第 1 章 調 査 検 討 の 概 要 1.1 調 査 検 討 の 目 的 容 量 1 万 キロリットル 以 上 の 液 体 の 危 険 物 を 貯 蔵 する 屋 外 タンク 貯 蔵 所 については 消 防 法 の 規 定 により 周 期 8 年 ( 保 安 のための 措 置 がとられたものは 10 年 又 は 13 年 )ごとに 市 町 村 長 等 による 保 安 検 査 を 受 けることとされているが 平 成 21 年 11 月 27 日 に 行 われた 行 政 刷 新 会 議 による 国 家 備 蓄 石 油 管 理 等 委 託 費 の 事 業 仕 分 けにおいて 消 防 法 におけるタ ンク 検 査 間 隔 について 安 全 性 は 十 分 に 検 証 しながら 規 制 緩 和 の 可 能 性 を 探 ることが 求 めら れた このような 状 況 を 踏 まえ 屋 外 タンク 貯 蔵 所 の 保 安 検 査 の 周 期 に 係 る 調 査 検 討 を 行 う ために 屋 外 タンク 貯 蔵 所 の 保 安 検 査 の 周 期 に 係 る 調 査 検 討 会 を 設 置 する 1.2 調 査 検 討 事 項 1.2.1 基 本 検 査 周 期 を 延 長 した 場 合 の 安 全 性 の 評 価 基 本 検 査 周 期 を 延 長 した 場 合 の 安 全 性 の 評 価 について 事 故 の 発 生 状 況 要 因 分 析 腐 食 の 進 行 による 流 出 事 故 発 生 の 可 能 性 耐 震 性 の 低 下 等 の 検 討 を 実 施 する なお 国 家 備 蓄 石 油 基 地 の 屋 外 タンク 貯 蔵 所 は 全 て 屋 外 タンク 貯 蔵 所 に 係 る 詳 細 な 技 術 基 準 が 規 定 さ れた 昭 和 52 年 以 降 に 設 置 されたものである 昭 和 52 年 以 降 に 設 置 された 屋 外 タンク 貯 蔵 所 はそれ 以 前 に 設 置 されたものとは 安 全 性 が 異 なる そのため 周 期 延 長 によって 生 じる 影 響 も 異 なり 同 一 に 扱 うことは 技 術 的 に 適 当 ではなく 本 検 討 項 目 は 昭 和 52 年 以 降 に 設 置 された 屋 外 タンク 貯 蔵 所 を 対 象 として 行 う 昭 和 52 年 以 降 設 置 の 屋 外 タンク 貯 蔵 所 保 安 検 査 8 年 基 本 開 放 周 期 を 延 長 し た 場 合 安 全 性 は? 1.2.2 検 査 周 期 のあり 方 従 来 屋 外 タンク 貯 蔵 所 のタンク 本 体 ( 以 下 タンク という )の 底 部 については 超 音 波 厚 さ 計 を 用 いた 定 点 測 定 法 ( 定 点 測 定 法 による 測 定 例 を 図 1.2.1 に 示 す )による 板 厚 管 理 が 一 般 的 であったが 最 近 では 底 部 の 板 厚 を 連 続 的 に 効 率 よく 測 定 する 機 器 を 使 用 し た 板 厚 管 理 も 実 施 されるようになってきた これを 受 け 連 続 板 厚 測 定 法 ( 連 続 測 定 法 に よる 測 定 例 を 図 1.2.2 に 示 す )の 活 用 などにより 安 全 性 を 低 下 させずに 特 定 屋 外 タンク 貯 蔵 所 個 々に 保 安 検 査 周 期 を 決 定 することが 可 能 かの 検 討 をする なお 2.6.3 で 述 べる 通 りタンクの 主 な 劣 化 機 構 は 腐 食 による 板 厚 の 減 少 溶 接 部 の 劣 化 及 び 基 礎 の 不 等 沈 下 であるが 連 続 板 厚 測 定 法 で 健 全 性 を 確 認 できるのは 底 部 の 板 厚 の 減 少 による 劣 化 機 構 のみであり その 他 の 劣 化 機 構 については 確 認 ができない 一 方 昭 和 52 年 以 前 に 設 置 された 屋 外 タンク 貯 蔵 所 には タンクの 溶 接 部 の 信 頼 性 が 劣 るものがあ ること 及 びタンクの 基 礎 の 堅 固 さについて 具 体 的 な 基 準 がなく 建 設 されていることから 板 厚 の 減 少 による 劣 化 機 構 のみで 安 全 性 を 検 討 することができない 以 上 のことから 連 続 1-1
