 納 付 猶 予 制 度 法 定 免 除 世 帯 構 成 図 表 1 国 民 年 金 保 険 料 の 免 除 の 種 類 と 所 得 基 準 本 人 世 帯 主 配 偶 者 の 所 得 に 応 じて 免

[ 組 合 員 期 間 等 の 特 例 ] 組 合 員 期 間 等 については 年 齢 職 種 などにより 過 去 の 制 度 からの 経 過 措 置 が 設 けられ ており 被 用 者 年 制 度 の 加 入 期 間 ( 各 共 済 組 合 の 組 合 員 期 間 など)については 生 年 月 日

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m07 北見工業大学 様式①

平成16年度

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平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

年 支 給 開 始 年 齢 図 特 別 支 給 の 老 齢 厚 生 年 ( 給 料 比 例 部 分 ) 昭 和 29 年 10 月 1 日 生 まれ 以 前 ~ 特 別 支 給 の 退 職 共 済 年 老 齢 厚 生 年 昭 和 25 年 10 月 1 日 生 まれ 以 前 ~ 退 職 共 済 年

(2) 国 民 年 金 の 保 険 料 国 民 年 金 の 第 1 号 被 保 険 者 および 任 意 加 入 者 は, 保 険 料 を 納 めなければなりま せん また,より 高 い 老 齢 給 付 を 望 む 第 1 号 被 保 険 者 任 意 加 入 者 は, 希 望 により 付 加 保 険

社 会 保 障 税 一 体 改 革 ( 年 金 分 野 )の 経 緯 社 会 保 障 税 一 体 改 革 大 綱 (2 月 17 日 閣 議 決 定 ) 国 年 法 等 改 正 法 案 (2 月 10 日 提 出 ) 法 案 を 提 出 する または 法 案 提 出 を 検 討 する と された 事

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(2) 特 別 障 害 給 付 金 国 民 年 金 に 任 意 加 入 していなかったことにより 障 害 基 礎 年 金 等 を 受 給 していない 障 がい 者 の 方 に 対 し 福 祉 的 措 置 として 給 付 金 の 支 給 を 行 う 制 度 です 支 給 対 象 者 平 成 3 年 3

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

スライド 1

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スライド 1

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

資 格 給 付 関 係 ( 問 1) 外 国 人 Aさん(76 歳 )は 在 留 期 間 が3ヶ 月 であることから 長 寿 医 療 の 被 保 険 者 ではない が 在 留 資 格 の 変 更 又 は 在 留 期 間 の 伸 長 により 長 寿 医 療 の 適 用 対 象 となる 場 合 には 国

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

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(1)1オールゼロ 記 録 ケース 厚 生 年 金 期 間 A B 及 びCに 係 る 旧 厚 生 年 金 保 険 法 の 老 齢 年 金 ( 以 下 旧 厚 老 という )の 受 給 者 に 時 効 特 例 法 施 行 後 厚 生 年 金 期 間 Dが 判 明 した Bは 事 業 所 記 号 が

Microsoft Word

公表表紙

    平成11年度余市町私立幼稚園就園奨励費補助金交付要綱

2 1.ヒアリング 対 象 (1) 対 象 範 囲 分 類 年 金 医 療 保 険 雇 用 保 険 税 備 考 厚 生 年 金 の 資 格 喪 失 国 民 年 金 の 加 入 老 齢 給 付 裁 定 請 求 など 健 康 保 険 の 資 格 喪 失 国 民 健 康 保 険 の 加 入 健 康 保 険

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

代 議 員 会 決 議 内 容 についてお 知 らせします さる3 月 4 日 当 基 金 の 代 議 員 会 を 開 催 し 次 の 議 案 が 審 議 され 可 決 承 認 されました 第 1 号 議 案 : 財 政 再 計 算 について ( 概 要 ) 確 定 給 付 企 業 年 金 法 第

Ⅰ 年 金 制 度 昭 和 37 年 12 月 1 日 に 地 方 公 務 員 等 共 済 組 合 法 が 施 行 され 恩 給 から 年 金 へ 昭 和 61 年 4 月 から 20 歳 以 上 60 歳 未 満 のすべての 国 民 が 国 民 年 金 に 加 入 厚 生 年 金 基 金 職 域

後期高齢者医療制度

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Microsoft Word - 奨学金相談Q&A.rtf

総論

職 員 の 等 に 関 する 条 例 第 24 条 の 承 認 は 正 規 の 勤 務 時 間 の 始 め 又 は 終 わりにおいて 30 分 を 単 位 として 行 う ものとする 2 育 児 を 原 因 とする 特 別 休 暇 を 承 認 されている 職 員 に 対 する の 承 認 については

定款

18 国立高等専門学校機構

スライド 1

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

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Microsoft Word - ★HP版平成27年度検査の結果

3. 選 任 固 定 資 産 評 価 員 は 固 定 資 産 の 評 価 に 関 する 知 識 及 び 経 験 を 有 する 者 のうちから 市 町 村 長 が 当 該 市 町 村 の 議 会 の 同 意 を 得 て 選 任 する 二 以 上 の 市 町 村 の 長 は 当 該 市 町 村 の 議

資料2 利用者負担(保育費用)

第 2 問 問 4 問 5 1ロ 2チ 3ヲ 4ホ ⅰ)Aさんは 今 年 の 誕 生 日 で 40 歳 となるので 公 的 介 護 保 険 の(1 第 2 号 ) 被 保 険 者 資 格 を 取 得 し 介 護 保 険 料 を 負 担 することになる 40 歳 以 上 65 歳 未 満 の 医 療

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 ( 単 位 : 円 ) 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 413,

Microsoft Word - 目次.doc

国民年金

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リング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 に 係 る 繰 延 税 金 資 産 について 回 収 可 能 性 がないも のとする 原 則 的 な 取 扱 いに 対 して スケジューリング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 を 回 収 できることを 反 証 できる 場 合 に 原 則

障害福祉制度あらまし目次

目 次 1. 社 会 保 障 分 野 でできること 1 1 高 額 医 療 高 額 介 護 合 算 制 度 の 改 善 2 保 険 証 機 能 の 一 元 化 3 自 己 診 療 情 報 の 活 用 4 給 付 可 能 サービスの 行 政 側 からの 通 知 2. 年 金 分 野 でできること 5

奨学事業戦略部個人情報ファイル簿

16 日本学生支援機構

PowerPoint プレゼンテーション

スライド 1

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月 収 額 算 出 のながれ 給 与 所 得 者 の 場 合 年 金 所 得 者 の 場 合 その 他 の 所 得 者 の 場 合 前 年 中 の 年 間 総 収 入 を 確 かめてください 前 年 中 の 年 間 総 収 入 を 確 かめてください 前 年 中 の 年 間 総 所 得 を 確 かめ

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

鳥 取 国 民 年 金 事 案 177 第 1 委 員 会 の 結 論 申 立 人 の 昭 和 37 年 6 月 から 38 年 3 月 までの 国 民 年 金 保 険 料 については 納 付 していたものと 認 められることから 納 付 記 録 を 訂 正 することが 必 要 である 第 2 申

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

住民税

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Ⅰ 平成14年度の状況

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

減 少 率 ) と 平 均 余 命 の 伸 びを 勘 案 した 一 定 率 (0.3%) の 合 計 である スライド 調 整 率 を 差 し 引 いて 年 金 額 の 改 定 が 行 われる( 図 表 ) ただし マクロ 経 済 スライドが 完 全 に 実 施 されるのは 賃 金 や 物 価 があ

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 福 岡 県 技 能 労 務 職 歳 1,19,98 9,9 歳 8,

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 H H H5.4.1 ( 参 考 値 ) 97.1 H H H H5.4.1 H H5.4.1 ( 参 考

Microsoft Word - 19年度(行個)答申第94号.doc

(1) 率 等 一 覧 ( 平 成 26 年 度 ) 目 課 客 体 及 び 納 義 務 者 課 標 準 及 び 率 法 内 に 住 所 を 有 する ( 均 等 割 所 得 割 ) 内 に 事 務 所 事 業 所 又 は 家 屋 敷 を 有 する で 内 に 住 所 を 有 し ないもの( 均 等

5

Microsoft Word - 4 家計基準

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (5 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 区 類 団 府 分 似 体 平 均 年 齢

5 次 のいずれにも 該 当 する 従 業 員 は 子 が1 歳 6ヶ 月 に 達 するまでの 間 で 必 要 な 日 数 について 育 児 休 業 をするこ とができる なお 育 児 休 業 を 開 始 しようとする 日 は 原 則 として 子 の1 歳 の 誕 生 日 に 限 るものとする (1

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 135, , ,900 2

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保 険 料 の 軽 減 措 置 均 等 割 額 の 軽 減 1 以 下 の 基 準 によって 均 等 割 額 が 軽 減 されます 軽 減 割 合 は 被 保 険 者 と 世 帯 主 の 総 所 得 金 額 等 の 合 計 額 によって 判 定 します 軽 減 割 合 同 一 世 帯 内 の 被 保

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目  次

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 135,600 円 185,800 円 222,900 円 261,900 円

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Microsoft Word - 諮問第82号答申(決裁後)

国立大学法人 東京医科歯科大学教職員就業規則

概 要 近 年 研 究 者 としてのキャリアの 入 り 口 として 広 く 認 識 されつつあるポストドクターは 任 期 付 の 職 位 である 本 稿 ではポストドクターから 任 期 のない 正 規 の 雇 用 ( 正 規 職 )への 移 行 状 況 及 び 移 行 パターンを 文 部 科 学 省

第14章 国民年金

スライド 1

Microsoft PowerPoint - 総合型DB資料_県版基金説明用.pptx

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Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

厚 生 年 金 は 退 職 後 の 所 得 保 障 を 行 う 制 度 であり 制 度 発 足 時 は 在 職 中 は 年 金 を 支 給 しないこととされていた しかしながら 高 齢 者 は 低 賃 金 の 場 合 が 多 いと いう 実 態 に 鑑 み 在 職 者 にも 支 給 される 特 別

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 25 年 4 月 1 日 現 在 ) 1) 一 般 行 政 職 福 島 県 国 類 似 団 体 平 均 年 齢 平

