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平 成 23 年 (2011 年 )11 月 2 日 NO.2011-27 長 期 化 が 見 込 まれるタイ 洪 水 被 害 の 影 響 要 旨 タイの 洪 水 被 害 が 拡 大 している 10 月 28 日 に 始 まった 大 潮 でバンコク 市 内 も 浸 水 した タイ 南 部 は 地 形 の 勾 配 が 緩 やかであるため 排 水 には 1 ヵ 月 以 上 かかるとの 見 方 が 多 い 一 連 の 洪 水 被 害 により バンコク 北 部 の 2 県 にある 7 つの 工 業 団 地 が 次 々に 冠 水 し 国 内 の 生 産 は 大 きな 打 撃 を 受 けている 同 工 業 団 地 で 被 災 した 日 系 企 業 は 447 社 タイに 進 出 している 日 系 企 業 の 約 35%が 被 害 を 受 けた タイ 政 府 は 対 応 を 急 いでおり 名 目 GDP 比 8.9% 規 模 の 大 型 経 済 対 策 を 打 ち 出 した これは グローバル 金 融 危 機 時 の 景 気 対 策 ( 同 6.0%)を 上 回 る 年 内 は 生 産 輸 出 が 減 少 し 経 済 活 動 の 停 滞 による 所 得 減 少 を 受 け 個 人 消 費 も 低 迷 しよう 2012 年 に 入 ると 水 没 した 設 備 の 修 復 や 交 換 が 進 み 生 産 活 動 は 4 月 以 降 正 常 化 に 向 かう 見 込 み 年 半 ば 以 降 は 政 府 の 復 興 需 要 が 本 格 化 するであろう 以 上 のシナリオに 基 づくと 洪 水 被 害 の 経 済 への 影 響 は 第 4 四 半 期 が 最 も 大 きく 同 期 の 成 長 率 は 前 年 比 ゼロ 近 辺 まで 落 ち 込 もう この 結 果 2011 年 の 成 長 率 は 2.0% 台 前 半 へ 大 幅 に 減 速 する 見 込 み 2012 年 は 第 1 四 半 期 まで は 洪 水 の 影 響 は 残 るが 第 2 四 半 期 以 降 は 生 産 が 正 常 化 することに 加 え 年 半 ば 以 降 は 復 興 需 要 が 本 格 化 することから 景 気 は 持 ち 直 し 2012 年 の 成 長 率 は 4.0% 台 へ 再 加 速 すると 予 想 する 就 任 間 もないインラック 首 相 は 最 大 の 難 局 を 迎 えているが いち 早 く 復 興 へ の 道 筋 をつけることで 国 民 の 信 頼 を 取 り 戻 すことが 求 められよう また タ イ 経 済 を 支 える 海 外 からの 投 資 を 呼 び 込 み 続 けるためには 抜 本 的 な 治 水 対 策 の 実 行 が 不 可 欠 であろう 1

1. タイ 洪 水 被 害 長 期 化 の 恐 れ タイの 洪 水 被 害 が 拡 大 している 7 月 下 旬 以 降 の 多 雨 により タイ 北 部 で 発 生 した 河 川 の 氾 濫 は 水 量 増 加 を 伴 いつつ 南 下 チャオプラヤ 川 に 沿 って 首 都 バンコ クに 流 れ 込 んだ インラック 首 相 は 当 初 バンコク 周 辺 地 域 から 海 へ 排 水 する 首 都 防 衛 作 戦 を 掲 げ バンコクは 安 全 としていたが 10 月 21 日 にはこれらの 発 言 を 撤 回 首 都 中 心 部 を 含 む 全 域 への 警 戒 宣 言 へ 切 り 替 えた 28 日 に 始 まった 大 潮 で バンコク 市 内 を 流 れるチャオプラヤ 川 の 潮 位 が 上 昇 し 堤 防 を 越 えた 水 はバンコク 市 内 に 流 れ 込 み 50 区 のうち 約 半 数 が 浸 水 した 大 潮 による 潮 位 の 上 昇 はさらに 数 日 続 くとみられたことから 政 府 は 10 月 27 日 ~31 日 を 洪 水 連 休 として 市 民 は 可 能 な 限 り 首 都 を 離 れるよう 呼 びかけた タイの 雨 季 は 終 焉 に 近 づいていることから もう 一 段 の 大 雨 にたたられる 可 能 性 は 薄 らいでいるが タイ 南 部 は 地 形 の 勾 配 が 緩 やかなため 排 水 に 1 カ 月 以 上 かかるとの 見 方 が 多 い( 第 1 図 ) 過 去 50 年 間 で 最 悪 の 洪 水 被 害 は 長 期 化 の 様 相 を 呈 しつつある 第 1 図 : 被 災 地 の 排 水 シミュレーション(10 月 23 日 時 点 ) ( 資 料 ) 水 災 害 リスクマネジメントセンターHP より 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 抜 粋 2. 