摂 南 経 済 研 究 第 4 巻 第 1 2 号 (2014),33-50ページ プロ 野 球 来 場 者 の 飲 食 物 購 買 行 動 に 関 する 考 察 研 究 ノート プロ 野 球 来 場 者 の 飲 食 物 購 買 行 動 に 関 する 考 察 -オリックス バファローズを 事 例 として- 持 永 政 人 西 川 浩 平 The Analysis of Buying Behavior -Cases of Orix Buffaloes- Masato Mochinaga Kohei Nishikawa 33
摂 南 経 済 研 究 第 4 巻 第 1 2 号 (2014) 1.はじめに 近 年 プロ 野 球 人 気 の 陰 りが 指 摘 されているが 現 在 でも 数 多 くの 人 が 球 場 に 足 を 運 んでい る 1 観 客 動 員 数 でみると 来 場 客 数 の 公 表 が 実 数 で 行 われるようになった 2005 年 の 数 値 が 約 2,000 万 人 に 対 し 2013 年 は 約 2,200 万 人 と 10% 程 度 の 増 加 を 記 録 している 2 しかし 少 子 高 齢 化 の 進 展 により 多 くの 市 場 と 同 様 プロ 野 球 市 場 においても 来 場 者 数 の 減 少 が 予 想 される このような 状 況 において 各 球 団 が 現 在 と 同 程 度 の 収 益 を 確 保 するとなる と チケット 価 格 を 上 昇 させるか チケット 販 売 の 減 少 分 を 他 の 収 益 で 補 うなど 何 らかの 方 策 が 必 要 とされる 3 前 者 を 実 施 するか 否 かは プロ 野 球 チケットの 需 要 の 価 格 弾 力 性 の 大 きさに 依 存 する ただし 同 財 の 需 要 の 価 格 弾 力 性 は 非 常 に 大 きいことが 指 摘 されているため 収 益 確 保 に 向 けたチケット 価 格 の 値 上 げは 結 果 として 収 益 減 少 につながる 可 能 性 が 高 い 4 したが って プロ 野 球 球 団 が 今 後 直 面 するであろう 来 場 者 減 少 に 伴 うチケット 収 入 の 減 少 について は 他 の 収 益 で 補 うことが 現 実 的 である プロ 野 球 球 団 の 収 入 源 はチケット グッズ 飲 食 物 広 告 放 映 権 と 言 われている 5 つまり チケット 販 売 からの 収 益 の 減 少 分 については グッズ 飲 食 物 の 販 売 量 の 増 大 広 告 収 入 の 増 大 放 映 権 料 の 増 大 のいずれかで 補 うことになる うち 広 告 や 放 映 権 は 相 手 企 業 等 との 関 係 が あるため 球 団 側 の 戦 略 意 向 が 完 全 に 反 映 されるとは 限 らない 他 方 グッズ 飲 食 物 の 販 売 については 消 費 者 の 嗜 好 に 合 致 すれば 良 いだけなので 球 団 側 の 戦 略 意 向 を 反 映 させる ことが 比 較 的 容 易 な 分 野 といえるだろう そこで 本 稿 ではプロ 野 球 市 場 におけるグッズ 飲 食 物 に 焦 点 を 当 て 来 場 者 の 消 費 金 額 と 属 性 との 関 係 について 分 析 を 行 う ただし 後 述 するデータの 制 約 上 消 費 金 額 を 把 握 できるのは 飲 食 物 のみなので 本 稿 では 球 場 内 で 販 売 されている 飲 食 物 に 限 定 し 先 の 関 係 を 分 析 する そ の 上 で 補 助 的 な 分 析 として 来 場 者 が 飲 食 物 に 抱 いている 印 象 と 関 係 する 個 人 属 性 の 探 索 も 行 う 同 調 査 を 用 いた 分 析 より 次 の 2 点 が 明 らかとなった 第 1 は 球 場 内 の 飲 食 物 への 消 費 金 額 において 所 得 来 場 の 際 の 同 伴 者 の 重 要 性 が 確 認 できた 具 体 的 には 所 得 階 級 700 万 円 以 上 の 回 答 者 は 所 得 階 級 300 万 円 未 満 の 回 答 者 と 比 較 して 平 均 で 406.7 円 1 人 で 来 場 した 回 答 者 は 友 人 同 僚 などと 来 場 した 回 答 者 よりも 平 均 320.8 円 多 く 球 場 内 で 飲 食 物 を 購 入 していた 第 2 は 球 場 内 で 販 売 している 飲 食 物 に 対 して 年 齢 の 高 い 高 齢 者 ほど 良 い 印 象 を 抱 いていない 現 状 が 明 らかとなった 以 降 の 構 成 は 次 の 通 りである 第 2 節 では 本 稿 で 用 いる プロ 野 球 観 戦 に 関 する 調 査 を 紹 介 し 分 析 に 用 いる 主 な 質 問 事 項 の 集 計 結 果 を 示 す 第 3 節 で 分 析 手 法 を 説 明 し 推 定 結 果 を 示 す 第 4 節 はまとめである 1 大 坪 (2011)を 参 照 2 2004 年 に 起 こったプロ 野 球 の 再 編 問 題 の 影 響 もあり 2005 年 は 一 時 的 に 観 客 動 員 数 が 低 迷 した 可 能 性 がある 2006 年 から 2013 年 にかけての 観 客 動 員 数 の 平 均 値 は 約 2,140 万 人 になっている 3 その 他 として 値 下 げによる 来 場 者 数 の 拡 大 来 場 者 のリピーター 化 などが 挙 げられる 4 摂 南 大 学 経 済 学 部 が 2011 年 にオリックス バファローズと 共 同 で 実 施 した 調 査 より 5 摂 南 大 学 経 済 学 部 で 開 講 されている BBE(ベースボールエコノミクス)の 講 義 内 容 より 34
