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検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

(Microsoft Word - \221\346\202P\202U\201@\214i\212\317.doc)

2 平 均 病 床 数 の 平 均 病 床 数 では 療 法 人 に 対 しそれ 以 外 の 開 設 主 体 自 治 体 社 会 保 険 関 係 団 体 その 他 公 的 の 規 模 が 2.5 倍 程 度 大 きく 療 法 人 に 比 べ 公 的 病 院 の 方 が 規 模 の 大 き いことが

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

3 圏 域 では 県 北 沿 岸 で2の 傾 向 を 強 く 見 てとることができます 4 近 年 は 分 配 及 び 人 口 が 減 少 している 市 町 村 が 多 くなっているため 所 得 の 増 加 要 因 を 考 える 場 合 は 人 口 減 少 による 影 響 についても 考 慮 する


2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

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経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

18 国立高等専門学校機構

Microsoft Word - 公表資料(H22).doc

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている 総 合 的

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 福 岡 県 技 能 労 務 職 歳 1,19,98 9,9 歳 8,

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 H H H5.4.1 ( 参 考 値 ) 97.1 H H H H5.4.1 H H5.4.1 ( 参 考

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頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与 月 額

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った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

Box-Jenkinsの方法

Microsoft Word - 公表用答申422号.doc

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 135, , , , , ,600

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

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( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

第4回税制調査会 総4-1

( 医 療 機 器 の 性 能 及 び 機 能 ) 第 3 条 医 療 機 器 は 製 造 販 売 業 者 等 の 意 図 する 性 能 を 発 揮 できなければならず 医 療 機 器 としての 機 能 を 発 揮 できるよう 設 計 製 造 及 び 包 装 されなければならない 要 求 項 目 を

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Microsoft Word 印刷ver 本編最終no1(黒字化) .doc

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(1)1オールゼロ 記 録 ケース 厚 生 年 金 期 間 A B 及 びCに 係 る 旧 厚 生 年 金 保 険 法 の 老 齢 年 金 ( 以 下 旧 厚 老 という )の 受 給 者 に 時 効 特 例 法 施 行 後 厚 生 年 金 期 間 Dが 判 明 した Bは 事 業 所 記 号 が

リング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 に 係 る 繰 延 税 金 資 産 について 回 収 可 能 性 がないも のとする 原 則 的 な 取 扱 いに 対 して スケジューリング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 を 回 収 できることを 反 証 できる 場 合 に 原 則

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 25 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 給 与 月 額 平 均 年 齢 平 均 給 料

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表紙

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

スライド 1

第316回取締役会議案

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(2)大学・学部・研究科等の理念・目的が、大学構成員(教職員および学生)に周知され、社会に公表されているか

1

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

16 日本学生支援機構

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

川崎市木造住宅耐震診断助成金交付要綱

01.活性化計画(上大久保)

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

連結計算書

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別紙3

からは 課 題 が 残 っている また 不 純 物 標 準 品 を 用 いて 不 純 物 を 特 定 した 方 法 で 承 認 された 新 有 効 成 分 含 有 医 品 に 対 しては 日 局 収 載 時 に 従 来 の 不 純 物 標 準 品 を 用 いず 不 純 物 を 特 定 しない 設 定

(Microsoft Word - \212\356\226{\225\373\220j _\217C\220\263\201j.doc)

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m07 北見工業大学 様式①

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 135, , ,900 2

2 県 公 立 高 校 の 合 格 者 は このように 決 まる (1) 選 抜 の 仕 組 み 選 抜 の 資 料 選 抜 の 資 料 は 主 に 下 記 の3つがあり 全 高 校 で 使 用 する 共 通 の ものと 高 校 ごとに 決 めるものとがあります 1 学 力 検 査 ( 国 語 数

独立行政法人国立病院機構呉医療センター医療機器安全管理規程

●電力自由化推進法案

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公表表紙

Taro-H19退職金(修正版).jtd

(2) 支 状 況 保 育 所 ( 定 員 60 人 以 上 ) 支 状 況 は 次 とおりです 1 総 入 構 成 比 は 割 合 が88.1% 活 動 外 入 が2.1% 特 別 入 が9.8%でした 2 構 成 比 は 運 営 費 入 が80.1% 経 常 経 費 補 助 金 入 が17.8%

別紙3

波佐見町の給与・定員管理等について

経 常 収 支 差 引 額 の 状 況 平 成 22 年 度 平 成 21 年 度 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 4,154 億 円 5,234 億 円 1,080 億 円 改 善 赤 字 組 合 の 赤 字 総 額 4,836 億 円 5,636 億 円 800 億 円 減

職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 () 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 ( 年 4 月 日 現 在 ) 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 ( ベース) 44. 歳 6,4, 歳,44 4,7 7,6 4. 歳 7,


2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 135,6 243,7 2 級 185,8 37,8 3 級 4 級 222,9 354,7 ( 注 )

Microsoft Word - 通達(参考).doc

2 職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 (26 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 静 岡 県 国 類 似 団 体 2 技 能 労 務 職 区 41.8 歳 42.6 歳 43.5

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

Microsoft Word 消費税HP(案)

Microsoft Word - 目次.doc

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公 営 企 業 職 員 の 状 況 1 水 道 事 業 1 職 員 給 与 費 の 状 況 ア 決 算 区 分 総 費 用 純 利 益 職 員 給 与 費 総 費 用 に 占 める ( 参 考 ) 職 員 給 与 費 比 率 22 年 度 の 総 費 用 に 占 A B B/A める 職 員 給 与

社会保険加入促進計画に盛込むべき内容

1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 岐 阜 県 類 似 団 体 平 均 年 齢 平 均 給

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

3. 選 任 固 定 資 産 評 価 員 は 固 定 資 産 の 評 価 に 関 する 知 識 及 び 経 験 を 有 する 者 のうちから 市 町 村 長 が 当 該 市 町 村 の 議 会 の 同 意 を 得 て 選 任 する 二 以 上 の 市 町 村 の 長 は 当 該 市 町 村 の 議

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

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3 職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 ( ベース) 43.7 歳 32, , ,321

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (5 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 区 類 団 府 分 似 体 平 均 年 齢

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (26 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 区 分 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与

有 料 老 ホーム ( ) ( 主 として 要 介 護 状 態 にある を 入 居 させるも のに 限 る ) 第 29 条 ( 届 出 等 ) 第 二 十 九 条 有 料 老 ホーム( 老 を 入 居 させ 入 浴 排 せつ 若 しくは 食 事 の 介 護 食 事 の 提 供 又 はその 他 の

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

文化政策情報システムの運用等

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セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

Transcription:

X 線 CT 画 像 の 定 量 画 質 評 価 法 に 関 する 研 究 2016 年 2 月 遠 地 志 太

学 位 論 文 ( 医 療 技 術 学 ) X 線 CT 画 像 の 定 量 画 質 評 価 法 に 関 する 研 究 Quantitative methods for image quality assessment of x-ray computed tomography 2015 年 2 月 名 古 屋 大 学 大 学 院 医 学 系 研 究 科 医 療 技 術 学 専 攻 医 用 量 子 科 学 分 野 581202015 遠 地 志 太 指 導 教 員 今 井 國 治

内 容 梗 概 X 線 CT(Computed Tomography) 技 術 の 発 展 は 放 射 線 医 療 の 進 歩 や 普 及 に 一 層 拍 車 を 掛 けており その 結 果 現 在 CT 検 査 は 画 像 診 断 の 中 心 的 役 割 を 果 たすようになっ ている 特 に X 線 検 出 器 の 多 列 化 に 伴 う 画 質 向 上 や 画 像 情 報 量 の 増 大 は 有 益 で 正 確 な 画 像 診 断 情 報 を 提 供 している その 一 方 で 検 査 件 数 の 増 加 に 伴 う 放 射 線 被 ばくの 増 大 という 不 利 益 も 生 み 出 している それゆえ 放 射 線 医 療 の 目 的 を 達 成 するために 必 要 十 分 な 画 質 と 放 射 線 被 ばくのバランスを 考 えることが 重 要 な 課 題 となっている このよ うな 中 CT 検 査 では 低 管 電 圧 化 技 術 に 関 心 が 高 まっており 被 ばく 線 量 の 低 減 やヨー ド 造 影 剤 による 造 影 効 果 の 向 上 といった 特 性 を 臨 床 現 場 で 応 用 している しかし 撮 像 条 件 の 一 つである 管 電 圧 設 定 は CT 画 像 の 画 質 に 大 きな 影 響 を 与 えるため その 設 定 に 伴 う 画 質 特 性 を 把 握 する 必 要 がある 以 上 の 背 景 から 本 論 文 では 臨 床 応 用 を 考 慮 に 入 れた CT 画 像 の 画 質 特 性 について 多 面 的 かつ 定 量 的 に 検 討 を 行 っている 本 研 究 では CT 検 査 の 頻 度 が 多 い 頭 部 検 査 を 対 象 とし 頭 部 CTA(CT Angiography) 検 査 の 臨 床 状 況 を 可 能 な 限 り 再 現 した 脳 血 管 ファントム 撮 像 を 実 験 系 に 設 定 した その 後 実 験 によって 得 られた 再 構 成 画 像 に 対 して 脳 動 脈 瘤 検 出 に 主 眼 を 置 いた 画 質 評 価 を 行 い 低 管 電 圧 に 伴 う 画 質 特 性 の 変 化 について 検 討 した さらに 白 内 障 と 放 射 線 被 ばくに 関 して 従 来 からの 医 学 的 知 見 と 乖 離 した 報 告 が 見 受 けられることに 着 目 し 水 晶 体 被 ばく 線 量 を 測 定 し これと CT 画 像 の 画 質 との 関 連 性 についても 検 討 した 低 管 電 圧 化 に 伴 う CT 画 像 の 画 質 特 性 の 変 化 には 主 に 画 像 ノイズの 増 加 と CT 値 の 上 昇 が 挙 げられる これらの 特 性 を 考 慮 した 上 で 脳 動 脈 瘤 の 信 号 検 出 能 を 評 価 するた めには 従 来 から CNR(Contrast-to-Noise Ratio) 解 析 が 行 われている この 解 析 法 につ いて 今 井 らが 考 案 した 画 像 ノイズ 評 価 法 を 適 用 することで 解 析 対 象 部 分 そのものが i

持 つ 画 質 特 性 を 表 現 した 評 価 結 果 となるように CNR 解 析 法 の 改 良 を 行 った その 結 果 低 管 電 圧 化 によって 画 像 ノイズが 増 加 するという 従 来 法 と 同 様 の 傾 向 が 示 された また 水 晶 体 被 ばく 線 量 を 一 定 に 保 った 場 合 でも 低 管 電 圧 化 に 伴 ってコントラスト 分 解 能 が 改 善 されることが 定 量 的 に 示 された 脳 動 脈 瘤 に 対 する 画 像 診 断 では 治 療 適 応 の 決 定 や 破 裂 の 危 険 性 を 理 解 する 上 で 病 変 形 態 の 詳 細 な 把 握 が 重 要 な 要 素 となる 本 研 究 では CT 画 像 上 の 信 号 輪 郭 に 着 目 し その 視 認 性 を 定 量 的 に 解 析 できる 新 たな 画 質 評 価 法 を 考 案 した ここでは この 評 価 法 の 信 頼 性 について 検 証 した 上 で 解 析 対 象 となる 血 管 輪 郭 の 検 出 能 を 評 価 した その 結 果 本 提 案 法 によって 血 管 輪 郭 検 出 能 を 適 切 に 評 価 できることが 実 証 され 低 管 電 圧 化 に 伴 う 血 管 輪 郭 の 強 調 効 果 を 定 量 的 に 明 らかにした CT 画 像 では 撮 像 における X 線 光 子 数 の 極 端 な 変 動 や 画 像 再 構 成 法 に 基 づく 画 像 形 成 の 結 果 装 置 特 有 のアーチファクトを 発 生 する 場 合 がある 特 に 頭 部 CT 画 像 には 頭 蓋 底 領 域 にストリークアーチファクトが 確 認 されることがあり 低 管 電 圧 化 によって その 発 生 は 顕 著 になる 一 般 に アーチファクトに 関 する 画 質 評 価 には 視 覚 による 主 観 的 評 価 が 適 用 されている 本 研 究 では ストリークアーチファクトに 起 因 する 特 徴 量 の 統 計 学 的 性 質 を 明 らかにした 上 で CT 画 像 上 のストリークアーチファクトの 定 量 的 評 価 法 を 考 案 した 上 述 した 血 管 輪 郭 の 検 出 能 評 価 法 と 同 様 この 評 価 法 の 信 頼 性 につ いて 検 証 した 上 で ストリークアーチファクトの 評 価 を 行 った その 結 果 本 提 案 法 に より CT 画 像 上 に 見 られるストリークアーチファクトの 発 生 の 程 度 を 定 量 的 に 示 すこ とができた 以 上 の 結 果 から 本 研 究 では 低 管 電 圧 化 技 術 が 及 ぼす 画 質 特 性 を 定 量 的 に 評 価 する と 共 に 従 来 の 定 量 解 析 法 を 改 良 することで その 精 度 向 上 を 図 ることができた さら に 本 研 究 で 考 案 した 画 質 評 価 法 は 臨 床 的 に 有 益 なものであることが 示 された ii