工 業 団 地 冠 水 の 影 響 一 連 の 洪 水 被 害 は タイ 国 内 の 生 産 活 動 へ 大 きな 打 撃 を 与 えている 10 月 26 日 工 業 省 は 今 回 の 洪 水 で 約 1 万 の 工 場 が 一 時 的 な 閉 鎖 に 追 い 込 まれ 約 66 万 人 の 労 働 者 が 影 響 を 受 けたと 公 表 した 2

特 に 甚 大 な 被 害 が 出 ているのはバンコク 北 部 のアユタヤ 県 パトゥムタニ 県 で 2 県 内 の 主 要 な 7 つの 工 業 団 地 が 次 々に 冠 水 した 被 災 した 工 業 団 地 に 入 居 して いた 企 業 は 725 社 で このうち 日 系 企 業 は 447 社 タイに 進 出 している 日 系 企 業 は 約 1,300 社 程 度 であることから 全 体 の 約 35%の 企 業 が 被 災 したことになる( 第 1 表 ) これらの 工 業 団 地 には 自 動 車 電 機 電 子 など 輸 出 志 向 の 高 い 産 業 が 集 積 して おり 冠 水 した 工 場 はほぼ 操 業 停 止 となっている また 冠 水 していない 地 域 の 工 場 も 部 品 不 足 あるいは 安 全 上 の 理 由 から 操 業 停 止 あるいは 減 産 しているケ ースが 多 い 被 災 した 企 業 は 生 産 を 補 填 するため 国 内 他 地 域 マレーシア フィリピン 中 国 などの 周 辺 国 あるいは 日 本 などでの 代 替 生 産 に 切 り 替 えている さらに 当 面 操 業 再 開 の 目 処 が 立 たないとして タイの 工 場 機 能 を 他 国 へ 移 管 する 動 きも 一 部 でみられる 一 方 で タイ 国 内 で 稼 働 を 続 けている 工 場 のなかには 代 替 生 産 や 在 庫 積 み 増 しの 動 きを 受 けフル 稼 動 している 企 業 もある 洪 水 発 生 工 業 団 地 サハ ラタナナコン 工 業 団 地 ロジャナ 工 業 団 地 第 1 表 : 冠 水 した 工 業 団 地 の 日 系 企 業 数 全 42 社 のうち 日 系 35 社 全 218 社 のうち 日 系 147 社 工 業 団 地 運 営 会 社 によれば 全 230 社 のうち 日 系 は135 社 全 143 社 のうち 日 系 7 割 全 84 社 のうち 日 系 30 社 全 14 社 のうち 日 系 5 社 190 企 業 のうち 日 系 104 社 全 34 社 のうち 日 系 28 社 ハイテク 工 業 団 地 バンパイン 工 業 団 地 ファクトリーランド 工 業 団 地 ナワナコン 工 業 団 地 バンカディ 工 業 団 地 要 警 戒 工 業 団 地 ラッカバン 工 業 団 地 全 283 社 のうち 日 系 49 社 ウェルグロー 工 業 団 地 企 業 日 系 企 業 数 は 調 査 中 バンプリ 工 業 団 地 全 120 社 のうち 日 系 48 社 バンチャン 工 業 団 地 全 83 社 のうち 日 系 20 社 ケンコイ 工 業 団 地 全 1 社 日 系 0 社 ジェモポリス 工 業 団 地 全 130 社 のうち 日 系 6 社 宝 石 専 門 工 業 団 地 バンプー 工 業 団 地 全 287 社 のうち 日 系 72 社 ( 2007 年 時 点 ) ( 注 ) 情 報 は10 月 29 日 時 点 ( 資 料 )JETRO 資 料 より 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 3. タイおよび 日 本 政 府 の 対 応 (1) タイ 政 府 の 対 応 タイ 政 府 は 対 応 策 を 急 いでいる 10 月 30 日 政 府 は 洪 水 被 害 からの 復 興 のた め 9,000 億 バーツ 規 模 の ニュータイランド 構 想 を 明 らかにした( 第 2 表 ) このうち 工 業 団 地 復 旧 に 1,000 億 バーツ 治 水 経 済 対 策 に 8,000 億 バーツ を 割 り 当 る 予 定 である 短 期 的 な 対 策 としては 工 業 団 地 復 旧 の 一 環 として 3

