中東・北アフリカにおける有望国と日本企業の進出戦略



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波佐見町の給与・定員管理等について

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

●幼児教育振興法案

●電力自由化推進法案

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03 平成28年度文部科学省税制改正要望事項

課 税 ベ ー ス の 拡 大 等 : - 租 税 特 別 措 置 の 見 直 し ( 後 掲 ) - 減 価 償 却 の 見 直 し ( 建 物 附 属 設 備 構 築 物 の 償 却 方 法 を 定 額 法 に 一 本 化 ) - 欠 損 金 繰 越 控 除 の 更 な る 見 直 し ( 大

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は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし


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職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (5 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 区 類 団 府 分 似 体 平 均 年 齢

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

代 議 員 会 決 議 内 容 についてお 知 らせします さる3 月 4 日 当 基 金 の 代 議 員 会 を 開 催 し 次 の 議 案 が 審 議 され 可 決 承 認 されました 第 1 号 議 案 : 財 政 再 計 算 について ( 概 要 ) 確 定 給 付 企 業 年 金 法 第

(5) 給 与 改 定 の 状 況 事 委 員 会 の 設 置 なし 1 月 例 給 事 委 員 会 の 勧 告 民 間 給 与 公 務 員 給 与 較 差 勧 告 A B A-B ( 改 定 率 ) 給 与 改 定 率 ( 参 考 ) 国 の 改 定 率 24 年 度 円 円 円 円 ( ) 改

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(2) 広 島 国 際 学 院 大 学 ( 以 下 大 学 という ) (3) 広 島 国 際 学 院 大 学 自 動 車 短 期 大 学 部 ( 以 下 短 大 という ) (4) 広 島 国 際 学 院 高 等 学 校 ( 以 下 高 校 という ) ( 学 納 金 の 種 類 ) 第 3 条

4. 長 期 優 良 住 宅 に 係 る 特 例 の 延 長 長 期 優 良 住 宅 に 係 る 以 下 の 特 例 措 置 の 適 用 期 限 ( 平 成 28 年 3 月 31 日 )を 延 長 する 1 登 録 免 許 税 の 特 例 ( 所 有 権 の 保 存 登 記 : 本 則 0.4%

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 最 高 号 給 の 給 料 月 額 243,7 37,8 35

Microsoft PowerPoint - 【資料5】社会福祉施設職員等退職手当共済制度の見直し(案)について

別紙3

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36


( 注 )1 ラスパイレス 指 数 とは 全 地 方 公 共 団 体 の 一 般 行 政 職 の 給 料 月 額 を 一 の 基 準 で 比 較 するため の 職 員 数 ( 構 成 )を 用 いて 学 歴 や 経 験 年 数 の 差 による 影 響 を 補 正 し の 行 政 職 俸 給 表 (

第5回法人課税ディスカッショングループ 法D5-4

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技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77

・モニター広告運営事業仕様書

市 町 村 税 の 概 況 市 町 村 税 の 概 況 は 平 成 25 年 度 地 方 財 政 状 況 調 査 平 成 26 年 度 市 町 村 税 の 課 税 状 況 等 の 調 及 び 平 成 26 年 度 固 定 資 産 の 価 格 等 の 概 要 調 書 等 報 告 書 等 の 資 料 に

(1) 率 等 一 覧 ( 平 成 26 年 度 ) 目 課 客 体 及 び 納 義 務 者 課 標 準 及 び 率 法 内 に 住 所 を 有 する ( 均 等 割 所 得 割 ) 内 に 事 務 所 事 業 所 又 は 家 屋 敷 を 有 する で 内 に 住 所 を 有 し ないもの( 均 等

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 ( 各 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 例 ) ( 例 ) 15 (H2) (H2) (H24) (H24) (H25.4.1) (H25.4.1) (H24) (H24)

Taro-○離島特産品等マーケティング支援事業に係る企画提案募集要領

(Microsoft Word - \220\340\226\276\217\221.doc)

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 2 年 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制 措 置 を 行 う 前 のものです ( 単 位 : ) 3 職 員 の 平 均 給 与 月

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 福 岡 県 技 能 労 務 職 歳 1,19,98 9,9 歳 8,

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 H H H5.4.1 ( 参 考 値 ) 97.1 H H H H5.4.1 H H5.4.1 ( 参 考

などは 別 の 事 業 所 とせず その 高 等 学 校 に 含 めて 調 査 した 5 調 査 事 項 単 独 事 業 所 調 査 票 全 産 業 共 通 事 項 ( 単 独 事 業 所 ) ア 名 称 及 び 電 話 番 号 イ 所 在 地 ウ 経 営 組 織 ( 協 同 組 合 においては 協