プロ 野 球 来 場 者 の 飲 食 物 購 買 行 動 に 関 する 考 察 2. 調 査 の 概 要 本 稿 の 分 析 には 摂 南 大 学 経 済 学 部 が 2013 年 にオリックス バファローズと 共 同 で 行 った プロ 野 球 観 戦 に 関 する 調 査 を 用 いる 同 調 査 は 摂 南 大 学 経 済 学 部 2 年 生 を 中 心 に 9 月 7 日 京 セラドーム 大 阪 にて 主 にヒアリング 調 査 として 実 施 された ( 調 査 実 施 時 間 は 16:00~18:00 の 2 時 間 ) 調 査 対 象 は 京 セラドームへの 来 場 者 で 495 名 より 有 効 回 答 を 得 た 6 調 査 事 項 は 性 別 年 齢 収 入 といった 来 場 者 の 属 性 球 場 内 での 飲 食 物 の 購 入 状 況 チケットの 評 価 など 多 岐 に 亘 る 7 実 数 ( 人 ) 図 表 1 性 年 齢 別 回 答 者 数 男 女 男 女 計 構 成 比 (%) 実 数 ( 人 ) 構 成 比 (%) 実 数 ( 人 ) 構 成 比 (%) 20 歳 未 満 46 9.3 17 3.4 63 12.8 20 歳 以 上 30 歳 未 満 87 17.6 31 6.3 118 23.9 30 歳 以 上 40 歳 未 満 66 13.4 29 5.9 95 19.3 40 歳 以 上 50 歳 未 満 103 20.9 31 6.3 134 27.2 50 歳 以 上 60 歳 未 満 38 7.7 11 2.2 49 9.9 60 歳 以 上 70 歳 未 満 9 1.8 8 1.6 17 3.4 70 歳 以 上 9 1.8 8 1.6 17 3.4 合 計 358 72.6 135 27.4 493 100.0 調 査 回 答 者 の 属 性 をまとめるに 次 となる まず 性 年 齢 別 に 集 計 した 図 表 1をみると 回 答 者 の 7 割 以 上 が 男 性 であることが 確 認 できる 年 齢 階 級 については 最 も 回 答 したのは 40 歳 以 上 50 歳 未 満 の 27.2%で 20 歳 以 上 30 歳 未 満 (23.9%) 30 歳 以 上 40 歳 未 満 (19.3%)が 続 き これら 年 代 で 全 体 の 70.4%を 占 める 6 ヒアリング 調 査 の 実 施 場 所 が1 塁 側 内 外 野 入 口 ということもあり 回 答 者 の 多 くがオリックス バフ ァローズ ファンと 予 想 される したがって 分 析 結 果 については オリックス バファローズ ファン に 限 定 されたものと 予 想 される 7 付 録 Ⅰに 調 査 票 を 記 しているので 詳 細 はそちらを 参 照 するとよい 35
摂 南 経 済 研 究 第 4 巻 第 1 2 号 (2014) 図 表 2 年 齢 所 得 別 回 答 者 数 300 万 円 未 満 300 万 円 以 上 500 万 円 未 満 500 万 円 以 上 700 万 円 未 満 700 万 円 以 上 1,000 万 円 未 満 1,000 万 円 以 上 20 歳 未 満 (n=48) 91.7 2.1 6.3 20 歳 以 上 30 歳 未 満 (n=114) 74.6 21.9 1.8 30 歳 以 上 40 歳 未 満 (n=89) 28.1 37.1 19.1 12.4 3.4 40 歳 以 上 50 歳 未 満 (n=129) 21.7 24.8 27.1 22.5 3.9 50 歳 以 上 60 歳 未 満 (n=47) 21.3 12.8 40.4 17.0 8.5 60 歳 以 上 70 歳 未 満 (n=17) 58.8 35.3 5.9 70 歳 以 上 (n=14) 64.3 28.6 7.1 全 回 答 者 (n=458) 46.1 23.4 17.0 10.7 2.8 0% 20% 40% 60% 80% 100% その 他 来 場 者 の 所 得 来 場 の 際 の 同 伴 者 に 関 する 設 問 を 年 齢 階 層 別 に 集 計 したものが 図 表 2 図 表 3 である 年 齢 別 に 所 得 の 分 布 をまとめた 図 表 2 に 着 目 すると 年 収 300 万 円 未 満 と 回 答 した 個 人 が 46.1%と 全 体 の 半 数 弱 を 占 めている 年 齢 別 では 30 代 40 代 50 代 の 年 収 が 比 較 的 高 く 50 代 では 約 4 割 が 年 収 500 万 円 以 上 700 万 円 未 満 と 回 答 している 次 に 来 場 の 際 の 同 伴 者 に 関 する 設 問 を 集 計 した 図 表 3 をみると 全 体 で 最 も 大 きな 割 合 を 占 めるのは 友 人 の 37.2%で 家 族 の 35.6% 1 人 の 21.4%が 続 く 年 齢 別 でみると 70 歳 以 上 を 除 いて 年 齢 層 が 上 がるにつれ 1 人 で 来 場 すると 回 答 した 人 が 増 加 する 傾 向 にある また 30 歳 未 満 につい ては 友 人 との 来 場 の 割 合 が 最 も 大 きく 6 割 を 30 歳 以 上 70 歳 未 満 では 家 族 との 来 場 が 4 割 を 超 えている 36
プロ 野 球 来 場 者 の 飲 食 物 購 買 行 動 に 関 する 考 察 図 表 3 年 齢 同 伴 者 別 回 答 者 数 一 人 家 族 友 人 職 場 関 係 者 その 他 20 歳 未 満 (n=61) 4.9 27.9 63.9 1.6 1.6 20 歳 以 上 30 歳 未 満 (n=117) 12.8 12.8 66.7 2.6 5.1 30 歳 以 上 40 歳 未 満 (n=93) 19.4 44.1 26.9 4.3 5.4 40 歳 以 上 50 歳 未 満 (n=132) 28.0 49.2 18.2 2.3 2.3 50 歳 以 上 60 歳 未 満 (n=49) 36.7 46.9 14.3 2.0 60 歳 以 上 70 歳 未 満 (n=17) 47.1 41.2 11.8 70 歳 以 上 (n=17) 29.4 29.4 35.3 5.9 全 回 答 者 (n=486) 21.4 35.6 37.2 2.5 3.3 0% 20% 40% 60% 80% 100% 図 表 4 プロ 野 球 観 戦 回 数 ( 昨 年 度 )の 分 布 確 率 密 度 0.05.1.15.2 0 10 20 30 40 来 場 回 数 ( 昨 年 度 ) 37