11 月 中 にも 工 業 団 地 に 排 水 ポンプが 設 置 される 一 方 中 長 期 対 策 として 治 水 及 び 経 済 対 策 が 打 ち 出 された 経 済 対 策 は インフラ 開 発 や 物 流 通 関 手 続 きの 改 善 などを 通 じ 競 争 力 や 生 産 性 の 向 上 を 狙 いとするものである ニュータイランド 構 想 の 予 算 規 模 は 名 目 GDP 比 8.9%と グローバル 金 融 危 機 時 の 財 政 出 動 ( 同 6.0%)を 遥 かに 凌 ぐ 規 模 となる 政 府 は 今 回 の 事 態 をリーマン ショック 後 の 景 気 後 退 を 上 回 る 危 機 ととらえ 警 戒 していることが 窺 えよう 第 2 表 : ニュータイランド 構 想 予 算 規 模 ( 億 バーツ) 主 な 使 途 工 業 団 地 復 旧 1,000 短 期 : 排 水 ポンプ140 台 購 入 冠 水 した7 箇 所 の 工 業 団 地 に 設 置 など 治 水 経 済 対 策 8,000 合 計 ( 億 バーツ) 名 目 GDP 比 (%) ( 資 料 ) 各 種 報 道 等 より 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 長 期 : 包 括 的 治 水 事 業 経 済 対 策 (インフラ 開 発 物 流 通 関 手 続 き 労 働 許 可 取 得 手 続 きの 改 善 ) など 9,000 8.9 (2) 日 本 政 府 の 対 応 日 本 政 府 も 支 援 に 向 けて 迅 速 に 動 き 始 めている 政 府 は 10 月 25 日 の 閣 僚 懇 談 会 で タイの 洪 水 被 害 の 対 応 策 として 1 邦 人 保 護 2タイの 経 済 産 業 の 復 興 対 策 3タイに 対 する 支 援 の 3 本 を 柱 とする 支 援 策 を 決 定 した このうち 経 済 産 業 の 復 興 対 策 では タイに 進 出 する 日 系 企 業 向 けの 短 期 運 転 資 金 の 調 達 支 援 策 として 邦 銀 が 保 有 する 日 本 国 債 を 担 保 に タイ 中 銀 からバーツを 調 達 する 仕 組 みが 打 ち 出 された( 第 3 表 ) この 他 設 備 資 金 長 期 運 転 資 金 の 調 達 支 援 に ついては 日 本 政 策 金 融 公 庫 が 行 う また 操 業 再 開 までの 期 間 数 千 人 規 模 のタイ 人 技 術 者 を 研 修 生 として 日 本 へ 第 3 表 : 日 本 政 府 による タイ 洪 水 被 害 の 対 応 策 抜 粋 期 間 課 題 具 体 策 所 管 短 期 対 応 策 資 金 調 達 の 円 滑 化 短 期 運 転 資 金 の 調 達 資 金 借 り 入 れに 当 たっての 保 証 保 険 設 備 資 金 長 期 運 転 資 金 の 調 達 輸 出 海 外 投 資 融 資 に 関 す るリスク 軽 減 タイ 中 央 銀 行 の 日 本 国 債 を 担 保 としたタイ バーツ 資 金 供 給 策 に 関 する 検 討 協 力 海 外 投 資 関 係 保 証 など 設 備 資 金 長 期 運 転 資 金 の 調 達 支 援 ( 国 内 親 会 社 を 通 じた 融 資 ( 資 金 使 途 の 追 加 )) など 日 銀 信 用 保 証 協 会 など 日 本 政 策 金 融 公 庫 民 間 損 保 会 社 等 と 協 力 した 現 地 日 系 企 業 のタイ 国 内 外 向 け 日 本 貿 易 保 険 (NEXI) 販 売 代 金 回 収 リスクの 軽 減 など 生 産 体 制 の 再 構 築 操 業 再 開 までの 期 間 を 活 用 した 日 系 企 業 のタイ 人 技 術 者 の 能 力 向 上 のための 研 修 事 業 ( 研 修 生 受 け 入 れ) 海 外 技 術 者 研 修 協 会 (AOTS) 法 務 労 務 税 務 対 策 日 本 企 業 の 法 務 労 務 税 務 問 題 に 対 する 専 門 家 からの 情 報 提 供 強 化 日 本 貿 易 