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3 独 占 禁 止 法 違 反 事 件 の 概 要 (1) 価 格 カルテル 山 形 県 の 庄 内 地 区 に 所 在 する5 農 協 が, 特 定 主 食 用 米 の 販 売 手 数 料 について, 平 成 23 年 1 月 13 日 に 山 形 県 酒 田 市 所 在 の 全 国 農 業 協

災害時の賃貸住宅居住者の居住の安定確保について

Microsoft Word 利子補給金交付要綱

<重要な会計方針及び注記>

一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 3 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 級 3 級 4 級 5 級 6 級 単 位 : ( ) 7 級 1 号 給 の 給 料 月 額 137, 163,7 4,9 31,4 71, 33,3 359,7 最 高 号 給 の 給 料 月 額

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2000 年 12 月 輸 出 の 減 速 によりテンポはやや 鈍 化 しているものの 緩 やかな 回 復 を 続 けている 2001 年 1 月 緩 やかな 回 復 を 続 けているが そのテンポは 輸 出 の 減 速 により 鈍 化 している 2001 年 2 月 緩 やかな 回 復 を 続 け

スライド 1

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 ( 単 位 : 円 ) 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 413,

スライド 1

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18 国立高等専門学校機構

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 級 の 給 料 月 額 最 高 号 級 の 給 料 月 額 1 級 ( 単 位 : ) 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 9 級 1 級 135,6 185,8 222,9 261,

一般競争入札について

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(別紙3)保険会社向けの総合的な監督指針の一部を改正する(案)

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私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

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セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

「一時預かり事業の実態について」の一部改正について

の 提 供 状 況 等 を 総 合 的 に 勘 案 し 土 地 及 び 家 屋 に 係 る 固 定 資 産 税 及 び 都 市 計 画 税 を 減 額 せずに 平 成 24 年 度 分 の 固 定 資 産 税 及 び 都 市 計 画 税 を 課 税 することが 適 当 と 市 町 村 長 が 認 め

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

文化政策情報システムの運用等

公表表紙

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

Microsoft Word - ★HP版平成27年度検査の結果

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(2) 就 業 規 則 の 状 況 就 業 規 則 は 90.0%の 事 業 所 が 整 備 している このうち 就 業 規 則 を 周 知 している 事 業 所 は 84.0%で 周 知 の 方 法 ( 複 数 回 答 )については 常 時 掲 示 または 備 え 付 け が 最 も 多 く 64

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている 総 合 的

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与

平成24年度開設予定大学院等一覧(判定を「不可」とするもの)

1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

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m07 北見工業大学 様式①

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 (H20.4.1) 96.7 (H25.4.1) (H25.7.1) (H25.4.1), (H25.4.1) 参 考 値 98.3 (H25.7.1) (H20.4.1) (H25.4

(参考資料)国際会計基準(IFRS)の2012年3月期からの任意適用について

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 25 年 4 月 1 日 現 在 ) 1) 一 般 行 政 職 福 島 県 国 類 似 団 体 平 均 年 齢 平

4 参 加 資 格 要 件 本 提 案 への 参 加 予 定 者 は 以 下 の 条 件 を 全 て 満 たすこと 1 地 方 自 治 法 施 行 令 ( 昭 和 22 年 政 令 第 16 号 ) 第 167 条 の4 第 1 項 各 号 の 規 定 に 該 当 しない 者 であること 2 会 社

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預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

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官報掲載【セット版】

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

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円 定 期 の 優 遇 金 利 期 間 中 に 中 途 解 約 す る と 優 遇 金 利 は 適 用 さ れ ず お 預 け 入 れ 日 か ら 解 約 日 ま で の 所 定 の 期 限 前 解 約 利 率 が 適 用 さ れ ま す 投 資 信 託 ( 金 融 商 品 仲 介 で 取 り 扱

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 135,600 円 185,800 円 222,900 円 261,900 円

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

Transcription:

