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2 / 13 1. 総 論 ( 制 度 全 般 について) Q1: 企 業 破 綻 手 続 にも 色 々とあるようだが 主 要 な 手 続 としてはどのようなものがあるのか? A1: 主 な 手 続 としては 清 算 型 の 破 産 手 続 と 再 建 型 の 民 事 再 生 手 続 会 社 更 生 手 続 がある 一 口 に 破 綻 手 続 といっても 様 々なものがある 大 きく 分 けて その 企 業 を 清 算 解 体 してしまう 清 算 型 の 手 続 と その 企 業 の 再 建 を 目 指 す 再 建 型 の 手 続 がある 裁 判 所 が 関 与 する 法 的 な 破 綻 手 続 のうち 清 算 型 に 分 類 されるものとしては 次 の 手 続 がある 破 産 手 続 ( 破 産 法 ) 特 別 清 算 手 続 ( 会 社 法 ) このうち 上 場 会 社 の 破 綻 のケースとして 一 般 に 目 にする 機 会 が 多 いのは 破 産 手 続 であろう 特 別 清 算 手 続 は 清 算 株 式 会 社 つまり 株 主 総 会 決 議 などによって 会 社 の 解 散 を 決 議 した 株 式 会 社 が 対 象 である( 会 社 法 477 条 ) そのため 株 主 が 分 散 している 上 場 会 社 の 破 綻 処 理 には 利 用 しづらい 手 続 と 考 えられる 裁 判 所 が 関 与 する 法 的 な 破 綻 手 続 のうち 再 建 型 に 分 類 されるものとしては 次 の 手 続 がある 民 事 再 生 手 続 ( 民 事 再 生 法 ) 会 社 更 生 手 続 ( 会 社 更 生 法 ) その 他 法 的 な 破 綻 手 続 には 該 当 しないが 当 事 者 の 合 意 に 基 づく 私 的 整 理 や 裁 判 所 が 関 与 する 特 定 調 停 第 三 者 機 関 が 行 う ADR( 裁 判 外 紛 争 解 決 手 続 ) 1 なども 広 い 意 味 での 再 建 型 の 破 綻 手 続 の 一 種 と 呼 べるだろう なお 再 建 型 の 手 続 に 入 ったからといって 必 ずその 会 社 が 再 建 できるとは 限 らない 例 えば 法 的 な 再 建 型 の 破 綻 手 続 である 民 事 再 生 手 続 や 会 社 更 生 手 続 では 原 則 再 生 計 画 案 や 更 生 計 画 案 などに 対 して 債 権 者 等 の 多 数 決 による 承 認 が 必 要 である また 私 的 整 理 などで は 原 則 債 権 者 全 員 との 合 意 が 前 提 となる 再 建 型 の 手 続 に 入 ったものの 再 建 案 に 対 する 債 権 者 等 の 承 認 合 意 を 得 ることができず 結 局 再 建 を 断 念 して 清 算 型 の 破 産 手 続 に 移 行 せざるを 得 なくなるといった 事 態 も 生 じ 得 るのである 1 具 体 的 には 事 業 再 生 実 務 家 協 会 による 事 業 再 生 ADR が 挙 げられる 事 業 再 生 実 務 家 協 会 事 業 再 生 ADR 委 員 会 事 業 再 生 ADR の 実 践 ( 商 事 法 務 2009 年 )など 参 照

3 / 13 Q2: 民 事 再 生 手 続 と 会 社 更 生 手 続 は どちらも 会 社 の 再 建 を 目 指 す 手 続 とのことだが 両 者 はどこ が 違 うのか? A2: 適 用 対 象 手 続 開 始 後 の 経 営 権 担 保 権 の 取 扱 いなどに 違 いがある 大 まかに 言 えば 民 事 再 生 手 続 は 相 対 的 に 柔 軟 性 迅 速 性 は 高 いが 効 力 が 限 られる 手 続 だと 言 えよう 一 方 会 社 更 生 手 続 は 相 対 的 に 厳 格 だが 強 い 効 力 をもつ 手 続 ということができるだろ う 両 者 の 主 な 相 違 点 は 次 の 図 表 のように 整 理 できるだろう 図 表 民 事 再 生 手 続 と 会 社 更 生 手 続 の 主 な 相 違 点 民 事 再 生 手 続 会 社 更 生 手 続 適 用 対 象 限 定 なし( 注 1) 株 式 会 社 のみ 手 続 開 始 後 の 経 営 権 実 務 上 原 則 現 経 営 陣 が 継 続 (いわゆるDIP) 更 生 管 財 人 (なお Q3 参 照 ) 担 保 権 原 則 実 行 可 能 ( 別 除 権 ) 原 則 実 行 不 可 計 画 案 の 承 認 原 則 下 記 の 手 続 が 必 要 再 生 債 権 者 の 承 認 ( 注 2) + 裁 判 所 の 認 可 原 則 下 記 の 手 続 が 必 要 ( 注 3) 更 生 債 権 者 の 承 認 ( 注 4) + 更 生 担 保 権 者 の 承 認 ( 注 5) + 株 主 の 承 認 ( 注 6) + 裁 判 所 の 認 可 再 建 のための 会 社 分 割 合 併 別 途 会 社 法 に 基 づく 手 続 が 必 要 更 生 計 画 によって 実 施 可 能 等 の 手 続 手 続 申 立 から 計 画 認 可 まで の 期 間 実 務 上 5ヶ 月 程 度 ( 注 7) 実 務 上 1 年 程 度 ( 注 7) (なお Q3 参 照 ) 弁 済 期 限 原 則 10 年 以 内 原 則 15 年 以 内 ( 注 8) ( 出 所 ) 各 種 資 料 に 基 づき 大 和 総 研 資 本 市 場 調 査 部 制 度 調 査 課 作 成 ( 注 1) 個 人 による 利 用 も 可 能 ( 注 2) 議 決 権 を 行 使 した 議 決 権 者 の 過 半 数 かつ 議 決 権 者 の 議 決 権 の 総 額 の1/2 以 上 の 同 意 ( 民 事 再 生 法 172 条 の3 第 1 項 ) ( 注 3) 承 認 決 議 のための 組 分 けは 更 に 細 分 化 される 場 合 もある ( 注 4) 議 決 権 を 行 使 することができる 更 生 債 権 者 の 議 決 権 の 総 額 の1/2 超 の 同 意 ( 会 社 更 生 法 196 条 5 項 1 号 ) ( 注 5) 議 決 権 を 行 使 することができる 更 生 担 保 権 者 の 議 決 権 の 総 額 の3/4( 期 限 の 猶 予 の 定 めの 場 合 は 2/3) 以 上 の 同 意 ( 会 社 更 生 法 196 条 5 項 2 号 ) ( 注 6) 議 決 権 を 