Microsoft Word - ☆f.doc

給 与 所 得 控 除 控 除 額 の 計 算 については 次 のとおりです 給 与 等 の 収 入 金 額 給 与 所 得 控 除 額 180 万 円 以 下 の 場 合 180 万 円 を 超 え 360 万 円 以 下 の 場 合 360 万 円 を 超 え 660 万 円 以 下 の 場 合

Transcription:

RCSS ディスカッションペーパーシリーズ 第 105 号 2010 年 3 月 Discussion Paper Series No.105 March, 2010 ISSN-1347-636X 国 民 年 金 保 険 料 の 未 納 免 除 猶 予 追 納 の 意 思 決 定 についての 分 析 四 方 理 人 村 上 雅 俊 駒 村 康 平 稲 垣 誠 一 RCSS 文 部 科 学 大 臣 認 定 共 同 利 用 共 同 研 究 拠 点 関 西 大 学 ソシオネットワーク 戦 略 研 究 機 構 関 西 大 学 ソシオネットワーク 戦 略 研 究 センター ( 文 部 科 学 省 私 立 大 学 学 術 フロンティア 推 進 拠 点 ) Research Center of Socionetwork Strategies, Academic Frontier Project for Private Universities, 2003-2009 Supported by Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology The Research Institute for Socionetwork Strategies, Joint Usage / Research Center, MEXT, Japan Kansai University Suita, Osaka, 564-8680 Japan URL: http://www.rcss.kansai-u.ac.jp http://www.kansai-u.ac.jp/riss/index.html e-mail: rcss@ml.kandai.jp tel: 06-6368-1228 fax. 06-6330-3304

国 民 年 金 保 険 料 の 未 納 免 除 猶 予 追 納 の 意 思 決 定 についての 分 析 * 四 方 理 人 村 上 雅 俊 駒 村 康 平 稲 垣 誠 一 ** 概 要 本 研 究 は 若 年 者 の 国 民 年 金 の 保 険 料 納 付 行 動 を 未 納 だけではなく 免 除 制 度 の 利 用 と 若 年 者 納 付 猶 予 を 考 慮 に 入 れて 分 析 を 行 った また 若 年 者 納 付 猶 予 および 学 生 納 付 特 例 の 利 用 経 験 がある 者 が 追 納 を 行 ったかについての 分 析 も 行 っている 分 析 結 果 として 世 帯 収 入 が 低 い 場 合 免 除 確 率 が 高 くなり 本 人 収 入 が 低 い 場 合 は 納 付 猶 予 確 率 が 高 くなるが 未 納 確 率 については 世 帯 収 入 と 本 人 収 入 による 有 意 な 影 響 が 観 察 されなかった そして 追 納 についての 分 析 結 果 から 学 生 納 付 猶 予 利 用 後 の 追 納 は 学 卒 後 第 1 号 被 保 険 者 となった 場 合 第 2 号 被 保 険 者 と 比 較 して 有 意 に 追 納 の 確 率 が 低 くな ることがわかった また 若 年 者 納 付 猶 予 については 本 人 収 入 が 低 くなると 追 納 の 確 率 が 低 くなってしまうことがわかった 先 行 研 究 では 流 動 性 制 約 要 因 として 世 帯 収 入 が 低 くなると 未 納 未 加 入 の 確 率 が 高 くなることが 示 されていたが 本 研 究 の 分 析 結 果 からその 影 響 は 未 納 と 免 除 が 区 別 されて いないことによることが 示 唆 される キーワード: 国 民 年 金 若 年 者 納 付 猶 予 学 生 納 付 特 例 * 本 研 究 は, 文 部 科 学 省 私 立 大 学 学 術 研 究 高 度 化 推 進 事 業 ( 学 術 フロンティア 推 進 事 業 ), 文 部 科 学 省 人 文 学 及 び 社 会 科 学 における 共 同 研 究 拠 点 の 整 備 の 推 進 事 業 による 助 成 を 受 けて 行 った 研 究 成 果 である 関 西 大 学 ソシオネットワーク 戦 略 研 究 機 構 リサーチアシスタント 慶 應 義 塾 大 学 先 導 研 究 センター 研 究 員 E-mail: masato.shikata@gmail.com 関 西 大 学 ソシオネットワーク 戦 略 研 究 機 構 助 教 関 西 大 学 ソシオネットワーク 戦 略 研 究 センター 研 究 員 E-mail: murakami@rcss.kansai-u.ac.jp 関 西 大 学 ソシオネットワーク 戦 略 研 究 機 構 研 究 員 関 西 大 学 ソシオネットワーク 戦 略 研 究 センター 研 究 員 慶 應 義 塾 大 学 経 済 学 部 教 授 E-mail: komamura@econ.keio.ac.jp ** 関 西 大 学 ソシオネットワーク 戦 略 研 究 機 構 研 究 員 関 西 大 学 ソシオネットワーク 戦 略 研 究 センター 研 究 員 一 橋 大 学 経 済 研 究 所 世 代 間 問 題 研 究 機 構 教 授 E-mail: inagaki@ier.hit-u.ac.jp 1

A Statistical Analysis of People's Decision-Making for the Absence of Contribution Payment, the Exemption of the Contribution, the Contribution Postponement and the Repayment of the Past Exempted-Contribution in Japanese National Pension * Masato Shikata, Masatoshi Murakami, Kohei Komamura, Seiichi Inagaki ** Abstract In this article, we analyze young people's national pension premiums payment in view of the absence of payment, the usage of the exemption from the contribution payments and the contribution postponement for low income youth. In addition, we focus on people who have application experience of "contribution postponement system for low income youth" or "special payment system for students", and check if they repay the exempted contribution. The following results are obtained. Firstly, low household income is associated with a high probability of exemption. Secondly, low personal income is associated with a high probability of contribution postponement. However, as for the probability of non-payment, household income and personal income are not statistically-significant factors. Thirdly, as for the recovery of the past exempted-contribution in "special payment system for students", people who belong in Category I insured people after graduation has lower probability of repaying the exempted contribution than those who belong in Category II insured people. Finally, as for the contribution postponement system for low income youth, we confirm the lower personal income is, the lower the probability of repaying the exempted contribution. In previous studies, it is indicated that the lower the household income is, the higher the probability of refusing to join national pension plan or non-paying pension premium is. However, from our analysis, it is not confirmed. And it comes from making no distinction between the absence of pension premium payment and the exempted contribution. Keywords:National pension premiums, Contribution postponement system, special payment system for students * This work was supported by "Academic Frontier Project for Private Universities" from MEXT and "the Joint Usage / Research Center" from MEXT. Research Assistant, Research Institute for Socionetwork Strategies, Kansai University Researcher, Keio Advanced Research Centers, Keio University E-mail: masato.shikata@gmail.com Assistant Professor, Research Institute for Socionetwork Strategies, Kansai University Research Fellow, Research Center of Socionetwork Strategies, Kansai University E-mail: murakami@kansai-u.ac.jp Researcher, Research Institute for Socionetwork Strategies, Kansai University Research Fellow, Research Center of Socionetwork Strategies, Kansai University Professor, Faculty of Economics, Keio University E-mail: komamura@econ.keio.ac.jp ** Researcher, Research Institute for Socionetwork Strategies, Kansai University Research Fellow, Research Center of Socionetwork Strategies, Kansai University Professor, Center for Intergenerational Studies, Institute of Economic Research, Hitotsubashi University E-mail: inagaki@ier.hit-u.ac.jp 2

1 はじめに 現 在 日 本 に 住 むすべての 人 々が 公 的 年 金 でカバーされる 国 民 皆 年 金 が 揺 らいでいると いわれている 年 金 受 給 権 のない 無 年 金 の 高 齢 者 がいることや 国 民 年 金 の 未 納 率 が 上 昇 しており 国 民 年 金 の 保 険 料 を 払 わずにいる 人 が 増 加 していると 考 えられている しかしながら このような 状 況 に 対 応 するために 低 所 得 により 国 民 年 金 の 保 険 料 を 払 えない 人 のための 減 免 制 度 学 生 時 代 は 自 身 の 収 入 がないため 払 えないため 就 職 するまで 払 うことを 猶 予 する 学 生 納 付 特 例 また 近 年 の 経 済 状 況 の 悪 化 により 若 年 者 の 雇 用 状 況 が 悪 化 しており 保 険 料 の 支 払 いが 難 しくなることを 想 定 し 30 歳 までは 社 会 保 険 料 の 支 払 いを 猶 予 する 若 年 者 納 付 猶 予 制 度 などが 整 備 されてきた まず 保 険 料 の 免 除 制 度 は 一 定 の 基 準 より 世 帯 収 入 が 低 い 場 合 国 民 年 金 の 保 険 料 が 免 除 される 仕 組 みである 収 入 に 応 じて 一 部 免 除 制 度 と 全 額 免 除 制 度 がある 一 方 若 年 者 納 付 猶 予 とは 30 歳 未 満 の 第 1 号 被 保 険 者 について 本 人 と 配 偶 者 の 所 得 の 合 計 が 一 定 水 準 を 下 回 ると 保 険 料 の 納 付 を 猶 予 することができる 制 度 である 免 除 制 度 との 違 いは 親 などの 同 居 している 世 帯 主 の 収 入 にかかわらず 若 年 者 本 人 とその 配 偶 者 の 収 入 が 低 い 場 合 利 用 できる 点 である しかしながら 全 額 免 除 の 場 合 は 保 険 料 を 納 め ずとも 国 民 年 金 の 税 負 担 分 である 1/2 の 額 を 将 来 受 け 取 れることができるが 猶 予 の 場 合 は 将 来 保 険 料 を 納 めない 限 り 年 金 額 に 反 映 されない 免 除 制 度 は 社 会 保 険 料 の 支 払 いの 全 額 もしくは 一 部 を 免 除 させるものであり 年 金 受 給 権 を 得 ることのできる 最 低 納 付 年 数 の 25 年 には 算 入 されるが 免 除 期 間 においては 年 金 額 の 税 による 部 分 しか 受 給 額 に 反 映 されない また 学 生 納 付 特 例 や 若 年 者 納 付 猶 予 は 納 付 期 限 が 10 年 間 引 き 伸 ばされるものであり 10 年 以 内 に 追 納 が 行 われなかった 場 合 は 税 による 部 分 も 含 めて 年 金 額 が 減 額 されてしまう したがって 若 年 者 納 付 猶 予 や 学 生 納 付 特 例 を 行 った 場 合 その 後 追 納 を 行 わなければ 年 金 額 には 反 映 されず 未 納 者 と 同 様 の 低 年 金 を 引 き 起 こすことになってしまう これまで 国 民 年 金 の 納 付 行 動 について 多 くの 研 究 が 行 われてきたが 後 述 するようほ とんどの 研 究 が 未 納 や 未 加 入 についての 分 析 であり 免 除 制 度 や 猶 予 制 度 の 利 用 について 考 慮 されてこなかった その 上 猶 予 制 度 の 利 用 後 の 追 納 については 未 だ 研 究 がない また 現 在 国 民 年 金 の 保 険 料 の 納 付 期 限 は 2 年 であるが その 期 限 が 10 年 に 引 き 延 ばされ ることが 政 府 で 議 論 されている 本 研 究 は すでに 納 付 期 限 の 時 効 が 10 年 になっている 若 年 者 納 付 猶 予 制 度 および 学 生 納 付 特 例 利 用 者 の 追 納 行 動 を 分 析 することで 現 在 議 論 さ れている 納 付 の 時 効 を 10 年 にする 改 正 案 について 考 察 することができると 考 えられる 2 国 民 年 金 保 険 料 未 納 未 加 入 についての 先 行 研 究 と 本 研 究 における 分 析 課 題 国 民 年 金 の 社 会 保 険 料 の 未 納 未 加 入 についての 先 行 研 究 では 主 に 保 険 料 の 納 付 行 動 3