Abstract X-ray computed tomography (CT) imaging is one of the high accuracy diagnostic tools, especially in head CT angiography (CTA) equivalent to digital subtraction angiography (DSA) for detecting cerebral aneurysms, and its use had increased dramatically. There is a risk of increasing the radiation dose delivered to the eye lens for clinical neuroimaging protocols. Therefore, it is necessary for CT imaging to optimize the balance between radiation dose and required image quality to achieve its medical purpose. It is well-known that it is possible to reduce radiation dose and to enhance image contrast in CT scanning with low tube voltage technique, and it also has the potential to lead to an improvement of detectability of arterial contours in head CTA images with this technique. However, the CT procedure with low tube voltage is limited due to increased image noise and artifacts, which can potentially affect the accuracy of diagnosis and detection of cerebral aneurysms. Thus, it is important to investigate the effect of low tube voltage on image quality (such as image noise and streak artifacts) and radiation dose at head CT and/or CTA. From these points of view, we have set out three subjects of this study, listed below. 1. Evaluation of image noise and contrast resolution of cerebral aneurysms in head CT images 2. Evaluation of arterial contours detectability with cerebral aneurysms in head CTA images 3. Evaluation of streak artifacts on head CT images Intracranial anthropomorphic vascular phantom with superimposed bone skull structures was designed to accurately simulate vasculature in the human head and to include some cerebral aneurysms. The simulated vascular of the phantom was filled with contrast medium. The CT images of the phantom were acquired with a 64-row multi-detector CT scanner. iii

1. Image noise and contrast resolution: Image noise (that is, noise SD; standard deviation of CT values) in non-uniform area on CT images was evaluated using new method devised in the previous study. CNR was employed as a physical index of evaluating contrast resolution of cerebral aneurysms in CT images, and was calculated using noise SD as mentioned above. The contrast resolution of cerebral aneurysms in CT images was improved by low tube voltage techniques. 2. Arterial contour detectability: Arterial contour extraction is essential for visualization and understanding of vasculature in CTA. We defined a new quantitative and physical index to evaluate arterial contours detectability in CTA images. As a result, it was verified that both detectability and visualization of arterial contours in CTA images were improved using low tube voltage techniques. 3. Streak artifacts evaluation: Streak artifacts near the skull base on CT images are caused by multiple mechanisms, including beam hardening, and image quality degradation for these artifacts is likely to affect diagnostic accuracy of brain lesions and aneurysms. We clarified the statistical characteristics of streak artifacts, and devised a new method for evaluating streak artifacts quantitatively. Using this devised method, it was clarified that appearances of streak artifacts on CT images depended on tube voltages under constant radiation doses. iv

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目 次 第 1 章 緒 論... 1 1.1 研 究 の 背 景 1 1.2 X 線 CT 画 像 の 画 質 評 価 に 関 する 研 究 の 動 向. 3 1.3 本 論 文 の 概 要 5 第 2 章 頭 部 CTA 撮 像 における 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 測 定 7 2.1 はじめに 7 2.2 脳 血 管 ファントム 8 2.2.1 脳 血 管 ファントム. 8 2.2.2 脳 血 管 ファントムの CT 画 像 取 得.. 10 2.2.3 脳 血 管 ファントムの 有 用 性 の 検 証.. 10 2.3 頭 部 CTA 撮 像 時 における 水 晶 体 被 ばく 線 量.. 16 2.3.1 水 晶 体 被 ばく 線 量 の 測 定 方 法. 16 2.3.2 水 晶 体 被 ばく 線 量 の 検 討. 16 2.4 まとめ 19 第 3 章 X 線 CT 画 像 の 画 像 ノイズおよびコントラスト 評 価... 21 3.1 はじめに 21 3.2 実 験 方 法 および 解 析 対 象 画 像 22 3.3 Gauss 法 による CNR 解 析... 22 3.3.1 コントラストの 定 義 と CNR 算 出 方 法... 22 3.3.2 Gauss 法 による 画 像 ノイズ 解 析.. 23 vii

3.4 Gauss 法 による CNR 解 析 の 結 果 および 検 討... 25 3.4.1 Gauss 法 による 画 像 ノイズ 評 価 の 検 証.. 25 3.4.2 画 像 ノイズ 評 価 の 検 討... 25 3.4.3 CNR 評 価 と 水 晶 体 被 ばく 線 量 の 検 討 27 3.5 まとめ 29 第 4 章 X 線 CT 画 像 の 輪 郭 検 出 能 評 価... 31 4.1 はじめに 31 4.2 解 析 対 象 画 像 31 4.3 位 相 限 定 画 像 の 再 構 成 アルゴリズム 32 4.4 位 相 限 定 画 像 による 輪 郭 検 出 能 評 価 34 4.4.1 位 相 限 定 画 像 の 統 計 学 的 性 質. 34 4.4.2 位 相 限 定 画 像 を 用 いた 輪 郭 検 出 能 の 評 価 指 標. 34 4.5 輪 郭 検 出 能 の 評 価 結 果 および 検 討 36 4.5.1 輪 郭 検 出 能 評 価 の 妥 当 性. 36 4.5.2 輪 郭 検 出 能 評 価 と 視 覚 評 価 の 検 討. 38 4.5.3 輪 郭 検 出 能 とそれに 及 ぼす X 線 線 量 効 果 42 4.6 まとめ 43 第 5 章 X 線 CT 画 像 のストリークアーチファクト 評 価... 45 5.1 はじめに 45 5.2 解 析 対 象 画 像 46 viii

5.3 ストリークアーチファクトの 統 計 学 的 性 質.... 47 5.3.1 ストリークアーチファクトの 定 義... 47 5.3.2 極 値 統 計 分 布 の 適 用 評 価..... 48 5.4 Gumbel 評 価 法 によるストリークアーチファクト 解 析.. 51 5.4.1 Gumbel 確 率 密 度 関 数 による 評 価..... 51 5.4.2 Gumbel 評 価 法 による 定 量 的 解 析... 54 5.4.3 Gumbel 評 価 法 と 管 電 圧 が 及 ぼす 影 響... 56 5.5 まとめ 59 第 6 章 総 論... 61 6.1 本 研 究 のまとめ 61 6.2 本 研 究 の 医 療 技 術 学 的 意 義 65 参 考 論 文... 67 謝 辞... 71 研 究 業 績... 73 付 録 A 正 規 確 率 プロット 75 付 録 B 位 相 限 定 画 像 の 再 構 成 アルゴリズム 77 ix

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第 1 章 緒 論 第 1 章 緒 論 1.1 研 究 の 背 景 X 線 CT(Computed Tomography) 装 置 の 技 術 革 新 には 目 覚 ましいものがあり ヘリカ ルスキャン 方 式 の 導 入 や X 線 検 出 器 における 多 列 化 および 薄 層 化 技 術 の 開 発 が 進 むに つれ CT 検 査 では 高 精 細 な CT 画 像 を 短 時 間 に かつ 広 範 囲 に 撮 像 可 能 となった さらに 解 析 手 法 やデータ 処 理 能 力 の 飛 躍 的 な 向 上 によって CT 検 査 は 多 様 化 し 形 態 診 断 のみならず 機 能 診 断 にも 利 用 されるようになってきた 特 に 中 枢 神 経 および 頭 頸 部 領 域 においては 脳 動 脈 瘤 破 裂 による 脳 出 血 に 対 して 治 療 方 針 の 決 定 のために 3D-CTA(Three dimensional CT Angiography) 検 査 を さらにその 予 後 予 測 のため CTP (CT Perfusion) 検 査 を 実 施 する 医 療 施 設 が 増 えてきている [1-3] それゆえ CT 検 査 は 画 像 診 断 領 域 において 極 めて 重 要 な 役 割 を 担 っている その 一 方 で 放 射 線 医 療 の 進 歩 や 普 及 は CT 検 査 による 放 射 線 被 ばく 線 量 増 加 への 関 心 を 高 め 医 療 被 ばくに 対 する 不 安 も 増 加 させていることから 放 射 線 診 療 で 使 用 す る 放 射 線 量 の 適 正 化 が 大 きな 課 題 となっている これに 基 づいて 国 際 放 射 線 防 護 委 員 会 (International Commission on Radiological Protection:ICRP)は 2007 年 の Publication 103 において 水 晶 体 の 放 射 線 障 害 に 対 する 線 量 限 度 を 見 直 す 可 能 性 について 言 及 して おり 水 晶 体 被 ばくに 関 する CT 検 査 行 為 の 最 適 化 が 重 要 視 されている [4] このような 放 射 線 量 の 適 正 化 を 検 討 する 上 で 必 要 不 可 欠 となるのが CT 画 像 の 画 質 評 価 である 一 般 に CT 画 像 の 画 質 評 価 は 視 覚 評 価 と 物 理 評 価 に 大 別 される 医 用 画 像 の 評 価 は 最 終 的 には 医 師 や 診 療 放 射 線 技 師 といった 観 察 者 によってその 優 劣 が 決 定 されるた め 視 覚 評 価 は 臨 床 上 重 要 であると 言 える 視 覚 評 価 法 に 代 表 されるものには ROC (Receiver Operating Characteristic) 解 析 が 挙 げられる この 方 法 は 臨 床 画 像 のように - 1 -

第 1 章 緒 論 実 際 の 病 変 を 含 む 画 像 を 対 象 として 検 出 率 を 求 めることができ 統 計 学 的 手 法 に 基 づい た 信 頼 性 の 高 い 評 価 法 であると 言 われている しかし このような 視 覚 評 価 は 主 観 的 評 価 であり その 精 度 を 向 上 させるために 多 数 の 観 察 者 に 大 量 の 画 像 を 繰 り 返 し 観 察 し てもらうといった 人 的 および 時 間 的 労 力 を 要 する 他 に 実 験 試 料 の 作 成 および 観 察 者 の 選 択 が 評 価 結 果 に 大 きな 影 響 を 与 えるという 問 題 点 が 数 多 く 報 告 されている [5, 6] これに 対 して CT 画 像 の 物 理 的 な 画 質 評 価 法 では 従 来 から MTF(Modulation Transfer Function)や NPS(Noise Power Spectrum)によって 定 量 的 客 観 的 に 評 価 されてきた これらの 方 法 では その 性 質 上 金 属 ワイヤや 水 ファントムといった 単 純 な 構 造 体 から 得 られる 入 力 信 号 を 基 本 とした 評 価 法 であるため 実 際 の 臨 床 画 像 のような 複 雑 な 構 造 体 から 得 られた 画 像 へそのまま 適 用 することは 困 難 な 場 合 がある それゆえ 医 用 画 像 の 画 質 評 価 には 臨 床 画 像 あるいは 人 体 ファントムのような 複 雑 構 造 を 有 する 画 像 を 用 いることが 必 要 であり それによって 有 益 な 情 報 が 得 られるものと 考 えられる CT 装 置 が 開 発 されて 以 来 装 置 の 性 能 評 価 や 診 断 能 評 価 など 様 々な 分 野 において 数 多 くの 評 価 法 が 提 案 されてきたが 未 だ 確 立 された 評 価 法 がない 分 野 も 存 在 している また 今 後 の 新 たな 技 術 進 歩 によっては 多 種 多 様 の 画 質 特 性 を 有 する 画 像 が 得 られる 可 能 性 も 考 えられる したがって 医 用 画 像 の 画 質 評 価 には 以 下 のような 特 長 を 有 する 必 要 があると 思 わ れる 1. 複 雑 なテクスチャを 含 む 臨 床 画 像 や 人 体 ファントム 画 像 にも 適 用 可 能 である 2. 定 量 的 客 観 的 評 価 法 であり その 評 価 結 果 が 視 覚 による 主 観 的 評 価 を 反 映 し その 代 用 となり 得 る 以 上 の 背 景 を 踏 まえた 上 で 本 研 究 では 臨 床 画 像 にも 適 用 可 能 な 画 質 評 価 法 を 考 案 - 2 -

第 1 章 緒 論 すること ならびに 既 存 する 画 質 評 価 法 の 問 題 点 を 改 善 することを 目 的 の 一 つとして 掲 げている 1.2 X 線 CT 画 像 の 画 質 評 価 に 関 する 研 究 の 動 向 脳 卒 中 (いわゆる 脳 血 管 障 害 )は 日 本 国 内 における 死 亡 原 因 の 上 位 に 位 置 してお り その 危 険 因 子 の 一 つには 脳 動 脈 瘤 の 存 在 が 知 られている 脳 動 脈 瘤 は それが 破 裂 することでクモ 膜 下 出 血 をきたした 場 合 その 診 断 の 遅 れが 予 後 の 悪 化 につながるた め 迅 速 かつ 的 確 な 診 断 が 必 要 であると 言 われている [7] 現 在 脳 動 脈 瘤 の 検 出 には 高 精 細 で 高 解 像 度 な 画 質 を 有 する DSA(Digital Subtraction Angiography) 検 査 が 従 来 か ら 行 われている [8] しかし 侵 襲 性 が 高 く 検 査 中 に 起 こる 合 併 症 の 危 険 性 を 少 なから ず 有 する 検 査 であるため 臨 床 現 場 では DSA 検 査 の 代 用 となる 低 侵 襲 的 で 精 度 が 良 い 検 査 法 が 求 められている ここで 注 目 されているのが 頭 部 CTA 検 査 である 最 近 では 3D-CTA による 脳 動 脈 瘤 の 検 出 能 は DSA とほぼ 同 等 であるとの 報 告 や 外 科 手 術 を 考 慮 にした 際 に 得 られる 情 報 は DSA よりも 優 れているとの 報 告 もあり [1, 2] 低 侵 襲 かつ 短 時 間 で 行 える CTA 検 査 は 脳 動 脈 瘤 の 診 断 に 有 用 な 検 査 技 術 になると 期 待 され ている 一 般 に 頭 部 CTA 検 査 で 得 られた 二 次 元 の 横 断 画 像 データは VR(Volume Rendering) 技 術 や MPR(Multi-planar Reconstruction) 技 術 によって 脳 動 脈 瘤 周 囲 にお ける 血 管 の 立 体 的 構 成 を 三 次 元 的 に 把 握 することができる [1, 2] すなわち 二 次 元 CT 画 像 の 画 質 に 影 響 を 与 える 因 子 は そのまま 三 次 元 CT 画 像 の 画 質 にも 影 響 を 与 える それゆえ 基 本 的 に 二 次 元 画 像 を 対 象 に 画 質 評 価 を 行 うことが 重 要 であると 考 えられる 脳 卒 中 に 対 する 放 射 線 画 像 診 断 には X 線 CT 検 査 が 重 要 な 役 割 を 果 たしている X 線 CT 検 査 の 頻 度 は 日 本 国 内 では 頭 部 検 査 がその 多 くを 占 めており [9] 米 国 でも 最 も 多 くなっていると 報 告 されている [10] そのため 頭 部 CT 検 査 における 被 ばく 線 量 特 - 3 -