摂 南 経 済 研 究 第 4 巻 第 1 2 号 (2014) 回 答 者 の 昨 年 度 のプロ 野 球 観 戦 回 数 をみていく 本 稿 ではこの 変 数 をプロ 野 球 への 関 心 を 示 す 代 理 指 標 として 扱 う 昨 年 度 の 観 戦 回 数 を 集 計 すると 平 均 値 が 7.2 回 に 対 し 標 準 偏 差 が 9.4 回 とバラつきが 大 きい 状 況 が 窺 える この 状 況 は 昨 年 度 の 観 戦 回 数 の 分 布 を 示 す 図 表 4 か らも 確 認 でき 20% 近 くの 回 答 者 が 2 回 以 下 と 回 答 しているのに 対 し 30 回 以 上 と 回 答 したの も 28 人 と 全 体 の 6.5%を 占 めている なお 来 場 回 数 をファンクラブ 加 入 の 有 無 別 でみると フ ァンクラブ 加 入 者 の 平 均 値 13.0 回 に 対 し 未 加 入 者 の 平 均 値 は 4.4 回 と 3 分 の 1 程 度 である 図 表 5 飲 食 物 への 1 人 あたり 支 出 ( 予 定 ) 額 確 率 密 度 0 5.0e-04.001.0015.002 0 1000 2000 3000 4000 1 人 あたり 消 費 ( 予 定 ) 金 額 ( 円 ) 調 査 回 答 者 の 球 場 内 における 飲 食 物 の 購 入 状 況 に 目 を 向 けると 球 場 内 で 飲 食 物 を 購 入 する と 回 答 したのは 有 効 回 答 者 462 人 中 373 人 と 80.7%であった 8 この 373 人 を 対 象 に 1 人 あ たりの 消 費 ( 予 定 ) 金 額 の 分 布 を 示 したのが 図 表 5 である 同 図 からも 分 かるように 2,000 円 以 内 の 回 答 者 が 9 割 近 くを 占 め 特 に 1,000 円 周 辺 に 多 くの 回 答 者 が 集 まっている なお 1 人 あたりの 消 費 ( 予 定 ) 金 額 の 平 均 値 は 1489.6 円 標 準 偏 差 は 730.7 円 である 8 まだ 購 入 していないが これから 購 入 する 予 定 の 回 答 者 73 人 も 373 人 に 含 まれている 38
プロ 野 球 来 場 者 の 飲 食 物 購 買 行 動 に 関 する 考 察 図 表 6 飲 食 物 に 抱 く 印 象 ラインナップ 価 格 実 数 ( 人 ) 構 成 比 (%) 実 数 ( 人 ) 構 成 比 (%) 多 い 70 15.9 安 い 7 1.6 普 通 295 67.1 ちょうどよい 183 41.3 少 ない 75 17.1 高 い 252 56.9 量 味 実 数 ( 人 ) 構 成 比 (%) 実 数 ( 人 ) 構 成 比 (%) 少 ない 93 21.0 美 味 しい 93 21.0 ちょうどよい 335 75.6 普 通 331 74.7 多 い 14 3.2 美 味 しくない 19 4.3 最 後 に 回 答 者 が 球 場 内 で 販 売 されている 飲 食 物 に 抱 いている 印 象 を 確 認 する 確 認 する 内 容 は 飲 食 物 のラインナップ 価 格 量 味 の 4 つの 属 性 で それぞれ 3 段 階 で 評 価 している これらをまとめたものが 図 表 6 である ラインナップ 量 味 に 着 目 すると 普 通 もしく は ちょうどよい との 回 答 が 70% 前 後 を 占 めている 他 方 価 格 については 56.9%が 高 い に 対 し ちょうどよい が 41.3%と 他 の 属 性 と 比 較 してネガティブな 印 象 を 抱 いてい る 回 答 者 が 多 い これら 質 問 事 項 については 球 場 内 で 飲 食 物 を 購 入 しない 人 も 回 答 者 も 含 まれているため 価 格 に 関 する 印 象 のみ 実 際 に 購 入 した もしくは 購 入 予 定 に 対 象 を 限 定 した 集 計 も 追 加 的 に 行 った ただし 対 象 を 限 定 した 集 計 においても 高 い と 感 じている 回 答 者 が 54.6%に 対 し ちょうどよい が 43.7%と 大 きな 違 いは 見 受 けられない 以 上 摂 南 大 学 経 済 学 部 がオリックス バファローズと 共 同 で 行 った プロ 野 球 観 戦 に 関 す る 調 査 の 集 計 結 果 より 多 様 な 属 性 の 個 人 が 球 場 に 足 を 運 び 球 場 内 で 飲 食 物 を 購 入 してい る 状 況 が 確 認 できた 次 節 では 球 場 内 で 販 売 されている 飲 食 物 への 消 費 金 額 および 印 象 と 回 答 者 の 属 性 に 着 目 し どのような 属 性 の 回 答 者 が 球 場 内 で 販 売 されている 飲 食 物 について 1 より 多 く 消 費 しているのか 2より 良 い 印 象 を 抱 いているのかを 計 量 経 済 学 の 手 法 を 用 いて 明 らかにする 39
摂 南 経 済 研 究 第 4 巻 第 1 2 号 (2014) 3. 推 定 本 節 では 第 1 項 で 1 人 当 たり 消 費 金 額 と 各 種 属 性 との 関 係 飲 食 物 に 抱 く 印 象 と 属 性 の 関 係 を 分 析 するためのモデルを 紹 介 し 第 2 項 で 推 定 結 果 を 示 す 3-1 推 定 モデル 1 人 当 たり 消 費 金 額 と 回 答 者 の 各 種 属 性 の 関 係 を 検 証 するモデルでは 消 費 ( 予 定 ) 金 額 が 0 円 になる 標 本 が 多 数 存 在 する 点 に 注 意 する 必 要 がある 前 節 の 集 計 結 果 からも 明 らかなように プロ 野 球 観 戦 に 関 する 調 査 の 有 効 回 答 数 462 人 中 89 人 つまり 19.3%が 京 セラドーム 内 で 飲 食 物 を 購 入 しないと 回 答 しており これら 回 答 者 の 消 費 ( 予 定 ) 金 額 は 当 然 ながら 0 円 であ る このように 臨 界 値 である 0 円 と 回 答 した 個 人 が 多 い 状 況 で OLS を 用 いるとバイアスを 持 っ た 推 定 値 が 計 算 されることになる そこで 本 稿 では 臨 界 値 で 切 断 されたデータの 推 定 に 対 応 す る Tobit Model を 用 いる Tobit Model の 推 定 式 は 下 の 式 (1)である (1) 0, は 潜 在 変 数 で 回 答 者 が 球 場 内 で 飲 食 物 を 購 入 すると 答 えた 場 合 は 1 人 当 たりの 消 費 ( 予 定 ) 金 額 購 入 しないと 答 えた 場 合 は 0 となる X は 1 人 当 たりの 消 費 ( 予 定 ) 金 額 に 影 響 を 及 