を 合 理 的 選 択 と 捉 え 公 的 年 金 に 加 入 しているか 否 かが 分 析 の 対 象 とされてきた その 先 駆 的 研 究 である 鈴 木 周 (2001)は 未 加 入 動 機 のモデルを 提 示 し 未 加 入 を 引 き 起 こす 仮 説 として 1 低 所 得 低 貯 蓄 による 流 動 性 制 約 2 予 想 寿 命 が 短 い 場 合 に 年 金 未 納 未 加 入 が 発 生 する 逆 選 択 3 世 代 間 不 公 平 による 年 金 不 信 を 上 げている 1 まず 低 所 得 低 貯 蓄 による 流 動 性 制 約 により 国 民 年 金 の 納 付 に 影 響 を 与 えている 点 は 多 くの 研 究 で 確 認 されている 鈴 木 周 (2001)は 実 物 資 産 は 未 加 入 に 影 響 を 与 えてい ない 一 方 金 融 資 産 は 未 加 入 の 確 率 を 上 昇 させることを 明 らかにしており 流 動 性 制 約 説 を 裏 付 けるものであるとしている そして 未 加 入 と 未 納 をデータの 上 で 区 別 した 分 析 を 行 った 阿 部 (2001)は 世 帯 収 入 と( 推 定 ) 保 険 料 の 比 である 流 動 性 制 約 要 因 が 未 納 に 影 響 を 与 える 一 方 で 未 加 入 については 影 響 を 与 えていないことを 明 らかにしている そして 多 くの 研 究 では 低 所 得 低 収 入 で 未 納 未 加 入 となりやすいことが 示 されて いるが 分 析 対 象 者 の 個 人 収 入 ではなく 世 帯 収 入 により 分 析 が 行 われてきた( 小 椋 角 2001, 阿 部 2001, 鈴 木 周 2001, 阿 部 2003, 鈴 木 周 2006, 佐 々 木 2007) しかしながら 本 人 の 収 入 が 変 数 として 用 いられている 駒 村 山 田 (2007)の 表 からは 未 納 確 率 に 対 して 本 人 の 収 入 は 有 意 な 影 響 が 観 察 されていない 2 次 に 予 想 寿 命 が 短 い 人 が 未 納 となる 要 因 については 本 来 的 に 不 可 知 である 本 人 の 寿 命 について 予 想 した 寿 命 と 実 際 の 寿 命 が 一 致 する 場 合 においても 一 致 ない 場 合 におい ても 年 金 制 度 上 の 問 題 が 生 じる 予 想 した 寿 命 と 実 際 の 寿 命 が 一 致 する 場 合 寿 命 が 短 い 人 は 年 金 保 険 料 を 支 払 わず 寿 命 が 長 い 人 のみが 支 払 うことになり 年 金 の 機 能 の 一 つで ある 長 生 きのリスクに 対 する 保 険 についての 逆 選 択 問 題 が 生 じる そして 予 想 する 寿 命 と 実 際 の 寿 命 が 一 致 しない 場 合 は 予 想 より 長 く 生 きてしまうことにより 十 分 な 貯 蓄 が できず 高 齢 期 に 貧 困 に 陥 ってしまう 恐 れが 生 じる 先 行 研 究 の 分 析 結 果 として 塚 原 (2005)および 駒 村 山 田 (2007)では 予 想 寿 命 は 実 際 の 国 民 年 金 の 納 付 行 動 には 影 響 を 与 えていないものの 任 意 加 入 であった 場 合 において 国 民 年 金 の 保 険 料 を 支 払 うかどうかについての 仮 想 的 な 質 問 に 対 して 予 想 寿 命 が 短 くなるほ ど 任 意 の 場 合 でも 保 険 料 を 支 払 うと 答 える 確 率 が 低 下 することを 明 らかにしている また 大 学 生 の 納 付 行 動 を 対 象 とした 佐 々 木 (2007)では 実 際 の 納 付 行 動 に 対 して 予 想 寿 命 によ る 有 意 な 影 響 は 観 察 されていない このように 予 想 寿 命 による 逆 選 択 が 生 じているかどうかという 問 題 に 対 して 任 意 加 入 であった 場 合 の 選 択 という 仮 想 的 な 設 問 では その 影 響 が 観 察 されるが 実 際 の 保 険 料 納 付 行 動 についての 影 響 は 十 分 に 明 らかにされていない 最 後 に 世 代 間 不 公 平 の 問 題 は 現 行 の 賦 課 方 式 の 年 金 制 度 において 少 子 高 齢 化 が 進 む 1 この 3 つの 要 因 は 鈴 木 周 (2001)によるが 駒 村 山 田 (2007)は そのほかに 就 業 形 態 多 様 化 要 因 25 年 加 入 要 件 要 因 リスク 回 避 性 向 要 因 双 曲 型 時 間 割 引 要 因 を 挙 げている これらの 要 因 については 本 稿 の 使 用 データである 公 的 年 金 に 関 する 意 識 調 査 で 検 証 が 可 能 であり 別 稿 に 譲 る 2 ただし 駒 村 山 田 (2007)は 国 民 年 金 の 保 険 料 の 支 払 いが 任 意 であった 場 合 の 選 択 についての 分 析 を 行 っており 本 人 収 入 は 任 意 加 入 の 場 合 の 保 険 料 支 払 い 確 率 に 影 響 を 与 えている 4

と 若 い 世 代 ほど 損 をする という 考 えから 相 対 的 に 不 利 となる 若 い 世 代 の 未 納 未 加 入 につながるとされる 鈴 木 周 (2001)では この 要 因 の 影 響 が 観 察 されるとしている しかしながら 年 齢 とコホートを 分 解 した 阿 部 (2003)および 鈴 木 周 (2005)では 統 計 的 に 存 在 が 確 認 されていない したがって 世 代 間 不 公 平 による 要 因 についても 国 民 年 金 の 未 納 未 加 入 に 対 する 影 響 がはっきりとしていない 以 上 国 民 年 金 の 未 納 未 加 入 に 対 する 理 論 的 に 考 えられる 主 要 な 要 因 については 未 だ 先 行 研 究 において 見 解 が 分 かれているか もしくは 十 分 に 明 らかにされていない 特 に 流 動 性 制 約 の 要 因 について 世 帯 収 入 の 影 響 のみが 考 察 されてきた 点 について 疑 問 が 生 じるのではないだろうか というのも 国 民 年 金 の 保 険 料 は 個 人 単 位 で 決 定 され 老 齢 基 礎 年 金 は 世 帯 ではなく 個 人 に 対 して 老 後 に 給 付 が 行 われるにもかかわらず 世 帯 収 入 が 保 険 料 の 納 付 行 動 に 与 える 影 響 の 分 析 が 行 われてきた そして 多 くの 研 究 で 世 帯 収 入 が 未 納 未 加 入 に 与 える 影 響 観 察 されている しかしながら 若 年 層 では 未 納 未 加 入 が 多 く 彼 彼 女 たちの 多 くが 親 と 同 居 してい ると 考 えられるが 親 の 収 入 まで 含 んだ 世 帯 収 入 が 若 年 者 の 納 付 行 動 に 影 響 を 与 えてい ることになる この 場 合 子 ども 本 人 の 収 入 ではなく その 親 の 収 入 が 子 どもの 老 後 の 年 金 に 影 響 を 与 えるのであろうか そこで 本 研 究 では 世 帯 収 入 と 本 人 の 収 入 を 区 別 して 分 析 を 行 う また 後 述 するよ う この 世 帯 収 入 と 本 人 収 入 の 区 別 は 免 除 制 度 と 若 年 者 納 付 猶 予 の 分 析 上 も 重 要 となる また 先 行 研 究 においける 疑 問 点 は 未 納 や 未 加 入 にどのような 者 が 含 まれているのか について 各 研 究 によって 異 なっているてんである 未 納 と 未 加 入 については 理 論 的 に 区 別 して 議 論 されるが 阿 部 (2001) 以 外 は 分 析 上 その 二 つが 区 別 されていない これはデ ータ 上 未 加 入 と 未 納 を 区 別 することが 困 難 であることが 理 由 である 3 ただし 未 納 と 未 加 入 を 厳 密 に 区 別 せずとも 計 量 分 析 において 前 述 の 仮 説 を 検 証 することは 可 能 であろう しかしながら 分 析 上 より 深 刻 な 問 題 と 考 えられるのは 一 部 の 研 究 を 除 き 社 会 保 険 料 の 未 納 もしくは 納 付 と 免 除 制 度 もしくは 猶 予 制 度 の 利 用 がデータ 上 で 区 別 されていない 点 である 鈴 木 周 (2001) 鈴 木 周 (2006)および 阿 部 (2003)では 未 加 入 と 加 入 の 区 分 によ る 分 析 が 行 われており 免 除 を 受 ける 者 は 加 入 者 に 含 まれているため 保 険 料 を 納 付 して いる 者 と 免 除 者 の 区 別 が 行 われていない 駒 村 山 田 (2007)は 未 納 と 納 付 の 区 分 による 分 析 を 行 っているが ここでも 免 除 は 納 付 に 含 まれている 阿 部 (2001)は 納 付 未 納 と 免 除 制 度 の 利 用 の 区 別 を 行 っているが データの 都 合 上 実 際 に 免 除 制 度 を 利 用 しているかどうか 把 握 できないため 支 払 い 保 険 料 と 所 得 から 免 除 の 利 用 を 推 計 しているものの 当 時 の 免 除 基 準 が 市 町 村 で 運 用 が 異 なっていることや 判 別 基 準 のための 情 報 がそろっていないという 問 題 があった また 大 学 生 の 未 納 行 動 に 対 する 親 の 影 響 についての 分 析 を 行 った 佐 々 木 (2007)では 学 3 鈴 木 周 (2001)および 鈴 木 周 (2006)での 調 査 は 日 本 郵 政 公 社 郵 政 総 合 研 究 所 家 計 と 貯 蓄 に 関 する 調 査 であるが 同 調 査 での 国 民 年 金 第 1 号 被 保 険 者 の 未 加 入 率 は 2002 年 で 22.7%と 公 的 年 金 加 入 状 況 等 調 査 による 6.9%と 大 きく 異 なっている( 鈴 木 周 2006) 5

