特 別 講 演 Ⅱ 症 状 に 基 づく 漢 方 処 方 清 水 弘 之 清 水 クリニック 院 長 漢 方 の 診 断 としては まず 患 者 の 体 質 を 全 体 的 につかんで さらにその 体 質 から 臨 床 症 状 を 生 理 機 能 の 歪 みとしてとらえる その 際 に 気 血 水 という 3 つの 概 念 のうち どの 歪 みであるのかをとらえることが 薬 方 を 決 定 するのに 便 利 になるのではないかと 思 います 患 者 さんを 見 た 場 合 まず 実 証 と 虚 証 ということを 考 えないといけません 実 証 ですが がっちりして 筋 骨 たくましい 声 に 力 がある 皮 膚 につやがある 血 色 がよい 汗 が 出 ない 無 汗 便 秘 傾 向 力 のある 脈 腹 診 で 弾 力 性 がある これらが 実 証 の 特 徴 です 典 型 的 な 人 はあまり 来 ませんが 虚 証 の 典 型 としては 非 常 に 痩 せて 声 も 小 さい 皮 膚 が 乾 いている 疲 れやすい 自 然 に 汗 が 出 る 自 汗 という 傾 向 下 痢 軟 便 力 のない 弱 々しい 脈 腹 診 で 弱 々しく 力 がない 等 です 患 者 さんを 見 た 場 合 虚 実 を 明 確 に 分 けられるわけではなくて その 中 間 の 証 の 人 もいます 感 覚 的 に -2 から+2 の 5 段 階 位 で 把 握 してとらえていいのではないかと 思 います 結 構 がっしりしているようで 非 常 に 虚 証 的 な 人 もいますし 体 はがっちりしているけれども 下 痢 をするとか 弱 々しいけれども 便 秘 がちだとか 虚 実 混 じった 患 者 さんがいくらでもいます 私 も 自 分 で 漢 方 を 愛 用 していますが 虚 証 的 の 漢 方 薬 が 合 うな という 日 もあれば 少 し 実 証 的 な 漢 方 薬 がいいなという 日 もあります 基 本 的 に 実 証 の 患 者 さんは 瀉 剤 によって 余 分 なものを 体 から 奪 います 例 えば 大 黄 で 瀉 下 したり 石 膏 で 熱 を 奪 ったり 等 です それに 対 して 虚 証 は 補 う 補 気 薬 例 えば 人 参 とか 血 を 養 うようなもの 四 物 湯 に 代 表 される 当 帰 川 芎 地 黄 等 を 用 います まず 風 邪 等 の 気 道 感 染 を 例 に 虚 実 の 処 方 の 例 を 示 してみたいと 思 います 条 件 反 射 で 風 邪 に 葛 根 湯 といいますが 実 際 には 実 証 には 麻 黄 湯 中 間 から 実 証 にかけては 葛 根 湯 虚 証 には 桂 枝 湯 が 基 本 的 な 処 方 になります 麻 黄 は 中 枢 性 の 興 奮 作 用 があり 気 道 感 染 いろいろな 体 の 痛 み 喘 息 等 に 用 いる 製 剤 に 入 っています 3 つ 挙 げた 風 邪 の 漢 方 薬 に 加 え もう 一 つよく 使 うのが 麻 黄 と 附 子 の 入 った 麻 黄 附 子 細 辛 湯 です お 年 寄 りで 体 が 冷 え 冷 えして 寒 い 際 に 非 常 によく 使 われます これは 麻 黄 が 含 まれているにもかかわらず 比 較 的 虚 証 の 患 者 さんに 使 われる 薬 です 気 道 感 染 ( 風 邪 など)の 例 証 方 剤 実 麻 黄 湯 中 間 葛 根 湯 虚 桂 枝 湯 麻 黄 を 含 む 方 剤 麻 黄 湯 葛 根 湯 葛 根 湯 加 川 芎 辛 夷 麻 黄 附 子 細 辛 湯 小 青 竜 湯 麻 杏 甘 石 湯 五 虎 湯 神 秘 湯 越 婢 加 朮 湯 薏 苡 仁 湯 風 邪 にはいろいろな 随 伴 症 状 が 出 ますが 例 えば 鼻 水 には 小 青 竜 湯 葛 根 湯 加 川 芎 辛 夷 麻 黄 附 子 117
脳 神 経 外 科 と 漢 方 細 辛 湯 苓 甘 姜 味 辛 夏 仁 湯 等 が 使 われます 初 めの 3 つの 処 方 には 麻 黄 が 入 っています 漢 方 の 中 で 飲 むと 胃 を 傷 める 生 薬 があり その 一 つが 麻 黄 もう 一 つが 地 黄 です 地 黄 は 体 が 比 較 的 弱 い 人 や 高 齢 者 に 使 いますが 私 のように 胃 の 弱 い 人 が 飲 むと 胃 がやられてしまうので 麻 黄 と 地 黄 の 入 った 処 方 を 出 す 場 合 は 胃 が 丈 夫 かどうか 確 認 すべきですし 食 前 服 用 の 際 は 胃 薬 を 一 緒 に 出 すのが 親 切 かなと 思 います 随 伴 症 状 に 対 する 処 方 - 鼻 水 小 青 竜 湯 葛 根 湯 加 川 芎 辛 夷 麻 黄 附 子 細 辛 湯 苓 甘 姜 味 辛 夏 仁 湯 咳 痰 麦 門 冬 湯 麻 杏 甘 石 湯 小 青 竜 湯 半 夏 厚 朴 湯 竹 筎 温 胆 湯 清 肺 湯 小 青 竜 湯 はご 存 じのように ぽとぽと 垂 れるような 鼻 水 に 用 いますが 咳 や 痰 に 使 うこともあります 麦 門 冬 湯 は 非 常 に 有 名 ですが 比 較 的 体 力 のない 人 で 激 しい 咳 痰 が 粘 稠 の 場 合 によく 使 われま す 中 間 証 でゼーゼーと 激 しくて 咳 が 止 まらない 場 合 は 麻 杏 甘 石 湯 を 飲 むと 驚 くようによく 止 まります 小 児 の 喘 息 にも 用 います 麻 杏 甘 石 湯 に 鎮 咳 作 用 