中 東 北 アフリカにおける 有 望 国 と 日 本 企 業 の 進 出 戦 略 株 式 会 社 野 村 総 合 研 究 所 公 共 経 営 コンサルティング 部 主 任 コンサルタント 霜 越 直 哉 1. 注 目 されるイスラム マーケット 近 年 イスラム 教 徒 (ムスリム)を 対 象 と したイスラム マーケットへの 注 目 が 急 速 に 増 している 例 えば イスラム 法 において 許 されたもの を 意 味 する ハラル * 1 という 言 葉 を 報 道 で 目 にする 機 会 が 増 えている 5 大 全 国 紙 において ハラル という 単 語 が 含 まれる 記 事 件 数 の 推 移 を 示 したのが 図 表 1である これによると 2012 年 まではほと んど 記 事 になっていなかったが 2013 年 に 急 増 しており 注 目 を 集 めていることがわかる 図 表 1 5 大 全 国 紙 における ハラル 関 連 記 事 の 件 数 ( 件 ) 120 100 80 60 40 20 0 15 4 5 16 18 注 ) 過 去 10 年 間 の 5 大 全 国 紙 ( 読 売 新 聞 朝 日 新 聞 毎 日 新 聞 日 本 経 済 新 聞 産 経 新 聞 )を 対 象 に ハラル または ハラール という 単 語 が 含 まれた 記 事 を 検 索 した ハラルが 注 目 を 集 めている 背 景 には イス ラム 圏 からの 観 光 客 の 増 加 がある 2013 年 に マレーシアからの 短 期 滞 在 ビザを 免 除 したこ 38 22 19 33 114 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 ( 年 ) とや インドネシアからの 短 期 滞 在 ビザの 期 間 を 延 長 したことなどを 受 けて 両 国 からの 訪 日 観 光 客 数 は 近 年 急 増 している また 2013 年 に 安 倍 首 相 が 大 規 模 な 経 済 ミッショ ンを 伴 って 相 次 いで 中 東 諸 国 を 歴 訪 したこ とも 一 因 となっている 日 本 への 観 光 客 誘 致 (インバウンド)では 地 方 自 治 体 による 取 り 組 みが 広 がりつつある 例 えば 千 葉 市 は 2013 年 11 月 に 海 外 イン バウンドツーリズム 推 進 協 議 会 を 立 ち 上 げ ムスリムの 観 光 ニーズや 食 習 慣 ムスリム 向 け 土 産 などの 調 査 研 究 を 進 めている 大 阪 府 市 などが 設 立 した 大 阪 観 光 局 は 2014 年 3 月 にムスリム 向 けガイドブックを 作 製 し ハラル 認 証 を 取 得 したレストランや 礼 拝 用 ス ペースがある 施 設 などを 紹 介 している 熊 本 市 は 2014 年 4 月 に 日 本 の 自 治 体 では 初 め て マレーシアの 政 府 機 関 ハラル 産 業 開 発 公 社 と 覚 書 を 締 結 し ムスリムの 観 光 客 誘 致 や 地 元 企 業 の 東 南 アジア 進 出 促 進 を 目 指 し ている 日 本 企 業 によるイスラム 圏 への 投 資 事 例 (アウトバウンド)も 増 えている 注 目 すべ き 点 は ここ 数 年 は 投 資 先 がインドネシア マ レ ー シ ア と い っ た 東 南 ア ジ ア 諸 国 連 合 (ASEAN)にとどまらないところにある 例 えば 資 生 堂 は 1990 年 代 から 販 売 代 理 店 を 通 じて 中 東 地 域 での 化 粧 品 事 業 を 展 開 して いたが 2013 年 10 月 にアラブ 首 長 国 連 邦 (UAE) ドバイにおいて 合 弁 会 社 を 設 立 し *1 ハラール と 表 記 することもある 一 般 的 に 戒 律 に 従 ってムスリムが 口 にできる 食 品 や 使 用 でき るスキンケア 商 品 着 用 できる 衣 類 などを 指 し 適 正 な 方 法 で 製 造 保 管 運 搬 された 製 品 の 証 明 をハ ラル 認 証 という 非 ハラル 製 品 を ハラム と 言 い 酒 や 豚 肉 などが 有 名 である NRI パブリックマネジメントレビュー May 2014 vol.130-1-