行 使 することができる 株 主 の 議 決 権 の 総 数 の 過 半 数 の 同 意 ( 会 社 更 生 法 196 条 5 項 3 号 ) ただし 債 務 超 過 の 場 合 に は 株 主 の 承 認 は 事 実 上 不 要 とされている( 会 社 更 生 法 166 条 2 項 ) Q8 参 照 ( 注 7) 西 謙 二 中 山 孝 雄 東 京 地 裁 破 産 再 生 実 務 研 究 会 破 産 民 事 再 生 の 実 務 新 版 下 ( 金 融 財 政 事 情 研 究 会 2008 年 )pp.6-7 による ( 注 8) 特 別 の 事 情 がある 場 合 は 20 年 以 内 とされている( 会 社 更 生 法 168 条 5 項 ) 適 用 対 象 が 会 社 更 生 法 は 株 式 会 社 民 事 再 生 法 は 限 定 なし となっていることから 当 初 は 民 事 再 生 手 続 は 中 小 企 業 向 け 会 社 更 生 手 続 は 大 企 業 向 けと 考 えられていたようだ 2 しかし 実 際 2 西 謙 二 中 山 孝 雄 東 京 地 裁 破 産 再 生 実 務 研 究 会 破 産 民 事 再 生 の 実 務 新 版 下 ( 金 融 財 政 事 情 研 究 会 2008 年 ) pp.4-5 参 照

4 / 13 には 大 企 業 による 民 事 再 生 手 続 の 利 用 実 績 もあり 3 現 在 では 適 用 対 象 は 必 ずしも 両 者 の 本 質 的 な 相 違 点 ではなくなっていると 考 えられる 仮 に 上 場 会 社 が 破 綻 した 場 合 どちらの 手 続 を 選 択 するかについて 明 確 な 基 準 というものは 存 在 しない ただ 一 般 的 には 比 較 的 キズ が 浅 い あるいは 大 口 債 権 者 の 同 意 が 取 り 付 けられ れば 再 建 が 可 能 だと 判 断 されるような 場 合 には 民 事 再 生 手 続 比 較 的 キズ が 深 い あるいは 債 権 者 ( 特 に 担 保 権 者 )の 権 利 関 係 が 複 雑 な 場 合 には 会 社 更 生 手 続 が 選 択 されると 受 け 止 められてい るように 思 われる Q3: DIP 型 会 社 更 生 手 続 とは 何 か? A3: 例 外 的 に 現 経 営 陣 による 経 営 の 継 続 を 認 める 会 社 更 生 手 続 である 会 社 更 生 法 の 2002 年 改 正 (2003 年 4 月 1 日 施 行 )により 現 経 営 陣 であっても 違 法 な 経 営 責 任 の ない 取 締 役 等 については その 者 を 管 財 人 に 選 任 することで 経 営 を 継 続 させることが 可 能 である 旨 が 明 らかにされた 4 ( 会 社 更 生 法 67 条 3 項 など) ところが 実 務 では 当 初 更 生 手 続 を 開 始 する 以 上 は 経 営 陣 の 総 取 替 えが 行 われてきた 5 と いう 運 用 がなされていた そのため 会 社 更 生 手 続 では 現 経 営 陣 が 経 営 を 継 続 すること(DIP= Debtor In Possession)は 認 められないという 理 解 が 一 般 的 であった この 問 題 について 2008 年 12 月 会 社 更 生 手 続 を 担 当 する 東 京 地 方 裁 判 所 民 事 第 8 部 の 裁 判 官 ( 当 時 )が 次 の4 要 件 を 満 たせば 更 生 手 続 開 始 後 も 現 経 営 陣 から 管 財 人 を 選 任 して 経 営 をゆだね て 事 業 を 再 建 させることが 相 当 との 見 解 を 示 した 6 1 現 経 営 陣 に 不 正 行 為 等 の 違 法 な 経 営 責 任 の 問 題 がない 2 主 要 債 権 者 が 現 経 営 陣 の 経 営 関 与 に 反 対 していない 3スポンサーとなるべき 者 がいる 場 合 はその 了 解 がある 4 現 経 営 陣 の 経 営 関 与 によって 会 社 更 生 手 続 の 適 正 な 遂 行 が 損 なわれるような 事 情 が 認 められない こうした 方 針 が 示 されたことで 現 経 営 陣 が 経 営 を 継 続 するタイプの 会 社 更 生 手 続 いわゆる D IP 型 会 社 更 生 手 続 が 可 能 になったと 評 価 されている 3 例 えば 民 事 再 生 手 続 を 理 由 に 上 場 廃 止 になった 東 証 上 場 会 社 は 2008 年 は 11 社 2009 年 は4 社 2010 年 と 2011 年 は 各 々 1 社 確 認 される 他 方 会 社 更 生 手 続 を 理 由 に 上 場 廃 止 になった 東 証 上 場 会 社 は 2008 年 は2 社 2009 年 は6 社 2010 年 は2 社 2011 年 は0 社 であった 4 旧 法 下 でも 解 釈 上 経 営 責 任 のない 取 締 役 等 であれば 管 財 人 に 選 任 できるというのが 通 説 的 見 解 であったとされている 深 山 卓 也 菅 家 忠 行 高 山 崇 彦 村 松 秀 樹 新 しい 会 社 更 生 法 ( 金 融 財 政 事 情 研 究 会 2003 年 )p.60 など 5 難 波 孝 一 渡 部 勇 次 鈴 木 謙 也 徳 岡 治 会 社 更 生 事 件 の 最 近 の 実 情 と 今 後 の 新 たな 展 開 NBL No.895(2008 年 12 月 15 日 号 )p.13 6 難 波 孝 一 渡 部 勇 次 鈴 木 謙 也 徳 岡 治 会 社 更 生 事 件 の 最 近 の 実 情 と 今 後 の 新 たな 展 開 NBL No.895(2008 年 12 月 15 日 号 )pp.15-16