のある 桑 白 皮 を 加 えたものが 五 虎 湯 ですが 麻 杏 甘 石 湯 と 五 虎 湯 は 同 じような 形 で 使 うことができます 一 般 の 風 邪 の 人 でなかなか 咳 や 痰 が 取 れない 場 合 は 竹 筎 温 胆 湯 が 比 較 的 中 間 証 的 な 薬 ですから 誰 にでも 使 えます なかなか 痰 が 切 れない 場 合 は 清 肺 湯 等 に 切 り 替 えるとよいと 思 います 桔 梗 湯 という 甘 草 と 桔 梗 だけの 漢 方 薬 があります 甘 草 ともう 1 種 類 だけを 加 えた 漢 方 薬 は 喉 の 痛 みを 取 る 桔 梗 湯 と 筋 肉 のこむら 返 りを 取 る 薬 甘 草 湯 便 秘 に 使 う 大 黄 甘 草 湯 の 3 つがあります 桔 梗 湯 も 急 性 期 の 喉 の 痛 みに 非 常 に 有 効 です 慢 性 化 したら 小 柴 胡 湯 加 桔 梗 石 膏 等 を 使 います 喉 の 痛 み 桔 梗 湯 慢 性 化 したら 小 柴 胡 湯 加 桔 梗 石 膏 桔 梗 湯 桔 梗 甘 草 風 邪 などの 慢 性 化 に 使 用 する 柴 胡 剤 大 柴 胡 湯 実 証 四 逆 散 小 柴 胡 湯 柴 胡 桂 枝 湯 柴 胡 桂 枝 乾 姜 湯 補 中 益 気 湯 虚 証 柴 胡 剤 は 漢 方 のステロイドと 呼 ばれるぐらいに 慢 性 的 な 状 況 においては 非 常 に 有 効 な 薬 で 多 くの 柴 胡 剤 があります ただし 柴 胡 というと 小 柴 胡 湯 があまりにも 有 名 で すぐに 小 柴 胡 湯 を 追 加 することになり がちですが 柴 胡 剤 にも 実 証 のものから 一 番 虚 証 的 な 補 中 益 気 湯 まであります 従 いまして 柴 胡 剤 と 症 状 に 対 応 する 薬 とを 併 用 する 形 がよいと 思 います 例 えば 咳 が 取 れないで 慢 性 化 していたら 実 証 や 中 間 証 には 麻 杏 甘 石 湯 や 五 虎 湯 と 小 柴 胡 湯 や 大 柴 胡 湯 を 組 み 合 わせる もう 少 し 中 間 証 的 になってくると 竹 筎 温 胆 湯 と 小 柴 胡 湯 あるいはちょっと 強 い 麻 杏 甘 石 湯 とちょっと 弱 めの 柴 胡 桂 枝 湯 を 加 えて 中 和 する 118
実 中 間 咳 きがとれず 慢 性 化 中 間 証 咳 痰 がとれず 慢 性 化 麻 杏 甘 石 湯 + 小 柴 胡 湯 五 虎 湯 + 大 柴 胡 湯 竹 茹 温 胆 湯 + 小 柴 胡 湯 麻 杏 甘 石 湯 + 柴 胡 桂 枝 湯 虚 証 の 場 合 麦 門 冬 湯 と 柴 胡 桂 枝 乾 姜 湯 にする この 組 み 合 わせは 非 常 に 有 名 な 組 み 合 わせで 虚 し た 人 のなかなか 取 れない 咳 や 喘 息 には 極 めて 有 効 です 虚 証 咳 がとれず 慢 性 化 麦 門 冬 湯 + 柴 胡 桂 枝 乾 姜 湯 滋 陰 至 宝 湯 + 人 参 養 栄 湯 老 人 虚 証 咳 がとれず 慢 性 化 食 欲 もない 滋 陰 降 火 湯 + 補 中 益 気 湯 麦 門 冬 湯 + 人 参 養 栄 湯 漢 方 を 学 び 始 めたときに 滋 陰 至 宝 湯 とか 滋 陰 降 火 湯 とか 何 が 何 だかよく 分 からなくなりますが 滋 陰 至 宝 湯 は 比 較 的 虚 証 の 人 に 使 うもので これに 人 参 養 栄 湯 を 組 み 合 わせる これも 長 引 いた 痰 咳 に 効 果 があります 虚 証 の 場 合 は 滋 陰 至 宝 湯 を 使 いますが 年 を 取 っている 老 人 の 虚 証 には 滋 陰 降 火 湯 と 補 中 益 気 湯 あるいは 麦 門 冬 湯 と 人 参 養 栄 湯 の 組 み 合 わせが 可 能 となります 小 柴 胡 湯 は 肝 炎 にもよく 使 いますが 中 間 証 的 な 小 柴 胡 湯 は 思 っている 以 上 に 強 い 薬 です ですから 状 況 に 応 じて 柴 胡 桂 枝 湯 非 常 に 虚 していれば 補 中 益 気 湯 を 使 う 等 の 配 慮 が 必 要 になってきます 気 道 感 染 を 例 に 虚 証 と 実 証 の 薬 を 挙 げてきましたが 後 半 では 気 血 水 の 異 常 に 対 する 処 方 を 考 え てみたいと 思 います まず 気 ですが 気 は 上 に 上 ることが 多 く 上 衝 している 状 態 次 に 気 のめぐりが 悪 くなっている 状 態 それ から 完 全 に 気 が 虚 している 状 態 に 分 けて 考 えます 大 塚 敬 節 先 生 の 一 文 に 気 が 上 衝 すれば 桂 枝 を 用 いる と 書 かれています 気 が 上 ると 足 が 冷 えて のぼせ 頭 痛 めまい 動 悸 等 が 起 こるので このような 場 合 には 桂 枝 の 配 合 されている 桂 枝 湯 苓 桂 朮 甘 湯 五 苓 散 桂 枝 加 竜 骨 牡 蛎 湯 等 が 用 いられます 桂 枝 は 抗 炎 症 抗 アレルギー 発 汗 解 熱 鎮 静 鎮 痙 作 用 があり これらの 作 用 が 上 衝 の 気 を 抑 える 役 目 を 持 っていると 思 います 私 自 身 てんかんを 長 いこと 専 門 にしてきましたが てんかんも 上 衝 の 気 と 合 致 するのかもしれません 慶 應 大 学 外 科 出 身 で 偉 大 な 漢 方 医 の 相 見 