本 学 の 学 生 の 援 助 要 請 行 動 について 中 林 恭 子 後 藤 和 史 愛 知 みずほ 大 学 間 科 学 部 Kyoko Nakabayashi Kazufumi Gotow Faculty of Human Sciences, Aichi Mizuho College キワド: 悩 み, 援 助 要 請 行 動, 学 生 問 題 と 目 的 少 子 化, 大 学 全 入 時 代 を 迎 え, 大 学 短 大 への 進 学 率 は 年 々 増 加 し,53.2%( 平 成 25 年 度 文 部 科 学 省 )と なっている このような 中 で 大 学 には 資 質, 能 力, 知 識, 興 味, 関 心 などの 面 で 多 様 な 学 生 が 入 学 してくる し, 精 神 面, 発 達 面 の 問 題 を 抱 えた 学 生 も 増 えている そのために, 多 様 な 学 生 のニズに 応 じるために, 様 々 なサビスが 大 学 に 求 められるようになった また, 平 成 12 年 に 教 職 員 中 心 の 大 学 から 学 生 中 心 の 大 学 へという 視 点 の 転 換 が 文 部 科 学 省 から 示 され, 多 様 なニズをもった 学 生 に 対 するきめ 細 やかな 教 育 指 導 が 重 要 視 されるようになった 本 学 でも 従 来 のチタ 制 度 や 何 でも 窓 口, 就 職 指 導 に 加 え, 学 修 コンシェルジ 制 度 を 設 けた り, 学 生 を 開 設 したりして, 学 修 面, 進 路 面 だ けではなく, 精 神 面 の 援 助 を 含 めた 学 生 のニズに 応 じる 体 制 作 りが 進 んでいる 日 本 学 生 支 援 機 構 の 調 査 では, 学 生 の 件 数 は 年 々 増 加 傾 向 にあるが, 学 生 数 1000 以 下 の 小 規 模 校 のみ, 変 化 していないことが 示 されている この 結 果 について, 学 生 と 教 職 員 との 距 離 が 近 く, 一 般 教 職 員 がこまめに 学 生 に 対 応 しているために, 学 生 独 自 の 組 織 の 件 数 が 増 えていない 可 能 性 と, 学 生 の ニズに 対 応 できるだけの 余 裕 がなく, 件 数 が 頭 打 ちになっている 可 能 性 が 指 摘 されている 1) 本 学 も 小 規 模 大 学 であり, 調 査 結 果 から 学 生 ニズに 十 分 対 応 できていない 可 能 性 が 示 唆 される 大 学 が 学 生 に 様 々なサビスを 提 供 しても, 学 生 のニズとず れが 生 じたり,ニズに 対 応 できないこともある 学 生 の 場 合, 学 生 が 自 ら することでサビ スが 開 始 される DePaulo, B.M.は 援 助 要 請 を 1 個 が 問 題 または 要 求 を 抱 えている2 他 者 の 時 間, 努 力, その 他 の 資 源 が 関 われば, 問 題 を 軽 減 したり, 解 決 す ることが 可 能 である 3そのような が 直 接 的 に 他 の の 助 けを 求 める 行 動 と 述 べている 2) 自 ら 援 助 を 求 める 行 動 を 起 こせば, 援 助 を 受 けることが 可 能 とな るが, 援 助 を 求 めない 場 合, 援 助 を 受 けることはでき ない 大 学 のサビスの 場 合 も, 学 生 が 悩 みを 抱 えな がらも 助 要 請 行 動 を 取 れない,あるいは 取 らない 場 合, 学 生 のニズに 応 じることは 困 難 である また, 木 村 水 野 は 学 生 が 問 題 を 抱 えた 時, 学 生 などのフォ マルな 制 度 よりも 身 近 な 友, 家 族 に する 傾 向 があることを 指 摘 している 3) 大 学 のサビスが 学 生 に 十 分 活 用 されていないことが 伺 える このような 調 査, 先 行 研 究 から, 本 学 の 学 生 のため のサビス 制 度 が 十 分 に 活 用 されているかどうか 検 証 することが 必 要 である そこで, 学 生 が 悩 みや 問 題 を 抱 えた 場 合, 誰 に,あるいはどの 機 関 に したか, あるいは を 希 望 しているかという 学 生 の 援 助 を 求 める 行 動 の 現 状 を 把 握 したい そこで 本 研 究 では, 学 生 がどのようなことに 悩 んで いるのか, 悩 