板 厚 測 定 法 の 活 用 によって 周 期 を 検 討 できるのは 昭 和 52 年 以 降 に 設 置 された 屋 外 タンク 貯 蔵 所 ( 及 びそれと 同 等 以 上 の 性 能 を 有 するもの)であり 本 検 討 項 目 はこれらの 屋 外 タ ンク 貯 蔵 所 を 対 象 として 行 う 昭 和 52 年 消 防 危 第 56 号 に 基 づく 測 定 方 法 側 板 側 板 底 板 アニュラ 板 の 板 厚 測 定 箇 所 側 板 内 面 から 500mm 板 1 枚 当 たり3 以 上 の 箇 所 アニュラ 板 底 板 の 板 厚 測 定 箇 所 側 板 内 面 から 500mm 水 抜 きノズル 底 部 平 面 図 通 常 の 板 厚 測 定 箇 所 (2m 以 下 の 間 隔 で 千 鳥 ) 300mm 間 隔 水 抜 きノズル 300mm 間 隔 水 抜 き 付 近 等 の 板 厚 測 定 箇 所 図 1.2.1 タンクの 底 部 板 厚 の 定 点 測 定 の 例 測 定 状 況 測 定 結 果 青 色 分 は 元 板 厚 の 90% 以 上 の 板 厚 の 領 域 緑 色 は 80~90% 黄 色 は 70~80% 赤 色 は 70% 以 下 の 領 域 図 1.2.2 タンクの 底 部 全 面 を 連 続 板 厚 測 定 した 例 1.2.3 内 面 保 護 コーティングの 耐 用 年 数 容 量 1 万 キロリットル 以 上 の 液 体 の 危 険 物 を 貯 蔵 する 屋 外 タンク 貯 蔵 所 に 対 する 保 安 検 査 の 最 長 の 周 期 は 13 年 であり 保 安 のための 措 置 として 内 面 コーティングが 要 件 の1つとな っている この 内 面 コーティングの 耐 用 年 数 については 20 年 とされている( コーティン グ 指 針 : 平 成 6 年 9 月 1 日 付 け 消 防 危 第 74 号 ) 近 年 この 年 数 を 超 えて 使 用 され 健 全 であ るものの 実 績 などデータも 蓄 積 されてきており 安 全 性 を 低 下 させずに コーティングの 耐 用 年 数 を 延 長 することが 可 能 かの 検 討 を 行 う 耐 用 年 数 が 延 長 できた 場 合 のコーティン 1-2
グの 張 り 替 え 時 期 のイメージを 図 1.2.3 に 示 す 図 1.2.3 コーティングの 塗 り 替 え 時 期 のイメージ 本 検 討 会 で 使 用 する 略 語 は 以 下 のとおり 消 防 法 ( 昭 和 23 年 法 律 第 186 号 ) 法 危 険 物 の 規 制 に 関 する 政 令 ( 昭 和 34 年 政 令 第 306 号 ) 政 令 危 険 物 の 規 制 に 関 する 規 則 ( 昭 和 34 年 総 理 府 令 第 55 号 ) 規 則 危 険 物 の 規 制 に 関 する 技 術 上 の 基 準 の 細 目 を 定 める 告 示 ( 昭 和 49 年 自 治 省 告 示 第 99 号 ) 告 示 屋 外 タンク 貯 蔵 所 のタンク 本 体 タンク 危 険 物 の 規 制 に 関 する 政 令 及 び 消 防 法 施 行 令 の 一 部 を 改 正 する 政 令 ( 昭 和 52 年 政 令 第 10 号 )の 施 行 後 に 設 置 許 可 の 申 請 がなされた 特 定 屋 外 タンク 貯 蔵 所 新 法 タンク 危 