第 1 章 緒 論 に 水 晶 体 に 対 する 被 ばく 線 量 の 検 討 は 重 要 である 現 在 医 療 被 ばくには 線 量 限 度 は 存 在 しないが 医 療 目 的 を 達 成 するために 必 要 十 分 な 画 質 と 患 者 の 被 ばく 線 量 とのバラ ンスを 取 ること すなわち 診 断 参 考 レベル(Diagnostic Reference Level:DRL)を 設 定 することの 重 要 性 について 議 論 が 進 んでいる したがって 今 後 の 画 質 評 価 では 患 者 被 ばく 線 量 を 基 準 とした 検 討 が 進 められるべきであると 考 えられる そのような 中 で CT 検 査 の 被 ばく 低 減 方 法 として 低 管 電 圧 化 技 術 への 関 心 が 高 まっ ており 現 在 では CTA 検 査 や CTP 検 査 にも 臨 床 応 用 されている この 技 術 によって 得 られた CT 画 像 では 使 用 した 造 影 剤 の 造 影 効 果 が 向 上 するという 利 点 から 造 影 コント ラストの 程 度 を 評 価 するために 一 般 的 な SNR(Signal-to-Noise Ratio)や CNR (Contrast-to-Noise Ratio)が 用 いられている [11-13] すなわち 現 段 階 では 臨 床 画 像 のよ うな 複 雑 な 構 造 体 を 有 する 画 像 を 考 慮 にいれた 評 価 には 至 っていない その 反 面 低 管 電 圧 化 によって 画 像 ノイズやアーチファクトの 発 生 が 問 題 となる 特 に アーチファ クトに 関 しては 確 立 した 定 量 評 価 法 が 存 在 しないため 視 覚 による 主 観 的 評 価 しか 行 われていない [14] このように 現 在 X 線 CT 画 像 の 画 質 評 価 では 臨 床 画 像 に 適 応 さ せ その 精 度 を 向 上 させるためには 未 だ 改 善 の 余 地 があると 思 われる また 定 量 的 な 解 析 が 困 難 な 評 価 項 目 も 存 在 しており それらに 対 する 評 価 手 法 の 考 案 は 今 後 に 残 された 課 題 であると 言 える 以 上 のことから 低 管 電 圧 技 術 は 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 を 低 減 する 一 手 法 として 捉 える ことができ この 撮 像 条 件 によって CT 画 像 の 画 質 がどの 程 度 改 善 されるのか また 脳 動 脈 瘤 の 検 出 能 向 上 がどの 程 度 見 込 まれるのかを 被 ばく 線 量 と 画 質 の 両 面 から 定 量 的 に 検 討 することは 臨 床 現 場 に 大 変 有 益 な 情 報 を 与 えるものと 考 えられる 本 研 究 は このような 観 点 から 検 討 を 行 っている - 4 -

第 1 章 緒 論 1.3 本 論 文 の 概 要 本 論 文 は 六 つの 章 から 構 成 されており その 主 題 は 頭 部 CT 検 査 における 被 ばく 線 量 測 定 に 関 する 研 究 ( 第 2 章 ) X 線 CT 画 像 における 既 存 の 画 質 評 価 法 の 改 良 に 関 する 研 究 ( 第 3 章 ) X 線 CT 画 像 における 新 たな 画 質 評 価 法 に 関 する 研 究 ( 第 4 章 か ら 第 5 章 )となっている 以 下 に 各 章 の 概 要 を 述 べる 第 1 章 では 緒 論 として 本 研 究 の 目 的 を 述 べ この 研 究 を 開 始 した 背 景 にはどのよう な 研 究 が 行 われてきたかについて その 概 要 を 述 べている 第 2 章 では 今 井 らが 設 計 した 脳 血 管 ファントムを 用 いて 臨 床 状 況 をできる 限 り 再 現 した CT 画 像 を 取 得 すると 共 に 頭 部 CTA 検 査 時 の 水 晶 体 被 ばく 線 量 を 測 定 した 水 晶 体 被 ばく 線 量 は X 線 出 力 を 表 す 実 効 mas(milliampere second) 値 との 間 に 正 比 例 の 関 係 があり 管 電 圧 とも 正 の 相 関 があることを 明 らかにしている さらに CT 装 置 が 算 出 する CTDI vol. (volumetric CT Dose Index)と 水 晶 体 被 ばく 線 量 との 関 係 についても 論 じている 第 3 章 では Gauss 法 と 称 するノイズ 評 価 法 を 用 いて CT 画 像 のノイズを 評 価 し その 評 価 結 果 をもとにした CNR 解 析 を 実 施 した その 結 果 低 管 電 圧 化 を 図 ることで CNR の 改 善 が 見 込 めることを 明 らかにしている さらに 水 晶 体 被 ばく 線 量 を 基 準 と した 場 合 でも 低 管 電 圧 化 が CNR の 改 善 に 有 効 な 手 段 となり 得 ることも 明 らかにして いる 第 4 章 では 二 次 元 フーリエ 変 換 から 取 得 される 位 相 情 報 をもとに 信 号 輪 郭 検 出 能 と 称 する 新 たな 物 理 的 評 価 指 標 を 定 義 し 様 々な 撮 像 条 件 で 得 られた CT 画 像 の 輪 郭 検 出 能 特 性 を 定 量 的 に 検 討 している その 結 果 低 管 電 圧 化 による 輪 郭 検 出 能 の 改 善 が 見 込 めることを 明 らかにしている - 5 -

第 1 章 緒 論 第 5 章 では 極 値 統 計 学 を 用 いたストリークアーチファクト 評 価 法 を 考 案 した この 評 価 法 を 用 いることで 医 用 画 像 領 域 における 画 質 評 価 では これまで 解 明 されていな かったストリークアーチファクトの 統 計 学 的 性 質 を 明 らかにしている さらに 様 々な 撮 像 条 件 とストリークアーチファクトの 関 係 も 定 量 的 に 評 価 している 第 6 章 では 本 研 究 の 研 究 成 果 について 総 括 すると 共 に 医 療 技 術 学 的 意 義 について 述 べている - 6 -

第 2 章 頭 部 CTA 撮 像 における 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 測 定 第 2 章 頭 部 CTA 撮 像 における 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 測 定 2.1 はじめに 頭 部 領 域 における CT 検 査 では 白 質 灰 白 質 といった 僅 かな CT 値 差 の 組 織 を 観 察 しなければならないことや X 線 吸 収 の 高 い 頭 蓋 骨 に 囲 まれていることから 他 の 部 位 に 比 べて 高 線 量 撮 像 となる 傾 向 にある それに 加 え 頭 部 CTA 検 査 では 頭 蓋 内 の 細 い 血 管 の 走 行 を 把 握 するだけでなく 脳 動 脈 瘤 の 大 きさや 形 状 を 高 精 度 に 計 測 する 必 要 があるため 画 像 ノイズの 影 響 を 可 能 な 限 り 受 けないような 高 精 細 画 像 が 要 求 され さ らなる 高 線 量 撮 像 が 必 要 となる このように CT 検 査 の 撮 像 線 量 に 関 する 検 討 を 行 う ことは 極 めて 重 要 であるが 実 際 の 臨 床 症 例 を 用 いて 検 討 することは 困 難 であり 倫 理 的 にも 問 題 がある この 問 題 の 解 決 策 の 一 つとして 人 体 構 造 を 模 擬 したファントムを 用 いる 等 価 実 験 がある この 方 法 を 用 いることで 倫 理 的 な 問 題 は 解 消 されると 共 に その 結 果 は 人 体 と 等 価 な 結 果 が 得 られると 考 えられる しかし このような 脳 動 脈 瘤 を 模 擬 したファントムは 現 在 のところ 市 販 されていない 本 章 では 人 体 頭 部 の 解 剖 学 的 特 徴 を 有 する 脳 血 管 ファントムを 設 計 考 案 し この ファントムの 有 用 性 について 検 証 する さらに この 脳 血 管 ファントムを 用 いて 頭 部 CTA 検 査 を 想 定 した 被 ばく 線 量 測 定 を 行 い 頭 部 領 域 における X 線 被 ばくのリスク 臓 器 として 挙 げられる 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 についても 評 価 する - 7 -

第 2 章 頭 部 CTA 撮 像 における 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 測 定 2.2 脳 血 管 ファントム 2.2.1 脳 血 管 ファントム 本 研 究 では 臨 床 画 像 をできる 限 り 再 現 できるような 脳 血 管 ファントムが 必 要 であり 以 前 今 井 らが 設 計 考 案 したものを 採 用 した [15] このファントムは 頭 蓋 骨 脳 実 質 および 脳 血 管 ( 内 頸 動 脈 系 および 椎 骨 動 脈 系 )から 構 成 されている 頭 蓋 骨 は 人 体 の 骨 とほぼ 等 価 な CT 値 を 有 する 石 膏 を 用 いて 頭 部 の 骨 格 構 造 を 模 擬 し その 周 囲 を 人 体 軟 部 組 織 とほぼ 同 等 の CT 値 を 持 つポリウレタンで 被 うことで 頭 部 の 外 皮 系 筋 組 織 構 造 として 形 成 した 脳 実 質 は 基 材 としてポリウレタンを 使 用 し 人 体 と 同 等 の CT 値 ( 管 電 圧 80 ~ 140 kv ( 実 効 エネルギー:35 ~ 60 kev) に 対 して 30 ~ 40 HU [Hounsfield Unit])となるようにリン 酸 カルシウムを 混 合 した この 脳 実 質 内 に 中 空 管 状 の 脳 動 脈 と 動 脈 瘤 好 発 部 位 に 直 径 3 ~ 5 mm の 動 脈 瘤 を 作 成 した 図 2.1 図 2.2 は 各 々このファ ントムの 外 観 およびその 内 部 構 造 を 示 したものである 図 2.1 脳 血 管 ファントム( 上 段 : 外 観 下 段 :CT Scout View) - 8 -

第 2 章 頭 部 CTA 撮 像 における 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 測 定 (a) 頭 側 より 見 た 図 (b) 左 側 より 見 た 図 図 2.2 脳 血 管 ファントム( 内 観 ) - 9 -

第 2 章 頭 部 CTA 撮 像 における 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 測 定 2.2.2 脳 血 管 ファントムの CT 画 像 取 得 本 研 究 では 被 写 体 として 上 述 した 脳 血 管 ファントムを 使 用 した このファントム を 用 いて 頭 部 CTA 画 像 を 取 得 する 際 中 空 の 模 擬 血 管 内 を 造 影 剤 で 満 たす 必 要 がある 一 般 に 頭 部 CTA 画 像 における 脳 血 管 の CT 値 は 250 HU 程 度 であり このファントム を 用 いて このCT 値 を 得 るためには 非 イオン 性 ヨード 造 影 剤 の 濃 度 を 10 mg Iodine/mL にする 必 要 があることを 以 前 の 研 究 で 明 らかにした [15] そこで このファントムの 脳 血 管 内 にヨード 量 が 10 mg/ml の 非 イオン 性 ヨード 造 影 剤 (Omnipaque 300 ( 成 分 :イオ ヘキソール ヨード 含 有 量 :300 mg/ml) 第 一 三 共 製 )を 注 入 し 64 列 Multi-detector CT (MDCT) 装 置 (Discovery CT750 HD GE Healthcare 社 製 )を 用 いて この 脳 血 管 ファ ントムをスキャンした その 際 の 撮 像 条 件 は 表 2.1 に 示 した 通 りであり 性 能 評 価 用 の 線 量 指 標 として CT 装 置 から 算 出 される CTDI vol. も 併 せて 表 記 した また この 条 件 下 で 取 得 した CT 画 像 の 一 例 を 図 2.3 に 示 す 2.2.3 脳 血 管 ファントムの 有 用 性 の 検 証 2.2.1 項 で 作 成 した 脳 血 管 ファントムの 有 用 性 を 検 証 するため CT 画 像 上 の 均 質 部 ( 脳 図 2.3 脳 血 管 ファントムの CT 画 像 - 10 -

第 2 章 頭 部 CTA 撮 像 における 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 測 定 表 2.1 脳 血 管 ファントムの 撮 像 条 件 および 画 像 再 構 成 条 件 CT scanner Discovery CT750 HD (GE healthcare) Examination Head CTA (Head phantom) Tube voltage [kv] 80 100 120 140 210 115 75 55 420 230 150 110 Tube current [ma] *695 385 250 180 460 300 215 445 320 Rotation time [sec] 0.5 Detector coverage [mm] 20 (0.625 mm 32 ch) Helical picth 0.531:1 198 108 71 52 395 217 141 104 Effective mas [mas] *654 363 235 169 433 282 202 419 301 12.3 12.2 12.2 12.5 24.6 24.4 24.4 24.9 CTDI vol. [mgy] *40.8 40.8 40.6 40.8 49.0 48.9 48.9 72.5 72.8 Display-FOV [cm] / Scan-FOV Matrix size [pixel] 24 / Small Head 512 512 Slice width [mm] 0.625 Length of scanned volume [mm] 155 Reconstruction method Filtered Back Projection Reconstruction kernel Standard * 大 焦 点 撮 像 これ 以 外 は 全 て 小 焦 点 撮 像 - 11 -

第 2 章 頭 部 CTA 撮 像 における 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 測 定 実 質 部 )に 図 2.4 に 示 すような 50 50 pixel の 関 心 領 域 を 設 定 し この 領 域 内 の 平 均 CT 値 および 標 準 偏 差 ( 画 像 ノイズ:Noise SD (Standard Deviation))を 測 定 した なお 関 心 領 域 の 大 きさは 脳 血 管 を 含 まないようなできる 限 り 大 きい 範 囲 とした まず 取 得 したファントム 画 像 のノイズ 特 性 について 検 討 を 行 う 図 2.5 に 実 効 mas 値 と Noise SD との 関 係 を 両 対 数 グラフとして 示 した このグラフから Noise SD は 管 電 圧 が 低 くなるに 従 って 大 きくなった これは 人 体 の 脳 実 質 におけるノイズ 特 性 と 同 様 の 結 果 を 示 している さらに 図 2.5 のような 両 対 数 プロットでは 実 効 mas 値 と Noise SD の 関 係 は 直 線 的 に 分 布 しており いずれの 管 電 圧 においても 実 効 mas 値 の 増 加 に 伴 い Noise SD は 減 少 した 一 般 に mas 値 と Noise SD との 間 には Noise SD 1 mas = (mas) 0.5 という 関 係 が 成 り 立 つことが 知 られている [16, 17] そこ で 図 2.5 から 直 線 の 傾 きを 算 出 したところ 全 ての 管 電 圧 において -0.47 程 度 となっ ており 一 般 的 に 知 られている X 線 出 力 と 画 像 ノイズとの 関 係 が 成 立 していることが 確 認 できた このことから ファントム 中 の 脳 実 質 部 に 使 用 したポリウレタン-リン 酸 カルシウムの 混 合 物 は ノイズ 特 性 に 影 響 を 与 えないことが 明 らかとなった 図 2.4 関 心 領 域 の 設 定 - 12 -

第 2 章 頭 部 CTA 撮 像 における 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 測 定 50 80 kv 100 kv 120 kv 140 kv Noise SD [HU] 10 10 2 10 3 Effective mas [mas] 図 2.5 X 線 出 力 ( 実 効 mas 値 )と 水 晶 体 被 ばく 線 量 の 関 係 次 に ファントム 画 像 の CT 値 精 度 について 検 討 を 行 う 図 2.6 に X 線 出 力 と 平 均 CT 値 の 関 係 を 示 す このグラフから どの 管 電 圧 においても 実 効 mas 値 によらず 平 均 CT 値 は 一 定 の 値 となった 続 いて 図 2.7 に 管 電 圧 と CT 画 像 上 の 均 質 部 におけ る 平 均 CT 値 の 関 係 を 示 している このグラフでは 管 電 圧 [kv]を X 線 実 効 エネルギー [kev]に 換 算 し グラフの 横 軸 として 採 用 している 2.2.1 項 で 述 べたように 脳 血 管 フ ァントムの 均 質 部 は X 線 実 効 エネルギー35 ~ 60 kev に 対 して 30 ~ 40 HU となるよう に 設 計 した しかし 実 際 の 測 定 結 果 は X 線 実 効 エネルギー35 ~ 60 kev に 対 して 40 ~ 50 HU となり 設 計 よりもやや 高 い 値 を 示 した これは ファントム 内 部 の 骨 構 造 から 受 ける 線 質 硬 化 (ビームハードニング)の 影 響 を 過 補 正 した 場 合 に 見 られるキャッピン グ 現 象 と 考 えられる 通 常 の CT 装 置 では 連 続 X 線 によるシングルエネルギー 撮 像 で あるため このような 線 質 硬 化 の 影 響 を 避 けることは 極 めて 困 難 である 本 研 究 で 使 用 した CT 装 置 では GSI(Gemstone Spectral Imaging)と 呼 ばれるデュアルエネルギー 撮 - 13 -

第 2 章 頭 部 CTA 撮 像 における 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 測 定 60 Mean CT value [HU] 50 40 30 140 kv (54.7 kev) 120 kv (49.9 kev) 100 kv (45.1 kev) 80 kv (39.8 kev) 20 0 200 400 600 800 Effective mas [mas] 図 2.6 実 効 mas 値 と CT 値 の 関 係 60 Single Energy Scan Dual Energy Scan Mean CT value [HU] 50 40 30 Virtual Monochromatic Image 20 30 40 50 60 70 X-ray Effective Energy [kev] 図 2.7 X 線 実 効 エネルギー( 管 電 圧 )と CT 値 の 関 係 - 14 -

第 2 章 頭 部 CTA 撮 像 における 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 測 定 像 を 利 用 した 仮 想 単 色 X 線 画 像 (Virtual Monochromatic Image:VMI)を 取 得 すること が 可 能 であり 任 意 の X 線 実 効 エネルギーの 単 色 画 像 を 再 構 成 することで 線 質 硬 化 の 影 響 を 軽 減 し CT 値 の 精 度 を 向 上 させることができる [18] そこで この 脳 血 管 ファ ントムを 表 2.2 に 示 す 撮 像 条 件 の 下 GSI 技 術 を 使 用 した CT スキャンを 行 い 線 質 硬 化 の 影 響 を 軽 減 した 画 像 として 40 ~ 65 kev 相 当 の 仮 想 単 色 X 線 画 像 を 再 構 成 した この 画 像 の CT 値 測 定 には CT 装 置 付 属 のワークステーション(Advantage Workstation Version 4.6 GE Healthcare 社 製 )を 使 用 し その 測 定 結 果 をシングルエネルギー 撮 像 の 結 果 と 併 せて 図 2.7 に 示 した この 結 果 から 分 かるように X 線 実 効 エネルギー40 ~ 60 kev に 対 しておよそ 30 ~ 40 HU となっており 設 計 通 りの 値 を 示 した したがって シ ングルエネルギーによる CT 画 像 の 場 合 は 線 質 硬 化 の 影 響 を 受 けていることが 確 認 さ れた また この 線 質 硬 化 の 影 響 は 実 際 の 頭 部 CT 画 像 でも 見 られる 現 象 であり 人 体 頭 部 を 忠 実 に 再 現 できているものと 解 釈 できる 以 上 の 結 果 から 本 研 究 で 設 計 した 脳 血 管 ファントムは CT 画 像 の 画 質 評 価 に 対 し て 十 分 に 適 応 できるものと 思 われる 表 2.2 GSI(Dual Energy CT) 撮 像 条 件 GSI Mode (Fast kv switching) GSI-21 Tube voltage [kv] 80/140 Tube current [ma] 630 Rotation time [sec] 0.5 Detector coverage [mm] 20 Helical picth 0.531:1 Scan-FOV Small Head * CTDI w / CTDI vol. [mgy] 38.42 / 72.32 * CTDI w Weighted CTDI - 15 -

第 2 章 頭 部 CTA 撮 像 における 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 測 定 2.3 頭 部 CTA 撮 像 時 における 水 晶 体 被 ばく 線 量 2.3.1 水 晶 体 被 ばく 線 量 の 測 定 方 法 本 節 では 脳 血 管 ファントムを 用 いて 頭 部 CTA 撮 像 時 の 水 晶 体 被 ばく 線 量 の 測 定 を 行 った 通 常 CT 検 査 における 被 検 者 の 被 ばく 線 量 を 測 定 する 場 合 ガラス 線 量 計 や TLD(Thermoluminescent Dosimeter) 素 子 が 用 いられる しかし これらの 測 定 素 子 には 測 定 データ 間 のバラツキが 大 きく 信 頼 性 に 欠 けるうえ 測 定 後 の 処 理 が 必 要 であ るためリアルタイム 測 定 が 困 難 であるという 欠 点 を 持 っている そこで 本 研 究 では こ れらの 欠 点 を 補 った 測 定 素 子 である 半 導 体 素 子 を 用 いて 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 測 定 を 行 った [19] 本 研 究 では 半 導 体 素 子 として Si-PIN フォトダイオード(S838504 浜 松 ホトニク ス 社 製 )を 採 用 した この 半 導 体 素 子 を 用 いた 線 量 計 を 図 2.8 に 示 したように 脳 血 管 ファントムの 左 瞼 部 分 に 固 定 した この 配 置 の 下 表 2.1 に 示 した 撮 像 条 件 で この ファントムをスキャンし 得 られた 照 射 線 量 から 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 を 評 価 した 図 2.8 線 量 測 定 の 配 置 図 2.3.2 水 晶 体 被 ばく 線 量 の 検 討 図 2.9 は 各 管 電 圧 における 実 効 mas 値 と 水 晶 体 被 ばく 線 量 の 関 係 を 示 したものであ る いずれの 管 電 圧 においても 水 晶 体 被 ばく 線 量 は 実 効 mas 値 が 増 加 すると 共 に 直 - 16 -

第 2 章 頭 部 CTA 撮 像 における 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 測 定 線 的 に 上 昇 しており その 回 帰 直 線 の 相 関 係 数 は 0.99 以 上 であった また 実 効 mas 値 一 定 の 下 で 水 晶 体 被 ばく 線 量 を 比 較 したところ 管 電 圧 が 低 下 するに 従 って 水 晶 体 被 ばく 線 量 は 減 少 した この 結 果 から 低 管 電 圧 低 実 効 mas 値 にすることにより 水 晶 体 被 ばく 線 量 は 軽 減 できることが 明 らかとなった CT 装 置 では 性 能 評 価 用 の 線 量 指 標 として CTDI vol. が 算 出 されるようになっており 患 者 に 対 する 被 ばく 線 量 の 目 安 として 利 用 されることがある そこで CTDI vol. が 被 ば く 線 量 の 把 握 に 利 用 できるか 否 か 検 討 するため CTDI vol. 一 定 の 下 管 電 圧 と 水 晶 体 被 ばく 線 量 との 関 係 を 調 べた その 結 果 を 図 2.10 に 示 す 図 2.10 より CTDI vol. を 一 定 の 場 合 いずれの 管 電 圧 においても 水 晶 体 被 ばく 線 量 はほぼ 一 定 となった また CTDI vol. が 増 加 するに 従 って 水 晶 体 被 ばく 線 量 も 上 昇 した この 関 係 を 分 かりやすく 表 現 する ため 図 2.10 を 図 2.11 のように 書 き 換 えた 図 2.11 から CTDI vol. と 水 晶 体 被 ばく 線 量 との 間 には 正 の 相 関 があり CTDI vol. は 被 ばく 線 量 の 簡 易 的 な 指 標 として 利 用 できる ことが 明 らかとなった 60 80 kv 100 kv 120 kv 140 kv Lens Dose [mgy] 40 20 0 0 200 400 600 Effective mas [mas] 図 2.9 実 効 mas 値 と 水 晶 体 被 ばく 線 量 の 関 係 - 17 -

第 2 章 頭 部 CTA 撮 像 における 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 測 定 図 2.10 管 電 圧 と 水 晶 体 被 ばく 線 量 の 関 係 ( 凡 例 の mgy 値 は CTDI vol. を 示 している ) 60 80 kv 100 kv 120 kv 140 kv Lens Dose [mgy] 40 20 0 0 20 40 60 80 CTDI vol. [mgy] 図 2.11 CTDI vol. と 水 晶 体 被 ばく 線 量 の 関 係 - 18 -

第 2 章 頭 部 CTA 撮 像 における 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 測 定 2.4 まとめ 本 研 究 では 脳 血 管 ファントムを 設 計 考 案 し このファントムを 用 いて 頭 部 CTA 撮 像 時 の 水 晶 体 被 ばく 線 量 を 測 定 した その 結 果 を 以 下 に 要 約 する 1. 本 研 究 で 考 案 した 脳 血 管 ファントムの CT 画 像 において 脳 実 質 部 のノイズ 特 性 お よび CT 値 精 度 は 実 際 の CT 画 像 と 類 似 していることが 明 らかとなった これら のことから 本 研 究 で 開 発 した 脳 血 管 ファントムは 人 体 と 等 価 であることが 示 さ れた 2. 脳 血 管 ファントムを 用 いた 水 晶 体 被 ばく 線 量 の 測 定 において 実 効 mas 値 と 水 晶 体 被 ばく 線 量 との 間 には 直 線 性 があり 管 電 圧 との 間 には 強 い 正 の 相 関 があることが 示 された さらに CTDI vol. は 水 晶 体 被 ばく 線 量 と 正 の 相 関 があり 簡 易 的 な 被 ば く 線 量 指 標 として 利 用 可 能 であることが 示 された - 19 -