みを 解 決 するためにどのような 行 動 を 取 っているのかという 現 状 を 調 査 分 析 することを 目 的 と する また, 悩 みがあっても, に 来 ない 学 生 につ いて 分 析 することで,その 対 応 方 法 について 考 察 する 方 法 調 査 参 加 者 調 査 は 本 学 の 学 生 全 員 を 対 象 とし,124 名 ( 男 性 43 名, 女 性 79 名, 性 別 欄 未 記 入 2 名 )から 回 答 を 得 た 学 年 別 には1 年 生 10 名,2 年 生 55 名, 3 年 生 34 名,4 年 生 20 名 であった 調 査 手 続 き 当 初,Google Forms を 利 用 した 調 査 を 実 施 した ウェブ 調 査 ならば, 大 学 に 来 ることができ ない 等, 本 来 最 も 援 助 を 必 要 とする 学 生 もアンケト に 参 加 できると 考 えたからである そこで Campus Vision( 学 内 情 報 配 信 システム)や 学 内 掲 示 を 通 して 学 生 に 参 加 を 呼 びかけた しかし, 協 力 者 が 十 分 集 ま らなかったため, 授 業 時 間 を 利 用 して 紙 面 による 質 問 紙 調 査 を 行 った ウェブを 利 用 した 場 合 も, 紙 面 によ る 場 合 も, 任 意 の 調 査 であり, 回 答 しなくても 不 利 益 にはならないこと, 匿 名 性 が 保 たれることを 明 記 し, 同 意 を 得 たうえで 実 施 した 質 問 紙 構 成
(1) 悩 み 大 学 生 になってから, 悩 んだことがあるかどうかを 訊 いた 日 常 的 に 様 々な 悩 みが 想 定 されるので, 質 問 紙 では 自 分 で 解 決 できない 問 題 と 規 定 した 悩 み のある 学 生 には, 悩 みの 内 容 を 選 択 肢 の 中 から 選 んで もらった 4) 悩 みの 内 容 については, 木 村 水 野 の 分 類 を 参 考 にして, 対 社 会 面, 心 理 健 康 面, 修 学 進 路 面 の 問 題 領 域 を 設 定 し, 対 社 会 面 の 問 題 領 域 に 対 関 係 異 性 恋 愛 家 族 関 係 の 悩 みを, 心 理 健 康 面 の 問 題 領 域 に 性 格 外 見 体 調 精 神 面 の 悩 みを, 修 学 進 路 面 の 問 題 領 域 に 進 路 将 来 学 力 能 力 履 修 の 悩 みを 設 定 した (2) 援 助 要 請 行 動 悩 みのある 学 生 には, 援 助 要 請 行 動 の 有 無 を 訊 き, 援 助 要 請 行 動 を 取 った 学 生 には, 悩 みを した 手 及 び 機 関 を 選 択 肢 から 選 択 させた 手 機 関 と しては,フォマルな 大 学 の サビス 制 度 の チ タ コンシェルジ 学 生 なん でも 窓 口 就 職 指 導,インフォマルで 身 近 な 友 恋 先 輩 家 族 その 他 を 設 定 した 悩 みがあっても, 援 助 要 請 行 動 を 取 らなかった 学 生 には 援 助 要 請 行 動 を 取 らない 理 由 について 選 択 肢 を 挙 げて 訊 いた 援 助 を 求 めない 理 由 は, 太 田 の たすけ を 求 める 行 動 をとめる 原 因 5) を 参 考 にして, 手 手 との 関 係 手 からの 評 価 自 己 評 価 の 意 義 の 問 題 領 域 を 設 定 した 手 の 問 題 領 域 には 不 在 対 不 信 感 の 問 題, 手 との 関 係 の 問 題 領 域 には 迷 惑 嫌 悪 拒 否 の 問 題, 手 の 評 価 の 問 題 領 域 には 能 力 弱 み 甘 え の 問 題, 自 己 評 価 の 問 題 領 域 では 戸 惑 い 無 力 感 プライド の 問 題, の 意 義 の 問 題 領 域 では への 不 信 感 不 信 体 験 問 題 の 放 置 および その 他 を 設 定 した また, 悩 みがない 学 生 には 悩 んだ 場 合 を 想 定 した 上 で, 援 助 要 請 行 動 の 有 無 と 前 述 の 選 択 肢 を 提 示 して 悩 みを したい 手 機 関 を 訊 いた 結 果 悩 み 自 分 で 解 決 できない 問 題 に 関 する 悩 み の 体 験 率 は 有 効 回 答 122 名 中 76 名 (62.3%)であり, 性 別 