生 納 付 特 例 の 利 用 を 納 付 とみなして 分 析 を 行 っている そして このような 先 行 研 究 において 本 人 収 入 の 影 響 について 考 察 が 行 われていない ことによる 問 題 を 指 摘 することができる すなわち 未 納 納 付 と 免 除 猶 予 が 区 別 され ていないために 所 得 が 納 付 行 動 に 与 える 影 響 を 見 誤 る 恐 れがある 特 に 低 所 得 が 理 由 で 免 除 猶 予 を 受 けている 者 が 分 析 上 未 納 未 加 入 と 扱 われることで 低 所 得 者 において 未 納 未 加 入 が 生 じていると 解 釈 される 恐 れがあるといえる 逆 に 免 除 猶 予 を 納 付 と して 扱 っている 場 合 免 除 猶 予 を 受 けていない 低 所 得 層 に 未 納 未 加 入 が 集 中 していた としても 納 付 とみなされる 低 所 得 の 免 除 猶 予 者 の 存 在 により 低 所 得 による 納 付 行 動 へ の 影 響 が 観 察 されないかもしれない また 制 度 上 保 険 料 の 免 除 ( 申 請 免 除 )は 世 帯 収 入 により 利 用 可 能 かが 判 断 され 世 帯 収 入 と 免 除 制 度 の 利 用 が 関 連 しているため 免 除 の 利 用 を 未 納 とみなし 未 納 未 加 入 行 動 に 世 帯 収 入 が 影 響 を 与 える 可 能 性 がある したがって 流 動 性 制 約 の 仮 説 の 検 証 において 分 析 上 納 付 未 納 未 加 入 とは 別 に 猶 予 免 除 を 扱 う 必 要 がある また 仮 説 の 検 証 のみならず 免 除 制 度 と 若 年 者 納 付 猶 予 の 実 際 の 政 策 効 果 を 判 断 するために それらを 個 別 に 分 析 することも 重 要 である すなわ ち 低 所 得 が 理 由 であるにもかかわらず 免 除 制 度 を 利 用 せず 未 納 未 加 入 となってし まうとすると 免 除 制 度 自 体 に 問 題 がある 可 能 性 がある そこで 本 稿 では 国 民 年 金 保 険 料 の 納 付 行 動 について 流 動 性 制 約 仮 説 逆 選 択 仮 説 を 検 証 するため 免 除 制 度 および 若 年 者 納 付 猶 予 を 納 付 未 納 と 区 別 して 分 析 を 行 う また 同 時 にこの 分 析 により 免 除 制 度 および 若 年 者 納 付 猶 予 制 度 そのものについての 考 察 を 行 う そして 学 生 納 付 特 例 の 利 用 や 若 年 者 納 付 猶 予 制 度 の 利 用 が 一 過 性 の 流 動 性 制 約 によ るものであるなら その 後 の 追 納 が 可 能 であろう 流 動 性 制 約 がなくとも 追 納 や 納 付 をし ない 場 合 や 追 納 や 納 付 の 意 思 がない 場 合 は 流 動 性 制 約 以 外 の 要 因 も 考 慮 に 入 れる 必 要 がある このような 追 納 に 関 する 分 析 は 筆 者 の 知 る 限 りこれまで 行 われてこなかった なお 本 稿 では 社 会 保 険 料 の 未 納 免 除 と 同 時 に 若 年 者 納 付 猶 予 についての 分 析 を 行 う ため 30 歳 以 下 の 若 年 層 を 対 象 とするため 若 年 層 のみの 分 析 となり またクロスセクシ ョンデータであることからも 先 行 研 究 において 指 摘 されている 世 代 間 不 公 平 要 因 につい ての 検 証 は 行 わない 3 データについて 本 研 究 の 使 用 データである 関 西 大 学 ソシオネットワーク 戦 略 研 究 機 構 公 的 年 金 に 関 す る 意 識 調 査 は Web 調 査 によるものである 4 今 回 のWeb 調 査 では あらかじめ 登 録 され 4 調 査 の 概 要 は 以 下 のとおりである 6

たモニターを 対 象 として 調 査 を 実 施 する 方 法 であったことから 枠 母 集 団 ( 標 本 抽 出 枠 ) の 対 象 者 の 属 性 分 布 ( 性 年 齢 構 成 地 域 分 布 学 歴 など)は 本 調 査 の 対 象 母 集 団 であ る 国 民 年 金 被 保 険 者 とは 異 なっている 特 に 第 1 号 被 保 険 者 第 2 号 被 保 険 者 第 3 号 被 保 険 者 という 公 的 年 金 の 加 入 方 法 に 偏 りがあると 公 的 年 金 についての 調 査 としての 代 表 性 が 失 われるであろう そのため 調 査 結 果 について 何 らかの 補 正 をする 必 要 があるが 本 調 査 では 第 1 号 被 保 険 者 第 2 号 被 保 険 者 第 3 号 被 保 険 者 それぞれについて 性 別 年 齢 階 級 別 に 個 票 数 を 定 め その 個 票 数 に 到 達 するまで 登 録 モニターの 回 答 を 受 け 付 けるという 方 法 を 採 用 した これにより 今 回 のサンプルは 20-59 歳 の 国 民 年 金 被 保 険 者 の 加 入 属 性 として 性 別 年 齢 別 属 性 が 偏 らない 方 法 となる 第 1~ 第 3 号 被 保 険 者 の 個 票 を 割 り 付 けるために, 表 1 のような 質 問 項 目 を 用 いて 事 前 調 査 を 行 った 問 1~ 問 2 で わからない と 回 答 したモニ ター, 問 3 で はい と 回 答 したモニターを 標 本 から 除 外 するという 処 置 をとっている なお, 第 1 号 被 保 険 者 は, 問 1 で 加 入 していない, 問 2 で 加 入 していない あるいは 配 偶 者 はいない と 回 答 したモニターとなる 表 1 事 前 調 査 の 質 問 項 目 問 1 あなたは 現 在, 毎 月 の 給 与 から 保 険 料 が 天 引 きされる 公 的 年 金 である 厚 生 年 金 もしくは 共 済 年 金 に 加 入 しておられますか 1. ( ) 加 入 している 2. ( ) 加 入 していない 3.わからない 問 2 あなたの 配 偶 者 は 厚 生 年 金 もしくは 共 済 年 金 に 加 入 しておられますか 1. ( ) 加 入 している 2. ( ) 加 入 していない 3. ( ) 配 偶 者 はいない 4.わからない 問 3 あなたは, 大 学 生 短 大 生 専 門 学 校 生 大 学 院 生 のいずれかですか 1. ( )はい 2. ( )いいえ もちろん インターネット 調 査 には 上 記 のような 個 票 の 割 り 当 てに 対 する 柔 軟 性 のほ か 廉 価 迅 速 といったメリットがある 反 面 その 代 表 性 に 問 題 があり このような 事 後 層 化 による 補 正 を 行 ったとしても その 結 果 の 解 釈 には 回 答 バイアスに 特 に 留 意 が 必 要 で 調 査 期 日 : 調 査 対 象 : 調 査 対 象 者 の 年 齢 : 2010 年 1 月 15 日 ~2010 年 1 月 28 日 (サンプル 割 り 当 てのための 事 前 ( 予 備 ) 調 査 を 含 む) 第 1 号 被 保 険 者 第 2 号 被 保 険 者 第 3 号 被 保 険 者 ( 学 生 を 除 く) 20 歳 -59 歳 標 本 の 大 きさ: 6919 調 査 項 目 数 : 54 調 査 会 社 : マクロミル 7