5 / 13 また 外 部 から 選 任 された 管 財 人 が 白 紙 からスタートする 7 従 来 型 の 会 社 更 生 手 続 と 異 なり 現 経 営 陣 による 経 営 が 継 続 する DIP 型 会 社 更 生 手 続 の 場 合 手 続 の 迅 速 化 も 可 能 といわれてい る 具 体 的 には 会 社 更 生 手 続 の 申 立 から 更 生 計 画 認 可 まで 約 6ヶ 月 強 と 民 事 再 生 手 続 並 み ( 通 常 5カ 月 8 )の 期 間 で 進 行 可 能 とされているようだ 9 これを 受 けて 実 際 に 2009 年 以 降 DIP 型 会 社 更 生 手 続 の 申 立 を 行 った 会 社 もいくつか 確 認 できる 特 に 担 保 権 を 実 行 されると 事 業 の 継 続 が 困 難 となるようなケース( 例 えば 不 動 産 関 連 会 社 が 土 地 等 を 担 保 に 提 供 している 場 合 など)などには 担 保 権 の 実 行 を 拘 束 できる 会 社 更 生 手 続 に 対 する 潜 在 的 なニーズは 高 いものと 考 えられる もっとも DIP 型 会 社 更 生 手 続 は 無 条 件 に 認 められるものではなく(Q4 参 照 ) 申 立 を 行 ったからといって 必 ずしも 現 経 営 陣 の 続 投 が 承 認 される 訳 ではない Q4: DIP 型 会 社 更 生 手 続 や 民 事 再 生 手 続 といった 経 営 陣 が 交 代 しないスキームは 企 業 が 破 綻 しても 経 営 陣 が 居 座 り 続 けて 経 営 責 任 を 取 らず モラル ハザードを 招 くのではないか? A4: DIP 型 会 社 更 生 手 続 は 無 条 件 で 認 められる 訳 ではない 民 事 再 生 手 続 でも 実 質 的 に 経 営 者 が 交 替 させられるケースもある 破 綻 後 も 現 経 営 陣 による 経 営 継 続 (DIP)が 認 められれば いわゆるモラル ハザードを 惹 き 起 こすのではないか との 懸 念 が 表 明 されることがある 確 かに こうした 懸 念 は もっともなこと だと 筆 者 も 考 える しかし DIP 型 会 社 更 生 手 続 が 認 められるためには 現 経 営 陣 に 不 正 行 為 等 の 違 法 な 経 営 責 任 の 問 題 がないなど 一 定 の 要 件 が 課 されることとなる(Q3 参 照 ) つまり 無 条 件 で 現 経 営 陣 の 経 営 継 続 が 認 められる 訳 ではない また 民 事 再 生 手 続 についても 原 則 現 経 営 陣 が 経 営 を 継 続 するというのが 実 務 上 の 対 応 だと されている しかし 法 律 上 は 必 要 に 応 じて 裁 判 所 が 管 財 人 を 選 任 して 現 経 営 陣 から 経 営 権 を 奪 うことも 認 められている( 民 事 再 生 法 64 条 など) 加 えて 民 事 再 生 手 続 では 裁 判 所 が 直 接 管 財 人 を 選 任 しなくても 破 綻 企 業 自 身 の 自 主 的 な 努 力 新 たなスポンサーや 債 権 者 の 意 向 などを 背 景 に 経 営 者 の 交 替 が 行 われる 事 件 が 相 当 数 ある 10 と も 指 摘 されている 7 多 比 羅 誠 須 藤 英 章 瀬 戸 英 雄 会 社 更 生 事 件 の 最 近 の 実 情 と 今 後 の 新 たな 展 開 に 対 する 検 討 NBL No.895(2008 年 12 月 15 日 号 )p.31 なお 従 来 型 の 会 社 更 生 手 続 は 開 始 決 定 から 更 生 計 画 案 の 提 出 までの 期 間 は 約 10 ヶ 月 更 生 計 画 認 可 までは 約 1 年 と 言 われている 8 西 謙 二 中 山 孝 雄 東 京 地 裁 破 産 再 生 実 務 研 究 会 破 産 民 事 再 生 の 実 務 新 版 下 ( 金 融 財 政 事 情 研 究 会 2008 年 ) pp.6-7 9 難 波 孝 一 渡 部 勇 次 鈴 木 謙 也 徳 岡 治 会 社 更 生 事 件 の 最 近 の 実 情 と 今 後 の 新 たな 展 開 NBL No.895(2008 年 12 月 15 日 号 )p.19 24 10 西 謙 二 中 山 孝 雄 東 京 地 裁 破 産 再 生 実 務 研 究 会 破 産 民 事 再 生 の 実 務 新 版 下 ( 金 融 財 政 事 情 研 究 会 2008 年 ) pp.184-185

6 / 13 いずれにせよ 破 綻 企 業 の 現 経 営 陣 の 続 投 による 企 業 再 建 を 許 容 するのは あくまでも 違 法 な 経 営 責 任 がなく 経 営 に 対 する 意 欲 と 能 力 を 有 し 債 権 者 など 関 係 者 の 信 頼 が 得 られることを 前 提 に その 企 業 を 熟 知 した 現 経 営 陣 に 経 営 を 委 ねた 方 が 迅 速 な 企 業 再 建 が 期 待 できるとの 考 え 方 によるものだといえよう 11 少 なくとも DIP は 不 正 野 放 図 な 経 営 の 結 果 債 権 者 や 株 主 などに 多 大 な 迷 惑 をかけた 経 営 者 が その 地 位 に 居 座 り 続 けるようなモラル ハザードを 許 容 する 趣 旨 ではないと 考 えられる 2. 債 権 者 と 会 社 更 生 手 続 民 事 再 生 手 続 Q5: 社 債 権 者 は 会 社 更 生 手 続 民 事 再 生 手 続 にどのように 参 加 できるのか? A5: 社 債 に 社 債 管 理 者 が 設 置 されている 場 合 通 常 その 社 債 管 理 者 が 債 権 の 届 出 を 行 うことで 社 債 権 者 は 手 続 に 参 加 できるものと 考 えられる 社 債 に 社 債 管 理 者 が 設 置 されていない 場 合 社 債 権 者 は 自 ら 債 権 の 届 出 を 行 う 必 要 がある 債 権 者 が 会 社 更 生 手 続 民 事 再 生 手 続 に 参 加 して 弁 済 を 受 けるためには その 有 する 債 権 を 所 定 の 期 間 内 に 裁 判 所 に 届 け 出 なければならない( 会 社 更 生 法 138 条 民 事 再 生 法 94 条 ) 社 債 についての 債 権 の 届 出 は その 社 債 に 社 債 管 理 者 が 設 置 されているか 設 置 されていないかに よって 対 応 が 異 なっている なお ここでは 無 担 保 社 債 を 念 頭 において 説 明 する (1) 社 債 管 理 者 が 設 置 されている 場 合 社 債 に 社 債 管 理 者 が 設 置 されている 場 合 (いわゆる 社 債 管 理 者 設 置 債 ) 会 社 法 上 社 債 管 理 者 に は 社 債 に 係 る 債 権 の 実 現 を 保 全 するために 必 要 な 一 切 の 裁 判 上 又 は 裁 判 外 の 行 為 をする 権 限 を 有 する ( 会 社 法 705 条 1 項 )と 定 められている そのため 通 常 社 債 管 理 者 が 全 社 債 権 者 のために 