学 年 による 有 意 な 違 いは 見 られなかった また, 悩 みの 中 で 体 験 率 が 高 いのは, 進 路 や 将 来 に 関 する 悩 み(53.9%), 対 関 係 に 関 する 悩 み(53.6%), 単 位 履 修 に 関 する 悩 み(34.2%)であり, 対 関 係 に 関 する 悩 み 以 外 は 修 学 進 路 面 の 問 題 領 域 にお ける 悩 みの 体 験 率 が 高 かった また, 悩 みごとに 性 差 を 分 析 するところ, 対 関 係 に 関 する 悩 み 自 分 の 精 神 面 に 関 する 悩 み にお いて, 男 子 学 生 の 方 が 悩 みの 体 験 率 が 有 意 に 高 かった (それぞれ,χ 2 (1)=3.947, p<.05; χ 2 (1)=4.305, p<.05) 援 助 要 請 行 動 悩 みのある 学 生 の 中 で 援 助 要 請 行 動 ( )を 取 った 学 生 ( 援 助 要 請 群 )は72 名 中 42 名 (58.3%)であり, 援 助 要 請 行 動 ( )を 取 らなか った 学 生 ( 非 援 助 要 請 群 )は72 名 中 30 名 (41.7%)で あった 性 別 学 年 による 有 意 な 差 は 見 られなかった 現 在 悩 みはない 学 生 の 中 で 問 題 が 起 きた 場 合, 援 助 要 請 行 動 ( )を 取 ると 予 想 する 学 生 想 定 群 は 50 名 中 31 名 (62.0%)であり, 取 らないと 予 想 する 学 生 ( 非 想 定 群 )は50 名 中 19 名 (38.0%)であった 援 助 要 請 群 の 方 が, 想 定 群 よりも 援 助 要 請 行 動 を 取 らな いことが 示 された 手 援 助 要 請 群 の 主 な 手 を 表 1に 示 し, 想 定 群 の 主 な 手 を 表 2に 示 した 身 近 な 友 家 族 に する 学 生 が 多 数 をしめたが, 大 学 の 制 度 と してはチタに する 学 生 が 多 かったことが 見 て 取 れる また, 悩 みのある 学 生 の 実 際 の 行 動 と 悩 みのな い 学 生 の 想 定 行 動 との 差 異 を 検 討 するために,Fisher の 直 接 法 を 用 いてクロス 表 分 析 を 行 った その 結 果, 援 助 要 請 群 では, 家 族 問 題 と 精 神 面 の 悩 みにおいてチ タを 有 意 に 高 く,あるいは 高 い 割 合 で 手 として 選 択 していた(それぞれ,p=.036, p=.063) 一 方, 想 定 群 のほうが 有 意 に 高 い 割 合 で 選 択 した 手 は, 対 関 係, 体 調 における 家 族 (それぞれ, p=.000, p=.000), 性 格 外 見, 進 路 将 来 における 友 (それぞれ,p=.020, p=.000), 精 神 面 における 恋 (p=.036)であった また, 進 路 将 来 における 就 職 指 導 (p=.083), 恋 愛 異 性, 体 調, 学 力 能 力, 精 神 面 における 友 (それぞれ,p=.058, p=.060, p=.063, p=.081)においても 高 い 傾 向 がみられた 援 助 要 請 行 動 の 抑 制 理 由 非 援 助 要 請 群 が 挙 げた 主 な 理 由 は, 手 に 迷 惑 がかかるのではと 気 になる (11 名 ), こんなことで して 良 いのか 迷 う (10 名 ), しても 解 決 しないと 思 う (10 名 )であ った 一 方, 非 想 定 群 があげた 主 な 理 由 は, 自 分 の 弱 みを 見 せたくない と 放 っておいてもそのうち 解 決 すると 思 う (4 名 ), 手 がいない 信 頼 できる がいない こんなことで して 良 いか 迷 う (3 名 )であった 非 援 助 要 請 群 と 想 定 群 との 理 由 の 差 異 を 検 討 するた めにFisherの 直 接 法 を 用 いたクロス 表 分 析 を 行 った