振 興 機 構 (JETRO) 中 長 期 対 応 策 企 業 再 建 復 興 高 度 化 のための 人 材 育 成 支 援 災 害 リスクへの 対 応 ( 資 料 ) 政 府 機 関 HP 等 より 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 工 場 再 稼 動 に 向 けた 現 地 技 術 者 の 育 成 支 援 ( 研 修 生 受 け 入 れ/ 専 門 家 派 遣 )( 資 金 使 途 の 追 加 ) 災 害 に 強 い 東 アジアの 構 築 に 関 する 調 査 など 海 外 技 術 者 研 修 協 会 (AOTS) 海 外 貿 易 開 発 協 会 (JODS) など 国 際 協 力 機 構 (JICA) ERIA( 東 アジア ASEAN 経 済 研 究 セン ター) など 4

受 け 入 れる 方 針 を 打 出 した 政 府 は 今 後 タイ 政 府 や 現 地 の 日 系 企 業 の 要 望 を 踏 まえ 追 加 支 援 策 を 検 討 する 方 針 である 政 府 の 迅 速 な 対 応 の 背 景 には 直 接 投 資 先 としてタイの 存 在 の 大 きさがある 日 系 企 業 のタイへの 直 接 投 資 残 高 は 2010 年 末 時 点 で 約 2 兆 2 千 億 円 アジアの 対 外 直 接 投 資 先 としては 中 国 に 次 ぐ 規 模 となっている( 第 2 図 ) 業 種 別 には 自 動 車 を 中 心 とする 輸 送 機 械 器 具 (26.8%) 半 導 体 HDD 関 連 の 電 気 機 械 器 具 関 連 (16.3%)の 2 業 種 が 全 体 の 5 割 弱 を 占 めており( 第 3 図 ) タイは 日 本 の 基 幹 産 業 を 支 える 重 要 な ASEAN の 製 造 拠 点 といえる 60 50 40 30 ( 千 億 円 ) 第 2 図 : 日 本 の 対 アジア 直 接 投 資 残 高 (2010 年 末 ) 第 3 図 : 日 本 からタイへの 直 接 投 資 残 高 ( 業 種 別 2010 年 末 ) ガラス 土 精 密 機 械 石 器 具 食 料 品 ゴム 皮 革 化 学 医 薬 木 材 パル プ その 他 輸 送 機 械 器 具 20 10 0 中 国 タイ シンガポール 香 港 韓 国 インド インドネシア 台 湾 マレーシア フィリピン ベトナム 一 般 機 械 器 具 鉄 非 鉄 金 属 卸 売 小 売 業 金 融 保 険 業 ( 資 料 ) 日 本 銀 行 より 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 ( 資 料 ) 日 本 銀 行 より 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 電 機 機 械 器 具 4. 復 興 シナリオおよびマクロ 経 済 への 影 響 以 下 では 復 興 までのシナリオ 及 びマクロ 経 済 に 与 える 影 響 を 考 えてみたい( 第 4 表 ) 水 位 上 昇 排 水 第 4 表 : 洪 水 被 害 の 影 響 および 復 興 シナリオ 2011 年 Q4 2012 年 Q1 2012 年 Q2 2012 年 Q3 10 月 11 月 12 月 水 没 地 域 は 残 るものの 排 水 に 一 定 の 目 処 2012 年 Q4 生 産 設 備 交 換 などを 経 て 徐 々に 再 開 生 産 の 正 常 化 消 費 日 用 品 の 需 要 急 増 耐 久 消 費 財 の 買 い 控 え 消 費 回 復 復 興 需 要 ( 注 ) 矢 印 は 各 項 目 の 影 響 が 顕 在 化 している 期 間 ( 資 料 ) 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 5