債 権 の 届 出 を 行 うことで 社 債 権 者 は 個 別 の 届 出 なしに 手 続 に 参 加 でき 更 生 債 権 再 生 債 権 として 更 生 計 画 再 生 計 画 に 基 づいた 弁 済 を 受 けることができるものと 考 えられる もっとも 社 債 権 者 自 身 が 個 別 にその 債 権 の 届 出 を 行 うこ とも 会 社 更 生 法 上 民 事 再 生 法 上 は 必 ずしも 排 除 されてはいない( 会 社 更 生 法 190 条 1 項 1 号 民 事 再 生 法 169 条 の2 第 1 項 1 号 ) なお 債 権 者 集 会 関 係 人 集 会 における 更 生 計 画 案 再 生 計 画 案 に 対 する 社 債 権 者 による 議 決 権 行 使 のあり 方 に 関 しては 社 債 権 者 集 会 決 議 の 有 無 によって 取 扱 いが 異 なっている 1 社 債 権 者 集 会 における 社 債 管 理 者 に 対 する 授 権 決 議 がある 場 合 その 社 債 について 社 債 権 者 集 会 が 開 催 され 社 債 管 理 者 に 対 する 授 権 決 議 が 行 われた 場 合 ( 債 権 者 集 会 関 係 人 集 会 における) 更 生 計 画 案 再 生 計 画 案 に 対 する 議 決 権 は 社 債 管 理 者 が 一 括 して 11 難 波 孝 一 渡 部 勇 次 鈴 木 謙 也 徳 岡 治 会 社 更 生 事 件 の 最 近 の 実 情 と 今 後 の 新 たな 展 開 NBL No.895(2008 年 12 月 15 日 号 )pp.14-15 など

7 / 13 行 使 することとなる( 会 社 法 706 条 など) この 場 合 個 々の 社 債 権 者 が 自 ら 議 決 権 行 使 することは 認 められない( 会 社 更 生 法 190 条 3 項 民 事 再 生 法 169 条 の2 第 3 項 ) 2 社 債 権 者 集 会 における 社 債 管 理 者 に 対 する 授 権 決 議 がない 場 合 社 債 管 理 者 に 対 する 授 権 決 議 が 行 われなかった 場 合 ( 債 権 者 集 会 関 係 人 集 会 における) 更 生 計 画 案 再 生 計 画 案 に 対 する 議 決 権 を 社 債 管 理 者 の 判 断 で 一 括 して 行 使 することはできない( 会 社 法 706 条 など) そのため ここでは 個 々の 社 債 権 者 による 議 決 権 行 使 の 可 否 が 問 題 になる 法 令 上 は 社 債 管 理 者 に 対 する 授 権 決 議 が 行 われなかった 場 合 であって 次 のいずれかに 該 当 する 社 債 権 者 に 限 り 債 権 者 集 会 関 係 者 集 会 での 議 決 権 行 使 が 認 められるとされている( 会 社 更 生 法 190 条 1 項 民 事 再 生 法 169 条 の2 第 2 項 ) ( 社 債 管 理 会 社 ではなく) 社 債 権 者 自 らがその 更 生 債 権 等 の 届 出 を 行 ったとき 社 債 管 理 者 が 更 生 債 権 等 の 届 出 を 行 った 場 合 において 所 定 の 期 間 内 に 社 債 権 者 自 らが 裁 判 所 に 対 して 議 決 権 を 行 使 する 意 思 がある 旨 の 申 出 をしたとき (2) 社 債 管 理 者 が 設 置 されていない 場 合 社 債 に 社 債 管 理 者 が 設 置 されていない 場 合 (いわゆるFA 債 など) 社 債 権 者 が 更 生 手 続 再 生 手 続 に 参 加 して 更 生 計 画 再 生 計 画 に 基 づいた 弁 済 を 受 けるためには 原 則 通 常 の 更 生 債 権 再 生 債 権 と 同 様 に 所 定 の 期 間 内 に 自 ら 債 権 の 届 出 を 行 わなければならないものと 考 えられる 債 権 者 集 会 関 係 人 集 会 における 更 生 計 画 案 再 生 計 画 案 に 対 する 議 決 権 も 原 則 個 々の 社 債 権 者 が 自 ら 行 使 するものと 考 えられる 12 Q6: 担 保 権 を 設 定 している 債 権 者 は 優 先 的 な 弁 済 を 受 けることができるのか? A6: 会 社 更 生 手 続 の 場 合 原 則 手 続 開 始 後 は 担 保 権 の 実 行 は 禁 止 中 止 され 更 生 計 画 に 従 っ て 弁 済 を 受 けることとなる ただし 更 生 計 画 の 中 では 優 先 的 な 順 位 が 与 えられる 民 事 再 生 手 続 の 場 合 原 則 担 保 権 を 個 別 実 行 して 優 先 的 に 弁 済 を 受 けることができる 会 社 更 生 手 続 上 民 事 再 生 手 続 上 担 保 権 として 特 別 の 取 扱 いを 受 けることができるのは 特 別 の 先 取 特 権 質 権 抵 当 権 ( 商 法 会 社 法 の 規 定 による) 留 置 権 に 限 定 されている( 会 社 更 生 法 2 条 10 項 民 事 再 生 法 53 条 1 項 ) 従 って 一 般 に 担 保 と 呼 ばれているものであっても 会 社 更 生 手 続 上 民 事 再 生 手 続 上 以 下 の 取 扱 いを 受 けられないものがあり 得 る 12 西 岡 清 一 郎 鹿 子 木 康 桝 谷 雄 一 東 京 地 裁 会 社 更 生 実 務 研 究 会 会 社 更 生 の 実 務 下 ( 金 融 財 政 事 情 研 究 会 2011 年 )p.296 なお 理 論 上 は 社 債 権 者 集 会 は 発 行 会 社 や 一 定 の 社 債 権 者 による 招 集 も 可 能 であることから( 会 社 法 717 条 718 条 参 照 ) 社 債 管 理 者 が 設 置 されていない 社 債 であっても 社 債 権 者 集 会 決 議 に 基 づいて 債 権 者 集 会 関 係 者 集 会 での 議 決 権 を 集 団 的 に 行 使 する 余 地 はあるようにも 思 われる もっとも 現 実 にはかなりの 困 難 を 伴 うことが 予 想 される