その 結 果, 非 援 助 要 請 群 において しても 解 決 し ないと 思 う 手 に 迷 惑 がかかるのではと 気 になる の 割 合 が 有 意 に 高 い,あるいは 高 い 傾 向 であった (p=.007, p=.089) 表 1 悩 みをかかえる 学 生 ( 援 助 要 請 群 )の 手 手 ( 複 数 選 択 ) チ タ コ ン シ ェ ル ジ 学 生 何 で も 就 職 指 導 友 恋 先 輩 家 族 そ の 他 総 数 対 社 会 心 理 健 康 修 学 進 路 対 関 係 4 0 2 1 0 22 3 1 6 2 40 異 性 恋 愛 0 0 0 0 0 6 1 3 3 0 16 家 族 3 1 0 0 0 5 3 1 3 1 16 自 分 の 性 格 外 見 0 0 0 0 0 4 2 2 4 1 14 自 分 の 精 神 面 3 1 1 0 1 10 0 2 3 1 21 自 分 の 体 調 2 0 0 0 0 3 2 0 3 2 18 進 路 や 将 来 10 1 2 0 3 10 4 3 10 2 41 自 分 の 学 力 能 力 4 0 0 0 0 3 1 1 6 1 19 単 位 履 修 8 3 0 0 0 10 2 1 2 1 26 (n=76) 表 2 悩 みをかかえていない 学 生 ( 想 定 群 )が 想 定 する 手 想 定 する 手 ( 複 数 選 択 ) チ タ コ ン シ ェ ル ジ 学 生 何 で も 就 職 指 導 友 恋 先 輩 家 族 そ の 他 総 数 対 社 会 心 理 健 康 修 学 進 路 対 関 係 2 0 0 0 0 22 4 3 17 4 30 異 性 恋 愛 2 2 0 0 2 21 3 3 11 3 30 家 族 0 0 0 0 0 22 6 1 5 4 30 自 分 の 性 格 外 見 0 0 0 0 0 21 5 4 14 4 30 自 分 の 精 神 面 0 0 1 0 0 22 6 1 11 3 30 自 分 の 体 調 2 0 0 1 0 14 3 1 21 5 30 進 路 や 将 来 11 3 2 0 7 23 4 4 8 2 30 自 分 の 学 力 能 力 11 1 0 0 0 13 4 3 11 6 30 単 位 履 修 17 3 2 1 3 11 2 3 4 2 30 考 察 大 学 生 の 心 性 大 学 生 は 発 達 段 階 においては 青 年 期 後 期 と 位 置 づけられる 就 職 をしている 同 年 齢 の 若 者 と 比 較 すれば, 社 会 参 加 を 果 たしていないこと, 経 済 的 に 親 に 依 存 している 点 が 大 学 生 の 特 徴 となる つま り, 身 体 的, 性 的 には 成 熟 しているものの, 精 神 的, 社 会 的 においては,まだ, 十 分 成 熟 しているとは 言 い 難 い 状 態 にある Erikson, E.H.は 青 年 期 には 社 会 的 な 義 務 を 猶 予 さ れ, 自 分 の 生 き 方 を 模 索 する 機 関 として 心 理 社 会 的 モ ラトリアムを 提 唱 している 6) まさに, 大 学 生 はモラ トリアム 期 間 に 属 している 大 学 生 はこの 期 間 を 利 用
して 勉 学, 部 活 やサクル 活 動,ボランティア 活 動, アルバイトや 旅 行 等 の 役 割 実 験 を 行 い, 自 らのアイデ ンティティの 獲 得 を 目 指 すことになる Eriksonはアイデンティティを 内 的 な 不 変 性 と 連 続 性 を 維 持 する 能 力 ( 心 理 学 的 意 味 での 自 我 )が, 他 者 に 対 する 自 己 の 意 味 の 不 変 性 と 連 続 性 とに 合 致 する 経 験 から 生 まれた 自 信 と 定 義 している 7) つまり, 内 的 な 自 我 の 確 立 とともに, 他 者 との 関 係, 言 い 換 えれ ば, 社 会 の 中 での 自 分 の 役 割 を 得 ていかなければなら ない それゆえに,アイデンティティの 確 立 には 職 業 の 選 択 も 大 きな 意 味 を 持 つことになる また, 大 学 生 になると, 親 からの 精 神 的 な 自 立 が 促 進 される このような 青 年 が 精 神 面 で 親 から 独 立 する 心 理 的 な 親 離 れを Hollingworth, L.S.