直 接 投 資 を 開 始 すると 発 表 した また 味 の 素 は 2013 年 11 月 に トルコの 食 品 会 社 の 買 収 を 発 表 し 流 通 ルートの 拡 大 を 図 っている 投 資 事 例 は 消 費 財 分 野 に 限 らず 東 邦 チタニ ウムは 2014 年 1 月 に 東 レは 同 年 2 月 に それぞれサウジアラビアにおける 工 場 建 設 を 発 表 している 官 による 進 出 支 援 は 日 本 貿 易 振 興 機 構 (JETRO)や 一 般 財 団 法 人 中 東 協 力 センター などが 中 心 となって 進 めているが 新 しい 動 きも 見 られつつある 例 えば 2014 年 2 月 には 北 海 道 食 産 業 総 合 振 興 機 構 (フード 特 区 機 構 )が UAE ドバイで 北 海 道 フードフ ェア in ドバイ を 開 催 し 道 内 企 業 のイスラ ム 圏 進 出 を 促 している アメリカのシンクタンク Pew Research Center によると 2010 年 の 世 界 のムスリム 人 口 は 16 億 人 となっている また 2030 年 には 22 億 人 に 達 し 世 界 人 口 の 4 分 の 1 超 を 占 めると 見 込 まれている 日 本 企 業 のグロ ーバル 展 開 において 今 後 イスラム マー ケットはますます 重 要 な 意 味 を 持 つことにな っていくだろう 2.イスラム 諸 国 が 集 中 する 中 東 北 アフリ カ(MENA) 地 域 日 本 企 業 にとって イスラム 圏 として 最 も なじみのある 国 は ASEAN のインドネシア マレーシアだろう インドネシアは 世 界 最 大 のムスリム 人 口 (2 億 人 以 上 )を 擁 しており マレーシアは 世 界 のハラル 市 場 の 拠 点 を 目 指 した ハラル ハブ 政 策 の 下 同 国 のハラ ル 認 証 基 準 のデファクト スタンダード 化 な どを 推 進 している 一 方 で 世 界 的 に 見 ると イスラム 諸 国 が 集 中 しているのは 中 東 北 アフリカ(Middle East and North Africa:MENA) 地 域 である MENA 地 域 の 統 一 された 定 義 はないが 国 際 通 貨 基 金 (IMF)は 東 はイランから 西 はモ ーリタニアまでの 20 カ 国 を MENA としてい る * 2 ( 図 表 2) いずれも 全 人 口 に 占 めるム スリムの 比 率 が 高 く イスラム 教 が 生 活 に 浸 透 している 国 々である また 中 国 ASEAN インドに 次 ぐグローバル 展 開 先 として 多 くの 日 本 企 業 から 注 目 を 浴 びている 地 域 でもある 図 表 2 IMFによる 中 東 北 アフリカ(MENA) 地 域 の 定 義 クウェート モロッコ チュニジア レバノン ヨルダン シリア イラク イラン アルジェリア リビア エジプト サウジアラビア UAE オマーン モーリタニア スーダン イエメン バーレーン カタール ジブチ 出 所 )IMF *2 世 界 銀 行 は 図 表 2の 20 カ 国 からスーダン モーリタニアを 除 き イスラエル パレスチナ マルタを 加 えた 21 カ 国 を MENA と 定 義 している 本 稿 では IMF の 定 義 に 従 う NRI パブリックマネジメントレビュー May 2014 vol.130-2-

MENA と ASEAN を 比 較 したのが 図 表 3 である MENA の 名 目 GDP は 3.3 兆 ドル 人 口 は 4.2 億 人 であり 前 者 は ASEAN を 凌 駕 する 規 模 である さらに 14 歳 以 下 人 口 や 中 間 所 得 層 富 裕 層 といった 指 標 を 見 ると 若 年 層 が 多 く また 経 済 的 に 豊 かな 世 帯 が 多 いことがわかる イランなどを 除 くほとんどの 国 では アラ ビア 語 を 話 すアラブ 人 が 多 数 派 を 占 めている MENA 地 域 は さまざまな 国 が 存 在 しながら も 同 じ 宗 教 を 信 仰 し 同 じ 言 語 を 持 つ 同 じ 民 族 が 多 数 存 在 しており 一 つの 巨 大 な 経 済 圏 と 見 なせるという 特 徴 を 持 っている 図 表 3 MENA と ASEAN の 経 済 指 標 の 比 較 (2012 年 時 点 ) MENA ASEAN 名 目 GDP 3.3 兆 ドル 2.3 兆 ドル 人 口 4.2 億 人 6.1 億 人 14 歳 以 下 人 口 1.3 億 人 1.7 億 人 (14 歳 以 下 比 率 ) (31%) (28%) 中 間 所 得 層 5,600 万 世 帯 8,000 万 世 帯 ( 中 間 所 得 層 比 率 ) (83%) (58%) 富 裕 層 810 万 世 帯 550 万 世 帯 ( 富 裕 層 比 率 ) (12%) (4%) 注 1) 中 間 所 得 層 は 世 帯 年 間 可 処 分 所 得 5,000 ドル 超 富 裕 層 は 35,000 ドル 超 と 定 義 (いずれも 名 目 値 ) 注 2) 中 間 所 得 層 富 裕 層 とも Euromonitor でデ ータがない 次 の 国 を 除 いて 算 出 :ASEAN4 カ 国 (カンボジア ブルネイ ミャンマー ラ オス) MENA9 カ 国 (イエメン イラク オ マーン ジブチ シリア スーダン モーリ タニア リビア レバノン) 出 所 )IMF 世 界 銀 行 Euromonitor International より 作 成 3.MENA 経 済 の 中 心 に 位 置 づく 湾 岸 協 力 会 議 (GCC)6カ 国 現 在 MENA 経 済 の 中 心 的 な 存 在 になって いるのが 湾 岸 協 力 会 議 (Gulf Cooperation Council:GCC)に 加 盟 する UAE オマーン カタール クウェート サウジアラビア バ ーレーンの 6 カ 国 である GCC 諸 国 の 特 徴 としては 次 の 4 点 が 挙 げ られる 第 一 に 比 較 的 政 情 が 安 定 している 近 年 はテロ 事 件 などがほとんど 発 生 していな い また 2010 年 以 降 の アラブの 春 でも 大 規 模 な 社 会 福 祉 政 策 や 政 治 改 革 などが 機 動 的 に 実 施 されたことが 功 を 奏 し 社 会 的 騒 乱 が 少 なかったとされる * 3 第 二 に 豊 富 な 石 油 ガス 資 源 を 背 景 とし て 一 人 当 たり GDP の 水 準 が 極 めて 高 い( 図 表 4) 6 カ 国 とも 韓 国 (22,589 ドル)や 台 湾 ( 20,336 ドル)を 上 回 っており 特 に UAE カタール クウェートは 日 本 (46,707 ドル) と 同 等 かそれを 凌 駕 する 水 準 にある 第 三 に サウジアラビアを 除 けば 1 カ 国 当 たりの 人 口 規 模 経 済 規 模 は 小 さいものの 関 税 同 盟 を 形 成 し 通 貨 統 合 も 検 討 するなど 経 済 統 合 が 進 んでいる 前 述 の 同 じ 宗 教 言 語 民 族 という 特 徴 と 合 わせ 一 つの 経 済 圏 として 捉 えやすい 地 域 である *3 バーレーンでは 2012 年 に 爆 弾 テロ 事 件 が 起 こるなど 相 対 的 に 社 会 情 勢 が 不 安 定 である 王 族 側 のイ スラム 教 スンニ 派 と 国 民 の 大 多 数 ( 約 75%)を 占 め 貧 困 層 が 多 いとされるシーア 派 との 対 立 が 根 強 い と 言 われている NRI パブリックマネジメントレビュー May 2014 vol.130-3-