8 / 13 また 本 Q&Aは いわゆる 一 般 担 保 付 社 債 の 取 扱 いについて 言 及 するものではないことを 予 め 断 っておく 13 (1) 会 社 更 生 手 続 の 場 合 会 社 更 生 手 続 の 最 大 の 特 徴 の 一 つは 担 保 権 者 を 更 生 手 続 の 中 に 組 み 込 み その 権 利 行 使 を 制 限 し ながら 更 生 計 画 においてその 権 利 内 容 を 変 更 することを 可 能 にしていることだと 説 明 されること が 多 い 14 すなわち 更 生 担 保 権 ( 被 担 保 債 権 のうち 担 保 権 目 的 物 の 価 額 が 更 生 手 続 開 始 時 の 時 価 であると した 場 合 における 担 保 権 によって 担 保 された 範 囲 のもの( 会 社 更 生 法 2 条 10 号 ) つまり 担 保 財 産 の 時 価 相 当 額 に 当 たる 債 権 )は 原 則 更 生 手 続 開 始 後 は 被 担 保 債 権 の 弁 済 が 禁 止 され( 会 社 更 生 法 47 条 1 項 ) また 担 保 権 実 行 も 禁 止 又 は 中 止 される( 同 50 条 1 項 ) その 結 果 更 生 担 保 権 も 他 の 更 生 債 権 と 同 様 に 更 生 計 画 に 従 って 弁 済 を 受 けることとなる 例 外 的 に 事 業 の 再 生 のために 必 要 でないことが 明 らかなもの を 目 的 とする 更 生 担 保 権 につい ては 管 財 人 の 申 立 てや 職 権 に 基 づき 裁 判 所 が 担 保 実 行 の 禁 止 の 解 除 を 決 定 する 場 合 もある( 同 50 条 7 項 ) ただし この 場 合 でも 担 保 権 者 に 対 する 配 当 等 は 実 施 できない( 同 51 条 1 項 ) 換 金 代 金 は 裁 判 所 に 留 保 され 更 生 計 画 が 認 可 された 後 管 財 人 に 交 付 され 更 生 計 画 に 基 づく 弁 済 に 充 当 されることとなる 15 ( 同 51 条 2 項 ) 更 生 計 画 が 認 可 されずに 更 生 手 続 が 中 途 で 終 了 した ときに 限 り 担 保 権 者 に 対 する 配 当 等 が 実 施 されることとなる( 同 51 条 3 項 ) このように 会 社 更 生 手 続 においては 担 保 権 を 設 定 している 債 権 者 も 会 社 更 生 手 続 による 制 約 を 受 け 原 則 更 生 計 画 に 従 った 弁 済 の 対 象 となる これは 通 常 担 保 権 者 の 自 由 な 権 利 行 使 を 認 めると 更 生 会 社 の 重 要 な 工 場 機 械 等 の 諸 設 備 が 失 われるという 事 態 が 発 生 し 事 業 の 再 建 が 不 可 能 となるおそれがある 16 ためと 説 明 されている ただし 更 生 計 画 において 更 生 担 保 権 は 他 の 債 権 者 よりも 優 先 的 な 順 位 が 与 えられている( 会 社 更 生 法 168 条 3 項 ) また 更 生 計 画 において 更 生 担 保 権 の 減 免 等 を 定 める 場 合 には 更 生 担 保 権 者 の 議 決 権 の 総 額 の3/4 以 上 の 同 意 が 必 要 とされており( 同 196 条 5 項 2 号 ) 他 の 更 生 債 権 者 ( 過 半 数 の 同 意 )よりも 要 件 が 加 重 されている つまり 更 生 担 保 権 者 には 通 常 の 更 生 債 権 者 よ りも 強 い 保 護 が 与 えられているといえるだろう そのため 実 務 上 も 更 生 担 保 権 の 元 本 部 分 の 減 免 がなされることはそれほど 多 くなく 担 保 目 的 物 の 売 却 価 格 などと 連 動 した 弁 済 額 が 定 められることも 多 いとされている 17 13 なお 電 気 事 業 法 上 のいわゆる 一 般 担 保 付 社 債 について 会 社 更 生 手 続 上 民 事 再 生 手 続 上 担 保 権 ではなく 一 般 先 取 特 権 に 準 じるものとして 取 り 扱 われるとの 見 解 がある( 電 気 事 業 法 37 条 参 照 ) 14 山 本 和 彦 倒 産 処 理 法 入 門 第 3 版 ( 有 斐 閣 2008 年 )p.218 15 山 本 和 彦 倒 産 処 理 法 入 門 第 3 版 ( 有 斐 閣 2008 年 )pp.218-219 西 岡 清 一 郎 鹿 子 木 康 桝 谷 雄 一 東 京 地 裁 会 社 更 生 実 務 研 究 会 会 社 更 生 の 実 務 下 ( 金 融 財 政 事 情 研 究 会 2011 年 )pp.101-102 16 西 岡 清 一 郎 鹿 子 木 康 桝 谷 雄 一 東 京 地 裁 会 社 更 生 実 務 研 究 会 会 社 更 生 の 実 務 下 ( 金 融 財 政 事 情 研 究 会 2011 年 )p.99 17 西 岡 清 一 郎 鹿 子 木 康 桝 谷 雄 一 東 京 地 裁 会 社 更 生 実 務 研 究 会 会 社 更 生 の 実 務 下 ( 金 融 財 政 事 情 研 究 会 2011 年 )pp.242-243

9 / 13 (2) 民 事 再 生 手 続 の 場 合 他 方 民 事 再 生 手 続 の 場 合 担 保 権 を 有 する 者 には 原 則 その 目 的 財 産 について 別 除 権 が 認 めら れており 民 事 再 生 手 続 の 制 約 を 受 けずに 個 別 に 担 保 権 を 実 行 して 弁 済 を 受 けることが 可 能 であ る( 民 事 再 生 法 53 条 ) ただし 担 保 目 的 物 が 事 業 の 継 続 に 欠 くことのできないものである 場 合 には 再 生 債 務 者 等 は 裁 判 所 に 対 して 担 保 権 消 滅 許 可 の 申 立 てを 行 うことができる( 同 148 条 ) これが 認 められれば 再 生 債 務 者 は 担 保 目 的 物 の 価 額 に 相 当 する 金 額 を 期 限 内 に 裁 判 所 に 納 付 して その 財 産 上 に 存 する 全 ての 担 保 権 は 消 滅 することとなる( 同 152 条 ) なお 納 付 された 金 額 は 民 事 執 行 の 手 続 に 準 じて 担 保 権 者 に 配 当 又 は 弁 済 金 として 交 付 される( 同 153 条 ) Q7: 会 社 が 会 社 更 生 手 続 や 民 事 再 生 手 続 に 陥 ってしまったら 社 債 は 無 価 値 になるのか? A7: 社 債 権 者 は 原 則 他 の 債 権 者 と 共 に 更 生 計 画 や 再 生 計 画 に 基 づいて 弁 済 を 受 けることとな る その 会 社 に 弁 