は 心 理 的 離 乳 と 呼 んだ 落 合 らは 心 理 的 離 乳 を 親 が 子 どもを 抱 え 込 む 親 子 関 係 / 親 が 子 どもと 手 を 切 る 親 子 関 係 ( 第 1 段 階 ), 親 が 外 界 にある 危 険 から 子 どもを 守 ろうとする 親 子 関 係 ( 第 2 段 階 ), 子 どもである 青 年 が 困 った 時 に 親 が 助 けたり, 励 まして 子 どもを 支 える 親 子 関 係 ( 第 3 段 階 ), 子 どもが 親 から 信 頼 承 認 されている 親 子 関 係 ( 第 4 段 階 ), 親 が 子 どもを 頼 りにする 親 子 関 係 ( 第 5 段 階 )の 過 程 としてとらえた そして, 第 1~3 段 階 から 第 4,5 段 階 への 質 的 な 変 化 が 高 校 生 から 大 学 生 初 期 に 生 じると 述 べている 8) 親 から 精 神 的 に 自 立 していく 過 程 で, 親 の 代 わりに 精 神 的 支 柱 となるのが, 友, 親 友 である 黒 田 等 の 研 究 によると, 大 学 生 において 自 分 たちの 親 友 関 係 が 他 の 親 友 関 係 よりも 良 いあるいは 悪 くないと 評 価 すれ ばするほど, 対 的 幸 福 感 自 尊 感 情 充 実 感 が 高 まり, 抑 うつ 感 が 低 まると 言 う 9) 親 友 との 良 好 な 関 係 性 が 大 学 生 の 精 神 的 な 安 定 感 を 支 えることに 繋 がっ ていると 言 える 中 高 生 のみならず, 大 学 生 にとって も 友, 親 友 の 存 在 は 重 要 である 大 学 生 は 大 になることを 模 索 している 段 階 である 移 行 期 の 不 安 定 さの 中 でさまざまな 悩 みが 生 じると 考 えることができる 特 に 将 来 の 進 路 を 考 えることは 重 要 な 課 題 である また, 親 から 精 神 的 に 自 立 している ので, 親 への 依 存 度 が 減 り, 友 への 依 存 度 が 高 くな るので, 友 関 係 における 悩 みが 生 じると 考 えられる 悩 みの 体 験 率 自 分 で 解 決 できない 問 題 に 関 する 悩 み の 体 験 率 は 62.3%であり, 過 半 数 の 学 生 が 過 去 に 悩 んだ 経 験 があったり, 現 在 も 悩 んでいることにな る 日 本 学 生 支 援 機 構 の 調 査 では, 学 業 成 績, 進 路 就 職, 経 済 的 問 題 における 不 安 や 悩 みが 少 しある から 大 いにある を 合 わせると,50.9%から 74.6% であり, 間 関 係, 健 康, 性 格 に 関 しては,25.1%か ら 35.6%であった 10) 福 岡 が8つのストレス 状 況 にお いて 最 近 1 週 間 での 体 験 を 問 うており,その 体 験 率 は 59.5%から 78.4%になっている 11) また, 篁 は 過 去 1 年 間 の 悩 みを 聞 いたところ, 高 校 生 も 大 学 生 も 約 60% は 何 らかの 悩 みを 抱 えていたと 報 告 している 12) 先 行 研 究 では 悩 みのとらえ 方 が 異 なるので, 一 概 に 比 較 で きないが, 本 学 の 学 生 の 悩 みの 体 験 率 は 大 学 生 の 平 均 的 な 水 準 にあると 考 えられる また, 悩 みの 中 で 体 験 率 が 高 かったのは, 進 路 や 将 来 に 関 する 悩 み(53.9%), 対 関 係 に 関 する 悩 み (53.6%), 単 位 履 修 に 関 する 悩 み(34.2%)であ った 篁 は 大 学 生 にとっては, 学 業 や 将 来 について の 悩 みに 加 えて, 間 関 係 の 問 題 が 高 校 生 よりも 悩 み の 原 因 として 大 きい と 述 べている 13) 進 路, 対 関 係 の 悩 みは 大 学 生 の 心 性 とも 一 致 するものであり, 大 学 生 の 発 達 課 題 として 大 きなテマとなるものである 対 関 係 には 様 々な 側 面 が 考 えられるが, 友 関 係 の 問 題 が 多 数 を 占 めていると 考 えられる 本 学 でも 仲 間 と 一 緒 に 同 じ 授 業 を 受 けたり, 授 業 以 外 でも 数 で 楽 しそうに 笑 する 学 生 の 姿 が 見 受 けられる その 一 方 で 高 等 学 校 までのようなクラス 制 度 がないために, どのように 友 を 作 ったらよいか 分 からないという を 受 けることもある また, 桜 井 の 調 査 によると, 本 学 では 60%の 学 生 がサクル 活 動 や 部 活 動 に 参 加 していない 14) それらの 活 動 を 通 して 仲 間 や 友 を 作 ることも 困 難 