あるとされている どの 程 度 の 回 答 バイアスが 生 じるかについては 調 査 項 目 によってさ まざまであり その 評 価 は 困 難 であるが 分 析 結 果 についてはこのような 特 性 を 持 つ 調 査 によるものであることに 留 意 が 必 要 である 本 研 究 の 使 用 データである 関 西 大 学 ソシオネットワーク 戦 略 研 究 機 構 公 的 年 金 に 関 す る 意 識 調 査 は 同 一 個 人 に 対 して 異 なった 時 期 に 複 数 回 の 回 答 を 求 めるパネル 調 査 と して 設 計 されている ただし パネル 調 査 においては 2 回 目 の 回 答 を 行 わない 脱 落 サンプ ルが 生 じる 5 本 研 究 では 分 析 の 目 的 に 鑑 み 第 1 回 目 の 調 査 のみを 用 いて 分 析 を 行 う 前 述 したように 本 調 査 では 公 的 年 金 の 被 保 険 者 の 属 性 をできる 限 り 正 確 に 再 現 する 個 票 の 割 り 当 てを 行 っている なお, 最 終 的 に 回 収 した 性 別 年 齢 階 級 別 被 保 険 者 番 号 別 の 個 票 数 を 表 2に 示 しておく 表 2 性 年 齢 階 級 被 保 険 者 番 号 別 の 個 票 数 年 齢 階 級 20~24 歳 25~29 歳 30~34 歳 35~39 歳 40~44 歳 45~49 歳 50~54 歳 55~59 歳 男 性 第 1 号 被 保 険 者 224 113 107 113 95 91 106 158 第 2 号 被 保 険 者 138 296 382 394 329 302 291 328 第 1 号 被 保 険 者 196 109 110 115 95 90 118 241 女 性 第 2 号 被 保 険 者 151 208 181 157 143 141 134 135 第 3 号 被 保 険 者 17 75 166 205 179 163 156 167 4 若 年 層 の 未 納 免 除 猶 予 についての 分 析 以 下 では まず20 歳 から30 歳 までの 第 1 号 被 保 険 者 が 国 民 年 金 の 保 険 料 の 納 付 をどのよ うに 選 択 しているのかについての 分 析 を 行 う 分 析 手 法 は 納 付 未 納 免 除 制 度 利 用 若 年 者 納 付 猶 予 利 用 の4つのカテゴリーをどのように 選 択 しているかについての 多 項 ロジ ットモデルによる 計 量 分 析 である 6 5 実 際 には,2 回 目 の 調 査 で 標 本 の 大 きさ 5000 を 確 保 するために,1 回 目 の 調 査 の 標 本 の 大 きさを 6919 とした 6 カテゴリーは 以 下 の 問 から 構 築 されている 問 あなたは 国 民 年 金 の 保 険 料 を 過 去 に 1 度 でも 支 払 ったご 経 験 がおありですか?あてはまるものを お 選 びください 1 ある 2 ない ここで 2 ない を 選 んだ 場 合 未 納 とし 1 ある を 選 んだ 場 合 以 下 の 問 いにおいて 問 あなたは 過 去 2 年 間 (24 ヶ 月 )に 国 民 年 金 保 険 料 を 何 カ 月 分 納 めましたか 22 歳 未 満 の 方 は 20 歳 になって 以 降 についてお 答 えください 1 すべて(1 カ 月 も 欠 かさず) 納 めた 2 だいたい 納 めた 3 半 分 くらい 納 めた 4 あまり 納 めなかった 8

説 明 変 数 としては 回 答 者 本 人 の 収 入 のカテゴリー 変 数 と 世 帯 収 入 のカテゴリー 変 数 を 区 別 して 用 いた 免 除 制 度 においては 免 除 を 受 けることができる 基 準 が 世 帯 収 入 によ るものである 一 方 若 年 者 猶 予 については 本 人 (と 配 偶 者 )の 収 入 による 猶 予 を 受 けるこ とができるかについての 基 準 が 被 扶 養 者 数 ごとに 設 けられている 本 人 の 年 間 収 入 については 60 万 円 未 満 60 万 円 以 上 130 万 円 未 満 130 万 円 以 上 200 万 円 未 満 というカテゴリー 区 分 を 行 い 200 万 円 以 上 の 年 収 を 基 準 カテゴリーとして 分 析 を 行 った 60 万 円 未 満 というのは 単 身 世 帯 で 若 年 者 納 付 猶 予 を 受 けることができ る 基 準 が 約 57 万 円 となっており また 被 扶 養 者 が2 人 となる 場 合 はだいたい127 万 円 となり その 基 準 に 近 い130 万 円 で 区 切 った 一 方 世 帯 収 入 については 200 万 円 未 満 200 万 円 以 上 500 万 円 未 満 というカテゴ リー 変 数 とし 基 準 カテゴリーは 500 万 円 以 上 とした 7 200 万 円 の 基 準 を 一 般 的 な 低 所 得 層 の 基 準 と 考 えた なお 単 身 世 帯 で 一 部 免 除 を 受 けることのできる 基 準 は189 万 円 で あり 二 人 世 帯 で 一 部 免 除 を 受 けることのできる 基 準 は247 万 円 となっている 次 に 本 人 の 貯 蓄 が10 万 円 未 満 となるダミー 変 数 を 作 成 した この 変 数 は 流 動 性 制 約 を 表 している 本 人 の 貯 蓄 がない 場 合 は 保 険 料 の 納 付 は 困 難 であろう そのほか 本 人 の 予 想 寿 命 を 尋 ねた 変 数 を 用 いている 短 命 を 予 想 する 場 合 保 険 料 を 支 払 わない 逆 選 択 が 発 生 しているかについての 設 問 である また 男 女 で 平 均 寿 命 が 異 な っているため 予 想 寿 命 と 女 性 ダミー 変 数 のクロス 項 を 用 いている そして そのほか 人 口 学 的 変 数 として 年 齢 性 別 配 偶 関 係 親 との 同 居 を 変 数 とし た また 教 育 水 準 および 就 業 状 態 も 変 数 に 加 えている 分 析 結 果 は 表 3である この 表 は 各 変 数 についての 相 対 リスク 比 (RRR)と 標 準 誤 差 が 表 記 されている 相 対 リスク 比 とは ダミー 変 数 もしくはカテゴリー 変 数 の 場 合 相 対 リ スク 比 は 当 該 確 率 を 基 準 カテゴリーに 対 して 何 倍 影 響 を 与 えるかと 解 釈 することがで きる そのため 相 対 リスク 比 は 1を 超 えると 正 の 影 響 1を 下 回 ると 負 の 影 響 をそれぞ れの 変 数 が 与 えていることになる まず 本 人 年 収 については 60 万 円 未 満 と 60 万 円 から130 万 円 において 若 年 者 納 付 猶 予 の 確 率 を 有 意 に 高 めているが その 他 の 選 択 については 有 意 な 影 響 が 観 察 されな い その 一 方 世 帯 収 入 については 若 年 者 納 付 猶 予 には 有 意 な 影 響 を 与 えていないが 世 帯 年 収 が 200 万 円 未 満 の 場 合 免 除 制 度 の 確 率 が 有 意 に 高 くなっていることがわかる この 分 析 結 果 は 免 除 制 度 が 世 帯 所 得 により 免 除 が 決 定 され 若 年 者 納 付 猶 予 が 親 と 同 居 していても 本 人 の 収 入 ( 結 婚 している 場 合 は 配 偶 者 との 合 計 )のみにより 猶 予 をうける ことができることに 対 応 している 5 まったく(1 カ 月 も)おさめなかった ここで 1.すべて(1 カ 月 も 欠 かさず) 納 めた 2 だいたい 納 めた と 選 択 した 場 合 納 付 とし それ 以 外 を 未 納 とした そして 未 納 のうち 免 除 制 度 を 利 用 しているものと 若 年 者 納 付 猶 予 を 利 用 している 者 を 別 カテゴリ ーと 置 いた 7 また 世 帯 年 収 が 不 詳 未 記 入 の 場 合 のカテゴリー 変 数 も 作 成 している 9

表 3 20-30 歳 における 国 民 年 金 保 険 料 の 未 納 免 除 猶 予 についての 多 項 ロジット 分 析 : 相 対 リスク 比 未 納 免 除 若 年 猶 予 VS VS VS 納 付 納 付 納 付 RRR Std. Err. RRR Std. Err. RRR Std. Err. 本 人 年 収 ( 万 円 ) (1) ~60 1.522 [.5723] 1.462 [.5610] 2.647 [1.4851] + 60~130 1.328 [.4962] 1.548 [.5792] 3.418 [1.9092] * 130~200 1.215 [.5099] 1.508 [.6199] 2.325 [1.4623] 世 帯 年 収 ( 万 円 ) (2) ~200 1.322 [.6388] 2.914 [1.2994] * 2.001 [1.0319] 200~500 0.786 [.2760] 1.346 [.4552] 1.866 [.6896] + 不 詳 1.152 [.5484] 0.828 [.3950] 0.915 [.7569] 貯 蓄 10 万 未 満 2.712 [.6571] *** 2.269 [.5571] ** 1.636 [.4757] + 予 想 寿 命 0.973 [.0101] ** 0.970 [.0104] ** 0.992 [.0107] 予 想 寿 命 女 性 1.008 [.0151] 1.023 [.0155] 1.005 [.0176] 年 齢 0.939 [.0418] 0.925 [.0419] + 0.833 [.0488] ** 女 性 0.509 [.5452] 0.216 [.2365] 0.448 [.5787] 有 配 偶 1.521 [1.0980] 1.266 [.9058] 1.030 [1.2469] 有 配 偶 女 性 0.807 [.6569] 0.814 [.6517] 0.877 [1.2002] 親 同 居 0.491 [.2064] + 0.426 [.1726] * 2.581 [1.6373] 教 育 専 門 学 校 0.532 [.1843] + 0.749 [.2503] 1.106 [.4349] 短 大 高 専 0.621 [.2979] 0.605 [.2987] 0.757 [.5243] 大 学 以 上 0.753 [.2062] 0.903 [.2500] 1.163 [.3856] 就 業 形 態 (3) 雇 用 ( 非 正 規 ) 1.228 [.3408] 1.659 [.4751] + 0.743 [.2413] 自 営 その 他 1.153 [.5245] 2.247 [.9452] + 1.057 [.5527] 対 数 尤 度 -728.399 擬 似 決 定 係 数 0.089 選 択 者 数 143 140 140 サンプル 計 603 注 (1) 本 人 年 収 の 基 準 カテゴリーは 年 収 200 万 円 以 上 である (2) 世 帯 年 収 の 基 準 カテゴリーは 年 収 500 万 円 以 上 である なお 無 記 入 の 場 合 についてのカテゴリー 変 数 を 作 成 (3) 雇 用 形 態 の 基 準 カテゴリーは 無 業 である なお 第 1 号 被 保 険 者 と 回 答 しながら 正 規 雇 用 と 回 答 している サンプルを 落 としたため 雇 用 就 業 は 非 正 規 雇 用 のみである *** P 値 <0.001, ** P 値 <0.01, * P 値 <0.05, + P 値 <0.10 である 出 所 : 関 西 大 学 RISS 公 的 年 金 に 関 する 意 識 調 査 より 筆 者 作 成 次 に 貯 蓄 が10 万 円 未 満 の 場 合 納 付 との 比 較 で 未 納 免 除 若 年 猶 予 それぞれの 確 率 が 有 意 に 高 くなることがわかる 特 に 貯 蓄 が10 万 円 未 満 の 場 合 において 若 年 猶 予 よ り 未 納 確 率 が 高 く 流 動 性 制 約 に 直 面 しているときに 猶 予 ではなく 未 納 となってしまうこ とが 伺 える 8 そして 予 想 寿 命 については 予 想 寿 命 が 短 くなるほど 未 納 と 免 除 を 選 択 する 確 率 が 高 くなることがわかる これは 逆 選 択 が 発 生 している 可 能 性 を 示 唆 する また 後 に 追 納 8 未 納 を 基 準 カテゴリーにした 多 項 ロジットモデルにおいて 若 年 猶 予 となる 相 対 リスク 比 は 0.6 となり 実 際 に 若 年 猶 予 より 未 納 となる 確 率 が 高 くなっている なお その 係 数 と 標 準 誤 差 から 求 められる p 値 は 0.104 であった 10