図 表 4 GCCのGDPと 一 人 当 たりGDPの 関 係 (2012 年 時 点 ) 120,000 100,000 カタール GCC その 他 MENA 主 要 国 トルコ 韓 国 台 湾 ASEAN 主 要 国 一 人 当 た り 名 目 G D P ( ド ル ) 80,000 60,000 40,000 20,000 オマーン バーレーン クウェート UAE 台 湾 サウジアラビア 注 ) 日 本 の 名 目 GDP は 4.9 兆 ドル 一 人 当 たり 名 目 GDP は 46,707 ドル 出 所 )IMF World Economic Outlook Database ( October 2013)より NRI 作 成 韓 国 イラク マレーシア トルコ タイ イラン インドネシア 0 エジプト 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 名 目 GDP( 億 ドル) 第 四 に 政 府 による 巨 大 なインフラ 投 資 が 計 画 されている 例 えば GCC 諸 国 を 縦 断 す る 鉄 道 の 建 設 が 予 定 されており サウジアラ ビアの 英 語 紙 Arab News によると 総 投 資 額 は 155 億 ドルに 達 すると 推 定 される さら に いずれの 国 も 脱 石 油 を 目 指 しており 今 後 GCC 全 体 で 太 陽 エネルギー 発 電 に 対 して 1,550 億 ドルを 投 資 し 発 電 能 力 を 84 ギガワット 増 加 させる 計 画 がある * 4 そのほ かにも UAE は 原 発 4 基 ( 合 計 出 力 5.6 ギガ ワット)を 建 設 中 であり また 最 大 出 力 100 メガワットと 世 界 最 大 級 の 集 光 型 太 陽 熱 発 電 (CSP)プラントが 稼 働 中 である これらの 特 徴 は 図 表 5に 整 理 した 図 表 5 GCCの 特 徴 1 政 情 が 比 較 的 安 定 している 2 一 人 当 たりGDPが 極 めて 高 い 3 経 済 的 な 統 合 が 進 む 4 大 規 模 なインフラ 投 資 が 計 画 されている 近 年 はテロ 事 件 がほとんど 起 こっていない アラブの 春 の 影 響 も 軽 微 だった ( バーレーンを 除 く) 6カ 国 とも 韓 国 台 湾 の 水 準 を 上 回 る 特 にUAE カタール クウェートは 日 本 と 同 等 以 上 域 内 の 関 税 ゼロ 対 外 共 通 関 税 率 5%( 例 外 品 目 あり) 通 貨 統 合 も 検 討 GCC 縦 断 鉄 道 は 総 投 資 額 155 億 ドル 2018 年 完 成 予 定 GCC 全 体 で 太 陽 エネルギー 発 電 に 合 計 1,550 億 ドルを 投 資 し 発 電 能 力 を84ギガワット 増 加 させる 計 画 出 所 ) 外 務 省 JETRO IMF Arab News などより 作 成 *4 日 本 の 総 発 電 能 力 は 約 210 ギガワット( 電 力 10 社 合 計 2012 年 )であり 日 本 の 3 分 の 1 を 超 える 規 模 の 発 電 能 力 を 太 陽 エネルギーによって 増 加 させる 計 画 になる NRI パブリックマネジメントレビュー May 2014 vol.130-4-