な 状 況 にあることが 分 かる さらに, 大 学 で 友 ができても, 時 にはトラブルや 仲 間 外 れになることもあり,そのような を 受 ける ことがある 最 近 の 特 徴 としては LINE によるトラブル の が 増 加 していることである LINE の 既 読 が 付 いたのに, 返 信 がない, 返 信 が 遅 いと, 文 句 を 言 わ れる などの 訴 えがあった 新 たなコミニケショ ンツルの 出 現 により, 対 関 係 が 複 雑 なものになっ ていることが 伺 える 援 助 要 請 行 動 本 学 の 学 生 においては 援 助 要 請 行 動 について 性 差, 学 年 による 有 意 差 は 見 られなかった 援 助 要 請 行 動 に 関 する 先 行 研 究 では 女 性 の 方 が 男 性 よ りも 援 助 要 請 行 動 を 取 る 傾 向 があるとことを 示 すもの と, 有 意 差 はないとするものがあった 永 井 等 は 194 件 の 論 文 から, 援 助 要 請 と 性 別 との 関 連 を 検 討 し, 援 助 要 請 は 概 ね 女 性 の 方 が 男 性 よりも 高 いが, 専 門 家 へ の 援 助 要 請 に 対 する 態 度, 教 師 および 専 門 家 への 援 助 要 請 については, 性 差 は 見 られなかったと 述 べている 15) 悩 みがあるのに, 援 助 要 請 行 動 を 取 らなかった 学 生 は 40%となっている 日 本 学 生 支 援 機 構 による 大 学 等 における 学 生 支 援 の 取 組 状 況 に 関 する 調 査 では, 学 生 に 関 する 今 後 の 課 題 として 特 に 必 要 性 が 高 いと 思 われる 事 項 として, 悩 みを 抱 えていながら に 来 ない 学 生 への 対 応 が 最 も 高 く,85.9%とな
っている 16) この 事 項 が 大 きな 課 題 となるのは,おそ らく, に 来 ない( 援 助 要 請 行 動 を 取 らない) 学 生 が 学 修 面 や 適 応 面 で 何 らかの 支 障 をきたしているから ではないか 本 学 でも 被 援 助 要 請 群 への 対 応 が 求 めら れる 悩 みのある 学 生 よりも, 悩 みがない 学 生 の 方 が, 問 題 が 起 きた 時 には 援 助 要 請 行 動 を 取 ると 予 測 している ことは, 援 助 を 求 めたい 気 持 ちと 実 際 の 援 助 要 請 行 動 の 間 にはギャップがあると 捉 えることができる 悩 み のない 学 生 は 実 際 に 援 助 要 請 行 動 を 起 こしていないの で, 容 易 に できると 考 えられるのだろう 一 方, 悩 みがある 学 生 は したいと 思 っても, 援 助 要 請 行 動 に 結 びつかなかった 体 験 があるのではないだろうか つまり, 実 際 に しようとすると, 二 の 足 を 踏 んで しまい, できない 学 生 がいると 考 えられる 援 助 要 請 行 動 を 取 れなかった 理 由 については 後 述 する 手 援 助 要 請 群 の 手 は, 身 近 な 存 在 で ある 友, 家 族 と 大 学 では チタ と いう 結 果 になった 前 述 したように 木 村 等 は, 学 生 は インフォマルな 援 助 者 ( 友, 家 族 )の 方 が,フォ マルな 援 助 者 ( 学 生 )よりも, 援 助 を 求 める 際 の 対 象 ととらえ, 援 助 を 求 めやすいことを 示 唆 してい る 17) 本 学 でも 同 様 な 結 果 が 見 られた しかし, 想 定 群 が 想 定 する 主 な 手 と 実 際 に した 手 を 比 較 すると, 想 定 とは 異 なり 友 家 族 はあまり 選 ばれず,チタが 選 ばれることが 見 出 された このことから, 友 を 手 と 想 定 するが, プライベトな 問 題 や 精 神 的 な 悩 みについては 実 際 に は しにくいことが 伺 える ベネッセ 教 育 センタ の 調 査 では, 大 学 内 に 話 をしたり 一 緒 に 遊 んだりす る 友 だち が いない 学 生 の 割 合 は 5.9%であるが, 悩 み 事 を できる 友 だち が いない 学 生 の 割 合 は 21.4%となっている 18) つまり, 表 面 的 な 付 き 合 いの 仲 間 がいても, 深 