平 成 26 年 度 商 標 問 題 文 問 題 Ⅰ 商 標 法 における 登 録 主 義 について 以 下 の 設 問 に 答 えよ 解 答 に 際 して マドリッド 協 定 の 議 定 書 に 基 づく 特 例 は 考 慮 しなくてよい (1) 商 標 法 における 登 録 主 義 について 簡 潔 に 説 明 し 登 録 主 義 が 採 用 されている 理 由 を 述 べよ (2) 登 録 主 義 との 関 係 において いわゆる 先 使 用 権 が 認 められている 理 由 を 述 べよ (40 点 ) 問 題 Ⅱ クイーン 株 式 会 社 ( 以 下 甲 という )は スーパーアマロ からなる 文 字 商 標 につ いて 化 粧 品 を 指 定 商 品 とする 商 標 登 録 出 願 を 平 成 22 年 1 月 10 日 にし 平 成 22 年 7 月 10 日 に 商 標 登 録 を 受 けた 甲 は 平 成 22 年 7 月 下 旬 頃 から 商 標 アマロ を 付 した 香 水 の 販 売 を 開 始 し 現 在 に 至 っている アマロスタイル 株 式 会 社 ( 以 下 乙 という )は 平 成 15 年 1 月 頃 から サプリメン ト を 製 造 し これに 商 標 AMALO を 付 して 販 売 を 行 っていたところ 売 れ 行 きが 良 く 平 成 18 年 1 月 頃 には 商 標 AMALO は 乙 の 業 務 に 係 る サプリメント を 表 示 するものとして 著 名 となり 乙 は 需 要 者 の 間 において アマロ の 略 称 で 呼 ばれるよ うになり 現 在 に 至 っている また 乙 は 業 務 を 拡 大 し 平 成 18 年 3 月 頃 から 化 粧 水 を 製 造 し これに 商 標 AMALO を 付 して 販 売 し 始 めたところ 平 成 22 年 3 月 頃 には 商 標 AMALO は 乙 の 業 務 に 係 る 化 粧 水 も 表 示 するものとして 周 知 と なった そこで 乙 は 平 成 25 年 12 月 10 日 に 商 標 AMALO について サプリメ ント, 化 粧 水 を 指 定 商 品 とする 商 標 登 録 出 願 をしたところ 当 該 商 標 登 録 出 願 に 係 る 商 標 AMALO は 甲 の 登 録 商 標 スーパーアマロ が 引 用 され 商 標 法 第 4 条 第 1 項 第 11 号 により 商 標 登 録 を 受 けることができないとする 拒 絶 理 由 の 通 知 を 受 けた この 場 合 平 成 26 年 7 月 6 日 を 基 準 に 以 下 の 設 問 に 答 えよ なお 指 定 商 品 化 粧 品 と 指 定 商 品 化 粧 水 は 類 似 し 指 定 商 品 化 粧 品 と 指 定 商 品 サプリメント は 類 似 しないものとする 香 水 は 指 定 商 品 化 粧 品 に 含 まれ るものとする 解 答 に 際 して マドリッド 協 定 の 議 定 書 に 基 づく 特 例 は 考 慮 しなくてよい (1) 乙 の 出 願 商 標 AMALO が 拒 絶 理 由 ( 商 標 法 第 4 条 第 1 項 第 11 号 )に 該 当 す るかについて 説 明 せよ -1- <TAC/ 弁 理 士 講 座 >
(2) 甲 の 登 録 商 標 スーパーアマロ と 乙 の 出 願 商 標 AMALO が 類 似 する 場 合 乙 は 指 定 商 品 化 粧 水 について 自 己 の 商 標 登 録 出 願 に 係 る 商 標 AMALO の 商 標 登 録 を 受 けるためにどのような 法 的 措 置 をとることができるか 要 件 を 検 討 した 上 で 説 明 せよ ただし 甲 と 乙 との 交 渉 は 考 慮 しないものとする (60 点 ) <TAC/ 弁 理 士 講 座 > -2-