ぼすと 考 えられる 回 答 者 の 各 種 属 性 であり 具 体 的 には 性 別 年 齢 所 得 来 場 の 際 の 同 伴 者 昨 年 度 のプロ 野 球 の 観 戦 回 数 を 含 む なお 実 際 の 推 定 において 年 齢 は 対 数 値 を 用 いる および は 推 定 するパラメータ ε は 0, に 従 う 誤 差 項 を 示 している 9 なお 上 で 示 した 説 明 変 数 のほか 本 稿 では 滞 在 時 間 ファンクラブへの 加 入 の 有 無 を 説 明 変 数 に 加 えたケースについても 推 定 を 行 う 両 変 数 ともに 摂 南 大 学 経 済 学 部 で 開 講 された BBE (ベースボールエコノミクス)にて 1 人 当 たりの 消 費 ( 予 定 ) 金 額 との 関 係 が 言 及 された 変 数 である 滞 在 時 間 については 滞 在 時 間 の 長 い 人 ほど 消 費 機 会 が 増 えるため 正 ファンクラブ への 加 入 についてはファンクラブ 加 入 者 ほど 球 場 での 購 入 機 会 が 多 いため 負 の 符 号 が 予 想 され る 各 変 数 の 記 述 統 計 量 は 図 表 7 にまとめている 次 に 回 答 者 が 飲 食 物 に 抱 く 印 象 とその 属 性 の 関 係 を 分 析 するモデルを 提 示 する 図 表 6 から も 分 かるように 来 場 者 が 飲 食 物 に 抱 く 印 象 については ラインナップ 価 格 量 味 それぞ れに 3 つの 離 散 的 な 評 価 を 設 けている したがって 推 定 には OLS ではなく 順 序 ある 離 散 値 の 推 定 に 対 応 した Ordered Logit Mocel を 用 いる 推 定 モデルは 下 の 式 (2)である 上 記 の 通 り 飲 食 物 に 対 する 印 象 については ラインナップ 価 格 量 味 の 4 つの 属 性 があるため それぞれの 属 性 に 対 して 式 (2)を 推 定 することになる 9 Tobit Model の 尤 度 関 数 は Winkelmann and Boes(2006) Wooldrige(2010)を 参 照 するとよい 40
プロ 野 球 来 場 者 の 飲 食 物 購 買 行 動 に 関 する 考 察 (2) 式 (2) 左 辺 の は 潜 在 変 数 で 球 場 内 で 販 売 されている 飲 食 物 の 属 性 (ラインナップ 価 格 量 味 )についての 回 答 者 の 印 象 を 示 す この 潜 在 変 数 については 下 に 示 す cut point で ある に 従 い 0 1 2 の 値 を 取 る 例 えば ラインナップであれば は 多 い 普 通 少 ない の 3 つの 値 を 取 り 多 い=2 普 通 =1 少 ない=0 として 扱 う 0 1 2 if if if 右 辺 の Z は 説 明 変 数 を 示 し 飲 食 物 の 各 種 属 性 への 印 象 に 影 響 を 及 ぼすと 考 えられる 回 答 者 の 属 性 が 含 まれる 具 体 的 には 性 別 年 齢 所 得 昨 年 度 のプロ 野 球 の 観 戦 回 数 を 用 いる なお 年 齢 は 対 数 値 とする δ は 推 定 するパラメータ は 0, に 従 う 誤 差 項 を 示 している 変 数 の 定 義 及 び 記 述 統 計 量 は 図 表 7 にまとめている 図 表 7 記 述 統 計 量 変 数 定 義 観 測 値 平 均 標 準 偏 差 1 人 あたり 消 費 金 額 球 場 内 での 飲 食 物 の 購 入 費 ( 連 続 値 ) 420 1170.345 886.2523 ラインナップに 対 する 印 象 多 いと 回 答 した 場 合 は2 普 通 は1 少 ないは0となる 離 散 値 440 0.989 0.5746 価 格 に 対 する 印 象 安 いと 回 答 した 場 合 は2 普 通 は1 高 いは0となる 離 散 値 442 0.446 0.5285 量 に 対 する 印 象 多 いと 回 答 した 場 合 は2 普 通 は1 少 ないは0となる 離 散 値 442 0.821 0.4589 味 に 対 する 印 象 美 味 しいと 回 答 した 場 合 は2 普 通 は1 美 味 しくないは0となる 離 散 値 443 1.167 0.4748 性 別 男 性 の 場 合 1となるダミー 変 数 493 0.274 0.4464 年 齢 回 答 した 年 齢 ( 連 続 値 ) 485 35.643 14.0587 所 得 Ⅰ 年 収 300 万 円 未 満 の 場 合 1となるダミー 変 数 458 0.461 0.4990 所 得 Ⅱ 年 収 300 万 円 以 上 500 万 円 未 満 の 場 合 1となるダミー 変 数 458 0.234 0.4236 所 得 Ⅲ 年 収 500 万 円 以 上 700 万 円 未 満 の 場 合 1となるダミー 変 数 458 0.170 0.3763 所 得 Ⅳ 年 収 700 万 円 以 上 の 場 合 1となるダミー 変 数 495 0.125 0.3313 同 伴 者 Ⅰ 1 人 で 来 場 した 場 合 1となるダミー 変 数 490 0.212 0.4093 同 伴 者 Ⅱ 家 族 と 来 場 した 場 合 1となるダミー 変 数 490 0.353 0.4784 同 伴 者 Ⅲ 友 人 同 僚 などと 来 場 した 場 合 1となるダミー 変 数 495 0.422 0.4944 昨 年 度 のプロ 野 球 の 観 戦 回 数 回 答 した 観 戦 回 数 ( 連 続 値 ) 433 7.268 9.3790 滞 在 時 間 球 場 に 滞 在 した 時 間 ( 連 続 値 ) 459 415.939 90.2220 ファンクラブ 加 入 ファンクラブに 加 入 している 場 合 1となるダミー 変 数 495 0.374 0.4843 41