い 話 ができる 友 や 心 から 頼 り になる 親 友 がいない 学 生 の 姿 が 浮 かび 上 がってくる また, チタ は 学 修 面 の だけではなく, 精 神 面 家 族 関 係 の 悩 みの 手 として 選 ば れている チタは 面 や 欠 席 者 へ 連 絡 の 等, 日 常 的 に 学 生 に 関 わっているので, 教 員 とはいえ, 学 生 にとって 身 近 な 存 在 である それゆえに, 学 生 がチ タを 手 として 選 び, 援 助 を 求 める 傾 向 が 示 唆 された 本 学 において 学 修 コンシェルジ や 学 生 は, 新 しい 制 度 であり, 学 生 の 認 知 度 が 低 いために, 援 助 を 求 める 対 象 となりにくいのかもしれない また, 学 生 自 らが 求 めないと 援 助 を 受 けることができない 制 度 であるため, 悩 みがあっても 援 助 要 請 行 動 を 取 らな い 学 生 にとっては, チタ のように 積 極 的 に 自 分 に 関 わってくれる 存 在 が 必 要 なのではないだろう か 援 助 要 請 行 動 の 抑 制 理 由 非 援 助 要 請 群 の 主 な 抑 制 理 由 は, 手 に 迷 惑 がかかるのではと 気 になる, このようなことで して 良 いのか 迷 う, しても 解 決 しないと 思 う であった 手 に 迷 惑 が かかるのではと 気 になる という 気 遣 いの 背 後 には, をすることで, 手 に 迷 惑 がられたり, 嫌 がられ たりして, 手 との 関 係 に 亀 裂 が 入 ることを 懸 念 する 気 持 ちが 伺 える また, このようなことで して 良 いのか 迷 う という 気 持 ちの 背 後 には, 些 細 なこと を 悩 んでいると 見 下 されることへの 不 安 が 伺 える 悩 んでいるにもかかわらず, 手 を 過 度 気 遣 う 学 生 の 姿 が 浮 かび 上 がる また, しても 解 決 しない と いう への 懐 疑 や 不 信 を 示 す 学 生 もいる 援 助 を 求 めることを 無 意 味 であると 捉 えるならば, 援 助 要 請 行 動 が 抑 制 されるのも 当 然 だろう 非 想 定 群 の 挙 げている 理 由 と, 非 援 助 要 請 群 が 挙 げ ている 理 由 を 比 較 すると, 手 に 迷 惑 がかかるので はと 気 になる, しても 解 決 しないと 思 う に ついて 有 意 な 差 がみられた 実 際 に 援 助 を 求 めなけれ ばならないとき, 不 安 や 懐 疑 心 が 過 り, 援 助 要 請 行 動 を 抑 制 することになると 考 えられる DePauloは 援 助 を 求 める は 援 助 を 要 請 する 時 にア ンビバレントな 気 持 ちを 抱 くことを 指 摘 している 19) また, 西 川 は 被 援 助 者 が 援 助 や 援 助 者 に 対 して 申 し 訳 のなさや 苦 しい 感 情 を 抱 いたり, 反 発 心 のような 感 情 を 抱 かせることもあると 述 べている 20) 想 定 場 面 ではこのような 葛 藤 は 生 じないが, 実 際 に 援 助 要 請 行 動 を 起 こす 立 場 に 立 つと, 葛 藤 や 不 懐 疑 心 に 陥 たり, 不 安 になり, 援 助 要 請 行 動 がとれなくなる ことが 示 唆 される まとめ 本 学 の 学 生 の 援 助 要 請 行 動 から, 悩 みを 抱 えた 場 合, 手 として 友 家 族 チタ を 選 択 していること, 友 には したいが, で きない 傾 向 がみられたこと, チタ には したくないものの,いざとなったら する 傾 向 があ ること, 葛 藤, 懐 疑 心, 不 安 が 援 助 要 請 行 動 を 抑 制 す ることが 示 された 今 後 は 援 助 要 請 動 向 の 抑 制 原 因 に ついて, 性 格 や 資 質 との 関 連 から 研 究 することが 必 要 であろう また, 本 学 の 学 生 機 能 については 悩 みがあって も 援 助 要 請 行 動 を 起 こさない 非 援 助 要 請 群 へのアプロ チが 求 められる アプロチのひとつとしては 身 近 な 友 への を 容 易 にすることが 課 題 となるだろ