第 2 章 頭 部 CTA 撮 像 における 水 晶 体 の 被 ばく 線 量 測 定 - 20 -

第 3 章 X 線 CT 画 像 の 画 像 ノイズおよびコントラスト 評 価 第 3 章 X 線 CT 画 像 の 画 像 ノイズおよびコントラスト 評 価 3.1 はじめに 脳 動 脈 瘤 の 画 像 診 断 では 検 査 の 簡 便 性 や 高 い 診 断 精 度 から 頭 部 CTA 検 査 が 最 も 有 用 な 検 査 の 一 つである その 診 断 では まず 動 脈 瘤 の 位 置 を 把 握 することが 重 要 である 一 般 に 画 像 診 断 において 脳 動 脈 瘤 の 位 置 を 把 握 し 易 い 画 像 の 条 件 は 血 管 構 造 を 認 識 するために 重 要 な 要 素 となるコントラスト 分 解 能 が 高 いことが 挙 げられる 特 に CTA 検 査 に 使 用 されるヨード 造 影 剤 は X 線 管 電 圧 を その K 吸 収 端 エネルギー 帯 に 近 づけることで コントラストを 向 上 させることができる それゆえ 脳 動 脈 瘤 像 に 対 するコントラスト 評 価 は 撮 像 条 件 の 最 適 化 および 診 断 精 度 の 担 保 のために 重 要 な 役 割 を 果 たすことになる CT 画 像 におけるコントラスト 分 解 能 の 定 量 的 評 価 法 の 一 つとして CNR 解 析 がある この 解 析 法 は 視 覚 評 価 と 類 似 した 評 価 結 果 を 与 える 物 理 的 評 価 法 として 知 られており 画 質 管 理 やモダリティの 性 能 比 較 評 価 として 頻 繁 に 用 いられている CNR 解 析 は 対 象 画 像 上 のコントラストと 画 像 ノイズの 関 係 を 評 価 する 方 法 であり コントラストの 定 義 や 画 像 ノイズ 測 定 の 簡 便 性 から 通 常 単 純 な 信 号 で 構 成 された 画 像 に 対 して 適 用 さ れている しかし 臨 床 画 像 のような 複 雑 なテクスチャを 含 む 画 像 には その 適 用 が 極 めて 困 難 である そこで 今 井 らは 以 前 複 雑 なテクスチャが 存 在 する 状 況 下 でも CNR 解 析 が 行 える 評 価 法 として Gauss 法 による CNR 解 析 法 を 考 案 した [20] 本 章 では 様 々な 条 件 下 で 撮 像 した CT 画 像 に 対 し Gauss 法 による CNR 解 析 法 を 適 用 し CT 画 像 のコントラスト 評 価 を 行 った 上 で 撮 像 パラメータが 病 変 検 出 能 に 及 ぼ す 影 響 について 検 討 する - 21 -

第 3 章 X 線 CT 画 像 の 画 像 ノイズおよびコントラスト 評 価 3.2 実 験 方 法 および 解 析 対 象 画 像 本 研 究 では 水 晶 体 被 ばく 線 量 測 定 と 同 様 の 実 験 配 置 および 撮 像 条 件 ( 前 節 の 表 2.1 を 参 照 )で 脳 血 管 ファントムをスキャンした 撮 像 後 に 再 構 成 された CT 画 像 は 全 て CNR 解 析 ができるように DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine) 形 式 のファイルに 変 換 した 取 得 された CT 画 像 の 一 例 を 図 3.1(a) に 示 す 本 研 究 における CNR 解 析 では 図 3.1(b) に 示 すように 解 析 対 象 となる 脳 動 脈 瘤 お よび 脳 血 管 を 十 分 含 むような 大 きさの 関 心 領 域 (マトリックスサイズ:64 64 pixel) を 設 定 し この 領 域 内 の 画 像 ノイズ(Noise SD)および CNR を 測 定 した (a) CT 画 像 の 一 例 (b) 関 心 領 域 の 設 定 図 3.1 脳 血 管 ファントム 3.3 Gauss 法 による CNR 解 析 3.3.1 コントラストの 定 義 と CNR 算 出 方 法 本 解 析 法 では 解 析 対 象 部 となる 動 脈 瘤 または 血 管 の 平 均 CT 値 をCT signal その 近 傍 背 景 の 平 均 CT 値 をCT background とした 場 合 これらを 差 分 したものをコントラスト (CT signal CT background )と 定 義 し 式 (3.1) から CNR を 算 出 した - 22 -

第 3 章 X 線 CT 画 像 の 画 像 ノイズおよびコントラスト 評 価 CNR = CT signal CT background Noise SD (3.1) Noise SD: 解 析 対 象 の 画 像 ノイズ( 標 準 偏 差 ) CT signal CT background の 測 定 箇 所 の 一 例 を 各 々 図 3.1(b) の 関 心 領 域 内 の 線 枠 部 および 点 線 枠 部 として 示 し 枠 内 の 平 均 CT 値 を 測 定 した 式 中 のNoise SDは 関 心 領 域 内 の 画 像 ノイズを 表 しており 通 常 解 析 対 象 の 近 傍 背 景 の 標 準 偏 差 ( 図 3.1(b) 関 心 領 域 内 の 点 線 枠 部 )に 相 当 する 関 心 領 域 内 に 画 像 ノイズを 測 定 できるような 均 質 部 が 存 在 しない 場 合 には 関 心 領 域 外 の 均 質 部 から 画 像 ノイズとして 代 用 することもある しかし この 場 合 の 画 像 ノイズが 解 析 対 象 部 そのものが 持 つノイズ 成 分 とは 考 えにく く その 測 定 値 から 算 出 された CNR によって 解 析 対 象 部 の 完 全 なコントラスト 特 性 を 表 現 することは 困 難 である 本 研 究 では 脳 動 脈 瘤 や 脳 血 管 といった 解 析 対 象 信 号 に 及 ぼすノイズの 影 響 を 可 能 な 限 り 評 価 するため Gauss 法 によるノイズ 測 定 を 行 った 次 項 に Gauss 法 によるノイズ 解 析 法 の 概 要 について 説 明 する 本 研 究 では 式 (3.1) 中 のCT background およびNoise SDの 測 定 には Gauss 法 を 採 用 することで 算 出 し 解 析 対 象 の CNR 解 析 を 行 った 3.3.2 Gauss 法 による 画 像 ノイズ 解 析 Gauss 法 とは 今 井 らが 考 案 したノイズ 解 析 法 で ノイズが 正 規 分 布 に 従 うという 統 計 学 的 性 質 を 利 用 した 方 法 である [20] 具 体 的 には 解 析 信 号 を 含 む 関 心 領 域 内 の CT 値 ( 確 率 変 数 )を 全 て 正 規 確 率 紙 にプロットし(これを 正 規 確 率 プロット と 呼 び 図 3.2 にその 一 例 を 示 した ) ノイズに 起 因 する CT 値 が 確 率 紙 上 で 直 線 的 な 分 布 にな るという 統 計 学 的 性 質 を 利 用 し 式 (3.2) からノイズに 関 わる 変 数 (CT background およ びNoise SD)を 算 出 する 方 法 である - 23 -

第 3 章 X 線 CT 画 像 の 画 像 ノイズおよびコントラスト 評 価 Φ 1 (GF(x)) = 1 σ x + ( μ σ ) (3.2) Φ 1 (GF(x)):CT 値 x に 対 する 逆 正 規 分 布 関 数 値 μ: 動 脈 瘤 部 位 近 傍 背 景 の 平 均 CT 値 (CT background ) σ: 動 脈 瘤 部 位 近 傍 背 景 の 標 準 偏 差 (Noise SD) このノイズ 評 価 法 を 用 いてノイズに 関 わる 変 数 (μ σ)を 推 定 する 場 合 式 (3.2) に 示 したように 各 CT 値 x に 対 する 累 積 確 率 GF(x) を 求 める 必 要 がある この 累 積 確 率 の 推 定 法 はいくつか 提 案 されており 本 研 究 では その 推 定 が 簡 便 かつ 高 精 度 なミーン ランク 法 を 用 いて 算 出 した [15] 以 下 に その 推 定 式 を 示 す GF(x i ) = i n+1 (3.3) GF(x i ):i 番 目 に 大 きい CT 値 x i に 対 する 累 積 確 率 Cumulative Probability GF(x) [%] 99.0 90.0 50.0 10.0 1.0 0.1 Φ 1 (GF(x)) = 1 σ x + ( μ σ ) 2 0 80 kv CTDI vol. : 24 mgy 0 100 200 300 400 500-4 CT Value x [HU] 図 3.2 正 規 確 率 プロット -2 Inverse Normal Distribution Function -1 (GF(x)) - 24 -

第 3 章 X 線 CT 画 像 の 画 像 ノイズおよびコントラスト 評 価 本 項 で 説 明 した 正 規 確 率 プロットならびにミーンランク 法 について それらの 詳 細 を 付 録 A に 示 す 3.4 Gauss 法 による CNR 解 析 の 結 果 および 検 討 3.4.1 Gauss 法 による 画 像 ノイズ 評 価 の 検 証 図 3.2 は 関 心 領 域 内 における CT 値 の 正 規 確 率 プロットを 示 した 一 例 である この 領 域 内 における CT 値 は およそ 100 HU を 境 に 直 線 的 に 分 布 している 部 分 とその 分 布 から 外 れている 部 分 に 分 かれている そこで 100 HU 以 下 の CT 値 を 調 べたところ 関 心 領 域 内 の 脳 実 質 部 に 相 当 していることが 確 認 された このことから この 正 規 確 率 プロットを 用 いることで CT background および Noise SD の 算 出 が 可 能 であることが 示 された 3.4.2 画 像 ノイズ 評 価 の 検 討 図 3.3 は CTDI vol. を 24 mgy に 設 定 した 場 合 の 各 管 電 圧 における 正 規 確 率 プロットを 示 している このグラフから 各 管 電 圧 で 直 線 分 布 の 傾 きが 異 なっており 低 管 電 圧 に なるに 従 って その 傾 きが 小 さくなっている このことから 管 電 圧 設 定 の 違 いによっ て CTDI vol. 一 定 の 下 でも 画 像 ノイズの 発 生 量 が 変 化 することを 示 している そこで 式 (3.2)からNoise SD(σ)を 求 め その 算 出 結 果 を 図 3.4 に 示 した 図 3.4 から どの 管 電 圧 においても CTDI vol. を 減 少 させることで Noise SD は 徐 々 に 増 加 している また CTDI vol. が 70 mgy 以 上 の 高 線 量 領 域 では いずれの 管 電 圧 でも Noise SD がほぼ 一 定 値 であるのに 対 して 低 線 量 領 域 になるに 従 って 低 管 電 圧 の 方 が Noise SD の 増 加 量 が 大 きくなっている これは 低 管 電 圧 化 による X 線 実 効 エ ネルギーの 低 下 が X 線 の 被 写 体 透 過 力 を 抑 制 したためと 考 えられる - 25 -

第 3 章 X 線 CT 画 像 の 画 像 ノイズおよびコントラスト 評 価 Cumulative Probability F(x) [%] 99.0 90.0 50.0 10.0 1.0 0.1 CTDI vol. : 24 mgy 80 kv 100 kv 120 kv 140 kv -50 0 50 100 150-4 CT Value x [HU] 図 3.3 各 管 電 圧 における 正 規 確 率 プロット 2 0-2 Inverse Normal Distribution Function -1 (F(x)) 40 80 kv 100 kv 120 kv 140 kv Noise SD [HU] 30 20 10 20 40 60 80 CTDI vol. [mgy] 図 3.4 CTDI vol. と Noise SD の 関 係 - 26 -

第 3 章 X 線 CT 画 像 の 画 像 ノイズおよびコントラスト 評 価 3.4.3 CNR 評 価 と 水 晶 体 被 ばく 線 量 の 検 討 図 3.5 は 各 管 電 圧 における 脳 動 脈 瘤 および 脳 血 管 の CNR と CTDI vol. との 関 係 を 示 し たものである いずれの 管 電 圧 においても CTDI vol. の 増 加 に 伴 い CNR は 上 昇 してい る 前 章 (2.3 節 )の 表 2.1 に 示 したように 実 効 mas 値 の 上 昇 と 共 に CTDI vol. も 上 昇 していることから CTDI vol. は X 線 出 力 に 相 当 し X 線 出 力 を 増 加 させると CNR は 大 き くなり 脳 動 脈 瘤 や 脳 血 管 といった 解 析 対 象 部 の 検 出 能 が 改 善 されることが 示 された また CNR は 管 電 圧 の 減 少 と 共 に 上 昇 しており 管 電 圧 80 kv で 最 も 高 くなった これは 管 電 圧 の 減 少 と 共 に X 線 実 効 エネルギーが 造 影 剤 に 含 まれるヨードの K 吸 収 端 エネルギー(33.2 kev)に 近 づき X 線 減 弱 効 率 が 大 きくなったためと 考 えられる このことを 確 かめるために 図 3.1(b) に 示 したように 造 影 剤 で 満 たされた 脳 動 脈 瘤 部 および 脳 血 管 部 の 平 均 CT 値 を 測 定 した 結 果 を 表 3.1 に 示 した この 結 果 から X 線 出 力 (CTDI vol. )に 関 係 なく 管 電 圧 が 減 少 するに 従 って 脳 動 脈 瘤 部 の CT 値 が 上 昇 す るという 結 果 が 得 られた 前 項 の 画 像 ノイズ 評 価 では 低 管 電 圧 化 によってNoise SD は 増 加 したが 図 3.5 から 低 管 電 圧 化 によって CNR も 同 様 に 増 加 する 結 果 が 得 られ た このことから 管 電 圧 の 減 少 に 伴 う 造 影 効 果 は 画 像 ノイズ 量 の 増 加 以 上 に 大 きい ことが 示 された さらに 前 章 (2.3 節 )で 示 したように CTDI vol. は 水 晶 体 被 ばく 線 量 と 正 の 相 関 があ り 簡 易 的 な 被 ばく 線 量 値 として 代 用 することが 可 能 である これを 考 慮 すると 図 3.5 から CNR を 一 定 した 場 合 管 電 圧 を 減 少 させることで CTDI vol. を 低 減 させる すなわち 低 管 電 圧 化 させることで 水 晶 体 被 ばく 線 量 を 低 減 できることが 明 らかとなっ た - 27 -

第 3 章 X 線 CT 画 像 の 画 像 ノイズおよびコントラスト 評 価 Contrast-to-Noise Ratio ; CNR 40 30 20 10 80 kv 100 kv 120 kv 140 kv 20 40 60 80 CTDI vol. [mgy] 図 3.5 CTDI vol. と CNR の 関 係 表 3.1 各 管 電 圧 における 脳 動 脈 瘤 部 の 平 均 CT 値 Tube voltage (Effective Energy) Mean CT value [HU] [kv] [kev] 12 mgy 24 mgy 41 mgy 49 mgy 73 mgy 80 (39.8) 506.8 525.9 519.6 100 (45.1) 392.3 402.4 403.0 397.2 120 (49.9) 301.2 309.0 302.2 310.3 314.4 140 (54.7) 225.5 227.9 233.0 229.4 233.2 ( 表 中 の mgy 値 は CTDI vol. を 示 している ) - 28 -