商 標 法 について 問 題 Ⅰ 1. 設 問 (1)について 商 標 登 録 を 受 けるためには 実 際 に 使 用 していなければいけないのか という 登 録 主 義 と 使 用 主 義 の 対 立 に 関 する 問 題 です 青 本 3 条 に 記 載 されている 説 明 をまとめる 必 要 があります 簡 潔 に という 問 題 文 の 条 件 がありますので 記 載 量 のバランスにも 注 意 しましょう 2. 設 問 (2)について 先 使 用 権 の 趣 旨 について 述 べる 必 要 があります 青 本 に 記 載 されている 既 得 権 として 保 護 というキーワードを 示 すようにしましょう 問 題 Ⅱ 1. 設 問 (1)について 法 4 条 1 項 11 号 に 関 する 問 題 です 他 人 先 願 先 登 録 商 標 指 定 商 品 等 の 類 否 の3 点 について しっかりとあては めを 行 いましょう 2. 設 問 (2)について 甲 の 先 願 先 登 録 商 標 をつぶし 自 己 の 出 願 を 登 録 へと 導 く 必 要 があります 項 目 としては 無 効 審 判 請 求 と 取 消 審 判 を 記 載 する 必 要 があります 無 効 審 判 請 求 については 法 4 条 1 項 15 号 19 号 8 号 を 無 効 理 由 として 示 しましょ う 取 消 審 判 については 不 使 用 取 消 審 判 (50 条 )と 不 正 使 用 取 消 審 判 (51 条 )を 示 し ましょう また 問 題 文 より 要 件 を 検 討 した 上 で とありますので 要 件 の 検 討 を 丁 寧 に 行 う 必 要 があります -3- <TAC/ 弁 理 士 講 座 >
模 範 答 案 1. 問 題 Ⅰ 設 問 (1)について 登 録 主 義 とは 必 ずしも 現 実 に 存 在 する 信 用 のみならず 未 必 的 に 可 能 性 として 存 在 す る 信 用 も 保 護 の 対 象 とする 主 義 をいう わが 国 の 商 標 法 は 実 際 に 商 標 の 使 用 をしてい なければ 商 標 登 録 を 受 けられない 使 用 主 義 ではなく 登 録 主 義 を 採 用 している 商 標 の 本 来 的 な 目 的 は 商 標 の 使 用 を 通 じてそれに 業 務 上 の 信 用 が 化 体 した 場 合 に その 信 用 を 保 護 するものであるという 点 についてはいずれの 主 義 にも 相 違 はない しかしながら 登 録 主 義 を 厳 格 に 貫 けば 登 録 商 標 を 使 用 しない 場 合 であっても 登 録 されている 限 り 商 標 権 は 存 続 することになってしまい 第 三 者 の 商 標 選 択 の 余 地 を 狭 め 国 民 一 般 の 利 益 を 不 当 に 侵 害 することになってしまう そこで わが 国 の 商 標 法 では かかる 登 録 主 義 の 弊 害 を 是 正 するため 使 用 主 義 の 立 場 から 存 続 期 間 の 更 新 の 登 録 制 度 (23 条 )や 商 標 登 録 の 取 消 しの 審 判 制 度 等 を 設 けた 上 で(50 条 ) 登 録 主 義 を 採 用 している 2. 問 題 Ⅰ 設 問 (2)について 出 願 前 の 未 登 録 周 知 商 標 がある 場 合 は 当 該 出 願 は 法 4 条 1 項 10 号 に 該 当 するはずだ から 他 人 の 商 標 登 録 があるわけはないが 登 録 主 義 の 下 では 過 誤 登 録 される 場 合 があ り 得 る このような 商 標 登 録 については 無 効 審 判 を 請 求 することができる(4 条 1 項 10 号 46 条 1 項 1 号 ) しかしながら かかる 無 効 理 由 に 基 づく 無 効 審 判 の 請 求 を 待 つまでもなく 未 登 録 周 知 商 標 の 使 用 を 確 保 し 蓄 積 された 業 務 上 の 信 用 を 既 得 権 として 保 護 する 必 要 がある また 法 4 条 1 項 10 号 について 善 意 に 登 録 を 受 けた 場 合 には 除 斥 期 間 (47 条 )の 適 用 が <TAC/ 弁 理 士 講 座 > -4-