ここでは 水 位 は 10 月 末 の 大 潮 をピークとして 徐 々に 低 下 に 向 かうと 仮 定 し た ただし 前 述 のとおり 排 水 には 時 間 がかかるとみられることから 11 月 中 はバンコクを 含 む 半 島 南 部 が 冠 水 した 状 態 が 持 続 水 没 地 域 は 残 るものの 排 水 に 一 定 の 目 処 がつくのは 12 月 以 降 とした (1) 復 興 までのシナリオ 国 内 の 生 産 活 動 は 自 動 車 及 び 電 子 機 器 食 品 加 工 などの 製 造 業 を 中 心 に 年 内 は 不 振 が 続 くと 考 える また これら 主 力 製 品 の 減 産 で 輸 出 は 減 少 しよう タイは 輸 出 依 存 度 ( 輸 出 額 / 名 目 GDP)が 約 7 割 と 高 いことから 輸 出 の 減 少 は 景 気 の 下 押 し 圧 力 となる また 年 内 は 浸 水 した 地 域 が 残 るとみられることから 設 備 投 資 も 低 迷 しよう 経 済 活 動 の 停 滞 による 所 得 減 少 や 景 気 の 先 行 き 不 透 明 感 の 高 まりを 受 け 消 費 者 マインドの 落 ち 込 みが 予 想 されることから( 第 4 図 ) 個 人 消 費 は 冷 え 込 むで あろう 飲 料 水 やインスタント 食 品 などの 食 品 を 中 心 とした 日 用 品 の 需 要 が 急 増 する 一 方 自 動 車 や 家 電 などの 耐 久 消 費 財 は ライフラインや 生 産 回 復 の 目 処 が つくまでは 買 い 控 えが 続 くと 予 想 する 2012 年 に 入 ると 水 没 した 設 備 の 修 復 や 交 換 が 進 み 生 産 活 動 は 徐 々に 正 常 化 に 向 かおう 生 産 が 正 常 化 するのは 4 月 以 降 とみる 生 産 活 動 の 正 常 化 に 伴 い 消 費 も 回 復 に 向 かう 見 込 みである 年 半 ば 以 降 は ペントアップディマンドが 顕 在 化 することや 政 府 の 復 興 需 要 が 本 格 化 することから 景 気 は 回 復 ペースを 速 める と 予 想 する 物 価 は 8 月 をピークに 緩 やかな 鈍 化 傾 向 にあるものの 年 内 は 食 料 品 や 飲 料 を 中 心 に 上 昇 圧 力 が 高 まることが 予 想 される( 第 5 図 ) バンコク 市 内 では 既 に ( 注 食 料 品 ) の 価 格 上 昇 が 始 まっている 政 府 は 卵 や 飲 料 水 などの 生 活 必 需 品 の 緊 急 輸 入 を 促 進 しているものの 当 面 は 生 産 減 少 や 輸 送 経 路 の 寸 断 などによる 供 給 制 約 を 受 け 生 活 必 需 品 を 中 心 に 値 上 がりすると 考 えられる ( 注 ) 特 に 値 上 がりが 懸 念 されるのはコメ 今 回 の 水 害 でタイ 中 部 のロッブリ 北 部 のナコンサワンなど の 穀 倉 地 帯 が 水 没 した 世 界 最 大 のコメ 輸 出 国 だけに 国 際 的 なコメ 価 格 の 上 昇 圧 力 となる 可 能 性 もある 6

第 4 図 : 消 費 者 マインド 第 5 図 : 政 策 金 利 と 消 費 者 物 価 上 昇 率 (2000 年 =100) 145 (ポイント) 86 10 ( 前 年 比 %) (%) 10 140 個 人 消 費 指 数 消 費 者 信 頼 感 指 数 ( 右 目 盛 ) 84 82 8 6 消 費 者 物 価 上 昇 率 政 策 金 利 ( 右 目 盛 ) 8 6 135 80 4 4 78 2 2 130 76 0 0 125 74 72 2 4 2 4 120 2007 2008 2009 2010 2011 ( 資 料 )CEICより 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 70 6 6 2007 2008 2009 2010 2011 ( 年 ) ( 資 料 )CEICより 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 作 成 (2) マクロ 経 済 への 影 響 以 上 のシナリオに 基 づき 経 済 への 影 響 をみると 洪 水 被 害 の 影 響 は 2011 年 第 4 四 半 期 に 最 も 大 きく 同 期 の 実 質 GDP 成 長 率 は 前 年 比 ゼロ 近 辺 まで 落 ち 込 もう この 結 果 2011 年 の 成 長 率 は 8 月 時 点 に 予 測 していた 前 年 比 4.0%から 同 2.0% 台 前 半 へ 大 幅 に 減 速 するとみる 2012 年 は 第 1 四 半 期 までは 洪 水 の 影 響 は 残 るが 第 2 四 半 期 