を 行 わなければ 年 金 額 に 反 映 されない 若 年 猶 予 には 予 想 寿 命 は 影 響 していない 人 口 学 的 変 数 については 年 齢 が 高 くなるほど 若 年 猶 予 の 確 率 が 下 がることがわかる また 親 と 同 居 している 場 合 は 未 納 と 免 除 の 確 率 が 低 くなる 一 方 で 有 意 ではないが 若 年 猶 予 の 確 率 が 高 くなっている 親 と 同 居 している 若 年 層 は 免 除 が 受 けにくくなってい ると 考 えられる なお 教 育 水 準 と 就 業 状 態 については はっきりとした 傾 向 がみてとれないといえるだ ろう この 節 の 分 析 結 果 からは 若 年 者 本 人 が 低 所 得 である 場 合 は 若 年 者 納 付 猶 予 は 受 ける ことができても 保 険 料 の 免 除 を 受 けることは 難 しく また 親 と 同 居 している 場 合 も 免 除 を 受 けることが 難 しいことがわかった これは 免 除 制 度 が 世 帯 主 の 収 入 まで 考 慮 した 世 帯 所 得 による 基 準 が 用 いられていることによると 考 えられる また 貯 蓄 がほとんどなく 流 動 性 制 約 に 直 面 している 場 合 は 多 くが 猶 予 ではなく 未 納 となってしまっている ここから 自 身 が 低 収 入 になる 若 年 者 は 親 と 同 居 することで 免 除 が 受 けることができず また 貯 蓄 がなく 流 動 性 制 約 がある 場 合 は 未 納 となってしまっ ているといえるだろう そして 予 想 寿 命 が 短 いほど 未 納 と 免 除 が 選 択 され 逆 選 択 が 発 生 している 可 能 性 がある 若 年 猶 予 は 本 人 収 入 が 低 所 得 の 場 合 有 意 に 影 響 を 与 え また 免 除 については 本 人 収 入 ではなく 世 帯 収 入 の 低 さが 影 響 を 与 えている これは 免 除 猶 予 の 利 用 の 判 断 基 準 とし て 用 いられている 制 度 設 計 上 の 扱 いと 整 合 的 である そして 本 人 収 入 も 世 帯 収 入 につい ても 未 納 行 動 に 有 意 な 影 響 が 観 察 されない これらは フローの 所 得 が 流 動 性 制 約 とし て 国 民 年 金 の 納 付 行 動 に 影 響 を 与 えているかどうかについに 疑 問 を 投 げかけ 同 時 に 先 行 研 究 において 世 帯 収 入 が 未 納 行 動 に 影 響 を 与 えていたことが 免 除 や 猶 予 が 未 納 と 区 別 さ れていなかったことによる 可 能 性 を 示 唆 する なお 付 表 1 では 免 除 と 猶 予 をそれぞれ 未 納 の 区 分 もしくは 納 付 の 区 分 に 割 り 振 った 場 合 のロジット 分 析 の 結 果 を 載 せている そ こでは 免 除 と 猶 予 を 未 納 の 区 分 に 入 れた 場 合 は 本 人 収 入 および 世 帯 収 入 において 低 水 準 の 場 合 未 納 確 率 が 高 くなる 一 方 免 除 と 猶 予 を 納 付 の 区 分 に 入 れた 場 合 は 本 人 収 入 及 び 世 帯 収 入 は 未 納 確 率 に 対 して 有 意 な 影 響 を 与 えていないことがわかる 多 くの 先 行 研 究 で 世 帯 収 入 が 未 納 未 加 入 の 確 率 を 上 昇 させている 理 由 は 未 納 未 加 入 に 免 除 や 猶 予 が 含 まれてしまっているからであると 思 われる 5 若 年 者 納 付 猶 予 および 学 生 納 付 特 例 の 追 納 についての 分 析 学 生 については 収 入 にかかわらず 保 険 料 を 猶 予 する 学 生 納 付 特 例 がある この 制 度 は 多 くの 大 学 生 が 利 用 しているが 卒 業 後 追 納 を 行 わない 場 合 は その 期 間 支 払 わなかった 保 険 料 は 受 給 できる 年 金 額 に 反 映 されない では まず 過 去 に 学 生 納 付 特 例 を 受 けたことのあるサンプルについて 追 納 経 験 につ 11

いての 分 析 を 行 う 前 節 と 同 じく 多 項 ロジット 分 析 によるが 一 部 もしくは 全 額 追 納 した まだ 追 納 していないが できる 限 り 追 納 するつもりである 追 納 するつもりはない の3つのカテゴリーの 選 択 についての 分 析 を 行 う そして 多 項 ロジットモデルにおける 説 明 変 数 は 前 節 と 同 様 のものとしたが 就 業 形 態 の 変 わりに 国 民 年 金 の 被 保 険 者 の 区 分 による 分 析 を 行 う すなわち サラリーマンなど のフルタイム 労 働 者 などの 第 2 号 被 保 険 者 第 2 号 被 保 険 者 の 配 偶 者 である 第 3 号 被 保 険 者 そしてそれ 以 外 の 第 1 号 被 保 険 者 である ただしここでは 第 1 号 被 保 険 者 と 第 3 号 被 保 険 者 についてさらにそれぞれ 有 業 と 無 業 に 区 分 し 基 準 カテゴリーを 第 2 号 被 保 険 者 として 分 析 を 行 う 表 4は それぞれの 追 納 についてのカテゴリーの 割 合 を 国 民 年 金 の 被 保 険 者 別 にみたもの である 実 際 に 追 納 を 行 っている 割 合 は 第 2 号 被 保 険 者 と 第 3 号 被 保 険 者 より 第 1 号 被 保 険 者 で 低 くなっている また 追 納 を 行 っていないものの 追 納 の 意 思 がある 者 の 割 合 は 第 1 号 被 保 険 者 で 高 く 第 3 号 被 保 険 者 で 低 くなっている 表 4 国 民 年 金 の 被 保 険 者 区 分 別 学 生 納 付 特 例 利 用 者 の 追 納 状 況 学 生 納 付 特 例 経 験 者 まだ 追 納 していないが 全 部 または 一 部 を 追 納 するつも できる 限 り 追 納 するつ 追 納 した りはない もりである 第 1 号 27.3% 34.4% 38.3% 100.0% 第 2 号 40.5% 25.4% 34.0% 100.0% 第 3 号 37.6% 20.6% 41.8% 100.0% 計 36.3% 27.6% 36.1% 100.0% 出 所 : 関 西 大 学 RISS 公 的 年 金 に 関 する 意 識 調 査 より 筆 者 作 成 そして 表 5は 分 析 結 果 である まず 第 1 号 被 保 険 者 の 場 合 有 業 と 無 業 にかかわらず 有 意 に 追 納 する 確 率 が 低 くなる そして 第 3 号 被 保 険 者 の 場 合 は 有 業 だと 追 納 する 確 率 が 高 くなる 一 方 で 無 業 だと 追 納 す る 確 率 が 低 くなっている また 有 業 の 第 3 号 被 保 険 者 は 追 納 するつもりである 意 思 を 示 す 確 率 も 高 くなっている 次 に 本 人 の 収 入 も 世 帯 収 入 も 追 納 について 有 意 な 影 響 を 与 えていない 学 生 納 付 特 例 による 猶 予 については 収 入 よりも 第 2 号 被 保 険 者 か 第 1 号 被 保 険 者 になるかについての 差 が 大 きいといえる すなわち 第 2 号 被 保 険 者 において 追 納 する 確 率 が 高 くなる 理 由 は 収 入 が 安 定 しており 変 動 が 少 ないことが 要 因 ではないかと 考 えられる そして 貯 蓄 が10 万 円 未 満 の 場 合 追 納 はしていないができる 限 り 追 納 するつもり の 確 率 が 高 くなる 追 納 はしたいが 流 動 性 制 約 により 追 納 できないという 状 況 の 者 が 多 い ことがうかがえる 予 想 寿 命 については 予 想 寿 命 が 長 くなるにつれ 追 納 はしていないができる 限 り 追 納 するつもり の 確 率 が 高 くなる 12

人 口 学 的 変 数 については 年 齢 が 高 くなると 追 納 はしていないができる 限 り 追 納 する つもり の 確 率 が 低 くなる これは 年 齢 が 高 くなるにつれ 追 納 したいと 思 っている 人 のうち 実 際 に 追 納 する 人 が 増 加 するが もともと 追 納 するつもりのない 人 についてはその まま 変 化 がないことによると 考 えられる そのほか 親 同 居 の 場 合 は 追 納 する 確 率 が 高 くなることがわかる 表 5 学 生 猶 予 経 験 者 の 追 納 についての 多 項 ロジット 分 析 : 相 対 リスク 比 追 納 した (1) 追 納 したい VS VS 追 納 しない 追 納 しない RRR Std. Err. RRR Std. Err. 被 保 険 者 区 分 1 号 有 業 0.589 [.1038] ** 0.993 [.1815] 1 号 無 業 0.499 [.1345] * 0.649 [.1844] 3 号 有 業 1.602 [.6236] 2.787 [1.3112] * 3 号 無 業 0.539 [.1526] * 1.000 [.3484] 本 人 年 収 ( 万 円 ) (2) ~60 1.196 [.2677] 1.022 [.2508] 60~130 1.251 [.2879] 0.944 [.2334] 130~200 1.132 [.2914] 1.189 [.3063] 世 帯 年 収 ( 万 円 ) (3) ~200 0.613 [.2465] 0.889 [.3361] 200~500 1.273 [.2225] 1.306 [.2579] 不 詳 1.126 [.2792] 1.039 [.2896] 貯 蓄 10 万 未 満 0.784 [.1405] 1.680 [.2911] ** 予 想 寿 命 1.008 [.0074] 1.016 [.0075] * 予 想 寿 命 女 性 0.989 [.0106] 0.970 [.0108] ** 年 齢 0.994 [.0072] 0.950 [.0091] *** 女 性 2.133 [1.7543] 7.320 [6.1483] * 有 配 偶 1.591 [.4108] + 1.031 [.3051] 有 配 偶 女 性 0.745 [.2099] 0.716 [.2360] 親 同 居 1.672 [.3734] * 1.494 [.3835] 教 育 専 門 学 校 0.875 [.2651] 0.793 [.2476] 短 大 高 専 1.129 [.3578] 0.842 [.2881] 大 学 以 上 0.805 [.2133] 0.764 [.2067] 対 数 尤 度 -1611.511 擬 似 決 定 係 数 0.048 選 択 数 563 428 サンプル 計 1552 注 (1) 追 納 した は 全 部 または 一 部 を 追 納 した 追 納 したい は まだ 追 納 していないが できる 限 り 追 納 するつもりである 追 納 しない は 追 納 するつもりはない とそれぞれ 回 答 した 者 である (2) 被 保 険 者 区 分 の 基 準 カテゴリーは 第 2 号 被 保 険 者 である (3) 本 人 年 収 の 基 準 カテゴリーは 年 収 200 万 円 以 上 である (4) 世 帯 年 収 の 基 準 カテゴリーは 年 収 500 万 円 以 上 である なお 無 記 入 の 場 合 についてのカテゴリー 変 数 を 作 成 *** P 値 <0.001, ** P 値 <0.01, * P 値 <0.05, + P 値 <0.10 である 出 所 : 関 西 大 学 RISS 公 的 年 金 に 関 する 意 識 調 査 より 筆 者 作 成 13