済 能 力 が 残 っている 限 り その 社 債 にも 一 定 の 価 値 があるといえるだろう 社 債 の 発 行 会 社 が 会 社 更 生 手 続 や 民 事 再 生 手 続 に 陥 ってしまった 場 合 社 債 権 者 は 原 則 これ らの 手 続 への 参 加 を 通 じて 他 の 債 権 者 と 共 に 更 生 計 画 や 再 生 計 画 に 基 づいて 弁 済 を 受 ける( 債 権 を 回 収 する)ことになるものと 考 えられる( 手 続 への 参 加 についてはQ5 参 照 ) 更 生 計 画 再 生 計 画 による 弁 済 額 の 決 定 ( 権 利 の 変 更 )に 当 たっては 会 社 更 生 法 上 民 事 再 生 法 上 原 則 同 順 位 の 者 の 間 で 平 等 でなければならないと 定 められている(いわゆる 平 等 原 則 会 社 更 生 法 168 条 1 項 民 事 再 生 法 155 条 1 項 ) 他 方 順 位 の 異 なる 者 の 間 では 原 則 順 位 に 応 じた 公 正 かつ 衝 平 な 差 を 設 けなければならな いとされている(いわゆる 公 正 衝 平 の 原 則 会 社 更 生 法 168 条 3 項 民 事 再 生 法 155 条 2 項 ) なお 担 保 権 を 設 定 している 債 権 者 については 民 事 再 生 手 続 であれば 原 則 その 目 的 財 産 につ いて 別 除 権 が 認 められており 民 事 再 生 手 続 の 制 約 を 受 けずに 個 別 に 担 保 権 を 実 行 して 他 の 債 権 者 に 優 先 して 弁 済 を 受 けることができる 一 方 会 社 更 生 手 続 の 場 合 には 個 別 に 担 保 権 を 実 行 す ることは 許 されないが 更 生 計 画 において 他 の 債 権 者 よりも 優 先 的 な 順 位 が 与 えられている(Q6 参 照 ) 同 様 に 一 般 先 取 特 権 等 ( 労 働 債 権 など)についても 民 事 再 生 手 続 であれば 原 則 民 事 再 生 手 続 外 で 他 の 債 権 者 に 優 先 して 弁 済 を 受 けることができる(いわゆる 随 時 弁 済 民 事 再 生 法 122 条 ) 一 方 会 社 更 生 手 続 の 場 合 には 個 別 に 随 時 弁 済 することは 許 されないが 更 生 計 画 におい て 他 の 債 権 者 よりも 優 先 的 な 順 位 が 与 えられている このように 更 生 計 画 や 再 生 計 画 の 中 で どの 程 度 の 弁 済 を 受 けることができるかについては そ の 発 行 会 社 の 有 する 資 産 の 状 況 負 っている 負 債 の 規 模 のほか 債 権 者 間 の 優 先 劣 後 関 係 担 保 の 有 無 などによっても 大 きく 変 わってくるものと 考 えられる その 結 果 例 えば 無 担 保 社 債 の 場 合 担 保 付 のローンなどよりも 順 位 が 劣 後 する そのため 弁 済 率 が 低 くなることもあり 得 るだろう

10 / 13 ただ その 発 行 会 社 に 弁 済 能 力 が 残 っている 限 り 社 債 権 者 もその 債 権 の 一 部 を 回 収 することは 可 能 であり その 社 債 にも( 額 面 よりは 大 きく 毀 損 する 可 能 性 はあるものの) 一 定 の 価 値 があるとい えるだろう 3. 株 主 と 会 社 更 生 手 続 民 事 再 生 手 続 Q8: 株 主 は 会 社 更 生 手 続 民 事 再 生 手 続 に 参 加 することはできないのか? A8: 会 社 更 生 手 続 には 法 律 上 株 主 も 参 加 できることとなっている ただし いわゆる 債 務 超 過 状 態 にある 場 合 は 株 主 は 議 決 権 が 認 められず 決 議 から 排 除 されている 民 事 再 生 手 続 の 場 合 株 主 の 手 続 参 加 は 認 められていない ただし 減 資 株 式 併 合 などを 再 生 計 画 に 定 めて 株 主 総 会 を 省 略 するためには 事 前 に 裁 判 所 から 債 務 超 過 状 態 にあることの 認 定 を 受 け その 認 可 を 受 けなければならない (1) 会 社 更 生 手 続 の 場 合 会 社 更 生 手 続 の 場 合 会 社 更 生 法 上 株 主 も 会 社 の 再 建 計 画 ( 更 生 計 画 )をまとめるための 更 生 手 続 に 参 加 することが 名 目 上 は 認 められている( 会 社 更 生 法 165 条 など Q2 図 表 参 照 ) つまり 更 生 債 権 者 更 生 担 保 債 権 者 とは 異 なる 種 類 の 権 利 者 ( 組 )として 更 生 計 画 の 決 議 に 参 加 す ることができる( 同 196 条 ) つまり 会 社 の 更 生 計 画 が 承 認 を 受 けるためには 原 則 更 生 債 権 者 の 組 による 承 認 決 議 ( 過 半 数 ) 更 生 担 保 権 者 の 組 による 承 認 決 議 ( 更 生 担 保 権 の 減 免 等 を 定 める 場 合 であれば 3/ 4 以 上 )に 加 え 株 主 の 組 による 承 認 決 議 ( 過 半 数 )も 受 けた 上 で 裁 判 所 から 認 可 される 必 要 がある 18 ( 会 社 法 196 条 5 項 Q2 図 表 参 照 ) ただし その 財 産 をもって 債 務 を 完 済 することができない 状 態 すなわち いわゆる 債 務 超 過 状 態 にある 場 合 には 株 主 は 更 生 手 続 における 議 決 権 を 有 しないこととされている( 同 166 条 2 項 ) 通 常 会 社 更 生 法 の 適 用 を 受 ける 会 社 は 既 に 債 務 超 過 状 態 に 陥 っているケースが 多 く 見 られるこ とから 現 実 には 株 主 は 議 決 権 を 有 しないものとされて 更 生 計 画 の 決 議 から 排 除 されること が 多 いものと 思 われる 加 えて 破 綻 企 業 の 再 建 を 進 める 上 で 株 主 責 任 の 追 及 や 資 本 構 成 の 大 幅 な 見 直 しなどが 必 要 とな る 場 合 があるが 会 社 更 生 手 続 の 場 合 手 続 開 始 後 は 減 資 株 式 併 合 新 株 発 行 などは 更 生 計 画 によって 行 わなければならず( 同 45 条 ) 更 生 計 画 の 遂 行 に 当 たって 株 主 総 会 は 不 要 と 定 められ ている( 同 210 条 ) そのため 債 務 超 過 状 態 の 会 社 の 場 合 株 主 の 関 与 なしに 100% 減 資 や 新 スポンサーへの 新 株 発 行 18 承 認 決 議 のための 組 分 けは 例 えば 優 先 的 更 生 債 権 と 一 般 更 生 債 権 優 先 株 式 と 普 通 株 式 のよう に 更 に 細 分 化 されることもある( 西 岡 清 一 郎 鹿 子 木 康 桝 谷 雄 一 東 京 地 裁 会 社 更 生 実 務 研 究 会 会 社 更 生 の 実 務 下 ( 金 融 財 政 事 情 研 究 会 2011 年 )pp296-297)