険 物 の 規 制 に 関 する 政 令 及 び 消 防 法 施 行 令 の 一 部 を 改 正 する 政 令 ( 昭 和 52 年 政 令 第 10 号 )の 施 行 の 際 現 に 法 第 11 条 第 1 項 前 段 の 規 定 による 設 置 に 係 る 許 可 を 受 け 又 は 当 該 許 可 の 申 請 がされていた 特 定 屋 外 タンク 貯 蔵 所 で その 構 造 及 び 設 備 が 政 令 第 11 条 第 1 項 第 3 号 の2 又 は 第 4 号 に 定 める 技 術 上 の 基 準 に 適 合 していなかったもの 旧 法 タンク 旧 法 タンクのうち その 構 造 及 び 設 備 が 昭 和 52 年 政 令 第 10 号 附 則 第 3 項 各 号 に 定 める 技 術 基 準 に 適 合 していないもの 旧 法 旧 基 準 タンク 旧 法 タンクのうち その 構 造 及 び 設 備 が 昭 和 52 年 政 令 第 10 号 附 則 第 3 項 各 号 に 定 める 技 術 基 準 に 適 合 しているもの 旧 法 新 基 準 タンク 旧 法 タンクのうち その 構 造 及 び 設 備 が 平 成 6 年 政 令 第 214 号 附 則 第 3 項 第 1 号 の 総 務 省 令 で 定 める 技 術 基 準 に 適 合 しているもの 旧 法 第 一 段 階 基 準 タンク 1-3
1.3 調 査 検 討 体 制 屋 外 タンク 貯 蔵 所 の 保 安 検 査 の 周 期 に 係 る 調 査 検 討 会 ( 五 十 音 順 敬 称 略 ) 座 長 亀 井 浅 道 元 横 浜 国 立 大 学 安 心 安 全 の 科 学 研 究 教 育 センター 特 任 教 授 委 員 大 塚 尚 武 龍 谷 大 学 機 械 システム 工 学 科 教 授 岡 崎 慎 司 横 浜 国 立 大 学 大 学 院 工 学 研 究 院 機 能 の 創 生 部 門 准 教 授 黒 瀬 俊 明 損 保 ジャパン リスクマネジメント リスクエンジニアリング 部 長 次 郎 丸 誠 男 元 消 防 研 究 所 所 長 土 田 智 彦 独 立 行 政 法 人 石 油 天 然 ガス 金 属 鉱 物 資 源 機 構 石 油 備 蓄 部 企 画 課 調 査 役 峯 昌 紀 石 油 連 盟 設 備 管 理 専 門 委 員 会 委 員 長 ( 新 日 本 石 油 株 式 会 社 工 務 部 副 部 長 ) 宮 村 鐵 夫 中 央 大 学 理 工 学 部 経 営 システム 工 学 科 教 授 森 新 一 全 国 消 防 長 会 危 険 物 委 員 会 ( 川 崎 市 消 防 局 予 防 部 危 険 物 課 長 ) 山 田 實 消 防 研 究 センター 技 術 研 究 部 長 屋 外 貯 蔵 タンクの 内 面 コーティングの 耐 用 年 数 に 関 するワーキンググループ ( 五 十 音 順 敬 称 略 ) 主 査 山 田 實 総 務 省 消 防 庁 消 防 大 学 校 消 防 研 究 センター 技 術 研 究 部 長 委 員 岡 崎 慎 司 横 浜 国 立 大 学 大 学 院 工 学 研 究 院 機 能 の 創 生 部 門 准 教 授 小 川 進 財 団 法 人 日 本 塗 料 検 査 協 会 東 支 部 支 部 長 木 村 保 久 社 団 法 人 日 本 高 圧 力 技 術 協 会 黒 澤 賢 二 社 団 法 人 日 本 塗 料 工 業 会 土 田 智 彦 独 立 行 政 法 人 石 油 天 然 ガス 金 属 鉱 物 資 源 機 構 石 油 備 蓄 部 企 画 課 調 査 役 堀 井 完 一 社 団 法 人 日 本 産 業 機 械 工 業 会 山 本 洋 石 油 連 盟 横 山 明 往 樹 脂 ライニング 工 業 会 理 事 常 任 顧 問 1-4