三 郎 先 生 が 漢 方 の 知 恵 という 本 の 中 で 私 は 柴 胡 桂 枝 湯 によるてんかん 治 療 をすでに 1000 例 以 上 実 施 していますが この 漢 方 薬 でてんかんのほとんど 全 部 を 治 癒 または 軽 くすることができました と うらやましいような 内 容 が 書 いてあります 柴 胡 桂 枝 湯 を 続 けてい ると 発 作 が 起 きなくなるばかりでなく 性 格 の 変 化 が 目 立 ちます という 一 文 があります その 後 相 見 先 生 は 柴 胡 桂 枝 湯 は 小 柴 胡 湯 と 桂 枝 湯 の 合 方 で 私 は 本 方 に 薬 を 増 量 したものを 用 いて 効 果 を 上 げています とあります 要 するに 柴 胡 桂 枝 湯 の 薬 をさらに 増 やすために 小 柴 胡 湯 合 桂 枝 加 薬 湯 つまり 桂 枝 湯 ではなくて 桂 枝 加 薬 湯 を 足 すと 薬 の 量 を 増 やすことができる これが 相 119
脳 神 経 外 科 と 漢 方 見 先 生 の 有 名 な 処 方 です 相 見 処 方 と 芍 薬 柴 胡 桂 枝 湯 日 局 サイコ 5.0g 日 局 シャクヤク. 2.0g 日 局 ハンゲ 4.0g 日 局 タイソウ. 2.0g 日 局 オウゴン..2.0g 日 局 ニンジン 2.0g 日 局 カンゾウ 2.0g 日 局 ショウキョウ 1.0g 日 局 ケイヒ. 2.0g 小 柴 胡 湯 日 局 サイコ 7.0g 日 局 ハンゲ 5.0g 日 局 オウゴン 3.0g 日 局 タイソウ 3.0g 日 局 ニンジン 3.0g 日 局 カンゾウ 2.0g 日 局 ショウキョウ 1.0g 桂 枝 加 芍 薬 湯 日 局 シャクヤク 6.0g 日 局 ケイヒ 4.0g 日 局 タイソウ 4.0g 日 局 カンゾウ 2.0g 日 局 ショウキョウ 1.0g ( 株 式 会 社 ツムラ ) 芍 薬 の 用 途 感 冒 --- 桂 枝 湯 葛 根 湯 鎮 痛 鎮 痙 --- 芍 薬 甘 草 湯 桂 枝 加 芍 薬 湯 婦 人 病 --- 当 帰 芍 薬 散 四 物 湯 細 菌 感 染 症 --- 荊 芥 連 翹 湯 大 柴 胡 湯 薬 がなぜそんなに 効 果 があるかですが ペンチレンテトラゾールで 誘 発 した 痙 攣 に 対 して 効 果 がある ことが 薬 理 学 的 にも 示 されています 薬 は 非 常 に 多 くの 婦 人 病 にも 使 われていますが 鎮 痛 鎮 痙 筋 肉 のこむら 返 り 等 に 用 いる 薬 甘 草 湯 ぐずり 腹 便 が 一 定 していなかったりする 場 合 に 用 いる 桂 枝 加 薬 湯 等 多 くの 漢 方 薬 で 使 われています 私 が 実 際 にてんかんに 使 った 例 を 示 します 普 段 はもちろん 西 洋 薬 のてんかん 薬 を 使 っているのですが 中 にはどうしても 西 洋 薬 でアレルギーが 出 る 人 がいます 28 歳 の 女 性 は 15 歳 の 時 にデジャヴュで 発 症 して 24 歳 で 就 職 した 途 端 に 発 作 が 悪 化 して 実 際 に 複 雑 部 分 発 作 が 起 きるようになり 脳 波 では 左 の 側 頭 部 の 後 半 から 両 側 の 後 頭 部 で 左 の 側 頭 葉 の 後 半 部 にα 波 が 反 復 して 見 られています 西 洋 薬 のどれも 結 局 合 わなくて 26 歳 から 相 見 処 方 である 小 柴 胡 湯 合 桂 枝 加 薬 湯 を 投 与 して それに 抑 肝 散 を 加 えました 1 日 2 回 で 開 始 したところ 服 薬 後 1~2 ヶ 月 で 徐 々に 効 果 を 感 じ その 後 しょっちゅうあったデジャヴュの 前 兆 も 含 め てんかん 発 作 の 症 状 が 消 失 して 現 在 は 1 年 8 ヶ 月 経 ちますが まったく 発 作 がない 状 態 が 続 いています これは 相 見 処 方 を 使 って 劇 的 に 効 いた 1 例 です 症 例 報 告 28 歳 女 性 15 歳 で déjà vu で 発 症 24 歳 で 就 職 したら 発 作 が 悪 化 意 識 減 損 が 出 現. テグレトール エクセグラン ダイアモックスなどですべて 薬 疹 が 出 現. 脳 波 では 左 側 頭 部 後 半 から 両 側 後 頭 部 に 波 及 する 鋭 波 が 反 復 してみられた. 26 歳 から 小 柴 胡 湯 合 桂 枝 加 芍 薬 湯 ( 相 見 処 方 ) と 抑 肝 散 を 一 日 2 包 分 2で 開 始. 本 人 の 感 じでは 服 薬 後 1-2ヶ 月 で 徐 々に 効 果 を 感 じ 始 めた. その 後 déjà vu の 前 兆 も 含 めててんかん 症 状 が 消 失. 現 在 まで1 年 は8ヶ 月 全 く 発 作 がない 状 態 で 経 過 している. 