第 3 章 X 線 CT 画 像 の 画 像 ノイズおよびコントラスト 評 価 3.5 まとめ 本 研 究 では Gauss 法 による CNR 解 析 法 を 用 いて 頭 部 CTA 画 像 の 画 像 ノイズおよ びコントラスト 分 解 能 の 定 量 的 評 価 を 行 った その 結 果 を 以 下 に 要 約 する 1. CTDI vol. を 低 く 設 定 することで 画 像 ノイズは 増 加 し その 増 加 量 は 低 管 電 圧 ほど 大 きくなった また CTDI vol. を 大 きく 設 定 すると 管 電 圧 設 定 に 寄 らず 画 像 ノイズ は 減 少 し 一 定 値 に 近 づくことが 明 らかとなった 2. 低 管 電 圧 に 設 定 することで CNR が 改 善 されることが 示 された さらに CTDI vol. を 一 定 の 下 すなわち 水 晶 体 被 ばく 線 量 を 一 定 にした 場 合 でも 低 管 電 圧 化 は CNR を 向 上 させることが 明 らかとなった - 29 -

第 3 章 X 線 CT 画 像 の 画 像 ノイズおよびコントラスト 評 価 - 30 -

第 4 章 X 線 CT 画 像 の 輪 郭 検 出 能 評 価 第 4 章 X 線 CT 画 像 の 輪 郭 検 出 能 評 価 4.1 はじめに 前 章 において X 線 CT 画 像 の 画 像 ノイズおよびコントラストの 定 量 評 価 を 行 った そこでは 頭 部 CTA 検 査 による 画 像 診 断 では 脳 動 脈 瘤 の 位 置 把 握 が 重 要 であること を 述 べた この 頭 部 CTA 検 査 は その 診 断 が 高 精 度 であることを 活 かし 現 在 血 管 内 治 療 をはじめとする 治 療 用 ナビゲーションとしても 利 用 されている そのため 脳 動 脈 瘤 の 位 置 把 握 に 引 き 続 き その 病 変 の 破 裂 危 険 性 がどの 程 度 か( 治 療 の 必 要 性 がある かどうか) また 血 管 内 治 療 が 適 応 可 能 かどうかを 調 べる 必 要 がある 未 破 裂 脳 動 脈 瘤 の 破 裂 リスクは 病 変 部 位 によって 異 なるだけではなく その 大 きさ や 不 整 形 状 ブレブの 存 在 なども 破 裂 因 子 として 報 告 されている [21, 22] また これら の 因 子 は 治 療 適 応 の 決 定 や 術 後 の 合 併 症 を 含 むリスク 予 測 にも 必 要 不 可 欠 な 情 報 とな り 得 る すなわち 脳 動 脈 瘤 に 対 する 治 療 では その 位 置 把 握 だけではなく 病 変 の 形 状 把 握 やそのサイズ 計 測 が 重 要 であり 脳 動 脈 瘤 像 のコントラストよりも むしろ そ の 輪 郭 がどれだけ 明 瞭 に 描 出 されているか 否 かが 臨 床 上 重 要 になると 思 われる 本 章 では 頭 部 CTA 画 像 における 病 変 輪 郭 の 視 認 性 鮮 明 性 に 着 目 し CT 画 像 の 位 相 情 報 をもとに 輪 郭 検 出 能 と 呼 ばれる 新 たな 定 量 的 評 価 指 標 を 定 義 した さらに こ の 評 価 指 標 を 用 いて 様 々な 撮 像 条 件 で 得 られた CT 画 像 の 輪 郭 検 出 特 性 を 検 討 する 4.2 解 析 対 象 画 像 本 評 価 では CNR 評 価 で 使 用 した CT 画 像 を 解 析 対 象 画 像 として 採 用 することにした 図 4.1 は 輪 郭 検 出 能 を 評 価 するために CT 画 像 上 に 設 定 した 関 心 領 域 の 一 例 である この 図 に 示 すように 脳 動 脈 瘤 およびその 付 近 の 脳 血 管 を 検 出 すべき 輪 郭 の 標 的 と - 31 -

第 4 章 X 線 CT 画 像 の 輪 郭 検 出 能 評 価 (a) CT 画 像 (b) 関 心 領 域 図 4.1 脳 血 管 ファントムの CT 画 像 の 一 例 と 解 剖 学 的 構 造 の 説 明 し これを 含 むように 64 64 pixel の 関 心 領 域 を 設 定 した これらの 領 域 に 対 し 次 節 で 述 べる 輪 郭 検 出 能 評 価 法 を 適 用 し 病 変 輪 郭 の 検 出 能 特 性 を 検 討 した 4.3 位 相 限 定 画 像 の 再 構 成 アルゴリズム 脳 動 脈 瘤 の 輪 郭 検 出 能 を 評 価 する 際 CNR 解 析 と 同 様 解 剖 学 的 テクスチャに 起 因 する 濃 度 勾 配 が 輪 郭 の 鮮 明 性 の 評 価 を 複 雑 化 させている そこで まず CT 画 像 か ら 濃 淡 情 報 といった 血 管 輪 郭 以 外 の 画 像 情 報 を 除 去 する 必 要 がある 一 般 に 画 像 信 号 をフーリエ 変 換 すると 空 間 周 波 数 領 域 における 振 幅 成 分 と 位 相 成 分 に 分 離 すること ができ 前 者 には 画 像 の 濃 淡 情 報 が 後 者 には 濃 淡 変 化 の 程 度 つまり 画 像 の 輪 郭 情 報 が 含 まれていると 言 われている [23, 24] このことから 位 相 成 分 のみで 画 像 を 再 構 成 す れば 輪 郭 が 強 調 された 画 像 が 取 得 でき これを 用 いることによって 血 管 輪 郭 の 検 出 能 評 価 が 行 えるようになると 考 えられる そこで 脳 動 脈 瘤 が 存 在 する 全 ての 血 管 部 分 ( 計 10 カ 所 )に 図 4.1(b) のような 関 心 領 域 を 設 定 し その 領 域 に 対 してフーリエ 変 換 を 行 った 次 に 位 相 成 分 のみで 構 成 される 血 管 像 を 得 るために 各 空 間 周 波 数 における - 32 -

第 4 章 X 線 CT 画 像 の 輪 郭 検 出 能 評 価 振 幅 成 分 を 全 て 1 に 規 格 化 し この 条 件 の 下 で 逆 フーリエ 変 換 した このような 手 順 で 処 理 した CTA 画 像 の 一 例 が 図 4.2(b) であり 図 4.2(a) に 処 理 前 の 画 像 である 原 画 像 を 併 せて 示 した 以 降 この 図 4.2(b) のように 輪 郭 情 報 の 多 くで 構 成 される 画 像 を 位 相 限 定 画 像 と 呼 ぶことにし 本 研 究 では この 画 像 をもとに 血 管 輪 郭 の 検 出 能 評 価 法 の 理 論 構 築 を 行 った 上 述 した 位 相 限 定 画 像 の 再 構 成 アルゴリズムについて 処 理 手 順 の 模 式 図 を 図 4.3 に その 詳 細 を 付 録 B に 示 す (a) 原 画 像 (b) 位 相 限 定 画 像 図 4.2 解 析 対 象 画 像 の 一 例 DFT 離 散 フーリエ 変 換 (Discrete Fourier Transform), IDFT 逆 変 換 (Inverse DFT) 図 4.3 位 相 限 定 画 像 の 再 構 成 アルゴリズム - 33 -

第 4 章 X 線 CT 画 像 の 輪 郭 検 出 能 評 価 4.4 位 相 限 定 画 像 による 輪 郭 検 出 能 評 価 本 研 究 で 提 案 する 血 管 輪 郭 の 評 価 法 は 位 相 限 定 画 像 における 輪 郭 成 分 の 統 計 学 的 性 質 を 利 用 した 方 法 であり 非 線 形 画 像 の 代 表 でもある 臨 床 画 像 にも 適 用 できるように 理 論 構 築 した その 測 定 原 理 を 以 下 に 説 明 する 4.4.1 位 相 限 定 画 像 の 統 計 学 的 性 質 本 項 では まず 位 相 限 定 画 像 の 統 計 学 的 性 質 について 述 べる 図 4.2(b) のような 正 方 形 関 心 領 域 の 一 辺 の 大 きさをMとすると Mが 大 きくなればなるほど 位 相 限 定 画 像 のピクセル 値 分 布 は 正 規 分 布 に 近 似 できることが 経 験 的 に 知 られている [25] また 前 項 で 説 明 した 方 法 によって 画 像 再 構 成 された 位 相 限 定 画 像 では 算 術 演 算 より その ピクセル 値 の 総 和 は 1 となり それらの 絶 対 値 の 二 乗 和 も 1 となる [25] したがって 位 相 限 定 画 像 のピクセル 値 の 平 均 およびその 不 偏 分 散 は 共 に 1 M 2 となる ここで 本 研 究 で 取 得 した 位 相 限 定 画 像 について そのピクセル 値 の 正 規 性 を 評 価 するために 解 析 対 象 である 位 相 限 定 画 像 内 の 全 てのピクセル 値 を 正 規 確 率 プロットした 正 規 確 率 プロットについては 第 2 章 で 既 述 しており その 詳 細 は 付 録 A に 記 した 図 4.4 は 正 規 確 率 プロットの 一 例 であり 管 電 圧 が 80 kv および 140 kv CTDI vol. が 40 mgy の 場 合 の 結 果 を 示 している 80 kv および 140 kv の 正 規 確 率 プロットは 共 に 直 線 的 に 分 布 していることから 本 研 究 における 位 相 限 定 画 像 のピクセル 値 のほとんどが 正 規 分 布 を 示 していることが 明 らかとなった 他 の 撮 影 条 件 においても 同 様 の 結 果 が 得 られ た このことから 位 相 限 定 画 像 のピクセル 値 の 大 半 は 正 規 分 布 に 従 うことが 確 認 でき た 4.4.2 位 相 限 定 画 像 を 用 いた 輪 郭 検 出 能 の 評 価 指 標 上 述 したように 位 相 限 定 画 像 の 全 てのピクセル 値 が 正 規 分 布 に 従 うわけではなく - 34 -

第 4 章 X 線 CT 画 像 の 輪 郭 検 出 能 評 価 正 規 分 布 からの 外 れたピクセル 値 の 分 布 は この 母 集 団 分 布 ( 全 てのピクセル 値 分 布 ) の 裾 野 部 分 を 支 配 するように 観 察 された ここで 血 管 輪 郭 が 明 瞭 な CT 画 像 について 考 えてみる 位 相 限 定 画 像 は 原 画 像 における CT 値 の 変 動 量 を 反 映 したものであるた め そのピクセル 値 は CT 値 変 動 の 大 きい 血 管 輪 郭 部 分 で 大 きくなり その 分 布 は 正 規 分 布 から 外 れると 考 えられる すなわち この 正 規 分 布 から 外 れたピクセル 値 は 主 に 血 管 輪 郭 の 性 質 を 表 現 している 一 般 に 確 率 変 数 が 裾 の 広 い 分 布 に 従 う 場 合 その 変 数 の 尖 度 は 0 より 大 きくなることが 知 られており 正 規 分 布 の 尖 度 は 0 である した がって 尖 度 が 大 きいほど 正 規 分 布 からの 外 れ 値 も 多 くなる このことから 位 相 限 定 画 像 のピクセル 値 分 布 の 尖 度 は 位 相 限 定 画 像 上 の 血 管 輪 郭 の 検 出 能 に 厳 密 に 相 関 す ると 思 われる それゆえ 尖 度 が 大 きくなればなるほど 血 管 輪 郭 の 検 出 能 が 高 くなる そこで 血 管 輪 郭 検 出 能 の 評 価 指 標 を 位 相 限 定 画 像 における ピクセル 値 の 尖 度 (Kurtosis)と 定 義 し これを 用 いて 輪 郭 検 出 能 を 評 価 した Cumulative Probability GF(x) [%] 99.9 99.0 90.0 50.0 10.0 1.0 0.1 CTDI vol : 40 mgy : 80 kv : 140 kv -0.1-0.05 0 0.05 0.1 Pixel Value in Phase-Only Image 図 4.4 位 相 限 定 画 像 におけるピクセル 値 の 正 規 確 率 プロットの 一 例 4 2 0-2 -4 Inverse Normal Distribution Function -1 (GF(x)) - 35 -

第 4 章 X 線 CT 画 像 の 輪 郭 検 出 能 評 価 4.5 輪 郭 検 出 能 の 評 価 結 果 および 検 討 4.5.1 輪 郭 検 出 能 評 価 の 妥 当 性 4.4 節 では 本 研 究 で 提 案 する 輪 郭 検 出 能 評 価 法 の 測 定 原 理 について 説 明 した 本 項 では 位 相 限 定 画 像 におけるピクセル 値 の 尖 度 が 血 管 輪 郭 の 検 出 能 を 評 価 するための 物 理 的 指 標 として 有 用 であるかどうかについて 検 証 する そこで 様 々な 撮 像 条 件 において 位 相 限 定 画 像 のピクセル 値 の 尖 度 を 算 出 し 参 照 値 として その 歪 度 (Skewness)も 求 めた 表 4.1 は それら 算 出 結 果 の 一 例 である この 表 から 歪 度 は 撮 像 条 件 に 関 わらず 0 となった したがって 位 相 限 定 画 像 のピ クセル 値 は 対 称 的 に 分 布 していることが 示 された このことは 図 4.4 の 正 規 確 率 プロ ットにおいて ピクセル 値 0 となるプロットを 中 心 に 点 対 称 な 分 布 となっていることか らも 確 認 できる その 一 方 で 尖 度 は 0 より 大 きくなり 撮 像 条 件 によって 変 化 した そこで 位 相 限 定 画 像 のピクセル 値 における 尖 度 が 何 を 意 味 するか 調 査 するために 位 相 限 定 画 像 上 の 血 管 輪 郭 に 対 して 任 意 の 線 分 を 設 定 し( 例 えば 図 4.5 内 に 示 した 位 相 表 4.1 位 相 限 定 画 像 のピクセル 値 分 布 から 算 出 した 歪 度 および 尖 度 Tube voltage [kv] CTDI vol. [mgy] Skewness Kurtosis 80 24.6-0.016 5.680 100 72.6 0.007 4.942 120 48.9 0.045 3.755 140 24.9 0.066 3.146-36 -