4. 日 本 企 業 の 進 出 戦 略 前 述 のとおり MENA や GCC といった 地 域 は 1 国 あたりの 経 済 規 模 はそれほど 大 き くないものの 宗 教 言 語 民 族 といった 共 通 性 を 背 景 に 1 つの 巨 大 な 経 済 圏 として 捉 えることができる 一 方 で 大 規 模 な M&A でも 実 施 しない 限 り 即 座 に MENA 全 域 に 展 開 するのは 難 しい 従 って 段 階 的 な 攻 略 という 視 点 が この 地 域 への 進 出 戦 略 を 立 案 する 上 で 重 要 であろう 本 稿 では まず UAE またはサウジアラビ アへ 進 出 し そこから GCC や MENA へ 展 開 する 方 法 を 提 案 したい 1)UAEへの 進 出 UAE はドバイやアブダビといった 国 際 都 市 を 擁 しており 観 光 客 が 極 めて 多 い 2012 年 のドバイの 観 光 客 は 1,000 万 人 であり ア ブダビも 240 万 人 に 達 している また 人 口 900 万 人 のうち 約 80%は 外 国 人 ( 主 に 海 外 か らの 出 稼 ぎ 労 働 者 )である イスラム 圏 を 含 む 世 界 中 から 人 が 集 まっており B to C 産 業 においては テスト マーケティングの 有 力 地 として 位 置 づけることができる 加 えて 電 気 水 道 などの 公 共 料 金 が 極 め て 安 く 法 人 税 は 原 則 としてゼロとなってい る ドバイのジュベル アリやアブダビのハ リファ 工 業 地 帯 (KIZAD)などのフリーゾー ン * 5 の 整 備 も 進 んでおり ドバイ 国 際 空 港 や ジュベル アリ 港 といった 交 通 物 流 のハブ も 存 在 する このことから 地 域 統 括 拠 点 や B to B を 含 む 製 造 拠 点 の 立 地 先 としても 有 望 である 世 界 銀 行 の Doing Business 2014(ビ ジネスのしやすさ)ランキングでは 189 カ 国 中 UAE は 23 位 であり 日 本 の 27 位 を 上 回 っている 日 系 企 業 進 出 数 は 271 社 となっており MENA で 最 も 多 い * 6 例 えば 100 円 ショッ プの ザ ダイソー を 展 開 する 大 創 産 業 は 2004 年 に UAE ドバイに 初 出 店 したのち 毎 年 3~4 店 のペースで 出 店 し 現 在 は GCC 全 域 に 40 店 舗 以 上 を 展 開 している また 洋 菓 子 メーカーのヨックモックは 2012 年 に UAE アブダビに 初 出 店 したのち すでに UAE 国 内 に 10 店 舗 を 展 開 し カタールなど 他 の GCC 諸 国 への 進 出 も 目 指 している 進 出 する 際 の 留 意 点 としては フリーゾー ン 以 外 で 企 業 を 設 立 する 場 合 外 資 企 業 は 株 式 の 49%までしか 保 有 できないことが 挙 げ られる さらに 人 口 規 模 が 小 さいため B to C 産 業 にとっては 販 売 量 が 確 保 しにくいとい う 点 も 挙 げられる 2)サウジアラビアへの 進 出 サウジアラビアはイスラム 教 の 2 大 聖 地 (メッカとメディナ)を 有 し 石 油 輸 出 国 機 構 ( Organization of the Petroleum Exporting Countries:OPEC)や GCC の 盟 主 たる 存 在 であるなど 中 東 の 中 心 的 な 国 と 言 える サウジアラビアの GDP は 7,111 億 ドルと MENA 最 大 であり その 経 済 規 模 は MENA の 22% GCC の 45%を 占 めている サウジアラビアも 海 外 からの 出 稼 ぎ 労 働 者 が 多 いことで 知 られており 人 口 3,000 万 人 のうち 約 30%を 占 める 彼 らがサウジアラビ アで 慣 れ 親 しんだ 商 品 は 帰 国 後 も 好 んで 選 択 される 傾 向 があると 言 われており この 点 か らも 重 要 な 市 場 と 見 なすことができる 加 えて 若 年 層 の 失 業 が 大 きな 問 題 となっ ており 産 業 振 興 のために 積 極 的 に 外 資 誘 致 を 進 めている UAE 同 様 に 公 共 料 金 が 安 く *5 UAE で 企 業 を 設 立 する 場 合 外 資 企 業 は 株 式 の 49%までしか 保 有 できないが フリーゾーン( 経 済 特 区 )に 立 地 すれば 100%の 保 有 が 可 能 となる その 他 にもさまざまな 優 遇 措 置 がある フリーゾーンは UAE 国 内 に 約 30 カ 所 存 在 する *6 JETRO によるデータ(2011 年 10 月 時 点 ) NRI パブリックマネジメントレビュー May 2014 vol.130-5-