仕 事 も フルタイムの 事 務 職 を 継 続 している. その 他 のてんかんに 用 いられる 漢 方 ( 柴 胡 桂 枝 湯 ) 柴 胡 加 竜 骨 牡 蛎 湯 抑 肝 散 抑 肝 散 加 陳 皮 半 夏 甘 麦 大 棗 湯 大 柴 胡 湯 小 柴 胡 湯 てんかんに 用 いられる 漢 方 薬 は 柴 胡 桂 枝 湯 柴 胡 加 竜 骨 牡 蛎 湯 抑 肝 散 抑 肝 散 加 陳 皮 半 夏 甘 麦 大 棗 湯 大 柴 胡 湯 小 柴 胡 湯 等 です このうち 抑 肝 散 が 非 常 に 近 年 注 目 されている 漢 方 薬 で 大 塚 敬 節 先 生 の 漢 方 医 学 の 中 に 小 児 麻 痺 に 限 らず 小 児 の 痙 攣 発 作 発 育 不 良 くる 病 チック 病 神 経 質 等 にも この 抑 肝 散 という 薬 方 は 不 思 議 とよく 効 くと 記 載 があります この 抑 肝 散 の 中 の 釣 藤 鈎 が 重 要 な 役 割 を 果 たしているのではないかと 述 べていま す 抑 肝 散 は 確 かに 患 者 さんに 投 与 してみると 中 枢 神 経 の 抑 制 作 用 が 見 られます 釣 藤 鈎 以 外 にも 柴 胡 当 帰 川 芎 等 中 枢 神 経 に 関 係 すると 思 われる 生 薬 が 入 っています 体 力 中 等 度 の 人 の 神 経 過 敏 興 奮 イライラ 不 安 等 の 精 神 神 経 症 状 に 効 果 があります 抑 肝 散 に 陳 皮 と 半 夏 を 加 えたものが 抑 肝 散 加 陳 皮 半 夏 です 抑 肝 散 よりちょっと 胃 が 弱 いとか 体 力 が 低 120
下 した 人 に 使 えますので 基 本 的 には 抑 肝 散 と 抑 肝 散 加 陳 皮 半 夏 はほぼ 同 等 に 使 ってもよいと 思 います 抑 肝 散 が 世 間 で 注 目 されるようになったのが 認 知 症 の 周 辺 症 状 BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)です 昔 は 抑 肝 散 というと 小 児 の 疳 の 虫 を 抑 える 薬 と 考 えられていたのが 認 知 症 の 周 辺 症 状 に 対 し 非 常 に 効 果 があるということで 一 躍 世 間 の 注 目 を 浴 びたわけです これは 私 が 時 々 試 みているのですが いわゆる ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder) 最 近 は 大 人 にでもあるといわれていますが これにもかなりの 効 果 が 見 られます 私 は 抑 肝 散 だけではなく こ れに 甘 麦 大 棗 湯 を 加 えて 使 うことが 多 いのですが 非 常 に 有 効 です 何 よりもてんかんの 治 療 をして 困 るのは 側 頭 葉 てんかんの 場 合 に 発 作 が 起 きる 直 前 になってきますと どういうわけかイライラ 攻 撃 性 が 非 常 に 高 まってくるのです 発 作 が 起 きて 放 電 してしまうと 嘘 のように 元 の 本 来 の 性 格 に 戻 る なかなかこのイライラ 攻 撃 性 は 止 めるのが 難 しいのです ところが 抑 肝 散 を 使 ってみると 驚 くほど 効 果 があるのです 私 は 抑 肝 散 を 加 える 場 合 と 抑 肝 散 に 甘 麦 大 棗 湯 を 足 して 治 療 する 場 合 と 両 方 やっています 側 頭 葉 てんかんで 困 ってしまった 患 者 がたくさん 来 られる ので 統 計 を 取 ってみました 実 に 自 分 が 診 ている 患 者 の 4 分 の 1 が 抑 肝 散 を 飲 んでいるのでちょっと 驚 き ました どうしても 効 果 がなかったら リスペリドンやハロペリドール 等 西 洋 薬 に 移 っていくわけですが そうなる とどうしても 眠 気 が 出 て 抑 肝 散 のように 眠 気 なしに 精 神 症 状 を 抑 えることはできません 側 頭 葉 てんかんの 精 神 症 状 に 対 する 処 方 抑 肝 散 ( 抑 肝 散 加 陳 皮 半 夏 ) 抑 肝 散 + 甘 麦 大 棗 湯 気 うつ 半 夏 厚 朴 湯 咽 頭 部 の 異 常 感 が 使 用 目 標 となる 香 蘇 散 体 力 の 弱 い 人 感 冒 の 初 期 の 抑 うつ 柴 朴 湯 ---- 小 柴 胡 湯 + 半 夏 厚 朴 湯 次 に 気 うつに 対 しては 半 夏 厚 朴 湯 香 蘇 散 柴 朴 湯 等 を 用 います 漢 方 薬 の 向 精 神 薬 は 半 夏 厚 朴 湯 というイメージがありますが そういうつもりで 半 夏 厚 朴 湯 を 使 うとそんなには 効 かないのです やはり 患 者 さんの 症 状 をよく 見 て なんとなく 気 うつで 喉 のあたりの 違 和 感 とか 咽 頭 部 の 異 常 感 とかがある 場 合 に 半 夏 厚 朴 湯 の 決 め 手 になるようで ただ 精 神 症 状 だから 半 夏 厚 朴 湯 が 効 くかというと なかなかそうではな いのです 気 虚 易 疲 労 感 慢 性 的 倦 怠 感 意 欲 障 害 食 欲 低 下 など 補 中 益 気 湯 十 全 大 補 湯 気 が 虚 している 場 合 ですが 現 在 気 分 障 害 でうつの 人 が 非 常 に 多 く うつの 中 でも 何 もやる 気 がしない という 強 いうつ 病 の 人 に 思 い 切 って 十 全 大 補 湯 等 を 出 してみると 意 外 と 効 果 があるのです 漢 方 薬 はい ろいろな 意 味 で 気 と 関 係 していますので 予 想 外 の 利 用 の 仕 方 がすごい 効 果 を 示 すことがあります 私 は 121