摂 南 経 済 研 究 第 4 巻 第 1 2 号 (2014) 3-2. 推 定 結 果 まず 球 場 内 での 飲 食 物 への 消 費 金 額 と 来 場 者 の 属 性 の 関 係 を 推 定 した 式 (1)の 結 果 をみてい く( 図 表 8) 図 表 8 推 定 結 果 (1) (1) (2) (3) (4) 推 定 値 t 値 推 定 値 t 値 推 定 値 t 値 推 定 値 t 値 性 別 -38.703-0.280-36.472-0.270-29.721-0.220-30.111-0.220 年 齢 ( 対 数 値 ) 193.528 1.130 179.562 1.050 195.331 1.140 86.750 0.510 所 得 Ⅱ 144.781 0.960 159.263 1.050 147.191 0.970 84.463 0.560 所 得 Ⅲ 160.348 0.870 173.781 0.940 168.727 0.910 196.205 1.090 所 得 Ⅳ 406.704 ** 2.010 413.319 ** 2.040 410.012 ** 2.020 340.541 * 1.670 同 伴 者 Ⅱ -138.906-0.870-117.923-0.740-132.608-0.830 87.053 0.560 同 伴 者 Ⅲ -320.836 ** -1.980-293.741 ** -1.790-307.396 ** -1.870-200.944-1.260 昨 年 度 のプロ 野 球 の 観 戦 回 数 -2.860-0.460-2.229-0.360-4.516-0.660 滞 在 時 間 ( 対 数 値 ) -94.384-0.330 ファンクラブ 加 入 75.477 0.570-55.579-0.470 切 片 589.157 0.980 1174.388 0.630 555.840 0.920 774.809 1.280 対 数 尤 度 標 本 数 -2463.47 350-2444.58 347-2463.30 350-2676.07 388 注 )***は1% **は5% *は10% 水 準 で 有 意 を 示 す 図 表 8 推 定 結 果 (2) 被 説 明 変 数 : ラインナップ 価 格 量 味 (5) (6) (7) (8) 推 定 値 z 値 推 定 値 z 値 推 定 値 z 値 推 定 値 z 値 性 別 0.333 1.210-0.256-0.990 0.946 *** 2.840-0.134-0.450 年 齢 ( 対 数 値 ) -0.796 ** -2.490-0.564 * -1.850 0.109 0.310-1.221 *** -3.420 所 得 Ⅱ 0.085 0.270 0.255 0.860 0.277 0.790 0.137 0.410 所 得 Ⅲ 0.329 0.920-0.143-0.420 0.556 1.330-0.229-0.550 所 得 Ⅳ 0.168 0.430 0.018 0.050 0.300 0.690-0.582-1.230 昨 年 度 のプロ 野 球 の 観 戦 回 数 -0.016-1.320 0.010 0.810-0.002-0.150 0.014 1.090 対 数 尤 度 -301.24-274.82-229.10-234.17 標 本 数 368 369 370 370 注 )***は1% **は5% *は10% 水 準 で 有 意 を 示 す 42
プロ 野 球 来 場 者 の 飲 食 物 購 買 行 動 に 関 する 考 察 図 表 8 推 定 結 果 (3) ファンクラブ 加 入 者 被 説 明 変 数 : ラインナップ (9) 価 格 (10) 量 (11) 味 (12) 推 定 値 z 値 推 定 値 z 値 推 定 値 z 値 推 定 値 z 値 性 別 0.057 0.110-0.322-0.630 1.118 1.620 0.265 0.500 年 齢 ( 対 数 値 ) -0.302-0.560 0.095 0.180 0.092 0.140-1.119 ** -1.970 所 得 Ⅱ -0.092-0.180 0.083 0.160 0.080 0.130 0.539 1.020 所 得 Ⅲ -0.472-0.750 0.183 0.290-0.216-0.300 0.342 0.510 所 得 Ⅳ -0.389-0.620-0.365-0.600 0.090 0.120-0.363-0.520 昨 年 度 のプロ 野 球 の 観 戦 回 数 -0.035 ** -2.070 0.016 0.950 0.020 0.980-0.005-0.310 対 数 尤 度 標 本 数 -108.35 127-96.51 127-79.61 128-94.31 128 ファンクラブ 未 加 入 者 被 説 明 変 数 : ラインナップ (13) 価 格 (14) 量 (15) 味 (16) 推 定 値 z 値 推 定 値 z 値 推 定 値 z 値 推 定 値 z 値 性 別 0.492 1.480-0.251-0.810 0.967 ** 2.500-0.222-0.590 年 齢 ( 対 数 値 ) -1.008 ** -2.500-1.004 *** -2.610 0.002 0.000-1.400 *** -2.920 所 得 Ⅱ 0.129 0.320 0.378 1.030 0.377 0.860-0.066-0.150 所 得 Ⅲ 0.752 * 1.710-0.295-0.700 1.001 1.900-0.530-0.950 所 得 Ⅳ 0.455 0.900 0.290 0.620 0.449 0.810-0.665-1.020 昨 年 度 のプロ 野 球 の 観 戦 回 数 0.007 0.310-0.018-0.860-0.044 * -1.850 0.019 0.790 対 数 尤 度 標 本 数 -189.51 241-173.79 242-146.01 242-135.27 242 注 )***は1% **は5% *は10% 水 準 で 有 意 を 示 す ベースとなるモデル(1)をみると 統 計 的 に 有 意 な 推 定 値 が 得 られた 変 数 は 所 得 Ⅳおよび 同 伴 者 Ⅲである 所 得 Ⅳは 所 得 階 級 700 万 円 以 上 の 回 答 者 が 属 しており 推 定 値 は 406.7 である この 結 果 については 所 得 階 級 700 万 円 以 上 の 回 答 者 は 所 得 階 級 300 万 円 未 満 の 回 答 者 と 比 較 して 平 均 値 で 406.7 円 多 く 消 費 していることを 示 す ただし 所 得 Ⅱ 所 得 Ⅲの 推 定 値 につ いては 値 は 正 ではあるが 統 計 的 な 有 意 性 は 確 認 できない したがって 