工 業 団 地 の 整 備 が 進 むなど Doing Business ランキングは 26 位 となっている Made in Saudi Arabia は 中 東 でのブランド 力 が 高 く 製 造 進 出 先 としても 有 力 候 補 となるだろう 日 系 企 業 進 出 数 は 92 社 となっており UAE に 次 いで 多 い 例 えば 紙 おむつなどを 製 造 するユニ チャームは 2005 年 にそれま で 技 術 提 携 していた 現 地 メーカーを 買 収 し サウジアラビアから MENA へ 製 品 を 輸 出 し ている また 2012 年 にはエジプトにも 工 場 を 建 設 するなど 製 造 販 売 の 双 方 から 事 業 を 拡 大 している 進 出 する 際 の 留 意 点 としては 自 国 籍 人 の 雇 用 を 促 進 させるための サウダイゼーショ ン と 呼 ばれる 政 策 が 急 速 に 進 められている ことが 挙 げられる 例 えば 企 業 は 従 業 員 の 一 定 割 合 についてサウジアラビア 人 を 雇 用 し なければならない さらに 2013 年 には 不 正 なビザによる 外 国 人 の 取 り 締 まりが 強 化 さ れ 多 数 の 外 国 人 労 働 者 が 国 外 退 去 となった これらを 背 景 に 一 部 で 賃 金 の 高 騰 や 人 手 不 足 などが 起 こっており 特 に 労 働 集 約 的 な 産 業 では 大 きな 障 害 となっている 3)UAEとサウジアラビアの 比 較 UAE とサウジアラビアを 比 較 したのが 図 表 6である GDP や 人 口 などを 踏 まえた 市 場 規 模 という 側 面 からはサウジアラビアが 優 位 である 一 方 で 進 出 やテスト マーケティ ングのしやすさでは UAE が 優 位 となってい る これらを 踏 まえると まず UAE に 試 験 的 に 進 出 し 事 業 のフィージビリティを 見 極 めたうえで 最 大 の 経 済 規 模 を 持 つサウジア ラビアに 本 格 進 出 する といった 段 階 的 な 進 出 が 考 えられる あるいは すでに 事 業 プラ ンが 固 まっているのであれば はじめから 最 大 の 市 場 を 持 つサウジアラビアに 進 出 するこ とも 考 えられるだろう UAE やサウジアラビアでの 事 業 が 軌 道 に 乗 れば 他 の GCC や MENA への 展 開 が 視 野 に 入 ってくる MENA の 大 多 数 の 国 が 加 盟 す る 経 済 共 同 体 の 大 ア ラ ブ 自 由 貿 易 地 域 (Greater Arab Free Trade Area:GAFTA) は 域 内 での 原 産 地 比 率 が 40% 以 上 の 製 品 に ついて 関 税 を 撤 廃 しており UAE やサウジア ラビアで 製 造 した 商 品 の 輸 出 に 生 かすことが できる 市 場 規 模 進 出 のしやすさ テスト マーケティング のしやすさ UA E 図 表 6 UAEとサウジアラビアの 比 較 GDP 規 模 は 大 きいが 人 口 は 少 ない 人 口 :900 万 人 名 目 GDP:3,800 億 ドル ビジネス 環 境 の 整 備 が 進 んでおり 進 出 日 系 企 業 数 はMENA 最 大 Doing Businessランク23 位 (MENA 最 高 位 ) 法 人 税 ゼロ 安 価 な 公 共 料 金 約 30カ 所 のフリーゾーン(FTZ: 経 済 特 区 ) 進 出 日 系 企 業 数 :271(MENA 最 大 ) 留 意 点 :FTZ 外 の 外 資 出 資 比 率 制 限 (49%) MENAを 含 む 世 界 中 から 人 が 集 まる 人 口 の 約 80%が 外 国 人 ( 出 稼 ぎ 労 働 者 など) 年 間 観 光 客 数 はドバイ1,000 万 人 アブダビ240 万 人 狭 い 都 市 圏 に 集 中 する サウジアラビア MENA 最 大 の 経 済 規 模 で 人 口 も 多 い 人 口 :3,000 万 人 名 目 GDP:7,100 億 ドル (MENA 最 大 :MENAの22% GCCの45%) ビジネス 環 境 が 整 備 されており 進 出 日 系 企 業 数 も 比 較 的 多 い Doing Businessランク26 位 (MENA 2 位 ) 低 い 税 率 安 価 な 公 共 料 金 多 数 の 工 業 団 地 進 出 日 系 企 業 数 :92(MENA 2 位 ) 留 意 点 :サウジ 人 の 雇 用 促 進 政 策 観 光 客 はほぼ 存 在 しないが 外 国 人 労 働 者 や 巡 礼 者 は 多 い 人 口 の 約 30%が 外 国 人 ( 出 稼 ぎ 労 働 者 など) ムスリム 向 けのメッカなどへの 巡 礼 ビザはあるが 一 般 の 観 光 ビザはほぼ 発 給 されてない (2013 年 の 海 外 からの 巡 礼 者 は140 万 人 ) 事 業 を 始 めやすい 環 境 が 整 っており MENA 進 出 の 橋 頭 保 と 位 置 づく 最 大 の 経 済 規 模 を 誇 り MENAの 主 戦 場 と 位 置 づく 出 所 )IMF 世 界 銀 行 JETRO その 他 報 道 資 料 より NRI 作 成 NRI パブリックマネジメントレビュー May 2014 vol.130-6-