脳 神 経 外 科 と 漢 方 補 中 益 気 湯 をやる 気 のない 人 に 盛 んに 使 用 しています それから 気 血 水 の 血 ですが 血 には 瘀 血 という 静 脈 還 流 の 異 常 の 概 念 血 虚 という 血 が 虚 する 状 態 低 栄 養 の 状 態 の 概 念 があります 瘀 血 は 簡 単 にいうと 静 脈 の 還 流 が 悪 いわけです 女 性 の 下 肢 静 脈 瘤 に 駆 瘀 血 剤 の 桂 枝 茯 苓 丸 を 使 っ たら 治 った 症 例 報 告 等 がありますし 門 脈 系 の 静 脈 の 戻 りが 悪 くなっていることが 多 いので 小 柴 胡 湯 に 桂 枝 茯 苓 丸 を 加 えることも 慢 性 肝 炎 の 治 療 法 の 一 つとして 用 いられています 瘀 血 の 腹 症 で 有 名 なのは 骨 盤 のすぐ 上 の 腹 部 不 快 感 や 圧 痛 です おそらくこれは 骨 盤 内 の 静 脈 還 流 の 異 常 を 示 していると 考 えられています 瘀 血 症 状 は 舌 の 裏 側 の 静 脈 うっ 血 皮 膚 粘 膜 の 暗 赤 色 等 様 々な 形 で 診 断 できます また 月 経 異 常 や 無 月 経 と 関 連 していることが 多 く 代 表 的 治 療 薬 は 婦 人 の 代 表 三 剤 であるツムラの 23 24 25 番 です 虚 証 には 23 当 帰 薬 散 中 間 証 からやや 実 証 には 25 桂 枝 茯 苓 丸 ヒステリックでうるさか ったら 24 加 味 逍 遥 散 というように 使 い 分 けますが 外 れても 大 きくは 外 れないという 意 味 で 非 常 に 使 いや すい 便 利 な 漢 方 薬 です しかし 漢 方 薬 が 女 性 に 優 しいといわれるように 婦 人 に 使 う 血 の 道 症 の 漢 方 薬 は 他 にもたくさんあります 月 経 異 常 更 年 期 障 害 婦 人 の 代 表 三 薬 当 帰 芍 薬 散 ----- 虚 証 加 味 逍 遙 散 ----- 虚 証 多 愁 訴,ヒステリック 桂 枝 茯 苓 丸 ----- 中 間 ー 実 証 血 の 道 症 の 漢 方 大 黄 牡 丹 皮 湯 桃 核 承 気 湯 桂 枝 茯 苓 丸 女 神 散 加 味 逍 遙 散 温 経 湯 当 帰 芍 薬 散 四 物 湯 当 帰 四 逆 加 呉 茱 萸 生 姜 湯 実 証 虚 証 それから 血 虚 ですが 栄 養 状 態 が 悪 くなってきて 疲 労 感 が 強 い 倦 怠 感 が 強 い 貧 血 や 低 栄 養 の 状 態 です 血 虚 の 代 表 的 な 処 方 に 四 物 湯 があり 当 帰 薬 川 芎 地 黄 が 構 成 生 薬 です 血 虚 には 四 物 湯 十 全 大 補 湯 さらに 出 血 等 が 止 まらない 時 によく 使 われる 芎 帰 膠 湯 等 当 帰 薬 川 芎 地 黄 を 含 む 処 方 を 使 います さらに 補 気 作 用 が 強 く しかも 血 虚 にも 有 効 である 薬 として 人 参 と 黄 耆 を 含 む 参 耆 剤 があります 黄 耆 は 補 血 剤 か 補 気 剤 かと 議 論 のあるところですが 基 本 的 には 気 剤 のほうに 属 するのかもしれませ ん 参 耆 剤 強 い 補 気 作 用 とともに 血 虚 に も 有 効 体 力 が 著 しく 低 下 した 状 態 外 科 手 術 後 慢 性 疾 患 による 衰 弱 ( 癌 ) うつ 病 三 薬 の 構 成 生 薬 補 中 益 気 湯 黄 耆 当 帰 人 参 蒼 朮 柴 胡 大 棗 陳 皮 甘 草 升 麻 生 姜 十 全 大 補 湯 黄 耆 当 帰 人 参 桂 皮 芍 薬 川 芎 蒼 朮 地 黄 茯 苓 甘 草 人 参 養 栄 湯 : 黄 耆 当 帰 人 参 地 黄 白 朮 茯 苓 桂 皮 遠 志 芍 薬 陳 皮 甘 草 五 味 子 体 力 が 著 しく 低 下 した 場 合 外 科 手 術 後 に 体 が 弱 っている 場 合 がんがあるけれども 高 齢 のため 手 術 を しないで 漢 方 薬 で 治 療 してみたい 場 合 等 には 非 常 に 適 しています 参 耆 剤 の 代 表 が 補 中 益 気 湯 十 全 大 補 湯 人 参 養 栄 湯 です この 三 剤 のどれかを 選 択 して 使 うと 低 122
栄 養 で 疲 労 し 切 った 状 態 の 時 には 極 めて 有 効 です それから 最 後 に 水 の 異 常 です 水 の 異 常 はいろいろなものがあります 例 えば 尿 量 の 異 常 で 五 苓 散 鼻 水 で 小 青 竜 湯 めまいで 苓 桂 朮 甘 湯 さらに 水 毒 による 頭 痛 では 今 日 の 講 演 で 何 回 も 出 てきました 五 苓 散 等 が 有 効 です サルノコシカケ 科 に 属 する 茯 苓 や 猪 苓 が 水 毒 に 用 いる 代 表 的 な 生 薬 です 茯 苓 は 強 い 利 水 作 用 を 持 ち 桂 枝 茯 苓 丸 五 苓 散 猪 苓 湯 柴 朴 湯 茯 苓 飲 苓 甘 姜 味 辛 夏 仁 湯 等 に 使 われます 茯 苓 を 含 む 方 剤 桂 枝 茯 苓 丸 五 苓 散 柴 苓 湯 柴 朴 湯 茯 苓 飲 苓 甘 姜 味 辛 夏 仁 湯 猪 苓 湯 猪 苓 を 含 む 方 剤 猪 苓 湯 五 苓 散 柴 苓 湯 胃 苓 湯 茵 陳 五 苓 散 猪 苓 湯 合 四 物 湯 水 毒 治 療 薬 の 代 表 が 五 苓 散 です 利 水 作 用 を 持 つ 代 表 的 な 四 生 薬 の 茯 苓 猪 苓 沢 瀉 蒼 朮 が 入 り さらに 桂 皮 が 加 わり 五 苓 散 を 構 成 しています 面 白 いのは 低 