所 得 が 高 い 個 人 ほど 球 場 内 で 多 く 消 費 するとまでは 言 えない 他 方 同 伴 者 Ⅲには 友 人 同 僚 などと 来 場 した 回 答 者 が 含 まれる この 変 数 の 推 定 値 は-320.8 なので 1 人 で 来 場 した 人 が 含 まれる 同 伴 者 Ⅰと 比 較 して 友 人 同 僚 などと 来 場 した 人 と 比 較 して 球 場 内 での 飲 食 物 への 消 費 金 額 が 平 均 320.8 円 少 ない 状 況 を 示 す 他 方 家 族 と 来 場 し た 回 答 者 が 含 まれる 同 伴 者 Ⅱの 推 定 値 は 統 計 的 に 有 意 ではないため 1 人 で 来 場 した 回 答 者 と 家 族 と 来 場 した 回 答 者 において 飲 食 物 への 消 費 金 額 に 違 いがあるとは 言 えない 次 に 球 場 内 の 滞 在 時 間 ファンクラブ 加 入 を 説 明 変 数 に 加 えたモデル(2) (3)の 結 果 を 確 認 す る 球 場 内 での 滞 在 時 間 を 加 えたモデル(2)をみると 滞 在 時 間 ( 対 数 値 )の 推 定 値 は 統 計 的 に 有 意 ではない つまり 球 場 内 の 滞 在 時 間 が 長 いほど 消 費 金 額 が 高 まるという 状 況 は 確 認 でき ず 当 初 の 想 定 とは 異 なる 結 果 となった このような 結 果 となった 理 由 として 調 査 を 行 った 時 間 帯 の 影 響 が 考 えられる 第 2 節 で 記 し 43
摂 南 経 済 研 究 第 4 巻 第 1 2 号 (2014) た 通 り 今 回 の 調 査 を 行 った 時 間 帯 は 16:00~18:00 で 回 答 者 の 多 くが 試 合 終 了 まで 観 戦 すると 回 答 した 同 日 の 試 合 開 始 時 刻 が 18:00 で 終 了 時 刻 が 22.00 だったことを 考 えると 回 答 者 の 大 半 は 4 時 間 以 上 球 場 内 に 滞 在 していることになる 図 表 7 の 滞 在 時 間 をみても 平 均 値 が 415 分 なので 回 答 者 は 平 均 6 時 間 55 分 に 亘 って 球 場 に 滞 在 したことになる 多 くの 来 場 者 は 各 自 の 予 算 制 約 のもと 飲 食 物 を 購 入 すると 考 えられるため 7 時 間 近 く 滞 在 していれば 予 定 した 金 額 を 使 用 しきっている 人 が 大 半 と 予 想 される 予 算 制 約 が 所 得 に 依 存 すると 仮 定 すると 所 得 の 影 響 をコントロールしているので 滞 在 時 間 と 消 費 金 額 の 間 に 明 確 な 関 係 が 見 いだせないのは 当 然 かもしれない ファンクラブ 加 入 を 説 明 変 数 に 加 えたモデル(3)をみると こちらでもファンクラブ 加 入 の 推 定 値 は 統 計 的 に 有 意 ではない 前 項 では ファンクラブ 加 入 者 ほど 球 場 内 で 飲 食 物 を 購 入 機 会 が 多 いため 消 費 金 額 は 少 なくなると 想 定 したが 他 の 要 因 をコントロールすると ファンク ラブ 加 入 の 有 無 による 消 費 金 額 の 違 いは 見 いだせなかった ただし 前 節 で 確 認 したように ファンクラブ 加 入 者 ほど 球 場 への 来 場 回 数 ( 昨 年 度 )が 多 い 状 況 にある プロ 野 球 観 戦 回 数 ( 昨 年 度 )とファンクラブ 加 入 が 強 く 相 関 する 可 能 性 がある ため この 点 を 考 慮 し 昨 年 度 のプロ 野 球 観 戦 回 数 を 説 明 変 数 から 除 いたモデル(4)を 推 定 した しかし ファンクラブ 加 入 の 推 定 値 が 統 計 的 に 有 意 という 結 果 は 得 られなかった 次 に 球 場 内 で 販 売 されている 飲 食 物 に 抱 いている 印 象 と 属 性 の 関 係 を 推 定 した 式 (2)の 結 果 を 示 す 図 表 9 をみていく 図 表 9 推 定 結 果 (2) 被 説 明 変 数 : ラインナップ 価 格 量 味 (5) (6) (7) (8) 推 定 値 z 値 推 定 値 z 値 推 定 値 z 値 推 定 値 z 値 性 別 0.333 1.210-0.256-0.990 0.946 *** 2.840-0.134-0.450 年 齢 ( 対 数 値 ) -0.796 ** -2.490-0.564 * -1.850 0.109 0.310-1.221 *** -3.420 所 得 Ⅱ 0.085 0.270 0.255 0.860 0.277 0.790 0.137 0.410 所 得 Ⅲ 0.329 0.920-0.143-0.420 0.556 1.330-0.229-0.550 所 得 Ⅳ 0.168 0.430 0.018 0.050 0.300 0.690-0.582-1.230 昨 年 度 のプロ 野 球 の 観 戦 回 数 -0.016-1.320 0.010 0.810-0.002-0.150 0.014 1.090 対 数 尤 度 -301.24-274.82-229.10-234.17 標 本 数 368 369 370 370 注 )*** は 1% ** は 5% * は 10% 水 準 で 有 意 を 示 す 44