第 4 章 X 線 CT 画 像 の 輪 郭 検 出 能 評 価 限 定 画 像 の 線 分 a-b ) これに 沿 ったピクセル 値 プロファイルを 取 得 し その 結 果 を 図 4.5 に 示 した このグラフから 血 管 輪 郭 に 相 当 するピクセル 値 が その 背 景 成 分 よ り 明 らかに 大 きくなっていることが 分 かる もし 血 管 輪 郭 が 画 像 ノイズに 埋 もれてし まい その 検 出 が 困 難 になった 場 合 位 相 限 定 画 像 のピクセル 値 は 明 確 な 正 規 分 布 の 特 徴 を 示 し その 尖 度 は 0 になると 考 えられる 事 実 位 相 限 定 画 像 上 の 血 管 輪 郭 を 含 ま ない 部 分 に 関 心 領 域 を 設 定 したところ その 部 分 の 尖 度 は ほぼ 0 となることが 確 認 さ れた それとは 反 対 に 血 管 輪 郭 が 容 易 に 検 出 できる 場 合 位 相 限 定 画 像 のピクセル 値 における 外 れ 値 は 大 きくなり それらの 画 像 上 の 位 置 は 血 管 輪 郭 の 部 分 に 相 当 する と 思 われる また 位 相 限 定 画 像 のピクセル 値 分 布 は 正 規 分 布 から 僅 かに 異 なり そ の 尖 度 は 0 より 大 きくなると 考 えられる 表 4.1 に 示 したように 尖 度 は 管 電 圧 の 増 加 に 伴 って 減 少 する 傾 向 にあり それは CTDI vol. とは 関 係 ないように 見 える それに 加 え 位 相 限 定 画 像 のピクセル 値 の 外 れ 値 は 管 電 圧 の 減 少 と 共 に 増 加 していた この 結 果 は 管 電 圧 の 減 少 に 従 って 位 相 限 定 画 像 のピクセル 値 分 布 の 裾 が 広 くなっている Pixel Value in Phase-Only Image 0.10 CTDI vol. : 40 mgy Tube Voltage : 80 kv 0.08 0.06 0.04 0.02 0.00-0.02 Aneurysm contour a b -0.04 a 10 20 30 40 50 60 b Distance along Profile [pixel] 図 4.5 位 相 限 定 画 像 におけるピクセル 値 プロファイルの 一 例 - 37 -

第 4 章 X 線 CT 画 像 の 輪 郭 検 出 能 評 価 ことを 示 しており そのピクセル 値 分 布 と 正 規 分 布 との 間 に 解 離 が 生 じ 尖 度 の 値 が 増 加 することを 表 している ここで 位 相 限 定 画 像 のピクセル 値 における 平 均 値 および 分 散 は その 画 像 を 形 成 するピクセル 数 ( 関 心 領 域 のマトリックス 数 )に 依 存 しているた め ピクセル 値 の 外 れ 値 は 尖 度 に 直 接 影 響 を 与 え 外 れ 値 が 増 加 するに 従 って 尖 度 は 大 きくなる 以 上 の 結 果 から 位 相 限 定 画 像 のピクセル 値 の 尖 度 を 用 いることで 輪 郭 検 出 能 の 評 価 が 可 能 であることが 示 された 4.5.2 輪 郭 検 出 能 評 価 と 視 覚 評 価 の 検 討 前 項 において 位 相 限 定 画 像 上 のピクセル 値 の 統 計 学 的 性 質 をもとに 血 管 輪 郭 の 検 出 能 評 価 が 可 能 であることを 示 した それゆえ 位 相 限 定 画 像 のピクセル 値 の 尖 度 を 用 い ることで 血 管 輪 郭 検 出 能 の 評 価 が 可 能 となる そこで 本 項 では CTA 画 像 上 の 血 管 輪 郭 の 検 出 能 を 評 価 するために 位 相 限 定 画 像 のピクセル 値 の 尖 度 を 物 理 指 標 として 採 用 し 脳 動 脈 瘤 像 の 輪 郭 と 撮 像 条 件 との 関 係 について 検 討 する 図 4.6 は 管 電 圧 を 120 kv に 設 定 した 場 合 の CTDI vol. と 位 相 限 定 画 像 におけるピク セル 値 の 尖 度 との 関 係 を 示 したものである 尖 度 の 値 は 全 ての CTDI vol. で ほぼ 一 定 となった ここで 図 4.7 に 示 した CTA 画 像 の 血 管 輪 郭 像 を 確 認 したところ その 輪 郭 はほとんど 同 じように 見 えている 他 の 管 電 圧 設 定 においても このような 類 似 した 結 果 が 得 られた このことは 血 管 輪 郭 検 出 能 が 設 定 管 電 圧 において CTDI vol. にほと んど 依 存 しないことを 示 している ここで 尖 度 は CTDI vol. に 係 わらず ほぼ 一 定 値 であるため 各 管 電 圧 における 尖 度 の 平 均 値 を 算 出 した 図 4.8 に 位 相 限 定 画 像 のピクセル 値 における 尖 度 の 平 均 値 と 管 電 圧 との 関 係 を 示 している 尖 度 の 平 均 値 は 管 電 圧 が 増 加 するに 従 って 減 少 し これ らは 常 に 0 より 大 きい 値 を 示 した また 設 定 管 電 圧 が 80 kv および 100 kv では 臨 床 現 場 で 通 常 使 用 されている 120 kv より 大 きい 値 を 示 している このような 関 係 性 を - 38 -

第 4 章 X 線 CT 画 像 の 輪 郭 検 出 能 評 価 Kurtosis of Pixel Values in Phase-Only Image 10 8 6 4 2 0 Tube Voltage: 120 kv 20 40 60 80 CTDI vol. [mgy] 図 4.6 CTDI vol. と 位 相 限 定 画 像 におけるピクセル 値 の 尖 度 との 関 係 図 4.7 120 kv における CTA 画 像 (mgy 値 は CTDI vol. ) - 39 -

第 4 章 X 線 CT 画 像 の 輪 郭 検 出 能 評 価 Kurtosis of Pixel Values in Phase-Only Image 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 80 100 120 140 Tube Voltage [kv] 図 4.8 管 電 圧 と 位 相 限 定 画 像 におけるピクセル 値 の 尖 度 の 関 係 を 視 覚 的 評 価 と 比 較 するために 様 々な 管 電 圧 における CTA 画 像 上 の 血 管 輪 郭 像 の 視 認 性 について 検 討 した 図 4.9 は 全 ての 管 電 圧 で 得 られた 視 覚 評 価 用 の 標 的 画 像 であ り CTDI vol. がほぼ 24 mgy 41 mgy となる CTA 画 像 を 示 している 図 4.9 に 示 すとお り CTA 画 像 上 の 血 管 像 のコントラストは 管 電 圧 が 減 少 すると 共 に 増 加 している さらに その 血 管 輪 郭 の 視 認 性 は 管 電 圧 の 低 下 に 伴 って 良 好 になっており 80 kv で 最 も 明 瞭 になっている このように 視 覚 による 主 観 的 評 価 の 結 果 は 位 相 限 定 画 像 の ピクセル 値 の 尖 度 による 輪 郭 検 出 能 評 価 と 類 似 する 結 果 を 与 えていることから 本 研 究 の 提 案 法 で 得 られた 評 価 結 果 には 高 い 信 頼 性 があることが 確 認 できたと 思 われる また 本 研 究 における 撮 像 条 件 では 80 kv に 設 定 したときに CTA 画 像 において 血 管 輪 郭 の 視 認 性 が 向 上 し 鮮 明 な CTA 画 像 になることが 明 らかとなった そこで なぜ 80 kv の 管 電 圧 に 設 定 したとき 最 も 視 認 性 が 良 くになったのかについて 検 討 してみる - 40 -

第 4 章 X 線 CT 画 像 の 輪 郭 検 出 能 評 価 と 設 定 管 電 圧 の 線 質 特 性 が 関 与 しているためと 考 えられる 本 研 究 における CTA 画 像 では 血 管 描 出 を 目 的 としてヨード 造 影 剤 が 使 用 されている そのため ヨードの K 吸 収 端 付 近 のエネルギー( 約 33.2 kev)を 持 った X 線 光 子 が 画 像 形 成 に 多 く 関 与 す ると 脳 実 質 と 脳 動 脈 瘤 との 間 にコントラストがつき 脳 動 脈 瘤 の 輪 郭 は 明 瞭 になる このように 考 えると 管 電 圧 80 kv および 140 kv は X 線 実 効 エネルギーがそれぞれ 39.8 kev 54.7 kev に 相 当 することから 80 kv に 設 定 したときに 最 も 鮮 明 になること が 定 性 的 に 理 解 できる 以 上 の 結 果 から 血 管 輪 郭 の 検 出 能 は 管 電 圧 を 低 くすることによって 改 善 されること が 示 された 図 4.9 視 覚 評 価 のための 標 的 CTA 画 像 (mgy 値 は CTDI vol. ) - 41 -

第 4 章 X 線 CT 画 像 の 輪 郭 検 出 能 評 価 4.5.3 輪 郭 検 出 能 とそれに 及 ぼす X 線 線 量 効 果 本 項 では 水 晶 体 に 対 する 被 ばく 線 量 の 観 点 から 検 討 を 行 う 一 般 に 臨 床 における CT 検 査 では 管 電 圧 120 kv が 使 用 されている 本 研 究 においても 水 晶 体 被 ばく 線 量 測 定 を 行 った 医 療 施 設 では 管 電 圧 120 kv CTDI vol. 40.6 mgy( 図 4.9 下 段 の 左 から 三 番 目 の 画 像 に 相 当 )で 頭 部 CTA 検 査 が 行 われている この 撮 像 条 件 から 第 2 章 を 参 照 にすると 頭 部 CTA 検 査 時 の 水 晶 体 被 ばく 線 量 は 31.5 mgy と 推 定 できる 前 項 で 述 べたように 管 電 圧 80 kv を 適 用 することで CTA 画 像 の 血 管 輪 郭 検 出 能 は 改 善 さ れる その 一 例 として 管 電 圧 80kV CTDI vol. 24.6 mgy である 撮 像 条 件 の 場 合 ( 図 4.9 上 段 の 左 端 画 像 に 相 当 ) 水 晶 体 被 ばく 線 量 は 19.6 mgy と 推 定 される 表 4.2 に これ らの 推 定 結 果 をまとめた これらの 推 定 値 から 上 述 した 管 電 圧 80 kv の 撮 像 条 件 では 31.5 19.6 通 常 撮 像 条 件 と 比 較 して 水 晶 体 被 ばく 線 量 をおよそ 40 %( 31.5 100 = 37.777 ) 低 減 することができた したがって 表 4.2 に 示 すような 低 管 電 圧 撮 像 条 件 は 通 常 撮 像 条 件 と 比 べて 水 晶 体 被 ばく 線 量 を 約 40 % 低 減 し さらに 血 管 輪 郭 検 出 能 を 改 善 させることが 示 された 表 4.2 各 撮 像 条 件 における 水 晶 体 被 ばく 線 量 Protocol Tube voltage [kv] CTDI vol. [mgy] Lens dose [mgy] Routine 120 40.6 31.5 Low kv 80 24.6 19.6-42 -

第 4 章 X 線 CT 画 像 の 輪 郭 検 出 能 評 価 4.6 まとめ 本 研 究 では 二 次 元 フーリエ 変 換 から 得 られる 位 相 情 報 をもとに CTA 画 像 におけ る 血 管 輪 郭 検 出 能 の 定 量 的 評 価 法 を 考 案 した さらに この 評 価 法 を 用 いて 撮 影 条 件 の 異 なる CTA 画 像 における 脳 動 脈 瘤 像 の 輪 郭 検 出 能 評 価 も 実 施 した その 結 果 を 以 下 に 要 約 する 1. 位 相 限 定 画 像 におけるピクセル 値 の 尖 度 は CTA 画 像 の 血 管 輪 郭 検 出 能 と 関 係 があ り 尖 度 が 大 きくなれば 血 管 輪 郭 が 明 瞭 になることが 明 らかとなった さらに 尖 度 を 用 いた 血 管 輪 郭 検 出 能 の 評 価 結 果 は 視 覚 による 主 観 的 評 価 とほとんど 同 じ 結 果 が 示 された 2. 尖 度 を 用 いた 輪 郭 検 出 能 の 評 価 結 果 は 設 定 した 管 電 圧 の 下 で 水 晶 体 被 ばく 線 量 に 依 存 しないことが 示 された さらに 低 管 電 圧 に 設 定 することで 血 管 輪 郭 の 検 出 能 は 改 善 されることが 明 らかとなった - 43 -