表 6 国 民 年 金 の 被 保 険 者 区 分 別 若 年 者 猶 予 利 用 者 の 追 納 状 況 若 年 者 納 付 猶 予 経 験 者 まだ 追 納 していない 全 部 または 一 部 を 追 納 するつも が できる 限 り 追 納 す 追 納 した りはない るつもりである 第 1 号 26.6% 41.8% 31.6% 100.0% 第 2 号 45.9% 29.3% 24.8% 100.0% 第 3 号 59.4% 15.6% 25.0% 100.0% 計 41.8% 31.3% 26.9% 100.0% 出 所 : 関 西 大 学 RISS 公 的 年 金 に 関 する 意 識 調 査 より 筆 者 作 成 表 7 若 年 猶 予 経 験 者 の 追 納 についての 多 項 ロジット 分 析 : 相 対 リスク 比 追 納 した (1) 追 納 したい VS VS 追 納 しない 追 納 しない RRR Std. Err. RRR Std. Err. 被 保 険 者 区 分 (2) 1 号 就 業 0.850 [.388] 1.406 [.649] 1 号 無 業 0.657 [.505] 0.898 [.634] 3 号 就 業 5.766 [4.694] * 0.518 [.659] 3 号 無 業 2.052 [1.514] 0.808 [.674] 本 人 年 収 ( 万 円 ) (3) ~60 0.362 [.209] + 0.953 [.550] 60~130 0.335 [.195] + 0.478 [.287] 130~200 1.265 [.848] 1.577 [1.152] 世 帯 年 収 ( 万 円 ) (4) ~200 0.962 [.811] 0.316 [.277] 200~500 1.498 [.675] 1.090 [.519] 不 詳 1.235 [.738] 0.738 [.487] 貯 蓄 10 万 未 満 1.145 [.493] 1.741 [.761] 予 想 寿 命 1.021 [.024] 1.041 [.025] + 予 想 寿 命 女 性 0.984 [.030] 0.992 [.031] 年 齢 0.988 [.017] 0.956 [.019] * 女 性 2.379 [5.416] 1.090 [2.530] 有 配 偶 3.699 [2.540] + 1.823 [1.364] 有 配 偶 女 性 0.368 [.298] 0.885 [.763] 親 同 居 1.160 [.597] 2.004 [1.109] 教 育 専 門 学 校 1.060 [.563] 0.631 [.368] 短 大 高 専 1.419 [.840] 0.873 [.583] 大 学 以 上 1.004 [.455] 1.326 [.617] 対 数 尤 度 -254.199 擬 似 決 定 係 数 0.123 選 択 数 112 84 サンプル 計 268 注 (1) 追 納 した は 全 部 または 一 部 を 追 納 した 追 納 したい は まだ 追 納 していないが できる 限 り 追 納 するつもりである 追 納 しない は 追 納 するつもりはない とそれぞれ 回 答 した 者 である (2) 被 保 険 者 区 分 の 基 準 カテゴリーは 第 2 号 被 保 険 者 である (3) 本 人 年 収 の 基 準 カテゴリーは 年 収 200 万 円 以 上 である (4) 世 帯 年 収 の 基 準 カテゴリーは 年 収 500 万 円 以 上 である なお 無 記 入 の 場 合 についてのカテゴリー 変 数 を 作 成 *** P 値 <0.001, ** P 値 <0.01, * P 値 <0.05, + P 値 <0.10 である 出 所 : 関 西 大 学 RISS 公 的 年 金 に 関 する 意 識 調 査 より 筆 者 作 成 14

次 に 若 年 者 納 付 猶 予 を 経 験 した 人 が 追 納 するかどうかについての 分 析 を 行 う 追 納 についてのカテゴリーは 学 生 納 付 特 例 と 同 じである そして 国 民 年 金 の 被 保 険 者 カテ ゴリー 別 に 追 納 の 状 況 を 表 6に 示 す 若 年 者 納 付 猶 予 は 学 生 納 付 特 例 より 追 納 の 割 合 が 高 く 追 納 意 思 がない 割 合 も 低 くなっ ている 若 年 者 納 付 猶 予 は 追 納 者 が 多 く 未 納 者 の 対 策 として 有 効 であったと 言 える ま た 特 に 第 3 号 被 保 険 者 で 追 納 をした 割 合 が 高 くなっている 若 年 者 納 付 猶 予 を 経 験 した 人 が 追 納 するかどうかについての 多 項 ロジット 分 析 の 結 果 を 表 7に 示 す 学 生 納 付 特 例 と 同 様 一 部 もしくは 全 額 追 納 した まだ 追 納 していな いが できる 限 り 追 納 するつもりである 追 納 するつもりはない の3つのカテゴリーの 選 択 についての 分 析 を 行 う 分 析 結 果 については 被 保 険 者 の 区 分 についてはほとんど 影 響 を 与 えていない 一 方 で 本 人 の 年 間 収 入 が 低 くなると 追 納 する 確 率 が 低 くなっている そのほかは 学 生 納 付 特 例 における 追 納 の 分 析 と 同 様 に 予 想 寿 命 が 長 くなると 追 納 し ようとする 確 率 が 高 くなり 年 齢 が 高 くなるとその 確 率 が 低 下 している しかしながら 多 くの 変 数 が 有 意 な 影 響 を 与 えていないことがわかる この 理 由 は ま だ 若 年 者 納 付 猶 予 の 制 度 ができて 年 月 が 浅 いことおよび 学 生 納 付 特 例 ほど 利 用 者 が 多 く なく サンプルサイズが 小 さいことが 要 因 ではないかと 考 えられる この 分 析 は 今 後 の 課 題 であろう 6 おわりに 若 年 猶 予 は 本 人 収 入 が 低 所 得 の 場 合 有 意 に 影 響 を 与 え また 免 除 については 本 人 収 入 ではなく 世 帯 収 入 の 低 さが 影 響 を 与 えている これは 免 除 制 度 および 若 年 者 納 付 猶 予 の 利 用 の 判 断 基 準 として 用 いられている 制 度 設 計 上 の 扱 いと 整 合 的 である そして 本 人 収 入 も 世 帯 収 入 についても 未 納 行 動 に 有 意 な 影 響 が 観 察 されない これらは フローの 所 得 が 流 動 性 制 約 として 国 民 年 金 の 納 付 行 動 に 影 響 を 与 えているかどうかについに 疑 問 を 投 げかける 特 に 先 行 研 究 において 世 帯 収 入 が 未 納 行 動 に 影 響 を 与 えていたこ 理 由 が 免 除 や 猶 予 が 未 納 と 区 別 されずに 分 析 されていることに 起 因 する 可 能 性 を 示 唆 する だが 未 納 に 対 する 流 動 性 制 約 仮 説 が 否 定 されているわけではない 本 人 の 貯 蓄 額 が 10 万 円 未 満 の 場 合 有 意 に 未 納 確 率 を 上 昇 させていた 本 調 査 では 第 1 号 被 保 険 者 の 20-30 歳 の 若 年 層 で 貯 蓄 が 10 万 円 未 満 となる 割 合 は 40% 以 上 存 在 し かなりの 若 年 層 が 10 万 円 未 満 の 貯 蓄 となっており 未 納 につながっている そして 学 生 納 付 特 例 利 用 者 の 追 納 についての 分 析 から その 後 第 1 号 被 保 険 者 のまま であると 第 2 号 被 保 険 者 になる 場 合 より 有 意 に 追 納 確 率 が 低 くなることがわかった また 若 年 者 納 付 猶 予 利 用 者 の 追 納 についての 分 析 からは 本 人 収 入 が 低 所 得 であると 追 15