気 圧 の 通 過 前 雨 が 降 る 前 に 頭 痛 が 起 こりやすい 人 は 五 苓 散 を 使 ってみると 非 常 によ い 効 果 があります さらに これから 非 常 に 役 に 立 つのが 二 日 酔 いです 以 前 私 はお 酒 を 飲 みすぎて 夜 中 の 午 前 2 時 か 3 時 くらいにすごい 二 日 酔 いで 目 が 覚 めました 引 き 出 しの 中 をかき 回 していたら 五 苓 散 が 出 てきたので 飲 んだのですが 本 当 にびっくりするほど 短 い 時 間 で 痛 みが 取 れたので こんなによく 効 くものかと 改 めて 五 苓 散 の 効 果 を 見 直 しました また 江 戸 時 代 から 漢 方 医 は 浮 腫 が 出 たら 五 苓 散 をとにかく 使 うことが 慣 習 的 に 行 われています それから 下 痢 にもいろいろな 種 類 の 下 痢 がありますが 水 様 性 下 痢 にはまず 五 苓 散 を 使 うのが 普 通 です あるいは 柴 苓 湯 等 も 使 われます 五 苓 散 の 効 能 浮 腫 水 様 性 下 痢 頭 痛 ( 低 気 圧 で 悪 化 する) 二 日 酔 い ネフローゼ めまい その 他 の 水 毒 に 使 用 される 漢 方 柴 苓 湯 --- 水 様 性 下 痢 むくみ 猪 苓 湯 --- 尿 道 腎 臓 小 青 竜 湯 --- 鼻 水 小 半 夏 加 茯 苓 湯 ---つわり 半 夏 白 朮 天 麻 湯 --- めまい 頭 痛 防 已 黄 耆 湯 ---- 水 太 り 真 武 湯 ---- 下 痢 めまい その 他 尿 道 疾 患 に 関 しては 猪 苓 湯 鼻 水 の 小 青 竜 湯 つわりの 小 半 夏 加 茯 苓 湯 これはつわりに 限 ら ず 気 持 ちが 悪 い 吐 き 気 がするという 人 に 投 与 してみると 非 常 に 効 果 があります それから 水 太 りの 場 合 の 防 己 黄 耆 湯 等 です 次 に 日 頃 ちょっと 使 うと 便 利 がよい 漢 方 薬 をいくつか 示 してみます 花 粉 症 のシーズンの 時 によく 使 われる 小 青 竜 湯 は 麻 黄 により 胃 をこわすことがあります 対 策 として 胃 薬 と 一 緒 に 出 す 方 法 もありますが 119 番 の 苓 甘 姜 味 辛 夏 仁 湯 という 茯 苓 甘 草 生 姜 五 味 子 細 辛 半 夏 からなる 漢 方 薬 を 使 います これも 結 構 よく 効 きます 123
脳 神 経 外 科 と 漢 方 また 小 青 竜 湯 が 去 年 までは 効 いたが 今 年 は 効 かないという 人 は 麻 黄 附 子 細 辛 湯 や 葛 根 湯 加 川 芎 辛 夷 等 を 証 にこだわらず 出 しても 結 構 効 果 があります 花 粉 症 まず 小 青 竜 湯 を 試 みる 麻 黄 剤 で 胃 をこわす 人 は 苓 甘 姜 味 辛 夏 仁 湯 小 青 竜 湯 に 反 応 しなくなったら 麻 黄 附 子 細 辛 湯 葛 根 湯 加 川 芎 辛 夷 背 景 にH1 受 容 体 拮 抗 薬 を 服 用 し 屯 用 時 に PL 顆 粒 を 追 加 する 方 法 も 有 効 冷 え 強 い 冷 え --- 当 帰 四 逆 加 呉 茱 萸 生 姜 湯 下 半 身 の 冷 え --- 苓 姜 朮 甘 湯 女 性 の 三 剤 当 帰 芍 薬 散 加 味 逍 遥 散 桂 枝 茯 苓 丸 風 邪 の 冷 え --- 麻 黄 附 子 細 辛 湯 それから 冷 えは 漢 方 のかなり 得 意 分 野 の 一 つですが 当 帰 四 逆 加 呉 茱 萸 生 姜 湯 が 非 常 に 冷 えによく 効 きます 下 半 身 だけが 強 く 冷 える 場 合 には 苓 姜 朮 甘 湯 苓 桂 朮 甘 湯 もありますが 苓 姜 によって 下 半 身 の 冷 えがよく 取 れます 冷 えは 必 ずしも 虚 証 だけではなく 中 間 証 の 人 でも 冷 えを 訴 えることも 多 く 女 性 の 代 表 的 な 三 剤 23 当 帰 薬 散 24 加 味 逍 遙 散 25 桂 枝 茯 苓 丸 もよく 効 きます さらに 風 邪 でぞくぞくする 時 には 麻 黄 附 子 細 辛 湯 を 用 います 次 は 便 秘 についてです 開 業 すると 女 性 というのはこんなに 便 秘 なのかと 思 うくらい 便 秘 ばかり 来 るの ですが とにかく 大 黄 甘 草 湯 が 一 番 使 いやすい 処 方 です 甘 草 により 効 果 がマイルドになり 大 黄 だけより はずっと 使 いやすくなります 量 を 調 整 することでほとんどの 人 の 便 秘 に 対 応 できます 寝 る 前 に 1 包 飲 ん でおくだけで 快 便 が 得 られる 場 合 が 多 く それでもどうしても 効 かない 場 合 は 大 承 気 湯 を 用 います また 体 力 があまりない 人 の 便 秘 には 潤 腸 湯 や 麻 子 仁 丸 を 用 います 漢 方 の 便 秘 治 療 で 便 利 がよいのは カマと 一 緒 に 飲 むと 効 果 が 倍 増 することです 漢 方 薬 の 効 きが 不 十 分 の 時 には 錠 剤 のマグラックスと 混 ぜてみるとよいと 思 います 便 秘 証 に 関 わらず 大 黄 甘 草 湯 をまず 試 みる さらに 強 い 便 秘 --- 大 承 気 湯 老 人 虚 弱 者 の 便 秘 潤 腸 湯 麻 子 仁 丸 * 漢 方 