1.4 調 査 検 討 経 過 検 討 の 経 過 は 以 下 のとおりである (1) 屋 外 タンク 貯 蔵 所 の 保 安 検 査 の 周 期 に 係 る 調 査 検 討 会 第 1 回 検 討 会 平 成 22 年 4 月 23 日 第 2 回 検 討 会 平 成 22 年 6 月 24 日 第 3 回 検 討 会 平 成 22 年 8 月 23 日 第 4 回 検 討 会 平 成 22 年 10 月 22 日 (2) 屋 外 貯 蔵 タンクの 内 面 コーティングの 耐 用 年 数 に 関 するワーキンググループ 第 1 回 検 討 会 平 成 22 年 5 月 18 日 第 2 回 検 討 会 平 成 22 年 7 月 30 日 1-5
1.5 調 査 検 討 事 項 に 対 する 検 討 概 要 (1) 屋 外 タンク 貯 蔵 所 の 現 況 事 故 の 発 生 状 況 や 危 険 物 流 出 事 故 が 発 生 した 場 合 の 影 響 海 外 の 開 放 検 査 の 状 況 などについて 情 報 を 収 集 整 理 した また 事 故 の 要 因 劣 化 機 構 を 明 らかにするため 検 査 時 の 点 検 や 補 修 状 況 過 去 に 発 生 した 事 故 の 原 因 報 告 の 分 析 腐 食 の 発 生 状 況 などについてデータを 収 集 分 析 した その 結 果 腐 食 を 受 けた 底 部 の 板 では 腐 食 深 さを 測 定 せずに 取 り 除 かれてしまう 場 合 が 一 定 数 あることやデー タ 測 定 密 度 や 頻 度 の 制 約 から 不 確 実 性 は 残 るものの タンクの 底 部 の 板 の 腐 食 速 度 や その 変 化 の 程 度 などについて 一 定 の 知 見 を 得 た( 第 2 章 ) (2) 保 安 検 査 の 基 本 検 査 周 期 を 延 長 した 場 合 に 安 全 性 がどの 程 度 低 下 する 危 険 性 がある のかについて 過 去 の 検 査 時 のデータを 用 い タンクの 劣 化 機 構 について 一 定 の 仮 定 をおいたうえで 仮 に 検 査 周 期 を 延 長 した 場 合 に 劣 化 要 因 ごとにどのような 影 響 が 生 じるかを 推 定 し 基 本 検 査 周 期 延 長 によってどの 程 度 事 故 のおそれが 増 えるのかに ついて 定 量 的 に 評 価 した( 第 3 章 ) (3) 関 係 者 の 導 入 要 望 の 高 いタンク 底 部 板 に 対 する 連 続 板 厚 測 定 法 を 活 用 した 場 合 に どの 程 度 詳 細 な 分 析 が 可 能 であるか 評 価 した また 安 全 性 を 低 下 させずに 検 査 周 期 を 延 ばすために 必 要 な 腐 食 速 度 の 測 定 や 推 定 に 含 まれる 不 確 実 性 などについて 評 価 し 連 続 板 厚 測 定 法 を 実 施 した 場 合 に 安 全 性 を 損 なわずに 検 査 周 期 を 延 長 できるか 検 討 し た 結 果 連 続 板 厚 測 定 法 によりタンク 底 部 の 板 の 腐 食 状 況 を 測 定 した 際 の 裏 面 腐 食 速 度 が 一 定 以 下 であること 一 定 の 条 件 を 満 たすコーティングが 施 工 されていること 又 は 腐 食 性 のない 内 容 物 で 内 面 腐 食 速 度 が 非 常 に 小 さいこと 等 の 要 件 を 満 たすタンク にあっては 検 査 周 期 を 一 定 年 数 まで 延 長 することを 可 能 とすることを 提 案 する( 第 4 章 ) (4)コーティングの 耐 用 年 数 に 関 しては 温 度 差 浸 漬 試 験 現 地 調 査 及 びコーティング の 補 修 履 歴 データの 収 集 分 析 を 行 っており 最 終 報 告 書 において 検 討 結 果 を 報 告 す る 予 定 である 1-6