あるので 特 に その 登 録 後 5 年 を 経 過 した 場 合 に 登 録 周 知 商 標 を 保 護 する 実 益 がある そこで 所 定 の 未 登 録 周 知 商 標 についていわゆる 先 使 用 権 が 認 められている(32 条 ) なお 地 域 団 体 商 標 (7 条 の2)の 設 立 に 伴 い 権 利 者 と 第 三 者 の 利 益 の 衡 平 を 失 する ことを 防 止 するため 地 域 団 体 商 標 に 対 しては 周 知 性 を 必 要 とせずに いわゆる 先 使 用 権 が 認 められている(32 条 の2) 3. 問 題 Ⅱ 設 問 (1)について 当 該 商 標 登 録 出 願 の 日 前 の 商 標 登 録 出 願 に 係 る 他 人 の 登 録 商 標 に 類 似 する 商 標 であっ て その 商 標 登 録 に 係 る 指 定 商 品 又 は 当 該 指 定 商 品 に 類 似 する 商 品 について 使 用 をする 商 標 については 商 標 登 録 を 受 けることができない(4 条 1 項 11 号 15 条 1 号 ) 甲 の 出 願 は 乙 の 出 願 の 日 前 の 他 人 の 出 願 であり かつ 乙 の 出 願 の 日 前 に 商 標 登 録 されている 次 に 乙 の 出 願 に 係 る 商 標 AMALO と 甲 の 登 録 商 標 スーパーアマ ロ は 商 標 の 有 する 外 観 称 呼 及 び 観 念 のそれぞれの 判 断 要 素 を 総 合 的 に 考 察 しなけ ればならない ここで 商 標 スーパーアマロ の スーパー は 形 容 詞 的 文 字 と 解 さ れるので 商 標 スーパーアマロ は 分 離 観 察 することができ 商 標 スーパーアマ ロ の 要 部 である アマロ と AMALO の 称 呼 は 同 一 であるので 両 商 標 を 総 合 的 に 観 察 すると 両 商 標 は 類 似 すると 解 する 次 に 問 題 文 より 乙 の 指 定 商 品 化 粧 水 は 甲 の 指 定 商 品 化 粧 品 と 類 似 する 一 方 乙 の 指 定 商 品 サプリメント は 甲 の 指 定 商 品 化 粧 品 と 類 似 しない 以 上 のことから 指 定 商 品 化 粧 水 については 乙 の 商 標 AMALO は 法 4 条 1 項 11 号 の 拒 絶 理 由 に 該 当 する 一 方 指 定 商 品 サプリメント については 乙 の 商 標 -5- <TAC/ 弁 理 士 講 座 >
AMALO は 法 4 条 1 項 11 号 の 拒 絶 理 由 に 該 当 しない 4. 問 題 Ⅱ 設 問 (2)について (1) 甲 の 商 標 権 を 消 滅 させるために 乙 は 無 効 審 判 請 求 (46 条 ) 取 消 審 判 の 請 求 (50 条 51 条 )の 手 続 をとることができる (2) 無 効 審 判 (46 条 ) 本 問 では 法 4 条 1 項 8 号 の 無 効 理 由 が 考 えられる(46 条 1 項 1 号 ) 甲 の 登 録 商 標 スーパーアマロ には 需 要 者 の 間 における 他 人 乙 の 略 称 である アマロ が 含 まれ ている また 甲 は 登 録 商 標 スーパーアマロ について 査 定 審 決 時 に 乙 の 承 諾 を 得 ている 事 実 が 見 当 たらない よって 査 定 時 又 は 審 決 時 のみならず 出 願 時 において も アマロ が 乙 の 著 名 な 略 称 であり 法 4 条 1 項 8 号 に 該 当 する 場 合 には(4 条 3 項 ) 甲 の 登 録 商 標 は 本 号 違 反 の 無 効 理 由 を 有 するといえる また 本 問 では 法 4 条 1 項 15 号 の 無 効 理 由 が 考 えられる(46 条 1 項 1 号 ) 甲 の 出 願 に 係 る 商 標 スーパーアマロ の 指 定 商 品 化 粧 品 と 乙 が 標 章 AMALO を 使 用 する 商 品 サプリメント とは 非 類 似 である しかしながら 乙 が 使 用 する 標 章 は 平 成 18 年 1 月 頃 にはすでに 著 名 となっていたので 甲 の 出 願 時 ( 平 成 22 年 1 月 10 日 ) 及 び 査 定 時 において(4 条 3 項 ) 甲 の 商 標 スーパーアマロ が 乙 の 業 務 にかかる 商 品 と 混 同 を 生 ずるおそれがあった 場 合 には 法 4 条 1 項 15 号 の 無 効 理 由 を 有 する また 本 問 では 法 4 条 1 項 19 号 の 無 効 理 由 が 考 えられる(46 条 1 項 1 号 ) 乙 の 業 務 に 係 る 商 品 と 混 同 を 生 じない 場 合 であっても 乙 の 使 用 する 標 章 は 甲 の 出 願 時 及 び 査 定 時 において(4 条 3 項 )すでに 著 名 であったので 甲 に 不 正 の 目 的 があった 場 合 には <TAC/ 弁 理 士 講 座 > -6-
法 4 条 1 項 19 号 の 無 効 理 由 を 有 するものと 解 する なお 法 4 条 1 項 8 号 15 号 においては 除 斥 期 間 (47 条 )の 適 用 があるが 15 号 に おいては 不 正 の 目 的 で 登 録 を 受 けていた 場 合 には 除 斥 期 間 の 適 用 はなく 19 号 におい ては 除 斥 期 間 の 適 用 はなく(47 条 ) 商 標 登 録 ( 平 成 22 年 7 月 10 日 )から5 年 を 経 過 していても 無 効 審 判 を 請 求 することができる また 乙 は 利 害 関 係 人 であるため 無 効 審 判 を 請 求 することができる (3) 不 使 用 取 消 審 判 (50 条 ) 本 審 判 は 何 人 も 請 求 することができる(50 条 1 項 ) 題 意 より 甲 は 商 標 登 録 後 継 続 して3 年 以 上 指 定 商 品 化 粧 品 について 登 録 商 標 スーパーアマロ を 使 用 していない( 同 項 ) したがって 乙 は 指 定 商 品 化 粧 品 に 係 る 商 標 登 録 について 不 使 用 取 消 審 判 を 請 求 できる( 同 項 ) なお 本 問 では かか る 不 使 用 につき 甲 に 正 当 な 理 由 はないと 解 されるので(50 条 2 項 ただし 書 ) 甲 は 指 定 商 品 化 粧 品 に 係 る 商 標 登 録 の 取 消 しを 免 れないもとの 解 される(50 条 2 項 ) (4) 不 正 使 用 取 消 審 判 (51 条 ) 本 審 判 は 何 人 も 請 求 することができる(51 条 1 項 ) 甲 は 指 定 商 品 化 粧 品 に 含 まれる 香 水 について 登 録 商 標 スーパーアマロ に 類 似 する 商 標 アマロ を 使 用 している したがって 甲 が 故 意 にかかる 使 用 を 行 っており 乙 の 業 務 に 係 る 商 品 若 しくは 役 務 と 混 同 を 生 じさせているときは( 同 項 ) 不 正 使 用 取 消 審 判 を 請 求 することができる なお 現 時 点 でも 甲 はかかる 使 用 をしてい るので 除 斥 期 間 (52 条 )の 適 用 はない 以 上 -7- <TAC/ 弁 理 士 講 座 >