納 確 率 が 低 くなっていた 次 に 予 想 寿 命 による 逆 選 択 の 要 因 について 他 の 先 行 研 究 では 観 察 されなかった 未 納 に 対 する 予 想 寿 命 の 影 響 が 本 研 究 では 観 察 された これは 本 研 究 が 若 年 者 についての 研 究 であることが 理 由 かもしれない しかしながら 年 齢 が 若 いほど 自 身 の 将 来 の 寿 命 を 予 測 することが 困 難 であるから 誤 った 予 測 を 行 いやすいと 考 えられる ここでの 予 想 寿 命 による 未 納 への 影 響 からは 将 来 の 高 齢 の 無 年 金 者 低 所 得 者 を 生 む 恐 れがある そして 以 上 の 分 析 結 果 から 政 策 的 含 意 を 述 べると 以 下 のようになろう まず 保 険 料 の 免 除 が 世 帯 単 位 で 行 われているため 貯 蓄 がなく 流 動 性 制 約 に 直 面 して いる 若 年 者 が 未 納 になっている 可 能 性 が 示 唆 される 若 年 者 納 付 猶 予 をうけることのでき るのは 単 身 で 年 間 収 入 57 万 円 未 満 と 非 常 に 低 い 収 入 の 場 合 のみであり 収 入 が 低 く 親 と 同 居 せざるえない 若 年 層 にとっては 免 除 制 度 と 若 年 者 納 付 猶 予 も 使 いにくいものであっ たといえる そもそも 個 人 が 支 払 った 保 険 料 がその 人 の 年 金 額 に 反 映 される 国 民 年 金 制 度 にいて その 免 除 制 度 が 世 帯 単 位 で 設 計 されていることの 問 題 が 若 年 層 において 顕 在 化 しているといえる また 若 年 者 納 付 猶 予 を 用 いた 場 合 も 収 入 が 低 ければ 追 納 することは 難 しい 免 除 制 度 が 存 在 するというのであれば 個 人 単 位 で 収 入 の 低 い 者 には 免 除 を 行 い 年 金 の 給 付 額 に 税 負 担 部 分 だけでも 反 映 させていく 必 要 があるのではないだろうか しかしながら 第 3 号 被 保 険 者 は 同 じく 個 人 の 収 入 が 低 いが 保 険 料 を 支 払 わずとも 支 払 った 場 合 と 同 様 に 国 民 年 金 を 受 け 取 ることができる 個 人 単 位 で 第 1 号 被 保 険 者 と 第 3 号 被 保 険 者 との 公 平 性 をとるとためには 第 3 号 被 保 険 者 をなくし 配 偶 者 や 家 族 の 収 入 にかかわらず 本 人 の 収 入 が 低 い 場 合 において 保 険 料 の 免 除 を 適 用 させると 公 平 になるだろう ただし 育 児 や 介 護 の 負 担 により 収 入 が 低 くなる 場 合 は 保 険 料 をみなしで 支 払 ったものとする 必 要 があ る さらに 10 年 の 時 効 がある 若 年 者 納 付 猶 予 制 度 および 学 生 納 付 特 例 利 用 者 の 追 納 行 動 を 分 析 した 結 果 現 在 議 論 されている 納 付 の 時 効 を 10 年 にする 改 正 案 について 考 察 すること ができる 学 生 納 付 特 例 の 追 納 について 分 析 から 第 2 号 被 保 険 者 になれないと 追 納 が 難 しいこと が 伺 える 時 効 を 延 長 すると 同 時 に 雇 用 者 でありながら 第 2 号 被 保 険 者 になれない 非 正 規 雇 用 労 働 者 をより 多 く 厚 生 年 金 でカバーする 必 要 がある また 分 析 結 果 から 予 想 平 均 寿 命 が 長 い 人 ほど 追 納 したいと 考 えていることがわかっ た しかしながら 保 険 料 の 納 付 に 時 効 がある 理 由 は 自 身 が 長 生 きするということが 確 定 してから 支 払 ったほうが 有 利 となることである いつでも 支 払 うことができるように すれば 60 歳 或 いは 65 歳 すなわち 自 身 の 長 寿 リスクが 現 実 になったことを 確 認 してか ら 保 険 料 を 支 払 うのが 最 も 合 理 的 になる したがって 保 険 料 支 払 いに 時 効 を 撤 廃 した 場 合 遅 滞 分 の 利 息 に 加 えて このリスクプレミアム 部 分 も 加 算 した 保 険 料 を 徴 収 する 必 要 が 出 てくる 16

これまで どの 程 度 の 人 がこの 10 年 前 の 保 険 料 を 支 払 うのか 政 策 効 果 を 予 想 するデー タはこれまでなかったが 本 研 究 はその 妥 当 性 についての 考 察 になるとも 言 える ただし 若 年 者 納 付 猶 予 は 2005 年 以 降 の 制 度 であり 未 だできて 10 年 たっていない そのため 本 研 究 は 時 効 延 期 の 政 策 効 果 を 推 計 する 手 がかりになるが 10 年 という 時 効 の 有 効 性 そ のものは 今 後 のデータの 積 み 重 ねにより 検 証 する 必 要 がある 参 考 文 献 阿 部 彩 (2001) 国 民 年 金 の 保 険 料 免 除 制 度 改 正 未 納 率 と 逆 進 性 への 影 響 日 本 経 済 研 究 No.43, pp.134-154 阿 部 彩 (2004) 国 民 年 金 における 未 加 入 期 間 の 分 析 -パネルデータを 使 って- 季 刊 社 会 保 障 研 究 Vol.39 No.3, pp268-280 鵜 飼 康 東 村 上 雅 俊 (2008) 国 民 年 金 納 付 者 行 動 Web アンケート 結 果 の 概 要 と 探 索 的 検 討, RCSS ディスカッションペーパーシリーズ, 第 78 号, 関 西 大 学 ソシオネットワー ク 戦 略 研 究 機 構. 大 石 亜 希 子 (2007) 公 的 年 金 における 逆 選 択 の 分 析 千 葉 大 学 公 共 研 究 Vol4 No2, 123-144. 小 椋 正 立 千 葉 友 太 郎 (1991) 公 平 性 から 見 たわが 国 の 社 会 保 険 料 負 担 について フィナ ンシャル レビュー Vol.19, pp.27-53 小 椋 正 立 角 田 保 (2000) 世 帯 データによる 社 会 保 険 料 負 担 納 付 と 徴 収 に 関 する 分 析 経 済 研 究 Vol.51 No.2, pp27-53. 駒 村 康 平 (2007) 所 得 保 障 制 度 のパラメーターに 関 する 分 析 国 民 年 金 の 繰 上 げ 受 給 に 関 す る 実 証 分 析 を 中 心 に, フィナンシャル レビュー, 第 87 号, 財 務 総 合 政 策 研 究 所,pp.119-139. 駒 村 康 平 山 田 篤 裕 (2007) 年 金 制 度 への 強 制 加 入 の 根 拠 - 国 民 年 金 未 納 未 加 入 に 関 する 実 証 分 析 -, 会 計 検 査 研 究,NO.35, 会 計 検 査 院,pp.31-49. 佐 々 木 一 郎 (2003) 国 民 年 金 未 加 入 動 機 について 広 島 経 済 大 学 経 済 研 究 論 集 第 26 巻 2 号 佐 々 木 一 郎 (2007) 年 金 未 納 行 動 と 親 の 影 響, フィナンシャル レビュー, 第 87 号, 財 務 総 合 政 策 研 究 所,pp.100-118. 四 方 理 人 駒 村 康 平 稲 垣 誠 一 小 林 哲 郎 (2009) 国 民 年 金 納 付 者 行 動 と 年 金 額 通 知 効 果 の 統 計 分 析, RCSS ディスカッションペーパーシリーズ, 第 82 号, 関 西 大 学 ソシオ ネットワーク 戦 略 研 究 機 構. 鈴 木 亘 周 燕 飛 (2001) 国 民 年 金 未 加 入 者 の 経 済 分 析 日 本 経 済 研 究 No.42, pp44-60 鈴 木 亘 周 燕 飛 (2006) コホート 効 果 を 考 慮 した 国 民 年 金 未 加 入 者 の 経 済 分 析 季 刊 社 会 保 障 研 究 Vol41 No4, 17

塚 原 康 博 (2005) 高 齢 社 会 と 医 療 福 祉 政 策 東 京 大 学 出 版 会 中 嶋 邦 夫 臼 杵 政 治 (2005) 国 民 年 金 の 未 納 要 因 - 主 観 的 な 視 点 の 考 慮 -, ニッセイ 基 礎 研 REPORT, 2005 年 6 月 号,ニッセイ 基 礎 研 究 所,pp.1-6. 湯 田 道 生 (2006) 国 民 年 金 国 民 健 康 保 険 未 加 入 者 の 計 量 分 析 経 済 研 究 Vol.57, No.4, pp.344-356. 付 表 1 免 除 猶 予 を 未 納 / 納 付 に 含 めた 場 合 における 未 納 確 率 のロジット 分 析 免 除 猶 予 を 未 納 に 含 めた 分 析 免 除 猶 予 を 納 付 に 含 めた 分 析 Odds Ratio Std. Err. Odds Ratio Std. Err. 本 人 年 収 ( 万 円 ) (1) ~60 1.634 [.4830] + 1.237 [.4275] 60~130 1.696 [.4965] + 1.014 [.3461] 130~200 1.478 [.4860] 0.994 [.3800] 世 帯 年 収 ( 万 円 ) (2) ~200 2.071 [.8001] + 0.705 [.2782] 200~500 1.211 [.3244] 0.635 [.1961] 不 詳 1.030 [.4076] 1.243 [.5151] 貯 蓄 10 万 未 満 2.272 [.4425] *** 1.858 [.3939] ** 予 想 寿 命 0.978 [.0083] ** 0.986 [.0084]+ 予 想 寿 命 女 性 1.011 [.0122] 0.999 [.0128] 年 齢 0.909 [.0325] ** 0.994 [.0391] 女 性 0.402 [.3552] 1.030 [.9300] 有 配 偶 1.288 [.7853] 1.411 [.8653] 有 配 偶 女 性 0.860 [.5800] 0.868 [.6116] 親 同 居 0.640 [.2184] 0.586 [.2135] 教 育 専 門 学 校 0.702 [.1837] 0.593 [.1865]+ 短 大 高 専 0.643 [.2459] 0.757 [.3299] 大 学 以 上 0.886 [.1924] 0.767 [.1874] 就 業 形 態 雇 用 ( 非 正 規 ) 1.210 [.2634] 1.100 [.2730] 自 営 その 他 1.439 [.4952] 0.865 [.3488] 対 数 尤 度 -312.454-368.532 擬 似 決 定 係 数 0.054 0.085 選 択 者 数 369 143 サンプル 計 603 603 注 (1) 本 人 年 収 の 基 準 カテゴリーは 年 収 200 万 円 以 上 である (2) 世 帯 年 収 の 基 準 カテゴリーは 年 収 500 万 円 以 上 である なお 無 記 入 の 場 合 についてのカテゴリー 変 数 を 作 成 (3) 雇 用 形 態 の 基 準 カテゴリーは 無 業 である なお 第 1 号 被 保 険 者 と 回 答 しながら 正 規 雇 用 と 回 答 している サンプルを 落 としたため 雇 用 就 業 は 非 正 規 雇 用 のみである *** P 値 <0.001, ** P 値 <0.01, * P 値 <0.05, + P 値 <0.10 である 18