以 降 は 生 産 が 正 常 化 に 向 かうこと 年 半 ば 以 降 は 復 興 需 要 が 本 格 化 す ること 受 け 2012 年 通 年 の 成 長 率 は 4.0% 台 へ 再 加 速 すると 予 想 する 金 融 政 策 に 目 を 転 じると 景 気 の 急 減 速 を 受 け 利 下 げが 視 野 に 入 りつつある プラサーン 中 銀 総 裁 は 10 月 25 日 の 記 者 会 見 で 政 策 金 利 を 見 直 すための 緊 急 会 合 を 開 催 する 必 要 はない と 発 言 市 場 の 緊 急 利 下 げ 期 待 はいったん 否 定 された 格 好 となっているが 成 長 ペースの 大 幅 減 速 が 見 込 まれるなか 利 下 げ 観 測 は 燻 り 続 けるであろう 11 月 30 日 に 予 定 されている 次 回 の 金 融 政 策 決 定 会 合 (MPC) の 動 向 が 注 目 される 5. 力 量 が 試 されるインラック 首 相 7 月 の 総 選 挙 で 国 民 の 圧 倒 的 な 人 気 を 支 えに 誕 生 したインラック 政 権 は 就 任 後 3 ヵ 月 足 らずで 最 大 の 難 局 を 迎 えることになった グローバル 金 融 危 機 によ る 景 気 後 退 東 日 本 大 震 災 によるサプライチェーン 障 害 による 減 産 から 回 復 した ばかりのタイ 経 済 は この 先 欧 州 債 務 問 題 を 発 端 にした 世 界 経 済 の 減 速 に 加 え 洪 水 被 害 という 大 きな 重 荷 を 抱 え 込 むことになったからだ インラック 首 相 は バンコク 市 内 が 浸 水 する 直 前 まで バンコクは 安 全 との 発 言 を 繰 り 返 した 対 応 が 後 手 に 回 ったことが 被 害 の 拡 大 をもたらしたとの 見 方 から 国 民 の 間 では 指 導 力 不 足 を 指 摘 する 声 が 広 がっている 7

こうした 状 況 下 インラック 首 相 はいち 早 く 復 興 への 道 筋 をつけることで 国 民 の 信 頼 を 取 り 戻 す 必 要 があろう また 政 府 が 発 表 した 大 型 経 済 対 策 では 短 期 的 な 景 気 浮 揚 策 は 勿 論 今 回 露 呈 した 水 害 への 脆 弱 さを 克 服 するため 抜 本 的 な 治 水 対 策 を 策 定 し 実 行 することが 不 可 欠 だ 工 業 団 地 が 次 々に 水 没 する 映 像 が 世 界 に 発 信 された 後 だけに 小 手 先 の 対 応 ではこれまでのタイ 経 済 を 支 えてきた 外 資 企 業 のタイへの 投 資 意 欲 の 減 退 をもたらしかねない タイは 自 動 車 や 電 子 関 連 を 中 心 とした 産 業 が 集 積 することから 製 造 拠 点 として の 魅 力 のみならず インドネシアと 並 ぶ ASEAN の 有 望 な 消 費 市 場 としての 魅 力 も 高 い 今 後 もこうしたタイの 魅 力 を 維 持 することができるのか インラック 首 相 の 力 量 が 問 われていよう (H23.11.2 福 永 雪 子 yukiko_3_fukunaga@mufg.jp) 発 行 : 株 式 会 社 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 経 済 調 査 室 100-8388 東 京 都 千 代 田 区 丸 の 内 2-7-1 当 資 料 は 情 報 提 供 のみを 目 的 として 作 成 されたものであり 金 融 商 品 の 売 買 や 投 資 など 何 らかの 行 動 を 勧 誘 するものではありません ご 利 用 に 関 しては すべてお 客 様 御 自 身 でご 判 断 下 さいますよう 宜 しくお 願 い 申 し 上 げます 当 資 料 は 信 頼 できると 思 われる 情 報 に 基 づいて 作 成 されてい ますが 当 室 はその 正 確 性 を 保 証 するものではありません 内 容 は 予 告 なしに 変 更 することがありますので 予 めご 了 承 下 さい また 当 資 料 は 著 作 物 であり 著 作 権 法 により 保 護 されております 全 文 または 一 部 を 転 載 する 場 合 は 出 所 を 明 記 してください 8