プロ 野 球 来 場 者 の 飲 食 物 購 買 行 動 に 関 する 考 察 まず 球 場 内 で 販 売 されている 飲 食 物 のラインナップへの 印 象 を 分 析 したモデル(5)を 確 認 す ると 年 齢 の 推 定 値 のみマイナスの 値 で 統 計 的 に 有 意 という 結 果 が 得 られた この 結 果 は 年 齢 の 高 い 回 答 者 ほど 飲 食 物 のラインナップに 対 して 良 い 印 象 を 抱 いていない 傾 向 を 示 している 年 齢 が 高 まるほど 多 様 な 飲 食 物 を 購 入 する 機 会 が 増 えるので こういった 年 齢 層 の 回 答 者 は 球 場 内 で 販 売 されている 飲 食 物 に 物 足 りなさを 感 じているのかもしれない 同 様 の 傾 向 は 価 格 味 に 関 する 印 象 を 分 析 したモデル(6) (8)にも 当 てはまる これらモデルでも 年 齢 の 推 定 値 のみ がマイナスの 値 で 統 計 的 に 有 意 である この 結 果 についても ラインナップ 同 様 多 様 な 飲 食 物 を 購 入 する 機 会 が 多 い 高 い 年 齢 層 の 人 ほど 球 場 内 で 販 売 されている 飲 食 物 の 価 格 味 に 物 足 りなさを 感 じていることを 示 唆 している 最 後 に 飲 食 物 の 量 に 関 する 印 象 を 分 析 したモデル(7)をみると 性 別 の 推 定 値 のみプラスで 統 計 的 に 有 意 である これは 女 性 と 比 較 して 男 性 の 回 答 者 の 方 が 球 場 内 で 販 売 されている 飲 食 物 の 量 が 多 いと 感 じる 傾 向 を 示 している 一 般 的 には 男 性 よりも 女 性 の 方 が 食 べる 量 が 少 ない ので 女 性 の 方 が 多 いと 感 じていると 考 えられるため この 分 析 結 果 は 一 般 的 な 感 覚 と 異 なっ ている このような 結 果 となった 明 確 な 理 由 を 今 回 の 調 査 から 見 出 すことは 難 しいが 男 性 と 女 性 で 購 入 する 飲 食 物 に 違 いがあり この 違 いが 今 回 の 結 果 に 影 響 したのかもしれない つまり 男 性 は 弁 当 等 のしっかりとした 飲 食 物 を 購 入 する 一 方 女 性 は 甘 味 などの 軽 食 を 中 心 に 飲 食 物 を 購 入 する 傾 向 にあり 弁 当 等 の 量 は 多 いが 軽 食 の 量 は 少 ないならば 今 回 のような 結 果 にな る 可 能 性 は 十 分 に 考 えられる ただし 今 回 用 いた 調 査 から 回 答 者 が 購 入 した 飲 食 物 の 内 容 ま で 把 握 することはできない これまで 球 場 内 で 販 売 されている 飲 食 物 に 関 する 印 象 について 全 回 答 者 のデータを 用 いて 分 析 結 果 を 示 してきた ただし 回 答 者 の 属 性 に 応 じて 標 本 を 分 割 することで 全 標 本 を 用 い た 分 析 からは 見 えてこなかった 側 面 を 把 握 できるかもしれない そこで 先 の 球 場 内 での 飲 食 物 への 消 費 金 額 と 来 場 者 の 各 種 属 性 に 関 する 分 析 で 説 明 変 数 に 用 いたファンクラブ 加 入 の 有 無 で 標 本 を 分 割 し 各 標 本 について 同 様 の 推 定 を 行 ってみる 推 定 結 果 は 図 表 10 に 示 している 45
摂 南 経 済 研 究 第 4 巻 第 1 2 号 (2014) 図 表 10 ファンクラブ 加 入 の 有 無 別 推 定 結 果 ファンクラブ 加 入 者 被 説 明 変 数 : ラインナップ 価 格 量 味 (9) (10) (11) (12) 推 定 値 z 値 推 定 値 z 値 推 定 値 z 値 推 定 値 z 値 性 別 0.057 0.110-0.322-0.630 1.118 1.620 0.265 0.500 年 齢 ( 対 数 値 ) -0.302-0.560 0.095 0.180 0.092 0.140-1.119 ** -1.970 所 得 Ⅱ -0.092-0.180 0.083 0.160 0.080 0.130 0.539 1.020 所 得 Ⅲ -0.472-0.750 0.183 0.290-0.216-0.300 0.342 0.510 所 得 Ⅳ -0.389-0.620-0.365-0.600 0.090 0.120-0.363-0.520 昨 年 度 のプロ 野 球 の 観 戦 回 数 -0.035 ** -2.070 0.016 0.950 0.020 0.980-0.005-0.310 対 数 尤 度 -108.35-96.51-79.61-94.31 標 本 数 127 127 128 128 ファンクラブ 未 加 入 者 被 説 明 変 数 : ラインナップ 価 格 量 味 (13) (14) (15) (16) 推 定 値 z 値 推 定 値 z 値 推 定 値 z 値 推 定 値 z 値 性 別 0.492 1.480-0.251-0.810 0.967 ** 2.500-0.222-0.590 年 齢 ( 対 数 値 ) -1.008 ** -2.500-1.004 *** -2.610 0.002 0.000-1.400 *** -2.920 所 得 Ⅱ 0.129 0.320 0.378 1.030 0.377 0.860-0.066-0.150 所 得 Ⅲ 0.752 * 1.710-0.295-0.700 1.001 1.900-0.530-0.950 所 得 Ⅳ 0.455 0.900 0.290 0.620 0.449 0.810-0.665-1.020 昨 年 度 のプロ 野 球 の 観 戦 回 数 0.007 0.310-0.018-0.860-0.044 * -1.850 0.019 0.790 対 数 尤 度 -189.51-173.79-146.01-135.27 標 本 数 241 242 242 242 注 )*** は 1% ** は 5% * は 10% 水 準 で 有 意 を 示 す まずファンクラブ 加 入 者 を 対 象 とした 推 定 したモデル(9)~(12)をみていく 全 体 的 に 統 計 的 に 有 意 な 推 計 値 は 少 なく 有 意 となったのはモデル(8)の 昨 年 度 のプロ 野 球 の 観 戦 回 数 モデル (12)の 年 齢 のみである このうち 新 たな 示 唆 が 得 られる 結 果 は 前 者 である 先 の 飲 食 物 への 消 費 金 額 に 関 する 分 析 では ファンクラブ 加 入 の 有 無 で 消 費 金 額 に 違 いが 見 いだせず 当 初 の 想 46