11 / 13 が 決 定 される 可 能 性 が 高 いものと 考 えられる(Q10 参 照 ) (2) 民 事 再 生 手 続 の 場 合 他 方 民 事 再 生 手 続 の 場 合 民 事 再 生 法 上 株 主 が 参 加 することはそもそも 想 定 されていない( 民 事 再 生 法 170 条 2 項 など 参 照 ) これは 民 事 再 生 手 続 の 場 合 会 社 更 生 手 続 とは 異 なり 減 資 株 式 併 合 新 株 発 行 などの 手 続 は 本 来 民 事 再 生 手 続 外 で 会 社 法 の 手 続 具 体 的 には 株 主 総 会 決 議 などに 基 づいて 行 われることが 想 定 されているためだと 考 えられる 19 もっとも 民 事 再 生 手 続 を 円 滑 に 進 める 必 要 性 があることから 一 定 の 要 件 の 下 で 減 資 株 式 併 合 新 株 発 行 などを 再 生 計 画 により( 株 主 総 会 なしで) 実 施 する 特 例 も 設 けられている すなわち 事 前 に 裁 判 所 の 許 可 を 得 た 場 合 には 減 資 株 式 併 合 などを 再 生 計 画 によって 行 うこと が 認 められる( 同 154 条 3 項 161 条 166 条 1 項 など) 裁 判 所 は その 財 産 をもって 債 務 を 完 済 することができない 状 態 すなわち いわゆる 債 務 超 過 状 態 にあることを 認 定 した 場 合 に 限 っ て その 許 可 を 行 うことができるとされている( 同 166 条 2 項 ) 新 株 発 行 についても 事 前 に 裁 判 所 の 許 可 を 得 た 上 で 再 生 計 画 によって 行 うことが 可 能 である( 同 154 条 4 項 ) ただし 発 行 できるのは 譲 渡 制 限 株 式 に 限 られ 裁 判 所 の 許 可 も 上 記 の 会 社 が 債 務 超 過 状 態 にあることに 加 え その 新 株 発 行 が 再 生 債 務 者 の 事 業 の 継 続 に 欠 くことのできないも のである ことが 認 定 された 場 合 に 限 り 認 められることとされている( 同 166 条 の2) いずれにせよ 民 事 再 生 手 続 においても 債 務 超 過 状 態 の 会 社 の 場 合 株 主 の 関 与 なしに 100% 減 資 や 新 スポンサーへの 新 株 発 行 などがなされる 可 能 性 があるといえるだろう(Q10 参 照 ) Q9: 会 社 更 生 手 続 民 事 再 生 手 続 を 申 し 立 てた 上 場 会 社 は 必 ず 上 場 廃 止 になるのか? A9: 原 則 上 場 廃 止 だが 例 外 的 に 上 場 維 持 が 認 められる 場 合 もある 例 えば 東 京 証 券 取 引 所 ( 以 下 東 証 )の 場 合 上 場 廃 止 事 由 として 次 の 事 由 が 定 められている( 東 証 有 価 証 券 上 場 規 程 601 条 1 項 7 号 同 施 行 規 則 601 条 7 項 ) 上 場 会 社 が 法 律 の 規 定 に 基 づく 会 社 の 破 産 手 続 再 生 手 続 若 しくは 更 生 手 続 を 必 要 とするに 至 った 場 合 又 はこれに 準 ずる 状 態 になった 場 合 従 って 上 場 会 社 が 破 産 手 続 民 事 再 生 手 続 会 社 更 生 手 続 の 申 立 を 行 った 場 合 には その 会 社 は 原 則 として 上 場 廃 止 となる 20 19 山 本 和 彦 倒 産 処 理 法 入 門 第 3 版 ( 有 斐 閣 2008 年 )p.171 20 一 般 的 には 整 理 銘 柄 に 指 定 された 後 1ヶ 月 後 に 上 場 廃 止 となる

12 / 13 ただし 民 事 再 生 手 続 や 会 社 更 生 手 続 の 申 立 であっても 次 の 要 件 を 満 たす 場 合 には 例 外 的 に 上 場 維 持 を 認 めることとされている( 同 前 ) ( 申 立 時 に) 再 建 計 画 が 適 切 に 開 示 されること 再 建 計 画 が 裁 判 所 の 認 可 を 得 られる 見 込 みがあること 再 建 計 画 が 上 場 有 価 証 券 の 全 部 を 消 却 するもの(いわゆる 100% 減 資 など)ではないこと 再 建 計 画 の 開 示 日 から1ヶ 月 間 の 時 価 総 額 が 10 億 円 以 上 であること( 注 ) 公 益 投 資 者 保 護 の 観 点 から 適 当 でないと 認 められるものではないこと ( 注 ) 開 示 日 から1ヶ 月 間 の 平 均 時 価 総 額 と1ヵ 月 後 の 時 価 総 額 の 両 方 が 10 億 円 以 上 であることが 求 められる これらの 要 件 を 充 たせば 上 場 を 維 持 したまま 民 事 再 生 手 続 や 会 社 更 生 手 続 を 通 じた 経 営 再 建 を 行 う 余 地 はあるものと 考 えられる 21 なお 上 場 を 維 持 したまま 民 事 再 生 手 続 や 会 社 更 生 手 続 を 通 じた 経 営 再 建 を 目 指 すためには 所 要 の 再 建 計 画 等 の 審 査 申 請 を 東 証 に 対 して 行 う 必 要 がある これがなされない 場 合 は 原 則 上 場 廃 止 が 決 定 されるものと 考 えられる Q10: 会 社 が 企 業 破 綻 手 続 に 陥 ってしまったら 株 主 の 持 つ 株 式 は 無 価 値 になるのか? A10:100% 減 資 などにより 無 価 値 化 することが 多 いだろうが 常 に 無 価 値 になるとはいい 