の 便 秘 薬 にはカマ ( 酸 化 マグネ シウム)との 併 用 が 有 効 腰 痛 下 肢 痛 疎 経 活 血 湯 しばしば 著 効 する 牛 車 腎 気 丸 ---- 下 肢 にむくみがあるときなど 冷 えに 伴 う 痛 み 桂 枝 加 朮 附 湯 当 帰 四 逆 加 呉 茱 萸 生 姜 湯 それからペインクリニックではよく 使 っている 疎 経 活 血 湯 ですが 腰 痛 の 時 に 処 方 すると ほとんどの 人 が 良 くなったと 喜 びます 疎 経 活 血 湯 を 補 うものとして 牛 車 腎 気 丸 冷 えに 伴 って 痛 みが 出 てくる 場 合 は 桂 枝 加 朮 附 湯 や 当 帰 四 逆 加 呉 茱 萸 生 姜 湯 を 用 います 当 帰 四 逆 加 呉 茱 萸 生 姜 湯 は 冷 えてくると 腹 部 や 腰 の 周 りが 痛 くなる 等 の 腰 痛 によく 効 きます 過 敏 性 大 腸 症 候 群 (IBS)ですが 相 見 処 方 で 使 った 桂 枝 加 薬 湯 が 実 に 一 番 の 基 本 薬 になります 過 敏 性 大 腸 症 候 群 で 便 秘 が 顕 著 の 時 には 桂 枝 加 薬 大 黄 湯 または 桂 枝 加 薬 湯 を 基 本 に 大 黄 甘 草 湯 を 加 減 する 方 法 もあります 腹 痛 の 時 には 小 建 中 湯 腹 がゴロゴロする 時 には 外 科 手 術 後 の 漢 方 薬 として 最 近 注 目 されている 大 建 中 湯 等 も 有 効 です 124
過 敏 性 腸 症 (IBS) 桂 枝 加 芍 薬 湯 が 基 本 便 秘 が 顕 著 桂 枝 加 芍 薬 大 黄 湯 腹 痛 が 顕 著 小 建 中 湯 鼓 腸 腸 管 の 蠕 動 亢 進 大 建 中 湯 頭 痛 五 苓 散 低 気 圧 で 悪 化 川 芎 茶 調 散 生 理 中 の 痛 み 当 帰 四 逆 加 呉 茱 萸 生 姜 湯 呉 茱 萸 湯 冷 えを 伴 う 頭 痛 葛 根 湯 神 経 痛 筋 緊 張 性 頭 痛 頭 痛 には 呉 茱 萸 湯 ということに 漢 方 ではなっているのですが 呉 茱 萸 湯 を 使 ってもなかなか 簡 単 に 頭 痛 は 取 れません 頭 痛 一 つに 対 しても いろいろと 工 夫 してみないといけないと 思 います 低 気 圧 で 悪 化 するような 場 合 は 五 苓 散 のほうが 非 常 によく 効 きますし 生 理 中 に 頭 痛 が 強 くなる 場 合 は 川 芎 茶 調 散 がかなりの 効 果 を 示 します 特 に 呉 茱 萸 湯 が 効 くのは 冷 えを 伴 った 人 の 頭 痛 で さらに 冷 え の 強 い 人 には 当 帰 四 逆 加 呉 茱 萸 生 姜 湯 を 使 うとよいと 思 います また 葛 根 湯 も 神 経 痛 筋 緊 張 性 頭 痛 等 急 性 期 的 な 痛 みには 非 常 によく 効 果 を 示 します 筋 肉 痛 は 生 薬 2 つから 成 る 薬 甘 草 湯 を 用 います 朝 起 きた 時 に 筋 肉 がこむら 返 りをして 痛 くてしよう がないという 高 齢 者 がよくいますが 寝 る 前 に 一 包 だけ 薬 甘 草 湯 を 服 用 すると 起 きた 時 に 全 然 筋 肉 の 痛 みがないといいますので 非 常 に 便 利 です 薬 甘 草 湯 を 頓 用 でなくて 継 続 して 出 すことも 可 能 なので すが 甘 草 の 量 が 非 常 に 多 く 高 齢 者 は 偽 アルドステロン 症 にすぐになってしまいますから 気 をつける 必 要 があります 筋 肉 痛 には 疎 経 活 血 湯 や 薏 苡 仁 湯 も 使 われます 筋 肉 痛 芍 薬 甘 草 湯 筋 肉 痛 内 臓 痛 ともに 有 効 屯 用 でも 継 続 投 与 でも 可 起 床 時 の 筋 肉 痛 には, 眠 前 に 一 包 疎 経 活 血 湯 薏 苡 仁 湯 老 化 現 象 八 味 地 黄 丸 夜 間 頻 尿 腰 が 痛 い 足 が 弱 って 冷 える 疲 労 倦 怠 感 地 黄 で 胃 腸 障 害 のある 場 合 六 君 子 湯 と 合 方 泌 尿 器 症 状 には 清 心 蓮 子 飲 を 代 用 老 化 現 象 一 般 に 対 して 八 味 地 黄 丸 を 長 期 的 に 服 用 していくと 効 果 がよいと 思 います 自 分 の 感 じです が 八 味 地 黄 丸 を 服 用 している 人 は 長 生 きする 気 がします 八 味 地 黄 丸 も 地 黄 が 入 っているため 胃 が 弱 いと 服 用 しにくい 場 合 があり その 場 合 六 君 子 湯 との 合 方 がよいと 成 書 に 書 かれていますが 四 君 子 湯 や 人 参 湯 でもよいのではないかと 思 います それから 大 塚 恭 男 先 生 が 好 まれて 使 われていた 印 象 がありますが 八 味 地 黄 丸 で 胃 をやられる 人 の 代 用 薬 として 泌 尿 器 症 状 には 清 心 蓮 子 飲 が 使 われます おしっこが 出 にくい 場 合 や 頻 尿 に 有 効 です 以 上 漢 方 は 症 状 に 基 づく 投 与 でも 虚 実 の 判 断 ということはやはり 抜 くことはできない それで 体 質 病 態 の 全 体 像 と 局 所 所 見 の 両 方 から 把 握 する その 時 に 気 血 水 という 観 点 で 見 ると 意 外 とその 処 方 薬 が 見 つけやすい 従 って 生 薬 や 基 本 方 剤 をよく 理 解 して これらから 体 系 的 に 広 げていくと 意 外 と 漢 方 は 縦 横 につながりがありますので 興 味 が 出 てくるかと 思 います 125