う そのためにはピア サポト 等, 学 生 同 士 で 支 援 する 制 度 を 導 入 する 必 要 があるだろう フォマルな 制 度 としては,チタ 制 度 の 充 実, 学 生, 学 修 コンシェルジ 制 度 を 学 生 に 周 知 徹 底 していくこと が 求 められるであろう 文 献 1) 佐 藤 純 : 学 生 の 現 状 と 課 題 - 学 生 体 制 の 整 備 充 実 の 検 証 - 学 生 支 援 の 最 新 動 向 と 今 後 の 展 望 - 大 学 等 における 学 生 支 援 の 取 組 状 況 に 関 する 調 査 ( 平 成 25 年 度 )よ り 2014 独 立 行 政 法 日 本 学 生 支 援 機 構 p85 2) DePaulo,B.M.: Perspective on help-seeking. B.M. DePaulo, A. Nadler, & J.D. Fisher (Eds.), New York: Academic Press 1983 3) 木 村 真 水 野 治 久 : 大 学 生 の 被 援 助 志 向 性 と 心 理 的 変 数 との 関 連 について-- 学 生 友 達 家 族 に 焦 点 をあてて カウンセリング 研 究, 37(3), 260-269, 2004 4) 前 掲 書 3)に 同 じ 5) 太 田 仁 :たすけを 求 める 心 と 行 動 援 助 要 請 の 心 理 学 2005 金 子 書 房 p6-10 6) Erikson, E.H.: Psychological Issues Identity and The Life Cycle. International Universities Press, Inc. 1959 ( 邦 訳 小 此 木 啓 吾 訳 編 : 自 我 同 一 性 アイデンティティと ライフサイクル 誠 信 書 房 1973 p115) 7) 前 掲 書 6)に 同 じ 8) 落 合 良 行 佐 藤 有 耕 : 親 子 関 係 の 変 化 からみた 心 理 的 離 乳 への 過 程 の 分 析 教 育 心 理 学 研 究, 44(1), 11-22, 1996 9) 黒 田 有 二 有 年 恵 一 桜 井 茂 男 : 大 学 生 の 親 友 関 係 におけ る 関 係 性 高 揚 と 精 神 的 健 康 との 関 係 互 協 調 的 - 互 独 立 的 自 己 観 を 踏 まえた 検 討 教 育 心 理 学 研 究, 52(1), 24-32, 2004 10) 独 立 法 日 本 学 生 支 援 機 構 : 平 成 24 年 度 学 生 生 活 調 査 結 果 p14 11) 福 岡 欣 治 : 日 常 ストレス 状 況 での 友 への 自 己 開 示 とソ シャル サポト(4) - 開 示 に 対 する 友 の 受 容 的 反 応 とサポトが 気 分 状 態 に 及 ぼす 効 果 - 静 岡 文 化 芸 術 大 学 研 究 紀 要, 9, 15-24, 2008 12) 篁 宗 一 : 大 学 生 のメンタルヘルスの 危 機 仲 間 づくりの 失 敗 石 川 瞭 子 編 著 高 校 生 大 学 生 のメンタルヘルス 対 策 学 校 と 家 庭 でできること 2013 青 弓 社 p101 13) 前 掲 書 12)に 同 じ p101 14) 愛 知 みずほ 大 学 インスティテショナル リサチセ ンタ ( 主 筆 : 桜 井 栄 一 ): 学 生 生 活 及 び 学 修 環 境 向 上 のためのアンケト 集 計 分 析 結 果 瀬 木 学 園 紀 要, 8, 47, 2014 15) 永 井 智 水 野 治 久 木 村 真 : 我 が 国 における 心 理 的 援 助 要 請 に 関 するメタ 分 析 (3) 日 本 心 理 学 会 第 78 回 大 会 発 表 論 文 集, 2014 16) 独 立 行 政 法 日 本 学 生 支 援 機 構 : 大 学 等 における 学 生 支 援 の 取 組 状 況 に 関 する 調 査 ( 平 成 25 年 度 ) 集 計 報 告 ( 単 純 集 計 ) 2014 p37 17) 前 掲 3)と 同 じ 18) ベネッセ 教 育 総 合 研 究 所 : 第 2 回 大 学 生 の 学 習 生 活 実 態 調 査 報 告 書 2012 p64 19) 前 掲 2)に 同 じ 20) 西 川 正 之 : 援 助 とサポトの 社 会 心 理 学 高 木 修 監 修 援 助 とサポトの 社 会 心 理 学 助 けあう 間 のこころと 行 動 2000 北 大 路 書 房 p1