プロ 野 球 来 場 者 の 飲 食 物 購 買 行 動 に 関 する 考 察 定 とは 異 なる 結 果 になっていた しかし この 結 果 を 踏 まえると ファンクラブ 加 入 者 で 観 戦 回 数 が 多 くなることで 飲 食 物 への 消 費 に 負 の 影 響 を 及 ぼすことが 予 想 される ファンクラブ 加 入 者 で 観 戦 回 数 の 多 い 回 答 者 は それだけ 京 セラドームに 足 を 運 んでいる 人 と 考 えられる 観 戦 回 数 の 多 い 人 ほど 飲 食 物 のラインナップに 良 い 印 象 を 抱 いていないのであれば 飲 食 物 へ の 関 心 が 低 下 し 結 果 として 球 場 内 での 飲 食 を 控 える 可 能 性 は 十 分 に 考 えられる したがって 飲 食 物 への 消 費 金 額 とファンクラブ 加 入 の 関 係 を 直 接 捉 えることはできなかったが この 結 果 は 間 接 的 に 支 持 するものと 理 解 できる ファンクラブ 未 加 入 者 を 対 象 に 分 析 を 行 ったモデル(13)~(16)に 注 目 すると 全 回 答 者 の 分 析 と 同 様 ラインナップ 価 格 味 については 年 齢 が 高 いほど 量 については 男 性 よりも 女 性 の 方 が 良 い 印 象 を 抱 いていない 傾 向 にある その 他 モデル(13)の 所 得 Ⅲの 推 定 値 において モデル(16)の 昨 年 度 のプロ 野 球 観 戦 回 数 の 推 定 値 で 統 計 的 な 有 意 性 が 確 認 できた 4.まとめ 本 稿 では 摂 南 大 学 経 済 学 部 がオリックス バファローズと 共 同 で 行 った プロ 野 球 観 戦 に 関 する 調 査 を 用 いて どのような 属 性 の 個 人 が 球 場 内 で 販 売 されている 飲 食 物 について 1よ り 多 く 消 費 しているのか 2より 良 い 印 象 を 抱 いているのかを 分 析 した 分 析 結 果 より 次 の 2 点 が 明 らかとなった 第 1 は 球 場 内 の 飲 食 物 への 消 費 金 額 において 所 得 来 場 の 際 の 同 伴 者 の 重 要 性 が 確 認 でき た 具 体 的 には 所 得 階 級 700 万 円 以 上 の 回 答 者 は 所 得 階 級 300 万 円 未 満 の 回 答 者 と 比 較 して 平 均 で 406.7 円 1 人 で 来 場 した 回 答 者 は 友 人 同 僚 などと 来 場 した 回 答 者 よりも 平 均 320.8 円 多 く 球 場 内 で 飲 食 物 を 購 入 していた 第 2 は 球 場 内 で 販 売 している 飲 食 物 に 対 して 年 齢 の 高 い 回 答 者 ほど 良 い 印 象 を 抱 いていな い 点 である 今 後 の 高 齢 化 の 進 展 を 踏 まえると 来 場 者 の 高 齢 化 を 否 定 できない このような 状 況 で 飲 食 物 からの 収 益 を 向 上 させるには 高 い 年 齢 層 の 来 場 者 へ 良 い 印 象 を 与 える 飲 食 物 の 用 意 が 不 可 欠 と 言 える 最 後 に 本 稿 の 課 題 を 示 す まずは 収 集 したデータの 代 表 性 である 本 稿 の 分 析 に 用 いたデー タは 先 に 示 した 通 り 摂 南 大 学 経 済 学 部 がオリックス バファローズと 共 同 で 行 った プロ 野 球 観 戦 に 関 する 調 査 である 同 調 査 は 主 にヒアリングを 通 じて 調 査 票 の 回 収 がなされたが ヒアリングの 実 施 場 所 が 1 塁 側 (オリックス バファローズ 側 )スタンドおよび 入 場 口 に 限 定 されていた 従 って 調 査 結 果 は 球 場 全 体 を 示 すものではなく オリックス バファローズに 関 心 ある 来 場 者 に 関 するものといえる ただし 同 調 査 の 結 果 がオリックス バファローズに 関 心 のある 来 場 者 を 代 表 しているかも 疑 わしい 上 記 の 通 り 同 調 査 はヒアリング 調 査 である 以 上 回 答 者 の 偏 り すなわちサンプ ル セレクションが 生 じている 可 能 性 を 否 定 できない 10 従 って 同 調 査 の 回 答 者 に 偏 りが 生 じている 可 能 性 が 高 い 以 上 同 調 査 より 得 られた 結 果 および その 解 釈 については 十 分 な 留 10 特 定 の 属 性 を 持 つ 個 人 に 回 答 者 が 偏 ることを 指 す 例 えば オリックス バファローズに 好 意 的 な 個 人 ほど 調 査 に 協 力 するなど 47
摂 南 経 済 研 究 第 4 巻 第 1 2 号 (2014) 意 が 必 要 と 言 わざるを 得 ない 他 の 課 題 として 推 定 方 法 の 問 題 が 挙 げられる 今 回 の 推 定 に 用 いた 説 明 変 数 の 中 には 外 生 的 に 決 定 していると 仮 定 できるものがある 一 方 ファンクラブへの 加 入 を 示 す 変 数 などは 内 生 変 数 として 扱 う 方 が 適 切 である 11 このような 内 生 性 の 疑 いのある 変 数 を 含 むモデルの 推 定 には 一 般 的 に 操 作 変 数 を 用 いた 操 作 変 数 法 を 用 いる しかし 本 稿 で 用 いたアンケート 調 査 票 より 適 切 な 操 作 変 数 の 候 補 をみつけられなかったため 同 手 法 を 用 いることができなかった したがって 本 稿 で 提 示 した 推 定 結 果 において 推 定 値 にバイアスが 生 じている 可 能 性 を 否 定 できない 参 考 文 献 大 坪 正 則 (2011) パ リーグがプロ 野 球 を 変 える 6 球 団 に 学 ぶ 経 営 戦 略, 朝 日 新 聞 出 版. Winkelmann, R. and Boes, S.(2010) Analysis of Microdata, Springer. Wooldridge, J. (2010) Econometric Analysis of Cross Section and Panel Data, MIT Press. 11 ファンクラブへの 加 入 の 有 無 については 回 答 者 は 把 握 しているが 分 析 者 が 把 握 できない 要 因 と 相 関 し それら 要 因 が 誤 差 項 に 含 まれている 可 能 性 がある このような 状 況 が 想 定 できる 変 数 は 内 生 変 数 とし て 扱 う 必 要 がある 48
プロ 野 球 来 場 者 の 飲 食 物 購 買 行 動 に 関 する 考 察 参 考 資 料 Ⅰ( 表 面 ) 49
摂 南 経 済 研 究 第 4 巻 第 1 2 号 (2014) ( 裏 面 ) 50