5. 進 出 に 際 しての 留 意 点 ではあるものの 今 後 のグローバル 展 開 先 と して 急 速 に 注 目 を 集 めつつあることも 事 実 で ここでは イスラム 圏 という 視 点 から MENA 進 出 の 留 意 点 について 指 摘 したい MENA はイスラム 圏 として 共 通 性 がある ものの 実 際 には 国 ごとに 戒 律 の 厳 しさは 異 なる サウジアラビアは 最 も 厳 格 と 言 われて おり 外 国 人 であっても 飲 酒 は 禁 止 され 女 性 はアバヤ * 7 の 着 用 が 必 要 となる 一 方 で 隣 国 の UAE やバーレーンでは 外 国 人 はホ テル 内 のレストランなどでの 飲 酒 が 可 能 であ り スーパーには 非 ムスリム 向 けの 酒 類 豚 肉 販 売 コーナーがある これは 国 ごとにイ スラム 圏 における 制 約 条 件 が 少 しずつ 異 なる ということであり 事 業 展 開 の 際 には 事 前 に 見 極 めることが 重 要 である ある 新 興 市 場 での 先 行 者 利 益 をねらうため にも まずは 市 場 環 境 や 競 合 動 向 などの 調 査 研 究 に 早 急 に 着 手 すべきである また 自 治 体 などの 官 による 進 出 支 援 では 単 純 な 情 報 収 集 発 信 だけでなく MENA に 進 出 している 企 業 を 交 えたセミナーや 情 報 交 換 会 を 実 施 することも 有 効 だろう 例 えば 大 阪 府 と 大 阪 市 は 2014 年 2 月 に JETRO や 中 東 協 力 センター 商 工 会 議 所 らと 共 同 で 中 東 ビジネスに 関 するセミナーを 開 催 し 中 東 に 進 出 している 地 元 企 業 の 生 の 声 を 提 供 している このような 取 り 組 みを 継 続 してい くことで MENA 進 出 をねらう 地 元 企 業 をよ り 後 押 ししていくことができると 考 えられる 自 国 企 業 保 護 の 観 点 が 強 いイスラム 法 の 精 神 についても 日 本 企 業 は 十 分 な 留 意 が 必 要 である イスラム 教 を 中 心 とする 国 は シャ リーア と 呼 ばれる 法 の 精 神 があり これに 則 って 会 社 法 が 制 定 されていることが 多 い 例 えば 契 約 内 容 を 吟 味 せずに 現 地 企 業 と 代 理 店 契 約 や 合 弁 組 成 契 約 を 一 度 締 結 してしま うと 外 国 企 業 側 から 契 約 を 破 棄 することは 極 めて 難 しいと 言 われている こうした 事 態 にならないためにも 有 能 な 弁 護 士 を 雇 い 契 約 内 容 にリスクや 契 約 解 除 条 項 を 明 文 化 し アラビア 語 での 契 約 書 も 作 成 して * 8 双 方 で 確 認 するなど 慎 重 な 対 策 が 求 められる 筆 者 6.おわりに 本 稿 では イスラム 諸 国 が 集 中 する MENA やその 中 心 に 位 置 づく GCC の 特 徴 進 出 戦 略 留 意 点 について 整 理 した 多 くの 日 本 企 業 にとって MENA はまだなじみの 薄 い 地 域 霜 越 直 哉 (しもこし なおや) 株 式 会 社 野 村 総 合 研 究 所 公 共 経 営 コンサルティング 部 主 任 コンサルタント 専 門 は 公 的 機 関 の 経 営 戦 略 策 定 組 織 改 革 中 東 アフリカ 市 場 参 入 支 援 など E-mail: n-shimokoshi@nri.co.jp *7 全 身 を 包 む 黒 系 色 の 女 性 用 衣 装 のこと *8 特 に 中 東 では アラビア 語 の 契 約 書 の 方 が 英 語 の 契 約 書 よりも 法 的 係 争 で 優 先 されると 言 われている NRI パブリックマネジメントレビュー May 2014 vol.130-7-