第 4 章 X 線 CT 画 像 の 輪 郭 検 出 能 評 価 - 44 -

第 5 章 X 線 CT 画 像 のストリークアーチファクト 評 価 第 5 章 X 線 CT 画 像 の ストリークアーチファクト 評 価 5.1 はじめに 第 3 章 では X 線 CT 画 像 の 画 像 ノイズおよびコントラストを 第 4 章 では 血 管 輪 郭 の 検 出 能 を 定 量 的 に 評 価 した これらの 評 価 指 標 は 画 像 診 断 や 治 療 支 援 のような 臨 床 応 用 の 観 点 から 高 精 細 化 多 様 化 する CT 画 像 の 画 質 評 価 および 画 質 管 理 のため に 極 めて 重 要 なものになると 思 われる しかしながら CT 画 像 の 画 質 を 評 価 する 上 で アーチファクトによる 画 質 への 影 響 を 無 視 することはできない このアーチファク トは 投 影 データの 収 集 法 や 画 像 再 構 成 法 の 要 因 から その X 線 CT 装 置 特 有 のものを 発 生 させ 画 質 を 低 下 させる その 一 例 として 頭 部 領 域 においては 頭 蓋 底 部 の 骨 構 造 から 発 生 するストリークアーチファクトが 挙 げられ 脳 実 質 のみならず 頭 蓋 底 付 近 に 存 在 する 脳 血 管 の 観 察 を 困 難 にさせている さらに このアーチファクトは 撮 像 パラメータによっても その 発 生 量 が 変 化 すると 思 われる ところが 撮 像 パラメータ がアーチファクトの 発 生 にどのような 影 響 を 与 えるかは 未 だ 明 らかにされていない そ の 理 由 の 一 つにはアーチファクトの 定 量 的 評 価 法 が 確 立 されていないことが 挙 げられ る この 問 題 を 解 決 するために 極 値 統 計 学 を 用 いることで CT 画 像 上 のストリークア ーチファクトを 定 量 的 解 析 する Gumbel 評 価 法 を 考 案 した [15, 17, 26] この 評 価 法 を 用 いる ことで あらゆる 撮 像 パラメータにおけるストリークアーチファクトの 発 生 に 関 して 定 量 的 に 評 価 を 行 なうことが 可 能 になると 思 われる 本 章 では CT 画 像 上 のストリークアーチファクトの 解 析 に Gumbel 評 価 法 を 適 用 し その 解 析 結 果 について 述 べている さらに 様 々な 撮 像 パラメータで 得 られた CT 画 像 のストリークアーチファクトの 評 価 を 行 い 本 評 価 法 の 有 用 性 について 検 討 する - 45 -

第 5 章 X 線 CT 画 像 のストリークアーチファクト 評 価 5.2 解 析 対 象 画 像 本 評 価 では 第 3 章 の CNR 評 価 で 使 用 した CT 画 像 のうち ストリークアーチファ クトが 特 に 目 立 つ 頭 蓋 底 領 域 の 画 像 を 解 析 対 象 として 採 用 した 図 5.1(a) は 解 析 対 象 画 像 の 一 例 である 図 5.1(a) では ファントム 内 の 脳 実 質 部 ( 解 剖 学 的 には 小 脳 付 近 ) に 前 頭 部 側 から 後 頭 部 側 へ 人 工 骨 に 起 因 する 線 状 (ストリーク 状 )のアーチファク トが 観 察 されていることが 確 認 できる 本 研 究 では このストリークアーチファクトを 解 析 対 象 とし このアーチファクトを 含 み かつ これに 垂 直 な 方 向 に 40 pixel の 直 線 領 域 をサンプルとして 抽 出 した このようなサンプリングを 100 個 すなわち ストリ ークアーチファクトの 解 析 領 域 として 40 100 pixel の 関 心 領 域 を 設 定 した この 関 心 領 域 は 周 辺 の 骨 構 造 を 含 まない 十 分 に 大 きな 解 析 範 囲 として 設 定 した この 一 例 を 図 5.1(b) に 示 す このような 領 域 に 対 し 次 節 で 述 べる Gumbel 評 価 法 を 適 用 し スト リークアーチファクトの 統 計 学 的 特 性 を 検 討 した (a) CT 画 像 (b) 関 心 領 域 図 5.1 頭 蓋 底 領 域 における CT 画 像 の 一 例 - 46 -

第 5 章 X 線 CT 画 像 のストリークアーチファクト 評 価 5.3 ストリークアーチファクトの 統 計 学 的 性 質 5.3.1 ストリークアーチファクトの 定 義 本 評 価 では 図 5.1(b) に 示 す 関 心 領 域 内 のストリークアーチファクトを 評 価 するこ とにした したがって このアーチファクトに 対 して 垂 直 な CT 値 プロファイル( 長 さ: 40 pixel)を 1 ピクセル 毎 に 抽 出 し 一 解 析 画 像 当 たり 100 プロファイルを 取 得 した このようにして 得 られた CT 値 プロファイルの 一 例 を 図 5.2 に 示 した この 例 は 図 5.1(b) における 関 心 領 域 内 の 任 意 の 線 分 a-b の CT 値 プロファイルである この 図 から 分 か るように CT 値 プロファイルには ストリークアーチファクトと 画 像 ノイズが 混 在 し ており アーチファクトのみを 抽 出 することは 困 難 である しかし CT 値 の 変 動 に 着 目 すると 最 も 大 きな 変 動 部 分 はアーチファクトと 思 われる そこで 全 ての 解 析 対 象 画 像 に 存 在 するアーチファクトを 観 察 したところ アーチファクトが 存 在 する 部 分 で CT 値 の 濃 淡 が 明 瞭 になっており CT 値 の 最 大 変 動 部 分 はアーチファクトと 思 われる Pixel Value in CT Images [HU] 120 100 80 60 40 20 Artifact Tube Voltage: 120 kv CTDI vol.: 72 mgy Image Noise 0 0 10 20 30 40 a b Distance along Profile [pixel] 図 5.2 CT 値 プロファイルの 一 例 - 47 -

第 5 章 X 線 CT 画 像 のストリークアーチファクト 評 価 一 般 に ある 母 集 団 からその 一 部 分 をサンプルとして 抽 出 した 場 合 そのサンプル 内 で の 最 大 もしくは 最 小 確 率 変 数 は 母 集 団 ( 基 本 分 布 )における 極 値 集 団 の 代 表 値 として 捉 えることができ それらの 値 は 基 本 分 布 とは 若 干 性 質 の 異 なる 分 布 つまり 基 本 分 布 の 裾 野 部 分 のみを 反 映 した 極 値 分 布 に 従 うことが 知 られている [27] そこで 本 研 究 では 各 CT 値 プロファイルにおける 最 大 変 動 量 をストリークアーチファクトの 特 徴 量 として 定 義 し これを Gumbel 評 価 法 によって 解 析 し 様 々な 撮 像 パラメータとアーチ ファクトとの 相 関 関 係 を 調 べた 5.3.2 極 値 統 計 分 布 の 適 用 評 価 5.3.1 項 で 述 べたように あるサンプルにおける 最 大 確 率 変 数 は 基 本 分 布 の 裾 野 の 形 に 支 配 された 極 値 分 布 に 従 うことが 明 らかにされている さらに この 極 値 分 布 は 裾 野 の 形 によって 三 種 類 の 漸 近 分 布 が 存 在 し 各 サンプルから 得 られた 最 大 確 率 変 数 はこ の 三 種 のいずれかの 分 布 に 漸 近 することが 数 学 的 に 証 明 されている [27] この 三 種 類 の 漸 近 分 布 とは Gumbel 分 布 ( 第 一 種 漸 近 分 布 ) Fréchet 分 布 ( 第 二 種 漸 近 分 布 ) Weibull 分 布 ( 第 三 種 漸 近 分 布 )であり これらの 分 布 は 以 下 の 式 で 定 義 されている Gumbel 分 布 :F(x) = exp [ exp ( x β γ )] (5.1) Fréchet 分 布 Weibell 分 布 :F(x) = exp [ ( x β γ ) α ] (5.2) :F(x) = exp [ ( β x γ )α ] (5.3) F(x): 確 率 変 数 x に 対 する 累 積 確 率 α : 形 状 パラメータ( 極 値 分 布 の 形 状 を 表 す) β : 位 置 パラメータ(ピーク 値 を 与 える 確 率 変 数 ) γ : 尺 度 パラメータ( 確 率 変 数 のバラツキを 示 す) - 48 -

第 5 章 X 線 CT 画 像 のストリークアーチファクト 評 価 確 率 変 数 がどの 分 布 に 漸 近 するかについては 各 分 布 の 確 率 紙 すなわち Gumbel 確 率 分 布 紙 Fréchet 確 率 分 布 紙 Weibull 確 率 分 布 紙 にそれぞれ 得 られた 結 果 をプロットし 直 線 的 な 分 布 が 得 られるか 否 かで 判 定 される ここで この 解 析 における 累 積 確 率 は 第 3 章 で 既 述 したミーンランク 法 ( 式 (3.3) )によって 算 出 した 図 5.3 図 5.4 図 5.5 に 各 々 上 述 した 三 つの 極 値 分 布 の 確 率 プロットである Gumbel プロット Fréchet プロット Weibull プロットの 一 例 ( 管 電 圧 120 kv CTDI vol. 41 mgy)を 示 した これ らの 図 から 分 かるように Gumbel プロットを 行 った 場 合 が 最 も 直 線 的 で この 傾 向 は 他 の 撮 像 条 件 の 場 合 においても 同 様 であった また Fréchet プロット Weibull プロッ トに 対 して 別 の 曲 線 近 似 を 行 ったところ 直 線 近 似 よりも 高 い 相 関 が 得 られた この ことから この 二 種 のプロットについては 曲 線 的 に 分 布 していることが 明 らかとなった ( 図 5.4 図 5.5 の 実 線 ) 以 上 のことから ストリークアーチファクトに 起 因 する 最 大 変 動 量 は Gumbel 分 布 に 従 うことが 明 らかとなった 99.0 Tube voltage : 120 kv CTDI vol.: 41 mgy Cumulative Probability [%] 90.0 50.0 10.0 1.0 0.1 0 20 40 60 80 100 Largest Difference between Adjacent CT Values 図 5.3 Gumbel プロット - 49 -

第 5 章 X 線 CT 画 像 のストリークアーチファクト 評 価 99.0 Tube voltage : 120 kv CTDI vol.: 41 mgy Cumulative Probability [%] 90.0 50.0 10.0 1.0 0.1 10 1 10 2 Largest Difference between Adjacent CT Values 図 5.4 Fréchet プロット Cumulative Probability [%] 99.0 90.0 50.0 10.0 1.0 Tube voltage : 120 kv CTDI vol.: 41 mgy 0.1 10 1 10 2 Largest Difference between Adjacent CT Values 図 5.5 Weibull プロット - 50 -

第 5 章 X 線 CT 画 像 のストリークアーチファクト 評 価 5.4 Gumbel 評 価 法 によるストリークアーチファクト 解 析 前 節 では ストリークアーチファクトに 起 因 する CT 値 の 最 大 変 動 量 が Gumbel 分 布 に 従 って 発 生 するという 極 値 統 計 学 的 性 質 が 明 らかとなった 本 節 では この 性 質 を 利 用 して ストリークアーチファクトの 定 量 的 評 価 法 について 述 べる 5.4.1 Gumbel 確 率 密 度 関 数 による 評 価 図 5.6 は 管 電 圧 120 kv の 場 合 の Gumbel プロットであり CTDI vol. がアーチファク トに 及 ぼす 影 響 について 検 討 した 結 果 である 前 節 で 述 べたように 全 ての CTDI vol. に おいて Gumbelプロットは 直 線 的 な 分 布 となっている また この Gumbel 分 布 は CTDI vol. が 減 少 するに 従 って 回 帰 直 線 の 傾 きが 小 さくなり かつ CT 値 の 最 大 変 動 量 は 増 加 傾 向 を 示 している すなわち 撮 像 パラメータの 違 いによってアーチファクトの 発 生 状 況 が 異 なることが 示 されている Cumulative Probability [%] 99.0 90.0 50.0 10.0 CTDI vol. 73 mgy 49 mgy 41 mgy 24 mgy 12 mgy 1.0 Tube voltage : 120 kv 0.1 0 50 100 150 Largest Difference between Adjacent CT Values 図 5.6 CTDI vol. が 異 なる Gumbel プロット(120 kv) - 51 -

第 5 章 X 線 CT 画 像 のストリークアーチファクト 評 価 図 5.7 は 管 電 圧 120 kv の 場 合 の Gumbel 確 率 密 度 関 数 による 評 価 を 行 った 結 果 であ る この 確 率 密 度 関 数 を 用 いることで どの 程 度 の 大 きさのアーチファクトが どれく らいの 頻 度 で 発 生 するのかといった 状 況 を 詳 細 に 把 握 できる 上 その 統 計 的 有 意 差 も 判 断 しやすく 視 覚 的 にも 直 感 的 にも 分 かりやすい 評 価 が 可 能 になると 思 われる Gumbel 確 率 密 度 関 数 f(x) は 式 (5.1)で 表 される Gumbel 分 布 の 定 義 式 を 微 分 するこ とで 導 出 することができる f(x) = 1 x β exp [ (x β) exp ( γ γ γ )] (5.4) この 結 果 から 分 かるように CTDI vol. が 減 少 するに 伴 い 確 率 密 度 関 数 のピーク 値 が 小 さくなっている さらに 確 率 密 度 関 数 の 形 に 注 目 すると CTDI vol. が 減 少 すると 共 に その 裾 野 部 の 広 がりも 大 きくなっている すなわち CTDI vol. の 減 少 に 従 って アーチ 0.08 0.06 0.04 0.02 Probability Density of Gumbel Distribution0.10 73 mgy 49 mgy 41 mgy 24 mgy 12 mgy Tube Voltage : 120 kv 0 0 50 100 150 Largest Difference between Adjacent CT Values 図 5.7 CTDI vol. が 異 なる Gumbel 確 率 密 度 関 数 (120 kv) - 52 -