切 れない 破 綻 手 続 に 入 った 会 社 の 財 務 状 況 資 産 状 況 は 個 社 によって 異 なる しかも 清 算 するにせよ 再 建 するにせよ そうした 会 社 の 株 主 価 値 を 算 定 することは 困 難 を 伴 う 作 業 である 仮 に 算 定 で きたとしても その 数 値 はその 時 々の 市 場 情 勢 経 済 情 勢 などに 影 響 される 可 能 性 もある そのため 破 綻 手 続 に 入 った 会 社 の 株 式 が 無 価 値 になるか 否 かを 一 律 に 論 じることは 極 めて 難 く ケース バイ ケースで 判 断 せざるを 得 ないだろう 以 下 で 論 じることも あくまでも 一 つの 考 え 方 を 示 したものに 過 ぎないことを 予 め 断 っておく (1) 債 務 超 過 状 態 に 陥 っていない 場 合 会 社 が 破 綻 手 続 に 入 ったとしても その 会 社 が 債 務 超 過 状 態 でなければ 理 論 上 その 会 社 の 株 主 の 持 つ 株 式 は 無 価 値 とはいえないものと 考 えられる すなわち 債 務 超 過 状 態 でない 以 上 仮 に その 会 社 が 全 ての 債 務 を 弁 済 しても 資 産 が 残 るもの と 考 えられる 従 って その 会 社 の 株 主 が 持 つ 株 式 には 原 則 その 残 った 資 産 について 残 余 財 産 の 分 配 に 与 る 権 利 は 残 っていると 考 えられる( 会 社 法 105 条 1 項 2 号 ) 21 裁 判 官 サイドからも( 会 社 更 生 手 続 の 場 合 であっても) 上 場 を 維 持 したまま 再 建 を 行 う 可 能 性 を 検 討 してもよいと 思 わ れる と 検 討 の 余 地 があるとの 見 解 が 示 されている( 難 波 孝 一 渡 部 勇 次 鈴 木 謙 也 徳 岡 治 会 社 更 生 事 件 の 最 近 の 実 情 と 今 後 の 新 たな 展 開 NBL No.895(2008 年 12 月 15 日 号 )pp.22)

13 / 13 もちろん その 株 式 について 上 場 廃 止 となって 換 金 が 極 めて 困 難 になる 再 建 計 画 の 中 で 大 規 模 な 希 釈 化 が 行 われる などといったことは 十 分 に 考 えられる また 極 端 な 場 合 には その 会 社 における 資 産 評 価 方 法 や 資 産 の 売 却 可 能 性 によっては 実 際 に 会 社 を 解 体 清 算 する 段 階 で 事 実 上 株 主 に 残 余 財 産 を 分 配 することが 困 難 であることが 明 らか になる 事 態 が 生 じることもあり 得 る しかし 理 論 上 株 主 に 残 余 財 産 を 受 け 取 る 権 利 が 残 っている 以 上 その 株 式 が 全 くの 無 価 値 だと はいい 切 れないだろう (2) 債 務 超 過 状 態 に 陥 っている 場 合 現 実 には 破 綻 手 続 の 申 立 を 行 った 会 社 は 債 務 超 過 状 態 に 陥 っている 可 能 性 が 高 いと 考 えられる ( 破 産 法 16 条 民 事 再 生 法 21 条 会 社 更 生 法 17 条 1 項 1 号 など 参 照 ) 一 般 論 としては その 会 社 が 債 務 超 過 状 態 に 陥 っているということは 全 資 産 をもってしても 債 務 を 弁 済 しきれない 状 態 だということである つまり この 状 況 下 で 破 産 手 続 によりその 会 社 を 清 算 すると 仮 定 した 場 合 株 主 として 受 け 取 ることができる 残 余 財 産 はないことが 予 想 される そう した 会 社 の 清 算 価 値 のみに 着 目 すれば 株 主 が 有 するその 会 社 に 対 する 持 分 は 事 実 上 ゼロ( 又 はマイナス)だと 見 ることができるだろう 実 際 会 社 更 生 手 続 や 民 事 再 生 手 続 において 債 務 超 過 状 態 の 会 社 については 更 生 計 画 再 生 計 画 によって 株 主 を 関 与 させずに いわゆる 100% 減 資 などによって 既 存 の 株 主 の 権 利 は 消 滅 させ ることが 可 能 となっている(Q8 参 照 ) これも 債 務 超 過 状 態 の 会 社 の 株 主 の 持 分 は 実 質 的 に 無 価 値 化 していることを 前 提 にしたものとも 考 えられるだろう もっとも 債 務 超 過 状 態 の 会 社 が 会 社 更 生 手 続 や 民 事 再 生 手 続 の 中 で 絶 対 に 100% 減 資 などが 求 められるのかというと 必 ずしもそのようには 考 えられていないようである 22 仮 に 株 主 の 権 利 を( 大 規 模 な 希 釈 化 などはあるとしても) 消 滅 させずに 再 建 が 進 められるのであ れば 理 論 上 既 存 株 主 が 再 建 後 の 企 業 の 利 益 に 与 る 余 地 ( 例 えば 配 当 や 再 上 場 など)はあると いえるだろう この 場 合 債 務 超 過 状 態 の 会 社 の 株 式 であっても 全 く 無 価 値 だとはいい 切 れないも のと 考 えられる ただし 債 務 超 過 状 態 の 会 社 の 債 権 者 や 新 たなスポンサーの 立 場 に 立 てば 既 存 株 主 の 権 利 を 消 滅 させずに 自 分 が 有 する 債 権 の 減 免 や 自 らの 資 金 の 投 下 ( 資 本 注 入 )を 盛 り 込 んだ 再 建 案 に 同 意 することは 特 別 な 事 情 がない 限 り かなりハードルが 高 いようにも 思 われる 22 会 社 更 生 手 続 の 場 合 かつては 更 生 会 社 が 債 務 超 過 に 陥 っている 場 合 には 株 主 の 権 利 を 100% 消 滅 させることが 会 社 更 生 手 続 の 確 立 された 実 務 上 の 運 用 とされてきた しかし 今 では いわゆる 100% 減 資 をしない 更 生 計 画 案 を 許 容 する 余 地 があるとの 見 解 が 裁 判 官 サイドからも 示 されている( 難 波 孝 一 渡 部 勇 次 鈴 木 謙 也 徳 岡 治 会 社 更 生 事 件 の 最 近 の 実 情 と 今 後 の 新 たな 展 開 NBL No.895(2008 年 12 月 15 日 号 )pp.22)