脳 神 経 外 科 と 漢 方 質 疑 応 答 特 別 講 演 Ⅱ 座 長 : 大 野 喜 久 郎 質 問 てんかんの 子 ども1 例 だけを 漢 方 で 治 療 していますが 小 学 校 1 年 生 の 時 に 初 めて 発 作 を 起 こし そ の 後 半 年 に1 回 ぐらい 発 作 が 起 きて 脳 波 は 異 常 脳 波 が 出 ていました 先 生 が 先 ほどおっしゃったように 発 作 が 起 きる 前 に 非 常 に 興 奮 して 騒 ぎまくります しかし 小 児 神 経 の 先 生 は 子 どもだからというので 何 も 薬 を 出 さずにずっと 様 子 を 見 ているのです 母 親 から 漢 方 でと 相 談 を 受 けたので 異 常 に 興 奮 する 状 態 を 少 し 抑 えれば けいれんも 起 こらなくなるか もねといって 最 初 に 抑 肝 散 を 出 しました 1 年 ほどしたら 脳 波 異 常 も 取 れ 発 作 も 起 きなくなって 抑 肝 散 から 柴 胡 加 竜 骨 牡 蛎 湯 に 切 り 替 えました それでずっと 順 調 で 小 児 神 経 の 先 生 はもう 来 なくてよいとい うのです そこで 漢 方 をいつやめるかということを 先 生 にアドバイスしていただきたいのです 私 も 初 めての 症 例 で よく 分 からないので 何 を 指 標 に いつやめたらよいか 今 悩 んでいます 清 水 非 常 に 重 要 な 問 題 に 触 れられていると 思 います 相 見 三 郎 先 生 の 本 を 読 むと 漢 方 薬 と 西 洋 薬 によ るてんかん 治 療 の 違 いは 西 洋 医 学 では 止 めるだけの 効 果 しかないが 漢 方 治 療 ではてんかんそのものを 根 治 的 に 治 すことができると 書 いているんですね 僕 はそれを 読 んで 本 当 かなと 思 いました というのは てんかんをやる 人 間 にとって てんかん 原 性 epileptogenicityを 取 り 除 くことは 本 当 に 大 きな 問 題 であっ て それをもし 漢 方 で 取 れるのであれば これは 本 当 に 画 期 的 なことになるわけです てんかん 原 性 が 取 れ るのかどうかに 関 しては 正 直 言 って 私 にはほとんど 経 験 がありません そこで 先 生 が 何 か1つの 道 筋 を 見 つけていただければと 思 います 質 問 子 どもの 場 合 は 異 常 脳 波 を 発 達 脳 波 だからというので 神 経 内 科 の 先 生 も 実 際 にけいれんは 起 き ているのですが 西 洋 薬 を 一 切 出 さずに 経 過 観 察 だけでした 私 は 母 親 に 相 談 を 受 けて 症 状 から 非 常 に 過 興 奮 の 状 態 になってから 発 作 を 起 こすので それを 抑 えれば 何 とか 起 きなくなるのではないかという 東 洋 医 学 的 な 観 点 から 出 して うまくいったのか 自 然 に 治 ったのかはよく 分 かりません だから 今 度 漢 方 をいつやめたらいいかと 母 親 にこの 間 も 相 談 を 受 けて うーんという 感 じなんです やめてみて 少 し 様 子 を 見 るというのは どうなんでしょうか 清 水 やめてみて 様 子 を 見 るというのもあるし 少 し 量 を 減 らして 経 過 を 見 るとかいかがでしょうか 質 問 いま 柴 胡 加 竜 骨 牡 蛎 湯 を1 日 5g 朝 晩 2.5gを1 包 ずつです 清 水 それだけで 止 まっているのですか 質 問 はい 清 水 すごいですね 質 問 自 分 自 身 経 験 がないですし 西 洋 医 学 の 先 生 に 聞 いても これは 分 からないので 漢 方 医 学 てん かんに 特 に 造 詣 の 深 い 先 生 に 今 日 はぜひ 聞 いて 帰 らなければと 思 っています 126
清 水 西 洋 医 学 のてんかん 薬 でも いつ 切 るかというのは 非 常 に 難 しい 問 題 ですよね だから 単 に 機 械 的 なものでなくて てんかんが 起 きる 前 の 発 作 の 程 度 がどの 程 度 かとか 発 作 が 再 発 した 場 合 に 本 人 に 対 してどの 程 度 の 身 体 的 な 危 険 性 があるかとか 結 局 いろいろな 要 素 を 考 えながら 少 しずつ 減 らしてい くのが 漢 方 でも 西 洋 医 学 でも 共 通 したものではないかなとは 思 います 万 が 一 発 作 が 再 発 した 時 に 本 人 に 危 害 が 加 わるとか あるいは 社 会 的 に 非 常 に 大 きなマイナスがある 時 は 私 は 原 則 的 に 切 らないように しています 質 問 ほとんどは 起 こす 時 間 帯 が 明 け 方 なんです ですから もしかしたら 減 量 して 夜 1 回 だけ 飲 ませても いいかなと 思 っています 清 水 そうですね それはいい 方 法 かもしれないですね 覚 醒 時 大 発 作 みたいなものであれば 昼 間 に 起 きる 可 能 性 が 非 常 に 少 ないですから 夜 間 だけにしてみるというのは 1つのよい 方 法 かもしれないです ね 質 問 ありがとうございました 127